JP2003012851A - 剛直ポリマー溶液から複合体を製造する方法及び複合膜 - Google Patents

剛直ポリマー溶液から複合体を製造する方法及び複合膜

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JP2003012851A
JP2003012851A JP2002092370A JP2002092370A JP2003012851A JP 2003012851 A JP2003012851 A JP 2003012851A JP 2002092370 A JP2002092370 A JP 2002092370A JP 2002092370 A JP2002092370 A JP 2002092370A JP 2003012851 A JP2003012851 A JP 2003012851A
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Yoshihiko Teramoto
喜彦 寺本
Seiji Watanuki
政治 渡抜
Hirotaka Murase
浩貴 村瀬
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 剛直性高分子の溶液を成形し凝固することで
ポリマーネットワークを形成しその間隙に機能性高分子
や圧縮強度に優れた無機マトリックスを含浸した高性能
複合材料を製造する。 【解決手段】 剛直性ポリマーの光学異方性下限溶液濃
度C2に対して1倍から1.3倍の溶液を成形したのち
に、脱溶媒しない条件で凝固剤を吸収させて非流動性に
した後に脱溶媒して複合体用プレカーサーを得る。さら
に、この凝固プレカーサーにポリマーもしくは反応性分
子の溶液を含浸して得られた分子複合体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高強度・高弾性率あ
るいは高耐熱の複合材料及びを製造する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】剛直高分子の溶液いわゆる液晶性高分子
は流動方向に分子鎖が配向しやすく、一旦配向すると分
子鎖がランダムな向きに変わるまでの時間が長くかかる
といった性質から高度に配向した高強度・高弾性率成形
体を製造することができる。さらに、剛直性ポリマーは
ガラス転移温度が高いために耐熱性成形体を得ることが
できる。剛直性高分子とりわけポリベンザゾールポリマ
ーは、メタンスルホン酸やポリ燐酸といった限られた鉱
酸にしか溶解しない。従来このようなポリマーは特開昭
63−210138号公報の実施例に記述されているよ
うな2%以下の鉱酸低濃度溶液か14%以上の鉱酸高濃
度溶液かのいずれかから成形されるのが一般的であっ
た。ポリベンザゾール単体の繊維やフィルムに加工する
場合、USP5552221号公報およびUSP536
7042号公報に記載されているような高濃度の液晶ド
ープから成形される。ポリベンザゾールのポリマーネッ
トワークを補強材とするコンポジットをこのような高濃
度の液晶ドープから作る際に、ポリマーネットワークの
間隙が小さくなるために他成分の均一含浸が難しくな
る。また、数パーセント以下の低濃度溶液からポリマー
ネットワークを形成すると製品を作る際に多量の鉱酸を
使用することになり工業プロセスに適さない。従って、
剛直性耐熱高分子のポリマーネットワークを補強材とす
るコンポジットを製造するためには従来の剛直性高分子
成形体とは全く異なる技術が必要である。剛直性高分子
複合体は、ポリアミドやポリエーテルケトンなどの柔軟
性高分子とのブレンドや共重合を出発原料として成形さ
れる方法について検討されてきた。しかしながらこの方
法では、剛直性高分子の特性を活かした高性能材料が実
用化されていない現状である。一方で、予め芳香族複素
環ポリマーの連続多孔質網状体を成形し、バインダー樹
脂を含浸する複合体に関する発明が特許2522819
号に記載されている。しかしながらこの方法では、均質
で空孔が大きな連続多孔質網状体を得ることが難しく満
足な性能の複合材料を得ることはできなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、剛直性高分
子の溶液を成形し凝固することでポリマーネットワーク
を形成しその間隙に機能性高分子や圧縮強度に優れた無
機マトリックスを含浸した高性能複合材料を製造する技
術に関するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、剛直性ポ
リマーの光学異方性下限溶液濃度C2に対して1〜1.
