JP2003007148A - 酸化物超電導導体及びその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導導体及びその製造方法

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隆 斉藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 配向Ag基材を用いた酸化物超電導導体にお
ける超電導特性を改善し、高Jcが得られる酸化物超電
導導体及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 Agを含むテープ状の基材38の少なく
とも一面側において酸化物超電導体の原料ガスを化学反
応させて前記基材上に成膜する方法により得られた酸化
物超電導層bを有し、前記基材38の表層部に、Cuが
拡散された拡散層cが形成され、該拡散層c上に前記酸
化物超電導層が形成されたことを特徴とする酸化物超電
導導体S及びその製造方法。前記拡散層cのCu含有量
は、50μg/cm2以上300μg/cm2以下とする
ことが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超電導電力ケーブ
ル、超電導マグネット、超電導エネルギー貯蔵、超電導
発電装置、医療用MRI装置、超電導電流リード等の分
野において利用できる酸化物超電導導体とその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の酸化物超電導導体の製造方法とし
て、酸化物超電導粉末または熱処理によって酸化物超電
導体となり得る組成の混合粉末を円柱状にプレスし、こ
れを銀管中に挿入し、伸線加工あるいは圧延工程と熱処
理工程を行って線材化するパウダーインチューブ法(P
IT法)などの固相法の他に、レーザー蒸着法、スパッ
タ法などの気相法により金属テープなどの長尺の基材上
に連続的に酸化物系超電導層を形成する成膜法が知られ
ている。
【0003】レーザー蒸着法やCVD法等の気相法によ
り製造された酸化物超電導導体の構造としては、図7に
示すように、Ag等の金属からなる基材191の上面に
YBaCuO系の酸化物超電導層193が形成され、更
にこの酸化物超電導層193上にAgからなる表面保護
層195が形成されたものが広く知られている。このよ
うなレーザー蒸着法やCVD法等の気相法により作製し
た酸化物超電導導体において、優れた超電導特性を得る
ためには、基材上191上に作製した酸化物超電導層1
93の2軸配向(面内配向)を実現することが重要であ
る。そのためには、基材191の格子定数を、酸化物超
伝導層193の格子定数に近づけることと、基材191
の表面を構成する結晶粒が、疑似単結晶的に揃っている
ことが好ましい。
【0004】そこで、この問題を解決するために、図8
に示すようにハステロイテープなどの金属製の基材19
1の上面に、スパッタ装置を用いてYSZ(イットリア
安定化ジルコニウム)などの多結晶中間層192を形成
し、この多結晶中間層192上にYBaCuO系などの
酸化物超電導層193を形成し、更にこの上にAgの安
定化層194を形成することにより、超電導性の優れた
酸化物超電導導体を製造する試みなどが種々行われてい
る。あるいは、圧延、熱処理により集合組織を形成した
Ag基材や、圧延、熱処理により集合組織を形成し、さ
らに酸化物中間層を形成したNi基材なども検討されて
いる。
【0005】これらの中でも、Agは酸化物超電導層1
93との反応性が小さく、基材191上に直接酸化物超
電導層193を形成することができる唯一の金属材料で
あり、さらには非磁性、低抵抗であるという特徴も有し
ていることから、基材191自身が安定化層としても機
能する線材構造を実現することができる。
【0006】この圧延、熱処理により集合組織を形成し
たテープ状のAg基材としては、基材表面に(100)
面を、長手方向に<001>を優先的に配向させた立方
体集合組織を有するAg{100}<001>、あるい
は、基材表面に(110)面を、長手方向に<110>
を優先的に配向させた立方体集合組織を有するAg{1
10}<110>などが開発されており、これらのうち
でも、YBaCuO系の酸化物超電導層との格子のマッ
チングを考慮すると、Ag{110}<110>の配向
Ag基材が有望である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】図8に示すような多結
晶中間層192上に酸化物超電導層193を形成した酸
化物超電導導体では、この多結晶中間層192の作用に
より、酸化物超電導層193が形成される表面の平滑性
や面内配向性が優れており、良好に面内配向した酸化物
超電導層193を得ることができ、最近では100万A
/cm2以上の高Jcが得られることが確認されてい
る。しかしながら、この多結晶中間層192を備えた基
材は、その成膜にイオンビームスパッタ法という高度で
高価な技術を用いる必要があり、今のところ、1m/h
程度までの基材の生産速度しか得られておらず、製造コ
ストが極めて高いという問題点を有している。
【0008】一方、Agの圧延集合組織を用いた配向A
g基材では、基材の生産性を高くでき、製造コストも比
較的安価であり、有望であるが、この配向Ag基材を用
いて10万A/cm2以上の高Jcを得られたという報
告はほとんど成されておらず、超電導特性の不足が問題
とされていた。これは、Ag基材の結晶粒界における凹
凸によって、酸化物超電導層の連続性が損なわれるため
であると考えられている。このような背景から、配向A
g基材上に、優れた結晶配向性と、結晶連続性を備えた
酸化物超電導層を形成する技術の開発が望まれていた。
【0009】本発明は、上記課題を解決するために成さ
れたものであって、配向Ag基材を用いた酸化物超電導
導体における超電導特性を改善し、高Jcが得られる酸
化物超電導導体を提供することを目的の一つとする。ま
た本発明は、高Jcを得られる酸化物超電導導体を、容
易かつ低コストで製造することができる酸化物超電導導
体の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の配向Ag基材は、
低コストで酸化物超電導導体を製造できるという点で有
望であるが、十分な電流密度(Jc)が得られていな
い。そこで、本発明者らは、配向Ag基材を用いた超電
導導体で高Jcが得られない原因を調査するために、以
下の試験を行った。
【0011】(1)CVD法によりW10mm×L10m
m×t0.5mmの純Ag基材上に、厚さ1.0μmの
YBaCuO系の超電導層を形成して酸化物超電導導体
を作製し、この試料の酸化物超電導層のみをエッチング
により除去した後、純Ag基材中に含まれるY,Ba,
Cuの元素量について分析を行い、それぞれの元素につ
いて、成膜前の純Ag基材中の含有量と比較した。その
結果を表1に示す。表1に示すように、酸化物超電導層
を形成した後の純Ag基材は、Cu含有量が大幅に増加
していることが明らかとなった。これは、酸化物超電導
層を構成するYBaCuOに含まれるCuが、純Ag基
材中に拡散反応したためであると考えられる。
【0012】
【表1】
【0013】(2)次に、上記酸化物超電導層を除去し
た試料の表面を詳細に分析した。その結果、酸化物超電
導層形成後のAg基材では、表面のAg結晶粒界部にお
いてCu濃度が特に高くなっていた。すなわち、Ag基
材側に拡散したCu元素は、Agの結晶粒界部に優先的
に析出または拡散していることが判明した。
