JP2003007556A - 耐食性の優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁石複合体及びその製造方法 - Google Patents

耐食性の優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁石複合体及びその製造方法

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JP2003007556A
JP2003007556A JP2001183755A JP2001183755A JP2003007556A JP 2003007556 A JP2003007556 A JP 2003007556A JP 2001183755 A JP2001183755 A JP 2001183755A JP 2001183755 A JP2001183755 A JP 2001183755A JP 2003007556 A JP2003007556 A JP 2003007556A
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Hiroki Hayashi
洋樹 林
Jun Kawaguchi
純 川口
Koichi Yajima
弘一 矢島
Kazuhisa Sano
和久 佐野
Ryota Uchiyama
良太 内山
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Nihon Parkerizing Co Ltd
TDK Corp
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PARKER KAKO KK
Nihon Parkerizing Co Ltd
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F41/00Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties
    • H01F41/02Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets
    • H01F41/0253Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets for manufacturing permanent magnets
    • H01F41/026Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets for manufacturing permanent magnets protecting methods against environmental influences, e.g. oxygen, by surface treatment

Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた耐食性を有し、回転機器などに有用な
永久磁石複合体及びその製造方法の提供。 【解決手段】 Y及びランタノイド元素の1種以上から
なるR成分、Feを含み、必要により他の遷移元素の1
種以上を含むTM成分、及びホウ素(B)を含む磁石合
金焼結体の表面に、前記R成分の水不溶性塩(亜硝酸
塩、有機カルボン酸塩、炭酸塩など)と、りん酸金属塩
とを含む保護層が形成されている、R−TM−B系永久
磁石複合体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転機器等に使用
される耐食性の優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁石複
合体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】イットリウム及びランタノイド元素から
選ばれた少なくとも1種からなるR成分と、鉄を含むT
M成分と、ホウ素とを含む希土類−鉄−ホウ素系永久磁
石は、優れた磁気特性を有するが、しかし、非常に腐食
しやすいという大きな欠点を有している。この欠点を解
消するために、磁石体の表面に、めっき、イオンプレー
ティング、及び/又は樹脂コーティング等の処理を施す
ことが試みられている。
【0003】近年、磁石の高特性化に伴い形状も小型化
しており、同時に低コスト化が要求されている。特に従
来磁石表面に施されてきた表面処理の性能を必要としな
い用途が増えてきており、表面処理の低コスト化が強く
要求されるようになってきた。また、磁石の小型化に伴
い、表面処理皮膜による磁気特性の損失も無視できなく
なってきている。
【0004】一方、塗装の下地処置として化成処理が多
く採用されている。化成処理は、クロム酸系およびりん
酸塩系に大別されるが、前者は近年の環境問題から撤廃
する方向にある。後者のりん酸塩処理をR−TM−B系