3倍の溶液を成形したのちに、脱溶媒しない条件で凝固
剤を吸収させて非流動化させた後に脱溶媒することを特
徴とする複合体用プレカーサーの製造方法であり、具体
的には溶液がポリベンザゾールポリマーの鉱酸溶液であ
ることを特徴とする上記記載の複合体用プレカーサーの
製造方法である。本発明で、上記製造方法によって得ら
れた高強度、大きい空孔径を持つプレカーサーを得る。
また本発明は上記記載の複合体用プレカーサーにポリマ
ーもしくは反応性分子の溶液を含浸することを特徴とす
る分子複合体の製造方法である。さらに本発明で、上記
製造方法によって得られた高強度の分子複合体を得る。
【0005】以下本発明を詳細に説明する。本発明にお
ける剛直性ポリマーとは、分子鎖全体が剛直ユニットで
構成されるもの、剛直ユニットの間に柔軟なモノマーを
共重合した物、クランク型に剛直ユニットを結合した
物、剛直主鎖の側鎖にスペーサーを配した素材等が利用
できる。好ましい剛直ポリマーの例としては、ポリパラ
フェニレンテレフタルアミド、ポリベンズイミド、ポリ
パラフェニレンおよびポリベンザゾールが挙げられる。
ポリベンザゾール(PBZ)とは、ポリベンゾオキサゾ
ール(PBO)ホモポリマー、ポリベンゾチアゾール
(PBT)ホモポリマー及びポリベンズイミダゾール
(PBI)ホモポリマー、もしくは、それらPBO、P
BT、PBIのランダム、シーケンシャルあるいはブロ
ック共重合ポリマーをいう。ここでポリベンゾオキサゾ
ール、ポリベンゾチアゾール及びそれらのランダム、シ
ーケンシャルあるいはブロック共重合ポリマーは、例え
ば Wolfe等の「Liquid Crystalline Polymer Compositi
ons , Process and Products」米国特許第470310
3号(1987年10月27日)、「Liquid Crystalli
ne Polymer Compositions , Process and Products」米
国特許4533692号(1985年8月6日)、「Li
quid Crystalline Poly(2,6-Benzothiazole) Compositi
on, Process and Products」米国特許第4533724
号(1985年8月6日)、「Liquid Crystalline Po
lymer Compositions , Process and Products」 米国
特許第4533693号(1985年8月6日)、Ever
sの「Thermo oxidatively Stable Articulated p-Benzo
bisoxazole and p-Benzobisthiazole Polymres」米国特
許第4539567号(1982年11月16日)、Ta
si等の「Method for making Heterocyclic Block Copol
ymer」米国特許第4578432号(1986年3月2
5日)、等に記載されている。ポリベンザゾールポリマ
ーに含まれる構造単位としては、好ましくはライオトロ
ピック液晶ポリマーから選択される。モノマー単位は構
造式(a)〜(h)に記載されているモノマー単位から
なり、さらに好ましくは、本質的に構造式(a)〜
(c)から選択されたモノマー単位からなる。
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】これらの、剛直性高分子の溶液は転相濃度
C*を越えると光学異方性溶液を形成する。光学異方性
溶液を形成するための好適な溶媒としては、クレゾール
やそのポリマーを溶解し得る非酸化性の酸が含まれる。
特に好適な酸溶媒の例としては、ポリリン酸、メタンス
ルホン酸および高濃度の硫酸等の鉱酸あるいはそれらの
混合物が挙げられる。光学異方性を発現する転相濃度C
*は、温度に依存する。この事実は、Picken(Macromole
cules第22巻、頁1766-1771、1989年)にも記載さ
れている。本発明では、溶液の調整から成形までの最高
