JP2002524501A - 合成ポリアミドによるHER2/neuオンコジーン発現の調節 - Google Patents

合成ポリアミドによるHER2/neuオンコジーン発現の調節

Info

Publication number
JP2002524501A
JP2002524501A JP2000569793A JP2000569793A JP2002524501A JP 2002524501 A JP2002524501 A JP 2002524501A JP 2000569793 A JP2000569793 A JP 2000569793A JP 2000569793 A JP2000569793 A JP 2000569793A JP 2002524501 A JP2002524501 A JP 2002524501A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polyamide
her2
sequence
pair
binding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2000569793A
Other languages
English (en)
Inventor
ピーター ダーバン,
ジョエル エム. ゴッテスフェルド,
ジョン ジェイ. ロング,
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Scripps Research Institute
Original Assignee
Scripps Research Institute
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Scripps Research Institute filed Critical Scripps Research Institute
Publication of JP2002524501A publication Critical patent/JP2002524501A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/395Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
    • A61K31/41Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having five-membered rings with two or more ring hetero atoms, at least one of which being nitrogen, e.g. tetrazole
    • A61K31/41641,3-Diazoles
    • A61K31/41781,3-Diazoles not condensed 1,3-diazoles and containing further heterocyclic rings, e.g. pilocarpine, nitrofurantoin
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 二本鎖DNAの浅いほうの溝を結合し得るポリアミドを含む方法および組成物は、遺伝子転写および遺伝子発現の阻害および減少について記載される。このポリアミドは、標的遺伝子のプロモーター領域において二本鎖DNA標的のヌクレオチド配列に特異的に接触するか、および/またはこのヌクレオチド配列に特異的に結合するように選択される、少なくとも4つの芳香族カルボキサミド残基の相補対を含む。この方法、組成物およびポリアミドは、オンコジーン転写および発現の阻害ならびに癌の処置のために開示される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 米国政府は、国立衛生研究所に与えられる助成金番号GM26453、276
81およびAI29182に準じて本発明において特定の権利を有する。
【0002】 (関連出願) 本出願は、米国仮出願第60/099,906号(1998年9月11日出願
)(これは、十分に示されるように本明細書において参考として援用される)か
らの優先権の利益を主張する。
【0003】 (発明の分野) 本発明は、一般に、DNAを結合するポリアミドの使用による、遺伝子発現の
調節(modulation)または調節(regulation)のための方
法および組成物に関する。この方法および組成物は、ポリアミドと二本鎖DNA
(dsDNA)の浅いほうの溝との間の相互作用によって遺伝子発現もしくは過
剰発現の阻害またはダウンレギュレーションを生じる。これらの方法および組成
物のポリアミドは、ダウンレギュレートまたは阻害されるべき遺伝子のプロモー
ター領域内に配置される、予め決定された標的核酸配列を結合する。望ましくな
いレベルで発現されるかまたは過剰発現される標的オンコジーンの阻害またはダ
ウンレギュレーションは、本発明の1つの適用である。特に、本発明は、標的内
因性細胞性オンコジーンの発現または過剰発現の減少に関する。
【0004】 (発明の背景) チロシンキナーゼ膜増殖因子レセプターHER2/neu(p185HER2とし
ても公知である)は、ヒト乳癌の20〜30%に過剰発現され、そして増幅され
る、同名の細胞性オンコジーンによってコードされる。Baert,J.−L.
ら,Int.J.Cancer 70,590〜597(1997);Benz
,C.ら,Oncogene 15,1513〜1525(1997);Cha
ng,C.−H.ら,Oncogene 14,1617〜1622(1997
);Scott,G.K.ら,J.Biol.Chem.269,19848〜
19858(1994);Pasleau,F.;ら,Oncogene 8,
849〜854(1993);Tal,M.ら,Molecular and
Cellular Biology 7,2597〜2601(1987)を参
照のこと。Her−2/neuはまた、他の状態(ヒト婦人科学的腺癌(例えば
、卵巣、子宮内膜、乳房、ファローピウス管および子宮頸の癌)を含む)におい
て過剰発現される(Cirisano,F.D.,およびKarlan,B.Y
.,J.Soc.Gynecol.Investig.3 99〜105(19
96))。
【0005】 neuオンコジーン遺伝子産物は、げっ歯類における化学的に誘導された(エ
チルニトロソ尿素(ethylnitosourea))腫瘍において元々記載
された。続いて、ヒト対応物(c−erbB−2またはHer−2/neu)は
、EGFレセプター(タンパク質チロシンキナーゼ活性を有する185kDaの
膜貫通タンパク質)に相同であることが見出された。Her2/neuの過剰発
現はまた、腫瘍が転移する見込みに関連し、患者に対する乏しい予後の結果を伴
う。Her2/neuオンコジーンの変異、増幅、および過剰発現は、胸部腫瘍
進行、早期転移、および乏しい予後に関連することが報告されてきた。Her2
/neu遺伝子増幅は、リンパ節転移に直接相関付けられる。さらに、動物モデ
ルにおいて、変異を活性化すると、迅速な腫瘍進行を誘導する。Her−2/n
euタンパク質は、細胞運動性において役割を果たし、それゆえに転移において
役割を果たすようであると考えられている。従って、DNAレベルでの直接的な
干渉によるHer−2/neu遺伝子発現の阻害は、転移性疾患に対する強力な
治療的アプローチであり得る。
【0006】 いくつかの転写因子(例えば、ESX、AP−2、およびTATA結合タンパ
ク質(「TBP」))は、HER2/neu増殖因子レセプターに対する遺伝子
の発現の調節において重要な役割を果たす。Baert,J.−L.ら,前出;
Benz,C.ら,前出;Chang,C.−H.ら,前出;Bosher,J
.M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92,744〜7
47(1995)を参照のこと。これらの転写因子は、HER2/neuプロモ
ーター内の部位への結合に際してp185HER2の発現を活性化する。Her2/
neuプロモーターのヌクレオチド配列および概略図は、図1に示される。
【0007】 TBPは、ほとんどのタンパク質コード遺伝子の活性化に関与する遍在性の転
写因子である。TBPは、DNAの浅いほうの溝と相互作用するDNA結合タン
パク質である。ESX、AP−2およびTBPとは別に、HER2/neuプロ
モーター内の他の可能な転写因子結合部位が存在することに留意すること。
【0008】 かなりの試みが、治療的ストラテジーがこれらの研究から出てくるということ
を期待して、生存細胞における遺伝子発現に干渉するための方法を考案するため
に、当該分野において行われてきた。これらのアプローチは、アンチセンスオリ
ゴヌクレオチドの細胞への導入(天然のまたはペプチド核酸に基づく)によるか
、または特定のRNAのリボザイム媒介破壊による、メッセンジャーRNAのタ
ンパク質への翻訳の干渉を含む。遺伝子転写の直接的な阻害についてのいくつか
のアプローチもまた、試みられており;これらは、三重へリックス形成オリゴヌ
クレオチド(予め決定された配列を認識する、設計または選択されたジンクフィ
ンガーペプチド)、およびDNA結合カリチェアミシン(calicheami
cin)オリゴサッカリドを含む。
【0009】 遺伝子発現の干渉に基づく、成功すべき任意の治療的アプローチについて、い
くつかの基準がその治療剤によって達成されなければならない:第1に、この薬
剤は、任意の一般的な細胞毒性を保有してはならない;第2に、この薬剤は、細
胞浸透性でなければならず、そしてDNA結合薬剤の場合には、この化合物は、
核に対して一過性であり、そして細胞性染色質の状況において、高親和性および
特異性によってこれらの標的配列を結合しなければならない;および第3に、こ
の薬剤のそのDNA標的配列への結合は、遺伝子転写を干渉しなければならない
。上記に列挙される可能なアプローチの各々は、それ自体の特有の限定を有する
。例えば、三重へリックス形成オリゴヌクレオチドは、配列選択性について可能
性を有し、そしてインビトロで転写を有効に阻害し得る一方、これらの分子は、
有効な遺伝子阻害のために使用されるために必要な、乏しい細胞浸透性および浸
透化細胞を受ける。同様に、ジンクフィンガーペプチドは、遺伝子治療アプロー
チを介して、適切なウイルス発現ベクターまたは非ウイルス発現ベクターを用い
て導入されなければならない。なぜなら、これらのペプチドは、細胞に直接進入
し得ないからである。対照的に、カリチェアミシンオリゴサッカリドは、細胞膜
を通過するために十分に疎水性であるが、これらの分子は、厳しく制限された配
列特異性(4bp)を保有し、そして非常に低親和性(タンパク質−DNA相互
作用の阻害について必要な100μM以上)でDNAを結合する。従って、より
高い程度のDNA配列特異性および親和性を保有する、新たなクラスの細胞浸透
性分子が、実現可能な任意のヒト遺伝子治療アプローチに必要である。
【0010】 別のアプローチは、特定のDNA配列を標的にする細胞浸透性の低分子を利用
する。これらの分子は、遺伝子発現の調節に有用である。DNA二重へリックス
において特性の配列を認識する小さな合成DNA結合リガンドの設計は、長く存
在する化学の目標である。三重へリックス形成を介して二重へリックスDNAの
深いほうの溝を認識するオリゴデオキシヌクレオチドは、高親和性および特異性
を有する広範囲の配列に結合する。オリゴヌクレオチドおよびこれらのアナログ
は、遺伝子発現を干渉することが示されてきたが、三重へリックスアプローチは
、プリントラック(track)に限定され、そして乏しい細胞性取り込みを伴
う。
【0011】 他の低分子もまた、DNA結合リガンドとして興味深い。Wadeらは、二量
体の並行するモチーフによって5’−(A,T)G(A,T)C(A,T)−3
’配列でDNAの浅いほうの溝において結合するペプチドの設計を報告した(J
.Am.Chem.Soc.114,8783〜8794(1992))。報告
されたMrksichらは、設計されたペプチド1−メチルイミダゾール−2−
カルボキサミドネトロプシン(1−methylimidazole−2−ca
rboxamidenetropsin)によるDNAの浅いほうの溝における
配列特異的認識について逆平行の並行するモチーフを記載する(Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA 89,7586〜7590(1992))。
Pelton,J.G.およびWemmer,D.E.は、二次元NMRによる
2−1ジスタマイシン(distamycin)A−d(CGCAAATTTG
GC)複合体の構造的特徴付けを報告した(Proc.Natl.Acad.S
ci.USA 86,5723〜5727(1989))。
【0012】 Dervanおよび共同研究者らは、合成ピロール−イミダゾールポリアミド
が、良好な特異性および非常に高い親和性(多くの配列特異的転写因子の親和性
をさらに超える)でDNAを結合することを示した(Traugerら,Nat
