JP2003009579A - 電動機の制御装置及び制御方法 - Google Patents

電動機の制御装置及び制御方法

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JP2003009579A JP2001187580A JP2001187580A JP2003009579A JP 2003009579 A JP2003009579 A JP 2003009579A JP 2001187580 A JP2001187580 A JP 2001187580A JP 2001187580 A JP2001187580 A JP 2001187580A JP 2003009579 A JP2003009579 A JP 2003009579A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】モード移行に伴うトルクショックの発生を極力
回避し、モータ運転特性の改善を図る。 【解決手段】ロータ回転速度が極低速の所定値よりも小
さい固定モードのときは検出された位相角度内の固定値
を用いてロータ位相を算出し、ロータ回転速度が前記所
定値よりも大きい推定モードのときは検出された位相角
度から補完演算によりロータ位相を算出し、算出された
ロータ位相と目標トルクに基づいてステータコイルに印
加する電流を演算する電流制御手段とを備える。ロータ
位相算出の固定モードから推定モードへの移行を判定
し、この移行が判定されたときに固定モードでのモータ
トルクと推定モードでのモータトルクが同一もしくは徐
々に変化するようにステータコイルに印加する電流を制
御する。これによりモード移行に伴いトルクショックの
発生を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電動機の制御装置及
び制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】永久磁石型同期モータのようなブラシレ
スモータの回転を制御する場合、ロータの回転角位置
(ロータ位相)に応じてステータコイルに流す電流制御
を行なうことになるので、ロータ位相を検出するセンサ
が必須となる。
【0003】このようなセンサとしては、高い分解能を
有するいわゆるレゾルバが知られているが、このレゾル
バは一般的に高価であるため、分解能が低くても安価な
センサが望まれることもある。例えば特開平9−747
90号公報に開示された制御装置では、センサの分解能
を電気角で60度まで落とし、より詳細なロータ位相に
ついては補間演算を行なって推定するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところでこの装置にお
いては、ロータ位相の補間演算を行なうにはロータがあ
る程度以上の速度で回転している必要があり、ロータ回
転速度がゼロであるモータ始動時や極低回転速度で回転
しているときは有効な補間演算を行なうことができな
い。そこで、ロータ回転速度が所定の速度より高いとき
だけロータ位相の補間演算を行なって電流制御用のロー
タ位相を求め(以下、この制御モードを推定モードと言
う)、所定の速度より低いときにはセンサ出力から判別
可能なロータ位相範囲の中央値等に電流制御用のロータ
位相を固定する(以下、この制御モードを固定モードを
言う)ことが考えられる。
【0005】しかしながら、このような電流制御を行な
う場合、推定モードでは真のロータ位相に対応して電流
制御できるの対し、固定モードでは仮のロータ位相に対
応して電流制御するため、相対的にモータトルクが低下
する。このように推定モード時と固定モード時では実際
に得られるモータトルクが異なるため、ロータ回転速度
を上昇させていく途中で、固定モードから推定モードへ
と移行するときにトルクショックが発生し、モータの運
転性を損なわれるという問題がある。
【0006】本発明はこのような問題を解決することを
目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、ロータの
回転位相を検出する手段と、ロータ回転速度を検出する
手段と、ロータ回転速度が極低速の所定値よりも小さい
固定モードのときは検出された位相角度内の固定値を用
いてロータ位相を算出する手段と、ロータ回転速度が前
記所定値よりも大きい推定モードのときは検出された位
相角度から補完演算によりロータ位相を算出する手段
と、算出されたロータ位相と目標トルクに基づいてステ