【0014】以上の(1)、(2)の試験から、本発明
者は、酸化物超電導層からAg基材へ拡散するCuの影
響により酸化物超電導導体の超電導特性が劣化している
可能性があると考え、Agを基材として用いたYBaC
uO系の酸化物超電導導体を作製するにあたり、以下の
点に留意して作製する必要があると考えた。 Ag基材と酸化物超電導層との界面におけるCu元素
の拡散を抑制する。 Ag基材の表面における粒界成長を抑制し、平滑な基
材表面を維持する。 そして、上記,の条件を満足させるために、Ag基
材の表層部にCuを含む層を酸化物超電導層に先行して
形成することを検討した。すなわち、Ag基材表面に予
めCuが拡散された層を形成することで、Ag基材表面
に適当な濃度のCuを含有させ、Ag基材中へのCu
元素の拡散を緩和することができる。また、これにより
基材表面における粒界成長が抑制されて、基材表面の
平滑性を維持することができると考えた。その結果、こ
のAg中にCuが拡散された拡散層を形成した酸化物超
電導導体は、従来よりも高いJcが得られ、超電導特性
に優れていることが明らかになった。尚、本発明者ら
は、このCuを含む層の効果について検証している。こ
れについては後述の実施例において詳述する。
【0015】本発明は上記知見に基づき成されたもので
あって、以下の構成を有するものである。本発明の酸化
物超電導導体は、Agを含むテープ状の基材の少なくと
も一面側において酸化物超電導体の原料ガスを化学反応
させて前記基材上に成膜する方法により得られた酸化物
超電導層を有する酸化物超電導導体であって、前記基材
の酸化物超電導層側の表層部に、Ag中にCuが拡散さ
れた拡散層が形成され、該拡散層上に前記酸化物超電導
層が形成されたことを特徴とする。
【0016】すなわち、予めAg基材の表層部にCuを
拡散させた拡散層を形成しておくことで、酸化物超電導
層からAg基材へのCuの拡散を抑制することができ、
これによりAg基材表面での粒界成長を抑制することが
できるので、酸化物超電導層の組成が乱れたり、結晶の
連続性が損なわれることが無く、超電導特性に優れた酸
化物超電導導体とすることができる。
【0017】次に、本発明の酸化物超電導導体において
は、前記基材が、純Agからなる構成とすることが好ま
しい。このような構成とすることで、圧延・熱処理によ
り形成する集合組織の集積度(Ag結晶の配向度)を、
Agに第2元素を添加した合金を用いた基材よりも、向
上させることができる。これにより、この基材上に形成
される酸化物超電導層の結晶配向性を向上させることが
でき、超電導特性に優れた酸化物超電導導体を提供する
ことができる。
【0018】次に、本発明の酸化物超電導導体において
は、前記拡散層のCu含有量が、50μg/cm2以上
300μg/cm2以下とされた構成とすることが好ま
しい。このような構成とすることで、効果的に酸化物超
電導層からのCu拡散を防止することができる。前記C
u含有量50μg/cm2未満であると、酸化物超電導
層からのCuの拡散を抑制する効果が得られず、300
μg/cm2を越える場合には、酸化物超電導層を形成
する際に、この拡散層に含まれるCuが、酸素ガスと反
応してCuO等の酸化物として析出するため好ましくな
い。
【0019】次に、本発明の酸化物超電導導体において
は、前記拡散層の層厚が、100nm以上300nm以
下の範囲とされた構成とすることが好ましい。このよう
な構成とすれば、酸化物超電導層の結晶配向性や、結晶
連続性を向上させることができ、超電導特性に優れた酸
化物超電導体を提供することができる。前記拡散層の層
厚が、100nm未満の場合には、拡散層中に含まれる
Cuの量が不十分なために、酸化物超電導層からのCu
の拡散を防ぐことができないためであり、300nmを
越える場合には、過剰なCuが酸化物超電導層を形成す
る際に使用される酸素ガスと反応してCuO等の酸化物
として析出するので好ましくない。
【0020】次に、本発明の酸化物超電導導体の製造方
法は、テープ状の基材の少なくとも一面側において酸化
物超電導体の原料ガスを化学反応させる方法により基材
上に酸化物超電導層を生成する酸化物超電導導体の製造
方法であって、前記基材上にCuを含む拡散層を成膜
し、該拡散層上に前記酸化物超電導層を成膜することを
特徴とする。
【0021】このような構成とすることで、酸化物超電
導層からAg基材へのCuの拡散が抑制され、超電導特
性に優れた酸化物超電導導体を容易に製造することがで
きる。また、Cuを含む拡散層は、YSZ等の多結晶中
間層のように、その成膜に高度で高価な成膜技術を用い
る必要が無く、通常のスパッタや蒸着、CVD法などに
より容易に形成することができる。従って、本構成によ
れば、安価に超電導特性に優れた酸化物超電導導体を製
造することができる。
【0022】次に、酸化物超電導導体の製造方法におい
ては、前記拡散層を、100nm以上300nm以下の
層厚に成膜することが好ましい。このような構成とする
ことで、適切に制御された拡散層を形成することができ
るので、より超電導特性に優れた酸化物超電導導体を製
造することができる。
【0023】次に、本発明の酸化物超電導導体の製造方
法においては、移動中のテープ状の基材の少なくとも一
面側に酸化物超電導導体の原料ガスを化学反応させて酸
化物超電導薄膜を成膜するCVD反応を行うリアクタ
と、前記リアクタに酸化物超電導導体原料ガスを供給す
る酸化物超電導導体の原料ガス供給手段と、前記リアク
タ内のガスを排気するガス排気手段とが備えられ、前記
酸化物超電導導体の原料ガス供給手段に、酸化物超電導
導体の原料ガス供給源と、酸化物超電導導体の原料ガス
導入管と、酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段とが備
えられ、前記リアクタに、基材導入部と反応生成室と基
材導出部とがそれぞれ隔壁を介して区画され、前記反応
生成室がテープ状の基材の移動方向に直列に複数設けら
れ、前記各隔壁に基材通過孔が形成され、前記リアクタ
の内部に基材導入部と複数の反応生成室と基材導出部と
を通過する基材搬送領域が形成され、前記複数設けられ
た反応生成室にそれぞれガス拡散部が設けられ、前記複
数設けられた反応生成室が成膜領域とされ、該反応生成
室に前記ガス拡散部を介して前記酸化物超電導体の原料
ガス導入管が接続されてなる成膜装置を用いて成膜する
ことが好ましい。
【0024】このような構成とすることで、前記拡散層
と、酸化物超電導層を連続的に成膜することができるの
で、酸化物超電導導体の製造をより効率的に行うことが
できる。これにより、製品の歩留まりの向上や、製造コ
ストの低減を図ることができる。また、前記複数の反応
生成室を、拡散層を形成するための反応生成室と酸化物
超電導層を形成するための反応生成室とに割り当てて製
造を行えば、連続してこれらの層を形成することができ
るので、より効率良く酸化物超電導導体を製造すること
ができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る酸化物超電導
導体、その製造方法、並びにこの製造方法を実施する場
合に用いる装置について図面を参照して説明する。
【0026】(酸化物超電導導体)図1は、本発明の一
実施の形態である酸化物超電導導体の断面構造図であ
る。この図に示す酸化物超電導導体Sは、Agからなる
基材38と、この基材38上に形成された酸化物超電導
層bと、この酸化物超電導層b上に形成されたAgから
なる安定化層aとが順に積層されて構成されている。そ
して、前記基材38の表層部には、基材38を構成する