ure 382,559〜561(1996))。彼らはさらに、nM未満の濃
度における設計されたリガンドによるDNAの認識を記載する。DNA認識は、
浅いほうの溝におけるイミダゾール−ピロール対またはピロール−ピロール対の
並行するアミノ酸対合に依存する。White,S.ら(1996)は、DNA
の浅いほうの溝におけるピロール−イミダゾールポリアミド認識のA・T/T・
A縮重の効果を報告した(Biochemistry 35,6147〜615
2(1996))。Whiteら(1997)は、ピロール−イミダゾールポリ
アミドによるDNAの浅いほうの溝における認識に対する対合の役割を報告し(
Chem.&Biol.4,569〜578(1997))、そして浅いほうの
溝におけるポリアミド結合についての5’−3’ N−C配向選択を実証した。
従って、ポリアミド分子は、従って、浅いほうの溝におけるタンパク質−DNA
相互作用のインヒビターとして作用する能力を有する。
【0013】 N−メチルピロール(Py)アミノ酸およびN−メチルイミダゾール(Im)
アミノ酸由来の、浅いほうの溝に結合するポリアミドについての対合の役割の開
発は、配列特異性を与えるための別の手段を提供する。Im/Py対は、G・C
とC・Gとを区別し、そしてこれらの両方とA・T塩基対またはT・A塩基対と
を区別するが、一方、Py/Imは、C−G塩基対合を標的にする。Py/Py
対は、A・TとG・Cとを特定するが、A・TとT・Aとを区別しない。配列特
異的DNAリガンドの合理的な設計に対するこのアプローチの一般性は、直接的
なNMR構造研究(Geierstangerら,Science 266,6
46〜650(1994))および0.03nMの適切な解離定数を有する6つ
の塩基対配列を標的にする8つの環のヘパリンポリアミドの合成における最近の
成功(Traugerら,上記)によって支持されている。さらに、配列中で単
一のアミノ酸残基によって異なる2つの8環ピロール−イミダゾールポリアミド
は、配列中で単一の塩基対によって異なるそれぞれの6つの塩基対標的部位に特
異的に結合する。単一の窒素原子のC−Hとの置換は、2桁程度、特異性および
親和性を調節し得る。
【0014】 6つの塩基対配列がヒトゲノムにおいて高度に縮重するので(ヒトゲノムにお
いて、4キロベースごとに1回、すなわち、500,000倍、ランダムで生じ
る)、ポリアミドは、はるかに長い配列を認識するように合成されている。例え
ば、12の環の二重ヘパリンポリアミドは、12bp部位を標的にするように設
計され、そして結合は、再びnM親和性で観察される。このような配列は、ヒト
ゲノムにおいて、1600万塩基対ごとに1回のみ、すなわち、ほんの125倍
、ランダムで生じることが予測される。従って、このような分子は、インビボに
おいて遺伝子転写のインヒビターとして、および概要を述べた条件が満たされ得
る場合にはヒトの治療剤として作用する能力を有する。
【0015】 (発明の要旨) 本発明は、遺伝子の転写を減少することによる、遺伝子発現または過剰発現の
調節または調節のための方法および組成物に関し、そしてこれらを含む。好まし
くは、特定の個々の標的遺伝子の転写が、減少される。このような減少は、標的
遺伝子のプロモーター領域内の二本鎖(dsDNA)の浅いほうの溝に結合する
か、または相互作用するポリアミドの適用から生じる。好ましくは、結合または
相互作用は、転写を阻害またはダウンレギュレートするための、プロモーター領
域内に予め決定された標的核酸配列による。
【0016】 本発明は、細胞浸透性であり、そして遺伝子転写を阻害し得る配列特異的DN
A結合低分子の使用によって遺伝子の発現および過剰発現を減少する。このよう
な分子の適切な適用は、種々の疾患(癌を含む)の処置のための本質的に新たな
治療的ストラテジーを提供するために内因性オンコジーンの過剰発現を阻害し得
る。本発明の低分子は、標的遺伝子のプロモーター領域内で核酸配列に結合する
か、または相互作用するポリアミドである。好ましくは、これらの配列は、1つ
以上の転写因子によって、認識されるか、または認識されるように近接される。
【0017】 好ましくは、このポリアミドは、遺伝子の転写および発現を制御するプロモー
ター領域中の二本鎖DNAの浅いほうの溝に結合する。好ましくは、この遺伝子
の転写は、タンパク質転写因子のdsDNAへの結合を調節することによって阻
害される。好ましい実施態様において、この転写因子は、ESX、ETSおよび
TBPである。
【0018】 HIV−Iプロモーターの転写活性の阻害に指向する以前の研究は、ポリアミ
ドがTBPならびにEtsファミリー転写因子の結合をブロックし得ることを実
証してきた(PCT公開出願PCT/US98/02444、現在WO 98/
35702を参照のこと、これらの教示は、全体が記載されるように参考として
援用される)。原理的に、転写因子の両方のクラスは、dsDNAの浅いほうの
溝と接触するか、または結合するポリアミドによって阻害され得る。理論によっ
て束縛されることなく、浅いほうの溝と接触するタンパク質のDNA複合体は、
直接的な立体障害、反発または排除によって阻害され得る。あるいは、阻害は、
アロステリック効果によってであり得る。比較において、そしてまた理論によっ
て束縛されることなく、深いほうの溝と接触するタンパク質のDNA複合体は、
DNAコンホメーションにおけるポリアミド誘導変化によって抑制され得る。当
然のことながら、阻害はまた、他の手段によって(例えば、所望の部位に標的に
されるポリアミドに対するDNA切断薬剤を結合体化することによってか、また
は化学的改変DNAによって)達成され得る。
【0019】 本発明の1つの好ましい局面において、オンコジーンの発現または過剰発現が
、標的にされる。好ましくは、オンコジーンは、癌、好ましくはヒト乳癌に関与
する内因性細胞性オンコジーンである。本発明の1つのオンコジーン標的は、H
ER−2/neu遺伝子であり、これは、HER−2/neuプロモーター領域
内で標的配列に結合するポリアミドの使用によって、ダウンレギュレートされ得
るか、または阻害され得る。好ましくは、これらの配列は、HER2/neuプ
ロモーター内にある転写因子結合部位であるか、またはそれに近接する。ポリア
ミドと標的配列との間の相互作用または結合は、HER2/neu遺伝子の転写
を阻害し得る。HER2/neu発現の阻害の程度は、HER2/neu過剰発
現の阻害に広範にわたり得、そしてそれを含み得る。本発明はさらに、種々の腫
瘍または癌(乳癌を含む)の処置のためのポリアミドの適用を包含する。
【0020】 適切なポリアミドは、少なくとも109-1のdsDNA標的配列での結合親
和性および少なくとも約2の選択性を有する。選択性は、単一の塩基対ミスマッ
チdsDNA配列についての結合親和性に対する同定されたdsDNA標的配列
についての結合親和性の比として規定される。好ましい実施態様において、少な
くとも90%の単一塩基ミスマッチ配列に対する選択性は、約10より大きい。
【0021】 本発明はまた、薬学的に受容可能な賦形剤および転写を阻害する量の本発明の
少なくとも1つのポリアミドを含む組成物を提供する。各ポリアミドは、少なく
とも4つの芳香族カルボキサミド残基の相補対を含み、この対は、dsDNA標
的の同定されたヌクレオチド配列に対応するように選択される。このポリアミド
はさらに、グリシン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、R−2,4−ジアミノ酪
酸および5−アミノ吉草酸からなる群より選択される少なくとも2つの脂肪族ア
ミノ酸残基、ならびに少なくとも1つの末端アルキルアミノ残基を含み、このポ
リアミドは、少なくとも109-1の標的dsDNA配列での結合親和性および
少なくとも約2の選択性を有する。この選択性は、単一の塩基対ミスマッチds
DNA配列についての結合親和性に対する同定された標的dsDNAについての
結合親和性の比として規定される。
【0022】 本発明はさらに、細胞性オンコジーンの異常な発現に関連する状態を有する被
験体を処置するために適切な方法および組成物を提供する。この被験体は、好ま
しくはヒト被験体であり、特に、この被験体は、乳癌、または異常なHer−2
/neuオンコジーン発現に関連する他の疾患もしくは状態に罹患している。こ
の方法は、上記のようなポリアミドまたは組成物の投与を包含する。
【0023】 (詳細な説明) 本発明は、遺伝子転写を減少させることによって、遺伝子の発現または過剰発
現を調整または調節するための方法および組成物に関する。この方法および組成
物は、好ましくは、オンコジーン(特に、癌(特にヒトの癌)および特に乳癌に
関与するオンコジーン)転写の阻害、に関する。
【0024】 遺伝子転写の減少は、ポリアミドと標的遺伝子のプロモーター領域内のdsD
NAの浅いほうの溝との間の結合さもなくば他の相互作用から生じる。好ましく
は、このポリアミドは、プロモーター領域内の特異的な、さもなくば所定の標的
核酸配列と結合するか、さもなくば相互作用して、転写を阻害さもなくば下方調
節する。所定の配列とは、ポリアミドによる結合が所望される配列をいう。実際
の配列は、公知であり得るか、または位置または他の特徴によって同定されてい
るのみであり得る。好ましくは、その配列、または認識される配列の近位の配列
は、1つ以上の転写因子によって認識される。
【0025】 このポリアミドは、好ましくは、細胞透過性であり、そしてインビボ、インビ
トロ、または無細胞系での遺伝子転写を阻害し得る。そのようなポリアミド分子
の適切な適用を使用して、種々の疾患(癌を含む)の処置として、内因性オンコ
ジーンの発現または過剰発現を阻害し得る。
【0026】 好ましい実施態様において、このポリアミドは、標的遺伝子の転写および発現
を調節するプロモーター領域における二本鎖DNAの浅いほうの溝に結合する。
好ましい標的遺伝子は、癌形成または進行に関与する内陰性オンコジーンである
。好ましくは、この遺伝子の転写は、タンパク質(例えば、転写因子)の同じプ
ロモーター領域(これは、ポリアミドが結合または相互作用する)への結合を調
節することによって阻害される。特に好ましい実施態様において、この転写因子
は、以下の1つ以上である:ESX、ETSおよびTBP。
【0027】 HIV−1プロモーターにおける転写活性の阻害は、ポリアミドがTBPおよ
びEts転写因子の結合をブロックし得る(WO 98/35702を参照のこ
と。これは、ポリアミド合成についての考察を包含する)。本発明は、TBPお
よびEts転写因子の両方の活性を阻害もしくは調節するポリアミドの使用を包
含する。本発明は、dsDNAの浅いほうの溝と接触もしくは結合する1つ以上
のポリアミドの使用によって転写因子活性に影響を与え得る。そのような接触も
しくは結合は、妨害効果、反撥効果、アロステリック効果または他の機能によっ
て、その浅いほうの溝においてDNA転写因子複合体の形成を阻害し得る。これ
は、おそらく、DNAコンフォメーションにおけるポリアミド誘導性変化によっ
て阻害され得る、TBPのような深いほうの溝DNA結合タンパク質とは対照的
である。
【0028】 本発明の好ましい局面において、オンコジーン、特に内因性細胞性オンコジー
ンの発現または過剰発現が標的化される。好ましくは、このオンコジーンは、ヒ
ト乳癌と関係付けられたものであり、そしてその発現または過剰発現は、そのオ
ンコジーンの領域における浅いほうの溝と接触もしくは結合するポリアミドによ
って阻害される。好ましくは、そのプロモーター領域の、接触され、または結合
された部分が転写因子結合部位であるか、またはその近位である。阻害の程度は
、好ましくは、大きな、そしてより好ましくはそのオンコジーンの過剰発現でさ
え阻害するに充分であり、ここで、その遺伝子のコピー数は、増加してい得る。
【0029】 本発明の1つのオンコジーン標的は、HER−2/neu遺伝子であり、これ
は、HER−2/neuプロモーター領域内の標的配列に結合するポリアミドの
使用によって下方調節もしくは阻害され得る。好ましくは、これらの配列は、H
ER−2/neuプロモーター内の転写因子結合部位であるか、またはその近位
である。これらの転写因子としては、TBP、ESXおよびAP−2が挙げられ
る。そのポリアミドとその標的配列との相互作用または結合は、HER2/ne
u遺伝子転写の阻害をもたらす。
【0030】 好ましい実施態様において、ポリアミドは、ヒトHer−2/neu乳癌オン
コジーンプロモーターに見出されるTATAエレメントの直ぐ下流に結合するよ
うに設計された。組成物ImPy−β−PyIm−(−PyPy−β−PyPy
−β−DpのこのポリアミドHer2−1は、200pMの見かけ上の解離定数
で、配列5’−AGAATGA−3’(ここで、この配列の5’Aは、TATA
エレメントの3’Aである)を結合する。Her2−1は、TBPの結合および
転写の有効なインヒビターである。
【0031】 本発明は、薬学的に受容可能な賦形剤および転写阻害量の、少なくとも1つの
、遺伝子発現もしくは過剰発現の阻害のためのポリアミドを含む組成物を包含す
