JP2002524426A - 癌の予防または処置のための方法および組成物 - Google Patents

癌の予防または処置のための方法および組成物

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ジョージ ジェイ. ブルワー,
ソフィア ディー. メラジバー,
ネイサン オクウィグ,
ディミトリ クークーバニス,
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Abstract

(57)【要約】 銅と結合しかつタンパク質と3成分複合体を形成し得る薬剤、ならびに血管の構成成分を有する疾患(例えば、固形腫瘍)の予防および処置におけるこれらの薬剤の使用が提供される。これらの疾患(癌を含む)の併用療法のための組成物および方法、ならびに治療用キットもまた、提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の背景) 本発明は、その全開示が放棄することなく参考として本明細書に援用される同
時係属仮出願番号60/099,103(1998年9月4日出願)および仮出
願番号60/101,759号(1998年9月25日出願)の優先日を主張す
る。政府は食品医薬品局(Food and Drug Administra
tion)からの助成金番号FD−U−000505、および国立衛生研究所(
National Institute of Health)からの助成金番
号RO3−CA77122−01に従い、本発明に権利を有する。
【0002】 (1.発明の分野) 本発明は、一般に、疾患予防および治療の分野に関する。より詳細には、それ
は、タンパク質との3成分(tripartite)複合体を形成する特定の局
面において、銅に結合し得る薬剤、ならびに癌のような血管成分での疾患の予防
および処置におけるこれらの薬剤の使用に関する。これらの疾患の併用療法のた
めの組成物および方法、ならびに治療用キットがまた提供される。
【0003】 (2.関連技術の説明) 固体腫瘍は、最も末梢の細胞層以外に対して十分な栄養を維持するために、持
続的増殖のための血管増殖(新脈管形成)を必要とする(Hayes、1994
:Horakら、1993;Parangiら、1996)。一方で、正常な成
体ヒト組織は、創傷治癒、外傷または外科後の再生、および月経周期の間の子宮
の内部裏打ちの増殖を除き、新しい血管成長をほとんど必要としない。従って、
新脈管形成は、腫瘍と正常組織の間の基本的な違いである。この違いは、細胞複
製および細胞死の速度(多くの細胞減少性の化学療法はこれに依存する)におけ
る違いよりも量的に顕著である。新脈管形成への腫瘍の依存の結果として、悪性
腫瘍のための抗脈管形成治療の概念が発生した(Folkman,1995a;
Folkman,1995b;HanahanおよびFolkman,1996
)。
【0004】 銅は、ウサギの角膜における血管新生の研究により示されたように、新脈管形
成のための要件であり、そして強力な刺激因子でもある(Parkeら、199
8)。ウサギの角膜におけるプロスタグランジンE1(PGE1)誘導性の新脈
管形成の間、銅は新脈管形成が生じる部位で蓄積する(Parkeら、1998
)。逆に銅欠損ウサギでは、PEG1に応答するウサギ角膜における新脈管形成
は、大きく低下する。ウサギの角膜において、新脈管形成のための銅はセルロプ
ラスミン(銅タンパク質)により、および溶解した硫酸銅により供給され得が、
アポセルロプラスミン(銅を有さないセルロプラスミン)は、新脈管形成を支持
しない(Gullino,1986)。さらなる研究はまた、銅が重要な脈管形
成因子であることを示す(Rajuら、1982;Zicheら、1982)。
これらの研究は全て、非結合の銅が脈管形成に必要であるという概念を支持する
【0005】 数年前、いくつかの動物腫瘍モデル研究が抗−銅アプローチを用いて実行され
た(Bremら、1990a;1990b;Yoshidaら、1995)。キ
レート化ペニシラミンおよび低銅含量の食餌を、脳内腫瘍を移植したラットおよ
びウサギにおいて銅のレベルを低下させるために用いた。しかし、低い銅レジメ
ンで処置した動物は腫瘍サイズの低下を示したが、未処置のコントロールを上回
る生存の改善は示さなかった。
【0006】 ペニシラミン治療はまた、悪心および腹部不快感、ならびにより重篤な副作用
(例えば、再生不良性貧血を導き得る白血球減少症および血小板減少症)を含む
重大な副作用と関連することが報告されている。ネフローゼ症候群がまた、特定
の例で報告されている。
【0007】 異常な新脈管形成により特徴付けられる疾患の他の多くの例が存在する。新脈
管形成により媒介されるこのような疾患の1例は、眼の新生血管症である。この
疾患は、網膜または角膜のような眼の構造への新しい血管の侵入により特徴付け
られる。これは、失明の最も通常の原因であり、そしてほぼ20の眼疾患に関与
する。加齢性黄斑変性症において、関連する視覚的問題が網膜色素上皮下の血管
結合組織の増殖を伴うブルーフ膜の欠失を通じる脈絡膜の毛細血管の内殖により
生じる。
【0008】 新脈管形成が関与すると考えられる別の疾患は慢性関節リウマチである。関節
の滑膜裏打層における血管は新脈管形成を経験する。新しい血管ネットワークを
形成することに加えて、内皮細胞は、パンヌス成長および軟骨破壊を導く因子お
よび反応性酸素種を放出する。新脈管形成に関与する因子は、慢性関節リウマチ
の慢性炎症性状態に能動的に寄与しそしてその維持を助ける。
【0009】 新脈管形成により特徴付けられる疾患(例えば、癌、黄斑変性症、および慢性
関節リウマチ)を効果的に予防し、その発現または進行を緩徐にし、それを軽減
または処置する因子について当該分野において必要性が存続する。インビボにお
いて銅のレベルを、他の銅減少因子に関連する副作用および危険性を伴わずに、
低下する首尾よい予防因子または治療因子の開発は、特に有意な進歩を示す。
【0010】 (発明の要旨) 本発明は、本発明の特定の局面において、異常な血管新生または新脈管形成に
より特徴付けられる疾患(例えば、癌)の発現または進行を緩徐にし、または予
防さえし、そして本発明の他の局面においてこのような疾患を軽減または処置す
る、方法および組成物を提供することにより、当該分野に存在するこれらおよび
他の欠陥を克服する。これは、インビボで銅のレベルを軽減する薬剤の供給によ
り、好ましい局面では、薬剤−銅−タンパク質の3成分複合体の形成を通じて、
達成される。本発明の組成物および方法は、他の銅減少剤に関連する副作用およ
び危険性なく、これを達成する。
【0011】 本明細書において用いる場合、用語「異常な血管新生」または「異常な新脈管
形成」は、異常な新血管新生を含むことが理解される。これには新しい血管、よ
り大きい血管、より分岐した血管(腸重積症)ならびに疾患の組織または部位へ
不適切なまたは増加した血液運搬能力を導く任意のおよび全ての機構が挙げられ
る。本発明の薬剤は実際の作用の機構とは関係なく、「異常な血管新生」または
「異常な新脈管形成」を相殺することが理解される。
【0012】 本発明は、動物において癌の発現を遅延させるかまたは癌を予防する方法を提
供する。この方法は、癌を発症する危険性の動物に対して、生物学的に有効な量
の少なくとも第一の薬学的組成物(銅に結合し、そして動物に投与する際の薬剤
−銅−タンパク質複合体を形成する少なくとも第一の予防薬剤を含む)を投与す
る工程を含む。薬剤−銅−タンパク質複合体におけるタンパク質は、食物タンパ
ク質、または血清アルブミンのような血清タンパク質であり得る。本発明はまた
ヒト被験体における癌の発現を遅延するかまたは妨害する方法を提供する。この
方法には、癌を発症する危険性のあるヒト被験体に生物学的に有効な量の少なく
とも第一の薬学的組成物(銅に結合し、そしてヒトへの投与の際の薬剤−銅−タ
ンパク質複合体を形成する少なくとも第一の予防薬剤を含む)を投与する工程を
含む。
【0013】 本発明はまた、動物またはヒト被験体において癌の発現を遅延するかまたは予
防する方法を提供する。この方法は癌を発生する危険性のある動物またはヒトの
被験体を選択する工程、および癌を発生する危険性のある動物またはヒトの被験
体に治療上有効な量の少なくとも第一の薬学的組成物(銅に結合し、そして動物
またはヒト被験体への投与の際の薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する少なく
とも第一の予防薬剤を含む)を投与する工程を含む。この「選択工程」は、例え
ば、癌患者の親戚を同定する工程および/または遺伝子試験により感受性の被験
体を同定する工程により達成され得る。
【0014】 本発明の特定の局面において、少なくとも第一の薬剤は、チオモリブデート化
合物である。本発明における使用のための好ましいチオモリブデート化合物とし
ては、ドデカチオジモリブデート、テトラチオモリブデート、鉄オクタチオモリ
ブデート、トリチオモリブデート、ジチオモリブデートまたはモノチオモリブデ
ートが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の特定の好ましい局面におい
て、少なくとも第一の薬剤はテトラチオモリブデートである。本発明の他の実施
態様において、チオモリブデート化合物は、少なくとも第一の鉄原子および/ま
たは少なくとも第一の酸素原子を含む。チオモリブデート化合物の完全な酸化は
好ましくは回避されるべきであることが理解される。
【0015】 本発明の他の局面において、チオモリブデート化合物は、安定化されたチオモ
リブデート化合物を形成するのに有効な少なくとも第一の薬剤と会合する。例示
的な安定化剤は、炭水化物分子(例えば、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖ま
たは多糖類)である。好ましい実施態様において、チオモリブデート化合物は少
なくとも第一のスクロース分子(例えば、約5〜約200スクロース分子と会合
するチオモリブデート化合物を形成する)に会合する、そして本発明の他の好ま
しい実施態様において、チオモリブデート化合物は約30のスクロース分子と会
合する。
【0016】 従って、本発明は、動物またはヒト被験体において癌の発現を遅延するかまた
は癌を予防するための方法を提供する。この方法は、動物または被験体に生物学
的に有効な量の少なくとも第一の薬学的組成物(ドデカチオモリブデート、テト
ラチオモリブデート、鉄オクタチオジオモリブデート、トリチオモリブデート、
ジチオモリブデート、モノチオモリブデートまたはその炭水化物結合複合体を含
む)を投与する工程を包含する。本発明はまた、動物、またはヒト被験体におい
て癌の発現を遅延するか、またはまたは癌を予防する方法を提供する。この方法
は、動物または被験体に生物学的に有効な量の薬学的組成物(テトラチオモリブ
デートを含む)を投与する工程を包含する。
【0017】 本発明における使用のための薬剤(例えば、テトラチオモリブデート)は、実
質的に体から排除される「3成分の薬剤−銅−タンパク質複合体」を形成するこ
とにより銅レベルを低くする。これらの「三体の薬剤−銅−タンパク質複合体」
における銅結合は、これらの複合体から可逆的に遊離されるのではなく、従って
可逆的に二連の銅キレート化から識別される。
【0018】 本明細書において用いる場合、用語「生物学的に有効な量」は、選択された動
物またはタンパク質への投与の際、銅に結合し、そして薬剤−銅−タンパク質複
合体を形成する薬剤の、異常な血管形成に関連する疾患(好ましくは、癌)の発
現を遅延させるかまたは予防するのに有効な薬剤の量を意味することが理解され
る。従って、本発明の予防的局面において、用語「予防的に有効な量」はまた、
選択した動物または患者への投与の際、疾患および/または癌の発現を遅延する
かまたは予防するのに有効な量の本発明の組成物を記載するために用いられ得る
【0019】 あるいは、本発明の治療局面において、用語「治療的に有効な量」はまた、癌
の発現を遅延するかまたは予防するのに有効な量の本発明の組成物を記載するた
めに用いられ得る。癌処置に関して、量は、選択した動物または患者への投与の
際、腫瘍の増殖を緩徐にするために;腫瘍の増殖を停止するために;腫瘍の少な
くとも一部において壊死を特異的に誘導するために;および/または腫瘍退縮ま
たは寛解を誘導するために有効である。このような効果が、動物または患者の正
常な健常な組織に対して、無視できるほどの、または処置可能な有害な副作用を
示す一方で得られる。従って、「治療的に有効な量」は、患者の疾患およびサイ
ズの程度を含むがこれに限定されない多数の薬剤に依存して、動物間でまたは患
者の間で変化し得る。全てのこのような用量決定問題は、本開示の観点から担当
医により慣用的に取り扱われ得る。
【0020】 本発明はさらに少なくとも第一の腫瘍を有する動物を処置する方法を提供する
。この方法は、この動物に生物学的に有効な量の少なくとも第一の薬学的組成物
(銅に結合し、そして動物への投与の際の薬剤−銅−タンパク質複合体を形成す
る少なくとも第一の薬剤を含む)を投与する工程を含む。さらに、本発明は、少
なくとも第一の腫瘍を有するヒト患者を処置する方法を提供する。この方法は、
この患者に治療上有効な量の少なくとも第一の薬学的組成物(銅に結合し、そし
て患者への投与の際の薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する少なくとも第一の
治療薬剤を含む)を投与する工程を含む。本発明の特定の局面では、少なくとも
第一の薬剤はチオモリブデート化合物(例えば、ドデカチオジモリブデート、テ
トラチオモリブデート、鉄オクタチオジオモリブデート、トリチオモリブデート
、ジチオモリブデート、モノチオモリブデートまたはその炭水化物結合複合体)
である。本発明の特に好ましい実施態様では、少なくとも第一の薬剤はテトラチ
オモリブデートである。従って、本発明は少なくとも第一の腫瘍を有する動物ま
たはヒト患者の処置方法を提供する。この方法は、この患者への治療的に有効な
量のドデカチオジモリブデート、テトラチオモリブデート、鉄オクタチオジオモ
リブデート、トリチオモリブデート、ジチオモリブデート、またはモノチオモリ
ブデートを投与する工程を包含する。本発明はまた、少なくとも第一の腫瘍を有
する動物またはヒト患者を処置する方法を提供する。この方法は、この患者に治
療上有効な量のテトラチオモリブデートを投与する工程を包含する。本発明の種
々の実施態様では、従って好ましいすくなくとも第一の薬剤はテトラチオモリブ
デートである。
【0021】 従って、本発明は、腫瘍を有するかまたは腫瘍を発生する危険性のあるヒト被
験体における予防的介入または治療的介入の方法を提供する。この方法は、この
被験体に予防的にかまたは治療上有効な量の少なくとも第一の薬剤(銅に結合し
、そして薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する)を投与する工程を含む。本発
明はさらに、腫瘍を有するかまたは腫瘍を発生する危険性のヒト被験体における
予防的介入または治療的介入の方法を提供する。この方法は、この被験体に予防
的にかまたは治療上有効な量のドデカチオジモリブデート、テトラチオモリブデ
ート、鉄オクタチオジオモリブデート、トリチオモリブデート、ジチオモリブデ
ート、またはモノチオモリブデートを投与する工程を包含する。本発明はさらに
、腫瘍を有するかまたは腫瘍を発生する危険性のヒト被験体における予防的介入
または治療的介入の方法を提供する。この方法は、この被験体に予防的にかまた
は治療上有効な量のテトラチオモリブデートを投与する工程を包含する。本発明
はまた、腫瘍(好ましくは血管新生腫瘍)を有するヒト患者を処置する方法を提
供する。この方法は、銅−タンパク質複合体が有利である患者を選択する工程、
および患者において薬剤−銅−タンパク質複合体を形成するために有効な、治療
的に有効な量の少なくとも第一の銅−複合体化薬剤を投与する工程を包含する。
【0022】 本出願全体を通じて用いる場合、用語「1つの(a)」および「1つの(an
)」は、上限が本明細書中以降において特定される場合を除いて、それらが、言
及される成分または工程の「少なくとも1つ」、「少なくとも第一」、「1つ以
上」、「複数」を意味するという意味で用いられる。従って、「銅に結合し、そ
して薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する薬剤」は、「銅に結合し、そして薬
剤−銅−タンパク質複合体を形成する少なくとも第一の薬剤」を意味する。実施
可能な限定およびパラメーターの組み合わせは、任意の単一薬剤の量と同様に、
本発明の開示の観点から当業者に公知である。
【0023】 本発明の特定の局面において、生物学的に有効な量の少なくとも第一の薬剤は
、1患者あたり約20mg〜約200mgである。本発明の特定の局面において
、少なくとも第一の薬剤の治療上有効な量は、治療的上有効な時間または間隔に
わたって1患者あたり20mg〜200mgである。一般に、この薬剤は毎日患
者に投与され、従って本発明のこの実施態様において、生物学的にまたは治療上
有効な量の少なくとも第一の薬剤は、1日あたり、1患者あたり、約20mg〜
約200mgである。「約20mg〜約200mg」は、この範囲の全ての値を
含み、従って、約25mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg
、約70mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110
mg、約120mg、約125mg、約130mg、約140mg、約150m
g、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、または約19
5mgの量を含む。「約」は、所定の数を超える値およびそれ未満の値を含むこ
とが理解される。従って「約20mg」は、約18mg、約19mg、約21m
g、および約22mgなどを含むことが理解され、そして「約200mg」は、
約201mg、約202mg、約203mg、および約204mgなどを含むこ
とが理解される。
【0024】 本発明の他の実施態様において、少なくとも第一の薬剤の生物学的にまたは治
療上有効な量は、1日あたり、1患者あたり約20mg〜約190mg、約20
mg〜約180mg、約20mg〜約170mg、約20mg〜約160mg、
約20mg〜約150mg、約20mg〜約140mg、約20mg〜約130
mg、約20mg〜約120mg、約20mg〜約110mg、約20mg〜約
100mg、約20mg〜約90mg、約20mg〜約80mg、約20mg〜
約70mg、約20mg〜約60mg、約20mg〜約50mg、約20mg〜
約40mg、約20mg〜約30mg、約30mg〜約200mg、約40mg
〜約200mg、約50mg〜約200mg、約60mg〜約200mg、約7
0mg〜約200mg、約80mg〜約200mg、約90mg〜約200mg
、約100mg〜約200mg、約110mg〜約200mg、約120mg〜
約200mg、約130mg〜約200mg、約140mg〜約200mg、約
150mg〜約200mg、約160mg〜約200mg、約170mg〜約2
00mg、約180mg〜約200mg、約190mg〜約200mg、約30
mg〜約190mg、約40mg〜約180mg、約50mg〜約170mg、
約60mg〜約160mg、約70mg〜約150mg、約80mg〜約140
mg、約90mg〜約130mg、約100mg〜約120mg、約125mg
〜約200mg、または約150mg〜約180mgである。
【0025】 これらの値はまた、mg/kg(体重)でも表示され得る。上記のように、生
物学的にまたは治療的に有効な量は、動物またはヒト患者の大きさに依存して変
化し得る。しかし、ヒト男性の平均体重を約70kgとすれば、銅に結合し、そ
して薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する薬剤の生物学的にまたは治療上有効
な量は、平均的なヒト男性について、約0.3mg/kg〜約3mg/kgなど