ータコイルに印加する電流を演算する電流制御手段とを
備えた電動機の制御装置において、ロータ位相算出の固
定モードから推定モードへの移行を判定する手段と、こ
の移行が判定されたときに固定モードでのモータトルク
と推定モードでのモータトルクが同一もしくは徐々に変
化するようにステータコイルに印加する電流を制御する
モード移行制御手段とを備える。
【0008】第2の発明は、第1の発明において、前記
ステータコイルに印加される電流は、同一の目標トルク
に対して固定モードの電流値が推定モードでの電流値よ
りも高くなるように設定される。
【0009】第3の発明は、第1または第2の発明にお
いて、前記ステータコイルに印加される電流は、目標ト
ルクが所定値よりも大きいときは、固定モードから推定
モードへ移行するときに、いったん所定値だけ低下した
後に徐々に増加するように設定される。
【0010】第4の発明は、第1の発明において、前記
固定モードから推定モードへの移行時に、ステータコイ
ルに印加される電流を制御するために、目標トルクに基
づいて設定されるトルクの指令値をいったん所定値だけ
低下させた後に徐々に目標トルクまで増加するように設
定する。
【0011】第5の発明は、第4の発明において、前記
低下させるトルク指令の所定値はモード移行時の目標ト
ルクに基づいて設定される。
【0012】第6の発明は、ロータの回転位相を検出
し、ロータ回転速度を検出し、ロータ回転速度が極低速
の所定値よりも小さい固定モードのときは検出された位
相角度内の固定値を用いてロータ位相を算出し、ロータ
回転速度が前記所定値よりも大きい推定モードのときは
検出された位相角度から補完演算によりロータ位相を算
出し、算出されたロータ位相と目標トルクに基づいてス
テータコイルに印加する電流を演算し、制御する電動機
の制御方法において、ロータ位相算出の固定モードから
推定モードへの移行を判定し、この移行が判定されたと
きに固定モードでのモータトルクと推定モードでのモー
タトルクが同一もしくは徐々に変化するようにステータ
コイルに印加する電流を制御してモード移行を行う。
【0013】
【作用・効果】第1から第3、さらには第6の発明によ
れば、固定モードから推定モードに移行するときに、移
行の前後でモータトルクが同一または徐々に変化するよ
うにステータコイルに供給する電流を制御するので、ロ
ータ位相検出のために分解能の低い安価な検出手段を用
いても、モード移行に伴うトルクショックの発生を極力
回避することが可能となり、モータ運転特性の改善が図
れる。
【0014】第4、5の発明では、モード移行に伴い、
目標トルクから設定されるトルク指令値を変化させるこ
とにより、目標トルクに応じて決まる制御電流マップを
切換えることなく、ステータコイルに供給される電流特
性を切換えることができ、制御系の簡略化が図れる。
【0015】
【実施形態】以下本発明の実施の形態を図面に基づいて
説明する。
【0016】第1の実施の形態を示す図1において、1
は永久磁石型同期モータ(単にモータともいう)、2は
ロータ位相を検出するロータ位相検出器、3は入力され
る目標トルクとロータ位相に基づいてモータ1の指令値
を出力するモータコントロールユニット、4はインバー
タドライバ、5は前記指令値に応じた駆動電流をステー
タコイルに印加するインバータ、6はバッテリである。
【0017】ロータ位相検出器2は第1〜第3ホール素
子2a〜2cと、モータ1のロータと一緒に回転し、ロ
ータ磁極と同様の磁極をもつように磁化された円盤とか
ら構成される。
【0018】このロータ位相検出器2は第1〜第3ホー
ル素子2a〜2cが、円盤2dの回転に伴い、図2に示
すようなオン・オフ信号を出力する。この信号の組合わ
せから、電気角60度の分解能でロータ位相を検出する
ことができる。例えば、2a=オン、2b=オン、2c
=オフのとき、ロータ位相は120度から180度の間
にあることが分かる。
【0019】モータ1のトルク特性を図3に示す。ロー
タ位相とステータが作る回転磁界の位相とが一致してい
るとき、ロータに生じるトルクは0となり(点A)、こ
の点Aから回転磁界の位相を進めていくとトルクが増大
し、点Bで最大となった後、さらに回転磁界の位相を進
めていくとトルクが減少する。このようなトルク特性
(トルクカーブ)は、基本的にはモータ1の諸元に応じ
て定まり、モータ1の運転条件(回転速度等)によって
変化する。
【0020】回転磁界位相をロータ位相よりπ/2程度
進めておくと最大トルクが得られるので、回転磁界位相