る。これらの組成物はまた、乳癌を含む、種々の腫瘍または癌の処置のために使
用され得る。本発明はさらに、そのような組成物を投与して遺伝子発現もしくは
過剰発現の阻害を生じるための方法を提供する。この方法および組成物は、好ま
しくは、細胞性オンコジーンの異常な発現に関連する状態を有する被験体を処置
するための適合される。この被験体は、好ましくは、ヒト患者、特に、癌(特に
乳癌)に罹患したヒト患者である。
【0032】 (本発明のポリアミド) 本発明において使用されるポリアミドは、N−メチルイミダゾールおよびN−
メチルピロールカルボキサミドを含む。これらのポリアミドは一般に、三日月型
構造を有し、これは、二本鎖DNAの浅いほうの溝の相互作用および複合体化を
可能にする。NMR研究によって、これらの化合物がDNAと、2:1の比率で
、2つのポリアミドリガンドが反並行で互いに並んだ様式で整列しているモチー
フによって、結合し得ることが確認された(Pelton、J.、ら、Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 86、5723−5727(1986
);Mrksich、M.、ら、Proc.Natl.Acad.Sci.US
A、89、7586−7590(1992);Wade、W.S.、ら,.J.
Am.Chem.Soc.114、8783(1992))。
【0033】 2つのポリアミドの結合親和性を上昇させる1つの手段は、γアミノ酪酸のよ
うなターン単位を伴ってそれらと共有結合させることである(Mrksich、
M.、ら、J.Am.Chem.Soc.116、7983(1994)を参照
のこと)。このようなポリアミドは、「ヘアピンポリアミド」と呼ばれる。なぜ
なら、それらは、ヘアピン様のコンフォメーションを、そのDNA複合体におい
て採るからである。そのポリアミド中のそのイミダゾールおよびピロールカルボ
キサミドの配列は、上記の核酸対を認識するカルボキサミド対のスキームに従っ
て、そのリガンドのDNA配列特異性を決定する。いくつかの場合において、1
またはいくつかのピロールカルボキサミド単位を、DNAの曲率に対するそのポ
リアミドの曲率を調整するために、β−アラニン部分で置き換えることが有用で
ある。近年、N−メチルイミダゾールおよびN−メチルピロールカルボキサミド
を含むポリアミドが真核生物細胞における遺伝子発現を阻害し得ることが示され
た(Gottesfeld、J.M.、ら Nature 387、203−2
05(1997))。
【0034】 新規芳香族アミノ酸である、3−ヒドロキシ−N−メチルピロール(Hp)(
対の対向するPy)を含むポリアミドが、DNA配列において、A・Tヌクレオ
チド対を、T・Aヌクレオチド対から識別する能力を有することが見出された。
これらの対合規則は、直接のNMR構造研究(Geierstanger、ら(
1994)Design of a G・C−specific DNA mi
nor groove−binding peptide.Science 2
66、646−650)およびX線結晶学(Kielkopf、ら(1998)
Structural basis for GC recognition
in the DNA minor groove.Nature Struc
t.Biol.5、104−109;Kielkopf、ら(1998)A s
tructural basis for recognition of A
.T and T.A base pairs in the minor g
roove of B−DNA.Science 282、111−115)に
よって支持される。このPy−Imポリアミドは、天然の真核生物DNA結合転
写因子に相当する親和性および特異性を有する。例えば、8環ヘアピンポリアミ
ド(これは、6塩基対配列を標的化する)は、3×1010-1の見かけ上の解
離定数で結合する(Trauger、ら (1996)Subnanomola
r sequence−specific recognition in t
he minor groove of DNA by designed l
igands.Nature 382、559−561)。さらに、単一のアミ
ノ酸分配列において異なる2つの8環ピロール−イミダゾールポリアミドは、単
一の塩基対分配列において異なるそれぞれの6塩基対標的に特異的に結合する。
【0035】 Hp/Py対合において、ヒドロキシル基でのピロール上の単一の水素原子の
置換は、一桁の程度分、ポリアミドの親和性および特異性に影響を与える。単一
の窒素原子のC−Hでの置換は、2桁の程度分特異性および親和性を調節し得る
。PyおよびImとともにHpを芳香族アミノ酸残基の組合せの4つの対合(I
m/Py、Py/Im、Hp/PyおよびPy/Hp)において使用することに
よって、ポリアミドは、二本鎖DNAの浅いほうの溝における4つすべてのワト
ソンクリック塩基対合を選択的に識別し得る。White、ら、Nature
391、468−471(1998)。
【0036】 本発明は、遺伝子発現または過剰発現を減少させるための方法および組成物に
おけるDNAの浅いほうの溝に結合させるための改善されたポリアミドの使用を
包含する。DNAの浅いほうの溝における結合のためのポリアミドの調製および
使用は、当該分野において記載されている。本発明には以下が包含される:3−
ヒドロキシ−N−メチルピロールを利用してDNA結合ポリアミドのためのカル
ボキサミド結合対を提供する既存技術の改善。この改善は、Hp/Pyカルボキ
サミドの結合対をそのポリアミドへ含有させて、DNAの浅いほうの溝における
T・A塩基対に結合させること、またはPy/Hpカルボキサミド結合対をその
ポリアミドへと含有させて、DNAの浅いほうの溝におけるA・T塩基対に結合
させることに関する。本発明において使用されるこのポリアミドは、少なくとも
4つのカルボキサミド結合対を有する。これら結合対は、A・T、T・A、C・
GおよびG・Cの塩基対を、浅いほうの溝中で識別する。このポリアミドはまた
、γ−アミノ酪酸または別のターン単位を有して、その各々の側における多数の
カルボキサミド対合の各々を有してヘアピンループを形成させ得る。
【0037】 本発明はまた、Py残基が置換されたβ−アラニンを含むポリアミドを包含す
る。これは、カルボキサミド結合対において通常使用されて、特定のヌクレオチ
ド対を適合させる。このβ−アラニンは、本発明の式においてβと称される。β
−アラニンは、カルボキサミド結合対のメンバーとなり、そしてヌクレオチド塩
基対に対して隣接するアミノ酸部分の水素結合を最適化するように作用する。本
発明はさらに、非Hp含有結合ついについてのβ・β結合対の置換を包含する。
従って、Hp/PyおよびPy/Hpの他に、結合対として、Py/Py、Im
/Py、Py/Im、Im/β、β/Im、Py/β、β/Py、およびβ/β
が存在する。
【0038】 一般に、本発明のポリアミドは、遺伝子、好ましくはオンコジーンの転写を阻
害するために適切である。このポリアミドは、少なくとも4つの芳香族カルボキ
サミド残基の相補対からなり、この対は、dsDNA標的のヌクレオチド配列に
対応するように選択される。これらのポリアミドは、少なくとも2つの脂肪族ア
ミノ酸残基を含み、この残基は以下からなる群より選択される:グリシン、β−
アラニン、γ−アミノ酪酸および5−アミノ吉草酸ならびに少なくとも1つの末
端アルキルアミノ残基。同定されたdsDNA標的のヌクレオチド配列に対応す
るように選択された芳香族性カルボキサミド残基の相補対は、以下からなる群よ
り選択される:ヌクレオチド対G/Cに対応するIm/Py、ヌクレオチド対C
/Gに対応するPy/Im、ヌクレオチド対A/Tに対応するPy/Py、ヌク
レオチド対T/Aに対応するPy/Py、ヌクレオチド対T/Aに対応するHp
/Py、およびヌクレオチド対A/Tに対応するPy/Hp、ここで、Imは、
N−メチルイミダゾールであり、Pyは、N−メチルピロールであり、そしてH
pは3−ヒドロキシN−メチルピロールである。上記の原則の適用によって、遺
伝子の発現または過剰発現を減少させるにおいて使用するための特定の標的核酸
配列と結合または相互作用する特定のポリアミドの設計が可能となった。
【0039】 好ましいポリアミドは、少なくとも1つのβ−アラニンを脂肪族アミノ酸残基
として含有する。好ましい実施態様において、末端のアルキルアミノ残基は、N
,N−ジメチルアミノプロピル残基である。少なくとも2つのβ−アラニン残基
を含む適切なポリアミドが整列されて、A/TおよびT/Aの群から選択された
ヌクレオチド対に対応する相補対合残基を形成する。あるいは、対応する対は、
脂肪族アミノ酸と芳香族カルボキサミドとの間で形成され得る(例えば、Im/
β、β/Im、Py/βおよびβ/Py)。好ましいポリアミドにおいて、ヘア
ピン分子が、脂肪族アミノ酸残基(例えば、γ−アミノ酪酸)の含有によって形
成される。さらに、本発明のいくつかのポリアミドにおいて、カルボキサミド対
の少なくとも1つのPyがβ−アラニンによって置換される。
【0040】 適切なポリアミドは、dsDNA標的配列において少なくとも109-1の結
合親和性、および少なくとも2つの選択性を有する。選択性は、単一塩基対ミス
マッチdsDNA配列についての結合親和性に対する同定されたdsDNA標的
配列についての結合親和性の比率として規定される。好ましい実施態様において
、単一の塩基のミスマッチ配列の少なくとも90%に対する選択性は、約10よ
り大きい。
【0041】 本発明の組成物において使用される各ポリアミドは、好ましくは、対がdsD
NA標的の同定されたヌクレオチド配列に対応するように選択される、芳香族カ
ルボキサミド残基の少なくとも4つの相補対を含有する。このポリアミドはまた
、好ましくは、少なくとも2つの脂肪族アミノ酸残基(この残基は、以下からな
る群より選択される:グリシン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、R−2,4−
ジアミノ酪酸および5−アミノ吉草酸)および少なくとも1つの末端アルキルア
ミノ残基を含む。このポリアミドはまた、好ましくは、少なくとも109-1
標的dsDNA配列での結合親和性および少なくとも約2の選択性を有する。こ
の選択性は、単一塩基対ミスマッチdsDNA配列についての親和性に対する同
定されたdsDNA標的配列についての結合親和性の比率として規定される。
【0042】 ポリアミドHer2−1は、DNA配列5’−AGAATG−3’に結合する
ように設計され、これは、HER2/neuプロモーターのTATAボックスに
直ぐ隣接する。DNAse 1フットプリント分析によって、このポリアミドが
約0.2nMの解離定数(Kd)で所望の配列に結合することが確認された。ポ
リアミド70はまた、HER2/neuのTATAボックスに隣接しておよび部
分的に重複して結合する。Her−2/neu TATAエレメントに隣接また
は重複するこれらのDNA配列に標的化されたこれらのポリアミドは、固相方法
によって合成される。
【0043】 配列組成物ImIm−β−PyIm−γ−PyPy−β−PyPy−β−Dp
(ここで、Imはイミダゾールを表し、Pyはピロールを表し、γはγ−アミノ
酪酸を表し、βはβアラニンを表し、そしてDpはジメチルアミノプロピルアミ
ドを表す)のポリアミドHer−2は、Her−2/neu TATAエレメン
トの5’境界で配列5’−AGGAAGT−3’と結合する。一方、配列組成物
ImPy−β−PyIm−γ−PyPy−β−PyPy−β−Dpのポリアミド
Her2−1は、TATAエレメントの3’境界で配列5’−AGAATGA−
3’と結合する(図1を参照のこと)。
【0044】 配列組成物ImIm−β−ImIm−γ−PyPy−β−PyPy−β−Dp
(HIV−1と呼ばれる)のミスマッチポリアミドもまた、これらの研究におい
て使用された。配列組成物ImPyPyPy−γ−PyPyPyPy−β−Dp
のポリアミド70は、TATAボックスと重複する配列5’−AGTATA−3
’と結合するが、一方配列組成物ImPyImPy−γ−PyPyPyPy−β
−Dpのポリアミド86は、ポリアミド70からの単一原子置換を有するミスマ
ッチポリアミドである。
【0045】 図1は、Her−2/neuプロモーター領域の配列およびいくつかの転写因
子の結合部位を示す。ヘアピンポリアミドImPy−β−PyIm−γ−PyP
y−β−PyPy−β−Dp(Her2−1)が、TBP結合部位のすぐ下流に
結合するように合成された(図2−1、左)。ポリアミド70およびHer2−
Aは、TATAエレメントから上流のESX/Ets部位と重複する部位に結合
し(図3を参照のこと)、そしてEts−1のDNA結合ドメインを含む組換え
ポリペプチドのDNA結合活性を阻害することが見出された。さらなるポリアミ
ドは、ESX(これは、TATAエレメントに隣接するEts部位に結合すると
考えられているEtsファミリーの実際のメンバーである)の結合に指向される
(Chang,C.H.ら(1997)ESX:a structually
unique Ets overexpressed early durin