Ag中にCuが拡散された層である拡散層cが形成され
ている。
【0027】基材38は、長尺のものを用いることがで
きるが、特に、圧延集合組織を生成させたAgの配向テ
ープを用いることが好ましく、上記配向テープにCuが
拡散された拡散層を備えたものであっても良い。あるい
は金属テープなどのテープ状の基部の一面あるいは両面
に、圧延集合組織を有するAg膜を備えたものであって
も良い。上記金属テープを構成する材料としては、銀、
白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ(C276等)な
どの金属材料や合金を用いることができる。
【0028】上記Agの圧延集合組織としては、基材表
面に{100}面を、長手方向に<001>を優先的に
配向させた立方体集合組織を有する{100}<001
>集合組織、基材表面に{110}面を、長手方向に<
110>を優先的に配向させた立方体集合組織を有する
{110}<110>集合組織、基材表面に{110}
面を、長手方向に<001>を優先的に配向させた立方
体集合組織を有する{110}<001>集合組織のい
ずれかとすることが好ましい。これらの集合組織を有す
る配向Ag基材を用いることで、特にYBaCuO系の
酸化物超電導層を形成する際に、基材表面の結晶の格子
定数と、酸化物超電導層の格子定数とを近づけることが
できるので、形成される酸化物超電導層の結晶性を向上
させ、優れた超電導特性を備えたものとすることができ
る。
【0029】酸化物超電導層bには、RE12Cu3
7-x(RE:Y,La,Gd,Dy,Ho,Er,T
m,Yb,Nf,Sm,Euから選ばれる1種、M:B
a,Ca,Srから選ばれる1種)なる組成式で示され
るペロブスカイト型の酸化物超電導体や、Bi2Sr2
n-1Cun2n+2(nは自然数)なる組成式で代表され
るBi系、Tl2Ba2Can-1Cun2n+2(nは自然
数)なる組成式で代表されるTl系のものなどを適用す
ることができ、目的に応じて適宜選択すればよい。これ
らの酸化物超電導体の中でも、基材38表面のAgとの
格子のマッチングの点で、Y1Ba2Cu37-xなる組成
で広く知られるY系の酸化物超電導体を用いることが好
ましい。
【0030】本発明に係る酸化物超電導導体Sの特徴的
な点は、基材38の表層部に、Cuが拡散された拡散層
cを備えている点にある。すなわち、Cuの濃度が高く
されたこの拡散層cを備えていることにより、酸化物超
電導層bに含まれるCuが、基材38側へ拡散するのを
効果的に防止することができるので、Cuの拡散により
酸化物超電導層bの結晶配向性や結晶連続性が損なわれ
るのを防止することができ、その結果、基材38として
純Agを用いたもので、10万A/cm2以上の高Jc
を達成したものである。
【0031】この拡散層cに拡散させる元素としては、
Cu元素を拡散させるほか、Cuを主体とした合金を用
いても良い。例えば、CuにPt,Au,Pd,Ba,
Y等を添加したものを用いることができる。この拡散層
cは、スパッタ法や蒸着法、CVD法など周知の成膜技
術を用いて形成することができ、従来中間層として用い
られてきたYSZ等のようにイオンビームスパッタ法な
どの高度で高価な成膜技術を用いる必要がない。また、
通常のスパッタ法やCVD法などを用いることで、形成
速度を大幅に向上させることができるので、製造を容易
かつ効率的に行うことが可能とされている。
【0032】前記拡散層の層厚は、100nm以上30
0nm以下の範囲とすることが好ましく、拡散層cのC
u含有量としては、50μg/cm2以上300μg/
cm2以下の範囲とすることが好ましい。これらの範囲
に拡散層cを制御すれば、酸化物超電導層bの結晶配向
性や、結晶連続性を向上させることができ、より超電導
特性に優れた酸化物超電導体を提供することができる。
前記拡散層の層厚が100nm未満、またはCu含有量
が50μg/cm2未満の場合には、拡散層中に含まれ
るCuの量が不十分なために、酸化物超電導層からのC
uの拡散を防ぐことができないために好ましくなく、層
厚が300nmを越える、またはCu含有量が300μ
g/cm2を越える場合には、過剰なCuが酸化物超電
導層を形成する際に使用される酸素ガスと反応してCu
O等の酸化物として析出するので好ましくない。
【0033】(製造装置)次に、本発明に係る酸化物超
電導導体の製造方法に用いることができる2種類の製造
装置と、それぞれの製造装置を用いて酸化物超電導導体
を製造する場合について以下に説明する。
【0034】[製造装置の第1の例]図2は、本発明に
係る酸化物超電導導体の製造装置の第1の例を示すもの
で、この例の製造装置には、図3に構造を示すようなC
VD反応装置30が組み込まれており、このCVD反応
装置30内においてテープ状の基材上に酸化物超電導層
が形成されるようになっている。この第1例の製造装置
で用いられるCVD装置30は、図2,3に示すよう
に、横長の両端を閉じた筒型の石英製のリアクタ31
と、図2に示す気化器(原料ガス供給源)62に接続さ
れたガス拡散部40とを有している。図3に示すリアク
タ31は、隔壁32と隔壁33によって図3左側から順
に基材導入部34と反応生成室35と、基材導出部36
とに区画されている。このリアクタ31を構成する材料
は、石英に限らずステンレス鋼などの耐食性に優れた金
属であっても良い。
【0035】隔壁32,33の下部中央には、長尺のテ
ープ状の基材38が通過可能な通過孔39がそれぞれ形
成されていて、リアクタ31の内部には、その中心部を
横切る形で基材搬送領域Rが形成されている。更に、基
材導入部34にはテープ状の基材38を導入するための
導入孔が形成されるとともに、基材導出部36には基材
38を通過させている状態で各孔の隙間を閉じて基材導
入部34と基材導出部36を気密状態に保持する封止機
構(図示略)が設けられている。
【0036】反応生成室35の天井部には、図3に示す
ように略角錐台型のガス拡散部40が取り付けられてい
る。このガス拡散部40は、リアクタ31内に取り付け
られたガス拡散部材45と、ガス拡散部材45の天井壁
44に接続され、酸化物超電導体の原料ガスをガス拡散
部材45に供給するガス導入管53と、ガス導入管53
の先端部に設けられたスリットノズル(図示略)を具備
して構成されている。また、ガス拡散部材45の内部
は、その底部で反応生成室35と連通されている。
【0037】一方、反応生成室35の下方には、図3に
示すように基材搬送領域Rの長さ方向に沿って排気室7
0が設けられている。この排気室70の上部には図3に
示すように基材搬送領域Rに通されたテープ状の基材3
8の長さ方向に沿って細長い長方形状のガス排気孔70
a、70aが、機材搬送領域R内の基材38の両側にそ
れぞれ形成されている。また、排気室70の下部には、
図2に示す真空ポンプ71を備えた圧力調整装置72に
接続されている排気管70bが複数本接続されている。
従って、ガス排気孔70a、70aが形成された排気室
70と、複数本の排気管70bと、バルブと、真空ポン
プ71と、圧力調整装置72とによってガス排気機構8
0が構成される。このような構成のガス排気機構80
は、CVD反応装置30の内部の原料ガスや酸素ガスや
不活性ガスなどのガスを、ガス排気孔70a、70aを
通じて速やかに排気できるようになっている。
【0038】CVD反応装置30の外部には、図2に示
すように加熱ヒータ47が設けられ、基材導入部34が
不活性ガス供給源50に、また、基材導出部36が酸素
ガス供給源51にそれぞれ接続されている。また、ガス