をロータ位相よりπ/2程度進めた状態を基本とし、こ
の基本状態からのずれ角で回転磁界位相を表現するが一
般的であるため、本明細書でもこれに従う。以下、この
ずれ角をベータ角βと称する。
【0021】このベータ角βは、ステータコイルに供給
する電流を界磁分電流(d軸電流)とトルク分電流(q
軸電流)とに分けてベクトル表示した場合、電流ベクト
ルがq軸となす角度に相当する(図4)。
【0022】モータコントロールユニット3がモータ1
の制御を行なう場合、ロータの回転速度と目標トルクと
に応じてベータ角βと電流ベクトルの長さI(ステータ
コイルに供給する交流電流の振幅に相当)を決定し、こ
れらβ、Iから目標d軸電流tIdと目標q軸電流tI
qを求め、これらtId、tIqとロータ位相θとから
インバータ指令値を求め、この指令値に基づいてインバ
ータ5を駆動し、モータ1のステータコイルに流れる電
流を制御する。
【0023】ロータ位相検出器2は、前述の通り角度分
解能が60度しかないが、ロータがある程度の速度で回
転しているときは、前記したような推定演算によって6
0度以下についても、比較的正確なロータ位相θを得る
ことが可能であり、本発明においても、ロータ回転速度
が所定の低速度に相当するV0以上のときはロータ位相
θの推定演算を行なう(推定モード)。
【0024】しかしロータが回転していないときや極低
速で回転しているときはロータ位相θを正確に推定する
ことができない。そこで、ロータ回転速度が所定の低速
度V0より小さいときは判別されている区間内の固定値
をロータ位相θとする(固定モード)。例えば、ロータ
位相が120度から180度の区間にあることが分かっ
ているときには、ロータ位相θをその中間値の150度
に固定して電流制御を行なう。
【0025】固定モードによる電流制御では、制御上の
ベータ角βを最適値にしても、実際の回転磁界位相は最
適値の前後で変動することになり、ロータの真の位相に
応じた最適な電流制御を行なった場合のトルクより実際
に得られる平均トルクが小さくなる。このような状態か
ら、ロータ位相の正確な推定値に応じた最適な電流制御
が行なえる推定モードへ移行すると、トルクが急増して
モータ1の運転性が悪化する。このようなトルクショッ
クを回避するため、本実施形態では、固定モードにおけ
る電流振幅を推定モードにおける電流振幅より大き目に
設定し、両モードにおけるトルクを等しくするようにな
っている。
【0026】ただし、インバータ5が出力可能な電流振
幅には上限があるので、上記のような電流振幅を設定し
ようとしても、この上限を越えて固定モードの電流振幅
を設定することはできない。換言すると、推定モードで
の制御時にインバータ5が最大の電流振幅を出力して得
られるトルクと同じトルクを固定モードで得ることは不
可能である。このため、インバータ5の能力を越えた目
標トルクが設定されているとき(インバータ5が最大の
電流振幅を出力しているとき)にモード移行が発生する
と、上記の電流振幅の設定によるトルクショックの回避
は実施できなくなる。
【0027】そこでこのような場合は、電流制御のため
のトルク指令値にリミッタ処理を施すと共に、このトル
クリミッタの設定を工夫することでトルク指令値の急変
を回避し、高負荷運転時のモード移行に伴なうトルクシ
ョックの発生を回避するようにしている。
【0028】以下、モータコントロールユニット3が実
行する制御動作の詳細を図5〜図9を用いて説明する。
【0029】まず、図5はロータ回転速度の算出ルーチ
ンであり、このルーチンは3つのホール素子2a〜2c
の何れかの出力が変化(オフ→オン、オン→オフ)する
毎に、すなわち、ロータが電気角で60度回転する毎に
実行される。
【0030】ステップ1では一定微小時間毎にカウント
アップされるタイマーカウンタから現在のカウント値を
取得し、その値をt0とする。ステップ2でカウント値
t1の値をt2へ、ステップS1で取得したt0の値を
t1へ、順次に代入する。なお、t1は現在の時刻を表
し、t2は前回本ルーチンが実行されたときの時刻を表
す。
【0031】そしてステップ3ではロータが60度回転
するのに要した時間(t1−t2)で60度を除し、こ
れによりロータ回転速度Vを算出する。
【0032】次に図6は各指令値を算出するためのルー
チンであり、メイン制御ルーチンの所定周期毎に実行さ
れる。
【0033】このルーチンで算出された指令値はインバ
ータドライバ4へ送られ、インバータドライバ4はこの
