JP2003009768A - 粉末レギュラーコーヒーの製造方法 - Google Patents

粉末レギュラーコーヒーの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】焙煎コーヒーの粉砕時の香り成分の揮散を防止
することによって、香り成分の含有量の豊富な粉末レギ
ュラーコーヒーの製造方法を提供する。 【解決手段】焙煎コーヒー豆と水とを粉砕機に入れて粉
砕してペースト状分散液とする粉砕工程、及び前記ペー
スト状分散液を乾燥して粉末レギュラーコーヒーとする
乾燥工程を備えたものである粉末レギュラーコーヒーの
製造方法とする。乾燥工程は、ペースト状分散液に水を
添加して希釈し、分散液とする希釈工程、及び分散液を
噴霧乾燥する噴霧乾燥工程を含むもの、もしくは、ペー
スト状分散液を泡立て器により泡立ててフォーム状分散
液とするフォーミング工程、フォーム状分散液を凍結し
て粉砕して凍結顆粒とする凍結粉砕工程、及び凍結顆粒
を真空乾燥する真空乾燥工程を含むものとすることが好
ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、風味に優れ、冷水
や温水にて容易に抽出コーヒー飲料とすることができ、
また菓子類の製造添加物としても使用可能であり、その
ままお湯に分散させてコーヒー飲料として使用可能でも
あり、またインスタントコーヒーの香り添加物としても
使用可能な粉末レギュラーコーヒーの製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】レギュラーコーヒーは、生コーヒー豆を
焙煎機で炒ることによって焙煎コーヒー豆を製造し、そ
の焙煎コーヒー豆を粉砕して粉末コーヒーとし、この粉
末コーヒーに熱水を注いで抽出することによりコーヒー
抽出液として飲用に供される。かかるコーヒーの品質に
おける重要な特性は味と香りである。
【0003】しかるに、豆の粉砕は通常大気下で行われ
るために、焙煎コーヒー豆に保持されている香りは、粉
砕時にそのおよそ40〜50%が空気中に揮散し、焙煎
コーヒー豆が本来有する豊富な風味が飲用に供されてい
ない。
【0004】抽出時の加熱による香りのダメージを抑
え、濃厚な風味を有するコーヒーとしては、ウォーター
ドリッパーを使用し、冷水にて5〜6時間かけて抽出し
て得られるウォータードリップコーヒー等が知られてお
り、一部のコーヒー専門店で提供されているが、高価な
専用器具を必要とし、製造に時間がかかるために一般に
は普及していない。
【0005】近年、コーヒーの飲用ないし食用への用途
が広がっているが、焙煎コーヒー豆の粉砕時の風味の揮
散、変性を有効に防止し、簡便に上記のウォータードリ
ップコーヒーに匹敵する風味成分の豊富なコーヒーを提
供する技術は、これまで知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、焙煎
コーヒーの粉砕時の香り成分の揮散を防止することによ
って、香り成分の含有量の豊富な、冷水ないし温水にて
容易に抽出可能な粉末レギュラーコーヒーの製造方法を
提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の粉末レギュラー
コーヒーの製造方法は、焙煎コーヒー豆と水とを粉砕機
に入れて粉砕してペースト状分散液とする粉砕工程、及
び前記ペースト状分散液を乾燥して粉末レギュラーコー
ヒーとする乾燥工程を備えたものであることを特徴とす
る。
【0008】コーヒーの香り成分には水溶性の化合物が
多く、かかる工程を有する製造方法とすることにより、
粉砕時に焙煎コーヒー豆から放散する香り成分が共存す
る水に溶解して捕捉され、そのまま乾燥されて粒状の豆
に付着して残るために香り成分の多い顆粒状ないし粉末
のレギュラーコーヒーが得られる。
【0009】上述の粉末レギュラーコーヒーの製造方法
において、前記乾燥工程は、前記ペースト状分散液を泡