拡散部40の天井壁44に接続されたガス導入管53
は、気化器(原料ガスの供給源)62に接続されてい
る。ガス導入管53の途中部分には、酸素ガスの流量調
整機構を介して酸素ガス供給源52が分岐して接続さ
れ、ガス導入管53内に酸素ガスを供給できるように構
成されている。
【0039】前記気化器62には、後述の液体原料供給
装置55の先端部(図示下部)が収納されている。ま
た、気化器62の外周部にはヒータ63が付設されてい
て、このヒータ63により液体原料供給装置55から供
給された原料溶液66を所望の温度に加熱して気化させ
ることにより原料ガスが得られるようになっている。ま
た、気化器62の内底部には保熱部材62Aが設置され
ている。この保熱部材62Aは、熱容量の大きい材料で
あって液体原料66と反応しないものであれば、どのよ
うな材料であっても良く、特に金属製の厚板が好まし
く、その構成材料としては、ステンレス鋼、ハステロ
イ、インコネルなどが好ましい。
【0040】液体原料供給装置55は、図2に示すよう
に、管状の原料溶液供給部56と、この供給部56の外
周を取り囲んで設けられた筒状のキャリアガス供給部5
7とから概略構成された2重構造のものである。原料溶
液供給部56は、後述する原液供給装置65から送り込
まれてくる原料溶液66を気化器62の内部に供給する
ものである。キャリアガス供給部57は、原料溶液供給
部56との隙間に前述の原料溶液66を噴出するための
キャリアガスを流すためのものである。そして、キャリ
アガス供給部57の上部には、キャリアガス用MFC
(流量調整器)60aを介してキャリアガス供給源60
が接続され、キャリアガス供給部57内(原料溶液供給
部56との隙間)にアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素
ガスなどのキャリアガスを供給できるように構成されて
いる。
【0041】また、気化器62の内部は仕切板62aに
より縦方向に2分割されており、分割された領域が仕切
板62aの下側において連通され、この仕切板62aの
下側の連通部分を原料ガスが通過して先のガス導入管5
3が接続された接続部53Aに流動できるように構成さ
れている。
【0042】上述の液体原料供給装置55では、原料溶
液66を原料溶液供給部56内に一定流量で送り込むと
ともにキャリアガスをキャリアガス供給部57に一定流
量で送り込むと、原料溶液66は原料溶液供給部56の
先端部に達するが、この先端部外周側のキャリアガス供
給部57の先端からキャリアガスが流れてくるので、先
端部59から吹き出される際、原料溶液66は上記キャ
リアガスとともに気化器62の内部に導入され、気化器
62の内部をその底部に到るまで移動しながら加熱、気
化され、原料ガスとされる。また、気化器62の底部に
設置された保熱部材62Aに到り、この保熱部材62A
により更に気化が成されて原料溶液が完全に気化されて
原料ガスとされる。尚、本実施形態の構造では、原料溶
液を原料溶液供給部56の先端部から霧化するのではな
く、加熱とキャリアガスとの混合のみにより原料ガスと
するので、液体原料の気化に関しては、液体原料が原料
ガスに気化されるまでの間に気化器62内部の内壁に衝
突しない構成とすることが好ましい。
【0043】このような液体原料供給装置55の原料溶
液供給部56には、原液供給装置65が加圧式液体ポン
プ67aを備えた接続管67を介して接続されている。
原液供給装置65は、収納容器68と、パージガス源6
9を備え、収納容器68の内部には原料溶液66が収納
されている。原料溶液66は、加圧式液体ポンプ67a
により吸引されて、MFC67bによりその流量を調節
されて原料溶液供給部56へ輸送される。
【0044】さらに、図2に示すようにCVD反応装置
30の基材導出部36の側部側(後段側)には、リアク
タ31内の基材搬送領域Rを通過するテープ状の基材3
8を巻き取るためのテンションドラム73と巻取ドラム
74とからなる基材搬送機構75が設けられている。そ
して、前記テンションドラム73と巻取ドラム74は正
逆回転自在に構成されている。また、基材導入部34の
側部側(前段側)には、テープ状の基材38をCVD反
応装置30に供給するためのテンションドラム76と送
出ドラム77とからなる基材搬送機構78が設けられて
いる。そして、前記テンションドラム76と、送出ドラ
ム77は正逆回転自在に構成されている。
【0045】次に、上記のように構成されたCVD反応
装置30を備えた酸化物超電導導体の製造装置を用いて
テープ状の基材38上に拡散層及び酸化物超電導層を形
成し、酸化物超電導導体を製造する場合について説明す
る。図2、図3に示す製造装置を用いて酸化物超電導導
体を製造するには、まず、テープ状の基材38と、拡散
層及び酸化物超電導層を形成するための原料溶液を用意
する。この基材38は、上述の材料で長尺のものを用い
ることができる。
【0046】拡散層をCVD反応により生成させるため
の原料溶液は、拡散層を構成する金属錯体を溶媒中に分
散させたものが好ましい。具体的には、Cuからなる拡
散層を形成する場合は、Cu(thd)2や、Cu(D
PM)2等を、テトラヒドロフラン(THF)やトルエ
ン、イソプロパノール、ジグリム(2,5,8-トリオキソノ
ナン)等の溶媒に溶解したものを用いることができる。
(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオ
ン)
【0047】酸化物超電導体をCVD反応により生成さ
せるための原料溶液は、酸化物超電導体を構成する金属
錯体を溶媒中に分散させたものが好ましい。具体的に
は、Y 1Ba2Cu37-xなる組成のY系の酸化物超電導
層を形成する場合は、Ba−ビス−2,2,6,6−テトラメ
チル−3,5−ヘプタンジオン−ビス−1,10−フェナント
ロリン(Ba(thd)2・phen2)と、Y(th
d)2と、Cu(thd)2などの金属錯体を使用するこ
とができ(phen=フェナントロリン)、他にはY-
ビス-2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート
(Y(DPM)3)と、Ba(DPM)2、Cu(DP
M)2などの金属錯体を用いることができる。
【0048】尚、酸化物超電導層には、先のY系の他
に、La2-xBaxCuO4なる組成式で代表されるLa
系、Bi2Sr2Can-1Cun2n+2(nは自然数)なる
組成式で代表されるBi系、Tl2Ba2Can-1Cun
2n+2(nは自然数)なる組成式で代表されるTl系のも
のなど、多くの種類の酸化物超電導層が知られているの
で、目的の組成に応じた金属錯塩を用いて上述のCVD
法を実施すればよい。ここで例えば、Y系以外の酸化物
超電導層を製造する場合には、必要な組成系に応じて、
トリフェニルビスマス(III)、ビス(ジピバロイメタ
ナト)ストロンチウム(II)、ビス(ジピバロイメタナ
ト)カルシウム(II)、トリス(ジピバロイメタナト)
ランタン(III)等の金属錯塩を適宜用いてそれぞれの
系の酸化物超電導層の製造に供することができる。
【0049】まず、原液供給装置65の収納容器68
に、原料溶液66として上記拡散層用の原料溶液を収納
し、液体原料供給装置55に接続しておく、そして、上
記のテープ状の基材38を用意したならば、これをCV
D反応装置30のリアクタ31内の基材搬送領域Rに、
基材搬送機構78により基材導入部34から所定の移動
速度で送り込むとともに基材搬送機構75の巻取ドラム
74で巻き取り、更に反応生成室35内の基材38を加