g human breast tumorigenesis.Oncogen
e 14,1617−1622)。
【0046】 HER/neu遺伝子含有プラスミド(Ebbinghausら、「Trip
lex formation inhibits HER−2/neu tra
nscription in vitro.J.Clin.Invest.92
:2433−2439(1993))から単離された32P末端標識制限フラグメ
ントで行った定量的DNaseIフットプリンティング実験(図2A)は、He
r2−1が、その標的配列と、約5×109-1の平衡結合定数で結合すること
を示した。ミスマッチポリアミドImPy−β−PyIm−γ−PyPyPyP
yPy−β−Dp(ポリアミド86)は、同じ配列に約2×108-1の平衡結
合定数で結合した(図2B、右)。フットプリンティング実験は、このポリアミ
ドもまた、匹敵する親和性で、ESX結合部位に対して近位の5’−AGGAA
GT−3’単一塩基対ミスマッチ配列に結合することを示した。
【0047】 TATAボックス領域およびこれらのポリアミドの各々に対する結合モデルは
、図3に示される。この図において、ポリアミドは、それぞれの結合部位におい
て2つのDNA鎖間で模式的に示される。影を付けた円および影を付けていない
円は、イミダゾール(Im)環およびピロール(Py)環をそれぞれ表し;曲線
は、γ−アミノ酪酸(γ)を表し;ひし形はβ−アラニン(β)を表し;そして
Dpは、ジメチルアミノプロピルアミドを表す。これらのポリアミドの各々に対
する見かけの結合親和性は、定量的DNaseIフットプリント滴定によって決
定された。ポリアミドHer2−Aは、その一致部位と108-1より下のKa
で結合するが、一方ポリアミドHer2−1は、5×109-1のKaで結合す
る。その標的部位に対するHer2−1のより高い親和性が与えられる場合、以
下に記載される例の大部分は、この化合物を利用した。ポリアミド70に対する
結合定数は、以前に報告され(Traugerら、Nature 382、55
9−561、1996におけるポリアミド2)、そして3.5×109-1に対
応する。ミスマッチポリアミドは、より減少した親和性で結合する。
【0048】 TATAエレメントに隣接して結合するさらなるポリアミドが合成された(図
7を参照のこと)。これらの化合物は、上記のような、ポリアミドHer2−1
の変異体であり、そして、ポリアミドHer2−1において使用される、中性の
、アキラルなγ−アミノ酪酸リンカーの代わりに、荷電したキラルターン((R
)−2,4−ジアミノ酪酸=D;ImPy−β−PyIm−D−PyPy−β−
PyPy−β−Dp、1a)を有するものを含む。結果として、このポリアミド
は、以下の、ポリアミドHer2−1の2つのさらなる変異体のように二重に荷
電している:リング/β対を有するもの(ImPy−β−PyIm−D−PyP
yPyPyPy−β−Dp、1b)、および、TATAボックスまで延びる、さ
らに2つのピロールアミノ酸単位を有するもの(ImPy−β−PyIm−D−
PyPy−β−PyPy−β−PyPy−β−Dp、1c)である。これらの化
合物の各々は、ナノモル濃度以下の親和性でそれらの標的に結合し(図7に提供
される)、そしてTBP DNA結合活性の有効なインヒビターであり、ポリア
ミド1cは、最も強力なインヒビターである(図8)。これらの知見に基づき、
本発明者らは、これらのポリアミドが、基本的な、TATA依存性転写の強力な
インヒビターであることを予測する。
【0049】 (薬学的および治療的組成物) 本発明のポリアミド、およびその薬学的に受容可能な塩は、薬学的または治療
的な、組成物、処方物または調製物に処方され得る。本発明のポリアミド化合物
の薬学的に受容可能な塩は、当該分野で公知の方法によって、強いかまたは中程
度に強い、非毒性の、有機のまたは無機の酸または塩基とともに適切であるよう
に形成される。本発明に含まれる塩の例は、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩
、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸
塩、酒石酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、および
硝酸塩が含まれる。
【0050】 上記で言及したように、本発明のポリアミド化合物は、遺伝子発現または遺伝
子過剰発現を阻害する能力、多数の疾患または状態(最も著しくは癌およびとり
わけ乳癌)のいずれかの処置において利用される特性を有する。本発明の組成物
はそれ自体で活性であり得るか、またはインビボで活性型に転換される「プロド
ラッグ」として機能し得る。
【0051】 本発明の化合物、およびその薬学的に受容可能な塩は、便利な用量形態(例え
ば、カプセル、浸透したオブラード、錠剤、または注射可能な調製物)に取り込
まれ得る。固体または液体の薬学的に受容可能なキャリアが利用され得る。時限
放出のために設計された薬学的組成物もまた、処方される。
【0052】 好ましくは、本発明の化合物は、全身的に、例えば、注射によって投与される
。使用される場合、注射は任意の公知の経路、好ましくは静脈内、皮下、筋肉内
、頭蓋内、または腹腔内によってであり得る。注射剤は、溶液または懸濁液のい
ずれかの従来的な形態で、注射の前の、液体中の溶液または懸濁液のために適切
な固体形態で、または乳化物として、調製され得る。
【0053】 固体キャリアには、デンプン、乳糖、硫酸カルシウム二水和物、白土、ショ糖
、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムお
よびステアリン酸が含まれる。液体キャリアには、シロップ、ピーナッツ油、オ
リーブ油、生理食塩水、水、デキストロース、グリセロールなどが含まれる。同
様に、キャリアまたは希釈剤には、単独のまたはワックスを伴う、任意の長期放
出物質(例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレート
)が含まれ得る。液体キャリアが使用される場合、その調製物はシロップ、エリ
キシル、懸濁液、ソフトゼラチンカプセル、液体を含むカプセル、滅菌した注射
可能な液体(例えば、溶液)、例えば、アンプル、または水性もしくは非水性液
体懸濁液の形態であり得る。このような薬学的組成物の要約は、例えば、Rem
ington’s Pharmaceutical Sciences,Mac
k Publishing Company,Easton Pennsylv
ania(Gennaro 第18版、1990)に見出され得る。
【0054】 薬学的調製物は、薬化学の従来的な技術に従って作製され、その技術は、混合
、顆粒化、および圧縮のような工程を含むか、または錠剤形態について必要であ
る場合、成分の混合、充填、および溶解を含み、適切なように、経口もしくは非
経口投与(局所的投与、経皮投与、膣内投与、鼻内投与、気管支内投与、頭蓋内
投与、眼内投与、耳内投与、および直腸投与を含む)のために所望の産物を与え
る。薬学的組成物はまた、少量の非毒性の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化
剤、pH緩衝剤など)を含み得る。
【0055】 好ましい投与の経路は全身であるが、薬学的組成物は、局所的または経皮的(
例えば、軟膏、クリーム、またはゲルとして);経口的に;直腸的に(例えば、
坐剤として)、非経口的に(注射によるかまたは注入によって連続的に);膣内
に;鼻内に;気管支内に;頭蓋内に;耳内に;または眼内に投与され得る。
【0056】 局所的適用のために、本発明の化合物および組成物は、局所適用ビヒクル(例
えば、軟膏(salveまたはointment))中に取り込まれ得る。活性
成分のためのキャリアは、噴霧可能であるか、または噴霧可能でない形態のいず
れかであり得る。噴霧可能でない形態は、局所適用に固有のキャリアを含み、そ
して動的な粘性を有する(好ましくは、水の粘性よりも大きい)、半固体形態ま
たは固体形態であり得る。適切な処方物には、溶液、懸濁液、乳化物、クリーム
、軟膏(ointment)、散剤、塗布剤、軟膏(salve)などが含まれ
るがこれらに限定されない。所望される場合、これらは補助剤(例えば、保存剤
、安定剤、湿潤剤、緩衝剤、または浸透圧に影響を与えるための塩など)を用い
て滅菌または混合され得る。噴霧可能でない局所調製物のための好ましいビヒク
ルは、軟膏基剤(例えば、ポリエチレングリコール−1000(PEG−100
0);HEBクリームのような従来的なクリーム;ゲル;およびワセリンなど)
を含む。
【0057】 噴霧可能なエアロゾル調製物もまた、局所適用のために適切であり、ここで本
発明の化合物は、好ましくは固体または液体の不活性なキャリア物質と組み合わ
せて、圧搾ボトルにパッケージされるか、または加圧した揮発性物質(通常、気
体の噴霧剤)との混合物中でパッケージされる。エアロゾル調製物は、本発明の
化合物に加えて、溶媒、緩衝剤、界面活性剤、芳香剤、および/または抗酸化剤
を含み得る。
【0058】 とりわけヒトについての好ましい局所適用のために、化合物の有効量を標的領
域(例えば、皮膚表面、粘膜、眼など)に投与することが好ましい。この量は、
一般的に、1適用あたり約0.001mg〜約1gの範囲であり、これは、処置
される面積、症状または疾患の重篤度、および使用される局所ビヒクルの性質に
依存する。
【0059】 本発明の組成物は、疾患または状態を処置するために使用される1つ以上のさ
らなる化合物と組み合わせて投与され得る。癌の処置のために、ポリアミドおよ
び誘導体が、抗腫瘍剤(例えば、有糸分裂インヒビター(例えば、ビンブラスチ
ン);アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド);葉酸インヒビター(例え
ば、メトトレキサート、プリトレキシム(pritrexim)、またはトリメ
トレキサート);代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシルおよびシトシンア
ラビノシド);インターカレーティング抗生物質(例えば、アドリアマイシンお
よびブレオマイシン);酵素または酵素インヒビター(例えば、アスパラギナー
ゼ);トポイソメラーゼインヒビター(例えば、エトポシド);または生体応答
調整物質(例えば、インターフェロン))と組み合わせて与えられる。実際、本
明細書中で開示されるポリアミドアナログおよび誘導体と組み合わせる任意の公
知の癌治療剤を含む薬学的組成物は、本発明の範囲内である。
【0060】 本発明の化合物の代表的な単回用量は、体重1kgあたり約1ngと約10g
との間である。この用量は、好ましくは、体重1kgあたり約0.01mgと約
1gとの間であり、そして最も好ましくは、体重1kgあたり約0.1mgと約
100mgとの間である。局所適用のために、化合物の約0.01〜20%濃度
、好ましくは1〜5%濃度の範囲の投薬量が示唆される。経口投与のために、約
1〜500mgの範囲の1日の全体の投薬量が好ましい。しかし、個々の処置レ
ジメに関する変数の数が大きいので、前述の範囲は示唆的なものであり、そして
これらの推奨される値からの考慮すべき可動域は予想され、そして当業者によっ
て慣用的になされ得る。
【0061】 疾患または状態を処置するための化合物の有効量または用量は、特定の疾患ま
たは状態のために認識されるインビトロ系またはインビボ動物モデルを用いて決
定され得る。癌の場合において、多くの当該分野で認識されるモデルが公知であ
り、そしてヒト腫瘍の広範なスペクトルを表す。本発明の化合物および組成物は
、ヒトまたは非ヒト動物起源の多数の腫瘍細胞株のいずれかを用いる標準的なア
ッセイを使用して培養中の腫瘍細胞増殖の阻害について試験され得る。動物モデ
ルを含むこれらのアプローチの多くは、Geran,R.I.ら、「Proto
cols for Screening Chemical Agents a
nd Natural Products Against Animal T
umors and Other Biological Systems(第
3版)」Canc.Chemother.Reports、第3部、3:1−1
12に詳細に記載される。
【0062】 (投与方法) 上記に示したように、本発明の処置方法は、ポリアミド含有組成物の投与に関
する。本発明のポリアミド含有調製物は、全身的にまたは局所的に投与され得、
そして単独でまたは混合物の成分として使用され得る。投与の経路は、局所的、
静脈内、経口、または移植物の使用によってであり得る。例えば、ポリアミドは
、以下を含む手段によって投与され得るがこれらに限定されない:局所的調製物
、静脈内注射または注入、経口摂取、または皮内注射もしくは移植物の形態にお
ける局所的投与。さらなる投与の経路は、従来的なまたは便利な形態におけるポ
リアミドの皮下注射、筋肉内注射、または腹腔内である。必要な場合、リポソー
ム性処方物または親油性処方物もまた使用され得る。局所的投与のために、ポリ
