JP2002524525A - 合成ポリアミドによる発癌遺伝子HER/2neu発現の制御 - Google Patents

合成ポリアミドによる発癌遺伝子HER/2neu発現の制御

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JP2002524525A JP2000569826A JP2000569826A JP2002524525A JP 2002524525 A JP2002524525 A JP 2002524525A JP 2000569826 A JP2000569826 A JP 2000569826A JP 2000569826 A JP2000569826 A JP 2000569826A JP 2002524525 A JP2002524525 A JP 2002524525A
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Abstract

(57)【要約】 遺伝子転写および発現を抑制または減少させる、二本鎖DNAの小溝へ結合することのできるポリアミドを含有する方法および組成物を開示する。ポリアミドは少なくとも4つの芳香族カルボキサミド残基の相補対を有しており、これらはプロモーター内の二本鎖DNA標的核酸配列へ特異的に接触および/または結合するように選ばれる。開示した方法、組成物およびポリアミドは、癌遺伝子の転写および発現の抑制ならびに癌の治療に用いられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 国立衛生研究所により与えられたGM26453、27681およびAI29
81号許可に基づき、米国政府は本発明について一定の権利を有する。 関連出願 本出願は米国仮出願第60/099,906号(1998年9月11日出願)に
基づく優先権を主張する。本仮出願は引用することにより本願の一部をなす。
【0002】 技術分野 本発明は、全体的にはDNAに結合するポリアミドを用いて遺伝子の発現を調
節もしくは制御するための方法および組成物に関する。本発明の方法および組成
物は、遺伝子の発現もしくは過剰発現を、ポリアミドと二本鎖DNA(dsDN
A)の小溝(minor groove)との相互作用により抑制もしくは減少させる結果に導
く。この方法および組成物に用いるポリアミドは、減少もしくは抑制しようとす
る遺伝子のプロモーター領域内の予め定められた核酸配列へ結合する。発現もし
くは好ましくないレベルに過剰発現している、標的とする癌遺伝子を抑制もしく
は減少させることが、本発明の一つの実施態様である。特に、本発明は標的内因
性細胞性癌遺伝子の発現もしくは過剰発現を減少させることを目的とする。
【0003】 発明の背景 チロシンキナーゼ膜成長因子受容体HER2/neuは、p185HER2
しても知られており、同じ名前の細胞性癌遺伝子によってコードされる。この受
容体はヒト乳癌の20乃至30%において増幅が認められるが婦人科腺癌、例え
ば卵巣癌、子宮内膜癌、卵管癌、および子宮頚癌を含む他の癌ではそうではない
。Baert,J.L.ら、Int.J.Cancer 70,590-597(1997); Benz,C.ら、Oncogene 15,15
13-1525(1997); Chang,C.H.ら、Oncogene 14,1617-1622(1997); Scott,G.K.ら、
J.Biol.Chem.269,19848-19858(1994); Pasleau,F.ら、Oncogene 8,849-854(1993
);Tal,M.ら、Molecular and Cellular Biology 7,2597-2601(1987); (Cirisano,
F.D., & Karlan, B.Y., J. Soc. Gynecol. Investig. 3 99-105(1996))参照。
【0004】 neu癌遺伝子の遺伝子は、げっ歯類の化学(エチルニトロソウレア)誘導性腫
瘍において最初に見出された。次いで、ヒトのこれに対応する遺伝子c−erb
B−2またはHer−2/neuが、タンパク質チロシンキナーゼ活性を有する
膜貫通性の185kDaのタンパク質であるEGF受容体とホモロガスであるこ
とが見出された。HER2/neuの過剰発現がある場合はまた、腫瘍が転移性
となる可能性が高く、そのため、患者の予後が良くない。Her−2/neu癌
遺伝子の変異、増幅および過剰発現が、乳癌の進行、早期転移および予後不良を
伴うとの報告がある。Her−2/neu遺伝子の増幅はリンパ節転移に直接関
係している。さらに動物モデルにおいて、転移を活性化して腫瘍の進行を早める
と報告されている。というわけで、HER2/neuタンパク質は、細胞の運動
性に関与しており、従って、転移にかかわっていると考えられる。即ち、HER
2/neu遺伝子の発現をDNAレベルで直接妨害することによって抑制するこ
とは、転移性疾患の強力な治療アプローチとなりうる。
【0005】 ESX、AP−2およびTATA結合性タンパク質(TBP)のごときいくつか
の転写因子は、HER2/neu増殖因子受容体の遺伝子の発現制御において重
要な役割を果たしている。Baert, J.-L.ら、前出; Benz, C.ら、前出; Chang C.
H.ら、前出; Bosher,J.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92,744-747(1995)参照。
これらの転写因子はHER2/neuプロモーター内の部位へ結合してp185HER2 の発現を活性化させる。HER2/neuプロモーターのヌクレオチド
配列および概略図を図1に示した。
【0006】 TBPは遍在性転写因子であり、ほとんどのタンパク質をコードする遺伝子の
活性化に関与している。TBPはDNA結合性タンパク質であり、DNAの小溝
と相互作用する。ESX、AP−2およびTBP以外の別の転写因子結合部位と
なり得る部位がHER2/neuプロモーター内にあることに注目したい。
【0007】 新しい治療手段の開発を目的として、生細胞の遺伝子発現を妨害する方法を考
案するための様々な努力がこれまで、本技術分野においてなされてきた。これら
の試みとしては、メッセンジャーRNAをタンパク質へ翻訳する際に、アンチセ
ンスオリゴヌクレオチド(天然またはペプチド核酸ベース)を細胞内へ導入するこ
とによって、またはリボザイム媒介性特異的RNAの破壊によって妨害する方法
がある。遺伝子転写の直接抑制を目的とするいくつかの試みもまたなされている
。これらの試みとしては、三重らせん生成性オリゴヌクレオチド、予め定めた配
列を認識するZnフィンガーペプチドの創出または選択、およびDNA結合性カ
リシェミシン(calicheamicin)オリゴサッカライドなどが挙げられる。
【0008】 遺伝子発現への干渉による治療アプローチを成功させるためには、治療用の剤
はいくつかの基準を満たしていなくてはならない。第1に、剤は一般的な細胞毒
性を有していてはならない;第2に、該剤は細胞透過性でなくてはならない、D
NA結合性の剤である場合には、化合物は核へと運ばれ、そこでクロマチンに関
して標的配列と高い親和性および特異性を持って結合しなくてはならない;第3
に、剤のそのDNA標的配列への結合は、遺伝子転写を妨害しなければならない
。上述の各試みには、それぞれ弱点がある。例えば、三重らせん形成性オリゴヌ
クレオチドは配列選択性を賦与することが可能であり、インビトロで転写を有効
に抑制することができるが、かかる分子は細胞透過性が低く、細胞透過性を高め
た細胞を用いなくては有効な遺伝子抑制を誘導できない。同様に、Znフィンガ
ーペプチドは細胞内へ直接入ることができないことから、これを遺伝子治療に使
用するには、適当なウイルス性もしくは非ウイルス性発現ベクターを用いて導入
する必要がある。これに対して、カリシェミシンオリゴサッカライドは十分な疎
水性を有しており、細胞膜を容易に透過するが、この分子は非常に制限された配
列特異性(4bp)を有し、非常に低い親和性(タンパク質−DNA相互作用の抑
制には100μM以上必要)しか示さない。従って、より高いDNA配列特異性
および親和性を有する新規な細胞透過性分子が、ヒト遺伝子治療を実現するため
に必要とされている。
【0009】 他の試みにおいては、細胞透過性の小分子であって特定のDNA配列を標的と
するものが利用されている。かかる分子は、遺伝子発現の制御に有用であろう。
DNA二本らせんの特定の配列を認識する小さな合成DNA結合性リガンドのデ
ザインは、長い間目標とされてきた化学のゴールである。二重らせんDNAの主
溝を認識するオリゴデオキシヌクレオチドは、三重らせんの生成を介して高い親
和性と特異性をもって広い範囲の配列へ結合する。オリゴヌクレオチド及びその
類縁体が遺伝子発現を抑制することが示されているが、三重らせんアプローチは
プリントラックに限定され、また細胞内への取りこみが少ないという不利益があ
る。
【0010】 他の小さな分子についても、DNA結合リガンドとして興味がもたれている。
Wadeらは5'−(A,T)G(A,T)C(A,T)−3'配列において二量体のサイド−
バイ−サイドモチーフによりDNAの小溝へ結合するペプチドのデザインを報告
している(J.Am.Chem.Soc.114,8783-8794(1992))。Mrksichらは、DNAの小溝に
おける配列特異的認識のための逆平行サイド−バイ−サイドモチーフとしてデザ
インした1−メチルイミダゾール−2−カルボキシアデノトロプシンを報告した
(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,7586-7590(1992))。Pelton, J.G. & Wemmer, D.E.