立て器により泡立ててフォーム状分散液とするフォーミ
ング工程、前記フォーム状分散液を凍結して粉砕して凍
結顆粒とする凍結粉砕工程、及び前記凍結顆粒を真空乾
燥する真空乾燥工程を含むものであることが好ましい。
【0010】かかる乾燥工程とするにことによって、香
り成分の乾燥時の損失を抑制しつつ水分を除去すること
ができ、香り成分の多い粉末レギュラーコーヒーが得ら
れる。
【0011】特に凍結工程の前にフォーミング工程を設
けることにより、凍結顆粒が多孔質となり、真空乾燥工
程に要する時間が短縮でき、好ましい。
【0012】本発明の粉末レギュラーコーヒーの製造方
法においては、前記粉砕工程における焙煎コーヒー豆と
水との比率が、焙煎コーヒー豆:水=1:2〜1:10
(重量比)であることが好ましい。
【0013】焙煎コーヒー豆1に対する水の比率が10
を超えると、水の量が多くなりすぎて香り成分の捕捉率
が上昇しない一方で乾燥にコストがかかりすぎる結果と
なる。焙煎コーヒー豆1に対する水の比率が2未満の場
合には、水の量が少なすぎて香り成分の捕捉が十分では
なく、得られる粉末レギュラーコーヒーの香りが従来品
に近くなってしまう。
【0014】前記粉砕工程における前記水の温度は、5
℃〜70℃であることが好ましい。より好ましくは、5
〜30℃である。
【0015】5℃未満の水は、夏場では冷却して得なけ
ればならず、70℃を超える場合には、香りが揮散しや
すくなる。5〜30℃の水を使用すると、従来の粉砕方
法によれば揮散してしまう焙煎コーヒー豆の有する香り
を効率よく保存することができる。一方30〜70℃の
水を使用すると、コーヒー豆が有する香りから二次的な
加熱による香ばしい香りを生み出すことも可能である。
【0016】上述の製造方法において、水に多価アルコ
ール成分ないしカラメル、蔗糖等の糖分を添加すること
は、好ましい態様である。
【0017】香り成分の中には、多価アルコール成分な
いしカラメル、蔗糖等の糖分への溶解度が高い成分も含
まれており、またこれらの成分は乾燥時に揮発すること
がないため、係る成分の添加により、より有効に粉砕時
の香り成分を捕捉しかつ乾燥時の香り成分の損失も防止
され、香りの優れた粉末レギュラーコーヒーを得ること
ができる。
【0018】前記粉砕工程は、ディスクミル、とりわけ
水冷式のディスクミルを使用して粉砕するものであるこ
とが好ましい。
【0019】ディスクミルを使用することにより、水と
焙煎コーヒー豆の混合物を連続的に、かつ粉砕時の温度
上昇を抑制した状態で粉砕することができる。またディ
スクミルは水冷式とすることが容易であり、粉砕時の温
度上昇の抑制がより効果的に行え、香り成分の揮散並び
に劣化を防止することができる。
【0020】なお、本発明に言う粉末レギュラーコーヒ
ーは、冷水や熱水にて抽出してコーヒー液が得られるも
のであり、粒子径が2mm程度であってもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の粉末レギュラーコーヒー
は、その粗さ即ち平均粒径は、用途に応じて種々に設定
可能である。従来の粉末レギュラーコーヒーにおいて
は、コーヒー特有の香り成分は豆の内部に閉じ込められ
て存在するために、粒子を細かくするほど、香り成分の
揮散が多くなる。本発明の粉末レギュラーコーヒーは、
粉砕時に焙煎コーヒー豆から放散する香りの成分が共存
する水に溶解して捕捉され、そのまま乾燥されて粒状の
豆に付着して残るために、粒子径のサイズに関係なく風
味成分の多い粉末レギュラーコーヒーが得られる。
【0022】荒挽き、中挽き、中細挽き、細挽き等の粉
末レギュラーコーヒーレベルの平均粒径に粉砕した場合
には、従来と同様に袋、缶等の包装容器に収容して粉末
レギュラーコーヒーとして販売可能である。特に通常使
用されるペーパーフィルターを用いて冷水で抽出した場
合、特殊なウォータードリッパーを使用することなく簡