熱ヒータ47で所定の温度に加熱する。尚、テープ状の
基材38を送り込む前に、不活性ガス供給源50から不
活性ガスをパージガスとしてCVD反応装置30内に送
り込み、同時にCVD反応装置30の内部のガスを圧力
調整装置72によってガス排気孔70a、70aから排
気することでCVD反応装置30内の空気等の不用ガス
を排除し、内部を洗浄しておくことが好ましい。
【0050】次いで、テープ状の基材38をリアクタ3
1内に送り込んだならば、加圧式液体ポンプ67aによ
り収納容器68から原料溶液66を、流量0.1〜10
ccm程度で原料溶液供給部56内に送液し、これと同
時にキャリアガスをキャリアガス供給部57に流量20
0〜550ccm程度で送り込む。また、気化器62
は、原料溶液66が充分気化される温度に合わせてお
く。
【0051】すると、一定流量のミスト状の液体溶液6
6が気化器62内に連続的に供給され、ヒータ63によ
り加熱されて気化されて原料ガスとなり、さらにこの原
料ガスは、ガス導入管53を介してガス拡散部45に連
続的に供給される。次に、反応生成室35側に移動した
原料ガスは、反応生成室35の上方から下方に移動し、
加熱された基材38上において上記原料ガスが反応して
反応生成物が堆積し、基材38上に、拡散層が形成され
る。そして、この拡散層を備えた基材38は、巻取ドラ
ム74に巻き取られる。
【0052】以上の如く成膜を行って基材上に拡散層を
形成し、必要長さを得たならば、次に、先の原液供給装
置65の収納容器68に、酸化物超電導層を形成するた
めの原料溶液を収納する。そして、巻き取りドラム74
と送出ドラム77の回転方向を逆転し、基材38を基材
導出部36側から基材導入部34側へ移動させる。
【0053】これと同時に、酸素ガス供給源51からC
VD反応装置30内に酸素ガスを送り、更に加圧式液体
ポンプ67aにより収納容器68から原料溶液66を流
量0.1〜10ccm程度で原料溶液供給部56内に送
液し、これとともにキャリアガスをキャリアガス供給部
57に流量200〜550ccm程度で送り込む。ま
た、気化器62の内部温度が上記原料のうち最も気化温
度の高い原料の最適温度になるようにヒータ63により
調節しておく。
【0054】すると、一定流量のミスト状の液体溶液3
4が気化器62内に連続的に供給され、ヒータ63によ
り加熱されて気化されて原料ガスとなり、さらにこの原
料ガスは、原料ガス導出口53Aから導出され、ガス導
入管53を介してガス拡散部45に連続的に供給され
る。次に、反応生成室35側に移動した原料ガスは、反
応生成室35の上方から下方に移動し、加熱された基材
38上において上記原料ガスが反応して反応生成物が堆
積し、酸化物超電導層を備えた酸化物超電導導体85が
得られる。またここで、反応に寄与しない残りの原料ガ
ス等は、ガス排気孔70a、70aに引き込まれて速や
かに排出される。
【0055】そして、上述のようにして形成した酸化物
超電導導体上にさらに銀などからなる保護膜をスパッタ
法や蒸着法などにより形成すると、図1に示す安定化層
aを備えた酸化物超電導導体Sと同等のものを得ること
ができる。
【0056】尚、以上のようにして製造された酸化物超
電導導体においては、酸化物超電導層を積層した後で、
酸素雰囲気中において300〜500℃の温度で数時間
〜数10時間加熱する熱処理を施して酸化物超電導層の
結晶構造を整え、超電導特性が向上するようにしても良
い。
【0057】本製造方法により得られた酸化物超電導導
体Sにあっては、基材38の搬送速度を適切な範囲とし
て適切な厚さの酸化物超電導層bを形成しているので、
この酸化物超電導層におけるa軸配向粒の粗大化を抑制
し、位相成分の析出も防止することができ、有効な電流
パスを大きくすることができ、臨界電流密度を大きくす
ることができる。また、拡散層cを形成したことで、酸
化物超電導層bから基材38へのCuの拡散が抑制さ
れ、優れた超電導特性を備えた酸化物超電導導体とされ
ている。
【0058】[製造装置の第2の例]次に、先の酸化物
超電導層bを有する酸化物超電導導体Sを製造する場合
に用いる製造装置の第2の例と、この製造装置を用いた
製造方法について以下に説明する。図4〜図6は、本発
明に係る酸化物超電導導体の製造装置の第2例を示すも
ので、この例の製造装置には、略同等の構造を有する3
つのCVDユニットA,B,Cが組み込まれ、各CVD
反応装置30Aの反応生成室35A内においてテープ状
の基材の少なくとも一面に酸化物超電導層を積層形成で
きるようになっている。
【0059】この実施形態の酸化物超電導導体の製造装
置は、横長の両端を閉じた筒型の石英製のリアクタ31
Aを有している。このリアクタ31Aは、図5に示すよ
うに隔壁32A、33Aによって図5の左側から順に基
材導入部34Aと反応生成室35Aと、基材導出部36
Aに区画されているとともに、隔壁32Aと隔壁33A
の間に設けられた複数の隔壁37A(図面では4枚の隔
壁)によって、上記反応生成室35Aが複数に分割(図
面では3分割)されて、それぞれが前述のCVD反応装
置30Aと略同等の構造とされるとともに、隣り合う反
応生成室35A,35Aの間(隣り合う隔壁37,37
の間)には、2つの境界室38Aが区画されている。従
って、このリアクタ31Aには、反応生成室35Aが後
述する基材搬送領域Rに送り込まれるテープ状の基材T
の移動方向に直列に複数(図面では3つの反応生成室)
が設けられていることになる。尚、リアクタ31Aを構
成する材料は、石英に限らずステンレス鋼などの耐食性
に優れた金属であっても良い。
【0060】上記隔壁32A,37A,37A,37
A,37A,33Aの下部中央には、図5と図6に示す
ように、長尺のテープ状の基材Tが通過可能な通過孔3
9Aがそれぞれ形成されていて、リアクタ31Aの内部
には、その中心部を横切る形で基材搬送領域Rが形成さ
れている。さらに、基材導入部34Aにはテープ状の基
材Tを導入するための導入孔が形成されるとともに、基
材導出部36Aには基材Tを導出するための導出孔が形
成されている。また、導入孔と導出孔の周縁部には、基
材Tを通過させている状態で各孔の隙間を閉じて基材導
入部34Aと基材導出部36Aを気密状態に保持するた
めの封止機構(図示略)が設けられている。
【0061】各反応生成室35Aの天井部には、図5に
示すように略角錐台型のガス拡散部40が取り付けられ
ている。これらのガス拡散部40は先に説明した例のガ
ス拡散部40と同等の構造とされている。また、ガス拡
散部材45の底面は、細長い長方形状の開口部46Aと
され、この開口部46Aを介してガス拡散部材45が反
応生成室35Aに連通されている。
【0062】また、図4,5に示すように、境界室38
Aの天井部には、遮断ガス供給手段38Bが供給管38
Cを介して接続され、遮断ガス供給手段38Bは、境界
室38Aの両側の反応生成室35A,35Aどうしを遮
断するための遮断ガスを供給し、供給管38Cは、遮断
ガス噴出部を介して境界室38Aに接続されている。こ
の遮断ガスとして例えばアルゴンガスが選択される。
【0063】一方、各反応生成室35A及び境界室38
Aの下方には、図6に示すように基材搬送領域Rの長さ
方向に沿って各反応生成室35A及び境界室38Aを貫
通するように排気室70Aが設けられている。この排気
室70Aの上部には、図5に示すように、基材搬送領域
Rに通されたテープ状の基材Tの長さ方向に沿って細長
い長方形状のガス排気孔70a、70aが各反応生成室
35A及び境界室38Aを貫通するようにそれぞれ基材
Tの両側に形成されており、このガス排気孔70a、7