アミドは、標準的な局所処方物および局所組成物(ローション、懸濁液、または
ペーストを含む)中にあり得る。適切な処方物の経口投与はまた、ポリアミドが
この経路を介して標的細胞または組織に容易に投与され得る、これらの例におい
て適切であり得る。
【0063】 ポリアミドの用量は、例えば、選択されるポリアミド、それが運ばれる物理的
送達系、個々の被験体、および実施者の判断を含むがこれらに限定されない要因
に依存して、当業者によって最適化され得る。
【0064】 例えば、標的特異的リガンド(例えば、抗体またはその免疫学的に活性なフラ
グメント)と結合する場合のような、投与の形態は、当業者によって考慮される
1つの要因である。
【0065】 一般的に、用量は調製物の特異性に依存し、その結果、ポリアミドのより少な
いかまたはより多い用量が、必要とされるように投与され得る。標的組織および
細胞に高度に特異的な組成物について、体重1kgあたり0.005〜1mgの
範囲の用量が示唆される。標的に対して、より特異性が低い組成物について、1
kgあたり1〜10mgまでのより多い用量が所望され得る。前述の範囲は、個
々の処置レジメに関する変数の数が多く、これらの値の間の考慮すべき偏差が予
測され得るという点で、単に示唆的である。当業者は、前述の濃度を自由に変化
させ、その結果、取り込みおよび刺激/回復パラメーターは、上記に開示される
治療目的と一致する。
【0066】 ここで本発明を一般的に記載したので、本発明は、以下の実施例を参照してよ
り容易に理解される。この実施例は、例示の目的のために提供され、明記されな
い限り、本発明を制限することを意図しない。
【0067】 (実施例1) (電気泳動移動度シフトアッセイ) 電気泳動移動度シフトアッセイ(Electrophoreic Mobil
ity Shift Assays(EMSA))を行い、HER2/neuプ
ロモーターのTATAボックスに隣接する配列に特異的なポリアミドの種々の濃
度の添加が、TATA結合タンパク質(TBP)のDNA結合活性を妨害し得る
か否かを決定した。HER2/neu TATAボックスおよびその隣接する配
列に対応するオリゴヌクレオチドを合成した。第1のオリゴヌクレオチド、HE
RTATA1は、以下の配列を有する:
【0068】
【化1】 (ここでTATAボックスは太字である)。相補的オリゴヌクレオチドである、
HERTATA2は、以下の配列を有する:5’−CTTCACAACTTCA
TTCTTATACTTCCTCAAGCAGC−3’。これらの相補的な35
塩基オリゴヌクレオチドを、γ−32P−ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナ
ーゼで5’末端標識し、次いでアニーリングさせて、二本鎖の35塩基対オリゴ
ヌクレオチドを得た。次いで、このオリゴヌクレオチドを電気泳動移動度シフト
アッセイにおいて用いた。このアッセイは、44mM Tris−ホウ酸塩、p
H8.3、1mM EDTAとともに、4mM MgCl2および0.02%(
v/v)NP−40非イオン性界面活性剤を含有する、5%の非変性ポリアクリ
ルアミドゲル(29:1 アクリルアミド対ビスアクリルアミド)を使用する。
0.1mMの濃度の標識したオリゴを、10%グリセロール(v/v)、20m
M HEPES−OH、pH7.9、25mM KCl、0.025% NP−
40(v/v)、100μg/mlのウシ血清アルブミン、0.5mM ジチオ
スレイトール、0.8mM スペルミジン、0.1mM EDTA、2mM M
gCl2を含有する、20μlの反応容積でTBP(Promega)の1nM
の最終濃度と反応させた。
【0069】 種々の濃度のこの異なるポリアミド(0.1nM〜30nMの範囲にわたる)
をこの結合反応物に添加した。反応物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供
し、そして乾燥したゲルを、引き続き画像化し、そしてImageQuantソ
フトウェアを備えるMolecular Dynamics phosphor
imagerを用いて数量化した。結果を図4に示す。HER2/neu−特異
的ポリアミド(ポリアミドHER2−1(図4A)、70(図4B、四角)、お
よびRPR70(ImPyPyPy−γ−PyPyPyPy−β−RPRの構成
である)(図4B、x’s))は、HER2/neu TATAボックスへのT
BP結合をインビトロで有意に減少する。コントロールポリアミド86(図4B
、丸)(HER2/neu TATAボックスに特異的でない)は、HER2/
neu TATAボックスへのTBPの結合にほとんど効果がない。
【0070】 「RPR」は、ポリアミド上の荷電したアルギニン−プロリン−アルギニンテ
イルの存在を示す。
【0071】 (実施例II) (無細胞系でのインビトロ転写の阻害) 転写の鋳型を生成するために、HER2/neuプロモーター(Ebbing
hausら(1993))を含有する、プラスミドpGEM/HNPを、制限エ
ンドヌクレアーゼDraIを用いて線状化した。この鋳型は、HER2/neu
プロモーターの270塩基対、および下流配列の400塩基対を含んだ。供給業
者(Promega)の推奨のように、100ngの鋳型DNA、および2μl
のHeLa細胞核抽出物を含有する20μlの反応液中で、25μlの反応容積
中で、転写反応を実行した。これらの反応物を、30℃で1時間、0.6mMの
未標識のヌクレオシド三リン酸および20μMのGTPとともに10μCi α
−32P−GTPの存在下で、インキュベートした。標識した転写物を、供給業
者(Teltest)により推奨されるようにRNAzolを用いて精製し、そ
して8.3M尿素および88mM Tris−ホウ酸塩、pH8.3、2mM
EDTAを含有する8%ポリアクリルアミドゲル上で変性ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動に供した。
【0072】 乾燥したゲルを画像化し、そしてphosphorimager(Molec
ular Dynamics)を用いて定量した。このHER2/neuプロモ
ーター鋳型からのインビトロ転写は、漸増する量のポリアミドHER2−1の添
加により阻害された(図5)。10nM HER2−1の添加は、ポリアミドの
添加のない反応に比べて、効果を有さなかったが、100nMの添加は、転写を
1/2に抑制した。転写の鋳型として無関係のサイトメガロウイルス(CMV)
プロモーターを用いるインビトロ転写をまた、コントロールとして行った。この
鋳型に対する10nMまたは100nMのポリアミド HER2−1の添加は、
転写のレベルを有意に低下させなかった。
【0073】 (実施例III) (細胞培養におけるHER2/neu発現の阻害) 多数の乳癌細胞株をAmerican Type Culture Coll
ectionから入手し、そして細胞培養中で維持した。これらの細胞株として
は、HER2/neu遺伝子が増幅されそして非常に過剰発現されている乳癌細
胞(SK−BR−3およびZR 75−1)、ならびにHER2/neu遺伝子
の正常なコピー数を有し、そして正常な低いレベルでHER2/neuを発現す
る乳癌細胞(Hs578T)が挙げられる。37℃での5%CO2/空気混合気
中でのこれらの細胞の増殖期に、ウシ胎仔血清を10%(v/v)補充した適切
な細胞培養培地に、種々の濃度のポリアミドを直接添加した。最初の実験のため
に、ポリアミドHER2−1を種々の濃度で培地に添加した。コントロールのポ
リアミド(HIV−1)を、異なるフラスコの細胞に種々の濃度で添加した。ポ
リアミドHIV−1は、HER2−1に類似の構造であるが、HER2/neu
TATAボックスまたはその隣接配列を特には認識しない。
【0074】 引き続く実験では、細胞株SK−BR−3を、6日間ポリアミドで処理した。
これらの実験では、別々の実験でポリアミドHER2−1およびポリアミド70
を、最終濃度0.5μMになるよう細胞培養培地に添加した。3日のインキュベ
ーション後、新鮮培地および新鮮なポリアミドを細胞に添加した。これらの細胞
をさらに3日間インキュベートし、次いでRNA抽出のために収集した。
【0075】 この細胞が、75cm2培養フラスコ中で一旦コンフルエンスに増殖すると、
2mlの0.05%トリプシン−0.53mM EDTA(Gibco BRL
)を用いて付着した細胞を処理して、培養フラスコからこの細胞を剥離すること
により、ポリアミド処理した乳癌細胞を収集した。これらの細胞を、5000r
pm(IEC)の臨床的遠心分離により収集し、そしてペレット化した。この細
胞を冷却した1×リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)でリンスし、そして臨床的
遠心分離でペレット化した。全RNAを、RNAzol(Teltest)を用
いて細胞から抽出した。詰めた細胞の容積、約100μlに対して、1mlのR
NAzolおよび100μlのクロロホルムを添加した。この混合物を10秒間
ボルテックスし、そして10分間氷上に置いた。次いでこの混合物を、遠心分離
機中で4℃、14,000gで15分間回転させた。上層を取り出し、そして全
RNAを、1容積のイソプロパノールで沈殿させた。このRNAペレットを70
%エタノールで洗浄し、真空下で乾燥し、そして1μlのRNasin(40単
位)を含有する、50〜100μlの無RNAse水(DEPC処理)に再懸濁
した。
【0076】 ポリアミド添加の効果を、HER2/neu mRNAの相対的レベルについ
てのアッセイとして逆転写酵素(RT)−ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用
いて、引き続き分析した。これらのHER2/neu mRNAレベルは、HE
R2/neuプロモーターからの、転写の量に関連するはずである(これは、ポ
リアミドHER2−1がインビボで転写に何らかの効果を有するか否かを決定し
得る)。HER2/neuオンコジーンに特異的なPCRプライマーを用いた場
合、PCR産物は、HER2/neu mRNAの相対的レベルを反映する、H
ER2/neu cDNAに相当する。このPCRプライマーは、以下であった
:(Her2A)5’−GCTGGCCCGATGTATTTGATGGT−3
’および(Her2B)5’−GTTCTCTGCCGTAGGTGTCCCT
TT−3’、そしてそれぞれの50ngを以下に記載の様にPCR反応に用いた
【0077】 種々の細胞由来のHER2/neu mRNAの相対的な量は、逆転写酵素(
RT)−ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて決定され得る。全RNAを上
記のようにポリアミド処理乳癌細胞から抽出した後、それぞれの異なる細胞型お
よびポリアミド濃度について、分光光度法(260nMでの光学密度を用いて)
により、全RNAの濃度を決定する。等量の全RNA(10ng)を、各RT−
PCRについて用いる。Reverse Transcription Sys
temキット(Promega)を用いて、RT−PCRを実行した。オリゴd
Tプライマーを用いて、推奨されるように、酵素リバーストランスクリプターゼ
により、42℃で25分間、mRNA鋳型からcDNAを合成する。次いで、こ
れらのcDNAをPCRの鋳型として用いる。このキットに提供される緩衝液お
よびTaqポリメラーゼを用いて、PCRを以下の26サイクルで実行した:9
4℃45秒間の変性、60℃45秒間のアニーリング、および72℃2分間の伸
長。5μCiの放射活性ヌクレオチドα−32P−dATPをPCR工程に含み、
アクリルアミドゲル上で分析し得かつオートラジオグラフィーで可視化し得る、
放射線標識したPCR産物を生成する。PCR産物の相対的な量は、Phosp
horimager(Molecular Dynamics)を用いて定量し
得る。ポリアミドで処理していない細胞由来のHER2/neu mRNAのレ
ベルが陽性コントロールであり、かつ1.0の値であり、そしてポリアミド処理
サンプルについてのHER2/neu mRNAのレベルは、未処理の細胞の値
に対する値である。
【0078】 これらのRT−PCRアッセイの結果を図6に示す。ポリアミドHER2−1
での1〜2日間の細胞株SK−BR−3およびHs578−Tの処理の結果、H
ER2/neu mRNAの相対的レベルの1/2よりわずかに大きいレベルま
での低下が生じた。コントロールポリアミドHIV−1は、HER2/neu
mRNAの相対的なレベルに対して明白な効果を有さなかった。SK−BR−3
細胞をポリアミドHER2−1または70のいずれかで6日間処理した場合、m
RNAの相対的レベルは、1〜2日間処理した細胞よりも有意に低下した。SK
−BR−3細胞は、それぞれ、ポリアミドHER2−1または70で処理した場
合、HER2/neu mRNAの相対的レベルの1/4および1/3までの低
下を示した。これらの結果は、このポリアミドが、この細胞に進入し、そしてそ
の所定の標的ヌクレオチド配列に結合し得、これによりその遺伝子の発現を妨害
することを示唆する。