である。
【0026】 本発明の組成物および方法は、血管成分(特に過度に血管新生されたもの)を
有する固体腫瘍のすべての形態を処置するために用いられ得るが、これは本発明
の全ての局面においては必要ではない。固体腫瘍(例えば癌腫および肉腫)は、
本発明の組成物および方法で処置されやすい型の腫瘍の例である。本発明を用い
て予防または処置され得る腫瘍の型の特定の例としては、腎臓腫瘍、肺腫瘍、乳
房腫瘍、結腸腫瘍、前立腺腫瘍、胃の腫瘍、肝臓腫瘍、膵臓腫瘍、食道、脳、お
よび喉頭腫瘍、ならびに血管肉腫および軟骨肉腫が挙げられるがこれらに限定さ
れない。
【0027】 種々のサイズの腫瘍がまた、本発明を用いて処置され得る。従って、小さい腫
瘍(直径約1cm以下である腫瘍により例示される転移腫瘍を含む)、中程度の
腫瘍(直径約1cm〜約5cmである腫瘍により例示される)、および大きい腫
瘍(直径約5cm以上である腫瘍により例示される)が本発明を用いる処置につ
いて考慮される。本発明の文脈において、用語「血管新生した腫瘍」は、最も好
ましくは血管新生した、悪性腫瘍、固体腫瘍または「癌」を意味する。
【0028】 上記のように、本発明の組成物および方法は任意の特定の腫瘍型に完全に特異
的でないので、1つ以上の腫瘍型を有する患者はまた、本発明により処置され得
る。従って、少なくとも第一のおよび少なくとも第二の別の型の腫瘍(限定はし
ないが、例示としては、乳房腫瘍および軟骨肉腫または腎臓腫瘍および肺腫瘍)
、少なくとも三つの別の型の腫瘍、少なくとも四つの別の型の腫瘍、少なくとも
五つまたはそれ以上の別の型の腫瘍を有する患者は、本発明を用いる処置が考慮
される。
【0029】 本発明の特定の好ましい局面では、少なくとも第1の薬剤が、患者に経口投与
される。しかし、以下を含むが、これらに限定されない、他の投与の経路が意図
される:静脈注射、筋肉内注射、および皮下注射、徐放性処方物など。
【0030】 本発明の特定の実施態様では、本方法は、ヒト被験体に治療的に有効な量の少
なくとも1つの第2の抗癌剤を投与する工程をさらに包含する。使用のために意
図されるさらなる抗癌剤の例は、化学療法剤、放射線療法剤、明確な(dist
inct)銅キレート剤、抗脈管形成剤、アポトーシス誘導剤、または亜鉛化合
物である。本発明のさらなる局面では、本方法は、患者を手術または放射線治療
に供する工程をさらに包含する。
【0031】 少なくとも第1の抗癌剤は、「化学療法剤」であり得る。本明細書で用いられ
る場合、用語「化学療法剤」は、悪性腫瘍の処置に用いられる古典的化学療法剤
または薬物のことをいうために用いられる。この用語は、免疫毒素を含む他の化
合物が、それらが抗癌効果を発揮する化学療法剤として技術的に記載され得ると
いう事実にかかわらず、単純に用いられる。しかし、「化学療法的」とは、当該
分野で明確な意味を持つようになり、そしてこの標準的な意味に従って用いられ
ている。従って、本出願の文脈では、「化学療法」とは、一般に、免疫毒素、放
射線療法剤などを(それらの作用的重複にかかわらず)言わない。
【0032】 多くの例示的化学療法剤が、表1に列挙される。当業者は、化学療法剤の用途
および適切な用量を容易に理解するが、この用量は、本発明と組み合わせて用い
た場合にかなり減少される。「化学療法剤」とも呼ばれ得る新しいクラスの薬物
は、アポトーシスを誘導する薬剤である。このような薬物(遺伝子、ベクターお
よびアンチセンス構築物を含む)のいずれか1つ以上はまた、適切なように、本
発明と組み合わせて用いられ得る。
【0033】 本発明の特定の局面では、本方法は、治療的に有効な量の亜鉛化合物を、動物
またはヒト被験体に投与する工程を包含する。好ましい実施態様では、本方法は
、少なくとも第1の薬剤を、動物またはヒト被験体における銅のレベルを、少な
くとも第1の薬剤の投与の前の動物またはヒト被験体における銅のレベルの約2
0%まで低下させるために有効な量および回数で動物またはヒト被験体に投与す
る工程、および動物またはヒト被験体に、治療的に有効な量の亜鉛化合物(例え
ば、酢酸亜鉛)を投与する工程を包含する。なお他の好ましい局面では、治療的
に有効な量の亜鉛化合物は、動物またはヒト被験体に、動物またはヒト被験体に
おける銅のレベルを、少なくとも第1の薬剤の投与の前の動物またはヒト被験体
における銅のレベルの約20%で維持するために有効な期間で投与される。
【0034】 本発明はまた、ヒト被験体において、癌を処置する方法を提供し、この方法は
、テトラチオモリブデートを含む薬学的組成物を、ヒト被験体における銅のレベ
ルを、テトラチオモリブデン酸の投与の前のヒト被験体における銅のレベルの約
20%まで低下させるために有効な量および回数で、癌を有するヒト被験体に投
与する工程、およびヒト被験体に、治療的に有効な量の亜鉛化合物を含む薬学的
組成物を投与する工程を包含する。
【0035】 本発明はまた、動物またはヒト被験体において異常な血管新生によって特徴付
けられる疾患を処置もしくは予防する方法を提供し、この方法は、異常な血管新
生によって特徴付けられる疾患を有するか、または発症する危険な状態である動
物もしくはヒト患者に、銅に結合し、そして薬剤−銅−タンパク質複合体を形成
する、少なくとも第1の薬剤を含む、治療的に有効な量の少なくとも第1の薬学
的組成物を投与する工程、を包含する。本発明の好ましい実施態様では、この疾
患は癌、湿型(wet type)黄斑変性、または慢性関節リウマチである。
【0036】 さらに、動物またはヒト被験体において湿型黄斑変性を処置もしくは予防する
方法が、本発明により提供され、この方法は、湿型黄斑変性を有するか、または
発症する危険を有する動物もしくはヒト患者に、銅に結合し、そして薬剤−銅−
タンパク質複合体を形成する少なくとも第1の薬剤を含む、治療的に有効な量の
少なくとも第1の薬学的組成物を投与する工程、を包含する。本発明の特定の局
面では、少なくとも第1の薬剤は、以下のようなチオモリブデート化合物である
:ドデカチオジモリブデート、テトラチオモリブデート、オクタチオモリブデー
ト鉄、トリチオモリブデート、ジチオモリブデート、モノチオモリブデート、ま
たは前述のいずれかの炭水化物会合複合体。
【0037】 さらに、本発明は、動物またはヒト被験体において慢性関節リウマチを処置も
しくは予防する方法を提供し、この方法は、慢性関節リウマチを有するか、また
は発症する危険性の動物もしくはヒト患者に、銅に結合し、そして薬剤−銅−タ
ンパク質複合体を形成する少なくとも第1の薬剤を含む、治療的に有効な量の少
なくとも第1の薬学的組成物を投与する工程、を包含する。本発明の好ましい局
面では、少なくとも第1の薬剤は、以下のようなチオモリブデート化合物である
:ドデカチオジモリブデート、テトラチオモリブデート、オクタチオモリブデー
ト鉄、トリチオモリブデート、ジチオモリブデート、モノチオモリブデート、ま
たは前述のいずれかの炭水化物会合複合体。
【0038】 本発明はまた、組成物、すなわち薬学的組成物を提供し、この組成物は、銅と
結合し、そして薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する少なくとも第1の薬剤お
よび少なくとも第2の抗癌剤の組み合わせた薬学的に有効な量を含む。本発明の
好ましい局面では、少なくとも第1の薬剤は、以下のようなチオモリブデート化
合物である:ドデカチオジモリブデート、テトラチオモリブデート、オクタチオ
モリブデート鉄、トリチオモリブデート、ジチオモリブデート、モノチオモリブ
デート、または前述のいずれかの炭水化物会合複合体。本発明の好ましい局面で
は、銅に結合し、そして薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する少なくとも第1
の薬剤は、テトラチオモリブデートである。さらに好ましい実施態様では、少な
くとも第2の抗癌剤は、化学療法薬剤、放射線療法薬剤、明確な銅キレート剤、
抗脈管形成剤、アポトーシス誘導剤、または亜鉛化合物である。従って本発明は
また、組み合わせた治療的に有効な量のドデカチオジモリブデート、テトラチオ
モリブデート、オクタチオモリブデン酸鉄、トリチオモリブデート、ジチオモリ
ブデート、またはモノチオモリブデート、および少なくとも第2の抗癌剤を含む
組成物を提供する。本発明は、さらに、組み合わせた薬学的に有効な量のテトラ
チオモリブデートおよび少なくとも第2の抗癌剤を含む組成物を提供する。少な
くとも第1の炭水化物分子と会合する、チオモリブデート化合物を含む薬学的組
成物もまた、提供される。
【0039】 治療用キットもまた提供され、このキットは、少なくとも第1の適切な容器中
に、治療的有効な組み合わせた量の、銅に結合しそして薬剤−銅−タンパク質複
合体を形成する少なくとも第1の薬剤、ならびに第2の抗癌剤を含む。本発明の
特定の局面では、少なくとも第1の薬剤は、以下のようなチオモリブデート化合
物である:ドデカチオジモリブデート、テトラチオモリブデート、オクタチオモ
リブデート鉄、トリチオモリブデート、ジチオモリブデート、またはモノチオモ
リブデート。本発明の治療用キットの好ましい実施態様では、銅に結合しそして
薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する少なくとも第1の薬剤は、テトラチオモ
リブデートである。本発明の他の局面では、このチオモリブデート化合物は、少
なくとも第1の炭水化物分子と会合する。本発明の治療用キットのさらなる局面
では、少なくとも第2の抗癌剤は、化学療法剤、放射線療法剤、明確な銅キレー
ト剤、抗脈管形成剤、アポトーシス誘導剤、または亜鉛化合物である。本発明の
特定の実施態様では、銅に結合しそして薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する
少なくとも第1の薬剤および第2の抗癌剤は、少なくとも第1および少なくとも
第2の別々の容器に含まれる。
【0040】 本発明はまた、治療用キットを提供し、このキットは、少なくとも適切な容器
中に、治療的に有効な組み合わせた量のドデカチオジモリブデート、テトラチオ
モリブデート、オクタチオモリブデン酸鉄、トリチオモリブデート、ジチオモリ
ブデート、モノチオモリブデート、またはそれらの炭水化物会合複合体、および
少なくとも第2の抗癌剤を含む。少なくとも第1の適切な容器中に、治療的に有
効な組み合わせた量のテトラチオモリブデート、および少なくとも第2の抗癌剤
を含む、治療用キットがさらに提供される。
【0041】 本発明は、少なくとも第1の安定化分子(例えば、炭水化物分子、すなわち「
チオモリブデート−炭水化物複合体」)と会合したチオモリブデート化合物を含
む組成物をさらに提供する。本発明の特定の局面では、チオモリブデート化合物
は、少なくとも第1の鉄残基および/または少なくとも第1の酸素残基を含む。
他の局面では、炭水化物分子(すなわち、糖単位)対チオモリブデート化合物の
比率は、約200:1〜5:1の間である。この範囲内の全ての比率には、以下
のような比率もまた含まれることが理解される:約190:1、約180:1、
約175:1、約170:1、約160:1、約150:1、約140:1、約
130:1、約125:1、約120:1、約110:1、約100:1、約9
0:1、約80:1、約75:1、約70:1、約60:1、約50:1、約4
0:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1および約10:1。
本発明の好ましい局面では、炭水化物分子対チオモリブデート化合物の比率は、
約30:1である。
【0042】 本発明のさらなる実施態様では、少なくとも第1の炭水化物分子は、単糖類で
ある。他の局面では、少なくとも第1の炭水化物分子は、二糖類(例えば、スク
ロース)である。なお他の局面では、少なくとも第1の炭水化物分子は、オリゴ
糖である。特定の実施態様では、チオモリブデート化合物は、少なくとも第1の
および第2の異なる炭水化物分子と会合する。
【0043】 チオモリブデート化合物は、少なくとも第1の安定化剤(例えば、炭水化物分
子)に、例えば、水素結合によって非共有結合され得る。本発明の他の局面では
、チオモリブデート化合物は、少なくとも第1の安定化剤(例えば、炭水化物分
子)に、非共有結合される。なお他の局面では、チオモリブデン化合物は、少な
くとも第1の炭水化物分子と複合体化される。好ましい局面では、チオモリブデ
ン化合物は、ドデカチオジモリブデート、テトラチオモリブデート、オクタチオ
モリブデート鉄、トリチオモリブデート、ジチオモリブデート、またはモノチオ
モリブデートである。特定の好ましい局面では、チオモリブデート化合物は、テ
トラチオモリブデートである。さらなる局面では、この化合物は、亜鉛化合物を
含む。他の好ましい局面では、この化合物は、薬学的に受容可能な賦形剤中に分
散される。従って、本発明は、約30のスクロース分子と会合したテトラモリブ
デートを含む、安定化テトラモリブデート組成物を提供する。
【0044】 銅に結合しそして薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する薬剤は、本明細書中
に記載されるように、癌、湿型黄斑変性、または慢性関節リウマチを含むが、こ
れらに限定されない、異常な血管新生によって特徴付けられる疾患を処置もしく
は予防するのに用いられ得る。従って、癌、湿型黄斑変性、または慢性関節リウ
マチを含むが、これらに限定されない、異常な血管新生によって特徴付けられる
疾患を処置もしくは予防するための製品もしくは医薬における、銅に結合しそし
て薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する薬剤の用途もまた提供される。
【0045】 (例証的実施態様の説明) 固形腫瘍は、男性の全ての癌の90%を超える原因となる(Shockley
ら、1991)。モノクローナル抗体および免疫毒素の治療的用途は、リンパ腫
および白血病の治療で研究されている(Lowderら、1987;Viett
aら、1991)が、固形腫瘍に対する臨床的トライアルでは、期待はずれに無
効であった(ByersおよびBaldwin,1988;Abramsおよび
Oldham,1985)。
【0046】 抗体に基づく処置の無効性についての主要な理由は、高分子が、固形腫瘍に容
易に輸送されないことである(Sands,1988;Epenetosら、1
986)。たとえ、これらの分子が腫瘍塊へとたどり着いたとしても、それらは
、腫瘍細胞(Dvorakら、1991)、繊維性間質(fibrous st
roma)(Baxterら、1991)、腸圧勾配(intestinal
pressure gradient)(Jain、1990)および結合部位
障壁(Juweidら、1992)の間の強固な接合の存在のために、均一に分
散できない。
【0047】 癌の制御において常に、高機能の個体は、臨床的癌診断の高い可能性に対処す
るか、または致死病期まで主に無症候性の癌の容赦のない進行と闘う。臨床的設
定の多様性にもかかわらず、細胞レベルでは、初発性および現存の腫瘍は、全て
それらの宿主の生活の質に影響するために新しい血管成長または新脈管形成を必
要とする。従って、首尾良い抗新脈管形成療法の開発は、新生の腫瘍を臨床的に
関連することから防ぐ効果を有し得るか、または安定な転移性疾患を伴う延長さ
れた無症候性状態を可能にし得る。さらに、このような治療また、明白な腫瘍の
病期を下げる効果を有し得る。
【0048】 銅が新脈管形成における補因子であることは1970年代から公知である。多
くの重要な新脈管形成媒介物質(例えば、FGF、アンジオゲニン、およびSP
ARC)は、それらの新脈管形成前の状態において銅と結合または相互作用する
。固形腫瘍に関する抗新脈管形成処置の概念(Folkman,1972;19
95c;1977)は、確かな根拠を有し、そして動物腫瘍モデルにおいて効力
を示す(Volpertら、1996;Milauerら、1996;Warr
enら、1995;Borgstomら、1996;1998;Yuanら、1
996;O’Reillyら、1997;Benjaminら、1999および
Merajverら、1998)。抗新脈管形成カスケードにおける臨床的段階
で干渉する化合物は、診療所に行きわたっている(Marshallら、199
7)。原発性部位および転移部位での首尾良い腫瘍新脈管形成に必要とされる段
階は、多様であり、そしてこれらは、VEGFおよびbFGFのような新脈管形
成活性化因子(Iruela−ArispeおよびDvorak,1997;H
anahanおよびFolkman,1996)とトロンボスポンジン−1(T
SP−1)(Volpertら、1995;Salnikowら、1997;G
uoら、1997;SchapiraおよびSchapira、1983;Qi
anら、1997))、アンジオスタチン(O’Reillyら、1994;L
annuttiら、1997;Simら、1997)ならびにエンドスタチン(
O’Reillyら、1997)のようなインヒビターとの間の不均衡に依存す
る。異なる組織における異なる新脈管形成調節分子の相対的重要性は、原発性部
位および転移部位の両方で、応答を誘発するための抗新脈管形成化合物の相対的
効力を決定し得る。
【0049】 銅が、新脈管形成に必要とされることは十分に実証されている(Parkeら
、1988;Rajuら、1982;Zicheら、1982)。Bremら(
1990a,b)およびより最近、Yoshidaら(1995)は、動物研究
における腫瘍の処置において抗銅アプローチを用いることを試みた。彼らは、銅
欠乏食餌を、ペニシラミン治療と組み合わせて用いた(CDPTと呼ばれる)。
この研究は、ウサギ脳においてウサギVX2癌腫(Bremら、1990b)お
よびラット脳においてラット9L神経膠肉腫(Bremら、1990a、Yos
hidaら、1995)の増殖を、このような処置の結果、比較的阻害すること
を示したが、有意な、全体的生存における改善は報告されなかった。Yoshi
daらの動物は、全体的生存が評価される前に屠殺された。Bremらの研究で
は、死は、大脳下の水腫を併発することに起因し、これは、処置動物において、
未処置の腫瘍がコントロール動物において生じるのと同じ割合で死を生じるのに
十分なほど重篤であった。さらに、ウサギ脳モデルと対照的に、CPDTは、大
腿筋および肺への転移においてVX2癌腫の腫瘍増殖および血管新生を阻害し得
なかった。脳腫瘍インプラントモデルにおける生存の改善の欠如、および非脳腫
瘍における効果の欠如は、この分野におけるさらなる研究を思いとどまらせたよ
うである。
【0050】 本発明者らは、ヒト腫瘍に一般に適用可能にするため、新脈管形成の複数の活
性化因子に影響する抗新脈管形成ストラテジーを開発することが非常に望ましい
と推論した。多くの抗新脈管形成の提案は、単一の標的に向けられている。銅は
、新脈管形成の多くの重要な媒介物質(例えば、bFGF(Watanabeら
、1990;EnglekaおよびMaciag,1994;Shing,19
88;PastoneおよびMaher,1996)、VEGF、およびアンジ
オゲニン(Badetら、1989)の機能のために必要とされる補因子である
ので、本発明者らは、全身の銅の状態の調節に基づく異常な新脈管形成によって
特徴付けられる癌および他の疾患の処置のための抗新脈管形成ストラテジーを開
発した。本研究の根底にある基礎は、銅欠乏症のウインドウ(ここで、新脈管形
成が損なわれるが、他の銅依存細胞プロセスは、臨床的毒性を生じるのに十分な
ほどは影響されない)が存在することである。本発明者らは、動物モデルを用い
る他者の記録された失敗にもかかわらず、彼らの臨床的目的において成功を納め
た。
【0051】 インビトロで、銅のレベルを低下させる安全で効果的な予防薬または治療薬の
開発は、当該分野で問題であるつづけている。癌治療に対する抗銅、抗新脈管形
成アプローチの本発明者らの仮説は、新脈管形成に必要とされる銅のレベルが、
本質的な銅依存細胞機能(例えば、ヘム合成、シトクロム機能、および銅の酵素
および他の酵素への取り込み)を必要とされるレベルに対してより高いことであ
る。本発明者らは、抗銅剤として、他の抗銅剤と比較される、テトラチオモリブ
