JP3694271B2 - 粉末レギュラーコーヒーの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、風味に優れ、冷水や温水にて容易に抽出コーヒー飲料とすることができ、また菓子類の製造添加物としても使用可能であり、そのままお湯に分散させてコーヒー飲料として使用可能でもあり、またインスタントコーヒーの香り添加物としても使用可能な粉末レギュラーコーヒーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レギュラーコーヒーは、生コーヒー豆を焙煎機で炒ることによって焙煎コーヒー豆を製造し、その焙煎コーヒー豆を粉砕して粉末コーヒーとし、この粉末コーヒーに熱水を注いで抽出することによりコーヒー抽出液として飲用に供される。かかるコーヒーの品質における重要な特性は味と香りである。
【0003】
しかるに、豆の粉砕は通常大気下で行われるために、焙煎コーヒー豆に保持されている香りは、粉砕時にそのおよそ40〜50%が空気中に揮散し、焙煎コーヒー豆が本来有する豊富な風味が飲用に供されていない。
【0004】
抽出時の加熱による香りのダメージを抑え、濃厚な風味を有するコーヒーとしては、ウォータードリッパーを使用し、冷水にて5〜6時間かけて抽出して得られるウォータードリップコーヒー等が知られており、一部のコーヒー専門店で提供されているが、高価な専用器具を必要とし、製造に時間がかかるために一般には普及していない。
【0005】
近年、コーヒーの飲用ないし食用への用途が広がっているが、焙煎コーヒー豆の粉砕時の風味の揮散、変性を有効に防止し、簡便に上記のウォータードリップコーヒーに匹敵する風味成分の豊富なコーヒーを提供する技術は、これまで知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、焙煎コーヒーの粉砕時の香り成分の揮散を防止することによって、香り成分の含有量の豊富な、冷水ないし温水にて容易に抽出可能な粉末レギュラーコーヒーの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の粉末レギュラーコーヒーの製造方法は、焙煎コーヒー豆と水とを粉砕機に入れて粉砕してペースト状分散液とする粉砕工程、及び前記ペースト状分散液を乾燥して粉末レギュラーコーヒーとする乾燥工程とを備えた粉末レギュラーコーヒーの製造方法において、前記乾燥工程は、前記ペースト状分散液を泡立て器により泡立ててフォーム状分散液とするフォーミング工程、前記フォーム状分散液を凍結し、粉砕して凍結顆粒とする凍結粉砕工程、及び前記凍結顆粒を真空乾燥する真空乾燥工程を含むものであることを特徴とする。
【0008】
コーヒーの香り成分には水溶性の化合物が多く、かかる工程を有する製造方法とすることにより、粉砕時に焙煎コーヒー豆から放散する香り成分が共存する水に溶解して捕捉され、そのまま乾燥されて粒状の豆に付着して残るために香り成分の多い顆粒状ないし粉末のレギュラーコーヒーが得られる。
そして、上述の粉末レギュラーコーヒーの製造方法において、前記乾燥工程は、前記ペースト状分散液を泡立て器により泡立ててフォーム状分散液とするフォーミング工程、前記フォーム状分散液を凍結して粉砕して凍結顆粒とする凍結粉砕工程、及び前記凍結顆粒を真空乾燥する真空乾燥工程を含むものである。
【0010】
かかる乾燥工程とすることによって、香り成分の乾燥時の損失を抑制しつつ水分を除去することができ、香り成分の多い粉末レギュラーコーヒーが得られる。
【0011】
特に凍結工程の前にフォーミング工程を設けることにより、凍結顆粒が多孔質となり、真空乾燥工程に要する時間が短縮でき、好ましい。
【0012】
本発明の粉末レギュラーコーヒーの製造方法においては、前記粉砕工程における焙煎コーヒー豆と水との比率が、焙煎コーヒー豆:水=1:2〜1:10(重量比)であることが好ましい。
【0013】
焙煎コーヒー豆1に対する水の比率が10を超えると、水の量が多くなりすぎて香り成分の捕捉率が上昇しない一方で乾燥にコストがかかりすぎる結果となる。焙煎コーヒー豆1に対する水の比率が2未満の場合には、水の量が少なすぎて香り成分の捕捉が十分ではなく、得られる粉末レギュラーコーヒーの香りが従来品に近くなってしまう。
【0014】
前記粉砕工程における前記水の温度は、5℃〜70℃であることが好ましい。より好ましくは、5〜30℃である。
【0015】