温度での等方相を含まない異方相を形成する濃度が重要
である。転相濃度C*では液晶相と等方相がともに存在
する。このような相では流動性が非常に悪く、成形加工
ができない。等方相と液晶相が共存する領域の下限濃度
をC1,上限濃度をC2と定義する。本発明は、溶液の
調整から成形までの最高温度での等方相が現れない下限
濃度C2からC2の1.3倍の濃度の溶液を成形するこ
とを特徴とする。より好ましい濃度範囲はC2からC2
の1.2倍さらに好ましくはC2からC2の1.1倍で
ある。
【0009】濃度C2の決定は、偏光顕微鏡観察で実施
する方法が簡便である。ほかに、流体粘度を測定する方
法(例えば、H.FISCHER J.A.ODELL A.KELLER M.MURRAY
らのJ. Materials Science、第29巻 頁1025)があ
る。偏光顕微鏡観察では、試料をスライドグラスの間で
およそ50μm以下の厚みに潰して加熱ステージ上で観
察する。溶融温度以上で溶液調整から加工温度までの温
度範囲で光学的異方性による模様が消えない濃度組成を
検討する。溶媒の種類や、溶媒の水分率さらにはポリマ
ー重合度により下限濃度C2は変化する。例えば、極限
粘度数25のポリパラフェニレンベンズビスオキサゾー
ルの116%ポリ燐酸溶液の場合200℃での液晶形成
下限濃度C2はおよそ8重量%である。
【0010】溶液濃度を下げるもう一つの利点は、溶液
内の分子間相互作用を低減する事である。濃度が異なる
光学異方性溶液同士であっても、濃度が高いと分子間相
互作用が高まる。光学異方性溶液はネマチック液晶のポ
リドメイン構造に由来する。溶液濃度が高いとドメイン
内の分子間反発が強い状態になるためドメイン自体の弾
性が高まり、ドメイン間相互作用(学術的には長距離秩
序と呼ばれる)が強まる。このような溶液は弾性に富
み、成型時に不安定流動が起こりやすく成形体の表面凹
凸などもできやすくなる。従って、C1以上の濃度でで
きるだけ低い濃度の溶液を成形することが好ましい。
【0011】次に溶液を成形する工程について説明す
る。光学異方性溶液を軟化温度以上に加熱し、スリット
ダイもしくはキャピラリーより押し出し、支持体の上で
冷却することで、膜状、繊維状宇、棒状に加工すること
ができる。膜状物にする場合には、USP532865
4号公報のように延伸を加えることが好ましい。形を整
えた溶液は、積極的な脱溶媒をするまえに凝固剤で膨潤
させて流動性がない状態にする必要がある。通常の繊維
やフィルムの工程のように凝固剤中に浸漬すると、溶媒
が凝固剤中に素早く拡散することにより成形体の著しい
体積変化が生じる。この際に、剛直性高分子のポリマー
ネットワークがパッキングを始め緻密な成形体になる。
このような方式ではポリマーネットワークの間隙にマト
リックス成分を含浸することができなくなる。そこで、
本発明では成形体に凝固剤を吸収させて凝固を進める。
凝固剤は液相の噴霧でも気相ガスでも良い。本発明の溶
液濃度であれば、その他の方法として、従来から知られ
ているキャスト法、プレス法なども採用することができ
る。
【0012】凝固により生じるポリマーネットワーク構
造は、凝固剤の付与量、凝固時の成形体温度、雰囲気圧
力に依存する。好ましい条件は、ポリマーの加水分解が
極度に進まない温度時間積の範囲で可能な限り速やかに
凝固が進行する条件である。高温高圧の水蒸気雰囲気が
特に好ましいが、できるだけ短時間の処理後に温度を下
げることが好ましい。好ましい処理時間は成形体の体積
にも依存するが、長くとも4時間、より好ましくは2時
間以下である。このようにして得られた湿潤状態の膜即
ちプレカーサーは、強度が2〜50kgf/mm2、好まし
くは3〜10kgf/mm2と、従来にない強度を示す。強
度が2kgf/mm2以下ではハンドリングが困難となり複
合膜とした場合も強度が発現しない。この強度の制御
は、膜中の分子配向の制御によって行われる。
【0013】好ましい凝固剤の種類は、水、アルコール
やグリコール、アセトンなどである。溶媒としてポリ燐