デン酸(TM)の固有かつ好ましい特性は、TMを、抗銅、抗新脈管形成治療に
おいて、非毒性の有効な新しい兵器にし得ると推論した。
【0052】 以下に詳細に記載されるように、過去20年間、本発明は、ウィルソン病(異
常な銅沈着および毒性を生じる銅トランスポーターの常染色体性の劣性疾患)の
ための新しい抗銅治療を開発してきた。現在用いられる薬物の1つは、TMであ
り、これは以下の固有かつ望ましい特性を示す:速い作用、銅特異性、および低
い毒性(Brewerら、1991a;1994b;1996)、ならびに作用
の固有の機構。TMは、銅およびタンパク質を有する安定なものからなる複合体
を形成する食品と共に与える場合、それは、食品の銅と食品のタンパク質との複
合体を形成し、そして胃腸管からの銅の吸収を防ぐ。食物摂取に関する唾液およ
び胃分泌における銅の内因性の分泌が存在し、そしてこの銅はまた、食事と共に
取り込まれる場合、TMによって複合体を形成し、それによって銅の再吸収を防
ぐ。従って、TMが食品と共に与えられる場合、患者は、迅速に負の銅平衡下に
置かれる。TMが食事の間に与えられる場合、TMは血流の中に吸収される。こ
こで、TMは、遊離の銅または血清アルブミンと緩く結合した銅と複合体を形成
する。このTM結合銅画分は、もはや細胞取り込みに利用可能ではなく、既知の
生物学的活性を有さない。
【0053】 本発明の研究は、TMが安全かつ有効な抗癌剤であることを実際に示す。TM
は、Her2−neuトランスジェニックマウス(実施例2)において新規の乳
癌の発症を損なうことにおいて効力を示し、そして銅レベルがベースラインの1
0%まで低下した場合、臨床的に明白な毒性を示さなかった。本開示はまた、転
移性癌を有する患者においてテトラチオモリブデートの使用に基づく抗新脈管形
成治療に対する抗銅アプローチの第1のヒト試験を詳述する(実施例3および4
)。TMの第一相試験、用量に対して得られた情報、用量応答、患者における銅
状態の評価、毒性および効力は、特に他者(Bremら、1990a;Yosh
idaら、1995)により行われた期待はずれの動物研究を考えると、驚くほ
ど有益である。抗新脈管形成化合物の試験における以下の疾患状態に対する新規
のアプローチもまた開示される。
【0054】 (I.銅とタンパク質との三部分錯体を形成する薬剤) (A.テトラチオモリブデート) (1.作用の特徴付けおよび機構) テトラチオモリブデート(TM)は、4つのスルフィド基に囲まれたモリブデ
ン原子から構成された化合物である。TMの生物学的効果の発見は、ウシおよび
ヒツジに対する観察から始まり、ここで、これらは、高いモリブデン(Mo)含
量を伴って放牧および牧畜された場合に、銅の欠乏症を発症した(Fergus
onら、1943;DickおよびBull,1945;MillerおよびE
ngel,1960)。補充Moの投与は、反芻動物において銅代謝を障害する
ことが確認されているが(Macilese Ammermanら、1969)
;しかし、Moは、ラットのような非反芻動物に対してほとんど効果を有さない
(Millsら、1958;Coxら、1960)。この謎に対する答えは、M
oが、瘤胃における高い硫化物代謝の結果として、瘤胃においてチオモリブデー
トに変換されること、およびチオモリブデートが、活性な抗銅薬剤であることを
示唆する観察から得られた(Dickら、1975)。この理論は、チオモリブ
デート化合物がラットに与えられ、そして抗銅効果を生じた際に、確証された(
Millsら、1981a,b;Bremnerら、1982)。テトラチオ置
換化合物である、TMは、これらのうちで最も強力である。
【0055】 TMの作用の抗銅機構は、二重である(Millsら、1981a,b;Br
emnerら、1982;Gooneratneら、1981b)。1つの機構
は、GI管において作用し、第2の機構は、血中で作用する。GI管において、
TMは、銅と食品タンパク質(または他のタンパク質)との錯体を形成し、これ
らは、吸収されない。この吸収阻害は、食品中の銅のみならず、むしろ唾液、胃
液および他のGI管分泌物中に内因的に分泌されたかなりの量の銅にも関連する
(AllenおよびSolomons,1984)。TMは、亜鉛よりもより効
果的な銅吸収のブロッカーである。なぜなら、亜鉛は、メタロチオネインが誘導
され得る、小腸の領域においてのみ作用するからである(Yuzbasiyan
−Gurkanら、1992)。対照的に、TMは、上方および下方の全てのG
I管で作用する。この設定下での亜鉛を超えるTMの他の利点は、TMが直ちに
作用することである。TMは、メタロチオネインの誘導に必要なラグ期間を有さ
ない。
【0056】 TMの第2の効果は、血液に対するものである。食事から離れた時点で与えら
れたTMは、血中に比較的良好に吸収される。ここでは、TMは、銅とアルブミ
ンとの錯体を形成し、この錯体化された銅を、細胞の取り込みに利用不可能にさ
せる(Gooneratneら、1981b)。正常な血漿中の銅は、2つの主
要なプール中に存在する。正常なヒトにおける血漿中の銅の大半は、セルロプラ
スミン分子の部分である。この銅は、細胞との容易な交換に本質的に利用可能で
なく、非毒性と考えられる。銅のもう一方のプールは、アルブミンおよび低分子
(例えば、アミノ酸)により緩く結合される。この銅のプールは、ウィルソン病
のような疾患における、急性の銅毒性の間に大きく拡大し、そして細胞の取り込
みに容易に利用可能であり、従って、潜在的に毒性である(Scheinber
gおよびSternlieb、1984)。TMが血中に進入した場合、TMは
、この後者の銅と錯体化し、そして銅を、セルロプラスミン銅のように、細胞の
取り込みおよびさらなる毒性に利用不可能なものにする。
【0057】 TM錯体化銅が、細胞の取り込みに利用不可能である、非常によい証拠が存在
する。もっとも直接的な証拠は、ヒツジにおいて、通常、溶血性貧血を生じるの
に十分に高い血漿中の銅のレベルが、TMの存在下ではそうではないことである
(Gooneratneら、1981b)。TMが結合した銅は、赤血球を浸透
しないことが示された。これは、TM錯体化銅が、細胞を浸透しない直接的な証
拠である。
【0058】 TMおよびTMの塩は、入手可能である;TMの好ましい塩の1つは、アンモ
ニウム塩である。Aldrich Chemical Company(カタロ
グ番号 W180−0;Milwaukee,WI)から購入されるTMは、中
程度に水溶性であり、明赤色溶液を生じる、黒色粉末である。Aldrich
Chemical Companyから購入されるTM(1キログラムのバルク
のロットで入手可能)は、ヒト使用のために純粋であるとが保証される。このバ
ルク薬物は、酸素非存在下で保存されるべきであり、さもなければ、酸素は、徐
々に硫黄と交換されて、時間が経過するにつれ、この薬物を無効なものにする。
従って、このバルク薬物は、アルゴン下で保存される。本発明者らによって開発
された安定性アッセイは、この薬物が、アルゴン下で数年間安定であることを示
す(Brewerら、1991a)。カプセルを、自ら充填し得、そしてこの薬
物は、室温で数ヶ月間、このカプセル中で安定である。
【0059】 TMは、銅とタンパク質との三部分錯体を形成することによって作用する(M
illsら、1981a、b;Bremnerら、1982)。TMは、2つの
作用機構を有する。食事と共に与えられた場合、TMは、食品中の銅および内因
的に分泌された銅を、それ自体および食品タンパク質と錯体化し、そして銅の吸
収を妨げる。患者は、食事と共にTMを投与することによって、即座に、TMに
対する銅の負の平衡下に置かれ得る。食事間に与えられる場合、TMは、血流中
に吸収され、そして血清中の銅を、それ自体およびアルブミンと錯体化し、迅速
にその銅を細胞の取り込みに利用不可能にする。器官中の遊離の銅は、血液の遊
離の銅と平衡下にあり、器官中および腫瘍組織の遊離の銅が、血中の銅が結合さ
れる場合に、非常に低いレベルに即座に減少される。この錯体は、腎臓および肝
臓を通って排除される。TMは、最も強力かつ最も迅速に作用する、公知の抗銅
薬剤である。
【0060】 (2.TMの毒性および効力) テトラチオモリブデート(TM)は、本発明者らが、ウィルソン病のオーファ
ン治療剤として開発した薬物である。この薬物は、銅毒性に対する即時性制御を
与え、そしてウィルソン病に通常使用される薬物であるペニシラミンでの初期処
置の間の時間の、50%が生じる神経学的な悪化を予防する、優れた役割を果た
す(Brewerら、1991a;Brewerら、1994B;Brewer
ら、1996)。これまで、本発明者らは、通常8週間の期間で、55人のウィ
ルソン病患者をTMで処置してきた。従って、TMは、ウィルソン病の初期処置
における非常に重要なニッチを満たす。ウィルソン病研究は、ヒトにおける、T
Mを用いる広範な経験を提供し、そしてヒトにおける、TMの極度に低い毒性レ
ベルを実証するのに役立ってきた。
【0061】 ヒトウィルソン病研究において、時折観察された1つの副作用は、TMの抗銅
効果に起因する、可逆性貧血である。非常に高用量で与えられた場合、TMは、
骨髄に対して、深刻なまたは全体的な銅欠乏をもたらす。銅は、赤血球形成に必
要であるので、貧血を発症する。この貧血は、TMを単に中止することによって
迅速に回復する。ウィルソン病研究において、TMの過剰な処置効果は、1日あ
たり20mgを6回に、用量を単に減少することによって解消された。ウィルソ
ン病に罹患しないヒト(例えば、癌患者)において、前貧血状態の軽度の銅欠乏
のレベルは、TM治療の間セルロプラスミン(Cp)を注意深くモニターするこ
とによって簡単に確認され得る。
【0062】 TMは、チオモリブデート、モリブデートおよび酸化モリブデンに最終的に代
謝され、そのために、これらの化合物の潜在的な毒性が、考慮されなければなら
ない。しかし、これらのモリブデン化合物は、本明細書中で記載される臨床状況
で使用されるTMの分解から生じるレベルで、極めて無毒性であることが理解さ
れる。TMの約37重量%が、Moであり、そのために、本明細書中で記載され
る研究は、50mg Mo/日までが、2週間投与され、その後、わずか約25
mg/日が、維持のために投与される。350〜1400mg/日の高用量のM
oが、以前にウィルソン病を罹患する患者において、4〜11ヶ月間、毒性を伴
わずに使用された(Bickelら、1957)。従って、25〜50mg/日
の用量範囲が、予期される問題を示さず、そして全体的に安全であるはずである
【0063】 TMの潜在的毒性についてのかなりの研究が、ラットにおいて行われている(
Millsら、1981a;Bremnerら、1982)。1kgの食餌あた
り約6mgのTMで、ラットは、血漿セルロプラスミンの減少ならびに肝臓およ
び腎臓の銅における減少を含む、銅に対する実質的な効果を示す。約12mgの
TMでは、これらの変化の全てが増加し、そしてさらに、肝臓Moが増加した。
軽度の貧血が示され、骨格の病変が、6匹の動物中1匹において示された。18
mgのTMでは、貧血が重度であった。毛のメラニン産生は障害され、下痢が示
され、成長速度が、顕著に減少し、そして全ての動物は、長骨の骨端軟骨におけ
る形成異常、海綿質の吸収、および靱帯における構造変化によって特徴付けられ
る骨格病変を有した。
【0064】 1キログラムの食餌あたり36mgまでの、TMの全ての毒性効果は、銅の経
口補給によって、または銅の腹腔内注射を用いて予防され得ることが、後に示さ
れた(Millsら、1981b)。従って、TMによって誘導される全ての毒
性病変は、TMによって誘導される銅欠乏に起因することが明らかである。この
ことの支持において、上記病変のほぼ全ては、骨格病変および下痢を導く腸細胞
ミトコンドリア損傷の2つの例外を除き、食餌性の銅欠乏によって誘導される。
これら例外の2つの病変が、TM投与で見出されるが、食餌性の銅欠乏において
見出され得ない理由は、TMによって誘導される銅欠乏の重篤性および迅速性に
関連し得る。食餌性銅欠乏の場合、通常いくらかの混在する利用可能な銅が存在
し、そして腸細胞および骨端細胞のような分裂細胞は、これらの病変を予防する
のに十分な銅を獲得し得る。銅補給による、これら2つの病変の予防および他の
全てのTM誘導性病変の予防は、これらの病変が、おそらく銅欠乏に起因するこ
とを示す。
【0065】 別のグループは、1キログラムの食餌あたり約18mgのTMを受けるラット
における、腸の病理学を試験した(Fellら、1979)。これらのラットは
また、1キログラムの食餌あたり約3mgの銅を受けた。これらの科学者は、低
銅症(hypocuprosis)に起因しない、細胞アポトーシス、水腫、お
よび壊死に関する腸の病理学を見出したが、これは証明されていない。このよう
な問題の全てが、適切な銅補給によって予防されたという知見の観点から、おそ
らく、より高い銅補給が予防に必要とされるであろう(Millsら、1981
b)。
【0066】 ウィルソン病患者は、過剰な銅の大きい貯蔵を有し、銅欠乏に起因するTMの
毒性は、これらの患者に全く危険ではない。骨格病変および腸細胞病変の場合で
さえ、銅投与が保護されるので、過剰の銅の貯蔵を有するウィルソン病患者はま
た、保護される。他の研究者らは、ヒツジに負荷された銅に対するTMの効果を
研究した(Goonertneら、1981a)。ヒツジは、銅の毒性に極めて
感受性であり、通常、肝不全および溶血性貧血を発症することが周知である。こ
れらの研究は、ヒツジを、肝臓の損傷の開始時に銅を食餌的に負荷することを含
み、次いでTMが、11週間までの間、毎週2回、50mgまたは100mgの
用量で静脈内的に与えた。
【0067】 26頭のヒツジのうち5頭が、研究中に死亡した。全ての死は、検死結果に基
づいて、銅中毒症に起因した。5頭の死のうち3頭の死は、銅を受けたがTMを
受けなかったコントロールにおいて生じた。1頭の死は、動物が1用量のTMの
みを受けた後に生じ、そして別のものは、4用量のみをうけた動物で生じた。こ
れら2頭の動物は、TMがこれらをレスキューする能力に先立って、銅の毒性の
ために死亡した。動物が、銅中毒症の最初の発生を生存する場合、これらは、銅
の投与が継続されるいくつかの場合においてでさえ、TMによってさらなる銅の
毒性から保護された。これらの動物は、臨床的問題なく、22回までのTM注射
に耐性であった。
【0068】 重篤な肝臓の銅毒性に対するヒツジの保護におけるIV(Humphries
ら、1986)または皮下(Humphriesら、1988)のいずれかでの
TMの有益な効果の支持もまた、示されている。TMは、肝臓の銅の量だけでな
く、急性の肝臓の損傷も減少した。TMをまた、予防的に使用して、商業用のヒ
ツジの群における銅の毒性を予防した。400を超える動物が、有害な副作用を
伴うことなくTMで処置された(Humphriesら、1988)。
【0069】 予備的研究もまた、TMが、LECラットモデルにおける銅毒性に対して劇的
に効果的であり得ることを示した(Suzukiら、1993)。これらのラッ
トにおける遺伝的欠損が、最近、ウィルソン病遺伝子における欠損に依存して示
された(Wuら、1994)。これらのラットは、重篤な肝臓疾患を発症し、そ
して通常死亡する。TMは、これらの動物の肝臓疾患の後期における、これらの
動物の処置において非常に効果的であった。
【0070】 ヒツジにおけるMo代謝は、99Mo標識化TMのIV注射後に研究された(M
asonら、1983)。15分間にわたる迅速な血漿消失、およびその後の約
40時間のT1/2でゆっくりした消失が存在した。TMは、モリブデートを段階
的に変換し、糞便中の5%に対して、90%を超えるTMが、尿中に排泄された
。同じ群を、ヒツジにおける二重標識したTMのIV注射後の、99Moおよび35 Sの代謝について、引き続いて公開された(Hynesら、1984)。99Mo
および35Sのほとんどは、アルブミンと初期に結合した。置換TMまたは非結合
TMは、迅速にモリブデートとスルフェートに加水分解された。TCA不溶性銅
画分の消失にもかかわらず、35Sまたは99Moのいずれかの、銅および血漿との
不可逆性相互作用の証拠はなかった。
【0071】 高レベルの銅の存在下で、TM投与は、肝臓および腎臓の両方においてTMと
錯体化した銅の蓄積を生じることは、明らかである(Jonesら、1984;
BremnerおよびYoung、1978)。しかし、この錯体と関連する蓄
積症は、示されなかった。現在の理論は、この錯体が解離すること、およびTM
がオキシモリブデートへ代謝され、そして排出されることを支持する(Maso
nら、1983)。次いで、銅は、肝臓の他の経路に進入する。高レベルのメタ
ロチオネインの存在下で、これは、メタロチオネインによってほぼ取り込まれる
ようである。腎臓においては、この銅が単に排泄されることが明らかである。
【0072】 2つの場合の可逆性の骨髄抑制が、治療の持続のためにTMを受けている患者
において報告されている(HarperおよびWalshe,1986)。本発
明者らは、7人の患者において可逆性貧血を見出した。これらの患者は、治療に
対する強い応答を有し、そして局所的な、骨髄の銅欠乏に陥ったようであった。
銅は、ヘム合成に必要とされ、これは、少なくとも骨髄が関連する限りは、過剰
処置の徴候であるようである。TMは、このような効果的な抗銅薬剤であるが、
HarperおよびWalshe(HarperおよびWalshe、1986
)の場合のようなTMでの持続的治療の間、過剰処置が生じることは予期されな
かった。
【0073】 (3.モリブデン(Mo)毒性) TMの約37%がMoである。Moの正常な摂取量は、約350μg/日(S
eelig、1972)、すなわち、約1.0mgのTMにおけるMoの等価量
である。モリブデンは、ヒトによって非常によく耐性が示されるようである。1
957年の研究において、比較的高用量の5〜20mg/kg/日のMo(1〜
4gのTMにおけるMoに等価的)が、4〜11ヶ月間ウィルソン病に罹患する
患者において、既知の毒性を伴わずに使用された(Bickleら、1957)
。しかし、それは、先に指摘されたように、TMが活性な代謝物であり、おして
反芻動物においてのみMoから効率的に形成されるために、効果的ではなかった
【0074】 (B.他のチオモリブデート化合物) 遊離の銅の還元において類似の作用様式を有する他のチオモリブデート化合物
としては、ドデカチオジモリブデート、トリチオモリブデート、ジチオモリブデ
ートおよびモノチオモリブデートが挙げられる。これらの化合物は、テトラチオ
モリブデートのように、銅とタンパク質との三部分の錯体を形成し、これは、銅
を利用不可能なものにし、そして最終的には銅錯体のクリアランスを導く。
【0075】 多くのチオモリブデート錯体、オキソ/チオモリブデート錯体、ならびに鉄、
モリブデンおよび硫黄を含み、酸素を含むかまたは含まない、ヘテロ金属錯体の
合成および特徴付けは、記載されている(Coucovanis,1998;C
oucouvanisら、1989;Coucovanisら、1988;Ha
djikyriacouおよびCoucovanis、1987;Coucov
anisら、1984;Teoら、1983;Coucovanisら、198
3;KantzidisおよびCoucovanis、1983;Coucov
anisら、1981;Coucovanisら、1981;Coucovan
isら、198a、b)。これらの錯体は、銅に結合することが示され、従って
、本発明の特定の実施態様における使用が意図される。
【0076】 好ましいチオモリブデートの化合物または錯体は、1、2または3個のモリブ
デン原子、1個のモリブデン原子および1個の鉄原子、2個のモリブデン原子お
よび1個の鉄原子、ならびに1個のモリブデン原子および2個の鉄原子を含む、
チオモリブデートの化合物または錯体である。チオモリブデート化合物のこれら
の3つの一般的なクラスの構造、およびこの好ましいチオモリブデート化合物の
うちの2つを、以下に示す:
【0077】
【化1】 ここで、Catは、錯体を水溶性にするカチオン(例えば、NH4+)であり、
Lは、リガンド(例えば、Cl-またはR−Ph−S)であり、ここで、Rは、