【0079】 (実施例IV) (RNアーゼプロテクションアッセイ) 培養中で維持された、ポリアミド処理した乳癌細胞、およびコントロールの未
処理の乳癌細胞におけるHer−2/neu mRNAのレベルをモニターする
ため、特異的リボプローブを用いるRNアーゼプロテクションアッセイ(RPA
)を用いた。Her−2/neu mRNA特異的放射線標識リボプローブを合
成するため、Her−2/neu mRNAコード配列のセグメントをT7 R
NAポリメラーゼプロモーターの制御下に挿入した。このリボプローブのHer
−2/neu mRNAに対する特異性を示すために、そして得られたシグナル
により、乳癌細胞から単離された総RNAにおけるHer−2/neu mRN
Aの相対的レベルの定量的に信頼のおける評価が得られたことを確認するために
コントロール実験を行った。RPA中の試験RNAの量を変化することで、ホス
ホルイメージ(phosphorimage)分析により決定した場合、線形の
応答シグナルを生じた。さらに、一連の市販のDNA鋳型を用いて、非標的遺伝
子上のポリアミド処理の効果をモニターするためのリボプローブを合成した。こ
れらの遺伝子としては、ハウスキーピング遺伝子(リボソームタンパク質L32
、GAPDH)、アポトーシス関連遺伝子(bcl−x,bax)、ストレス誘
導性遺伝子(mcl1、GADD45)、オンコジーン(c−fos)、腫瘍サ
プレッサー遺伝子p53、および細胞周期調節タンパク質遺伝子p21が挙げら
れる。
【0080】 これらのプローブを用いて、コントロール遺伝子についてのmRNAレベルは
、Her−2/neu mRNA発現を阻害するポリアミドの濃度により影響さ
れないことを見出した。この実験に用いたポリアミド(1b;ImPy−β−P
yIm−D−PyPyPyPyPy−β−Dp)を、Her−2/neu TA
TAエレメントにすぐ隣接し、そして重複する配列に結合するように、設計し(
上記図7参照のこと)た。そして、これはDNase Iフットプリント分析に
より決定される場合0.26nMのみかけの解離定数を示す。細胞を72時間種
々の濃度のポリアミドとともにインキュベートし、次いで、細胞総RNAを単離
した。次いで、コントロール細胞および処理細胞からの等量のRNAをリボプロ
ーブプロテクションアッセイに用いた。ポリアミド1bは、Her−2/neu
遺伝子が、正常な乳癌組織に対して50倍のオーダーで過剰発現する乳癌細胞株
SK−BR−3におけるHer−2/neu mRNA合成の効果的なインヒビ
ターであることが見出された。0.3μMのポリアミド1b濃度で、転写の約7
0%の阻害が観察された。ポリアミドの濃度が高いほど、より高いレベルの阻害
を生じることが観察されている(示さず)。
【0081】 コントロール遺伝子mRNA合成の阻害の欠如は、SK−BR−3乳癌細胞の
ポリアミド処理がアポトーシスまたはストレス関連応答を誘導しないことを強く
示す。さらに、ポリアミド処理は、細胞増殖または細胞密度に影響せず、そして
細胞傷害性は観察されていない。コントロール実験において、ポリアミド処理の
存在または非存在における肝細胞の画分は、トリパンブルー染色により検出され
た。培養培地中における、3μMの最終濃度までのポリアミド1bでの乳癌細胞
株SK−BR−3の処理は、細胞生存度に影響がないことが見出された。
【0082】 (実施例V) (ポリアミド安定性) 放射線標識したピロール−イミダゾールポリアミドの取り込みおよび安定性を
、培養中で維持した乳癌細胞においてモニターした。この実験で用いたポリアミ
ドは、トリチアトール(tritiatol)基がDpの代わりに末端で組み込
まれたことを除けば、転写実験で用いたポリアミドと類似の構造である、八環系
化合物(ImPyPyPy−D−PyPyPyPy−β−CT2OH、ここでC
2OHはトリチアトールである)であった。これらの実験を、2つの異なる乳
癌細胞株(MCF−7およびZr−75−1)で実行し、そして質的に類似の結
果を得た。細胞の核および細胞質部分のポリペプチド濃度を、固定した72時間
のトリチウム化した種々の濃度のポリアミドとのインキュベート後に評価した。
これらのデータは、上記のRPA実験について用いたのと同じプロトコール下で
得られた。この結果は、濃度依存性様式で、細胞核におけるポリアミドの高濃度
を示す。別の分析で、ZR−75−1細胞およびMCF−7細胞へのポリアミド
移入の時間経過を行った。この実験では、細胞質画分をさらに細胞質ゾルおよび
膜に分画し、そして核の画分を、可溶性の核質および不溶性のクロマチンに分画
した。これはポリアミドがクロマチンにおいて非常に富んでいるという予期した
結果を得た。
【0083】 この化合物なしでの、培養培地中でのインキュベーション後、細胞中のトリチ
ウム化したポリアミドの安定性もまた、モニターした。この実験では、0.1μ
Mの放射線標識したポリアミドを含有する培養培地中で、細胞を最初に24時間
インキュベートした。このインキュベーション後、培養培地を取りだし、そして
ポリアミドを欠く新鮮培地を添加した。血清濃度を0.1%まで低下し、ポリア
ミド非存在下での引き続くインキュベーションの間の細胞増殖を阻害した。細胞
を6日間まで24時間間隔で回収した。本発明者らは、細胞質のポリアミドの量
が24時間後半分低下し、一方で、クロマチン結合ポリアミドがより安定である
らしいことを見出す。類似の結果がZR−75−1細胞で得られた。さらなる実
験により、細胞処理の間ポリアミドの化学組成においてなんらかの変化(例えば
、分解、または他の分子への放射性同位体の組み込み)が存在するか否かを決定
する。まとめると、これらの結果は、ピロール−イミダゾールポリアミドが、細
胞透過性であり、そして核に濃縮されており、そしてクロマチンに結合している
ことを示唆する。クロマチンで見出されるポリアミドの高いレベルにより、この
化合物は、短いポリアミド標的配列(ゲノム中に数百万回出現する)と仮定して
期待されるように、ヒトゲノムにおける複数の部位に結合することが示される。
細胞傷害性の非存在は、複数の部位がポリアミドにより占有されるが、全ゲノム
中にわたる転写への有害な非特異的効果は存在しないことを示唆する。それにも
かかわらず、本出願に記載されたように、より複雑なDNA配列を標的するよう
に設計されたプロモーター特異的であるはずのポリアミドを用いて、将来の研究
を実施する。
【0084】 (実施例VI) (細胞運動性アッセイ) Vito Quaranta博士(Department of Cell
Biology、The Scripps Research Institu
te)の研究室と協働して、MCF−7乳癌細胞の運動性に対するポリアミド処
理の効果をインビトロでモニターした。このアッセイは、タンパク質被覆膜への
細胞の付着、およびその膜を通っての細胞の引き続く移動をモニターする。この
膜を通って細胞が移動する能力を、細胞の転移能力の指標ととらえる。コントロ
ール実験において、ポリアミド処理は、IV型コラーゲン、ラミニン−5または
フィブロネクチンのいずれかで被覆した膜への細胞の付着の能力に影響しないこ
とが検出された。MCF−7細胞を、別の実験でポリアミドHer2−1または
70で処理した場合、定常状態Her−2/neu mRNAにおいて約50%
の低下が培養3日後に観察された。この阻害値は、これらのポリアミドでの他の
乳癌細胞株の3日間の処理についての本発明者らの結果と一致している。すでに
述べたように、コントロールのミスマッチポリアミドは、Her−2/neu
mRNAレベルに対して影響を有さなかった。膜を横切るこれらの細胞の移動は
また、ポリアミドHer2−1またはHer2−Aでの処理(培養培地中で0.
5μM)により50%阻害されたが、ポリアミド86は、類似の濃度で細胞移動
に影響しなかった。これらの知見は、IV型コラーゲン、ラミニン−5およびフ
ィブロネクチンで被覆した膜で得られた。これらの予備的実験は、Her−2/
neu mRNA(従って、タンパク質)のダウンレギュレーションが、MCF
−7の運動性を減少し得ることを示唆する;しかし、運動性の消失とHer−2
/neuタンパク質レベルとの間の直接の関係は、将来の実験において得なけれ
ばならない。
【0085】 (引用文献)
【0086】
【表1】 本明細書において引用されるすべての引用文献は、以前に詳細に援用されたか
否かにかかわらず、その全体が参考として本明細書において援用される。
【0087】 いまや本発明を完全に記載したが、本発明が、本発明の精神および範囲から逸
脱することなく、そして過度の実験なく、広範な等価のパラメーター、濃度およ
び条件内で実行され得ることは、当業者には明らかである。
【0088】 本発明は、その特定の実施態様と連関して記載されてきたが、さらなる改変が
なされ得ることが理解される。本出願は、本発明の任意の変化、用途または適応
を含むことを意図する。これは、一般に、本発明の原理に従い、そして本発明が
属する当該分野で公知かまたは慣用的実施内であるような本開示からの逸脱およ
び上記の添付の特許請求の範囲のように記載された後の本明細書上記における必
須の特徴に適用され得るような本開示からの逸脱を含む。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、Her2/neuプロモーターを示す。これは、Aにおいてヌクレオ
チド配列(これは、Ets,Ap−2およびTBP(「TATA」)転写因子な
らびに「CCAATボックス」を含む)、ならびにBにおいて、模式図を示す(
スケーリングはしていない)。
【図2】 図2Aは、ポリアミドHER2−1(左)のDNaseIフットプリント力価
決定およびミスマッチポリアミドImPy−β−PyIm−γ−PyPyPyP
yPy−β−Dp(右)の結果の代表図であり、そして、図2Bは、そのポリア
ミドの模式的構造および会合状態であり、ここで、そのポリアミドは、イミダゾ
ール環については黒丸、ピロール環については白丸、γ−アミノ酪酸について曲
線、β−アラニンについてひし形、そしてジメチルアミノプロピルアミドについ
て正電荷を有する半丸で示す。
【図3】 図3は、HER2/neuプロモーターの配列ならびにポリアミド構造および
結合部位を比較し;TATA結合タンパク質(TBP)についての結合部位を、
ポリアミドHER2−A、HER2−1、70、およびミスマッチポリアミド8
6の構造とともに示す。
【図4】 図4は、ポリアミドHer2−1(A)および70のTBP結合に対する効果
を示す実験の結果のグラフ図である。
【図5】 図5は、無細胞系におけるインビトロでのHER2/neu転写に対するポリ
アミドHER2−1の効果を示す実験の結果のグラフ図である。
【図6】 図6は、ヒト乳癌細胞株SK−BR−2におけるHER2/neu mRNA
産生に対するポリアミドHER2−1および70のの効果を示す実験の結果のグ
ラフ図である。
【図7】 図7は、ポリアミド1a〜1cについての結合モデルを示す。Her−2/n
eu TATAエレメントおよび隣接配列を含む二本鎖DNA配列が示され、こ
こでは、TATAエレメントがボックスで囲まれている。ポリアミドは、それぞ
れの結合部位において2つのDNA鎖の間で模式的に表されている。黒丸および
白丸は、それぞれImおよびPyの環を表し、菱形はβ−アラニン(β)を表し
、そして曲線は、γ−アミノ酪酸(γ)を表す。荷電キラルターン((R)−2
,4−ジアミノ酪酸)を、プラス印で、末端のジメチルアミノプロピルアミドと
同様に示す。各ポリアミドについての平衡会合定数は、定量的なDNaseIフ
ットプリンティングによって決定され、そして示されている。
【図8】 図8は、Her−2/neu TATAエレメントおよび隣接配列に対応する
35bpのオリゴヌクレオチドに対するTBP結合のポリアミド阻害を示す。E
MSAの結果を、ホスホルイメージ分析により決定し、そしてポリアミドHer
2−1(ポリアミド1として示す)、1a、1b、1cおよびミスマッチポリア
ミド4(ImPy−β−ImPy−(−ImPy−β−ImPy−β−Dp)に
ついてのポリアミド濃度の関数としての、残りの結合複合体の割合としてプロッ
トする。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AU,BA,BB,BG,BR ,CA,CN,CR,CU,CZ,EE,GE,HU, IL,IN,IS,JP,KP,KR,LC,LK,L R,LT,LV,MG,MK,MN,MX,NO,NZ ,PL,RO,SG,SI,SK,TR,TT,UA, US,UZ,VN,ZA (72)発明者 ダーバン, ピーター アメリカ合衆国 カリフォルニア 91108, サン マリノ, セント アルバンズ ロード 1235 (72)発明者 ゴッテスフェルド, ジョエル エム. アメリカ合衆国 カリフォルニア 92037, ラ ホヤ, ノース トーリー パイン ズ ロード 10550 (72)発明者 ロング, ジョン ジェイ. アメリカ合衆国 ニューヨーク 14150, トナワンダ, デクスター ストリート 158 Fターム(参考) 4C086 AA01 AA02 FA03 MA01 MA04 NA14 ZB26