指令値に基づいてPWM信号を生成し、インバータ5の
スイッチング素子がこのPWM信号に応じてオン・オフ
することでモータ1のステータコイルに流れる電流が制
御される。
【0034】ステップS10では、外部から与えられる
目標トルクtTにリミッタ処理を施してトルク指令値T
oを算出する。この指令値Toを算出するための詳細は
後で説明する図7に示す。
【0035】ステップS20ではロータ位相θを算出す
る。このロータ位相θを算出する詳細も後で説明する図
8に示す。
【0036】ステップS30では、ロータ回転速度Vと
ステップS10で算出したトルク指令値Toとに基づい
て、ベータ角βを算出する。具体的には、VとToとに
対応させてβを記憶させてある制御マップから値をルッ
クアップする。
【0037】さらにステップS40では電流振幅Iを算
出する。これについても詳細は後で説明する図9に示
す。
【0038】ステップS50ではベータ角βと電流振幅
Iとに基づき、目標d軸電流tIdと目標q軸電流tI
qとを算出する。
【0039】そして、ステップS60では、目標d軸電
流tId、目標q軸電流tIq、ロータ位相θに基づ
き、指令値を算出する。
【0040】図7は前記したトルク指令値の算出サブル
ーチンである。
【0041】ステップS100では、ロータ回転速度V
が所定値V0より小さいか否かを判断する、すなわちモ
ード判断を行う。
【0042】ロータ回転速度Vが所定値V0より小さい
ときは固定モードであり、ステップS101へ進み、固
定モード用トルクリミッタ値TIsをトルクリミッタ値
TIpに設定する。固定モード用トルクリミッタ値TI
sは、インバータ5の最大電流振幅でモータを運転した
ときの平均トルクであり、ロータの真の位相に応じた最
適な電流制御を行なった場合のトルクより固定モード制
御時の平均トルクが小さくなることに対応した値となっ
ている。
【0043】ロータ回転速度Vが所定値V0以上のとき
は推定モードであり、ステップS102へ進み、現在の
トルクリミッタ値TIpが推定モード用トルクリミッタ
値TInより小さいか否かを判断する。
【0044】推定モード用トルクリミッタ値TInは、
ロータ位相の正確な推定値に応じた最適な電流制御を行
い、かつインバータ5の最大電流振幅でモータを運転し
たときのトルクに相当する。固定モードから推定モード
へ移行した直後はトルクリミッタ値TIpが推定モード
用トルクリミッタ値TInより小さい状態となってい
る。
【0045】現在のトルクリミッタ値TIpが推定モー
ド用トルクリミッタ値TInより小さいときはステップ
S103へ進み、現在のトルクリミッタ値TIpに所定
の加算値△TIを加えて新たなトルクリミッタ値TIp
を算出する。
【0046】反対に現在のトルクリミッタ値TIpが推
定モード用トルクリミッタ値TIn以上であると判断さ
れた場合はステップS104へ進み、推定モード用トル
クリミッタ値TInを新たなトルクリミッタ値TIpに
設定する。
【0047】これらの処理により、固定モードから推定
モードヘの移行が発生したとき、トルクリミッタ値TI
pは固定モード用トルクリミッタ値Tlsから推定モー
ド用トルクリミッタ値TInへ徐々に近づくことにな
る。
【0048】ステップS105では、外部から与えられ
る目標トルクtTがトルクリミッタ値TIpより大きい
か否かを判断する。目標トルクtTがトルクリミッタ値
TIpより大きいときはステップS106へ進み、トル
ク指令値Toをトルクリミッタ値TIpに設定する。
【0049】しかし目標トルクtTがトルクリミッタ値
TIp以下であるときはステップS107へ進み、目標
トルクtTをそのままトルク指令値Toとする。
【0050】以上の処理により、インバータ5の能力を
越える目標トルクtTが設定されているときにモード移
行が発生すると、固定モード用トルクリミッタ値TIs
から推定モード用トルクリミッタ値TInへ除変設定さ
れるトルクリミッタ値TIpに応じてトルク指令値To
が徐々に変化することになり、高負荷運転時のモード移
行に伴なうトルクショックの発生が回避できる。
【0051】図8は前記したロータ位相を算出するため
のサブルーチンである。
【0052】まず、ステップS200では、ロータ位相
検出器2の第1〜第3ホール素子2a〜2cのオン・オ
フ信号の組合わせから、ロータ位相の区間判別を行な
い、判別された区間の先頭のロータ位相をθ1とする。
例えば、2a=オン、2b=オン、2c=オフのとき、
ロータ位相は120度から180度の問にあることが判