酸や硫酸を用いている系では水もしくはアセトンが好ま
しい。工業的利用に有利であるのは水である。凝固剤に
は溶媒の酸を中和するための塩基を混合しても良い。ア
ンモニアなどの塩基性ガスを利用することで凝固を早め
ることができる。
【0014】凝固の間、溶媒と凝固剤の混合物が成形体
表面にたまるとその部分に溶媒が速く溶けだし凝固が局
所的に促進されるので好ましくない。このような不具合
を改善するために、多孔質膜を介して凝固剤を注入する
かエアブローを併用して成形体表面の液的を取り去るな
どの工夫が必要である。このようにして十分凝固した成
形体から脱溶媒することで、剛直鎖ポリマーのネットワ
ーク構造体を得ることができる。脱溶媒の工程では、体
積変化が生じる。急激な体積変化は成形体の形態を不安
定にするので、支持体の面で拘束させて収縮させる、溶
媒の溶出が遅い抽出剤で脱溶媒する事が好ましい。抽出
中の拘束状態で、ポリマーネットワークの配向を強化さ
させる、面状物では面配向が強化できる場合がある。何
れの抽出方法においても、マトリックス成分の含浸が良
好になる条件を選択することが肝要である。
【0015】溶剤抽出は、ポリマー中の残存溶媒量が十
分に小さくなるまで続ける必要がある。USP5292
469号公報のように高温の抽出液を利用することが特
に好ましい。ポリベンザゾールのポリ燐酸溶液からの成
型物の場合は、好ましい残存溶媒量は燐原子の重量で
0.6%以下、より好ましくは0.4%以下である。最
も好ましくはおよそ0.3%以下である。残存溶媒が多
いと、溶剤の酸による加水分解が生じやすいために、補
強ネットワークの長期安定性が悪くなる。得られたポリ
マーの平均空孔径は、0.01〜2μmであり、さらに
好ましくは0.05〜1μmである。平均空孔径が0.
01μm以下では樹脂の含浸が困難となり、複合膜を作
成するための溶媒の置換に時間がかかるとともに、置換
不十分となる場合がある。また、2μmよりも大きくな
ると膜強度が低下する場合がある。この平均空孔径の制
御は、凝固時間や凝固温度のコントロールによって行わ
れる。
【0016】このようにして得られた、剛直性ポリマー
マトリックスから複合材料を作る工程はマトリックス成
分の溶液を含浸する準備から始まる。まず、抽出液でマ
トリックス成分を溶解することができない場合は抽出剤
をマトリックス用の溶媒と置換する。この際にポリマー
マトリックスの空隙を確保するために、コロイダルシリ
カなどの無機微粒子を添加しても良い。溶剤置換の前も
しくは途中に、周囲の付着水をエアーで吹き飛ばすなど
の作業をすると効率的である。溶剤の置換は片面もしく
は1端から順次進めていくことが好ましい。この際、液
を積極的に流動する、流れを促進するために吸引をする
などの置換促進を実施することができる。
【0017】マトリックスにシリカを用いた複合フィル
ムの例では、水で抽出を行った補強ネットワークをメタ
ノールで置換し、この成形体からアルコールが乾燥しな
いようにテトラエチルシリケートとアミン触媒のアルコ
ール溶液中に浸し、常温で真空脱気する。表面の余剰の
処理液を拭き取り、丸い枠に固定して200℃から35
0℃で乾燥することで、シリカと剛直性高分子の複合体
を製造することができる。得られた複合体の厚みは2〜
200μm、強度は1〜100kgf/mm2であった。
【0018】本発明で製造された剛直性ポリマーネット
ワークは、(1)高分子電解質型燃料電池用プロトン交
換膜用の補強材、(2)ニッケル水素電池・リチウムイ
オン電池などの電池用セパレーターや電極材、(3)熱
硬化ビスマレイイミドとの複合成型物、(4)低誘電率
ポリマーと組み合わせた配線基板材料、(5)硬質ガラ
ス含有複合材料、(6)浄水・排水処理用フィルター、
(7)血液ろ過用フィルター、(8)気体ろ過・分離用
のフィルター材料、(9)バグフィルター、(10)イ
オン交換膜、(11)光触媒・酵素などの触媒担持膜、
(12)インクカートリッジ、(13)インク受像シー
ト、(14)ガス吸着材、(15)クロマトグラフィー
用カラム、(16)耐火・断熱材、(17)人工骨など