は2−1ディスタマイシンA−d(CGCAAATTTGGC)複合体の二元NM
Rによる構造解析を報告している(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,5723-5727(1989)
)。
【0011】 Dervanらは合成ピロール−イミダゾールポリアミド類がDNAと、多くの配列
特異的転写因子をしのぐほどの優れた特異性と非常に強い親和性を持って結合す
ることを報告した(Traugerら、Nature 382,559-561(1996))。彼らは更に、ナノ
モルレベル以下のDNAを認識できるリガンドをデザインしたと報告した。DN
Aの認識は、小溝中におけるイミダゾール−ピロールまたはピロール−ピロール
対のサイド−バイ−サイドアミノ酸対に依存する。White S.ら(1996)は、DNA
の小溝内ピロール−イミダゾールポリアミド認識のA・T/T・A縮重の作用を
報告した(Biochemistry 35,6147-6152(1996))。Whiteら(1997)は、ピロール−イ
ミダゾールポリアミドによる、DNAの小溝内認識の対形成ルールを報告し(Che
m.&Biol.4,569-578)、小溝内におけるポリアミド結合には、5'−3' N−C方
向が好ましいことを示した。従って、ポリアミド分子は小溝中のタンパク質−D
NA相互作用の抑制剤として作用する可能性が予測される。
【0012】 N−メチルピロールおよびN−メチルイミダゾール(Im)アミノ酸から誘導さ
れる小溝結合性ポリアミドの対形成ルールを確立することは、別に言えば配列の
特異性を獲得することである。Im/Py対はG・CとC・Gを区別し、これら
両方をA・TまたはT・A塩基対と区別するが、Py/Imが標的とするのはC
−G塩基対である。Py/Py対はA・TをG・Cから区別できるが、A・Tと
T・Aの区別はしない。このような配列特異的DNAリガンドへの合理的なアプ
ローチは直接NMR構造解析に支持され(Geierstanger,Science 266,646-650(19
94))また最近6塩基対配列を標的して、これに見かけ解離定数0.03nMで結
合する8リングヘアピンポリアミドの合成に成功した(Traugerら、既出)。さら
に、1のアミノ酸残基のみで相違する二種類の8リングピロール−イミダゾール
ポリアミドが、1の塩基対のみで相違するそれぞれ別の6塩基対標的部位に結合
する。1の窒素原子を1個の−CHと置換することによって、特異性および親和
性を2オーダー変えることができる。
【0013】 6塩基対配列はヒトゲノムにおいては非常に重複している(アトランダムに出
現するとして、4キロベースにつき1部位、またはヒトゲノム内で500000
部位)ことから、より長い配列を認識するポリアミドの合成が行われてきた。例
えば、12リングのダブルヘアピンポリアミドは12bp部位を標的とするよう
デザインされ、ナノモル単位の親和性にて結合する。かかる配列は、アトランダ
ムだとして1600万塩基対毎に1部位もしくはヒトゲノム中125部位にしか
ない。従って、この分子はインビボ遺伝子転写の特異的抑制剤として有力であり
、上述のような条件が合致すればヒトの治療薬としても有力な候補である。
【0014】 発明の概要 本発明は、遺伝子の転写を減少させることによって遺伝子発現もしくは過剰発
現を調節もしくは制御する方法および組成物に関する。好ましくは、本発明によ
り標的遺伝子の転写が特異的に減少される。かかる減少は、標的遺伝子のプロモ
ーター領域内の二本鎖DNA(dsDNA)の小溝と結合もしくは相互作用するポ
リアミドを適用する結果として生じる。好ましくは、転写を抑制もしくは減少す
べき遺伝子のプロモーター領域内の核酸配列の予め定めた標的に対して、この結
合もしくは相互作用が生じる。
【0015】 本発明は、細胞透過性であり、遺伝子の転写を抑制することのできる配列特異
的DNA結合性小分子を用いて遺伝子の発現および過剰発現を減少させる。該分
子を適当に投与すれば、内因性癌遺伝子の過剰発現が抑制されることから、癌を
含む様々な疾患の全く新たな治療方法が提供される。本発明の小分子は標的遺伝
子のプロモーター領域内の核酸配列へ結合もしくはこれと相互作用するポリアミ
ドである。好ましくは、この配列は1または複数の転写因子に認識される配列で
あるか、その近位にある配列である。
【0016】 好ましくはポリアミドは、遺伝子の転写および発現を調節するプロモーター領
域内の二重鎖DNA小溝へ結合する。好ましくは、遺伝子の転写はdsDNAへ
のタンパク質転写因子の結合の調節によって抑制される。好ましい態様において
、転写因子はESX、ETSおよびTBPである。
【0017】 HIV−1プロモータの転写活性の抑制に関する従来の研究により、ポリアミ
ドがTBPならびにEstファミリー転写因子の結合をブロックできることが明
らかにされている(PCT公開出願PCT/US98/02444、現在WO9
8/35072(明細書は引用により本発明の一部とする))。原則として、いず
れの種類の転写因子もdsDNAの小溝と接するかまたは結合するポリアミドに
より抑制することができる。小溝と接するタンパク質のDNA複合体化は直接的
立体障害、反発、排除または別法としてアロステリック効果により抑制される。
たとえば、主溝結合タンパク質の結合は、ポリアミドにより誘発されるDNA立
体配座の変化により抑制することができる。もちろん、抑制は他の方法、例えば
DNA開裂剤の所望の部位を標的とするポリアミドとの接合、またはDNAの化
学的修飾によっても達成することができる。
【0018】 本発明の好ましい態様のひとつにおいて、癌遺伝子の発現または過剰発現が標
的とされる。好ましくは、癌遺伝子は内因性細胞性癌遺伝子であり、癌、特に乳
癌に大きく関与する遺伝子である。本発明の癌遺伝子の1の標的は、HER2/
neu遺伝子であり、これはHER−2/neuプロモーター領域内の標的配列
と結合するポリアミドを使用することによりダウンレギュレーションまたは抑制
することができる。好ましくは、ポリアミドにより標的とされる配列は、癌遺伝
子プロモーター内の転写因子結合部位であるかまたはその近位にある部位である
。ポリアミドと標的配列間の相互作用または結合により、HER2/neu遺伝
子の転写を抑制することができる。癌遺伝子発現の抑制の程度は強く、過剰発現
の抑制も包含する。本発明にはさらに、乳癌を含む様々な腫瘍や癌の治療のため
にポリアミドを投与することも包含する。
【0019】 適当なポリアミドはdsDNA標的配列において少なくとも10−1の結
合親和性および少なくとも約2の選択性を有するものである。選択性は、同定さ
れたdsDNA標的配列に対する結合親和性の、1塩基対ミスマッチdsDNA
配列に対する結合親和性の比と定義される。好ましい態様において、少なくとも
90%の1塩基ミスマッチ配列に対する選択性は約10を越える。
【0020】 本発明の態様において、医薬上許容される賦形剤と、少なくとも1の本発明の
ポリアミドの少なくとも1の転写抑制量を含む組成物が提供される。各ポリアミ