別でき、この場合θ1を120度とする。
【0053】ステップS201でタイマーカウンタ(図
5のステップS1のものと同じ)から現在のカウント値
を取得し、その値をtiとする。
【0054】ステップS202では、図5の処理で算出
したロータ回転速度Vが所定値V0より小さいか否かを
判断する。
【0055】ロータ回転速度Vが所定値V0より小さい
場合、すなわち固定モードのときはステップS203に
進み、ロータ位相θ1に所定値θaを加えた値をロータ
位相θとする。この所定値θaは予め決められる固定値
である。
【0056】ロータが停止している場合、ロータの位相
がステップS200で判別された区間内のどこにあるか
を推定することは不可能である。このような場合、判別
区間の中央値をロータ位相θとする、すなわち、θa=
30度とする。
【0057】前記したロータ回転速度Vが所定値V0以
上である場合、すなわち推定モードのときはステップS
204に進み、公知の位相推定演算によってロータ位相
θを算出する。具体的には、ロータ位相が丁度θ1とな
った時刻t1(図5のステップS2のt1と同じ)と現
在の時刻tiとの差にロータ回転速度Vを乗じ、これに
θ1を加えた値をロータ位相θとする。
【0058】次に図9は電流振幅を算出するためのサブ
ルーチンである。
【0059】ステップS400でロータ回転速度Vを所
定値V0と比較してモード判断を行い、所定値V0以下
の固定モードであるときはS401へ進んで固定モード
用電流マップからルックアップしたマップ設定値Ims
を電流振幅Iとする。
【0060】これに対して、推定モードであるときはS
402へ進んで推定モード用電流マップからルックアッ
プしたマップ設定値Imnを電流振幅Iとする。
【0061】固定モード用電流マップは、ロータ回転速
度Vとトルク指令値Toとに対応させて電流振幅を記憶
させたマップであり、ロータの真の位相に応じた最適な
電流制御を行なった場合のトルクより固定モード制御時
の平均トルクが小さくなることを考慮し、この低下した
平均トルクがトルク指令値Toと一致するような電流振
幅が記憶されている。
【0062】また、推定モード用電流マップも、ロータ
回転速度Vとトルク指令値Toとに対応させて電流振幅
を記憶させたマップであり、ロータ位相の正確な推定値
に応じた最適な電流制御を行なってトルク指令値Toを
達成する電流振幅が記憶されている。
【0063】これらの処理により、各モードに合わせた
電流振幅の設定が行われるので、モード移行前後でトル
クが急変するのを回避できる。
【0064】ここで、モータ1の制御が固定モードから
推定モードに移行するときの動作について、図10、図
11のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0065】図10はモータ1の目標トルクtTが低
く、このためトルクリミッタ値TIpの制限を受けない
場合を表している。
【0066】時刻t1までロータ回転速度V<所定速度
V0であり、固定モードでの制御が行われ、時刻t1以
降は推定モード制御に切換えられる。
【0067】目標トルクtTが低く、トルクリミッタ値
TIpの制限を受けないため、トルク指令値Toはモー
ド移行の前後で変化しない。固定モードの方がロータの
真の位相に応じた電流制御が行われる推定モードのとき
よりも平均トルクは小さいが、固定モードに対応した電
流振幅Iの電流マップは、このことを考慮に入れて予め
大きく設定されている。このためモード移行と同時に電
流振幅Iを設定した電流マップが切換られ、推定モード
での電流振幅にIは小さくなるが、モード移行直後の実
トルクは同一のまま維持され、モード移行に伴うトルク
ショックは回避される。
【0068】なお、電流振幅Iはロータ回転速度Vの上
昇に応じて変化するが、ここでは図示を略している。
【0069】図11はモータ1の目標トルクtTが大き
く、トルクリミッタ値TIpの制限を受ける場合を表し
ている。
【0070】目標トルクtTがトルクリミッタ値TIp
より大きいので、トルク指令値Toはトルクリミッタ値
TIpと同じ値となる。ここで、時刻t1までの間のト
ルクリミッタ値TIpは固定モード用トルクリミッタ値
TIsに設定されており、時刻t1以降は推定モード用
トルクリミッタ値TInに設定される。
【0071】ただし、モード移行直後の所定期間(t1
〜t2)はトルクリミッタ値TIpの除変処理が行われ
る。
【0072】時刻t1までの間、トルク指令値To(=
TIs)に応じて固定モード用電流マップからルックア
