JP2003003227A - 靭性に優れた鋼材 - Google Patents

靭性に優れた鋼材

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JP2003003227A JP2001185360A JP2001185360A JP2003003227A JP 2003003227 A JP2003003227 A JP 2003003227A JP 2001185360 A JP2001185360 A JP 2001185360A JP 2001185360 A JP2001185360 A JP 2001185360A JP 2003003227 A JP2003003227 A JP 2003003227A
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浩幸 白幡
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 大型構造用鋼として要求される強度と靭性と
を有し,再加熱時のオーステナイト粒径が小さく、低圧
下率の圧延であってもフェライトが微細粒化する高靭性
の鋼材を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.05−0.2、S
i:0.05−0.4、Mn:0.4−2、P:0.0
2以下、S:0.02以下、Al:0.005−0.0
4、Ti:0.005−0.03、Ca:0.0005
−0.003を有する鋼で、かつ、0.005〜2.0
μmの酸化物粒子を100〜3000個/mm含有
し、その酸化物粒子中にCa:5%以上、Al:5%以
上をそれぞれ含有し、CaとAlとの合計が50%以上
で、かつ鋼を1373°K以上1573°K以下の温度
Tで時間t(s)加熱したときの旧オーステナイト粒径
が次式で求められるDよりも小さい鋼材。 D=(0.154*T−210)*1n(t)−(0.
328*T−460)(μm)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、造船、建築、橋
梁、タンク及び圧力容器等の大型鋼構造物向けの強度と
靭性に優れた構造用鋼材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の鋼構造物の軽量化又は鋼構造物の
大型化に伴って板厚50mm以上にも達する構造用厚鋼
板が用いられることとなり、使用される鋼材に対する要
求は一段と厳しくなっている。そのために、これらの構
造用鋼材には強度と靭性の向上が望まれるが、高強度化
は靭性を低下させる場合が多い。このため、強度と靭性
の両方の性質を向上させるべく種種の技術が提案されて
いる。
【0003】強度と靭性を両立し得る冶金的因子として
従来から知られている手段が、ミクロ組織の細粒化とN
iの多量添加である。Niの多量添加は経済性を著しく
損なうため、ミクロ組織を細粒化するべく、これまでに
制御圧延・制御冷却技術あるいは多段熱処理技術に関す
る多くの研究開発が行われてきた。
【0004】制御圧延・制御冷却技術については、例え
ば板厚25mm程度であればフェライト粒径にて15μ
m程度までの細粒化が可能であり広く実用化されてきた
が、更なる細粒化が求められるのみならず、従来から圧
延温度が制限されることによる生産性の低下の問題が未
解決となっている。さらには厚手材(特にその板厚中心
部)においては十分な加工歪および冷却速度の確保が困
難であることから、例えば板厚50mm程度の板厚中心
部においてはフェライト粒径にて30μm程度までしか
細粒化できないため制御圧延・制御冷却の適用板厚には
限界があった。
【0005】多段熱処理を行うことは厚手材でも多少細
粒化の効果が得られるが、生産性を大幅に損なうため現
実的な手段とはなり得ない。
【0006】制御圧延・制御冷却、あるいは多段熱処理
の技術思想と異なる細粒化の思想として、粒内変態を利
用するものがあり、特開平4−279248号公報には
粒子径が0.1〜3.0μmの範囲内にあるTiを含む
酸化物と該酸化物とTiN、MnSの複合析出物粒子の
合計が、40〜300個/mm2を含有する鋳片に鋳造
し、MnS、TiN、VNの複合析出によるオーステナ
イト粒内から粒内フェライトの生成によりミクロ組織を
細粒化せしめる技術が開示されているが、粒内変態に先
立つオーステナイト粒の微細化効果が小さい。
【0007】以上述べたように厚鋼板のミクロ組織を安
定して微細化し靭性を向上させ得る技術は必ずしも満足
できないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑み、大型構造用鋼として要求される強度と靭性とを兼
ね備えた鋼材、特に圧延前に1373°K〜1573°
Kの加熱温度に加熱しても再加熱オーステナイト粒径が
小さく、低圧下率の圧延であってもフェライトが微細粒
化し、靭性が向上し得る鋼材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】本発明者は、鋼成分及び鋼中に分散させる
酸化物粒子並びに旧オーステナイト粒径を規定すること
により、強度と靭性に優れた鋼材が得られることを見出
して、本発明を完成した。
【0011】本発明の要旨は以下の通りである。
【0012】(1) 質量%で、C:0.05〜0.2
%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.4〜2.0
%、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:
0.005〜0.04%、Ti:0.005〜0.03
%、Ca:0.0005〜0.003%を含有し、残部
はFe及び不可避不純物から成る鋼で、かつ、この鋼中
に円相当径で0.005〜2.0μmの酸化物粒子を単
位面積当たりの個数密度で100〜3000個/mm2
含有し、その酸化物粒子の組成が少なくともCa、A
l、Oを含み、Oを除いた元素が質量比で、Ca:5%
以上、Al:5%以上をそれぞれ含有し、CaとAlと
の合計が50%以上で、かつ鋼を1373°K以上15
73°K以下の温度Tで時間t(s)加熱したときの旧
オーステナイト粒径が下記の式で求められるDよりも小
さいことを特徴とする靭性の優れた鋼材。 D=(0.154*T−210)*ln(t)−(0.