錯体を水溶性にする官能基(例えば、スルホン酸)であり、Phは、フェニル基
である。
【0078】 本発明における使用のために意図されるチオモリブデート錯体の例としては、
以下が挙げられるが、これらに限定されない;ノナチオモリブデート([MoS92-)、ヘキサチオジモリブデート([Mo262-)、ヘプタチオジモリブ
デート([Mo272-)、オクタチオジモリブデート([Mo282-)、ノ
ナチオジモリブデート([Mo292-)、デカチオジモリブデート([Mo2
122-)、ウンデカチオジモリブデート([Mo2112-)、ドデカチオジ
モリブデート([Mo2122-)、ドデカチオモリブデートのアンモニウム塩
((NH42[Mo26]);Mullerら、1980;Mullerおよび
Krickemeyer、1990)、トリデカチオトリモリブデートのアンモ
ニウム塩((NH42[Mo3(S)(S26]);MullerおよびKri
ckemeyer、1990)、ならびに[FeCl22MoS2FeCl22- 、[S2MoS2FeS2MoS23-、および[S2MoS2FeCl22-のコア
構造を有するこれらのチオモリブデート。
【0079】 さらに、本発明者らは、グルコン酸鉄が、ハロゲン化物イオンを含まない鉄の
供給源であることを発見した。水酸化アンモニウムの存在下でのテトラチオモリ
ブデートを用いるその反応は、別の好ましいチオモリブデート化合物である、オ
クタチオジモリブデート鉄の新規なアンモニウム塩((NH43[S2MoS2
eS2MoS2])を生成した。これは、非常に水溶性である。
【0080】 これらの化合物のいくつかは、テトラチオモリブデートより体内で銅のレベル
を減少するのに強力ではないかもしれないが、これらは、いうまでもなく、本発
明の特定の局面における有用性(そして、特定の例において好ましいこと)が見
出される。
【0081】 (C.安定化されたチオモリブデート錯体) チオモリブデート化合物は、空気に曝露された場合に酸化に対して感受性であ
る。本発明者らは、チオモリブデート化合物と糖質(例えば、スクロース)との
間で錯体を形成することによって、安定化された形態のチオモリブデート化合物
が生成されることを発見した。これらのチオモリブデート化−炭水化物錯体にお
いて、糖質分子の層は、水素結合によって安定化された配列下のチオモリブデー
ト化合物の周辺に集合する。これらの層は、酸化および加水分解に対してチオモ
リブデートコアを保護するように作用する。このチオモリブデート化合物に水素
結合し得る、他の分子(例えば、アミノ酸)もまた、本発明の特定の局面におけ
る使用に意図される。
【0082】 用語「糖質(炭水化物)」は、一般式(CH2O)nを有する、広範な種々の化
合物を含み、そしてモノサッカリド、ジサッカリド、トリサッカリド、オリゴサ
ッカリド、ポリサッカリドならびにそれらのアミノ化形態、硫酸化形態、アセチ
ル化形態および他の誘導体化形態のような化合物を含む。オリゴサッカリドは、
糖単位(これは、モノサッカリドとしても公知)から構成される鎖である。糖単
位は、任意の順番で配置され得、そして任意の多くの異なる様式でそれらの糖単
位が連結され得る。従って、異なる立体異性体のオリゴサッカリドのあり得る鎖
はきわめて数多くある。
【0083】 当該分野で公知であるように、モノサッカリドは、1つの糖単位を含む糖分子
である。本明細書中で使用される場合、用語「糖単位」はモノサッカリドを意味
する。やはり当該分野で公知であるように、ジサッカリドは、2つの糖単位を含
む糖分子であり、トリサッカリドは、3つの糖単位を含む糖分子であり、オリゴ
サッカリドは、一般に、約2〜約10の間の糖単位を含む糖分子であり、そして
ポリサッカリドは、10を超える糖単位を含む糖分子である。ジサッカリド、ト
リサッカリド、およびオリゴサッカリドにおける糖単位は、全てグリコシド結合
により結合される。本発明において使用されるように、やはり、用語「オリゴサ
ッカリド」は、少なくとも2つの糖単位を含む糖分子を意味する。
【0084】 本発明の範囲内において、「モノサッカリド」としては、D−アイソマーまた
はL−アイソマーのトリオース、アルドペントース、アルドヘキソース、アルド
テトロース、ケトペントースおよびケトヘキソースのいずれかが挙げられるが、
これらに限定されないことが理解される。言及した化合物はまた、ラクトンの形
態であり得る。アルドペントースの例としては、リボース、アラビノース、キシ
ロース、およびリオースが挙げられるが、これらに限定されない;アルドヘキソ
ースの例としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロー
ス、イドース、ガラクトース、タロース、フコースおよびラムノースが挙げられ
るが、これらに限定されない。ケトペントースの例としては、リブロースおよび
キシルロースが挙げられるが、これらに限定されず、テトロースの例としては、
エリスロースおよびトレオースが挙げられるが、これらに限定されず、そしてケ
トヘキソースの例としては、プシコース、フルクトース、ソルボースまたはタガ
トースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】 ジサッカリドの例は、トレハロース、マルトース、イソマルトース、セロビオ
ース、ゲンチオビオース、サッカロース、ラクトース、キトビオース、N,N−
ジアセチルキトビオース、パラチノースまたはスクロースである。トリサッカリ
ドの例は、ラフィノース、パノース、メレジトースまたはマルトトリオースであ
る。オリゴサッカリドの例は、マルトテトラオース、マルトヘキソースまたはキ
トヘプタオースである。用語「糖質(炭水化物)」は、本明細書中で使用される
場合、糖アルコール(例えば、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、グ
リセロールまたはソルビトールのようなアルジトール)を含むこともまた意図さ
れる。ポリサッカリドの例としては、ポリデキストロースおよびマルトデキスト
リンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】 この安定化は、本明細書中で規定されるように、任意の糖質を使用して、チオ
モリブデート金属塩中心につき、約5の糖単位〜約100または200の糖単位
の間の割合周辺で効果的であると意図される。この範囲は、この範囲の全ての値
、すなわち、チオモリブデート金属塩中心につき、約10の糖単位、チオモリブ
デート金属塩中心につき、約20の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき
、約25の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約30の糖単位、チオ
モリブデート金属塩中心につき、約40の糖単位、チオモリブデート金属塩中心
につき、約50の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約60の糖単位
、チオモリブデート金属塩中心につき、約70の糖単位、チオモリブデート金属
塩中心につき、約75の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約80の
糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約90の糖単位、チオモリブデー
ト金属塩中心につき、約110の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、
約125の糖単位、チオモリブデート金属塩中心につき、約150の糖単位、チ
オモリブデート金属塩中心につき、約175の糖単位またはチオモリブデート金
属塩中心につき、約190の糖単位の割合を含むと理解される。
【0087】 このような安定化したチオモリブデート化合物の例は、スクロースで安定化さ
れたテトラチオモリブデートである。スクロース−アンモニウムテトラチオモリ
ブデート複合体を調製するために、25gのスクロースを、20mlの蒸留水に
溶解する。1gのテトラチオモリブデートアンモニウム(TM)を添加し、そし
てこの混合物をTMが溶液になるまでアルゴン下で攪拌する。次いで、減圧下で
のフラッシュエバポレーションによりこの混合物から水を除去する。
【0088】 得られた粉末は、純粋なTMより、開放系ではるかにより安定である。開放デ
ィッシュで3ヶ月保存した後、このスクロース粉末は、OD467で測定したとき
最初の薬物の61%の活性を保持していたが、同じ条件下で保存したTMは、最
初のOD467のわずか5%しか保持していなかった。
【0089】 (D.銅レベルのモニタリング) 血清セルロプラスミン(これは、肝臓の銅状態に直接依存する)は銅状態の正
確な指標である。以前の齧歯類での研究において使用したTMの用量は、平均重
量のラットにおいて平均約0.5mg/日であった。マウスおよびラットでの本
発明者らの研究、ならびに本発明者らのウィルソン病を有するヒトおよび癌を有
するヒトでの広範な実験は、血清セルロプラスミンを、齧歯類における低銅状態
の最適な基準である正常の約10%まで減少させるために、その4回の用量がラ
ットで必要とされることを示す。Cu状態の最適なモニタリングおよびTM投薬
のこれらの構想は、引き続いて、実施例2に記載のTMの動物研究において援用
された。
【0090】 本明細書中の研究、およびTMでの本発明者らの実験に基づくと、セルロプラ
スミン(Cp)のレベルが処置前基準値の約40%〜約10%の間まで減少させ
ることは、少なくともあるレベルの有益な臨床的抗脈管形成効果を生じる。しか
し、Cpが処置前基準値の約20%のレベルまで低下することは、大部分の臨床
的な指標において好ましい。
【0091】 (II.他の銅キレート剤) 本発明の特定の局面において、本発明者らは、癌患者において低銅状態を達成
するための亜鉛の使用を企図する。本発明者らは、ウィルソン病のための抗銅薬
剤としての亜鉛を明らかにし、そしてこの目的に関して、米国食品医薬品局(F
DA)により1997年1月に認可された。亜鉛は、腸粘膜細胞においてメタロ
チオネインを誘導することによって作用し、これによって銅吸収を遮断する(B
rewerおよびYuzbasiyan−Gurkan,1992a)。亜鉛は
また、きわめて安全である。200症例のウィルソン病患者に達する現在の研究
において、毎日150mgの用量での亜鉛は、全く毒性を生じなかった(Bre
werおよびYuzbasiyan−Gurkan,1992a)。
【0092】 一般に、亜鉛は、テトラチオモリブデン酸および他のチオモリブデート化合物
よりゆっくりと銅レベルを低下させる。しかし、亜鉛化合物は比較的安価であり
、かつ調製しやすく、そしてそれらが広範に利用可能であるという事実に起因し
て、亜鉛化合物の使用は、本発明の特定の局面において、ならびに最初の低銅状
態の達成において、および一旦他の薬剤を使用して低銅状態が達成された場合の
維持治療の両方において好ましい(以下でより詳細に議論される)。
【0093】 (III.組み合わせ治療) 本発明の方法は、患者が示す特定の疾患または障害の処置に一般に利用される
任意の他の処置と組み合わせられ得る。例えば、固形腫瘍の処置とともに、本発
明の方法は、古典的なアプローチ(例えば、手術、放射線療法など)と組み合わ
せて使用され得る。特定の治療アプローチが、それ自体有害であることが知られ
ていないか、またはTM治療の有効性を妨げない限り、本発明との組合わせが企
図される。1つ以上の薬剤が、TM治療と組み合わせて使用される場合、組み合
わせ効果は、各処置が別々に行われる場合に観察される効果に対して相加的であ
る必要はないが、これは、明らかに望ましく、そして組み合わせ処置が相乗効果
を示す必要は特にないが、これは間違いなく可能であり、かつ有利である。
【0094】 手術に関して、銅欠乏症の間に伴う手術は、創傷治癒に血管増殖が必要である
ために好ましくない。しかし、TM治療を中断して約24時間以内に銅が供給十
分であるときは、銅充満後にいかなる手術的介入を行うことも可能である。次い
で、TM治療は、創傷治癒が確立された後(代表的には、手術の約1〜2週間後
)にもとに戻され得る。放射線療法とともに、腫瘍細胞内に局所的にDNA損傷
を誘導するための任意の機構は企図される(例えば、ガンマ線照射、X線、UV
照射、マイクロ波ならびにさらに電子発光など)。腫瘍細胞に対する放射性同位
体の方向付けられた送達もまた企図され、そしてこれは、標的化抗体または他の
標的化手段とともに使用され得る。
【0095】 サイトカイン治療もまた、組み合わせ治療レジメンの有効なパートナーである
ことが分かった。種々のサイトカインが、このような組み合わせアプローチにお
いて利用され得る。サイトカインの例としては、IL−1α、IL−1β、IL
−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−
9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、TGF−β、GM−C
SF、M−CSF、G−CSF、TNFα、TNFβ、LAF、TCGF、BC
GF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、I
FN−α、IFN−β、IFN−γが挙げられる。サイトカインは、患者の状態
およびサイトカインの相対的毒性のような臨床的指標と一致して、標準的レジメ
ンに従って投与される。
【0096】 (A.銅キレート剤) 本発明者らは、長期間にわたり中程度の銅欠乏状態を維持するために、癌患者
において低銅状態の達成後の亜鉛の使用を企図する。上記で議論されるように、
本発明者らは、ウィルソン病の抗銅薬剤としての亜鉛を明らかにし、そしてこの
目的に関して、米国食品医薬品局(FDA)により1997年1月に認可された
。亜鉛は、腸粘膜細胞においてメタロチオネインを誘導することによって作用し
、これによって銅吸収を遮断する(BrewerおよびYuzbasiyan−
Gurkan,1992a)。亜鉛はまた、きわめて安全である。200症例の
ウィルソン病患者に達する現在の研究において、毎日150mgの用量での亜鉛
は、全く毒性を生じなかった(BrewerおよびYuzbasiyan−Gu
rkan,1992a)。
【0097】 (1.亜鉛) 亜鉛化合物(例えば、酢酸亜鉛)は、初期処置を含むウィルソン病の総合処置
のために使用されている(Hoogenraadら、1978;Hoogenr
aadら、1979;Hoogenraadら、1987)。しかし、亜鉛は、
かなり作用が遅いので初期治療(単独で)としては理想的ではない。従って、腸
メタロチオネイン誘導およびネガティブ銅平衡を達成するために約2週間を要す
る(Yuzbasiyan−Gurkanら,1992)。2週間の時点で、亜
鉛は、これらの患者の平均の銅平衡を1日に+0.54mg(ポジティブ)直ち
に逆転させるが、誘導されたネガティブ銅平衡は、かなり小さく、1日に平均−
0.35mg(ネガティブ)銅平衡である(Brewerら、1990;Bre
werら、1993b)。銅除去の速度が遅いことに起因して、尿の銅および非
セルロプラスミン血漿の銅(潜在的に血液中で毒性銅が測定される)を毒性未満
のレベルまで低下させるために約6ヶ月ほどの亜鉛治療を要する。
【0098】 (2.ペニシラミン) ペニシラミンは、最もよく用いられ、かつ最も良好であることが公知の薬物で
ある。しかし、神経学的患者の初期処置に対しては最後の選択であるべきである
。なぜなら、これは、患者を神経学的に悪化させる危険性が非常に高いからであ
る(Brewerら、1987a;Glassら、1990;Brewerら、
1994a)。ペニシラミンに伴う別の問題は、約1/4〜1/3の患者が初期
の過敏症症候群を発症させることであり、このことは、重大な介入(例えば、一
時的な薬物中断、およびそれを低用量で再び開始すること(通常は、コルチコス
テロイド投与と同時に))を必要とする。これは、既に病気である患者にとって
は、いくらか驚くような経験であり、そして本発明者らの研究においては、主治
医による盲検が妨げられてしまう。最終的には、治療の最初の数週間の間にペニ
シラミンで生じ得る他の副作用の長いリストがある。これらとしては、骨髄低下
、タンパク尿、および自己免疫疾患が挙げられる。
【0099】 (3.トリエンチン) トリエンチンは、銅のキレート化および尿排出によって作用する(Walsh
e、1982)。治療的用量(1,000〜2,000mg/日)は、通常、同
様な量のペニシラミンの約半分程度の銅尿(cupruresis)を生じるに
すぎない。それにも拘わらず、トリエンチンは、亜鉛よりはるかに多い、数mg
のネガティブ銅平衡の初期生成を生じ得る。代表的には、この4〜5mgの銅尿
は治療の最初の数週間の間で、より穏やかであるがなお実質的である、2〜3m
gまでに減少する。銅の摂取は、約1mg/日であり、強制的に、約0.5mg
の非尿の銅が喪失する。従って、2〜3mgの銅尿は、1.5〜2.5mg/日
のネガティブ銅平衡を生じる。
【0100】 トリエンチンは、ペニシラミン治療に耐えられない患者の使用のために正式に
認可されている。このため、およびトリエンチンは、ペニシラミンよりはるかに
遅く導入されたために、非常に広範に使用されてもおらず、そして報告もされて
いない。正式な毒性研究は行われてこなかった。ペニシラミンよりは副作用の危
険性が実質的に少ないようである。初期の過敏症の問題は報告されていない。約
20%の患者においては使用の数週間後に、タンパク尿を確かに引き起こす。ま
た、ときおり、骨髄低下および自己免疫疾患を生じ得るが、後者は通常長期の使
用後である。
【0101】 これまで、トリエンチンは、神経学的患者において初期の悪化を引き起こすこ
とは報告されていないが、このタイプの患者での単独でのその使用は、おそらく
、非常に制限されている。不確かではあるが、本発明者らは、ペニシラミンで悪
化し、一時的にトリエンチンに切り換え、そしてさらに悪化した(改善されなか
った)ときに、TM治療のために本発明者らに移管された移管中の患者を受けい
れた。この種の患者において、悪化する際にトリエンチンが何らかの役割を果た
したか否かは分からない。理論的には、ペニシラミンを使用したときと同様に、
銅に移動性を持たせ、尿排出を達成するためにより高い血中レベルを生じたので
あろう。しかし、この増加したレベルの血中銅が、増加した脳レベル、および増
加した神経毒性に解釈されるか否かは未知である。
【0102】 (B.化学療法組み合わせおよび処置) 増強した腫瘍破壊が達成されることによる機構とは関係なく、本発明の組み合
わせ処置の局面は、疾患の有効な処置において明らかな有用性を有する。化学療
法剤の投与との組み合わせで本発明を用いるために、当業者は、動物内の組み合
わせ抗腫瘍作用を生じるに有効な様式で、銅を結合し、そして化学療法剤との組
み合わせで、3成分の薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する薬剤を単に動物に
投与する。従って、これらの薬剤は、有効な量で、そしてそれらの腫瘍血管系内
の組み合わされた存在および腫瘍環境におけるそれらの組み合わせ作用を生じる
に有効な期間にわたり提供される。この目的を達成するために、銅に結合し、そ
して3成分の薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する薬剤および化学療法剤を、
単一の組成物で、または異なる投与経路を用いる2つの別個の組成物としてのい
ずれかで、動物に同時に投与し得る。
【0103】 あるいは、銅に結合し、そして3成分の薬剤−銅−タンパク質複合体を形成す
る薬剤での処置を、数分から数週間の範囲の間隔で化学療法剤処置の前および後
に行い得る。化学療法薬剤、および銅に結合し、そして3成分の薬剤−銅−タン
パク質複合体を形成する薬剤が動物に別々に適用される実施態様において、当業
者は、一般に、化学療法薬剤、および銅に結合し、そして3成分の薬剤−銅−タ
ンパク質複合体を形成する薬剤が、腫瘍に対して有利に組み合わせ効果をさらに
発揮し得るように、有意な期間が各送達時の間に確実に終了しないようにする。
このような場合において、当業者は、腫瘍と両方の薬剤とを、互いを約5分〜約
