JP2002529263A - 回転対称部品の精密加工用装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 振動できるように支持された上部の開いた容器を有し、容器を回転誘起式振動運動させる駆動部付き不平衡ロータを有し、多数の研摩体と液体から成る容器用研摩用充填物を有し、かつ部品用保持具を有する、液体支持式の振動研削によって円板状または環状の回転対称部品を精密加工する装置。容器は、回転対称形状に形成され、その中心軸は垂直に配置されており、容器内には、部品を水平に配置するための堅固な保持具があり、容器上縁は、被保持部品の最も高い加工対象位置より高い位置にある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 本発明は、特許請求の範囲１のプレアンブルに記載の、円板状または環状の回
転対称部品を振動研削によって精密加工する装置に関する。

【０００２】 航空機ガスタービンエンジン分野における現今の開発状況を見ると、一体型ブ
レード付きロータを使用する明らかな傾向があり、特にコンプレッサ部門でこの
傾向は顕著である。これに関して極めて重要なのは、重量低減、強度向上ならび
に磨耗削減に対する要件である。こうした要件を満たせば、従来のものより大き
な回転数／大きな出力および長い寿命が得られる。このようなロータの各段、す
なわち一体型ブレード付きロータの各ディスクに関しては、「ブレード付きディ
スク（Ｂｌａｄｅｄ Ｄｉｓｋ）」に由来する「ブリスク（Ｂｌｉｓｋ）」とい
う呼称が専門家の間で広まっている。大きなブリスクでは、通常、各ブレードは
鍛造や鋳造などによって別々に製造され、線形摩擦溶接などの適当な溶接方法を
用いてディスクに連結される。このディスクは、鍛造部品であることが多い。小
型や中型のブリスクは通常「固体」から、つまり単一の未加工素材から作られる
。ディスク形状の大部分は、精密加工に到るまで回転によって形成することがで
きる。幾何学的要件の厳しいブレード部分は、好ましくは多次元フライス加工に
よって作られるが、空気力学的な理由や強度上の理由から必要な表面仕上げおよ
び表面精度は、現段階ではまだ完成の域には達していない（「フライス加工ライ
ン」）。そのため、完全な精密加工が必要とされている。しかし、溶接した比較
的大きなブリスクあるいはディスクやガイドベーンリングなどの部品の場合にも
、完全な精密加工は必要または有利でもある。

【０００３】 こうした課題を解決する有望な方法は、液体支持式の振動研削である。これは
、好ましい例では、機械的研摩と化学的浸食（無電流、つまり外部電源がない）
を組み合せたものである。この方法では、容器の機械的振動によって、多数の遊
動研摩体と加工物との相対運動が発生する。またこの時、通常は酸性の金属溶解
性液状媒体により、研摩体の湿潤化が生じ、それに伴って加工物の湿潤化も生じ
る。この方法を利用すれば、表面が滑らかになり、バリが除去され、縁が丸くな
るなどする。

【０００４】 この技術の提供者としてはＲＥＭ社が知られており、ドイツでは特にＯＳＲＯ
社が知られている。ブリスク精密加工用の特殊装置は、こうした会社によって知
られるようになった。この装置は、ほぼ方形の振動容器を使用しており、その容
積形状はトラフ形で上部が開いていて研摩用充填物を入れるようになっている。
不平衡ロータによって生じる容器振動は、研摩用充填物の準連続的な循環運動を
引き起こす。これには、「トラフ」の縦方向の運動成分も含まれている。加工対
象の一体型ブレード付きロータディスクつまりブリスクは、その中心軸が水平で
容器縦方向と交差していて、容器中心上の決まった高さで自由に回転できるよう
に位置決めされているため、ブリスクは、下になった部分が少しずつ容器充填物
中に浸かる。浸漬深さは、放射状ブレード高さにほぼ等しい。上記の研摩用充填
物の縦方向運動成分により、ロータディスクは、「下掛け水車」式で、つまり下
部が水路に浸かる水車の方式で自動的に回転するようになるため、１回転ごとに
ディスクのブレード付き部分全体が研摩用充填物と接触する。ただこの方法では
、各ブレードの加工時間と「アイドリング時間」との比率が不利であるのが弱点
である。というのは、各ブレードは幾何学的条件のために、ディスク回転の大部
分において、空気によって「無駄に」運動してしまうからである。この「空気段
階」中には、付着力のある金属溶解性液体だけが、制御不能な方法で表面に作用
する。この理由だけのために、望ましい表面品質を得るまでに、多数の回転すな
わち長い加工時間が必要なのである。さらに、こうした「水車式装置」では、加
工物と充填物との相対運動が比較的弱いため、加工時間が一層長くなるという弱
点もある。つまり、容器自体は比較的強く振動している／揺動しているが、研摩
体充填物は、慣性のために高粘度液体のように、有効な振動成分なしに、すなわ
ち不活発な指向的流動状態で運動する。部品／ブリスクは容器と切り離されてお
り、かつ専用の静止保持具に付いた状態でゆっくり回転しているだけなので、総
じて浸食相対運動は弱くならざるを得ない。このような装置の利点としては、部
品サイズに対して容器容積と充填容積を最小にできることが挙げられるだろう。