328*T−460)(μm)
【0013】(2) 前記酸化物粒子の組成が少なくと
もCa、Al、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比
で、Ca:5%以上、Al:5%以上、S:1%以上を
それぞれ含有し、CaとAlとSとの合計が51%以上
で、残部がその他不可避不純物から成ることを特徴とす
る上記(1)記載の靭性に優れた鋼材。
【0014】(3) 質量%で、C:0.05〜0.2
%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.4〜2.0
%、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:
0.005〜0.04%、Ti:0.005〜0.03
%、Ca:0.0005〜0.003%、Mg:0.0
02%以下を含有し、残部はFe及び不可避不純物から
成る鋼で、かつ、この鋼中に円相当径で0.005〜
2.0μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数密度で
100〜3000個/mm2含有し、その酸化物粒子の
組成が少なくともCa、Al、Mg、Oを含み、Oを除
いた元素が質量比で、Ca:5%以上、Al:5%以
上、Mg:1%以上をそれぞれ含有し、CaとAlとM
gとの合計が51%以上で、かつ鋼を1373°K以上
1573°K以下の温度Tで時間t(s)加熱したとき
の旧オーステナイト粒径が下記の式で求められるDより
も小さいことを特徴とする靭性の優れた鋼材。 D=(0.154*T−210)*ln(t)−(0.
328*T−460)(μm)
【0015】(4) 前記酸化物粒子の組成が少なくと
もCa、Al、Mg、O、Sを含み、Oを除いた元素が
質量比で、Ca:5%以上、Al:5%以上、Mg:1
%以上、S:1%以上をそれぞれ含有し、CaとAlと
MgとSとの合計が52%以上で、残部がその他不可避
不純物から成ることを特徴とする上記(3)記載の靭性
に優れた鋼材。
【0016】(5) 質量%で、Nb:0.05%以
下、V:0.1%以下、Cr:0.6%以下、Mo:
0.6%以下の内の1種または2種以上を含有すること
を特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の靭
性に優れた鋼材。
【0017】(6) 質量%で、Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下の内の1種または2種を含有するこ
とを特徴とする上記(1)〜(5)のいすれかに記載の
靭性に優れた鋼材。
【0018】(7) 質量%で、B:0.0005〜
0.003%を含有することを特徴とする上記(1)〜
(6)のいずれかに記載の鋼材。
【0019】(8) 前記酸化物粒子が円相当径で0.