ドは少なくとも4の芳香族カルボキサミド残基の相補対を含み、該対はdsDN
Aの同定されたヌクレオチド配列に対応するように選択される。好ましくは、ポ
リアミドは更に、グリシン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、R−2,4−ジア
ミノ酪酸、および5−アミノ吉草酸からなる群から選択される少なくとも2の脂
肪族アミノ酸残基、および少なくとも1つの末端アルキルアミノ残基を含み、ポ
リアミドは標的dsDNA配列に対して少なくとも10−1の結合親和性と
少なくとも約2の選択性を有する。ここで選択性は、同定された標的dsDNA
配列に対する結合親和性と、1の塩基対ミスマッチdsDNA配列に対する結合
親和性との比と定義される。
【0021】 本発明は更に細胞性癌遺伝子の異常な発現に関連する状態を有する対象を治療
するのに適した方法を提供する。対象は好ましくはヒト患者であり、より詳細に
は、乳癌または異常なHer2/neu癌遺伝子発現が関与する他の疾患または
症状に苦しんでいる患者である。
【0022】 詳細な説明 本発明は遺伝子の転写を減少することにより、遺伝子発現もしくは過剰発現を
調節もしくは制御する方法および組成物に関する。本発明の方法および組成物は
好ましくは、癌遺伝子の転写、特に癌、特にヒトの癌、それも乳癌に関与する癌
遺伝子の転写を抑制する子とを目的とするものである。
【0023】 遺伝子転写の低減は、ポリアミドと標的癌遺伝子のプロモーター領域内のds
DNAの小溝間との結合または他の相互作用の結果として得られる。好ましくは
、ポリアミドはプロモーター領域内の特定の標的核酸配列と結合または相互作用
して、癌遺伝子転写を抑制するかまたはダウンレギュレートする。好ましくは、
該配列は、1またはそれ以上の転写因子により認識されるかまたは認識されるも
のの近位にある配列である。
【0024】 本発明のポリアミドは好ましくは細胞透過性であり、インビボおよびインビト
ロもしくはセルフリーの系にて遺伝子転写を抑制することができる。かかるポリ
アミドは、内因性癌遺伝子の発現もしくは過剰発現を抑制すべく、癌を含む様々
な疾患の治療に適用し得る。
【0025】 好ましい態様において、ポリアミドは、標的遺伝子の転写および発現を制御す
るプロモーター領域内の二本鎖DNAの小溝と結合する。好ましい標的遺伝子は
、癌形成または進行に関与する内因性癌遺伝子である。好ましくは、遺伝子の転
写はタンパク質、例えば転写因子の、ポリアミドが結合または相互作用する同じ
プロモーター領域との結合を制御することにより抑制される。特に好ましい態様
において、転写因子は1またはそれ以上の以下にあげるものである:ESX;E
TS、およびTBP。
【0026】 HIV−1プロモーターでの転写活性が抑制されることは、ポリアミドがTB
PならびにEtsファミリー転写因子の結合をブロックできることを示す。WO
98/35702参照。ここにはポリアミドの合成についても開示されている。
本発明には、TBPおよびEts転写因子の活性を抑制もしくは制御するポリア
ミドの使用も包含する。本発明の方法は、dsDNAの小溝と接するかまたは結
合する1またはそれ以上のポリアミドを使用することにより転写因子活性に影響
を及ぼす。このような接触または結合により、直接的反発、アロステリック効果
、または他のメカニズム(たとえば、dsDNAの開裂または化学的修飾)により
小溝におけるDNA転写因子複合体の形成が抑制され得る。加えて、TBPなど
の主溝DNA結合タンパク質の結合は、隣接する小溝との会合によりポリアミド
が誘導するDNA構造変化により抑制され得る。
【0027】 本発明の好ましい態様において、癌遺伝子、特に内因性細胞性癌遺伝子の発現
または過剰発現が標的とされる。好ましくは、癌遺伝子はヒト乳癌に影響するも
のであり、その発現または過剰発現が、癌遺伝子プロモーターの領域における小
溝と接触するかまたは結合するポリアミドにより抑制される。好ましくは、プロ
モーター領域の接触または結合部分は、転写因子結合部位であるかまたはこれの
近位にある。抑制の程度は、好ましくは高いものであり、より好ましくは遺伝子
のコピー数が増加する癌遺伝子の過剰発現さえも抑制するのに十分、高いもので
ある。
【0028】 本発明の癌遺伝子標的の一例はHER−2/neu遺伝子であり、これはHE
R−2/neuプロモーター領域内の標的配列と結合するポリアミドを使用する
ことによりダウンレギュレートできるかまたは抑制できる。好ましくは、この配
列はHER−2/neuプロモーター内の転写因子結合部位であるかまたはこれ
の近位にある。転写因子としては、TBP、ESX、およびAP−2が挙げられ
る。ポリアミドと標的配列間の相互作用または結合により、HER−2/neu
遺伝子転写が抑制される。
【0029】 好ましい態様において、ポリアミドはヒトHER2/neu乳癌遺伝子プロモ
ーター内に見られるTATAエレメントからすぐ下流部位に結合するようにデザ
インされる。このポリアミドHer2−1はImPy−β−PyIm−γ−Py
Py−β−Dpの構造を有しており、5'−AGAATGA−3'(本配列の5'A
はTATAエレメントの3'Aである)に見かけ上の解離定数200pMにて結合
する。Her2−1はTBPの結合および転写に対する有効な抑制剤である。
【0030】 本発明は、遺伝子発現または過剰発現を抑制するための、医薬上許容される賦
形剤と転写抑制量の少なくとも1つのポリアミドを含む組成物を包含する。これ
らの組成物は、乳癌をはじめとする種々の腫瘍または癌の治療にも用いることが
できる。本発明はさらに遺伝子発現または過剰発現を抑制するためにこのような
組成物を適用する方法も提供する。該方法および組成物は好ましくは、細胞癌遺
伝子の異常な発現に関連する疾患を有する対象を治療するのに適したものである
。本発明が好適に適用される対象はヒト患者、特に癌、特に乳癌に苦しんでいる
患者である。
【0031】本発明のポリアミド 本発明で用いられるポリアミドはN−メチルイミダゾールおよびN−メチルピ
ロールカルボキサミドを含有する。これらのポリアミドは通常、三日月型構造を
有し、これが二本鎖DNAの小溝との相互作用および複合体化を可能にする。N
MR試験の結果、2つのポリアミドリガンドが逆平行に並んでいるモチーフによ
って、これらの化合物がDNAに2:1の比で結合できることを確認した(Pelto
n、J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86、5723-5727(1986);Mrksichら、Proc.Natl
.Acad.Sci.USA、86、5723-5727(1986);Mrksichら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89
、7586-7590(1992);Wade、J.ら、Am.Chem.Soc.114、8783(1992))。
【0032】 2つのポリアミドの結合親和性を増強する1つの手段は、それらをγ−アミノ
酪酸等のターンユニットで共有結合的に連結することである(Mrksichら、J.Am.