0aには、隔壁32,33,37の基材搬送領域Rの両
側か端部が貫通状態とされている。また、排気室70A
の下部には複数本(図面では7本)の排気管70bがそ
れぞれ接続されており、これらの排気管70bは、図4
に示す真空ポンプ71を備えた圧力調整装置72に接続
されている。
【0064】また、先の図3に示す構造の装置と同様
に、ガス排気孔70a、70aが形成された排気室70
Aと、排気孔70c,70eを有する複数本の排気管7
0b…と、バルブ70dと、真空ポンプ71と、圧力調
整装置72によってガス排気手段80Aが構成されてい
る。このような構成のガス排気手段80Aは、CVD反
応装置30の内部の原料ガスや酸素ガスや不活性ガス、
及び遮断ガスなどのガスを速やかに排気できるようにな
っている。
【0065】リアクタ31Aの外部には、図4に示すよ
うに加熱ヒータ47Aが設けられている。図4に示す例
では、3つの反応生成室35Aに亘って連続する加熱ヒ
ータ47Aとしたが、この加熱ヒータ47Aを、各CV
D反応装置30の反応生成室35Aに対して独立の構造
とすることも可能である。更に、リアクタ31Aの基材
導入部34Aが不活性ガス供給源51Aに、また、基材
導出部36Aが酸素ガス供給源51Bにそれぞれ接続さ
れている。
【0066】CVDユニットAに備えられているガス拡
散部40の天井壁44に接続された各原料ガス導入管5
3Aは、図4に示すように、後述のガスミキサ48を介
して、後述する拡散層の原料ガス供給手段50aの原料
ガスの気化器(原料ガスの供給源)に接続されている。
また、CVDユニットB,Cに備えられている各ガス拡
散部40の天井壁44に接続された各原料ガス導入管5
3Aは、ガスミキサ48を介して、酸化物超電導体の原
料ガス供給手段50bの原料ガスの気化器(原料ガスの
供給源)に接続されている。
【0067】前記拡散層の原料ガス供給手段50a及び
酸化物超電導体の原料ガス供給手段50bは、図2に示
す先に説明の原液供給装置65と液体原料供給装置55
と、原料溶液気化装置(原料ガス供給源)62とを備え
て概略構成されている。その他の構成は先の図2、3に
示す装置と同等であるので、同等の構成については同一
の符号を付してそれらの部分の説明を省略する。
【0068】次に、上記のように構成されたCVDユニ
ットA,B,Cを有する酸化物超電導導体の製造装置を
用いてテープ状の基材T上にCuからなる拡散層を形成
し、この拡散層上に酸化物超電導層を形成して酸化物超
電導導体を製造する場合について説明する。
【0069】図4〜図6に示す製造装置を用いて酸化物
超電導導体を製造するには、まず、テープ状の基材T
と、拡散層の原料溶液と、酸化物超電導導体の原料溶液
を用意する。この基材Tは、先の例で用いた基材38と
同等のものを用いることができる。また、酸化物超電導
導体をCVD反応により生成させるための液体原料につ
いても先に説明の装置と同等のものを用いることができ
る。
【0070】そして、上記のようなテープ状の基材Tを
用意したならば、これを酸化物超電導導体の製造装置内
の基材搬送領域Rに基材搬送機構78により基材導入部
34Aから所定の移動速度で送り込むとともに基材搬送
機構の巻き取りドラム74で巻き取る。また、各原料ガ
ス供給手段50aによってCVDユニットA,B,Cの
CVD反応装置30にガスを送り込む方法についても先
の一例と同等でよい。これにより、基材Tを3つのリア
クタ31Aに順次送り込むことができ、基材T上に拡散
層と、酸化物超電導層とが積層された酸化物超電導導体
を得ることができる。
【0071】さらに、制御手段82Aは、CVDユニッ
トA,B,Cごとにガス分圧を独立に制御して、各反応
生成室35A内において所定のガス分圧を維持するよう
に原料ガス供給手段50a、50b、50bを制御す
る。この際、制御手段82Aは、テープ状の基材Tの移
動方向の反応生成室35のガス分圧よりも、テープ状の
基材Tの移動方向下流側の反応生成室35のガス分圧が
高くなるように原料ガス供給手段50a、50b、50
bを制御することが好ましい。尚、酸化物超電導層の成
膜後は、必要に応じて酸化物超電導薄膜の結晶構造を整
えるための熱処理を施しても良い。
【0072】最後に、上述のようにして形成された酸化
物超電導導体S上にさらに銀などからなる安定化層をス
パッタ法や蒸着法などにより形成すると、図1に示す安
定化層aを備えた酸化物超電導導体Sと同等の酸化物超
電導導体を得ることができる。また、この安定化層は、
図4〜図6に示す製造装置の反応生成室35Aの一つま
たは複数において、CVD法により形成することもでき
る。このような構成とすれば、安定化層を備えた酸化物
超電導導体を上記製造装置において連続して製造するこ
とができる。
【0073】図4〜図6に示す構造の装置を用いて酸化
物超電導導体Sを製造するならば、拡散層と、安定化層
を備えた酸化物超電導導体を1回の基材Tの移動により
製造することができる。この例で得られる酸化物超電導
導体にあっても、基材Tの搬送速度を適切な範囲として
適切な厚さの拡散層と、酸化物超電導層が積層されてい
るので、上述のように優れた超電導特性を備えた酸化物
超電導導体とされている。
【0074】尚、図4〜図6に示す装置を用いて送出ド
ラム77と巻き取りドラム74との間において基材Tを
繰り返し往復移動し、4層、あるいは6層などの積層数
の酸化物超電導層を積層して酸化物超電導導体を製造し
ても良い。また、上記の例では、1段目(基材導入部3
4A側)の反応生成室35Aにおいて拡散層を形成し、
その後の2,3段目の反応生成室35Aにおいて酸化物
超電導層を形成する場合について説明したが、本例の製
造装置を用いた製造方法は、この方法に限定されるもの
ではない。例えば、3つの反応生成室35Aを全て拡散
層の成膜に割り当てた状態で、基材Tを移動させながら
基材T上にまず拡散層を形成し、必要な長さの成膜を終
えた後、今度は3つの反応生成室35Aを酸化物超電導
層の成膜ができるように原料ガスの供給手段を入れ替
え、送出ドラム77と、巻取ドラム74の回転方向を逆
転させて基材Tを基材導出部36A側から基材導入部3
4A側へ向かって移動する状態とし、前記基材T上に形
成された拡散層上に、酸化物超電導層を形成するように
することもできる。
【0075】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例により、具
体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。 (実施例1) [液体原料及び基材]本実施例では、拡散層を設けるこ
とによる効果を明らかにするために、Ag(110)単
結晶の基材を用いて酸化物超電導導体を作製した。上記
基材の寸法は、W10mm×L50mm×t0.3mmと
した。
【0076】まず、Y1Ba2Cu37-xなる組成のY系
の酸化物超電導層を形成するために、CVD用の原料溶
液としてBa-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタ
ンジオン-ビス-1,10-フェナントロリン(Ba(th
d)2(phen)2)と、Y(thd)2と、Cu(t
hd)2を用いた。これらの各々をY:Ba:Cu=
1.0:3.0:2.7のモル比で混合し、テトラヒド
ロフラン(THF)の溶媒中に7.0重量%になるよう
に添加したものを酸化物超電導層の液体原料(原料溶
液)とした。また、拡散層の液体原料として、Cu(t
hd)2をTHFの溶媒中に7.0重量%になるように
添加したものを用意した。
【0077】本例では、酸化物超電導導体の製造に図4