1週間の間に、より好ましくは、互いを約12〜72時間の間に接触させること
が意図され、わずか約12〜48時間の遅延時間が最も好ましい。
【0104】 しかし、いくつかの状況においては、処置期間を有意に延長することが望まし
くあり得る。ここで数日(2、3、4、5、6または7日間)またはさらに数週
間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)がそれぞれの投与の間に経過す
る。さらに、上記のように、本発明の好ましい実施態様は、銅に結合し、そして
3成分の薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する薬剤を、数回の化学療法の間に
、または化学療法後の維持レジメンにおいて投与することである。従って、銅に
結合し、そして3成分の薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する薬剤および/ま
たは化学療法剤のいずれかの1回を超える投与が望ましいこともまた想到される
。腫瘍退縮を達成するために、投与の時期には関係なく、その増殖を阻害するに
有効な組み合わせ量で両方の薬剤が送達される。
【0105】 種々の化合療法剤が、本明細書中に開示される組み合わせ処置方法において有
用であることが意図される。例示的な種々の化学療法剤としては、例えば、エト
ポシド(VP−16)、アドリアマイシン、5−フルオロウラシル(5FU)、
カンプトセシン(camptothecin)、アクチノマイシン−D、マイト
マイシン−C、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセルおよびさらに過
酸化水素が挙げられる。当業者に理解されるように、化学療法剤の適切な用量は
、一般に、化学療法剤が単独で、または他の化学療法剤との組み合わせで投与さ
れる臨床治療において既に利用された用量周辺である。
【0106】 さらに有用な薬剤としては、DNA複製、有糸分裂および染色体分離を妨げる
化合物が挙げられる。このような化学療法化合物としては、アドリアマイシン、
(ドキソルビシンとしてもまた公知である)、エトポシド、ベラパミル、ポドフ
ィロトキシンなどが挙げられる。新生物の処置のための臨床設定において広範に
使用される場合、これらの化合物は、アドリアマシンに関しては、21日の間隔
で25〜75mg/m2の範囲の用量でボーラス注射により静脈内に、エトポシ
ドに関しては、35〜50mg/m2まで、静脈内にもしくは静脈内用量の2倍
が経口的に投与される。
【0107】 ポリヌクレオチド前駆体の合成および忠実度を破壊する薬剤もまた使用され得
る。広範な試験を受けた薬剤および容易に利用可能な薬剤が特に有用である。こ
のようにして、5−フルオロウラシル(5−FU)のような薬剤は、新生物組織
により優先的に使用され、このことは、この薬剤を新生物細胞に標的化するに特
に有用にしている。非常に毒性ではあるが、5−FUは、広範なキャリアに適用
可能である。しかし、3〜15mg/kg/日の範囲の用量での静脈内投与(局
所的を含む)が一般に使用される。
【0108】 組み合わせ治療に関して有用な例示的な化学療法剤は、表1に列挙される。そ
こに列挙される薬剤の各々は、例示であって、限定するものではない。当業者は
、「Remington’s Pharmaceutical Science
s」第15版、第33章、特に624〜652頁に指示される。投薬量における
いくらかのバリエーションは、処置される被験体の状態に依存して必然的に生じ
る。投与に責任のある人は、いずれにしても、個々の被験体にとって適切な用量
を決定する。さらに、ヒト投与に関しては、生物学的基準についてFDA当局に
よって要求されるように、調製物は、無菌性、発熱性、全般的安全性および純度
の基準を満たすべきである。
【0109】
【表1】 (C.抗脈管形成) 用語「脈管形成」とは、一般に、組織または器官中への新しい血管の生成をい
う。通常の生理条件下では、ヒトまたは動物は、非常に制限された特定の状況に
おいてのみ脈管形成を受ける。例えば、脈管形成は、通常、黄体、子宮内膜およ
び胎盤の創傷治癒、胎児および胚の発生および形成において観察される。
【0110】 制御された脈管形成および制御されていない脈管形成の両方は、同様の様式で
進行すると考えられる。基底膜に囲まれた内皮細胞および周皮細胞は、毛細血管
を形成する。脈管形成は、内皮細胞および白血球により放出される酵素により基
底膜の侵食を伴って開始する。次いで、血管の管腔に沿う内皮細胞は、基底膜を
通じて突出する。脈管形成刺激剤は、内皮細胞が侵食された基底膜を通じて移動
することを誘導する。移動している細胞は、親血管から「発芽」を形成し、この
とき内皮細胞は、有糸分裂を経て、そして増殖する。内皮の発芽は、互いに一緒
になって毛細管ループを形成し、これにより新しい血管が生成する。
【0111】 持続的な制御されていない脈管形成は、腫瘍転位の間に生じる。従って、銅を
結合し、そして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、本発明
の薬剤は、さらなる「抗脈管形成」治療と組み合わされて使用され得る。脈管形
成を阻害する際の使用のための好ましい成分は、「アンジオスタチン」と呼ばれ
るタンパク質である。この成分は、米国特許第5,776,704号;同第5,
639,725号および同第5,733,876号(各々が参考として本明細書
中に援用される)に開示される。アンジオスタチンは、還元ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動により決定される、約38kDaと約45kDaとの間の分子量を
有するタンパク質であり、これは、プラスミノーゲン分子のKringle領域
1〜4をほぼ含む。アンジオスタチンは、一般に、インタクトなマウスプラスミ
ノーゲン分子のアミノ酸番号98で始まるマウスプラスミノーゲンのフラグメン
トのアミノ酸配列と実質的に同様のアミノ酸配列を有する。
【0112】 アンジオスタチンのアミノ酸配列は、種の間でわずかに変動する。例えば、ヒ
トアンジオスタチンでは、このアミノ酸配列は、上記のマウスプラスミノーゲン
フラグメントの配列と実質的に同じであるが、活性なヒトアンジオスタチン配列
は、インタクトなヒトプラスミノーゲンアミノ酸配列のアミノ酸番号97または
99のいずれかで開始し得る。さらに、ヒトプラスミノーゲンが使用され得る。
なぜなら、これは、マウス腫瘍モデルで示されるように、同様の抗脈管形成活性
を有するからである。
【0113】 特異的な脈管形成インヒビター(抗侵襲性薬剤、レチノイン酸およびパクリタ
キセル(米国特許第5,716,981号;本明細書中に参考として援用される
);AGM−1470(Ingberら、1990;本明細書中に参考として援
用される);サメ軟骨抽出物(米国特許第5,618,925号;本明細書中に
参考として援用される);アニオン性ポリアミドまたはポリウレアポリマー(米
国特許第5,593,664号;本明細書中に参考として援用される);オキシ
ンドール(oxindole)誘導体(米国特許第5,576,330号;本明
細書中に参考として援用される);エストラジオール誘導体(米国特許第5,5
04,074号;本明細書中に参考として援用される);およびチアゾロピリミ
ジン誘導体(米国特許第5,599,813号;本明細書中に参考として援用さ
れる)を含むがこれらに限定されない)もまた、本発明の組合せられた使用のた
めの抗脈管形成組成物としての使用に意図される。
【0114】 (D.アポトーシス誘導剤) 銅を結合し、そして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、
本発明の薬剤もまた、腫瘍内の任意の細胞(腫瘍細胞および腫瘍血管内皮細胞を
含む)においてアポトーシスを誘導する処置方法と組み合わされ得る。多くの抗
癌剤が、それらの作用機構の一部として、アポトーシス誘導効果を有し得るが、
特定の薬剤は、以下に記載されるように、主な機構としてこれで発見、設計、ま
たは選択されている。
【0115】 多くの癌遺伝子は、アポトーシス、すなわちプログラムされた細胞死を阻害す
ることが記載されている。このカテゴリーにおける例示的な癌遺伝子には、bc
r−abl、bcl−2(bcl−1とは異なる、サイクリンD1;GenBn
k登録番号M14745、X06487;米国特許第5,650,491号;お
よび同第5,539,094号;各々が参考として本明細書中に援用される)な
らびにファミリーのメンバー(Bcl−xl、Mcl−1、Bak、A1、A2
0を含む)が挙げられるがこれらに制限されない。bcl−2の過剰発現は、T
細胞リンパ腫で初めて発見された。bcl−2は、Bax(アポトーシス経路に
おけるタンパク質)を結合し、かつ不活性化することによって癌遺伝子として機
能する。bcl−2機能の阻害は、Baxの不活性化を妨げ、そしてアポトーシ
ス経路が進行することを可能にする。従って、例えば、アンチセンスヌクレオチ
ド配列を使用する、このクラスの癌遺伝子の阻害は、アポトーシスの増強が所望
される局面において、本発明における使用に意図される(米国特許第5,650
,491号;同第5,539,094号;および同第5,583,034号;各
々が参考として本明細書中に援用される)。
【0116】 癌の多くの形態が、腫瘍抑制遺伝子(例えば、p53)における変異を報告し
た。p53の不活性化は、アポトーシスを促進しない。この不全に関して、癌細
胞は、細胞死に運命付けられるのではなく、腫瘍形成を進行する。従って、腫瘍
サプレッサーの供給もまた、細胞死を刺激するために、本発明における使用に意
図される。例示的な腫瘍サプレッサーには、p53、網膜芽腫遺伝子(Rb)、
ウィルムス腫(WT1)、baxα、インターロイキン−1b−変換酵素および
ファミリー、MEN−1遺伝子、神経線維腫症1型(NF1)、cdkインヒビ
ターp16、結腸直腸癌遺伝子(DCC)、家族性腺腫ポリポーシス(fami
lial adenomatosis polyposis)遺伝子(FAP)
、多発性腫瘍(multiple tumor)サプレッサー遺伝子(MTS−
1)、BRCA1およびBRCA2が挙げられるがこれらに限定されない。
【0117】 p53遺伝子(米国特許第5,747,469号;同第5,677,178号
;および同第5,756,455号;各々が参考として本明細書中に援用される
)、網膜芽腫遺伝子、BRCA1遺伝子(米国特許第5,750,400号;同
第5,654,155号;同第5,710,001号;同第5,756,294
号;同第5,709,999号;同第5,693,473号;同第5,753,
441号;同第5,622,829号;および同第5,747,282号;各々
が参考として本明細書中に援用される)、MEN−1遺伝子(GenBank登
録番号U93236)ならびにアデノウイルスE1A遺伝子(米国特許第5,7
76,743号;本明細書中に参考として援用される)が、使用のために好まし
い。
【0118】 使用され得る他の組成物には、TRAILと呼ばれる腫瘍壊死因子関連アポト
ーシス誘導リガンドをコードする遺伝子、およびTRAILポリペプチド(米国
特許第5,763,233号;参考として本明細書中に援用される);米国特許
第5,605,826号の24kDaアポトーシス関連プロテアーゼ(本明細書
中に参考として援用される);Fas関連因子1(FAF1)(米国特許第5,
750,653号;本明細書中に参考として援用される)が挙げられる。アポト
ーシスを刺激することが報告されている、インターロイキン−1β−変換酵素お
よびファミリーメンバーの提供もまた、本発明のこれらの局面における使用に意
図される。
【0119】 カルボスチリル(carbostyril)誘導体(米国特許第5,672,
603号;および同第5,464,833号;各々が参考として本明細書中に援
用される);分枝型アポゲニック(apogenic)ペプチド(米国特許第5
,591,717号;本明細書中に参考として援用される);ホスホチロシンイ
ンヒビターおよび非加水分解性ホスホチロシンアナログ(米国特許第5,565
,491号;および同第5,693,627号;各々が本明細書中に参考として
援用される);RXRレチノイドレセプターのアゴニスト(米国特許第5,39
9,586号;本明細書中に参考として援用される);ならびにさらに抗酸化剤
(米国特許第5,571,523号;本明細書中に参考として援用される)のよ
うな化合物もまた、使用され得る。チロシンキナーゼインヒビター(例えば、ゲ
ニステイン)もまた、細胞表面レセプターを標的とするリガンドに連結され得る
(米国特許第5,587,459号;本明細書中に参考として援用される)。
【0120】 (IV.薬学的組成物およびキット) 本発明の薬学的組成物は、一般に、銅を結合し、そして薬剤−銅−タンパク質
の3つからなる複合体を形成する、有効量の薬剤(例えば、テトラチオモリブデ
ート)を含み、これは、薬学的に受容可能なキャリアまたは水性媒体中に溶解ま
たは分散される。
【0121】 句「薬学的または薬理学的に受容可能」とは、適切に動物またはヒトに投与さ
れた場合に、有害な反応、アレルギー反応または他の所望されない反応を生じな
い分子実体および組成物をいう。本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容
可能なキャリア」は、任意および全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤
および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質に対
するこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の
従来の媒体または薬剤が活性成分と非適合性であることを除いて、治療組成物に
おけるその使用が意図される。補助的な活性成分もまた、これらの組成物中に取
り込まれ得る。
【0122】 (A.非経口処方物) 銅を結合し、そして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、
本発明の薬剤(例えば、テトラチオモリブデート)は、しばしば、非経口投与の
ために処方される(例えば、腫瘍または疾患部位中への直接的な点滴注入を含む
、静脈内、筋肉内、皮下、または他のこのような経路を介する注射のために処方
される)。銅を結合し、そして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形
成する1以上の薬剤を活性成分として含む水性組成物の調製は、本発明の開示を
鑑みて当業者に公知である。代表的には、このような組成物は、液体溶液または
懸濁液のいずれかのように注射用として調製され得;注射前に、液体を添加して
溶液または懸濁液を調製するために使用するに適切な固体形態もまた、調製され
得;そしてこの調製物もまた、乳化され得る。
【0123】 遊離塩基としての活性な化合物または薬理学的に受容可能な塩の溶液は、界面
活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)と適切に混合されて、水中で
調製され得る。分散剤もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、な
らびにそれらの混合液および油中で調製され得る。貯蔵および使用の通常の条件
下で、これらの調製物は、微生物の増殖を予防するために保存剤を含む。
【0124】 注射用途に適切な薬学的形態は、滅菌水溶液または分散剤;ゴマ油、ピーナッ
ツ油または水性プロピレングリコールを含む処方物;および滅菌注射溶液または
分散剤の即時調製物のための滅菌粉末を含む。全ての場合において、この形態は
、無菌でなければならず、かつ容易な注射能力(syringability)
が存在する程度まで流動性でなければならない。これは、製造および貯蔵の条件
下で安定でなけらばならず、そして微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作
用に対して保護されなけらばならない。
【0125】 銅を結合し、そして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、
本発明の薬剤(例えば、テトラチオモリブデート)を含む組成物は、中性または
塩形態における組成物中に処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、酸付加塩(
このタンパク質の遊離アミノ基で形成される)を含み、これは、無機塩(例えば
、塩酸またはリン酸)あるいは有機塩(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マン
デル酸)などと形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩もまた、無機塩
(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化鉄
(II))および有機塩(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒ
スチジン、プロカインなど)から誘導され得る。
【0126】 キャリアもまた、溶媒または分散媒体(例えば、水、エタノール、ポリオール
(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリ
コールなど)、それらの適切な混合物、ならびに植物油を含む)であり得る。適
切な流動性は、例えば、コーティングの使用(例えば、レシチン)によって、分
散剤の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使
用によって維持され得る。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤
(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサー
ルなど)によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖または塩化
ナトリウム)を含むことが好ましい。注射用組成物の延長した吸収は、吸収を遅
延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の組成
物における使用によってもたらされ得る。
【0127】 滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中に必要とされる量で活性化合物を取り込ませ
、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、懸濁剤は、種々の滅菌
活性成分を、基本的な分散媒体および上記に列挙された必要とされる他の成分を
含む滅菌ビヒクル中に取り込ませることによって調製され得る。滅菌注射用溶液
の調製のための滅菌粉末の場合では、調製の好ましい方法は、真空乾燥技術およ
び凍結乾燥技術であり、これは、予め滅菌濾過されたその溶液からの活性成分お
よび任意のさらなる所望される成分の粉末を生じる。
【0128】 処方の際に、溶液は、投薬処方物と適合性の様式で、かつ治療的有効量で投与
される。処方物は、種々の投薬形態(例えば、上記の注射用溶液の形態)にて容
易に投与されるが、薬物放出カプセルなどもまた、用いられ得る。
【0129】 本発明に従う適切な薬学的組成物は、一般に、銅を結合し、そして薬剤−銅−
タンパク質の3つからなる複合体を形成する本発明の薬剤(例えば、テトラチオ
モリブデート)の量の1以上を、受容可能な薬学的希釈剤または賦形剤(例えば
、滅菌水溶液)と混合して含み、意図された使用に依存して最終濃度の範囲を与
える。調製技術は、Remington’s Pharmaceutical
Sciences、16版、Mack Pubilishing Compan
y、1980(本明細書中に参考として援用される)に例示されるように、一般
に、当該分野において周知である。エンドトキシン汚染は、安全なレベル(例え