磁石に適用した例として特公平4−22008号公報が
挙げられる。しかしながら、通常のりん酸塩処理をR−
TM−B系磁石に施すと、磁石組織内のガルバニ腐食の
ため(R−rich相が選択的に溶出)に化成皮膜が十
分に形成されないため十分な耐食性が得られないという
問題を生ずる。そこで、R成分を不動態化する溶液で予
め処理を施し、さらに化成処理を行う方法が特開昭63
−150905号公報に記載されている。しかし、化成
処理を行うと不動態化されたRが主相の溶解に伴い、表
面から欠落するため、化成皮膜が形成しないという問題
があった。
【0005】また、表面に簡単に皮膜を形成させる方法
として、特開平9−7867号公報、特開平10−15
4611号公報にあるアルカリ珪酸塩処理が挙げられ
る。これらは、膜厚が10μm程度あれば、優れた耐食
性を示すが、乾燥時にワーク同士の貼り付きが生ずるた
め、安価に処理するには、溶液を貼り付きが起こらない
程度に希釈する必要がある。希釈率があまりに大きいと
必要十分な耐食性が得られず、さらに皮膜中のアルカリ
イオンが接着に悪影響を及ぼすという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は磁気特性の損
失が少なく安価で、かつ、高接着性、高耐食性を有する
希土類−鉄−ホウ素系永久磁石複合体及びその製造方法
を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、化成処理によ
り磁石表面に不動態皮膜を形成させた複合体及びその製
造方法を提供するものである。一般に化成処理は素地金
属の溶解により、安定した皮膜が表面に形成される。し
かし、R−TM−B系磁石の場合は粒界相の選択的溶解
のため表面に皮膜が形成されない。本発明では、この選
択的溶解を低減させるべく、Rと反応して水に不溶な化
合物を生成する酸イオンをりん酸塩水溶中に添加するこ
とにより、磁石表面に耐食性保護膜を形成させることを
可能にした。本発明の耐食性の優れた希土類−鉄−ホウ
素系永久磁石は、イットリウム及びランタノイド元素か
ら選ばれた少なくとも1種からなるR成分、鉄を含むT
M成分、及びホウ素を含む磁石合金焼結体と、その表面
に形成され、かつ前記R成分の水不溶性塩及びりん酸金
属塩を含む10mg/m2 以上の保護層と、を含むことを
特徴とするものである。本発明の耐食性の優れた希土類
−鉄−ホウ素系永久磁石において、前記TM成分が少な
くとも1種の遷移元素をさらに含んでいてもよい。本発
明の耐食性の優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁石にお
いて、前記R成分金属の水不溶性塩が、R成分金属の亜
硫酸塩、有機カルボン酸塩、炭酸塩、ヒ酸塩及び亜セレ
ン酸塩の1種以上からなることが好ましい。本発明の耐
食性の優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁石において、
前記りん酸塩がりん酸亜鉛、りん酸マンガン、りん酸鉄
及びりん酸亜鉛カルシウムの少なくとも1種を含むこと
が好ましい。本発明の耐食性の優れた希土類−鉄−ホウ
素系永久磁石複合体の製造方法は、イットリウム及びラ
ンタノイド元素から選ばれた少なくとも1種からなるR
成分、鉄を含むTM成分、及びホウ素を含む磁石合金の
焼結体の表面と、前記R成分と反応して水不溶性塩を生
成する少なくとも1種の酸イオンを含むりん酸塩水溶液
とを接触させて、前記磁石合金焼結体表面に、前記R成
分と前記酸イオンとの反応による水不溶性塩と、りん酸
塩とを含む10mg/m2 以上の保護層を形成することを
特徴とするものである。本発明の耐食性の優れた希土類
−鉄−ホウ素系永久磁石の製造方法において、前記R成
分と反応して水不溶性塩を生成する酸イオンが、亜硝酸
イオン、有機カルボン酸イオン、炭酸イオン、ヒ酸イオ
ン及び亜セレン酸イオンから選ばれることが好ましい。
本発明の耐食性の優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁石
複合体の製造方法において、前記りん酸塩水溶液中に、
前記R成分と水不溶性塩を形成する酸イオンが、0.0
1〜5.0モル/リットルの濃度で含まれることが好ま
しい。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において保護層が表面に形
成される永久磁石体は、R成分(Yと、ランタノイド元
素とから選ばれた1種以上からなる)、TM成分(Fe
を含み、必要により他の1種以上の遷移元素を含む)、
およびBを含有するものである。R成分、TM成分、お
よびBの含有量は8atom%≦R≦30atom%、42atom
%≦TM≦90atom%、2atom%≦B≦28atom%であ
ることが好ましい。なお、TM成分は前述のように基本
的にFeを不可欠要素として含み、必要により他の1種
以上の遷移元素を含むもので、不可避的不純物も含まれ
る。
【0009】特に永久磁石体を焼結法により製造する場