〜図6に示す製造装置を用い、製造方法としては、まず
上記拡散層用の液体原料を用いて基材の表層部にCuが
拡散された拡散層を形成し、次に酸化物超電導体の液体
原料を用いて、この拡散層上に酸化物超電導導体を成膜
して酸化物超電導導体を作製する方法を採用した。
【0078】[拡散層の成膜]先の拡散層の原料溶液を
加圧式液体ポンプ(加圧源)により0.27ml/分の
流速で、液体原料供給装置の原料溶液供給部に連続的に
供給した。これと同時にキャリアガスとしてArをキャ
リアガス供給部に流量300ccm程度で送り込んだ。
以上の操作により、一定量のミスト状の液体原料を気化
器内に連続的に供給し、更にこの液体原料が気化した原
料ガスをガス導入管を経てCVD反応装置のガス拡散部
材に一定量連続的に供給した。この時の気化器及び輸送
管の温度は230℃とした。
【0079】送出ドラム側から巻取ドラム側に移動させ
る基材のリアクタ内の基材移動速度を6.0m/h、基
材加熱温度を700℃、リアクタ内圧力を5.0Tor
r(5.0×133Pa)に設定して、基材表層部に層
厚200nmのCuの拡散層を連続的に形成し、所定長
さの基材の移動が終了するまで成膜を行った。尚、この
拡散層が形成された基材表層部のCu含有量を分析した
ところ、1cm2あたり100〜200μgであり、本
発明の要件を満たしていた。
【0080】[酸化物超電導層の成膜]次に、送出ドラ
ム側から巻取ドラム側に移動させる必要長さの基材の移
動を終了した後、上記拡散層の原料溶液を、酸化物超電
導層の原料溶液と入れ替えた。そして、この酸化物超電
導層の原料溶液を加圧式液体ポンプにより0.27ml
/分の流速で、液体原料供給装置の原料溶液供給部に連
続的に供給し、これと同時にキャリアガスとしてArを
キャリアガス供給部に流量300ccm程度で送り込ん
だ。以上の操作により一定量のミスト状の液体原料を気
化器内に連続的に供給し、更にこの液体原料が気化した
原料ガスをガス導入管を経てCVD反応装置のガス拡散
部材に一定量連続的に供給した。この時の気化器及び輸
送管の温度は230℃とした。
【0081】そして、送出ドラムと巻取ドラムの回転方
向を逆転させて、巻取ドラム側から送出ドラム側に移動
させる基材のリアクタ内の基材移動速度を1.0m/
h、基材加熱温度を780℃、リアクタ内圧力を5.0
Torr(5.0×133Pa)、設定酸素分圧値を
1.43〜1.53Torr(1.43×133〜1.
53×133Pa)に設定して、移動する基材上に厚さ
0.78μmのYBaCuO系の酸化物超電導層を連続
的に形成し、所定長さの基材の移動が終了するまで成膜
を行った。以上の工程により拡散層を備えた酸化物超電
導導体を得た。この実施例1の酸化物超電導導体の製造
条件を以下の表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】(比較例1)先に示したCVD装置と酸化
物超電導層の原料溶液、基材等は同等のものを用いて、
拡散層を成膜しない以外は、上記実施例1と同様にして
酸化物超電導導体を作製した。
【0084】[分析・評価]次に、上記にて得られた実
施例1及び比較例1の酸化物超電導導体について、超電
導特性の評価を行った。その結果を表3に示す。表3に
示すように、Ag(110)単結晶基材上に形成した場
合、実施例1の酸化物超電導導体は、34万A/cm2
と、比較例1の酸化物超電導導体の3万A/cm2と比
較して1桁高いJcが得られることが確認された。
【0085】
【表3】
【0086】Ag(110)単結晶を基材として用いた
場合、Agの結晶粒界による酸化物超電導層への影響は
ほとんど無く、無視できる程度であると考えられる。従
って、拡散層を積層した実施例1の酸化物超電導導体の
Jcが大きく改善されているのは、酸化物超電導層であ
るYBaCuO膜からAg基材へのCuの拡散が緩和さ
れ、酸化物超電導層の結晶配向性が大きく向上したため
であると推定される。
【0087】(実施例2)次に、{110}<110>
集合組織を有するAg基材を用いて、本発明に係る拡散
層の効果を検証した。通常、Ag{110}<110>
の集合組織を得るためには、一定の圧延加工を加えたテ
ープ状のAg基材に対して800〜900℃で数時間の
熱処理を施す必要があり、この集合組織化熱処理と、酸
化物超電導層を成膜するための加熱により、Ag粒界が
成長し、Ag基材表面の平滑性が損なわれると考えられ
ている。
【0088】つまり、{110}<110>集合組織を
有するAg基材上に酸化物超電導層を形成して酸化物超
電導導体を作製する場合には、Ag基材の集合組織化の
ための熱処理の条件によっても超電導特性が大きく変化
する可能性がある。従って、本例では、Ag{110}
<110>集合組織を得るための熱処理の条件と、拡散
層の成膜条件を種々に変化させて酸化物超電導導体を作
製し、その超電導特性を評価した。
【0089】以下に、本例で作製した試料A〜Dの4種
の酸化物超電導導体の製造工程を示す。試料A,Bは、
拡散層を成膜せず、集合組織化熱処理の際の雰囲気を大
気下と、アルゴン雰囲気下でそれぞれ行った。試料C,
Dではいずれも拡散層を成膜し、集合組織化熱処理をい
ずれもアルゴン雰囲気下で行ったが、試料Cは、集合組
織化熱処理よりも先に拡散層の成膜を行い、試料Dは集
合組織化熱処理よりも後に拡散層の成膜を行った。
【0090】[試料A] 工程1:集合組織化熱処理(大気中にて800〜900
℃、数十分〜数時間) 工程2:酸化物超電導層の成膜(成膜温度:700〜8
00℃)
【0091】[試料B] 工程1:集合組織化熱処理(アルゴン中にて800〜9
00℃、数十分〜数時間) 工程2:酸化物超電導層の成膜(成膜温度:700〜8
00℃)
【0092】[試料C] 工程1:拡散層の成膜(成膜温度:700℃) 工程2:集合組織化熱処理(アルゴン中にて800〜9
00℃、数十分〜数時間) 工程3:酸化物超電導層の成膜(成膜温度:700〜8
00℃)
【0093】[試料D] 工程1:集合組織化熱処理(アルゴン中にて800〜9
00℃、数十分〜数時間) 工程2:拡散層の成膜(成膜温度:700℃) 工程3:酸化物超電導層の成膜(成膜温度:700〜8
00℃)
【0094】本例における上記条件以外の製造条件は、
試料A,Bについては、酸化物超電導層の成膜条件を表
2に示す条件とし、試料C,Dについては、拡散層及び
酸化物超電導層のいずれの成膜条件も表2に示す条件と
同等とした。
【0095】[分析・評価]上記にて作製された試料A
〜Dの酸化物超電導導体について、超電導特性の評価を
行った。その結果を表4に示す。表4に示すように、拡
散層を成膜した試料C,Dの酸化物超電導導体はJcが
20万A/cm2以上であり、Jcが3万A/cm2程度
の試料A,Bと比較して、大幅にJcが向上しているこ
とが確認された。またこれらの試料C,Dのうちでも、
拡散層を集合組織化熱処理よりも先に行った試料Cの方
がより高いJcを示した。この結果から、Ag{11
0}<110>集合組織を有する基材を用いた場合に
も、拡散層を形成することで、超電導特性を大幅に改善
できることが確認された。拡散層の成膜を集合組織化熱
処理よりも先行して行った試料Cが、より大きなJcを
示したのは、Ag基材表面が拡散層で被覆されたこと
で、Agの粒界成長が阻害され、基材表面の平滑性が維
持されたことによると考えられる。
【0096】
【表4】
【0097】一方、拡散層が成膜されていない試料A,
Bの酸化物超電導導体では、アルゴン雰囲気下で集合組
織化熱処理を行った試料Bの方が、より高いJcを示し