ば、0.5ng/mgタンパク質未満)で最小限に維持されるべきであることが
理解されるべきである。さらに、ヒト投与について、調製物は、生物学的標準に
ついてFDA当局により要求されるような、無菌性、発熱性、一般的な安全性お
よび純度の基準を満たすべきである。
【0130】 治療的な有効用量は、本明細書中に詳述される研究において示されるように、
動物モデルを使用して容易に決定可能である。固形腫瘍を有する実験動物は、し
ばしば、臨床環境に移す前に、適切な治療用量を最適化するために使用される。
このようなモデルは、効果的な抗癌ストラテジーを予想する際に非常に確かであ
ることが公知である。例えば、実施例2で使用されるような、固形腫瘍を保有す
るマウスは、前臨床試験に広範に使用される。本発明者らは、最小の毒性で有益
な抗腫瘍効果を生じる薬剤(例えば、テトラチオモリブデート)の作用範囲を決
定するために、このような当該分野で受け入れられているマウスモデルを使用し
た。
【0131】 非経口投与(例えば、静脈内注射または筋肉内注射)に処方される化合物に加
えて、他の薬学的に受容可能な形態(例えば、経口投与に関して錠剤または他の
固体、時限放出カプセル、リポソーム形態など)もまた、意図される。他の薬学
的処方物もまた、処置される状態に依存して使用され得る。例えば、局所処方物
は、病的状態(例えば、皮膚炎および乾癬)を処置するために適切であり得;そ
して眼処方物は、糖尿病網膜症のような状態に適切であり得る。当然に、これら
のような状態に最適な投薬量を決定するための方法は、本明細書に開示された最
適化された投薬量方法論、および当業者の知識を鑑みて、当業者に明らかである
【0132】 本明細書中に詳細に記載されるように、特定の有益性は、銅を結合しそして薬
剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、本発明の薬剤(例えば、
テトラチオモリブデート)の操作から生じ、このことは、より長期のインビボ半
減期をこれらに提供する。徐放性処方物は、一般に、長期間にわたって一定の薬
物レベルを与えるように設計される。薬物(例えば、銅を結合し、そして薬剤−
銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、本発明の薬剤(例えば、テト
ラチオモリブデート))の半減期の増大は、投与の際に、高い血漿レベル(この
レベルは、長期間維持されるが、このレベルは、一般に、この構築物の薬物動態
に依存して分解する)を生じることが意図される。現在は好ましくないが、本発
明の組成物およびその組合せの徐放性処方物は、本発明における使用から決して
除外されない。
【0133】 (B.治療キット) 本発明はまた、治療キットを提供し、これには、本明細書中に記載される、銅
を結合し、そして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する、本発
明の薬剤(例えば、テトラチオモリブデート)が含まれる。このようなキットは
、一般に、本発明に従う、銅を結合しそして薬剤−銅−タンパク質の3つからな
る複合体を形成する少なくとも1つの薬剤(例えば、テトラチオモリブデート)
の薬学的に受容可能な処方物を、適切な容器手段で含む。このキットはまた、他
の薬学的に受容可能な処方物(例えば、任意の1以上の範囲の化学療法剤)を含
む。
【0134】 このキットは、さらなる任意の成分を含みまたは含まずに、銅を結合しそして
薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複合体を形成する薬剤(例えば、テトラチ
オモリブデート)を含む1個の容器手段を有し得るか、あるいは各々の所望され
る薬剤に対して異なる容器手段を有し得る。本発明の特定の好ましいキットは、
第2の抗癌剤(例えば、化学療法剤、放射線療法剤、異なる銅キレート剤、抗脈
管形成剤、またはアポトーシス誘導剤)の共投与と組み合わされる使用のために
キット中に包装された、銅を結合しそして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる
複合体を形成する薬剤(例えば、テトラチオモリブデート)を含む。このような
キットにおいて、この成分は、モル当量の組合せで、または他方の成分の過剰下
で1つの成分とともにのいずれかで予め複合体化され得るか、あるいはこのキッ
トの各々の成分は、患者への投与前に異なる容器内に別々に維持され得る。
【0135】 このキットの成分が、1以上の液体溶液で提供される場合、この液体溶液は、
水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。しかし、このキットの成分は、乾燥
粉末として提供され得る。試薬または成分が乾燥粉末として提供される場合、こ
の粉末は、適切な溶媒の添加によって再構成され得る。この溶媒もまた、別の容
器手段で提供され得ることが想定される。このキットの成分のうちの1つは、経
口投与のためのカプセルで提供され得る。
【0136】 このキットの容器手段は、銅を結合しそして薬剤−銅−タンパク質の3つから
なる複合体を形成する薬剤(例えば、テトラモリブデート)、ならびに任意の他
の所望される薬剤が配置され得、そして好ましくは適切にアリコートされる、少
なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容
器手段を含む。さらなる成分が含まれる場合、このキットはまた、一般に、これ
らが配置される第2のバイアルまたは他の容器を含み、このことは、別々に設計
された用量の投与を可能にする。このキットはまた、無菌の薬学的に受容可能な
緩衝液または他の希釈剤を含むために、第2/第3の容器手段を含み得る。
【0137】 このキットはまた、銅を結合しそして薬剤−銅−タンパク質の3つからなる複
合体を形成する薬剤(例えば、テトラモリブデート)を、例えば、1以上の針も
しくはシリンジ、または眼への液滴、ピペット、あるいはこの処方物が動物中に
注射され得るかまたは身体の疾患領域に適用され得る他のこのような装置によっ
て、動物または患者に投与する手段を含み得る。本発明のキットはまた、代表的
には、例えば、所望のバイアルおよび他の装置が配置および保持される注射また
は打撃成形プラスチック容器のような、商業的販売のために密着させて拘束して
、バイアル、またはそのようなものを含むための手段、および他の要素を含む。
【0138】 (V.癌および処置) 本発明により提供される組成物および方法は、血管成分を有する任意の悪性腫
瘍の処置に対して広範に適用可能である。代表的な血管新生化腫瘍は、固形腫瘍
(特に、癌および肉腫)であり、これは、酸素および栄養素の供給のための血管
成分を必要とする。血液学的な悪性疾患はまた、発達のために新脈管形成を必要
とするように思われ、従って、即時銅低下剤を用いる処置にも潜在的に敏感であ
る。本発明を使用して処置され得る模範的な固形腫瘍には、肺、乳房、卵巣、胃
、膵臓、喉頭、食道、精巣、肝臓、耳下腺、胆道、結腸、直腸、頚部、子宮、子
宮内膜、腎臓、膀胱、前立腺、甲状腺の主要な悪性腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小
細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫および軟骨
肉腫)などが挙げられるか、これらに限定されない。転移性腫瘍もまた、本発明
の方法および組成物を使用して処置し得る。
【0139】 本発明は、固形腫瘍を提示する任意の患者の処置における使用について意図さ
れる。しかし、ここにおいて、本発明は、中程度のサイズまたは大きなサイズの
固形腫瘍の処置において特に成功しており、これらのカテゴリーの患者はおそら
く、本明細書中に提供される方法および組成物に従う処置からより顕著な利益を
受ける。一般的に、本発明を使用し、約0.3〜0.5cm以上の腫瘍を処置し
得るが、ヒトにおいて見出される最大の腫瘍まで、および最大の腫瘍を含む腫瘍
もまた、処置され得る。
【0140】 本発明の特定の局面において、テトラチオモリブデートのような薬剤は、防止
的または予防的処置および維持薬剤として意図される。本発明の外延のこの局面
に基礎をなす多くの理由が存在する。例えば、中程度の大きさ以上の原発性腫瘍
を提示する患者もまた、小サイズか、さらに転移性腫瘍シーディングの初期段階
にあるとさえ考えられる種々の他の転移性腫瘍を有し得る。本発明のTMおよび
組み合わせが通常に経口投与されるか、または患者の体循環に投与されると仮定
すると、本発明のTMおよび組み合わせは、二次的に、より小さくかつ転移性の
腫瘍に自然に影響を及ぼすが、これはこの処置の第1の目的ではないかもしれな
い。さらに、全体としての腫瘍塊が単一性の小さい腫瘍である状況においてでさ
え、特定の有益な抗腫瘍効果が、本処置の使用より生じる。
【0141】 本明細書中に提供される、本発明に関係する使用のための最も適切な患者に関
するガイダンスは、特定の患者のプロファイルが患者(本発明により処置され得
るか、またはおそらく、他の抗癌処置ストラテジーを使用してより良好に処置さ
れ得る患者)の選択を援助し得る教示として意図される。それにもかかわらず、
好ましいかまたはさもなくばより効果的な処置が、特定のカテゴリーの患者との
関連において認知され存在するという事実は、血管化腫瘍を有するすべての患者
の処置に関連する本発明の基本的な有用性をいずれにしても否定しない。さらな
る考慮は、腫瘍に対する初期の攻撃(本発明の治療法により提供されるような)
は、任意の測定可能かつ即効的な効果において小さいものとなり得るが、さらな
る治療的処置に対して腫瘍を感作させるかまたは効果を高めさせ得、その結果、
後の処置が全体的な相乗効果を生じ、さらに全体的な寛解または治癒に導くとい
う事実である。
【0142】 任意の特定のタイプの腫瘍を、本発明を使用する処置から除外すべきであると
は考えられない。本発明の方法論は、すべての固形腫瘍の処置に対して広範にま
たは全体的に適用可能であり、腫瘍細胞それ自体の特定の表現型または遺伝子型
とは無関係である。しかし、このタイプの腫瘍細胞は、2次的な治療薬剤との組
み合わせた本発明の使用と関連し得る。
【0143】 当業者は、特定のタイプの腫瘍が、本発明を使用して腫瘍停滞、腫瘍後退、お
よび腫瘍壊死さえの誘導がより受け入れられ得ることを理解する。実験動物にお
いてこの事象が観察され、ヒトの処置においても発生し得る。実験動物における
前臨床研究と任意の特定の患者または患者のグループを処置する際の使用のため
の投薬量を最適化することにおける前臨床研究の両方を実施する際に、このよう
な意図を考慮に入れる。
【0144】 本明細書中に詳述されるように、臨床的処置の行為の前の前臨床試験に関連す
るガイドラインとして使用され得る現実的な目的が存在する。しかし、この目的
は、全体的な有用性よりも費用効果がより重要であり、そして最も有利な化合物
および用量を選択するための機構である。基本的な有用性に関しては、任意の一
貫した抗腫瘍効果を生じる任意の構築物またはそれらの組み合わせは、さらに有
用な発明を定義する。即製の組成物およびそれらの組み合わせの抗腫瘍効果が、
その範囲の下限に向かっているという状況においてもなお、この治療法が特定の
腫瘍標的の背景において公知である他のすべての治療法となお等しく効果的であ
り得るか、またはさらにより効果的であり得るということも理解される。臨床家
にとって、特定の腫瘍が、中期または長期にわたって効果的に処置され得ないこ
とは不幸にも明らかであるが、そのことは本治療法の有用性を否定するものでは
なく、特に、それが一般的に提案される他のストラテジーと大体同程度に効果的
である場合、すなわちそれは、従来の他のすべてのストラテジーが失敗に終わっ
た後、効果的になり得る。この治療法に対する抵抗性が発達することは予想され
ない。
【0145】 銅に結合し、そして3成分(薬剤−銅−タンパク質)からなる複合体を形成す
る薬剤、およびそれとの組み合わせの、適切な薬剤の用量を設計する際に、臨床
投与のための適切な投与量に到達するために本明細書中に記載された動物研究か
ら容易に推測し得る。この転換を達成するために、実験動物の1単位量あたりに
投与される薬剤の量を計算し、そしてさらに、実験動物とヒト患者との間の体表
面積の違いを計算する。このようなすべての計算は、当業者に周知であり、そし
て慣用的である。従って、本明細書中に提供される情報を使用して、本発明者ら
は、ヒト投与に使用するために、銅に結合し、そして3成分(薬剤−銅−タンパ
ク質)からなる複合体を形成する(例えば、テトラチオモリブデート)薬剤の有
用な毎日の投薬量が、1日あたり1患者あたり、約20mgと約200mgの間
であることが意図される。明言されたこの範囲にかかわらず、所定のパラメータ
ーおよび上記で表された詳細なガイダンス、活性なまたは最適な範囲のさらなる
変動は、なおも本発明に含まれることが理解される。
【0146】 従って、意図される毎日の投薬量は、通常は約20mgと約180mgとの間
;約130mgと約200mgとの間;25mgと約160mgとの間;50m
gと約150mgとの間;約150mgと約180mgとの間;約30mgと約
125mgとの間;約40mgと約100mgとの間;約35mgと約80mg
との間;約140mgと約190mgとの間;約20mgと約65mgとの間;
約125mgと約195mgとの間;約30mgと約50mgとの間;約150
mgと約200mgとの間;または前記に列挙された模範的な投薬量のいずれか
を使用する任意の特定の範囲内もしくは特定の決められた範囲の間の任意の中間
値である。
【0147】 およそ約60〜120mg以内またはその付近の投薬量が、本発明の特定の実
施態様において現在は好ましいが、およそ約125〜200mg以内またはその
付近の投薬量が、本発明の他の実施態様において現在は好ましく、より少ない投
与量が、他の薬剤との組み合わせにおいて、または維持の状態下でより適切であ
り、そして多くの投与量がさらに許容され得ることが理解され、特に、本発明に
おける使用のために銅に結合し、そして3成分(薬剤−銅−タンパク質)複合体
を形成する薬剤それ自体は細胞毒性ではないという事実を考えると、たとえ有害
な副作用が生じたとしても、このことは、必ずしも通常の恒常性機構により中和
され得ない毒性を生じたということではなく、これは健常組織に対する有意な毒
性の可能性を減少したと考えられる。
【0148】 本発明の特定の好ましい実施態様において、毎日、約130mgまたは約15
0mgかそこらから約180mgまたは約200mgかそこらの間の負荷投与量
を約2週間患者に投与し、続いて、毎日、約30mgまたは約40mgかそこら
から約60mgまたは約70mgかそこらの間か、あるいはこの特定の決められ
た範囲の間の任意の中間値の維持投与量を患者に投与する。従って、本発明の特
定の局面において、約125mgよりも多くの、約130mgよりも多くの、約
140mgよりも多くの、約150mgよりも多くの、約155mgよりも多く
の、約160mgよりも多くの、約170mgよりも多くの、約175mgより
も多くの、約180mgよりも多くの、約190mgよりも多くの、または約2
00mgかそこらよりも多くの本明細書中に記載される最大投与量までの負荷投
与量が、発明者らによって、約1週間、約2週間、約3週間、または約4週間か
そこらの間の毎日の模範的な負荷投与量として意図され、約20mg、約25m
g、約35mg、約40mg、約50mg、約55mg、約65mg、約75m
g、約80mg、または約90mgかそこらの毎日の維持投薬量が続く。
【0149】 本発明の治療レジメの意図は、受け入れられない毒性に関連するレベルより下
の投与量を維持する一方で、最大の抗腫瘍効果を通常に生成することである。投
与量それ自体を変えることに加えて、投与レジメもまた、処置のストラテジーを
最適化するために適合され得る。現在の好ましい処置のストラテジーは、銅に結
合し、そして3成分(薬剤−銅−タンパク質)複合体またはその組み合わせを形
成する薬剤を約20mgと約200mgとの間で、1日に約3回以上、約4回以
上、約5回以上、約6回以上、食事のおよそ半分の時間および食間のおよそ半分
の時間で投与することである。彼ら自身が特定の投与量を投与する際には、好ま
しくは、だれかがその患者の全身に薬学的に受容可能な組成物を提供する。一般
的には、経口投与が好ましい。
【0150】 (VI.異常な脈管形成により特徴付けられる他の疾患) 癌および固形腫瘍の予防または処置に加えて、本明細書中に開示されるチオモ
リブデート組成物もまた、脈管形成異常に関連する他に疾患を予防または処置す
る際に使用され得、脈管形成異常には、関節炎、糖尿病、動脈硬化、動静脈の先
天異常、角膜移植性新生血管形成、遅延した創傷治癒、糖尿病性網膜症、年齢関
連黄斑変性、顆粒化、火傷、血友病関節、リウマチ様動脈炎、過形成性瘢痕、血
管新生緑内症、偽関節、骨折、オースラーウェーバー症候群、乾癬、化膿性肉芽
腫、水晶体後線維増殖、翼状膜、強皮症、トラコーマ、血管癒着、眼性新生血管
形成、寄生虫病、手術後肥大、および体毛成長阻害が挙げられるが、それらに限
定されない。
【0151】 黄斑変性は、年齢関連疾患についての共通の名前であり、ここで黄斑網膜色素
上皮細胞機能は通常よりかなり低下している。結果として、円錐体の老廃物除去
および栄養補給が損傷し、中心視の欠損を引き起こす。黄斑変性は、さらに2つ
の種類:「乾燥型」および「湿気型」に分類され得る。乾燥型黄斑変性は、光感
受性円錐体の外部セグメント(連続的に照らされる)が黄斑の色素上皮層により
消化され得ない場合に生じる。結果として、色素上皮層が膨張し、円錐体由来の
大量の未消化物質の蓄積後、結局死滅する。この老廃物の黄色の沈殿物は、脈絡
膜と色素上皮との間の網膜下で徐々に発達する。この「乾燥型」黄斑変性は、円
錐体がもはや機能しないエリアを生成して、一部の黄斑が死滅し始めた結果とし
て中枢神経の視力を漸進的にぼんやりさせるか、または部分的に暗くすることに
よって特徴付けられる視力欠損である。臨床的に、この型の疾患で苦しむ人間は
、比較的穏やかな中枢神経の視力の歪曲(直線が曲がったり、波打つように見え
る)を経験し得る。
【0152】 この障害の第2番目すなわち「湿気」型は、より厳しく、かつ突然に視力の欠
損を生じ得る。これは、異常な新しい血管または「新生血管膜」が、損傷した色
素上皮を介し、そして黄斑の下で脈絡膜より発達する場合に生じる。新生血管膜
は、壊れやすく、出血する傾向があり、このことは黄斑組織の厳しい歪曲を生じ
る。結果として、光感受性細胞(円錐体)が、その栄養源より分離され、そして
出血が長く発生したときの傷に起因するさらなる損傷を受ける。この型の障害に
関しては、中心視において暗さまたは「紛失」スポットが急速に発生し得、出血
変化に起因する警告をほとんど伴わない。幸運にも、この初期過程におけるレー
ザー治療の介入が、さらなる視力欠損を予防し得る。
【0153】 年齢関連黄斑変性(AMD)は、西洋諸国の65歳以上の成人の間の視力欠損
の主要な原因である。新生血管性AMDは、すべてのケースのわずか10%を占
めるにすぎないが、この疾患に起因する法律上の盲目の80%〜90%はそれが
原因であり、この年齢集団の脈絡膜の新生血管形成(CNV)のほとんど共通の
原因である。CNVへ導く病理学上の変化は、神経感覚網膜の2次的関与ととも
に、脈絡毛細管板(choriocapilaris)、Bruch膜、および
網膜色素上皮(RPE)における組織の複合体に関与する。本質的に、網膜色素
上皮およびBruch膜を変化させるどのようなものでもCNVを引き起こし得
る。
【0154】 AMD以外の種々の状態がCNV(眼性ヒストプラズマ症候群(POHS)、
病的近視、網膜色素線条、および特発的な原因を含む)と関連している。ほとん
どの組織病理学的研究が、AMDを有する眼球について実施されてきた。CNV
を発達させる多くの眼球に共通する組織病理学的特徴は、Bruch膜の破壊で
ある。毛細血管様新生血管形成は、脈絡膜血管より生じ、そして破壊のいたる所
に伸長する。年齢関連黄斑変性は、CNVを有する患者の最も大きな群を占める
。ほとんどのCNVの徴候はサブホビール(subfoveal)であり、そし