5℃未満の水は、夏場では冷却して得なければならず、70℃を超える場合には、香りが揮散しやすくなる。5〜30℃の水を使用すると、従来の粉砕方法によれば揮散してしまう焙煎コーヒー豆の有する香りを効率よく保存することができる。一方30〜70℃の水を使用すると、コーヒー豆が有する香りから二次的な加熱による香ばしい香りを生み出すことも可能である。
【0016】
上述の製造方法において、水に多価アルコール成分ないしカラメル、蔗糖等の糖分を添加することは、好ましい態様である。
【0017】
香り成分の中には、多価アルコール成分ないしカラメル、蔗糖等の糖分への溶解度が高い成分も含まれており、またこれらの成分は乾燥時に揮発することがないため、係る成分の添加により、より有効に粉砕時の香り成分を捕捉しかつ乾燥時の香り成分の損失も防止され、香りの優れた粉末レギュラーコーヒーを得ることができる。
【0018】
前記粉砕工程は、ディスクミル、とりわけ水冷式のディスクミルを使用して粉砕するものであることが好ましい。
【0019】
ディスクミルを使用することにより、水と焙煎コーヒー豆の混合物を連続的に、かつ粉砕時の温度上昇を抑制した状態で粉砕することができる。またディスクミルは水冷式とすることが容易であり、粉砕時の温度上昇の抑制がより効果的に行え、香り成分の揮散並びに劣化を防止することができる。
【0020】
なお、本発明に言う粉末レギュラーコーヒーは、冷水や熱水にて抽出してコーヒー液が得られるものであり、粒子径が2mm程度であってもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の粉末レギュラーコーヒーは、その粗さ即ち平均粒径は、用途に応じて種々に設定可能である。従来の粉末レギュラーコーヒーにおいては、コーヒー特有の香り成分は豆の内部に閉じ込められて存在するために、粒子を細かくするほど、香り成分の揮散が多くなる。本発明の粉末レギュラーコーヒーは、粉砕時に焙煎コーヒー豆から放散する香りの成分が共存する水に溶解して捕捉され、そのまま乾燥されて粒状の豆に付着して残るために、粒子径のサイズに関係なく風味成分の多い粉末レギュラーコーヒーが得られる。
【0022】
荒挽き、中挽き、中細挽き、細挽き等の粉末レギュラーコーヒーレベルの平均粒径に粉砕した場合には、従来と同様に袋、缶等の包装容器に収容して粉末レギュラーコーヒーとして販売可能である。特に通常使用されるペーパーフィルターを用いて冷水で抽出した場合、特殊なウォータードリッパーを使用することなく簡便にウォータードリップコーヒー様のコーヒー抽出液を得ることができる。
【0023】
粉末レギュラーコーヒーの平均粒径を10〜5μmとした場合には、菓子製品にコーヒー味やコーヒー風味を付与するための添加物として使用可能となる。
【0024】
焙煎コーヒー豆はそれ自体が硬く、粒子が粗いと菓子類に添加しても単に異物の感触を与えるものとなるが、平均粒径を10〜5μm程度まで細かくすると異物としての感触を与えないものとなる。従来は、係る程度まで粉砕すると香りが殆どないものとなったが、本発明によれば、粉末レギュラーコーヒーは香り・風味の優れた添加物として使用可能となる。
【0025】
粉末レギュラーコーヒーをさらに微粒子化した場合には、インスタントコーヒーの香り付け添加物ないし粉末緑茶のようにそのままお湯に分散させたコーヒー飲料として使用可能である。
【0026】
即ち、平均粒径を10μm未満になるように粉砕すると、従来の技術では得られなかった、焙煎コーヒー豆を、粕を生じることなく100%利用可能な、抹茶と同様な粉末レギュラーコーヒーとして利用することが可能となる。
【0027】
従来は、抹茶と同様な粉末レギュラーコーヒーとすれば、流通過程を経た後には殆ど香りのない、非実用的なものとなったが、本発明の製造方法によれば、香り高いものが得られる。
【0028】
本発明において、粉砕工程にて使用するミル(粉砕機)は、一般的に焙煎コーヒー豆の粉砕に使用されるミルのうち、水が共存する状態で粉砕可能なものは限定なく使用可能であるが、上述のようにディスクミル、とりわけセラミックスを素材としたディスクミルの使用が好ましい。ディスクミルは、中心から周方向に複数の放射状の溝が形成された円盤状のミルであり、商品名セレンディピターミニ(増幸産業(株)製)等の市販品が使用可能である。
【0029】
凍結・真空乾燥による乾燥工程による場合、フォーミング工程において使用する泡立て器としては、密閉された容器内で炭酸ガスや窒素ガスなどの不活性ガスを噴射しながら撹拌できる構成を有するものの使用が好ましいが、食品や化粧品の分野において使用される泡立て器も使用可能であり、TM94(テスコム社製)等が好適な装置として例示される。