便にウォータードリップコーヒー様のコーヒー抽出液を
得ることができる。
【0023】粉末レギュラーコーヒーの平均粒径を10
〜5μmとした場合には、菓子製品にコーヒー味やコー
ヒー風味を付与するための添加物として使用可能とな
る。
【0024】焙煎コーヒー豆はそれ自体が硬く、粒子が
粗いと菓子類に添加しても単に異物の感触を与えるもの
となるが、平均粒径を10〜5μm程度まで細かくする
と異物としての感触を与えないものとなる。従来は、係
る程度まで粉砕すると香りが殆どないものとなったが、
本発明によれば、粉末レギュラーコーヒーは香り・風味
の優れた添加物として使用可能となる。
【0025】粉末レギュラーコーヒーをさらに微粒子化
した場合には、インスタントコーヒーの香り付け添加物
ないし粉末緑茶のようにそのままお湯に分散させたコー
ヒー飲料として使用可能である。
【0026】即ち、平均粒径を10μm未満になるよう
に粉砕すると、従来の技術では得られなかった、焙煎コ
ーヒー豆を、粕を生じることなく100%利用可能な、
抹茶と同様な粉末レギュラーコーヒーとして利用するこ
とが可能となる。
【0027】従来は、抹茶と同様な粉末レギュラーコー
ヒーとすれば、流通過程を経た後には殆ど香りのない、
非実用的なものとなったが、本発明の製造方法によれ
ば、香り高いものが得られる。
【0028】本発明において、粉砕工程にて使用するミ
ル(粉砕機)は、一般的に焙煎コーヒー豆の粉砕に使用
されるミルのうち、水が共存する状態で粉砕可能なもの
は限定なく使用可能であるが、上述のようにディスクミ
ル、とりわけセラミックスを素材としたディスクミルの
使用が好ましい。ディスクミルは、中心から周方向に複
数の放射状の溝が形成された円盤状のミルであり、商品
名セレンディピターミニ(増幸産業(株)製)等の市販
品が使用可能である。
【0029】凍結・真空乾燥による乾燥工程による場
合、フォーミング工程において使用する泡立て器として
は、密閉された容器内で炭酸ガスや窒素ガスなどの不活
性ガスを噴射しながら撹拌できる構成を有するものの使
用が好ましいが、食品や化粧品の分野において使用され
る泡立て器も使用可能であり、TM94(テスコム社
製)等が好適な装置として例示される。凍結したフォー
ム状分散液を粉砕して凍結顆粒とする粉砕機としては、
公知のロール式粉砕機を使用することが好ましいが、粉
砕後も凍結状態を保持できるように、−30〜−40℃
の環境下で粉砕する。具体的には、フリーズドライタイ
プのインスタントコーヒーの製造に使用される凍結粉砕
システム(アトラス社製、レイボルト社製等)、アイス
クラッシャー(タイガークラウン社製)が好適な粉砕機
として例示される。
【0030】
【実施例】以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実
施例等について説明する。
【0031】(実施例1)焙煎コーヒー豆を2倍量の水
(焙煎コーヒー豆:水=1:2重量比)と共に、クリア
ランスを1.5mmに調節したディスクミル(商品名セ
レンディピターミニ、増幸産業(株)製)に送り込んで
粉砕し、平均粒径が1.5mmのペースト状のコーヒー
分散液を得た(粉砕工程)。得られたフォーム状分散液
を約−40℃の環境下にてに急速凍結し、そのまま同環
境下に保持して、フォーム状分散液を内部まで凍結させ
た。次いで凍結したフォーム状分散液を同じ−40℃の
環境下にてアイスクラッシャー(タイガークラウン社
製)を使用して粉砕し、凍結顆粒を得た。凍結顆粒は、
真空凍結乾燥機により水分を除去して顆粒状の粉末レギ
ュラーコーヒーを得た。
【0032】(実施例2)焙煎コーヒー豆を2倍量の水
(焙煎コーヒー豆:水=1:2重量比)と共に、クリア
ランスを60μmに調節したディスクミル(商品名セレ
ンディピターミニ、増幸産業(株)製)に送り込んで粉
砕し、平均粒径が60μmのペースト状のコーヒー分散
液を得た(粉砕工程)。このペースト状のコーヒー分散