て極端に乏しい自然の病歴を実証する。サブホビール新生血管形成は、ホビール
(foveal)無血管ゾーン(FAZ)の幾何的な中心の下に位置する病変と
して定義される。黄斑光凝固研究(MPS)における2年間未処理の眼から、8
8%が、20/200またはそれよりも悪い最終の視覚活性を有したのに対し、
わずか5%のみが、20/100よりも良い最終の視覚活性を有した。
【0155】 レーザー光凝固は、脈絡膜新生血管形成に対する治療の主流であった。良好に
実行され、無作為化され、見込みのある一連の臨床試験を介して、種々の設定に
おけるCVNについての観察にわたってMPSの光凝固の優位性を確立した。特
に、AMDおよび他の障害におけるホビール外の新生血管膜およびホビール近傍
の新生血管膜の光凝固処置が、未処置群と比較して有益であることが見出された
。しかし、CNVの全体エリアを処置するために、眼科医は、脈絡膜新生血管膜
の境界を同定できるようになるべきである。従って、CNVの境界がよく区別さ
れる場合においてのみ、処置が指示される。不幸にも、潜在的またははっきりし
ない新しい血管が、AMDの浸出性の黄斑病変についての症状において最も共通
するパターンである。1つの研究において、可視または規範となる新生血管膜が
、処置について言及されたわずか23%の眼だけに関与した。最近、MPSは、
レーザー処置の有益性を示すAMDにおけるサブホビール新生血管病変に対する
光凝固の結果を報告したが、処置群と観察群との間の違いは小さく、2年および
5年後に見られただけであった。また、レーザーエネルギーは網膜と網膜下膜の
両方を破壊し、処置に関連する視覚活性において険しい落差が存在した。これら
の結果は、乏しい自然の病歴の状態および処置様式としての光凝固の限界の両方
を強調する。
【0156】 角膜の新生血管形成に関連する他の疾患には、流行性角結膜炎、ビタミンA欠
乏、コンタクトレンズ長時間使用、アトピー性角膜炎、上輪部角結膜炎、翼状角
膜炎乾燥、シューグレン、しゅさ性挫瘡、phylectenulosis、梅
毒、放線菌感染、脂質変性、化学的熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペ
ス感染、帯状ヘルペス感染、原生動物感染、カポージ肉腫、モレーン潰瘍、テリ
エン辺縁変性、辺縁角膜炎(mariginal keratolysis)、
慢性関節リウマチ、全身性狼瘡、多発性動脈炎、外傷、ウェゲナー類肉腫症、強
膜炎、スティーブン−ジョンソン病、periphigoid radial
keratotomy、およびcorneal graph rejectio
nが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】 網膜/脈絡膜新生血管形成に関連する疾患には、糖尿病性網膜症、黄斑変性、
鎌状赤血球貧血、類肉腫、梅毒、弾性線維性仮黄色腫、パジェット病、静脈閉塞
、動脈閉塞、頚動脈閉塞疾患、慢性のブドウ膜炎/vitritis、放線菌感
染、ライム病、全身性エリテマトーテス、未熟児網膜症、イールズ病、Bech
ets病、網膜炎または脈絡膜炎を引き起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、
ベスト病、近視、optic pits、Stargarts病、pars p
lanitis、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷、お
よびレーザー後の合併症が挙げられるが、これらに限定されない。他の疾患には
、ルベオーシス(アングルの新生血管形成)に関連する疾患、および線維性血管
または線維組織(増殖性硝子体網膜症のすべての形態を含む)の異常増殖により
引き起こされる疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】 新脈管形成が関与するものと考えられる別の疾患は、リウマチ様動脈炎である
。リウマチ様動脈炎は、拡散性および結節状の単核細胞浸透ならびに間質の結合
組織の塊状過形成により特徴付けられ、線維芽様細胞および新しい血管を含む。
接合部の滑膜の裏打ちされる血管が、新脈管形成を起こす。新しい血管ネットワ
ークの形成に加えて、内皮細胞が因子および活性酸素種(パンヌス増殖および軟
骨破壊を導く)を放出する。新脈管形成に関与する因子は、リウマチ様動脈炎の
慢性的な炎症状態に活動的に寄与し得、そして維持を補助し得る。
【0159】 新脈管形成に関与する因子はまた、変形性関節症において役割を有し得る。脈
管形成関連因子による軟骨細胞の活性化は、その接合部の破壊に寄与する。後の
段階において、脈管形成因子は、新しい骨形成を促進する。慢性的な炎症はまた
、病理学的な新脈管形成に関与する。潰瘍性大腸炎およびクローン病のような疾
患の状態は、炎症組織への新しい血管の内殖とともに、組織学的変化を示す。バ
ルトネラ症(南アメリカにおいて見出された細菌感染)は、血管内皮細胞の増殖
により特徴付けられる慢性段階を生じ得る。新脈管形成に関連する別の病理学的
役割が、アテローム性動脈硬化症において見いだされる。血管の内腔内に形成さ
れたプラークが、脈管形成刺激活性を有することが示された。
【0160】 (VII.ウィルソン病) (A.背景) ウィルソン病は、銅代謝の常染色体性劣性障害である。この障害において、銅
の胆汁への排出が欠損しているように見え、そして銅のセルロプラスミンへの肝
臓への取り込みの減少が存在し、血漿およびほとんどの体組織中に銅の蓄積を導
く。普通、ウィルソン病は、肝機能不全および/または神経性機能不全を導く。
【0161】 ウィルソン病の治療法は、広範に2つのカテゴリーに分割され得る(Brew
erおよびYuzbasiyan−Gurkan、1992a)。これらの方法
は、急性病患者における初期の治療法であり、かつ維持治療である。初期治療は
新たな提示患者が、なおも急性の銅の毒性で苦しむ時間の期間であり、一般的に
治療の最初の数週間から数ヶ月である。本質的に、維持治療は、患者の残りの人
生であるか、または銅レベルを準毒性閾値まで下げられた後の時間の期間であり
、そして患者は単に、銅の蓄積および銅の毒性の再発を予防するために治療する
【0162】 ウィルソン病の治療の維持のために、現在、3つの薬物が入手可能である。3
つの薬剤は、最も古い入手可能な薬物であるペニシラミン(Walshe、19
56)、ペニシラミンに不耐性の患者のために開発されたトリエンまたはトリエ
ンチンと呼ばれた薬物、(Walshe、1982)、および亜鉛酢酸(Bre
werおよびYuzbasiyan−Gurkan、1992a、b;Brew
erら、1983;Hillら、1987;Hillら、1986;Brewe
rら、1987b、c、d;Yuzbasiyan−Gurkanら、1989
;Brewerら、1989;Leeら、1989;Brewerら、1990
;Brewerら、1991b;BrewerおよびYuzbasiyan−G
urkan、1989;Brewerら、1992a、b;Yuzbasiya
n−Gurkanら、1992;Brewerら、1993a、b、c、d;B
rewerら、1993;Hoogenraadら、1978;Hoogenr
aadら、1979;Hoogenraadら、1987;)を含む。亜鉛は、
かなり低いレベルの毒性とともに効果的な維持治療を提供する。
【0163】 ウィルソン病を有する患者の約2/3が、脳に関係する症状とともに存在する
(Brewerら、1992a;ScheinbergおよびSternlie
b、1984;Dank、1989)。これらの患者は神経性の症状であるか、
または、初めは精神医学的に自然であるが、後に神経性の症状を有する。これら
の患者に対する治療は、維持段階の患者に対する治療ほど全く単純ではない。本
発明者らは、ペニシラミンを処置されている患者のおよそ50%が、改善するよ
りも悪化することを見出した(Brewerら、1987a)。これらの患者の
半分がさらに悪化するか、または初めのサンプルの約25%が決してペニシラミ
ンのベースラインまで回復しない。言いかえると、ペニシラミンは付加的な不可
逆的損害を誘導する。
【0164】 おそらく、肝臓の銅の流動が、この薬物によりさらに脳の銅を上昇させるため
であろうが、このさらに悪化する機構は、確実に公知ではない。発明者らは、こ
のことは、ラットモデルにおいて発生し得ることを示した。この機構とは関係な
く、神経学的に示される患者は、初めにペニシラミンを処置された後、かなりの
頻度でもっと悪化して終わる。実際、前駆症状の患者でさえも、ペニシラミンで
始められた後は、神経性疾患を発達させ得る(Glassら、1990;Bre
werら、1994a)。この種の状況において、あまりトリエンチンが使用さ
れていないという理由により、トリエンチンが、初期治療として使用される場合
、神経学的に悪化させる事象を示すか否かは知られていない。ペニシラミンの作
用機構と類似した作用機構であるという理由で、たとえトリエンチンが、ある程
度まで、この問題を示したとしても、驚くことではないが、銅におけるその効果
がいくらか穏やかにみえるので、それはかなり少なくなり得る。
【0165】 亜鉛は、この型の患者に対する初めの処置としては理想的な薬剤ではない。亜
鉛は、比較的ゆっくりとした作用の開始を有し、そして適度のネガティブな銅平
衡のみを産生する。従って、数ヶ月の間、銅を準毒性閾値まで下げるために、亜
鉛を必要とすれば、患者はさらなる銅毒性およびその疾患をさらに悪化させる危
険におかれ得る。
【0166】 (B.TM治療の結果) 本発明者らは、過去数年間、神経学的に発症したウィルソン病患者の初期の処
置のためのTMの使用の開放標識(open label)研究を実施してきた
。本発明者らは、投与される薬物の安定性を評価するため、および投与される薬
物の効力を確認するために、薬物の活性について分光光度法およびバイオアッセ
イの両方を開発した(Brewerら、1991a;Brewerら、1994
b)。この薬物は、空気に曝される場合にゆっくりと効力を失う。酸素分子は、
硫黄分子を交換し、薬物を不活性にする。
【0167】 研究された最初の患者における結果は、いくつかの点を例証するために使用さ
れ得る。最初の7日間、この患者は、食事とともにのみ(食事とともに1日3回
(tid))TMを受けた。これは、作用の最初の機構(食事とともに与えられ
た場合、銅吸収の遮断)から予測される、即時型の負の銅バランスを生じた。最
初の7日の後、TMを、同様に食事の間に与えた(食事とともに1日3回、およ
び食間に1日3回)。これは、TMの血液への吸収から予測される、血漿中の銅
の即時型の上昇、および銅、TMおよびアルブミンの複合体の形成を誘導した。
TMおよびアルブミンと複合体化した銅は、細胞取り込みに利用可能でなく、従
って、この銅は、非毒性である(Gooneratneら、1981b)。この
複合体におけるモリブデンと銅との間には、1:1の化学両論的な関係が存在す
る。血液中のモリブデンレベル、およびセルロプラスミンレベルがわかれば(セ
ルロプラスミンもまた、非毒性である銅を含む)、どれだけの血漿中の銅が互い
に結合していないかが計算され得る。このいわゆる「遊離の銅(非セルロプラス
ミン血漿の銅)」は、潜在的に毒性の銅である。ゼロに減少する場合、血漿の銅
−モリブデン「ギャップ」は閉鎖される。これは、最初の患者において16日を
要した(食事間用量を加えた9日後)。脳(および他の器官)の遊離の銅が血液
と平衡にあるので、血液の遊離銅を低レベルに下げることは、脳の遊離の(毒性
の)銅のレベルを低下するプロセスを開始する。
【0168】 本発明者らは、ここで、開放標識研究において、総計51人のウィルソン病患
者(彼らの全ては神経学的疾患または精神医学的疾患を提示した)をTMを用い
て処置した。これらの患者は、全て標準的な基準によって診断された。これらの
患者は、診断上上昇した肝臓の銅または尿の銅、通常その両方を有していた。彼
らの幾人かは、この試行の前に他の薬剤を用いて簡単に処置されていた。2人の
患者は、精神医学的症状を有したが、神経学的症状を有していなかった。
【0169】 研究の最も初期の部分で3人を除いて、全ての患者は、20mgの用量を、食
事とともに1日3回か、または3回の食事および間食とともに1日4回(qid
)で受けた。従って、120mgの総用量を受ける患者と140mgの総用量を
受ける患者との唯一の差異は、前者が、食事とともに20mgを1日3回(すな
わち60mg)受け、そして後者が、20mgを1日4回(すなわち80mg)
を食事プラス間食とともに受けることである。毎日の総用量の残余は、3つの等
用量に分割され、そして食事の間に与えた。
【0170】 毎日の総用量は、患者間で、高いもので410mgから低いもので120mg
まで、かなり変化した。結局は、本発明者らは、銅の変数との用量関連相関も、
研究の間または1年および2年の時点でのいずれかで測定される機能的変数との
用量関連相関も認知し得なかった。
【0171】 亜鉛投与もまた、これらの患者において使用された。亜鉛投与の開始時は、広
範に変化され、そして銅の変数、結果の変数または毒性と相関しなかった。早期
の亜鉛治療は、理論的には肝臓機能を保持することを助けるはずである。これら
の患者において,肝臓機能は1年までに正常に戻ったが、これらの試験は組織保
存の程度を測定しないので、亜鉛は幾分有益であったようである。
【0172】 血漿のトリクロロ酢酸(TCA)可溶性の銅を測定することは、ウィルソン病
における銅代謝に対するTM治療の影響の評価において幾分有用である。一般に
、これらの患者における高い割合の血漿銅は、TCA可溶性である(これは、患
者で平均して56%−27μg/dlである)。非サイロプラスミン血漿銅の全
ては、TCA可溶性であり、そして幾分変動性の割合のサイロプラスミンの銅も
また、TCA可溶性である。サイロプラスミンのレベルが、通常ウィルソン病に
おいてやや低いので、血漿銅のほとんどは、TCA可溶性である。血液中のTM
/アルブミン/銅複合体中の銅は、TCA不溶性である。従って、治療が進行す
るにつれ、TCA可溶性である血漿銅の画分は、より少なくなる。TM治療の後
期段階の間、患者の血漿の銅のTCA可溶性画分は、平均して15μg/dlで
あり、開始値の27から有意に減少した。このTCA可溶性画分は、例えば、そ
れをゼロに減少させることを試みるという、完全な目的として使用され得ない。
なぜなら、小さくかつ幾分変動性の可溶性画分は、通常、血漿セルロプラスミン
に起因して存在するからである。しかし、27μg/dlから15μg/dlへ
の有意な平均の減少は、TM治療が、これらの患者において潜在的に毒性の血漿
銅の状態に対して有する有利な効果を例示する。銅の代謝に対するTM治療の望
ましい影響のさらなる証拠は、ベースライン値と比較して、TM治療の後者の部
分の間の、尿中の銅の平均値の減少によって示される。
【0173】 TMは、銅の代謝に迅速かつ都合良く影響して、血液および理論的に身体の残
部に潜在的に毒性の銅を減少する。この主要な臨床的目的は、臨床的悪化を可能
にしないで銅の毒性を超える制御を得ることである。言い換えると、根本的な目
的は、治療が開始される時に存在する全ての神経学的機能を保護することである
。これは、定量的な神経学的試験およびスピーチ試験によって毎週評価された。
スケール系を割り当てる方法論および神経学は、公表されている(Youngら
、1986)。TM投与の週の間、すなわち、銅の代謝が制御されている間は、
定量的な神経学的試験によって評価されるような神経学的機能は、保護される。
2人の患者のみ(サンプルの4%)が、5単位(有意な悪化に対する基準)より
多い変化を示した。
【0174】 次の数年間の間、これらの患者は治療を維持しているが、銅によって以前に誘
導された脳の損傷は、少なくとも部分的に回復している。これは、毎年の時点で
の追跡調査において観察される神経学的スコアにおける部分的回復によって示さ
れている。最初のTM治療によって長期の回復が良好であり、ほとんどの患者は
、実質的な神経学的回復を示している。これらの良好な結果は、ペニシラミン治
療と比較されるべきである。以前に指摘されたように、患者の約50%は、最初
にペニシラミンに対して悪化し、そして彼らの半分(当初のサンプルの25%)
は、決してペニシラミン前のベースラインまで回復していない。
【0175】 定量的なスピーチ試験に対するTM治療の最初の8週間の間の結果は、記載さ
れるように実施される(Brewerら、1996)。TM投与の数週の間、す
なわち、銅の代謝が制御されている間は、定量的なスピーチ試験によって測定さ
れるような神経学的機能は、制御されている。スコアにおいて有意な(2.0単
位より多い)減少を示す患者はいない。続く数年の間、患者は、治療を維持して
いるが、銅によって以前に誘導された脳の損傷は、部分的に回復している。これ
は、数年にわたる追跡調査のスピーチスコアにおける部分的な回復によって示さ
れている。長期の回復は、良好である。治療の開始の時点よりも有意に(2.0
単位より多い)少ない長期の機能を示す患者はおらず、そしてほとんどは、顕著
な改善を示している。
【0176】 TM治療からの2つの望ましくない効果が、これらの患者において観察された
。1つは、可逆性の貧血/骨髄低下であり、これは7人の患者によって示された
。これらの患者の全てにおいてヘモグロビンの低下が有意であり、これは平均で
3.4g%であった。3人の患者は血小板数における減少を示し、そして4人の
患者は有意であり得る白血球数における減少を示した。TMは、7人全ての場合
おいて停止された。2人の患者を除いて、中止はTMの56日過程の遅くであっ
た。
【0177】 貧血の時点で、これらの患者の全ては、ゼロの非セルロプラスミン血漿銅およ
び極めて低いTCA可溶性銅を有していた。後者は、これらの患者において平均
2.7であり、そして患者の群全体におけるこの変数についての平均値は、始め
に27であり、そして治療の絶頂で15であった。貧血/骨髄低下の原因は、銅
の骨髄枯渇であると結論付けられた。銅は、ヘム合成および細胞増殖のほかの工
程に必要とされるので、貧血および骨髄効果が、銅枯渇の最初の徴候であると予
測され得る。銅枯渇からのこの結果は、周知の現象である。
【0178】 従って、TMに対するこの望ましくない応答は、副作用ではないが、むしろ、
過剰処置に起因する。ウィルソン病(身体が銅で過負荷される疾患)におけるこ
のような短い期間内に局在化された骨髄の銅枯渇さえ生じることが可能であるこ
とは、おそらく驚くべきことである。TMに対するこの応答は、独特である。他
の抗銅薬物のいずれもが、早期治療においてこの効果を生じ得ない。従って、こ
れは、TMの効力および銅レベルを制御し得る迅速性を示す。また、骨髄は、特
に血漿銅に依存し、そしてこれは、非常に低レベルまで減少する最初のプールで
あるようである。180mg/日以上の用量で、過剰処置は、37人の患者のう
ち6人で生じた。150以下の用量で、13人の患者のうち1人のみが過剰処置
を示し、そしてこれは非常に遅かった(56日のプログラムにおいて53日)。
【0179】 これらの患者におけるTM治療の第2の望ましくない効果は、これらの患者の
うちの4人におけるトランスアミナーゼ値の上昇である。血清ASTおよびAL
T値は、上昇した。これらの上昇のために、TM治療は1人の患者において中断
された。これらの上昇の間、他の患者における一般的な傾向(銅が減少する)と
は逆に、尿銅は増加する。これらのデータは、損傷した肝細胞からの銅の放出と
ともに、肝炎が生じるという概念を支持する。肝炎が生じる理由は明らかではな
い。しかし、処置されていないウィルソン病患者は、彼らの履歴の一部として、
偶発性肝炎を有している。診断後に処置されていない患者の観察の途中ではほと
んど存在しないので、どのくらいの頻度でトランスアミナーゼ上昇の発症がこの
疾患の天然の履歴の一部として生じるかについての良好な情報は、存在しない。
【0180】 あるいは、いくつかの場合において、TMは、それが処理され得るよりも速い
速度で肝の銅を移動し得る。この場合において、これらの患者は、処置の副作用
を示すとして分類される。これは、銅に毒されたヒツジにおいて観察されること
に対し、ここでは、急性肝炎、肝臓壊死および溶血性貧血は、高用量のTMで迅