1〜2.0μmであることを特徴とする上記(1)〜
(7)のいずれかに記載の靭性に優れた鋼材。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明者らは靭性を向上させる金属組織要因とし
て、1000〜1300℃に加熱される再加熱オーステ
ナイト細粒化を、酸化物を利用して達成することを検討
した。再加熱オーステナイト粒が細粒化することでその
後の変態によって生成するフェライト粒が細粒になるた
めである。
【0021】再加熱オーステナイト粒を細粒化するため
には高温でのオーステナイト粒成長を抑制することが必
要である。その手段として最も有効な方法は、分散粒子
によりオーステナイトの粒界をピンニングし、粒界の移
動を止める方法が考えられる。そのような作用をする分
散粒子の一つとしては、従来、Ti窒化物と酸化物が有
効であると考えられていた。しかしながら、Ti窒化物
は1000℃以上の高温では固溶する割合が大きくなる
ため、ピンニング効果が小さく、ピンニング粒子に適さ
ない。このため、高温で安定な酸化物をピンニング粒子
として活用することにした。
【0022】また、分散粒子による結晶粒界のピンニン
グ効果は、分散粒子の体積率が大きいほど、一個の粒子
径が大きいほど大きい。ただし、分散粒子の体積率は鋼
中に含まれる粒子を構成する元素の濃度によって上限が
あるので、体積率を一定と仮定した場合には、粒子径は
ある程度小さい方がピンニングには有効である。このよ
うな観点から、本発明者らは酸化物の体積分率を大き
く、かつ適正な粒子径となるよう、種々の検討を行っ
た。
【0023】酸化物の体積分率を大きくする手段の一つ
として、酸素量を増大させることがあるが、酸素量の増
大は材質に有害な粗大酸化物をも多数生成する原因とな
るため、有効な手段ではない。そこで本発明者らは、酸
素を最大限に利用するため、酸素との溶解度積が小さい
元素を活用することを検討した。酸素との溶解度積が小
さい、すなわち強脱酸元素として、一般的にはAlが用
いられる。しかしながら、Alだけでは酸素を充分利用
するには不充分で、さらにAlよりも強い脱酸元素が必
要で、鉄鋼の脱酸工程で汎用的に使用されるCaを活用
することが重要である。Caは酸素との溶解度積が小さ
いため、同量の酸素に対してAlよりも一層多量の酸化
物を生成することができる。脱酸元素としてCaを用い
た実験を行った結果、鋼中に生成する酸化物粒子の組成
として、CaとAlが含まれることが必要であり、その
合計が50%以上で、且つ、その中で、 Caが5%以
上、Alが5%以上含まれることで、酸化物の体積分率
すなわち酸化物量を大きくすることが可能となることを
知見した。この結果を基に、鋼中に含まれる酸化物粒子
の組成を、少なくともCa、Al、Oを含み、Oを除い
た元素が質量比でCaを5%以上、Alを5%以上とし
た。
【0024】また、Caと同時にMgを使用することも
酸化物を多数生成させることに有効である。MgはCa
ほどの効果はないものの、Alより強い脱酸元素であ
り、酸素との溶解度積が小さい。したがって、MgをC
aと複合して脱酸に使用することで酸化物個数を一層増
加させることが可能となる。発明者らは脱酸元素として
Caを用いた実験を行った結果、鋼中に生成する酸化物
粒子の組成として、CaとAlの他にMgが含まれるこ
とが好ましく、その合計が51%以上で、且つ、その中
で、Caが5%以上、Alが5%以上、Mgが1%以上
含まれることで、酸化物の体積分率すなわち酸化物量を
一層大きくすることが可能となることを知見した。この
結果を基に、鋼中に含まれる酸化物粒子の組成を、少な
くともCa、Al、Mg、Oを含み、Oを除いた元素が
質量比でCaを5%以上、Alを5%以上、Mgを1%
以上とした。
【0025】さらには、本発明者らは、酸化物の周囲に
CaS及びMgSといった硫化物が析出することで、酸
化物と硫化物とを併せてより一層の体積分率の増加が可
能となることを見出したのである。この結果をもとに、
鋼中に含まれる粒子の組成を、少なくともCa、Al、
O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比でCaを5%以
上、Alを5%以上、Sを1%以上、もしくは、少なく
ともCa、Al、Mg、O、Sを含み、Oを除いた元素
が質量比でCaを5%以上、Alを5%以上、Mgを1
%以上、Sを1%以上で、 Ca、Al、Sの合計が5
1%以上、 Ca、Al、Mg、Sの合計が52%以上
であることが更に好ましい。
【0026】次に、ピンニングに有効な酸化物粒子の大
きさについて述べる。
【0027】分散粒子による結晶粒界のピンニング効果
は、分散粒子の体積率が大きいほど、一個の粒子径が大
きいほど大きいが、粒子の体積率が一定のとき、一個の
酸化物粒子の大きさが小さい方が粒子数が多くなりピン
ニング効果が大きくなるが、あまり小さくなると粒界に
存在する粒子の割合が小さくなるため、その効果は低減
すると考えた。粒子の大きさを種々変化させた試験片を
用いて、高温に加熱したときのオーステナイト粒径を詳
細に調査した結果、ピンニングには粒子の大きさとし
て、0.005〜2.0μmのものが効果が大きいこと
をつきとめた。さらに、オーステナイト粒界の移動を止
めるピンニング力は分散粒子のサイズが大きいほど強い
ことが判明し、粒子径0.005〜2.0μmの中でも
0.1〜2.0μmの粒子の大きさが特に有効であるこ
とを知見するに至った。0.1μmより小さくなるとピ
ンニング効果は徐々に減少し、0.005μmより小さ
くなるとほとんどピンニング効果を発揮しない。また、
2.0μmより大きい酸化物粒子はピンニング効果はあ
るものの、脆性破壊の起点となることがあるため鋼材の
特性上不適である。この結果より、必要な粒子径を0.