Chem.Soc.116、7983(1994)を参照)。このようなポリアミドは、DNA複合体中
でヘアピン様のコンフォメーションをとるので、「ヘアピンポリアミド」と称さ
れる。上記のヌクレオチド対を認識するカルボキサミド対の機構に従い、ポリア
ミド中のイミダゾールおよびピロールカルボキサミドの配列によって、リガンド
のDNA配列特異性が決定される。いくつかの場合においては、1または数個の
ピロールカルボキサミドユニットをβ−アラニン部と置き換えて、DNAの湾曲
に対してポリアミドの湾曲を調整することが有益である。最近、N−メチルイミ
ダゾールおよびN−メチルピロール カルボキサミドを含有するポリアミドは真
核細胞における遺伝子発現を抑制できることが示された(Gottesfeldら、Nature
387、203-204(1997))。
【0033】 新たな芳香族アミノ酸、3−ヒドロキシ−N−メチルピロール(Hp)は向か
い合うPyと対になり、これを含有するポリアミドは、DNA配列中のA・Tヌ
クレオチド対をT・Aヌクレオチド対から識別することが分っている。Hp/P
y対中のピロールにおける単独の水素原子のヒドロキシ基との置換は、ポリアミ
ドの親和性および特異性に大規模な影響を与える。HpをPyおよびImととも
に芳香族アミノ酸残基の4対の組合せ(Im/Py、Py/Im、Hp/Py、
およびPy/Hp)で用いることにより、二本鎖DNAの小溝における4つの全
てのワトソン−クリック塩基対を選択的に区別できる。Whiteら、Nature 391、4
68-471(1998)。
【0034】 本発明は、遺伝子発現または過剰発現を抑制する方法および組成物における、
DNAの小溝への結合に関して改良したポリアミドの使用を含む。DNAの小溝
内で結合させるポリアミドの製造および使用は本分野で開示されている。本発明
は、3−ヒドロキシ−N−メチルピロールを利用してDNA結合ポリアミドのた
めのカルボキサミド結合対を与える既存の技術の改良を含む。その改良は、DN
Aの小溝内でのT・A塩基対への結合のためにポリアミド中にHp/Pyカルボ
キサミド結合対を包含させること、またはDNAの小溝内でのA・T塩基対への
結合のためにポリアミド内にPy/Hpカルボキサミド結合対を包含させること
に関する。本発明に用いられるポリアミドは、小溝内のA・T、T・A、C・G
およびG・C塩基対を区別する少なくとも4つのカルボキサミド結合対を有する
。該ポリアミドはまた、ヘアピン−ループを形成するγ−アミノ酪酸その他のタ
ーンユニットを、その各サイドにおける各カルボキサミド対のメンバーとともに
有する。
【0035】 本発明はまたPy残基に換えて置かれたβ−アラニンを含有するポリアミドも
包含する。これは、通常カルボキサミド結合対において特定のヌクレオチド対を
一致させるために用いられる。本発明の式においては該β−アラニンをβと称す
る。該β−アラニンは、カルボキサミド結合対のメンバーとなり、隣接するアミ
ノ酸部のヌクレオチド塩基対への水素結合を最適化する。本発明はさらに非Hp
含有結合対についてのβ・β結合対置換も包含する。したがって、Hp/Pyお
よびPy/Hpに加える結合対は、Py/Py、Im/Py、Py/Im、Im
/β、β/Im、Py/β、β/Py、およびβ/βである。
【0036】 該して、本発明のポリアミドは遺伝子(好適には癌遺伝子)の転写抑制に適し
ている。該ポリアミドは芳香族カルボキサミド残基の少なくとも4つの相補対か
らなり、この対はdsDNA標的のヌクレオチド配列に対応して選択される。こ
れらのポリアミドは、グリシン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、および5−ア
ミノ吉草酸からなる群から選択される少なくとも2つの脂肪属アミノ酸残基なら
びに少なくとも1つの末端アルキルアミノ残基を含む。同定されたdsDNA標
的のヌクレオチド配列に対応して選択される芳香族カルボキサミド残基の相補対
は、ヌクレオチド対G/Cに対応するIm/Py、ヌクレオチド対C/Gに対応
するPy/Im、ヌクレオチド対A/Tに対応するPy/Py、ヌクレオチド対
T/Aに対応するPy/Py、およびヌクレオチド対A/Tに対応するPy/H
pからなる群から選択される(ここで、ImはN−メチルイミダゾール、Pyは
N−メチルピロールおよびHpは3−ヒドロキシ N−メチルピロールである)
。上記の原理の適用により、遺伝子発現または過剰発現の抑制のための、特異的
な標的核酸配列に結合または相互作用する特異的なポリアミドのデザインが可能
になる。
【0037】 好適なポリアミドは脂肪属アミノ酸残基として少なくとも1つのβ−アラニン
を含有する。好適な具体例では、末端アルキルアミノ残基はN,N−ジメチルア
ミノプロピル残基である。適当なポリアミドには、A/TおよびT/Aの群から
選択されるヌクレオチド対に対応する相補対残基を形成するよう並ぶ少なくとも
2つのβ−アラニン残基。別法として、Im/β、β/Im、Py/βおよびβ
/Pyのような脂肪属アミノ酸と芳香族カルボキサミドとの間に、対応する対を
形成してもよい。好適なポリアミドでは、ヘアピン分子は、γ−アミノ酪酸等の
脂肪属アミノの残基の含有によって形成される。加えて、本発明のいくつかのポ
リアミドにおいては、カルボキサミド対の少なくとも1つのPyをβ−アラニン
によって置き換える。
【0038】 適当なポリアミドは、少なくとも10−1のdsDNA標的配列での親和
性、および少なくとも約2の選択性を有する。選択性は、同定されたdsDNA
標的配列についての結合親和性の、単塩基対ミスマッチdsDNA配列について
の結合親和性の比として定義される。好適な具体例では、少なくとも90%の単
塩基ミスマッチ配列に対する選択性は、約10より大きい。
【0039】 本発明の組成物において用いられる各ポリアミドは、好適には、dsDNA標
的の同定されたヌクレオチド配列に対応して選択される、芳香族カルボキサミド
残基の少なくとも4つの相補対を含有する。また該ポリアミドは、好適には、グ
リシン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、R−2,4−ジアミノ酪酸および5−
アミノ吉草酸からなる群から選択される少なくとも2つの脂肪属アミノ酸残基な
らびに少なくとも1つの末端アルキルアミノ残基も含有する。また好適には、該
ポリアミドは少なくとも10−1のdsDNA標的配列での親和性、および
少なくとも約2の選択性を有する。選択性は、同定された標的dsDNA配列に
ついての結合親和性の、単塩基対ミスマッチdsDNA配列についての結合親和
性に対する比として定義される。
【0040】 ポリアミドHer2−1を、上記のようにHER2/neuプロモーターのT
ATAボックスに隣接するDNA配列5'−AGAATGA−3'に結合するよう
にデザインした。DNアーゼ1フットプリント分析により、このポリアミドが目
的の配列に約0.2nMの解離定数(Kd)で結合することを確認した。ポリア
ミド70もまたHER2/neu TATAボックスに隣接して結合、部分的に
重複する。Her−2/neu TATAエレメントに隣接して重複するDNA
を標的とするこれらのポリアミドを、固相法によって合成した。
【0041】 配列組成ImIm−β−PyIm−γ−PyPy−β−PyPy−β−Dp(
ここで、Imはイミダゾールを、Pyはピロールを、γはγ−アミノ酪酸を、β
はβ−アラニン、およびDpはジメチルアミノプロピルアミドを示す)のポリア
ミドHer2−Aは、Her−2/neuTATAエレメントの5'境界の配列
5'−AGGAAGT−3'に結合する。一方、配列組成ImPy−β−PyIm
−γ−PyPy−β−PyPy−β−DpのポリアミドHer2−1は、上記T
ATAエレメントの3'境界の配列5'−AGAATGA−3'に結合する(図1
参照)。
【0042】 また配列組成ImIm−β−ImIm−γ−PyPy−β−PyPy−β−D
p(HIV−1と称する)のミスマッチポリアミドも本試験に用いた。配列組成
ImPyPyPy−γ−PyPyPyPy−β−Dpのポリアミド70はTAT