合、下記の組成であることが好ましい。R成分はNd,
Pr,Ho,Tbのうち少なくとも1種、あるいはさら
にLa,Sm,Ce,Gd,Er,Eu,Pm,Tm,
Yb,Yのうち少なくとも1種以上を含むものが好まし
い。なお、Rとして2種類以上の元素を用いる場合は、
原料としてミッシュメタル等の混合物を用いることがで
きる。
【0010】R成分の含有量は8〜30atom%であるこ
とが好ましい。その含有量が8atom%未満では、結晶構
造がα−Feと同一構造の立方晶組織となるため、高い
保磁力(Hcj)が得られないことがあり、また、30
atom%を超えると、Rリッチな非磁性相が多くなり、残
留磁束密度(Br)が不十分になることがある。
【0011】TM成分の含有量は42〜90atom%であ
ることが好ましい。TM成分含有量が42atom%未満で
あると、Brが不十分になることがあり、90atom%を
超えるとHcjが不十分になることがある。Feの一部
をCoで置換する事により、磁気特性を損なうことなく
温度特性を改善する事ができるが、Coの置換量がFe
の50%を超えると磁気特性が不十分になることがある
ため、Co置換量は50%以下であることが好ましい。
【0012】Bの含有量は2〜28atom%であることが
好ましい。Bの含有量が2atom%未満であると、菱面体
組織となりHcjが不十分となることがあり、それが2
8atom%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなるため
Brが不十分になることがある。また、R,TM,Bの
他、不可避不純物として、Si,O,C等が全体の3at
om%以下含有されていてもよい。
【0013】さらに、Bの一部をC,P,S,Cuのう
ち1種以上で置換する事により、生産性の向上および低
コスト化が実現できる。この場合、置換元素の量は全体
の4atom%以下である事が好ましい。また、保磁力の向
上、生産性の向上、低コスト化のためにAl,Ti,
V,Cr,Mn,Bi,Ta,Mo,W,Sb,Ge,
Sn,Zr,Ni,Si,Hf等の1種以上を添加して
もよい。この場合、添加元素の添加量は総計で10atom
%以下であることが好ましい。
【0014】R−TM−B系磁石素体は実質的に正方晶
系の結晶構造の主相を有する。この主相の粒径は1〜1
00μm程度である事が好ましい。さらに通常、体積比
で1〜50%の非磁性相を含むものである。このような
磁石素体は、以下に述べるような粉末冶金法により製造
される事が好ましい。
【0015】まず、所望の組成の合金を鋳造法、又はス
トリップキャスト法等のプロセスで作製する。得られた
合金を、ジョークラッシャー、ブラウンミル、又はスタ
ンプミル等により粒径10〜100μm程度に粗粉砕
し、次いでジェットミル又はアトライター等により0.
5〜5μm程度の粒径に微粉砕する。得られた粉末を好
ましくは磁場中において成型する。この場合、磁場強度
は600kA/m以上、成型圧力は0.5〜5ton/cm2
度であることが好ましい。得られた成型体を、1000
〜1200℃で0.5〜10時間焼結し、急冷する。な
お、焼結雰囲気はArガス等の不活性ガスであることが
好ましい。この後、焼結体に、好ましくは不活性ガス雰
囲気中で、500〜900℃の温度において1〜5時間
の時効処理を施す。
【0016】得られた永久磁石焼結体に保護層形成処理
を施す前に、それに所定の前処理を施すことが好まし
い。前処理としては、まず、磁石加工面に、そのバリ等
を取り除くため、バレル研磨を施す。さらに、磁石表面
の汚れを取り除くための脱脂処理を施し、さらに酸によ
る化学エッチングを施して表面を清浄化し、乾燥する。
脱脂処理に用いられる脱脂液は、通常鉄系材料に使用さ
れるものであればよい。一般に苛性ソーダを主成分とす
るものが用いられ、それに添加される添加剤は適宜に選
択すればよい。次に化学エッチングで使用される酸とし
ては、硝酸を用いる事が好ましい。一般の鋼材にめっき
処理を施す場合、塩酸、硫酸等の非酸化性の酸が用いら
れる事が多い。しかし、特に永久磁石が希土類元素を含
む場合には、これらの酸を用いて処理を行うと、酸によ
り発生する水素が永久磁石表面に吸蔵され、吸蔵部位が
脆化して多量の粉末状溶解物が発生する。この粉末状溶
解物は化成処理後の欠陥および接着剤や樹脂塗膜などと
の密着不良を引き起こすため、前記の酸は化学エッチン
グ処理液に含有させないことが好ましい。したがって、
水素の発生が少なく酸化性の酸である硝酸を用いること
が好ましい。
【0017】このような前処理による磁石焼結体の溶解
量は、表面から平均厚さ5μm以上であることが好まし
く、より好ましくは10〜15μmである。5μm未満
の溶解量では、磁石体表面の加工による変質層、酸化層
を完全に除去できないために、保護層が正常に磁石体表
面に形成されず、耐食性を悪化させてしまうことがあ
る。
【0018】このような前処理に用いられる処理液の硝
酸濃度は1規定以下、であることが好ましく、特に0.