ップした電流振幅はインバータ5の最大電流振幅となっ
ている。
【0073】モード移行が発生した直後、トルク指令値
To(≒TIs)に応じて推定モード用電流マップから
ルックアップした電流振幅はインバータの最大電流振幅
より小さい値となり、その後トルク指令値Toが徐々に
大きくなるのに従って大きくなり、時刻t2でトルク指
令値Toが推定モード用トルクリミッタ値TInと等し
くなるとインバータ5の最大電流振幅となる。
【0074】電流振幅が固定モードと推定モードとで同
一となっても、推定モードではロータの真の位相(もし
くは真の位相に近似する位相)に応じて電流制御が行わ
れるので、それだけ発生トルクが大きくなる。したがっ
て、実トルクが大きくなるが、t1からt2の間では電
流振幅が徐々に大きくなるので、モード移行に伴なうト
ルクショックは発生しない。
【0075】このように、目標トルクのいかんにかかわ
らず、モード移行時にモータトルクが瞬間的に変動する
のが防止でき、これによりモード移行時のトルクショッ
クを回避でき、モータ運転特性を向上させられる。
【0076】次に第2の実施形態について説明する。
【0077】本実施形態は、単一の電流マップ(第1実
施形態の推定モード用電流マップと同じ)で電流振幅I
の算出を行い、モード移行時のトルクショックはトルク
指令値Toの設定によって回避するようにしたものであ
る。
【0078】モータコントロールユニット3が実行する
制御の内容はほぼ同一であり、異なる部分を中心にして
説明する。
【0079】図12はトルク指令値を算出するサブルー
チンであり、まず、ステップS110では、モード移行
が発生したか否かを判断する。すなわち、前回本ルーチ
ンを実行したときのモードが固定モードであって、今回
のモードが推定モードであるときモード移行が発生した
と判断する。
【0080】モード移行時にはステップS111へ進
み、外部から与えられる目標トルクtTに従ってモード
移行直後のトルク指令値Toを算出する。
【0081】具体的には、図13に示すテーブルから目
標トルクtTに基づいてトルク変更初期値Torをルッ
クアップし、このTorをToとする。このトルク変更
初期値Torは、固定モード制御時のトルク低下分だけ
目標トルクtTを減少補正したものである。
【0082】ステップS112では、目標トルクtTよ
りトルク指令値Toが小さいか否かを判断する。目標ト
ルクtTよりトルク指令値Toが小さいときはステップ
S113へ進み、現在のトルク指令値Toに所定の加算
値△Toを加えて新たなトルク指令値Toを算出する。
【0083】反対に現在のトルク指令値Toが目標トル
クtT以上であると判断された場合はステップS114
へ進み、目標トルクtTを新たなトルク指令値Toに設
定する。
【0084】以上の処理により、固定モードから推定モ
ードヘの移行が発生したとき、トルク指令値Toは一旦
トルク変更初期値Torまで低下した後、目標トルクt
Tへ徐々に近づくことになる。
【0085】ここで図14のタイムチャートを参照しな
がら制御動作について説明する。
【0086】時刻t1で固定モードから推定モードへと
モード移行が行われるものとして、本実施形態では、単
一の電流マップで電流振幅Iの算出を行うので、トルク
指令値Toの変化に対して、電流振幅Iも同じように変
化、つまり時刻t1で一旦低下し、その後時刻t2まで
徐々に増大する。
【0087】固定モードと推定モードとで電流振幅Iは
同じであったとしても、推定モードでの制御時の方が発
生トルクは大きくなるが、電流振幅Iは時刻t1からt
2までの間で徐々に大きくなるので、モード移行時のト
ルクショックの発生は生じない。
【0088】本発明は上記した実施の形態に限定される
ものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術
的思想の範囲内において、さまざまな変更が可能である
ことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図であ
る。
【図2】ロータ位相検出器の特性を示す説明図である。
【図3】モータトルクの特性図である。
【図4】ベータ角を示す説明図である。
【図5】制御内容を示すフローチャートである。
【図6】制御内容を示すフローチャートである。
【図7】制御内容を示すフローチャートである。
【図8】制御内容を示すフローチャートである。
【図9】制御内容を示すフローチャートである。
【図10】制御動作を示すタイムチャートである。