005〜2.0μmとした。そして、その中でも特に
0.1〜2.0μmが好ましい。
【0028】次に、靭性に必要なピンニング粒子の個数
について検討した。
【0029】酸化物粒子個数が多いほど組織単位は微細
になり、粒子個数が多いほど靭性が向上するが、特に要
求特性が厳しいと考えられる液化ガス輸送用船舶の鋼材
は、高強度で大入熱溶接施工される場合に要求される溶
接継手低温靭性、例えば、試験温度−40℃において吸
収エネルギー50J以上を満足するためには、円相当径
が0.005〜2.0μmの酸化物粒子数が100個/
mm2以上必要であることを知見した。ただし、粒子数
が多くなるほど、その靭性向上効果は小さくなり、必要
以上に粒子個数を多くすることは靭性に有害な粗大な粒
子が生成する可能性が高くなることを考えると、粒子数
の上限は3000個/mm2が適切である。
【0030】この酸化物粒子の大きさ及び個数の測定
は、例えば以下の要領で行う。母材となる鋼板から抽出
レプリカを作製し、それを電子顕微鏡にて10000倍
で20視野以上、観察面積にして1000μm2以上を
観察することで該酸化物の大きさおよび個数を測定す
る。大きさの測定は、例えば粒子を撮影した写真をもと
に、その円相当径を求める。このとき鋼板の表層部から
中心部までどの部位から採取した抽出レプリカでもよ
い。また、粒子が適正に観察可能であれば、観察倍率を
低くしてもかまわない。
【0031】鋼材を製造するプロセスは、通常圧延ま
ま、制御圧延、さらにこれと制御冷却と焼戻しの組合
せ、および焼入れ・焼戻しの組合せであっても酸化物の
効果は影響を受けない。
【0032】即ち、本発明では酸化物を分散させている
ので、圧延前の鋼片を加熱炉に入れた時にオーステナイ
ト粒の粒成長が抑制され粗大化しない。このため、圧延
時に圧下率を大きくしてオーステナイト粒の微細化を行
う必要がなく、特に、板厚が50mm以上に達する厚鋼
板を製造するのに適する低圧下率の圧延でもフェライト
粒が20μm以下に微細粒化し、靭性が向上する。
【0033】圧延前の鋼片の加熱炉での加熱温度は、1
000〜1300℃(1273〜1573°K)の範囲
内が通常であり、この加熱温度範囲での旧オーステナイ
ト粒径と靭性との関係を求めた。
【0034】図1はその一例を説明する図で、上図はオ
ーステナイト粒径Dγと延性脆性遷移温度(vTrs)
との関係を、下図は酸化物個数が本発明範囲にある12
0個/mm2の場合および比較例の90個/mm2の場合
の加熱温度とオーステナイト粒径との関係の一例を示す
図である。なお、加熱時間は60分である。また、酸化
物の個数が多いと直線Aより左側方向にプロットされ、
酸化物の個数が少ないと直線Aより右側方向にプロット
される。
【0035】靭性を表す一つの指標として延性脆性遷移
温度を考えた場合、オーステナイト粒径が大きくなると
vTrsは高温になる。すなわち靭性が低下する。した
がって目標とするvTrsを得るためには、オーステナ
イト粒径の最大値があり、その最大値以下にしなければ
ならない。そして、オーステナイト粒径は加熱温度と保
持時間との影響を受けるが、本発明の範囲の酸化物等粒
子を分散することによって、鋼片を特に1373°K〜
1573°Kの温度Tで時間t(s)加熱した時の旧オ
ーステナイト粒径を直線Aより常にvTrsが−50℃
以下となるオーステナイト粒径にすることができること
を見出した。そして、この直線Aは下記式(1)で示さ
れる。
【0036】即ち、この式(1)で求められるDよりも
オーステナイト粒径を小さくすることにより優れた母材
靭性を有することを見出した。 D=(0.154*T−210)*ln(t)−(0.328*T−460) (μm) ・ ・ ・(1)
【0037】酸化物の数が少ないとオーステナイト粒径
が大きくなり、上記式(1)で規定するDよりも小さく
ならず、加熱温度が高いとき、かつ/または加熱時間が
長いとき良好な靭性が得られない。
【0038】さらに、本発明の基本成分範囲について述
べる。
【0039】Cは鋼の強度を向上させる有効な成分であ
り、Cが0.05%未満では強度が確保できず、また過
剰の添加は、鋼材の溶接性や溶接継手低温靭性などを著
しく低下させるので、上限を0.2%とした。
【0040】Siは母材の強度確保、脱酸などに0.0
5%以上必要な成分であるが、HAZの硬化により靭性
が低下するのを防止するため上限を0.4%とした。
【0041】Mnは母材の強度、靭性の確保に有効な成