Aボックスと重複する5'−AGTATA−3'に結合する。一方、配列組成Im
PyImPy−γ−PyPyPyPy−β−Dpのポリアミド86は、ポリアミ
ド70から1原子置換されているミスマッチポリアミドである。
【0043】 図1は、Her−2/neuプロモーター領域の配列および数個の転写因子の
結合部位を示す。TBP結合部位に隣接する下流に結合するヘヤピンポリアミド
ImPy−β−PyIm−γ−PyPy−β−PyPy−β−Dpを合成した(
図2B、左)。
【0044】 HER2/neu遺伝子含有プラスミド(Ebbinghausら、「三量体形成がイン
ビトロのHER−2/neu転写を抑制する(Triplex formation inhibits HER
-2/neu transcription in vitro.)」から単離した32P−末端標識制限断片に
おいて行った定量的DNアーゼIフットプリント試験(図2A)により、このポ
リアミド(Her2−1)がその標的配列に5×10−1の平衡会合定数で
結合することが分った。ミスマッチポリアミドImPy−β−PyIm−γ−P
yPyPyPyPy−β−Dp(ポリアミド70)は同配列に2×10−1 の平衡会合定数で結合した(図2B、右)。フットプリント試験により、このポ
リアミドはまたESX結合部位に隣接する5'−AGGAAGT−3'単塩基対ミ
スマッチ配列にも同等の親和性で結合する。
【0045】 これらのポリアミドの各々についてのTATAボックス領域および結合モデル
を図3に示す。この図において、ポリアミドを2本のDNA鎖の間の各々の結合
部位に図示する。黒丸と白丸は各々イミダゾール(Im)およびピロール(Py
)環を示す;曲線はγ−アミノ酪酸(γ)を示す;菱形はβ−アラニンを示す;
およびDpはジメチルアミノプロピルアミドを示す。これらのポリアミドの各々
についての見かけの結合親和性を定量的DNアーゼIフットプリント滴定によっ
て測定した。ポリアミドHer2−Aはその一致部位に<10−1のK
結合するが、ポリアミドHer2−1は5×10−1のKで結合する。標
的部位についてのより高い親和性のHer2−1を考えると、下記の例のほとん
どは、この化合物を用いた。ポリアミド70についての結合定数は既に報告され
ており(Traugerら、Nature 382、559-561、1996におけるポリアミド2)、3.5
×10−1である。ミスマッチポリアミドは極めて低い親和性で結合する。
【0046】医薬および治療組成物 本発明のポリアミドおよびその医薬上許容される塩を製剤して、医薬または治
療組成物または製剤にしてもよい。本発明のポリアミド化合物の医薬上許容され
る塩は、強いまたは中程度に強い、非毒性、有機、または無機の酸または塩基を
用いて、当業者に既知の方法により形成される。本発明に包含される塩の例とし
ては、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、蓚酸塩、エタンスルホン酸塩、ベン
ゼンスルホン酸塩、酒石酸塩、クエン酸、塩酸塩、臭酸塩、リン酸塩、および硝
酸塩が挙げられる。
【0047】 上記のように、本発明のポリアミド化合物は遺伝子発現または過剰発現を抑制
する能力、あらゆる多数の疾患または症状(もっとも顕著には癌、特に乳癌)の
治療に利用される性質を有する。本発明の組成物はそれ自体活性であってもよく
、またはインビボで活性型に変換される「プロドラッグ」として作用してもよい
【0048】 本発明の化合物及びその医薬上許容される塩を慣用の投与形態(例、カプセル
、含浸ウエハー、錠剤、または注射剤)に取り込んでもよい。固体または液体の
医薬上許容される担体を用いてもよい。徐放剤用にデザインされた医薬組成物を
製剤してもよい。
【0049】 好適には、本発明の化合物は、全身的に投与される(例、注射によって)。使
用時に、注射は任意の既知の経路(好ましくは、静脈内、皮下、筋肉内、頭蓋内
または副腔内)による。注射可能物質を慣用の形態(溶液または懸濁液、注射前
に液体中に溶液または懸濁液にするのに適した固体、または懸濁液として)に調
製してもよい。
【0050】 固体の担体は、デンプン、乳糖、硫酸カルシウム二水和物、白土、スクロース
、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアガム、ステアリン酸マグネシウ
ムおよびステアリン酸を包含する。液体の担体は、シロップ、ピーナッツ油、オ
リーブ油、生理食塩水、水、デキストロース、グリセロール等を包含する。同様
に、担体または希釈剤は任意の徐放性材料(例、モノステアリン酸グリセリンま
たはジステアリン酸グリセリン)を単独で、またはワックスとともに含んでもよ
い。液体担体を用いる場合、調製物はシロップ、エリクシル、エマルジョン、ソ
フトゼラチン、カプセル、液体含有カプセル、アンプルまたは水性もしくは非水
性の液体懸濁物のような滅菌注射可能液体(例、溶液)の形態であってもよい。
このような医薬条の組成物の概要は、たとえば、Remington's 、Pharmaceutical
Sciences、Mack Publishing Company、Eaton Pennsylvania(Gennaro 第18版、1
990年)に記載されている。。
【0051】 医薬製剤は、錠剤形態について必要ならば、混合、造粒および圧縮などの工程
、または適当ならば成分の混合、充填および溶解を含む薬化学の慣用技術にした
がって調製され、経口あるいは、局所、経皮、膣内、鼻内、気管支内、頭蓋内、
眼内、耳内および直腸投与をはじめとする非経口について所期の製品が得られる
。医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの少量の非毒性補助物質
も含むことができる。
【0052】 好ましい投与経路は全身投与であるが、医薬組成物は、局所的または経皮(例
えば、軟膏、クリームまたはゲル等として)、経口、直腸(例えば、座剤として
)、非経口、注射または連続的注入により、膣内、鼻内、気管支内、頭蓋内、耳
内、または眼内投与することもできる。
【0053】 局所的投与のために、軟膏のような局所的に適用されるビヒクルに組成物を混
合してもよい。活性成分の担体は噴霧可能または非噴霧の形態のいずれであって
もよい。非噴霧の形態は、局所的適用に固有の担体を含み、および好適には水よ
りも極めて大きな粘性率を有する半固体または固体の形態であってもよい。適当
な製剤は、溶液、懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏(ointment)、散剤、
リニメント、軟膏(salve)等を含むがこれに限定されるものではない。所望に
より、これらを滅菌し、または補助剤(例、保存剤、安定化剤、湿潤剤、緩衝剤
、または浸透圧に影響する塩)と混合してもよい。非噴霧の局所的製剤に好適な
ビヒクルは、軟膏基剤(例、ポリエチレングリコール−1000(PEG−10
00)、HEBクリーム等の慣用のクリーム、ジェル、およびワセリンを含む。
【0054】 化合物が、好適には固体または液体不活性担体物質と組合せて、スクイーズボ
トルに充填され、または加圧された揮発性物質(通常、ガス状のプロペラント)
と混合されて充填されている噴霧可能なエアゾール製剤もまた局所的適用に適し
ている。エアゾール製剤には、本発明の化合物に加えて、溶媒、緩衝剤、界面活
性剤、香料、および/または酸化防止剤を含有させることができる。
【0055】 好適な局所的適用(特にヒト用)については、有効量の化合物の標的領域(例
、皮膚表面、粘膜、目、等)への適用が好ましい。この量は、処置する領域、症
状または疾患の重篤度、および用いる局所的ビヒクルの性質に依存し、通常、適
用あたり約0.001mg〜約1gである。
【0056】 また、本発明の組成物を、疾病または症状の治療に用いられる1以上のさらな
る化合物と組み合わせて投与してもよい。癌治療用には、例えば有糸分裂阻害剤
(例、ビンブラスチン);アルキル化剤(例、シクロホスファミド);葉酸代謝