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オンコジーンの発現または過剰発現に関連する状態を有する
    被験体を処置する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能な賦形剤および転
    写を阻害する量の少なくとも1つのポリアミドを含む組成物を投与する工程を包
    含し、該ポリアミドは、以下: dsDNA標的のヌクレオチド配列に対応するように選択される、少なくとも
    4つの芳香族カルボキサミド残基の相補対、 グリシン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸および5−アミノ吉草酸からなる群
    より選択される、少なくとも2つの脂肪族アミノ酸残基、ならびに 少なくとも1つの末端アルキルアミノ残基、 を含む、方法。
  2. 【請求項2】 前記被験体がヒト患者である、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記オンコジーンが、細胞性オンコジーンまたは内因性オン
    コジーンである、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記オンコジーン
    の前記転写の阻害が、ESX、ETSおよびTBPからなる群より選択されるタ
    ンパク質因子のdsDNAへの結合を調節することによる、方法。
  5. 【請求項5】 前記状態が乳癌である、請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記ポリアミドが、少なくとも109-1の標的dsDNA
    配列での結合親和性および少なくとも約2の選択性を有する、請求項1に記載の
    方法。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載の方法であって、前記dsDNA標的のヌク
    レオチド配列に対応するように選択される芳香族カルボキサミド残基の相補対が
    、以下: ヌクレオチド対G/Cに対応するIm/Py、 ヌクレオチド対C/Gに対応するPy/Im、 ヌクレオチド対A/Tに対応するPy/Py、 ヌクレオチド対T/Aに対応するPy/Py、 ヌクレオチド対T/Aに対応するHp/Py、および ヌクレオチド対A/Tに対応するPy/Hp、 からなる群から選択され、 ここで、ImはN−メチルイミダゾールであり、PyはN−メチルピロールで
    あり、そしてHpは3−ヒドロキシN−メチルピロールである、方法。
  8. 【請求項8】 少なくとも1つの脂肪族アミノ酸残基がβ−アラニンである
    、請求項1に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記ポリアミドがヌクレオチド対A/Tまたはヌクレオチド
    対T/Aに対応する残基の相補対を形成するβ−アラニン残基を2つ含有する、
    請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記末端アルキルアミノ残基がN,N−ジメチルアミノプ
    ロピル残基である、請求項1に記載の方法。
  11. 【請求項11】 カルボキサミド対の少なくとも1つのPyがβ−アラニン
    によって置換されている、請求項1に記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記ポリアミドが、ポリアミドHer2−1、ポリアミド
    70、およびポリアミドRPR70からなる群より選択される、請求項1に記載
    の方法。
JP2000569793A 1998-09-11 1999-09-10 合成ポリアミドによるHER2/neuオンコジーン発現の調節 Withdrawn JP2002524501A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US9990698P 1998-09-11 1998-09-11
US60/099,906 1998-09-11
PCT/US1999/020840 WO2000015209A2 (en) 1998-09-11 1999-09-10 REGULATION OF HER2/neu ONCONGENE EXPRESSION BY SYNTHETIC POLYAMIDES