アパタイト形成基材、(18)徐放性医薬用担体などド
ラッグデリバリーシステム、(19)人工肺、(20)
航空機・宇宙用途としての断熱材料、(21)高耐久性
クッション材、などとして利用することができる。
【0019】実施例 以下に実施例を示すが本発明はこれらの実施例に限定さ
れるものではない。 <測定法> (極限粘度数)メタンスルホン酸溶媒を用いて25℃で
測定した。 (平均空孔径)平均空孔径の測定は、走査型電子顕微鏡
を用いて行う。ただし、走査型電子顕微鏡で観察するた
めには凝固剤を除去する必要があるが、本来の凝固剤が
存在した状態に可能な限り近い状態で評価する必要があ
る。従って、臨界点乾燥法で膜形態を維持した状態で試
料を乾燥させ、走査型電子顕微鏡で観察した。以下にそ
の手順を詳しく述べる。上述した方法でフィルム状に溶
液を成形し、脱溶媒しない条件で凝固剤を吸収させて非
流動化させた後に、凝固剤を酢酸イソアミルに置換す
る。サンプルのサイズは5mm四方に片刃ナイフなどを
用いて切り抜いておく。この際に、凝固剤と酢酸イソア
ミルの溶解性が乏しい場合には、凝固剤を酢酸イソアミ
ルとの共通溶媒に一旦置換した後に、共通溶媒から酢酸
イソアミルに置換する。この置換操作は、置換溶媒に一
度に浸漬するのではなく、段階的に置換溶媒濃度を上げ
た混合液に順次浸漬することによってなされる。凝固剤
を酢酸イソアミルに完全に置換した後、日立製臨界点乾
燥装置HCP-1形を用いて酢酸イソアミルを液化二酸化炭
素に置換し、取り扱い説明書に従う所定の操作によって
臨界点乾燥を行う。臨界点乾燥後のサンプルには、導電
性を付与するために金属を表面に蒸着する。蒸着金属は
PtやAuなどを用いることができる。このようにして調整
したサンプルより、日立製電界放射型走査電子顕微鏡S-
800を用いて倍率3万倍で写真撮影を行う。写真撮影
は、複合体プリカーサーの両方の面で行うのではなく、
事前の観察でより開孔が多いと認められた面において実
施する。その開孔の多い方の面の任意の場所5箇所より
倍率3万倍の写真を得る。ただし、任意の箇所とは、複
合体プリカーサー表面が均一な開孔構造を持つ場合には
無作為に選択した箇所を意味するが、表面に不均一が存
在する場合には、5mm四方のサンプル表面を1mm四
方の領域に25分割し、その領域の中央部から各1枚、
合計25枚の写真を3万倍で撮影する。得られた写真に
おいて、その視野中における最大の開孔の開口部直径を
計測しR1とする。残りの写真においても同様に各視野
中の最大の開口部直径を求め、それぞれをR2,R3,
R4〜R25とする。最大の開口部が真円でない場合に
は、その最長径と最短径を計測し、その平均値を用い
る。平均開孔径Rは以下の式により求めることとする。 不均一が無い場合 R=(R1+R2+R3+R4+R5)/5 不均一がある場合 R=(R1+R2+R3+・・・+R24+R25)/
25 <強度>膜強度は凝固剤が含浸された状態で測定するも
のとする。サンプルが乾燥しないように注意しながら片
刃ナイフを用いて幅5mm、長さ20mmの試験片を作
成する。その際に、試験片の長手方向が複合体プリカー
サーの長辺に平行なものと垂直なものを2種類各2枚以
上作成する。試験片を、一般的な引張試験機に取り付
け、ゲージ長10mm、引張速度20m/minで引張り試
験を実施し破断強度を求める。使用する引張試験機は、
その使用ロードセルが適正なものであれば機種は限定し
ないが、例えば東洋測器株式会社TENSILON UTM-II型な
どを用いることができる。引張試験の実施中も試験片が
乾燥しないように配慮する。測定は、長軸の方位の異な
る2種類の試験片を少なくとも各2枚以上、より望まし
くは5枚以上測定し、それらの平均値を強度として用い
ることとする。 <厚み>破断強度の計算に必要な膜厚は凝固剤含浸状態
で計測する。凝固剤が乾燥しないように注意しながらマ
イクロメーターを用いて複合体プリカーサーの周辺部4
箇所、中央部1箇所で厚みを測定し、その平均値を厚み