5規定以下とすることがより好ましい。硝酸濃度が1規
定を超える場合は、磁石体の溶解速度が極めて速く、溶
解量の制御が困難となり、特にバレル処理のような大量
処理ではバラツキが大きくなり、製品の寸法精度が維持
できないことがある。しかし、硝酸濃度が過度に低いと
溶解量が不足となる。このため、硝酸濃度は1規律以
下、特に0.5〜0.05規定とすることが好ましい。
また、処理終了時のFeの溶解量は、1〜10g/リッ
トル程度とすることが好ましい。なお、特開平6−31
8512号公報に記載されているように、処理液中にグ
ルコン酸、ヘプトン酸等のアルドン酸またはその塩が添
加されていてもよい。
【0019】このような前処理を行った磁石焼結体の表
面から少量の未溶解物、残留酸成分を完全に除去するた
めに、超音波を使用した洗浄を実施することが好まし
い。この超音波洗浄は、磁石表面に錆を発生させる塩素
イオンが極めて少ないイオン交換水の中で行うことが好
ましい。また、前記超音波洗浄の前後、および前記前処
理の各工程で必要に応じて同様な水洗を行ってもよい。
洗浄を行った磁石焼結体の表面上に、R成分と反応して
不溶性塩を生成する酸イオンを含むりん酸塩水溶液によ
る処理を施して保護層を形成する。
【0020】本発明方法に用いられるりん酸塩処理薬剤
には、格別の制限はなく、一般の鉄鋼材料(合金やめっ
き材を含む)で使用されるを用いることができる。一般
的に、りん酸亜鉛、りん酸マンガン、りん酸鉄、及びり
ん酸亜鉛カルシウム等から選ばれた1種以上を用いるこ
とが好ましい。
【0021】りん酸亜鉛を用いる場合、処理液中にZn
として0.1〜10g/リットル含まれることが好まし
く、より好ましくは0.5〜5g/リットルであり、り
ん酸(PO43-)として1〜100g/リットル含まれ
ることが好ましく、より好ましくは10〜50g/リッ
トルである。
【0022】りん酸マンガンを用いる場合、処理液中に
Mnとして0.1〜100g/リットル含まれることが
好ましく、より好ましくは1.0〜50g/リットルで
あり、りん酸(PO43-)として1〜100g/リット
ル含まれることが好ましく、より好ましくは10〜50
g/リットルである。
【0023】りん酸鉄が用いられる場合、りん酸(PO
3-)として0.1〜100g/リットル含まれること
が好ましく、より好ましくは1〜50g/リットルであ
る。りん酸亜鉛カルシウムが用いられる場合、Znとし
て0.1〜20g/リットル含まれることが好ましく、
より好ましくは0.5〜10g/リットルでありCaと
して0.1〜20g/リットル含まれることが好まし
く、より好ましくは0.5〜10g/リットルでありり
ん酸(PO43-)として1〜100g/リットルである
ことが好ましく、より好ましくは5〜50g/リットル
である。
【0024】これらのりん酸塩の水溶液中に、R成分と
反応してと不溶性塩を生成する酸イオンを、全溶液中
に、0.01〜5.0mol/リットル 含有することが好
ましく、より好ましくは0.05〜0.5mol/リット
ル である。通常のりん酸塩処理をR−TM−B系磁石
に施すと、磁石組織内のガルバニ腐食のため(R−ri
ch相が選択的に溶出)化成皮膜が十分に形成されず、
このため十分な耐食性が得られない。
【0025】R成分と反応して水不溶性塩を生成するイ
オンとしては、亜硫酸イオン、カルボン酸イオン、炭酸
イオン、ヒ酸イオン、及び亜セレン酸イオンなどがあ
り、りん酸塩水溶液中で酸イオンであればよく、その種
類に限定はない。しかし、取り扱い等を考慮すると、亜
硫酸イオン、カルボン酸イオン、及び炭酸イオンを用い
ることが好ましい。
【0026】これらRと不溶性塩を生成する酸イオン
が、全処理液中に 5.0mol/リットルを越える濃度で
溶解していると、この酸イオンがりん酸塩と反応して磁
石体表面に皮膜が形成されないだけでなく、わずかなR
−rich相の溶解によるpH値の上昇により、りん酸
塩が沈殿して処理液の寿命が著しく短縮する。また、
0.01mol/リットル 未満では磁石体のR−rich
相の溶解を抑制できず、磁石体表面に保護層を形成しな
い。このため、りん酸塩溶液中に含まれ、R成分とを反
応して不溶性塩を生成するイオンは、全溶液中に 0.