拮抗剤(folate inhibitor)(例、メトトレキセート、プリトレキシム(pritrexim
)またはトリメトレキセート)、代謝拮抗物質(例、5−フルオロウラシルおよ
びシトシンアラビノシド)、インターカレーティング(intercalating)抗生剤(
例、アドリアマイシンおよびブレオマイシン)、酵素または酵素阻害剤(例、ア
スパラギナーゼ)、トポイソメラーゼ阻害剤(例、エトポシド)、または生物学
的応答変更因子(例、インターフェロン)のような抗腫瘍剤と組み合わせてポリ
アミドおよび誘導体を与える。要するに、任意の既知の癌治療剤を、本明細書に
開示するポリアミンアナログおよび誘導体と組み合わせて含む医薬組成物は本発
明の範囲内である。
【0057】 本発明の典型的な1回の投与量は、約1ng〜約10g/kg体重の間である
。投与量は好ましくは約0.01mg〜約1g/kg体重であり、もっとも好ま
しくは約0.1mg〜約100mg/kg体重である。局所投与用には、約0.0
1〜20%濃度の化合物、好ましくは1〜5%、の範囲の投与が提示される。経
口投与用では、1日の投与の総量は約1〜500mgの範囲内が好ましい。しか
し、上記の範囲は示唆的であり、個々の治療レジメに関する変数は多数であるの
で、これらの推奨される値からの少なからぬ変化は、当業者によって予測され、
また慣例的に行われる。
【0058】 疾病または症状を治療するための化合物の有効量または投与量は、特定の疾病
または症状用の認められているインビトロシステムまたはインビボ動物モデルを
用いて決定できる。癌の場合、当業者が認めている多くのモデルが知られており
、ヒト腫瘍の広いスペクトルを表わす。ヒトまたは非ヒト由来の多数の腫瘍セル
ラインのいくつかを用いる標準的なアッセイを用いてカルチャーにおける腫瘍細
胞増殖の抑制について試験することができる。動物モデルを包含するこれらのア
プローチの多くは、Geran、R.I.ら、“Protocols for Screening Chemical Agen
ts and Natural Products Against Animal Tumors and Other Biological Syste
ms(第3版)”、Canc.Chemother.Reports、第3部、3:1-112に詳細に記載されてい
る。
【0059】投与モデル 上記のように本発明の治療方法はポリアミド含有組成物の投与を指向する。本
発明のポリアミド含有製剤は、全身的または局所的に投与することができ、およ
び単独または混合物の成分として投与できる。投与経路は、局所、静脈内、経口
またはインプラントの使用によってもよい。例えば、ポリアミドを、これに限定
されるものではないが、局所用製剤、静脈内注射もしくは注入、経口摂取、また
は腹腔内注入もしくはインプラントの形態での局所投与を包含する手段によって
投与してもよい。さらなる投与経路は、慣習的または便利な形態でのポリアミド
の皮下、筋肉内、または腹膜内注射である。所望により、リポソームまたは脂肪
親和性の製剤を用いてもよい。局所投与用には、ポリアミドが、ローション、懸
濁物またはペーストを包含する標準的な局所用製剤および組成であってもよい。
経口の経路を介して、ポリアミドを容易に標的細胞または組織へ投与できる場合
、適当な製剤の経口投与も適当でありうる。
【0060】 当業者は、ポリアミドの投与量を、これに限定するものではないが、選択した
ポリアミド、これが運ばれる物理的デリバリーシステム、個々の患者、熟練した
実施者の判断等の要素によって最適化できる。
【0061】 ここでは本発明を一般的に記載したが、下記の実施例を参照して本発明がより
容易に理解されるであろう。該実施例は説明のために供されるものであり、特に
記載の無い限り、本発明を限定するものではない。
【0062】 実施例1 電気泳動シフトアッセイ 電気泳動シフトアッセイを実施して、HER2/neuプロモーターのTAT
Aボックスの隣接する配列に特異的な様々な濃度のポリアミドの添加がTATA
結合タンパク質(TBP)のDNA結合活性に影響するかどうかを確認した。H
ER2/neuTATAボックスおよび隣接配列に対応するオリゴヌクレオチド
を合成した。第1のオリゴヌクレオチド,HERTATA1は、配列: 5'−GCTGCTTGAGGAAGTATAAGAATGAAGTTGTGA
AG−3'(TATAボックスを下線で示す)を有する。相補オリゴヌクレオチ
ド,HERTATA2は、配列: 5'−CTTCACAACTTCATTCTTATACTTCCTCAAGCA
GC−3'を有する。これらの35塩基の相補オリゴヌクレオチドをγ−32
−ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて5'末端標識し、ついで
アニーリングして二本鎖35塩基対オリゴヌクレオチドを得た。ついで、このオ
リゴヌクレオチドを、4mM MgClおよび0.02%(v/v)NP−4
0非イオン性界面活性剤を含む5%非変性ポリアクリルアミドゲル(29:1
アクリルアミド対ビスアクリルアミド)と44mMトリス−ホウ酸,pH8.3
,1mM EDTAとを用いる電気泳動シフトアッセイに用いた。10%グリセ
ロール(v/v),20mM HEPES−OH,pH7.9,25mM KC
l,0.025% NP−40(v/v),100μg/mlウシ血清アルブミ
ン,0.5mMジチオスレイトール,0.8mMスペルミジン,0.1mM ED
TA,2mM MgClを含有する反応容量20μl中で、標識オリゴ体を0
.1nMの濃度で最終濃度1nMのTBP(Promega)と反応させた。
【0063】 0.1nM〜30nMの範囲の様々な濃度の各ポリアミドをこの結合反応に添
加した。反応物をポリアクリルアミドゲル電気泳動に荷し、つづいてImage
Quantソフトウェアを導入したMolecular Dynamics phosphorimagerを用い
て、乾燥させたゲルをイメージ処理および定量した。結果を(図4)に示す。明
らかに、HER2/neu−特異的ポリアミド(ポリアミドHER2−1(図4
A)、70(図4B、四角)、およびImPyPyPy−γ−PyPyPyPy
−β−RPRの組成のRPR70(図4B、×)は有意にインビトロのHER2
/neuTATAボックスへのTBPの結合を減少させた。HER2/neuに
特異的でない対照のポリアミド86(図4B、丸)は、HER2/neuTAT
AボックスへのTBPの結合にほとんど影響を与えなかった。
【0064】 「RPR」はポリアミドにおける荷電アルギニン−プロリン−アルギニン テ
ールの存在を示す。
【0065】 実施例2 無細胞系におけるインビトロでの転写抑制 制限エンドヌクレアーゼDraIを用いて、HER2/neuプロモーターを
有するプラスミドpGEM/HNP(Ebbinghausら、(1993))を線状化し
、転写の鋳型を生産した。この鋳型は270塩基対のHER2/neuプロモー
ターおよび400塩基対の下流配列を含んだ。100ngの鋳型DNAおよび2
μlのHeLa細胞核抽出物を含む20μl反応物中で、供給者(Promega)の
推奨するように25μlの反応容量で転写反応を実施した。これらの反応物を1
0μCi α−32P−GTPの存在下で0.6mMの非標識ヌクレオシド三リ
ン酸と20μM GTPとともに30℃,1時間インキュベートした。供給者(T
eltest)の推奨するようにRNAzolを用いて標識転写産物を精製し、8.3
M尿素および88mMトリス−ホウ酸、pH8.3、2mM EDTAを含む8
%ポリアクリルアミドゲルの変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動に荷した。 乾燥させたゲルを、phosphorimager(Molecular Dynamics)を用いて、イメー
ジ処理および定量した。このHER2/neuプロモーター鋳型由来のインビト
ロ転写物は、ポリアミドHER2−1を増量する添加によって抑制された(図5
)。ポリアミド無添加の反応と比較して、10nM HER2−1の添加は影響