とする。また、分子複合体も同様の方法でマイクロメー
ターを用いて測定した5ヶ所の平均値を厚みとする。 <樹脂含浸状態>樹脂含浸状態は、断面の光学顕微鏡観
察により実施する。分子複合体をエポキシ樹脂に包埋
し、60℃で一晩硬化させた後、ミクロトームを用いて
断面を露出させる。また、マトリックス樹脂が熱により
変性するなどエポキシ樹脂に包埋することが困難な場合
には、紫外線硬化形や可視光硬化形の樹脂を用いて常温
以下の温度で包埋する。露出させた断面は、金属顕微鏡
(ニコン社製OPTIPHTO)を用いて観察する。
【0020】(実施例1、比較例1〜4)濃度116%
のポリリン酸を溶剤とした濃度1、6,8,11,14
%のポリ-パラフェニレン-シス-ベンズビスオキサゾー
ルポリマー溶液を2Lのフラスコで重合した。溶剤の濃
度を等しくするために仕込み時の無水燐酸の濃度を調整
した。できあがったドープをスライドグラスに挟み、リ
ンカムホットステージで温調して偏光顕微鏡(ニコン製
ECLIPSE E600 POL)を用いクロスニコル視野で観察し
た。濃度6%では140℃で部分的に異方相が消失して
等方相との混相状態になることが確認された(比較例
1)。濃度8%以上では温度を300℃まで上げても大
部分の視野は光学的異方性を保っていた。このポリ燐酸
濃度とこれらの溶液を厚み0.3mmのポリテトラフロ
ロエチレンシートに挟みプレス機でドープが広がった面
積の換算で2.5MPaの圧力でスペーサー厚み150
ミクロンまでプレスした。プレス板の温度は150℃と
し、5分間所定圧でプレスした後18℃の冷却水を循環
したプレス板で冷却して取り出した。取り出した、個々
のドープシートはポリテトラフロロエチレンシートを剥
がして250mm角に切り出し、清浄な乾燥したガラス
板にのせて60℃、湿度85%の恒温恒湿槽に入れて4
5分間凝固したのちカレンダー処理したポリプロピレン
製メルトブロー不織布にのせ変えて、直径がおよそ10
0mmの平滑なステンレススプールにメルトブロー不織
布を外側に巻き付けて端部をバンドで固定した。このス
プールを35℃の温水で、2時間水洗して複合体用プレ
カーサーを得た。
【0021】これらの、脱溶媒成形体の空隙状態を確認
するために、成形体から3mm角の試料を切り出して、
水をアセトンで置換した後、エポキシ樹脂(LUVEAK 812
/LUVEAK-MNA/LUVEAK-DMP-30=100/89/0.1混合物)で置
換して、厚み2mm直径5mmのシリコンゴム型の中で
硬化させた。アセトン置換及びエポキシ樹脂置換は濃度
を順次高めるように3段階で置換した。これらの硬化後
のエポキシ樹脂コンポジットをダイアモンドナイフで切
断して、金属顕微鏡(ニコン製 OPTIPHOTO)でポリマー
ネットワークを観察した。6%溶液から得た成形体は、
膜を貫通する多数の直径数百ミクロンの空孔にエポキシ
樹脂だけで構成される欠点がみつかった。8%溶液から
得た成形体は均一で良好なポリマーネットワークとエポ
キシ樹脂とのコンポジットが形成されていた。濃度11
%溶液から得たコンポジット(比較例2)濃度14%溶
液から得たコンポジット(比較例3)はマトリックスの
内部への含浸量が少なく薄い物になった。表面にPBO
リッチなスキン層が形成され内部への樹脂含浸量は極め
て少なかった。
【0022】(実施例2、比較例5〜7)濃度116%
のポリリン酸を溶剤とした濃度6,8,11,14%の
ポリ-パラフェニレン-シス-ベンズビスオキサゾールポ
リマー溶液をプレス後ポリテトラフロロエチレンシート
から剥離し、2枚の未延伸ポリプロピレンフィルムに挟
んだ後に135℃で縦横各3倍の延伸倍率で同時2軸延
伸した以外は実施例1、比較例1〜4と同じ方法でプリ
カーサーを作成した。
【0023】(実施例3、4、比較例8〜10)濃度11
6%のポリ燐酸を溶剤とした濃度6,8,11,14%のポリ-パ
ラフェニレン-シス-ベンズビスオキサゾールポリマー溶
液を調合し、スリット幅0.2mm、スリット長さ45mmの
スリットノズルより140〜180℃の温度で吐出して得たフ