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002524501A true JP2002524501A (ja) 2002-08-06

Family

ID=22277188

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000569793A Withdrawn JP2002524501A (ja) 1998-09-11 1999-09-10 合成ポリアミドによるHER2/neuオンコジーン発現の調節
JP2000569826A Pending JP2002524525A (ja) 1998-09-11 1999-09-10 合成ポリアミドによる発癌遺伝子HER/2neu発現の制御

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000569826A Pending JP2002524525A (ja) 1998-09-11 1999-09-10 合成ポリアミドによる発癌遺伝子HER/2neu発現の制御

Country Status (5)

Country Link
EP (2) EP1112080A4 (ja)
JP (2) JP2002524501A (ja)
AU (2) AU768405B2 (ja)
CA (2) CA2343289A1 (ja)
WO (2) WO2000015209A2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006022063A (ja) * 2004-07-09 2006-01-26 Univ Nihon Lox−1遺伝子発現抑制剤

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1762614A3 (en) * 2000-07-21 2007-05-30 Research Corporation Technologies, Inc. Tumor-specific promoters
US7122626B2 (en) 2001-04-26 2006-10-17 Genesoft Pharmceuticals, Inc. Halogen-substitued thienyl compounds
AU2002312371A1 (en) 2001-06-13 2002-12-23 Roland W. Burli Aryl-benzimidazole compounds having antiinfective activity
EP1470119A4 (en) 2001-06-13 2005-10-19 Genesoft Pharmaceuticals Inc BENZOTHIOPHENE COMPOUNDS WITH ANTI-INFECTIOUS ACTIVITY
WO2002101007A2 (en) 2001-06-13 2002-12-19 Genesoft Pharmaceuticals, Inc Antipathogenic benzamide compounds
US6777425B2 (en) 2001-06-13 2004-08-17 Genesoft Pharmaceuticals, Inc. Isoquinoline compounds having antiinfective activity
DE60326735D1 (de) 2002-08-02 2009-04-30 Genesoft Pharmaceuticals Inc Biaryl-verbindungen mit antiinfektiver wirkung
US7265129B2 (en) 2002-10-25 2007-09-04 Genesoft Pharmaceuticals, Inc. Anti-infective biaryl compounds
JP2006509027A (ja) 2002-12-10 2006-03-16 オーシェント ファーマシューティカルズ コーポレーション (ピロールカルボキサミド)−(ベンズアミド)−(イミダゾールカルボキサミド)モチーフを有する抗菌化合物
JP3792655B2 (ja) 2003-01-20 2006-07-05 日本電気株式会社 新規な癌遺伝子、該癌遺伝子由来の組換えタンパク質、およびそれらの用途
US10307401B2 (en) * 2016-08-29 2019-06-04 California Institute Of Technology Compositions and methods for treatment of prostate cancer
US10723716B2 (en) 2016-12-21 2020-07-28 New York University Alpha-helix mimetics as modulators of Abeta self-assembly

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2280806A1 (en) * 1996-08-01 1998-08-20 California Institute Of Technology Inhibition of gene transcription by polyamide dna-binding ligands

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006022063A (ja) * 2004-07-09 2006-01-26 Univ Nihon Lox−1遺伝子発現抑制剤

Also Published As

Publication number Publication date
EP1162961A2 (en) 2001-12-19
AU768405B2 (en) 2003-12-11
CA2344654A1 (en) 2000-03-23
AU6496599A (en) 2000-04-03
WO2000015242A1 (en) 2000-03-23
JP2002524525A (ja) 2002-08-06
EP1112080A4 (en) 2002-10-24
WO2000015209A2 (en) 2000-03-23
EP1112080A1 (en) 2001-07-04
WO2000015209A3 (en) 2000-05-25
AU6034199A (en) 2000-04-03
CA2343289A1 (en) 2000-03-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2023011614A (ja) 筋萎縮症と筋緊張性ジストロフィーを処置するための組成物および方法
US7553830B2 (en) Compositions for the delivery of negatively charged molecules
JP2002524501A (ja) 合成ポリアミドによるHER2/neuオンコジーン発現の調節
JP2002515057A (ja) ポリアミドdna結合リガンドによる遺伝子発現の阻害
EP0646595A1 (de) Nukleinsäuren-bindende Oligomere mit N-Verzweigung für Therapie und Diagnostik
JP2000506382A (ja) プロテインキナーゼc発現を調節するためのメトキシエトキシオリゴヌクレオチド
WO2000015773A9 (en) Inhibition of oncogene transcription by synthetic polyamides
WO2000015773A2 (en) Inhibition of oncogene transcription by synthetic polyamides
JP2021532784A (ja) アンチセンス送達のための三量体ペプチド
US20220160880A1 (en) Antisense nucleic acid targeting pcsk9
MX2011005482A (es) Inhibidores de acumulacion de la proteina del factor 1 inducible por hipoxia.
JP6705953B2 (ja) ドライバーオンコジーンの遺伝子変異を標的にアルキル化する新規アルキル化剤
MXPA01013114A (es) Conjugados y metodos para la produccion de los mismos, y su uso poara transportar moleculas a traves de membranas biologicas.
WO2023166511A1 (en) Ionizable lipids and compositions comprising same
JP2002539077A (ja) 二本鎖核酸とのヌクレオチド塩基対−特異的相互作用を受ける環状化合物に関する組成物および方法
KR102304280B1 (ko) 아세틸코에이카복실라제2 안티센스 올리고뉴클레오티드
CN114901823A (zh) 诱导外显子50的跳读的反义核酸
CN112041447A (zh) 基质金属蛋白酶-1反义寡核苷酸
WO2021261592A1 (ja) リピート結合剤
EP2336108A1 (en) Hybrid tripyrrole-octaarginine compounds and their use as medicament in the treatment of cancer and microbial illnesses
WO2008066890A2 (en) Polyamides with tail structures
JP2024511954A (ja) ペプチド-オリゴヌクレオチド複合体を用いる筋強直性ジストロフィー1型の治療法
WO2023185946A1 (zh) 一种寡核苷酸缀合物、含有该寡核苷酸缀合物的组合物及制备方法和用途
JP2024506099A (ja) 細胞透過性のペプチド複合体およびその使用方法
CN114599375A (zh) 核酸递送促进剂

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20061205