【０００５】 したがって、本発明の課題は、円板状または環状回転対称部品の液体支持式振
動研削を行う装置を提供することである。この装置は、浸食工程の最適化により
、各部品の処理時間の大幅な短縮を可能にし、したがって加工作業も経済的にな
る。

【０００６】 この課題は、請求項１のプレアンブルに記載の一般的特徴とともに、請求項１
に記載の特徴によって解決する。

【０００７】 本発明の核心は、円板状または環状の回転対称部品が容器内に水平に配置され
、かつ容器と安定的に／固定的に結合しているか、または容器の中心軸の周囲を
回転できるが、回転しない時には同様に容器と安定的に結合している点にあると
思われる。加工対象の表面はすべて、研摩用充填物と絶えず接触している。容器
形状は部品に合わせてあるため、回転対称になっており、部品全体を覆う充填が
可能である。そのため、加工時には「アイドリング時間」がない。部品は容器と
堅固に結合しているため、容器と同一の振動運動を行い、必要な場合には回転運
動も加わる。これに対して、質量のために不活発な充填物は、緩慢な指向的循環
運動を除いて、準停止状態になっているため、容器および加工物／部品の振動振
幅は、研摩に有効な相対運動にほぼ完全に変換される。そのため、希望の材料浸
食が非常に短い時間で得られる。

【０００８】 主請求項に記載の装置の好ましい実施形態は、従属請求項に示してある。

【０００９】 本発明（既知の方法を含む）について、引き続き図を参照してさらに詳しく説
明する。各図は、実物を概略的に示したものである。

【００１０】 装置１を細分すると、図で一体型ブレード列５付きロータディスク３で示した
加工対象部品、多数の特定の研摩体から成りかつ研摩体を湿らす金属溶解液体（
本発明の場合）から成る研摩用充填物７、ならびに上記の各要素を収容して保持
する容器９となる。容器９は、少なくとも十分な回転対称形状を持ち、水平につ
まり中心軸Ｚが垂直になるように配置してある。容器の支持具１１は、水平方向
と垂直方向に限定的に振動運動することができる。この振動運動は、駆動部付き
不平衡ロータ１３が発生させる。このロータは、容器下側に容器と同軸にして配
置してある。容器内部には中央隆起部１７があり、これはロータディスク３を水
平状態に支持し、ディスクの保持具１５の一部となっている。保持具１５は、容
器９に対して固定している必要がある。図では、ねじ込み接合１８によって固定
している。そのため、ブレード付きロータディスクは、容器９と同じ振動／揺動
運動をする。容器９内の研摩用充填物７の高さは最低でも、加工物の加工対象表
面が完全に覆われるようでなければならない。通常、精密加工はブレード列５に
行われるが、必要な場合には、ブレードからロータディスク３への移行部にも行
われる。容器の内部形状も、ブレード列５のすべての側面が十分な容積の研摩用
充填物７に浸かるように選定する。充填物７内の矢印が示しているのは、容器の
振動のために、比較的緩慢な指向的かつ連続的な流動が、中心軸Ｚの周囲を同心
状に走る無限ヘリカルライン、すなわち円形に曲がって閉じている無限ヘリカル
ラインの形で、充填物内に生じている状態である。すでに説明したように、不活
発な充填物は全体としては、容器と加工物の迅速な振動運動に追随することはで
きない。充填物７は、その不活発な流動を除いて、振動するロータディスク３に
対しては準静止状態にある。このことは、有利に作用するため、相対運動とそれ
に伴う材料浸食が最大となる。

【００１１】 また、充填高さを制限する容器上縁を１９で示してあることに注意されたい。

【００１２】 部品を容器内に堅固に／頑丈に固定する方法を変更し、部品の中心軸の周囲を
自由に回転できるようにするか、またはモータで強制的に回転させるようにする
ことも可能である（１自由度）。しかし、そのように変更しても、容器と一致す
る振動運動と揺動運動は全く変化しない。付加的な回転を伴う変更については、
容易に理解できるので説明しない。