01〜5.0mol/リットル の濃度で含まれることが好
ましく、より好ましくは0.05〜0.5mol/リット
ルである。
【0027】R成分と反応して不溶性塩を生成するイオ
ンを含むりん酸塩溶液(以下、りん酸塩溶液と記す)の
pHは1.0〜4.0であることが好ましく、より好ま
しくは2.0〜4.0である。pHが1.0未満では、
磁石体の溶解量が過剰となり、表面に皮膜が形成されな
いことがある。またpHが4.0を越えると、りん酸塩
溶液中のりん酸塩が沈殿し、スラッジ化することがあ
る。
【0028】りん酸塩溶液の温度には、特に限定はない
が、一般に30〜100℃の範囲内にあることが好まし
い。それが30℃未満では、反応性の低下により、保護
層が形成されにくくなり、生産性が低下することがあ
る。また作業性を考慮すると100℃以下であることが
好ましい。
【0029】りん酸塩処理時間は、1〜60分の範囲内
であることが好ましく、より好ましくは2〜30分の範
囲に設定される。処理時間が1分未満では処理状態のバ
ラツキが大きくなることがあり、またそれが60分を超
えると保護層の厚膜化による緻密性の低下、および溶液
劣化を促進することがある。
【0030】りん酸塩処理を施した後、形成された保護
層を十分に水洗し、乾燥を行う。乾燥温度は、80〜1
50℃であることが好ましく、より好ましくは100〜
130℃である。乾燥が十分でないと残存水分により耐
食性を損なうことがあり、またそれが150℃以上であ
ると、皮膜に亀裂等が発生することがあり、耐食性を損
なうことがある。
【0031】本発明方法において形成される保護層の被
覆量は10mg/m2 以上であり、好ましくは10mg/m
2〜5g/m2である。それが、10mg/m2 未満では十
分な耐食性が得られず、またそれが5g/m2 を越える
とそれ以上の性能向上が期待できずコスト高となること
がある。
【0032】本発明の作用は、りん酸塩水溶液に添加し
たSO3 2-、CO3 2-、COO- が、磁石組織中のR−r
ich相の溶出を抑え、りん酸塩が均一に磁石に析出す
るものである。これにより従来のR−TM−B系磁石の
りん酸塩処理に比べて厚膜化が可能となり、磁石表面に
は耐食性の優れたりん酸塩保護層が形成される。
【0033】
【実施例】本発明の実施形態を下記実施例および比較例
により具体的に説明する。しかし、本発明の範囲はこれ
らに限定されるものではない。
【0034】実施例1 14.7Nd−79.2Fe−6.1B組成からなる鋳
塊を粗粉砕し、さらにこれに不活性ガスによるジェット
ミル粉砕を施して平均粒径3.5μmの微粉末を得た。
これを磁場成型し、焼結、熱処理を経て、焼結磁石を得
た。これを10mm×20mm、厚さ3mmに切り出し、バレ
ル研磨および硝酸エッチングを行い、磁石供試験片を作
製した。化成処理液は、りん酸亜鉛系薬剤である日本パ
ーカライジング(株)製パルボンド210(商標)を用
いた。処理液はパルボンド210を50g/リットルに
希釈・調整して処理に用いた。添加剤としては亜硫酸ナ
トリウムを、処理液1リットルに対して0.5g添加し
た。処理液を約80℃に加温し、その処理液中に磁石供
試片を10分間浸せきし、その後供試片を水洗し、ただ
ちに110℃に設定した乾燥機により乾燥した。形成さ
れた保護層の被覆量は、150mg/m2 であった。
【0035】実施例2 14.7Nd−79.2Fe−6.1B組成からなる鋳
塊を粗粉砕し、さらにこれを不活性ガスによるジェット
ミル粉砕に供して平均粒径3.5μmの微粉末を得た。
これを磁場成型し、焼結、熱処理を経て、焼結磁石を作
製した。これを10mm×20mm、厚さ3mmに切り出し、
バレル研磨および硝酸エッチングを行い、磁石供試験片
を作製した。化成処理後は、りん酸マンガン系薬剤であ
る日本パーカライジング(株)製パルホスM1A(商
標)を用いた。処理液はパルホスM1Aを140g/リ
ットルの濃度に希釈・調整して処理に用いた。添加剤と
してp−アミノベンゼンスルホン酸を、処理液1リット
ルに対して1.0g添加した。処理液を約95℃に加温
し、その処理液中に磁石供試片を1分間浸せきし、その
後供試片を水洗し、ただちに110℃に設定した乾燥機
により乾燥した。形成された保護層の被覆量は、20mg
/m2 であった。
【0036】比較例1 実施例1と同じ方法により、磁石供試験片を作製した。
化成処理液は、りん酸亜鉛系薬剤である日本パーカライ
ジング(株)製パルボンド210(商標)を用いた。処
理液はパルボンド210を50g/リットルの濃度に希
釈調整して処理に用いた。処理液は約80℃に加温し、
その処理液中に磁石供試片を30分間浸せきし、その後
供試片を水洗し、ただちに110℃に設定した乾燥機に
て乾燥した。形成された保護層の被覆量は、10mg/m
2 であった。
【0037】比較例2 実施例2と同じ方法により、磁石供試験片を作製した。
化成処理液は、りん酸マンガン系薬剤である日本パーカ
ライジング(株)製パルホスM1A(商標)を用いた。
処理液はパルホスM1Aを140g/リットルの濃度に
希釈・調整して処理に用いた。添加剤はp−アミノベン