凍結したフォーム状分散液を粉砕して凍結顆粒とする粉砕機としては、公知のロール式粉砕機を使用することが好ましいが、粉砕後も凍結状態を保持できるように、−30〜−40℃の環境下で粉砕する。具体的には、フリーズドライタイプのインスタントコーヒーの製造に使用される凍結粉砕システム(アトラス社製、レイボルト社製等)、アイスクラッシャー(タイガークラウン社製)が好適な粉砕機として例示される。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0031】
(実施例1)
焙煎コーヒー豆を2倍量の水(焙煎コーヒー豆:水=1:2重量比)と共に、クリアランスを1.5mmに調節したディスクミル(商品名セレンディピターミニ、増幸産業(株)製)に送り込んで粉砕し、平均粒径が1.5mmのペースト状のコーヒー分散液を得た(粉砕工程)。
得られたフォーム状分散液を約−40℃の環境下にてに急速凍結し、そのまま同環境下に保持して、フォーム状分散液を内部まで凍結させた。次いで凍結したフォーム状分散液を同じ−40℃の環境下にてアイスクラッシャー(タイガークラウン社製)を使用して粉砕し、凍結顆粒を得た。
凍結顆粒は、真空凍結乾燥機により水分を除去して顆粒状の粉末レギュラーコーヒーを得た。
【0032】
(実施例2)
焙煎コーヒー豆を2倍量の水(焙煎コーヒー豆:水=1:2重量比)と共に、クリアランスを60μmに調節したディスクミル(商品名セレンディピターミニ、増幸産業(株)製)に送り込んで粉砕し、平均粒径が60μmのペースト状のコーヒー分散液を得た(粉砕工程)。
このペースト状のコーヒー分散液を、泡立て器TM94(テスコム社製)を使用して泡立て処理(フォーミング処理)を行い、フォーム状分散液とした(フォーミング工程)。
得られたフォーム状分散液を約−40℃の環境下にてに急速凍結し、そのまま同環境下に保持して、フォーム状分散液を内部まで凍結させた。次いで凍結したフォーム状分散液を同じ−40℃の環境下にてアイスクラッシャー(タイガークラウン社製)を使用して粉砕し、凍結顆粒を得た。
凍結顆粒は、真空凍結乾燥機により水分を除去して顆粒状の粉末レギュラーコーヒーを得た。
【0033】
(比較例)実施例において使用したのと同じ焙煎コーヒー豆を、従来法(乾式法)に従ってそのまま粉砕し、平均粒径が1.5mの粉末レギュラーコーヒーを得た。
【0034】
<評価>
実施例1、2並びに比較例にて得られたレギュラーコーヒー30gを秤量し、ペーパーフィルターを用いて450mlの水を使用して抽出し、コーヒー抽出液を得た。水は5℃、20℃の2種の温度のものを使用した。
【0035】
実施例1並びに比較例にて得られたコーヒー抽出液について、BRIX,pH,並びにガスクロマトグラフィーにより香気成分量を測定した。結果は表1に示した。
【0036】
実施例2については、測定は行わずに、官能評価のみを行った。結果は、実施例1とほぼ同等の風味の優れたコーヒー液であった。
【0037】
【表1】
Figure 0003694271
この表1の結果から、本発明の粉末レギュラーコーヒーは、抽出に水を使用した場合でも、従来の粉末レギュラーコーヒーでは得られなかった、濃厚でしかも香気成分の多い、従って風味に優れたコーヒー抽出液を得られることが明らかである。

Claims (4)

  1. 焙煎コーヒー豆と水とを粉砕機に入れて粉砕してペースト状分散液とする粉砕工程、及び前記ペースト状分散液を乾燥して粉末レギュラーコーヒーとする乾燥工程とを備えた粉末レギュラーコーヒーの製造方法において、前記乾燥工程は、前記ペースト状分散液を泡立て器により泡立ててフォーム状分散液とするフォーミング工程、前記フォーム状分散液を凍結し、粉砕して凍結顆粒とする凍結粉砕工程、及び前記凍結顆粒を真空乾燥する真空乾燥工程を含むものである粉末レギュラーコーヒーの製造方法。
  2. 前記粉砕工程における焙煎コーヒー豆と水の比率が、焙煎コーヒー豆:水=1:2〜1:10(重量比)である請求項1に記載の粉末レギュラーコーヒーの製造方法。
  3. 前記粉砕工程における前記水の温度が5℃〜70℃である請求項1又は2に記載の粉末レギュラーコーヒーの製造方法。
  4. 前記粉砕工程は、ディスクミルを使用して粉砕するものである請求項1〜3のいずれかに記載の粉末レギュラーコーヒーの製造方法。
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