【図11】制御動作を示すタイムチャートである。
【図12】第2の実施形態の制御内容を示すフローチャ
ートである。
【図13】トルク指令値の特性を示す説明図である。
【図14】制御動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 永久磁石型同期モータ 2 ロータ位相検出器 3 モータコントロールユニット 5 インバータ

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ロータの回転位相を検出する手段と、 ロータ回転速度を検出する手段と、 ロータ回転速度が極低速の所定値よりも小さい固定モー
    ドのときは検出された位相角度内の固定値を用いてロー
    タ位相を算出する手段と、 ロータ回転速度が前記所定値よりも大きい推定モードの
    ときは検出された位相角度から補完演算によりロータ位
    相を算出する手段と、 算出されたロータ位相と目標トルクに基づいてステータ
    コイルに印加する電流を演算する電流制御手段とを備え
    た電動機の制御装置において、 ロータ位相算出の固定モードから推定モードへの移行を
    判定する手段と、 この移行が判定されたときに固定モードでのモータトル
    クと推定モードでのモータトルクが同一もしくは徐々に
    変化するようにステータコイルに印加する電流を制御す
    るモード移行制御手段とを備えることを特徴とする電動
    機の制御装置。
  2. 【請求項2】前記ステータコイルに印加される電流は、
    同一の目標トルクに対して固定モードの電流値が推定モ
    ードでの電流値よりも高くなるように設定される請求項
    1に記載の電動機の制御装置。
  3. 【請求項3】前記ステータコイルに印加される電流は、
    目標トルクが所定値よりも大きいときは、固定モードか
    ら推定モードへ移行するときに、いったん所定値だけ低
    下した後に徐々に増加するように設定される請求項1ま
    たは2に記載の電動機の制御装置。
  4. 【請求項4】前記固定モードから推定モードへの移行時
    に、ステータコイルに印加される電流を制御するため
    に、目標トルクに基づいて設定されるトルクの指令値を
    いったん所定値だけ低下させた後に徐々に目標トルクま
    で増加するように設定する請求項1に記載の電動機の制
    御装置。
  5. 【請求項5】前記低下させるトルク指令の所定値はモー
    ド移行時の目標トルクに基づいて設定される請求項4に
    記載の電動機の制御装置。
  6. 【請求項6】ロータの回転位相を検出し、 ロータ回転速度を検出し、 ロータ回転速度が極低速の所定値よりも小さい固定モー
    ドのときは検出された位相角度内の固定値を用いてロー
    タ位相を算出し、 ロータ回転速度が前記所定値よりも大きい推定モードの
    ときは検出された位相角度から補完演算によりロータ位
    相を算出し、 算出されたロータ位相と目標トルクに基づいてステータ
    コイルに印加する電流を演算し、制御する電動機の制御
    方法において、 ロータ位相算出の固定モードから推定モードへの移行を
    判定し、 この移行が判定されたときに固定モードでのモータトル
    クと推定モードでのモータトルクが同一もしくは徐々に
    変化するようにステータコイルに印加する電流を制御し
    てモード移行を行うことを特徴とする電動機の制御方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009033838A (ja) * 2007-07-26 2009-02-12 Toyota Motor Corp 回転電機制御装置
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CN103872951A (zh) * 2014-04-23 2014-06-18 东南大学 基于滑模磁链观测器的永磁同步电机转矩控制方法
WO2019054475A1 (ja) 2017-09-15 2019-03-21 Ntn株式会社 モータ駆動システムおよびモータの制御方法
CN110463022A (zh) * 2017-04-28 2019-11-15 昕芙旎雅有限公司 电动机控制装置以及电动机控制方法

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