ゼンスルホン酸を、処理液1リットルに対して1.0g
添加した。処理液を約95℃に加温し、その処理液中に
磁石供試片を10秒間浸せきし、その後供試片を水洗
し、ただちに110℃に設定した乾燥機により乾燥し
た。形成された保護層の被覆量は、5mg/m2 であっ
た。
【0038】耐食試験方法は、80℃×90%RHの耐
湿試験機を用いて、錆が発生するまでの耐久時間を測定
した。実施例と比較例の耐食性評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】本発明では、R成分(Y及びランタノイ
ド元素の少なくとも一種類からなる)、TM成分(Fe
を主成分として含み、必要により他の1種以上の遷移元
素を含む)、およびホウ素からなる焼結磁石の表面に、
R成分の不溶性塩を含むりん酸塩皮膜からなる保護層を
形成することにより、優れた耐食性を有するR−TM−
B系永久磁石複合体を得ることができ、これにより低コ
ストで磁気特性の劣化が少ない高耐食性磁石複合体を提
供する事が可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 洋樹 東京都中央区日本橋1−15−1 日本パー カライジング株式会社内 (72)発明者 川口 純 東京都中央区日本橋1−15−1 日本パー カライジング株式会社内 (72)発明者 矢島 弘一 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 佐野 和久 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 内山 良太 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 4K018 AA27 DA00 FA27 KA45 5E040 AA04 AC05 BC01 BD01 CA01 HB14 HB15 5E062 CD00 CD04 CG02 CG07

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イットリウム及びランタノイド元素から
    選ばれた少なくとも1種からなるR成分、鉄を含むTM
    成分、及びホウ素を含む磁石合金焼結体と、その表面に
    形成され、かつ前記R成分の水不溶性塩及びりん酸金属
    塩を含む10mg/m2 以上の保護層と、を含むことを特
    徴とする、耐食性の優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁
    石複合体。
  2. 【請求項2】 前記TM成分が、少なくとも1種の遷移
    元素をさらに含む、請求項1に記載の耐食性の優れた希
    土類−鉄−ホウ素系永久磁石複合体。
  3. 【請求項3】 前記R成分金属の水不溶性塩が、R成分
    金属の亜硫酸塩、有機カルボン酸塩、炭酸塩、ヒ酸塩及
    び亜セレン酸塩の1種以上からなる、請求項1に記載の
    耐食性の優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁石複合体。
  4. 【請求項4】 前記りん酸塩が、りん酸亜鉛、りん酸マ
    ンガン、りん酸鉄、及びりん酸亜鉛カルシウムの少なく
    とも1種を含む、請求項1に記載の耐食性の優れた希土
    類−鉄−ホウ素系永久磁石複合体。
  5. 【請求項5】 イットリウム及びランタノイド元素から
    選ばれた少なくとも1種からなるR成分、鉄を含むTM
    成分、及びホウ素を含む磁石合金の焼結体の表面に、亜
    硝酸イオン、有機カルボン酸イオン、炭酸イオン、ヒ酸
    イオン及び亜セレン酸イオンから選ばれた少なくとも1
    種の酸イオンを含むりん酸塩水溶液を接触させて、前記
    磁石合金焼結体表面に、前記R成分と前記酸イオンとの
    反応による水不溶性塩と、りん酸塩とを含む10mg/m
    2 以上の保護層を形成することを特徴とする、耐食性の
    優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁石複合体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記R成分と反応して水不溶性塩を生成
    する酸イオンが、亜硝酸イオン、有機カルボン酸イオ
    ン、炭酸イオン、ヒ酸イオン及び亜セレン酸イオンから
    選ばれる、請求項5に記載の、耐食性の優れた希土類−
    鉄−ホウ素系永久磁石複合体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記りん酸塩水溶液中に、前記R成分と
    水不溶性塩を形成する酸イオンが、0.01〜5.0モ
    ル/リットルの濃度で含まれる、請求項5に記載の、耐
    食性の優れた希土類−鉄−ホウ素系永久磁石複合体の製
    造方法。
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