【００１３】 一方、図２に示したのは現況技術による装置２であるが、これは、端的に「粉
ひき車式装置」あるいは「水車式装置」と呼べるものである。

【００１４】 容器１０はトラフ形であることがわかるが、この容器は、上から見ると方形な
どの細長い形をしている。この装置にも、容器１０に決まった振動運動をさせる
ために、振動可能な支持具１２および駆動部付き不平衡ロータ１４がある。研摩
用充填物８の内部では、立体的で連続的な流動が生じるが、図には、容器縦方向
成分（主に左から右へ向かうもの）だけを矢印で示してある。ブレード列６付き
ロータディスク４は、上から部分的に充填物８に浸かる。この時、ロータディス
ク４は、保持具１６があるために、自己の水平状態の中心軸Ｙの周囲を回転する
ことができる。保持具１６は、容器１０とは機械的に切り離されているため、ロ
ータディスク４はゆっくりと回転するだけで振動はしない。回転運動は、駆動機
能を行う充填物８の流動（水車原理）によって自動的に生じる。事実上、加工物
も研摩用充填物も振動しないため、加工に利用できるのは、非常に緩慢で効果の
小さい相対運動だけである。

【００１５】 さらに注意すべきであるのは、ブリスクは当該精密加工にとって好ましい部品
ではあるが、その他の多数の回転対称部品も、本発明による装置を用いて加工で
きることである。つまり、ポジティブブレード固定部や密封要素を持つ「従来型
」ロータディスクなどの回転部品だけでなく、ガイドベーンリングやハウジング
部品などの静止部品も加工できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 ブリスクを加工物／部品に用いた本発明による装置の縦断面図である。

【図２】 現況技術による装置の同様の断面図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 ＤＡＣＨＡＵＥＲ ＳＴＲＡＳＳＥ 665， 80995 ＭＵＥＮＣＨＥＮ，ＧＥＲＭＡＮ Ｙ (72)発明者 カルノヴスキー，シュテファン ドイツ連邦共和国 ディー−85757 カー ルスフェルド，カール−テオドア−シュト ラッセ 32 Ｆターム(参考） 3C058 AA01 AA11 AA14 AB04 CA02 CB01 DA10

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円板状または環状の回転対称部品、好ましくは一体型ブレー
   ド列付きロータディスク、すなわちいわゆるブリスク（Ｂｌａｄｅｄ Ｄｉｓｋ
   ｓ）を振動研削によって精密加工する装置であって、振動できるように支持され
   た上部の開いた容器を有し、前記容器を決まった振幅と振動数で回転誘起式振動
   運動させる駆動部付き不平衡ロータを有し、多数の研摩体と物理的および／また
   は化学的に活性な液体を含む容器用の研摩用充填物（ａｂｒａｓｉｖａ ｆｉｌ
   ｌｉｎｇ）を有し、かつ部品を受け止め、少なくとも部分的に研摩用充填物中に
   浸す保持具を有し、容器（９）は、少なくとも実質的に回転対称形状に形成され
   、その中心軸（Ｚ）が垂直に配置されており、容器（９）内には、部品（３）用
   保持具（１５）が水平位置に配置されており、部品（３）は動かない、つまり容
   器（９）に対して自由度を持たないか、または部品の中心軸の周りを回転できる
   だけで他の動きはできず、つまり容器（９）に対して１自由度だけを持たせて固
   定されており、周囲の容器上縁（１９）は、保持具（１５）に固定した部品（３
   ）の最も高い加工対象より垂直方向に高い水平レベルに位置し、研摩用充填物（
   ７）が、少なくとも部品（３）の加工対象領域を完全に覆っていることを特徴と
   する装置。
2. 【請求項２】 部品（３）用保持具（１５）が、容器底から上方に通じる閉
   じた台状（ｐｌａｔｆｏｒｍ−ｌｉｋｅ）隆起部（１７）を有し、駆動部付き不
   平衡ロータ（１３）が容器底部に容器の中心軸（Ｚ）と同軸に配置されているこ
   とを特徴とする請求項１に記載の装置。
3. 【請求項３】 部品（３）が少なくとも１つのねじ込み接合（１８）によっ
   て、容器に締め付け固定されていることを特徴とする請求項１または２に記載の
   装置。
4. 【請求項４】 部品（３）用保持具（１５）が、自由な回転運動および／ま
   たはモータ駆動の回転運動を可能にすることを特徴とする請求項１または２に記
   載の装置。