ィルム状の溶液を実施例1、比較例1〜4と同様に凝固
・水洗してプリカーサーを得た。また実施例4では、フ
ィルム状ドープを未延伸ポリプロピレンフィルムに挟
み、2軸延伸した後に同様に凝固・水洗してプリカーサ
ーを得た。C2濃度よりも高い11、14%ではノズルか
らの吐出が不安定で良好なフィルム状溶液を得ることが
出来なかった。
【0024】
【表1】
【0025】液晶形成下限濃度C2未満では、ドープの
加工時に流動性が乏しく成形体に空孔欠点が多数発生す
る。また、液晶形成下限濃度C2の1.3倍を超えた濃
度11%ではポリマーネットワークの空隙が小さくなり
マトリックス樹脂がうまく含浸できないことが理解され
る。
【0026】(実施例5)実施例1のプレカーサーフィ
ルムに2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)
ヘキサフルオロプロパン・ジアニドライド(6FDA)
と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニ
ル]ヘキサフルオロプロパン(4BDAF)から得られ
る次に化学式を示す6FDA−4BDAF重合体の5%
ジメチルアセトアミド溶液で置換をして、枠に固定して
110℃で2時間乾燥後、260℃で30分乾燥した。
できあがった複合体の厚みは25μmであった。本発明
により、高耐熱の低誘電率、高強度の電子基板材料を製
造することができる。
【0027】
【化3】
【0028】
【発明の効果】強酸などの特殊溶媒でなければ加工でき
ない種類の剛直性高分子を用いた分子複合材料を、剛直
性ポリマーだけのプレカーサーに他のマトリックス成分
を含浸する方法で高性能な複合材料を製造することが可
能になる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C08L 79:00 C08L 79:00 Fターム(参考) 4F074 AA56 AA72 AA74 AA87 AA97 CB01 CB02 CB12 CB13 CB14 CC10Z CD20 DA03 DA08 DA23 DA31 4F205 AC05 AG20 GA07 GB02 GC06 GE21 GN21 GW41 4F207 AA00 AF16 KA07 KA17

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】剛直性ポリマーの光学異方性下限溶液濃度
    C2に対して1〜1.3倍の溶液を成形したのちに、脱
    溶媒しない条件で凝固剤を吸収させて非流動化させた後
    に脱溶媒することを特徴とする複合体用プレカーサーの
    製造方法。
  2. 【請求項2】溶液がポリベンザゾールポリマーの鉱酸溶
    液であることを特徴とする請求項1記載の複合体用プレ
    カーサーの製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1記載の複合体用プレカーサーにポ
    リマーもしくは反応性分子の溶液を含浸することを特徴
    とする分子複合体の製造方法。
  4. 【請求項4】剛直性ポリマーの光学異方性下限溶液濃度
    C2に対して1〜1.3倍の溶液を成形したのちに、脱
    溶媒しない条件で凝固剤を吸収させて非流動化させた後
    に脱溶媒したプレカーサーの湿潤強度が2〜50kgf/m
    2であることを特徴とする複合体用プレカーサー。
  5. 【請求項5】表面の平均空孔径が0.01〜2μmであるこ
    とを特徴とする請求項4に記載の複合体用プレカーサ
    ー。
  6. 【請求項6】平均厚みが2〜200μmであることを特
    徴とする請求項3に記載の分子複合体。
  7. 【請求項7】強度が1〜100kgf/mm2であることを
    特徴とする請求項6に記載の分子複合体。
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