を与えなかったが、100nMの添加は、転写を2倍抑制した。対照として、無
関係のサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを転写鋳型として用いるイ
ンビトロ転写も実施した。この鋳型への10nMまたは100nMのHER2−
1の添加は、転写レベルを有意には減少させなかった。
【0066】 実施例3 細胞培養物におけるHER2/neu発現の抑制 多くの乳癌セルラインをAmerican Type Culture Collectionから入手し、細胞
培養物に維持した。これらのセルラインは、HER3/neu遺伝子が増幅され
て極めて過剰に発現している乳癌細胞(SK−BR−3およびZR 75−1)
、および正常なコピー数のHER2/neu遺伝子を有しHER2/neuを正
常な低レベルで発現している乳癌細胞(Hs 578T)を含む。37℃、5%
CO/空気混合物の条件下での、これらの細胞の増殖期に、様々な濃度のポリ
アミドを、10%(v/v)ウシ胎児血清を加えた適当な細胞培養培地中に直接
添加した。最初の実験のため、ポリアミドHER2−1を様々な濃度で培地に添
加した。対照ポリアミド(HIV−1)を様々な濃度で別々の細胞のフラスコに
添加した。ポリアミドHIV−1は構造上HER2−1と似ているが、HER2
/neuTATAボックスまたはその隣接配列を特異的には認識しない。
【0067】 次の実験では、セルラインSK−BR−3をポリアミドで6日間処理した。こ
の実験では、ポリアミドHER2−1およびポリアミド70を別々の実験で、最
終濃度が0.5μMになるように細胞培養培地に添加した。3日間のインキュベ
ーションの後、新しい培地と新しいポリアミドをこの細胞に添加した。これらの
細胞をさらに3日間インキュベートし、ついでRNA抽出のために採取した。
【0068】 細胞が75cmの培養フラスコ中でコンフルエントとなるまで増殖した後、
付着細胞を2mlの0.05%トリプシン−0.53mM EDTA(Gibco BRL)
で処理して細胞を培養フラスコから剥がすことにより、ポリアミド処理乳癌細胞
を採取した。これらの細胞を回収して臨床遠心分離機中5000rpm(IEC
)でペレットにした。細胞を冷1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でリンスし
、臨床遠心分離機中でペレットにした。RNAzol(Teltest)を用い
て細胞から全RNAを抽出した。充填細胞容積100μlに対して、1mlのR
NAzolおよび100μlのクロロホルムを添加した。この混合物を10秒間
撹拌し、10分間氷上に静置した。ついで、混合物を4℃、14,000gで1
5分間、微量遠心分離機にかけた。上層を除去し、全RNAを等量のイソプロパ
ノールで沈降させた。RNAペレットを70%エタノールで洗浄し、減圧下で乾
燥させ、50〜100μlの1μlのRNasin(40ユニット)を含む無R
Nアーゼ(DEPC処理)水に再懸濁した。
【0069】 ついで、相対レベルのHER2/neu mRNAのアッセイとして、ポリア
ミド添加の影響を逆転写(RT)−ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR
)を用いて分析した。HER2/neuプロモーターからの転写量を用いて、こ
れらのHER2/neu mRNAレベルを較正しなければならず、これによっ
てポリアミドHER2−1がインビボの転写に何らかの影響を有するかどうかの
決定が可能になる。HER2/neu癌遺伝子に特異的なPCRプライマーを用
いると、HER2/neu mRNAの相対レベルを反映して、PCR産物はH
ER2/neu cDNAに対応する。PCRプライマーは:(Her2A)5
'−GCTGGCCCGATGTATTTGATGGT−3'および(Her2B
)5'−GTTCTCTGCCGTAGGTGTCCCTTT−3'であり、各5
0ngを下記のようにPCR反応に用いた。
【0070】 逆転写(RT)−ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)を用いて、種
々の細胞に由来するHER2/neu mRNAの相対量を測定できる。上記の
ようにしてポリアミド−処理乳癌細胞から全RNAを抽出した後、各別々の細胞
型およびポリアミド濃度について全RNAの濃度を吸光光度計(260nMでも
光学濃度を用いて)によって測定する。各RT−PCRに等量の全RNA(10
ng)を用いる。Reverse Transcription System キット(Promega)を用いてRT
−PCRを実施した。推奨されるように、オリゴdTプライマーを用いて、逆転
写酵素により、42℃、25分間でmRNA鋳型からcDNAを合成した。つい
で、これらのcDNAをPCRの鋳型として用いる。上記キット中の緩衝液およ
びTaqポリメラーゼを用い、94℃で45秒間の変性、60℃で45秒間のア
ニーリング、および72℃で2分間の伸長の26サイクルでPCRを実施した。
5μCiの放射活性ヌクレオチドα−32P−dATPをPCR工程中に入れて
、放射標識PCR生産物を生産し、これをアクリルアミドゲル上で分析し、オー
トラジオグラフィーで可視化できる。PCR産物の相対量は、phosphorimager(M
olecular Dynamics)を用いて定量できる。ポリアミドで処理していない細胞から
のHER2/neu mRNAのレベルは陽性対照であり、これを1.0の値と
し、非処理細胞の値対する相対値を、ポリアミド処理細胞試料についてのHER
2/neu mRNAレベルとした。
【0071】 これらのRT−PCRアッセイの結果を図6に示す。ポリアミドHER2−1
を用いる1〜2日間のセルラインSK−BR−3およびHs 578−Tの処理
は、HER2/neu mRNAの相対レベルにおいて2倍弱の減少の結果を与
えた。対照ポリアミドHIV−1はHER2/neu mRNAの相対レベルに
明確な影響を有さなかった。SK−BR−3細胞をポリアミドHER2−1また
は70のいずれかで6日間処理した場合、1〜2日間処理した細胞に比べてより
有意に減少した。SK−BR−3細胞は、アミドHER2−1または70で処理
した場合、HER2/neu mRNAの相対レベルと比較して、各々4倍およ
び3倍の減少を示した。これらの結果は、ポリアミドが細胞に入り、その標的ヌ
クレオチド配列に結合し、それによってその遺伝子の発現に影響を与えられるこ
とを示す。
【0072】 すでに明確に取り込まれているか否かに関わらず、本明細書において記載した
すべての文献はその内容を出典明示により本明細書の一部とする。 ここで本発明を完全に開示しているので、本発明の精神および範囲からの逸脱
および過度の実験をすることなく、同等のパラメーター、濃度、および条件の広
い範囲内で、これを実施できることは当業者に理解されよう。本発明はその特定
の具体例に関連して記載されているが、さらなる変更が可能であることは理解さ
れよう。本出願は、一般に本発明の原則に従った、当業界の公知または通例的で
、前記および添付の請求の範囲に記載されているような基本的特徴を適用できる
本発明からの逸脱を包含する本発明の任意の変更、使用、または適用を網羅する
【図面の簡単な説明】
【図1】 Her2/neuプロモーターを表す図である。Aは、Est、
AP−2およびTBP(「TATA」)転写因子の結合部位および「CCAAT
ボックス」を含むヌクレオチド配列を示す。Bは概略図(一定比率でない)であ
る。
【図2】 図2AはポリアミドHER2−1(左)およびミスマッチポリア
ミドImPy−β−PyIm−γ−PyPyPyPyPy−β−Dp(右)のD
NアーゼIフットプリント滴定の結果を示す図である。図2Bはポリアミド構造
の概略図およびポリアミド類の会合定数であり、ポリアミド中のイミダゾール環
は黒丸で、ピロール環は白丸で示し、曲線でγアミノブチル酸を示し、ひし形で
β−アラニンを示し、正荷電を付した半円でジメチルアミノプロピルアミドを示
した。
【図3】 図3はHER2/neuプロモーター、ポリアミド構造および結