液を、泡立て器TM94(テスコム社製)を使用して泡
立て処理(フォーミング処理)を行い、フォーム状分散
液とした(フォーミング工程)。得られたフォーム状分
散液を約−40℃の環境下にてに急速凍結し、そのまま
同環境下に保持して、フォーム状分散液を内部まで凍結
させた。次いで凍結したフォーム状分散液を同じ−40
℃の環境下にてアイスクラッシャー(タイガークラウン
社製)を使用して粉砕し、凍結顆粒を得た。凍結顆粒
は、真空凍結乾燥機により水分を除去して顆粒状の粉末
レギュラーコーヒーを得た。
【0033】(比較例)実施例において使用したのと同
じ焙煎コーヒー豆を、従来法(乾式法)に従ってそのま
ま粉砕し、平均粒径が1.5μmの粉末レギュラーコー
ヒーを得た。
【0034】<評価>実施例1、2並びに比較例にて得
られたレギュラーコーヒー30gを秤量し、ペーパーフ
ィルターを用いて450mlの水を使用して抽出し、コ
ーヒー抽出液を得た。水は5℃、20℃の2種の温度の
ものを使用した。
【0035】実施例1並びに比較例にて得られたコーヒ
ー抽出液について、BRIX,pH,並びにガスクロマ
トグラフィーにより香気成分量を測定した。結果は表1
に示した。
【0036】実施例2については、測定は行わずに、官
能評価のみを行った。結果は、実施例1とほぼ同等の風
味の優れたコーヒー液であった。
【0037】
【表1】 この表1の結果から、本発明の粉末レギュラーコーヒー
は、抽出に水を使用した場合でも、従来の粉末レギュラ
ーコーヒーでは得られなかった、濃厚でしかも香気成分
の多い、従って風味に優れたコーヒー抽出液を得られる
ことが明らかである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡田 明 兵庫県神戸市中央区港島中町7丁目7番7 ユーシーシー上島珈琲株式会社グループ 総合企画室内 (72)発明者 久守 博 兵庫県神戸市中央区港島中町7丁目7番7 ユーシーシー上島珈琲株式会社グループ 総合企画室内 Fターム(参考) 4B027 FB21 FB22 FC01 FE02 FQ13

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焙煎コーヒー豆と水とを粉砕機に入れて
    粉砕してペースト状分散液とする粉砕工程、及び前記ペ
    ースト状分散液を乾燥して粉末レギュラーコーヒーとす
    る乾燥工程とを備えた粉末レギュラーコーヒーの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記乾燥工程は、前記ペースト状分散液
    を泡立て器により泡立ててフォーム状分散液とするフォ
    ーミング工程、前記フォーム状分散液を凍結し、粉砕し
    て凍結顆粒とする凍結粉砕工程、及び前記凍結顆粒を真
    空乾燥する真空乾燥工程を含むものである請求項1に記
    載の粉末レギュラーコーヒーの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記粉砕工程における焙煎コーヒー豆と
    水の比率が、焙煎コーヒー豆:水=1:2〜1:10
    (重量比)である請求項1又は2に記載の粉末レギュラ
    ーコーヒーの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記粉砕工程における前記水の温度が5
    ℃〜70℃である請求項1〜3のいずれかに記載の粉末
    レギュラーコーヒーの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記粉砕工程は、ディスクミルを使用し
    て粉砕するものである請求項1〜4のいずれかに記載の
    粉末レギュラーコーヒーの製造方法。
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