分として0.4%以上の添加が必要であるが、溶接部の
靭性、割れ性などの許容できる範囲で上限を2.0%と
した。
【0042】Pは含有量が少ないほど望ましいが、不純
物であるこれを工業的に低減させるためには多大なコス
トがかかることから、0.02%を上限とした。
【0043】SはPと同様に含有量が少ないほど望まし
いが、これを工業的に低減させるためには多大なコスト
がかかることから、0.02%を上限とした。
【0044】Alは重要な脱酸元素であり、下限値を
0.005%とした。また、Alが多量に存在すると、
鋳片の表面品位が劣化するため、上限を0.04%とし
た。
【0045】TiはNと結合してTi窒化物を形成して
スラブ中に微細析出し、圧延組織の細粒化に有効であ
り、また鋼板中に存在するTi窒化物は溶接時にHAZ
組織を微細化させる。これらの効果を得るために0.0
05%以上添加する。しかし、固溶Ti量が増加すると
靭性が低下するため、0.03%を上限とした。
【0046】CaはCa系酸化物を生成させるために
0.0005%以上の添加が必要である。しかしなが
ら、過剰の添加は粗大介在物を生成させるため、0.0
03%を上限とした。
【0047】MgはCaと複合して脱酸に使用すること
で酸化物個数を増加させる元素である。しかしながら、
過剰の添加は粗大介在物を生成させるため、Mgは0.
002%以下としたが、好ましくは、0.0001〜
0.002%である。
【0048】Nb、V、Cr、Moは鋼の強度及び靭性
を向上させる効果を有するがHAZ部においては過剰な
添加は靭性を著しく低下させるため、それぞれ0.05
%、0.1%、0.6%、0.6%を上限とした。
【0049】Cu、Niも鋼の強度を向上させるのに有
効な元素であり、Cuは鋼材の強度を向上させるために
有効であるが、1.0%を超えるとHAZ靭性を低下さ
せることから、1.0%を上限とした。Niは鋼材の強
度および靭性を向上させるために有効であるが、Ni量
の増加はコストを上昇させるので、1.0%を上限とし
た。これらの選択元素は、必要に応じて1種または2種
以上を任意に含有させることができる。
【0050】Bは鋼の焼入性を改善すると共に、強度を
向上させる元素であるが、0.0005%未満では充分
な効果が得られず、一方、0.003%を超えると焼入
性向上効果が飽和するだけでなく、靭性に有害なB析出
物を形成して靭性を低下させるので、Bは0.0005
〜0.003%とした。
【0051】
【実施例】表1に示した化学成分で、鋼板を試作した。
得られた鋼板の酸化物の組成、粒子数、加熱温度、加熱
時間、(1)式で得られるD,旧オーステナイト粒径の
実測値、靭性(vTrs)を表2に示す。表1、2にお
いて、1〜8が本発明鋼、9〜13が比較鋼である。試
作鋼は転炉溶製し、RHにて真空脱ガス処理時に脱酸を
行っている。連続鋳造により280mm厚鋳片に鋳造し
た後、加熱圧延水冷を経て、板厚60mmの鋼板として
製造した。
【0052】表2から明らかなように、請求項に規定す
る要件を満たす1〜8の本発明鋼は、旧オーステナイト
粒径の実測値vTrsがDよりも小さな値を示し、−5
0℃以下の優れた靭性を有する。
【0053】一方、比較例の9〜13は、すべて旧オー
ステナイト粒径の実測値vTrsがDよりも大きな値を
示す。その結果、比較例9〜13のように加熱温度が高
いとき、かつ/または加熱時間が長いとき、靭性が劣っ
ている。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、強度と靭性に優れた大
型構造用鋼材、特に、従来の制御圧延・制御冷却では製
造することが困難であった厚鋼板を安定して供給するこ
とが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】オーステナイト粒径、延性脆性遷移温度、加熱
温度との関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石田 浩司 大分市大字西ノ州1番地 新日本製鐵株式 会社大分製鐵所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.05〜0.2%、S
    i:0.05〜0.4%、Mn:0.4〜2.0%、
    P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.