合部位の配列を比較する;TATA結合タンパク質(TBP)に対する結合部位
をポリアミドHER2−A、HER2−1、70およびミスマッチポリアミド8
6と共に示した。
【図4】 図4はポリアミドHer2−1(A)および70の、TBP結合
における作用についての試験結果をグラフにしたものである。
【図5】 図5はポリアミドHER2−1の、無細胞系におけるインビトロ
HER2/neu転写に対する作用についての試験結果をグラフにしたものであ
る。
【図6】 図6はポリアミドHER2−1および70の、ヒト乳癌セルライ
ンSK−BR−2におけるHER2/neuのmRNA生成に対する作用につい
ての試験結果をグラフにしたものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/50 C12Q 1/68 A 33/566 A61K 37/02 // C12Q 1/68 C12N 15/00 ZNAA (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CR, CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI,G B,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL ,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ, LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT ,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL, TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,V N,YU,ZA,ZW (72)発明者 ピーター・ビー・ダーバン アメリカ合衆国91125カリフォルニア州パ サディナ、メール・ステーション16−30、 イースト・カリフォルニア・ブールバード 1200番、カリフォルニア・インスティテュ ート・オブ・テクノロジー Fターム(参考) 2G045 AA40 DA36 DA78 FB02 4B024 AA11 BA63 CA04 DA02 EA04 GA11 HA14 4B063 QA01 QA13 QA18 QQ02 QQ53 QR08 QR55 QR62 QS25 QS34 4C084 AA02 BA02 BA10 BA23 BA32 CA59 ZB26 ZC41

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 癌遺伝子の発現または過剰発現が係わる疾患を有する対象の
    治療に有用な組成物であって、医薬上許容される賦形剤、および転写抑制量の少
    なくとも1のポリアミドを含有する組成物、該ポリアミドは 少なくとも4相補対の芳香族カルボキサミド残基、該カルボキサミドの相補対
    はdsDNA標的のヌクレオチド配列に対応するよう選択される; グリシン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸および5−アミノ吉草酸からなる群
    から選択される少なくとも2の脂肪族アミノ酸残基;および 少なくとも1の末端アルキルアミノ残基 を含有する。
  2. 【請求項2】 対象がヒト患者である、請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 癌遺伝子が細胞性もしくは内因性癌遺伝子である、請求項1
    記載の組成物。
  4. 【請求項4】 該癌遺伝子の該転写抑制が、ESX、ETSおよびTBPか
    らなる群から選択されるタンパク質因子のdsDNAへの結合を調節することに
    よってなされる、請求項1記載の組成物。
  5. 【請求項5】 疾患が乳癌である、請求項1記載の組成物。
  6. 【請求項6】 該ポリアミドの標的dsDNA配列に対する結合親和性が少
    なくとも10−1であり、選択性が少なくとも約2である、請求項1記載の
    組成物。
  7. 【請求項7】 芳香族カルボキサミド残基が標的dsDNAのヌクレオチド
    配列に対応するように選択され、該対応が ヌクレオチド対G/Cに対応してIm/Py、 ヌクレオチド対C/Gに対応してPy/Im、 ヌクレオチド対A/Tに対応してPy/Py、 ヌクレオチド対T/Aに対応してPy/Py、 ヌクレオチド対T/Aに対応してHp/Py、 ヌクレオチド対A/Tに対応してPy/Hp (ただし、ImはN−メチルイミダゾールであり、PyはN−メチルピロールで
    あり、Hpは3−ヒドロキシN−メチルピロールである)からなる群から選択さ
    れる請求項1記載の組成物。
  8. 【請求項8】 少なくとも1の脂肪族アミノ酸残基がβ−アラニンである、
    請求項1記載の組成物。
  9. 【請求項9】 該ポリアミドが2つのβ−アラニン残基を有しており、これ
    がヌクレオチド対A/TまたはT/Aに対応する相補対残基を形成している、請
    求項1記載の組成物。
  10. 【請求項10】 末端アルキルアミノ残基がN,N−ジメチルアミノプロピ
    ル残基である、請求項1記載の組成物。
  11. 【請求項11】 カルボキサミド対の少なくとも1つのPyがβ−アラニン
    で置換されている、請求項1記載の組成物。
  12. 【請求項12】 ポリアミドがHer2−1およびRPR70からなる群か
    ら選択される、請求項1記載の組成物。
  13. 【請求項13】 請求項1記載の組成物を投与することを含む、癌遺伝子の
    発現または過剰発現が係わる疾患を有する対象を処置する方法。
  14. 【請求項14】 対象がヒト患者である、請求項13記載の方法。
  15. 【請求項15】 癌遺伝子が細胞性もしくは内因性のものである、請求項1
    3記載の方法。
  16. 【請求項16】 癌遺伝子の転写の抑制が、ESX、ETSおよびTBPか
    らなる群から選択されるタンパク質因子のdsDNAへの結合を調節することに
    よってなされる、請求項13記載の方法。
  17. 【請求項17】 疾患が乳癌である、請求項13記載の方法。
  18. 【請求項18】 該ポリアミドの標的とするdsDNA配列に対する結合親
    和性が少なくとも10−1であり、選択性が少なくとも約2である、請求項
    13記載の方法。
  19. 【請求項19】 芳香族カルボキサミド残基の相補対が、標的dsDNAの
    ヌクレオチド配列に対応するよう選択され、該選択が、ヌクレオチド対G/Cに
    対応してIm/Py、 ヌクレオチド対C/Gに対応してPy/Im、 ヌクレオチド対A/Tに対応してPy/Py、 ヌクレオチド対T/Aに対応してPy/Py、 ヌクレオチド対T/Aに対応してHp/Py、 ヌクレオチド対A/Tに対応してPy/Hp (ただし、ImはN−メチルイミダゾールであり、PyはN−メチルピロールで
    あり、Hpは3−ヒドロキシN−メチルピロールである)からなる群から選択さ
    れる請求項13記載の方法。
  20. 【請求項20】 脂肪族アミノ酸残基がβ−アラニンである、請求項13記
    載の方法。
  21. 【請求項21】 該ポリアミドが二つのβ−アラニン残基を有しており、こ
    れがヌクレオチド対A/TまたはT/Aに対応する相補対を形成する、請求項1
    3記載の方法。
  22. 【請求項22】 末端アルキルアミノ残基がN,N−ジメチルアミノプロピ
    ル残基である、請求項13記載の方法。
  23. 【請求項23】 カルボキサミド対の少なくとも1つのPyがβ−アラニン
    で置換されている、請求項13記載の方法。
  24. 【請求項24】 ポリアミドがHer2−1およびRPR70からなる群か
    ら選択される、請求項13記載の方法。
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