た。これらの試料A,Bの結晶配向度は同等であること
から、アルゴン雰囲気下で集合組織化熱処理を施すこと
で、Ag基材表面の粒界成長を抑えることができると推
定される。
【0098】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の酸
化物超電導導体は、Agを含む基材と、酸化物超電導層
との間に、Cuを含む拡散層を備えた構成としたので、
酸化物超電導層からAg基材へのCuの拡散を抑制する
ことができ、これによりAg基材表面での粒界成長を抑
制することができるので、酸化物超電導層の組成が乱れ
たり、結晶の連続性が損なわれることが無く、超電導特
性に優れた酸化物超電導導体とすることができる。
【0099】また、本発明に係る酸化物超電導導体で
は、その基材として純Agを用いることで、より優れた
超電導特性を備えた酸化物超電導導体とすることができ
る。これは、上記拡散層を設けたことで、酸化物超電導
層からのCuの拡散や、Agの粒界成長等の純Ag基材
の問題点を解決することができ、またこれにより優れた
結晶配向性を有する純Ag基材の特性を生かして、さら
なる超電導特性の向上を達成することができるためであ
る。
【0100】次に、本発明の酸化物超電導導体の製造方
法は、Agの基材上にCuを含む拡散層を成膜し、この
拡散層上に前記酸化物超電導層を成膜することとしたの
で、酸化物超電導層からAg基材へのCuの拡散が抑制
され、超電導特性に優れた酸化物超電導導体を容易に製
造することができる。また、上記Cuを含む拡散層は、
YSZ等の多結晶中間層のように、その成膜に高度で高
価な成膜技術を用いる必要が無く、通常のスパッタや蒸
着、CVD法などにより容易に形成することができる。
従って、本構成によれば、安価に超電導特性に優れた酸
化物超電導導体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の一実施の形態である酸化物
超電導導体の断面構造を示す図である。
【図2】 図2は、本発明に係る酸化物超電導導体の製
造装置の第1例を示す構成図である。
【図3】 図3は、図2に示す製造装置に備えられたリ
アクタの構造例を示す斜視構成図である。
【図4】 図4は、本発明に係る酸化物超電導導体の製
造装置の第2例の全体構成を示す図である。
【図5】 図5は、図4に示す製造装置に備えられたリ
アクタの構造例を示す斜視構成図である。
【図6】 図6は、図4に示す製造装置に備えられたリ
アクタの構造例を示す断面構成図である。
【図7】 図7は、従来の酸化物超電導導体の一例を示
す断面図である。
【図8】 図8は、従来の酸化物超電導導体の他の例を
示す断面図である。
【符号の説明】
S…酸化物超電導導体、a…安定化層、b…酸化物超電
導層、c…拡散層、38,T…基材、A,B,C…CV
Dユニット、30,30A…CVD反応装置、31,3
1A…リアクタ、32,33,32A,33A,37A
…隔壁、34,34A…基材導入部、36,36A…基
材導出部、38A…境界室、39,39A…基材通過
孔、40…ガス拡散部、53,53A…原料ガス導入
管、80,80A…ガス排気手段、R…基材搬送領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斉藤 隆 東京都江東区木場1丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 鹿島 直二 愛知県名古屋市緑区大高町字北関山20番地 の1 中部電力株式会社電力技術研究所内 (72)発明者 長屋 重夫 愛知県名古屋市緑区大高町字北関山20番地 の1 中部電力株式会社電力技術研究所内 Fターム(参考) 5G321 AA01 BA01 BA03 BA06 CA21 CA26 DB33

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Agを含むテープ状の基材の少なくとも
    一面側において酸化物超電導体の原料ガスを化学反応さ
    せて前記基材上に成膜する方法により得られた酸化物超
    電導層を有する酸化物超電導導体であって、 前記基材の酸化物超電導層側の表層部に、Ag中にCu
    が拡散された拡散層が形成され、該拡散層上に前記酸化
    物超電導層が形成されたことを特徴とする酸化物超電導
    導体。
  2. 【請求項2】 前記基材が、純Agで構成されたことを
    特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体。
  3. 【請求項3】 前記拡散層のCu含有量が、50μg/
    cm2以上300μg/cm2以下とされたことを特徴と
    する請求項1または2に記載の酸化物超電導導体。
  4. 【請求項4】 前記拡散層の層厚が、100nm以上3
    00nm以下とされたことを特徴とする請求項1ないし
    3のいずれか1項に記載の酸化物超電導導体。
  5. 【請求項5】 テープ状の基材の少なくとも一面側にお
    いて酸化物超電導体の原料ガスを化学反応させる方法に
    より基材上に酸化物超電導層を生成する酸化物超電導導
    体の製造方法であって、 前記基材の表層部にCuを拡散させた拡散層を成膜し、
    該拡散層上に前記酸化物超電導層を成膜することを特徴
    とする酸化物超電導導体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記拡散層を、100nm以上300n
    m以下の層厚に成膜することを特徴とする請求項5に記
    載の酸化物超電導導体の製造方法。
  7. 【請求項7】 移動中のテープ状の基材の少なくとも一
    面側に酸化物超電導導体の原料ガスを化学反応させて酸
    化物超電導薄膜を成膜するCVD反応を行うリアクタ
    と、前記リアクタに酸化物超電導導体原料ガスを供給す
    る酸化物超電導導体の原料ガス供給手段と、前記リアク
    タ内のガスを排気するガス排気手段とが備えられ、 前記酸化物超電導導体の原料ガス供給手段に、酸化物超
    電導導体の原料ガス供給源と、酸化物超電導導体の原料
    ガス導入管と、酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段と
    が備えられ、 前記リアクタに、基材導入部と反応生成室と基材導出部
    とがそれぞれ隔壁を介して区画され、前記反応生成室が
    テープ状の基材の移動方向に直列に複数設けられ、前記
    各隔壁に基材通過孔が形成され、前記リアクタの内部に
    基材導入部と複数の反応生成室と基材導出部とを通過す
    る基材搬送領域が形成され、前記複数設けられた反応生
    成室にそれぞれガス拡散部が設けられ、 前記複数設けられた反応生成室が成膜領域とされ、該反
    応生成室に前記ガス拡散部を介して前記酸化物超電導体
    の原料ガス導入管が接続されてなる成膜装置を用いて成
    膜することを特徴とする請求項5または6に記載の酸化
    物超電導導体の製造方法。
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JP2013077568A (ja) * 2012-11-15 2013-04-25 Sumitomo Electric Ind Ltd 膜形成用配向基板および超電導線材ならびに膜形成用配向基板の製造方法

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