    005〜0.04%、Ti:0.005〜0.03%、
    Ca:0.0005〜0.003%を含有し、残部はF
    e及び不可避不純物から成る鋼で、かつ、この鋼中に円
    相当径で0.005〜2.0μmの酸化物粒子を単位面
    積当たりの個数密度で100〜3000個/mm2含有
    し、その酸化物粒子の組成が少なくともCa、Al、O
    を含み、Oを除いた元素が質量比で、Ca:5%以上、
    Al:5%以上をそれぞれ含有し、CaとAlとの合計
    が50%以上で、かつ鋼を1373°K以上1573°
    K以下の温度Tで時間t(s)加熱したときの旧オース
    テナイト粒径が下記の式で求められるDよりも小さいこ
    とを特徴とする靭性の優れた鋼材。 D=(0.154*T−210)*ln(t)−(0.
    328*T−460)(μm)
  2. 【請求項2】 前記酸化物粒子の組成が少なくともC
    a、Al、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比で、
    Ca:5%以上、Al:5%以上、S:1%以上をそれ
    ぞれ含有し、CaとAlとSとの合計が51%以上で、
    残部がその他不可避不純物から成ることを特徴とする請
    求項1記載の靭性に優れた鋼材。
  3. 【請求項3】 質量%で、C:0.05〜0.2%、S
    i:0.05〜0.4%、Mn:0.4〜2.0%、
    P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.
    005〜0.04%、Ti:0.005〜0.03%、
    Ca:0.0005〜0.003%、Mg:0.002
    %以下を含有し、残部はFe及び不可避不純物から成る
    鋼で、かつ、この鋼中に円相当径で0.005〜2.0
    μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数密度で100
    〜3000個/mm2含有し、その酸化物粒子の組成が
    少なくともCa、Al、Mg、Oを含み、Oを除いた元
    素が質量比で、Ca:5%以上、Al:5%以上、M
    g:1%以上をそれぞれ含有し、CaとAlとMgとの
    合計が51%以上で、かつ鋼を1373°K以上157
    3°K以下の温度Tで時間t(s)加熱したときの旧オ
    ーステナイト粒径が下記の式で求められるDよりも小さ
    いことを特徴とする靭性の優れた鋼材。 D=(0.154*T−210)*ln(t)−(0.
    328*T−460)(μm)
  4. 【請求項4】 前記酸化物粒子の組成が少なくともC
    a、Al、Mg、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量
    比で、Ca:5%以上、Al:5%以上、Mg:1%以
    上、S:1%以上をそれぞれ含有し、CaとAlとMg
    とSとの合計が52%以上で、残部がその他不可避不純
    物から成ることを特徴とする請求項3記載の靭性に優れ
    た鋼材。
  5. 【請求項5】 質量%で、Nb:0.05%以下、V:
    0.1%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以
    下の内の1種または2種以上を含有することを特徴とす
    る請求項1〜請求項4のいずれかに記載の靭性に優れた
    鋼材。
  6. 【請求項6】 質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:
    1.0%以下の内の1種または2種を含有することを特
    徴とする請求項1〜請求項5のいすれかに記載の靭性に
    優れた鋼材。
  7. 【請求項7】 質量%で、B:0.0005〜0.00
    3%を含有することを特徴とする請求項1〜請求項6の
    いずれかに記載の鋼材。
  8. 【請求項8】 前記酸化物粒子が円相当径で0.1〜
    2.0μmであることを特徴とする請求項1〜請求項7
    のいずれかに記載の靭性に優れた鋼材。
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