速に矯正される。これらの患者の4人全ては、150mgTM/日以上で処置さ
れた。150mg以下で処置された患者のいずれもが、この応答を示さなかった
。TMの他の負の効果は、観察されなかった。
【0181】 以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を実証するために含まれる。以下
の本実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能するた
めに本発明者らによって開発された技術を示し、従って、その実施のための好ま
しい様式を構築するとみなされ得ることは、当業者に明らかである。しかし、本
開示を考慮して、多くの変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなく開
示される特定の実施態様においてなされ得、そしてなお同様のまたは類似の結果
を得ることが、当業者に明らかであるべきである。
【0182】 (実施例1) (細胞毒性に対するTMの効果) 培養中の正常細胞および腫瘍細胞は、それらの栄養分を、培地から細胞の内部
への分子の移動および利用から誘導する。このプロセスは、血管増殖に依存せず
、従って、TMは、ほとんどの細胞にとって毒性であるTMのレベルが達成され
るまで、広範囲の濃度にわたって細胞増殖速度および細胞の生存度に対して効果
を有さない。毒性の1つの機構は、基礎的な細胞機能に必要な銅のレベル未満の
遊離の銅のレベルの枯渇である。この毒性レベルを超えるTMの濃度について、
正常細胞および腫瘍細胞の両方は、TMの細胞毒性に起因して、生存し得ない。
【0183】 このことを、MML細胞(前立腺癌)および乳癌細胞の細胞傷害性アッセイに
おいて確認した。0.001μM〜1mMの範囲にある種々の濃度のTMを含む
培地中で同数の細胞をプレートした後、インビボで使用された濃度の範囲におい
て、毒性は観察されなかった。生存細胞の画分は、TMの濃度が1μg/mlか
ら10μg/mlへ増加した場合に、100%から15%へ大きく減少した。従
って、細胞傷害性効果に必要な非常に高用量で、腫瘍細胞死および正常細胞死の
両方が生じることが明らかであるので、TMは、直接的な細胞傷害性薬剤を使用
するために意図されない。有効な除銅レベルを達成するために必要な血清TM濃
度は、細胞に対する致死閾値レベルよりも100〜500倍低い。ウィルソン病
を患うマウスおよびヒトにおいて有効な除銅用量を使用した場合、TMは、いず
れの臨床的に明白な直接的な細胞傷害性を生じなかった。
【0184】 (実施例2) (マウス前臨床抗癌研究におけるTMの使用) 本発明者らは、以前に達成されたよりも大きい程度の銅欠損が、新脈管形成を
阻害し、そして腫瘍増殖を有意に阻止するために必要であることを結論付けた。
このことは、減少した腫瘍塊に加えて、延長した生存または腫瘍後退もまた観察
されることを意味する。以下に記載される研究(これは、げっ歯類において腫瘍
増殖阻害のための抗銅アプローチを使用した)は、一般に、そして特に銅の研究
において、ヒトおよび動物微量元素に由来する指針を十分に取り込まなかった(
DickおよびBull、1945;MillerおよびEngel、1960
;Macilese Ammermanら、1969;Millsら、1958
;Coxら、1960;Dickら、1975;Mason、1990;McQ
uaidおよびMason、1991;Millsら、1981a;Mills
ら、1981b;Bremnerら、1982;Gooneratneら、19
81a、b;Jacobら、1981)。
【0185】 対照的に、本発明は、公知の最も能力のある抗銅薬剤であるTMを使用する。
鎌状赤血球貧血における処置として亜鉛を(ここで、本発明者らは、銅欠損を誘
導した亜鉛の最初のヒトの事例について記載した;Brewerら、1983)
、ウィルソン病における抗銅処置として亜鉛を(Brewerら、1989;B
rewer、1995a)、そしてウィルソン病における最初の抗銅処置のため
にTMを(Brewerら、1983;Brewer、1992;Brewer
ら、1994b;Brewerら、1995b)使用する、本発明者らの広範な
実験を、有効な銅欠損を達成するためのアルゴリズムの開発において使用した。
臨床的使用のためのTMの開発者として、本発明者らは、動物およびヒトの両方
における有意な実験を獲得した。
【0186】 (A.C567B1/C6マウスへの腫瘍細胞の注入) これらの指針下において、抗新脈管形成の治療研究を、マウス腫瘍モデルにお
いてTMを使用して実施した。この研究は、若い成体C57B1/6Jマウスへ
の腫瘍細胞の皮下注射または筋内注射を含めた。2つの腫瘍(マウス肉腫(MC
A205)およびマウス黒色腫(B16B16))を使用した。MCA205腫
瘍細胞懸濁液を、C57B16マウスに皮下注射した。腫瘍を触知可能にした後
、銅欠損を、銅の状態をモニターするためにCpレベルを使用して、動物の半数
に、TMの使用によって誘導した。他方の半数は、偽処置した。腫瘍増殖を、処
置していないコントロール群と、正常コントロールの約10%までCpを減少す
るに十分なTMを用いて処置したマウスとの間で比較した。
【0187】 腫瘍の増殖速度の減少に対する有意な効果、ならびに最終的な腫瘍サイズおよ
び重量の減少に対する有意な効果を、TMを用いて得た。比較的短期間の観察(
16日)において、腫瘍増殖を処置によって緩慢にしたが、停止しなかった。T
M処置したマウスにおける腫瘍は、この動物の総体重に対して正規化し、これは
、コントロールマウスにおける腫瘍よりも有意に低かった。これらの結果は、両
方の腫瘍型において類似していた。従って、TMは、使用された用量で細胞傷害
性効果がないとき、おそらくその抗新脈管形成機構により、腫瘍増殖および重量
を減少した。
【0188】 しかし、この実験計画は、以下の理由のため、抗腫瘍薬剤としてのTMの潜在
的効力を評価するためにさらに改良され得る:1)マウスにおいて、1cm以上
の腫瘍は、生命にかかわる負荷になり、そしてしばしば潰瘍化する。しかし、マ
ウスおよびヒトの両方において、このサイズの腫瘍およびより大きい腫瘍は、持
続性増殖のために新脈管形成に最も依存する;ならびに2)2〜3mmでの腫瘍
の検出と、1.5cmでの腫瘍の検出との間の期間は、マウスにおいて比較的短
く、ほんの数日である。銅の腫瘍塊を枯渇するために時間を要するので(特にほ
とんどの腫瘍は、高レベルの銅を隔離するので)、腫瘍は、ほぼ完全な銅枯渇の
達成の前に、それ自体の貯蔵から有意な新脈管形成を支持し得る。
【0189】 (B.HER2−neuトランスジェニックマウス) 従って、動物プロトコルを、癌傾向性の雌性HER2−neuトランスジェニ
ックマウスにおける臨床的に明白な腫瘍の遅延または予防におけるTMの効果の
有効性を試験するために設計した(Guyら、1992;Mullerら、19
88)。これらのマウスは、誕生時および乳児期において正常であるが、トラン
スジーンに起因して、これらのマウスの100%が、4〜8月齢の間に(中間値
205日)乳腺癌を発症する(Guyら、1992)。このモデルを選択する主
要なさらなる理由は、これらのマウス乳腺癌の天然の履歴が、ヒトにおける処置
していない乳癌の臨床的挙動に顕著に類似することである。HER2−neuマ
ウス腫瘍は、長い潜伏後に発症し(トランスジーンの変異誘発に起因し、そして
過剰発現に起因しないようであることが現在公知である)、そしてこの腫瘍は、
この腫瘍がほとんどは肺に転移する前に大きなサイズ(しばしば>2.5cm)
を達成するまで、主に局所領域に残存する。処置群とコントロール群との間の、
腫瘍の発症時期ならびに腫瘍血管の質および量を比較した。
【0190】 3匹の初代トランスジェニック雌性マウスを3匹のトランスジェニック雄性マ
ウスと繁殖した後、雌性子孫を2つの群に分けた:一方の群は、15匹の処置動
物を有し、そして他方の群は、22匹のコントロール群を有した。処置していな
いコントロール群において疾患を有さないマウスの百分率を、100日齢で開始
する毎日の胃管栄養法により0.5〜1.0mgのTMで処置した同じトランス
ジェニックマウスの群と比較した。TMを用いる処置を、腫瘍が臨床的に明白と
なる約80〜100日前に開始し、その結果、処置した動物に、新脈管形成が必
要となり始め得る場合に、重要な腫瘍発生の期間を通じて銅欠損を与える。これ
は、これらが身体の銅の総量が低下するにもかかわらず、腫瘍が新脈管形成を維
持し得る、大量の銅を隔離することを防ぐ。
【0191】 260日の追跡の中間で、TMで処置したマウスのいずれもが、臨床的に顕性
な腫瘍を発症しなかったが、コントロールの70%が、同じ追跡期間において腫
瘍を示した(図1)。コントロールマウスの50%は、218日齢までに臨床的
に明白な腫瘍を発症した(p<0.02)。コントロールは、153日齢に始ま
って腫瘍を示し始めたが、TM処置した動物は、TM治療を中断し、そして銅の
レベルが上向きにドリフトことを可能にするまで、腫瘍を示さなかった(p<0
.0146)。
【0192】 代理指標であるセルロプラスミン(Cp)の使用による処置群における血液の
銅レベルのモニタリングは、Cpがベースラインの40%未満まで減少したこと
を示した(図2)。この系統のマウスにおいて、銅がこのレベルに減少したとき
に観察された貧血は存在しなかった。別々の群の4匹の処置動物に、2〜4週間
にわたって1.0〜1.5mgのより高い用量のTMを与えた。1.25〜1.
5mgを受けた動物は、治療の1〜3週間後に死亡した。剖検は、1匹の動物が
吸引性肺炎によって死亡し(胃管栄養法の事故に基づく)、2匹の動物が検死(
necrospy)においてこれらの組織に対する血管性傷害の明らかな証拠を
伴い、尿細管性壊死および肺性出血によって死亡したことを示した。これらの研
究は、延長した処置が計画される場合に、1.0mg/日が、成体マウス(平均
体重32グラム)におけるTMについての最大寛容用量(MTD)であることを
示唆する。
【0193】 コントロールマウスにおける乳腺癌を、TMを用いてサイズを減少し得るか否
かを試験するために、3匹のコントロール動物を、腫瘍が十分に確立された(>
1.5cmの最大直径)後に処置した。2/3の場合において、腫瘍は、25%
および50%有意に縮小した。
【0194】 次に、延長したTM治療が、おそらく乳房組織を損傷し、腫瘍が標的の欠失に
起因して処置動物においておそらく上昇し得なかったという可能性を決定した。
コントロール動物の80%が腫瘍を発症し、そして処置動物のいずれもが腫瘍を
発症しなかった後、コントロール動物を処置から解放した。臨床的に顕性の乳腺
癌は、マウスのこの交差群において、18日以内に発症し始め(これは、以前に
疾患を有さなかった)、これは、確かに標的組織における腫瘍開始事象が生じた
が、臨床的に検出可能な塊への腫瘍の拡大は、銅欠損状態において可能でなかっ
たことを示唆する。
【0195】 TMで処置したマウスの乳腺の顕微鏡的分析は、血管形成しなかった約3〜1
0細胞の層の厚さの、多く(1〜8)の小さな「微小腫瘍」を示した。しかし、
TM治療からの解放に際して、これらの微小腫瘍は、活発に血管形成した明白な
塊へ非常に迅速に成長した。全ての細胞および分子の詳細は、まだ解明されてい
ないが、この重要な発癌モデルにおいて、処置したマウスの微小腫瘍のいずれも
が血管形成されなかったので、銅欠損が、脈管形成を転換するか、またはそれか
らすぐ下流の工程を阻害したことは、明らかである。
【0196】 要約すると、銅のアベイラビリティを減少させると、固形腫瘍の増殖(転移の
増殖を含む)を減少させ、そして最終的には停止させる。ウィルソン病を有しな
いヒトにおける腫瘍増殖の減少に必要な銅のアベイラビリティにおける減少が、
本明細書中以下に記載されるように、確認された。抗腫瘍剤としてのTMの成功
は、効果を得るために必要な銅の欠乏の程度と、銅の欠乏の程度の毒性との間の
関係に、少なくとも一部基づく。腫瘍脈管形成が軽度の銅の欠乏の後に続く場合
に抑止されるので、TMはいくつかの異なる腫瘍学的適用のために顕著に有効な
薬剤である。TM療法のために意図される他の設定としては、高齢者であるかさ
もなければ化学療法を受けるには不適格である患者における、または高い危険性
にある個体(炎症性癌、複数の陽性結節)における細胞増殖抑制性剤としての、
化学療法または骨髄移植の後の療法の維持が挙げられるが、これらに限定されな
い。
【0197】 (C.移植した腫瘍を有するヌードマウス) この研究において、ヒト乳癌細胞の垂直性注射後のヌードマウスの乳房パッド
における腫瘍の増殖を抑止するかまたは遅延させるテトラチオモリブデート(t
etrathiomolybdate:TM)の能力を研究した。SUM149
と称される高度に脈管形成性の炎症性乳癌細胞株を、この研究のために選択した
。注射したヌードマウスの80〜100%の乳房への注射の2週間以内に明白な
腫瘍を形成するその傾向高い場合に、この細胞株は、腫瘍の進行を損なうTMの
能力のストリンジェント試験を止めた。
【0198】 5匹のヌードマウスの3群の各々を、別々の檻に設定した。群2および3に、
−7日で開始して、平均1.2mg/日/マウスの摂取になるよう飲料水中でT
Mを与えた。群1、2および3に、第2の胸郭乳房脂肪パッドにおいて106
UM149乳癌細胞を0日目で注射した。34日目に、明白な腫瘍が処置群にお
ける任意のマウスにおいて顕著ではない場合、TMを群2および3において省き
、次いでTMを、群2においては、0.6mg/日/マウスの用量で再開したが
、TMを、群3においては、完全量(1.2mg/マウス/日)で再開した。
【0199】 発達中の腫瘍を、ほぼ週に2回測定した。そして各群についての時間に対する
二次元の水晶体周囲の直径の産物の平均を、図3にプロットする。コントロール
群における腫瘍は比較的迅速に増殖し、そして全ての動物が腫瘍を発達させた。
対照的に、処置群については、TMを34日に省く、腫瘍は明白ではなかった。
その後、1/2用量のTM(これは、銅のレベルが50%まで減少するのみであ
ることが公知である)を受けた群において腫瘍はより迅速に増殖した。対照的に
、非常に小さな腫瘍のみが、完全量のTM(これは、1.2mg/日/マウスと
して規定される)で処置した群において増殖した。この用量は、ベースラインレ
ベルの約10〜20%まで銅を減少させる。これは、マウスおよびヒトの両方に
おいて十分寛容された銅の欠乏の程度であり、この程度は、腫瘍脈管形成を阻害
するに必要であるようである。
【0200】 この研究は、TMはおそらく、少なくとも2通りの方法で脈管形成を阻害する
という考えを支持する:1つは、「脈管形成スイッチ」の阻害により、そしても
う1つは、かさ高い腫瘍の脈管形成の阻害による。34日目でTMを省くと、脈
管形成スイッチは活性化できず、そして銅を欠乏したヌードマウスに注射した腫
瘍クラスターへ血管をもたらし始める。このスイッチの活性化は、いくつかの腫
瘍増殖を可能にするが、TMで処置した群がかなりゆっくりと腫瘍を増殖させ、
そしてプラトーに達するようであることが明らかである。この研究はまた、ヌー
ドマウスの飲料水中におけるTMの経口投与を確証する。
【0201】 (実施例3:抗癌療法としてのTMのフェーズI/II臨床試験) (A.緒言) 転移性固形腫瘍を有する患者は、しばしば、細胞減少化学療法の蓄積性毒性お
よび薬物耐性に起因して、治療選択肢が非常に限定されている。上記の臨床前研
究(これは、マウス腫瘍モデルにおける抗銅アプローチについての効率を示した
)後に、フェーズI臨床試験を、転移性癌を有する18人の患者において行った
。この患者を、食事とともにおよび食間に6分割用量で投与された3用量レベル
の経口テトラチオモリブデート(TM;90、105、および120mg/日)
にて登録した。血清セルロプラスミン(Cp)を、全身銅についての代理マーカ
ーとして使用した。貧血が銅の欠乏の最初の臨床的徴候である場合、この研究の
目的は、ベースラインの80%未満までヘマトクリットを減少させずに、ベース
ライン値の20%までCpを減少させることであった。Cpは、銅の状態の確実
かつ感度のよい測定であり、そしてTMは、Cpをベースラインの15〜20%
まで減少させた場合、非毒性であった。120mg/日のTMのレベルIII用
量は、毒性を追加せずに、目標Cpを到達させるのに有効であった。TMで誘導
した軽度の銅の欠乏は、少なくとも90日間の目標範囲にて銅が欠乏している6
人の患者の内の5人において、安定な疾患に達成した。
【0202】 (1.毒性) TMの薬理学的効果は、完全に銅に特異的である。他の無機塩に対する検出可
能な効果を有さない場合、その毒性は、銅の欠乏に直接関連する。使用した用量
では銅の欠乏以外には、動物において記載される毒性は存在しない。ヒトにおい
て、1日あたり6回、30〜40mgの用量で治療を維持するためにTMを摂取
するウィルソン病患者において、可逆性貧血の2つの報告が存在する。ウィルソ
ン病を有する45人の患者にウィルソン病のための最初の治療としてTMを8週
間用いる処置において、可逆性貧血の5症例(11.1%)が観察された。貧血
は、骨髄における銅の枯渇の結果として、ヘム合成が減少することに起因する。
血液がCuレベルにおける最も重篤な減少を示した患者は、この貧血を示す。
【0203】 上記で言及したように、TM療法を受けている動物またはヒトの銅の状態は、
血清銅単独に続き得ない。なぜなら、TM、銅、およびアルブミンの複合体は、
銅の高い定常状態が達成されるまで、その蓄積よりもゆっくりと血液から除かれ
るからである。しかし、この複合体の銅は、細胞取り込みには利用可能ではなく
、いずれの銅依存性の細胞プロセス(例えば、脈管形成)にも関与せずに、そし
て尿および胆汁を介して身体から徐々に除かれる。本発明者らは、以下のような
、TM療法の間のヒトにおける銅バランスを、認識される銅の欠乏の3つの状態
に従ってモニターするためのガイドラインを開発した(Brewer,1992
;Brewerら、1991a)。
【0204】 (第1段階−化学的な銅の欠乏) この段階の間に、血清セルロプラスミン(Cp)活性は、ベースラインの約5
〜10%まで減少する。Cp(銅含有タンパク質)は肝臓において合成され、そ
してCp合成は、銅の枯渇の間に減少する。銅の欠乏のこの段階は、研究室にお
いては測定可能であるが、臨床的徴候または症状を有しない。Cpは、初期の臨
床的な銅の欠乏が結果として生じる前に、正常の数%未満でなければならない。
【0205】 (第2段階−軽度の臨床的な銅の欠乏) Cpを5〜10日間0〜5%で保持した後、銅の欠乏の最初の臨床的徴候が出
現し得る。これらは、軽度の好中球減少症および低色素性小球性赤血球変化であ
る。白血球数およびヘマトクリットの両方は、ベースラインの約75〜85%ま
で落ちる。銅はヘム合成に必要なので、末梢スメアにおいて見られる形態学的変
化は、鉄の欠乏のこれらの特徴と類似する。銅の欠乏がより重篤になる場合、赤
血球不同症および変形赤血球症を悪化させる。この軽度の貧血および好中球減少
症の発症は緩やかであり、そしてしばしば、全体的に無症候である。
【0206】 (第3段階−中程度から重篤な臨床的な銅の欠乏) 代表的には、Hctがベースラインの70%未満の場合、不適切な造血から生
じるより重篤な臨床的徴候および症状が起こる。これらは、食欲の減退、体重減
少、下痢、損なわれたメラニン産生に続く毛色の損失、稀に不整脈である。
【0207】 本発明者らは、軽度の化学的な銅の欠乏(見かけ上は長期間、ヒトによって非
常に良く寛容される状態)は、固形腫瘍脈管形成を阻害するためのストラテジー
としての効力を有すると結論付けた。それゆえ、TMの効力の代理終点を確立す
るための銅の欠乏の程度の調節および注意深モニタリングは、このアプローチの
重要なエレメントである。
【0208】 本発明者らは、相対的な銅の欠乏の様々な段階、化学的な銅の欠乏と臨床的な
銅の欠乏との間の分割線、およびどのように測定して銅の状態を評価するかにつ
いての適切なプロトコルについての非常に良好な、証拠に基づく知見を有する。
患者は緊密にモニターされるので、フェーズI研究は、これまでは、非常に安全
であった。見分けられるべき主な治療的問題は、銅についての腫瘍脈管形成の要
求が、銅を必要とする必須の細胞ハウスキーピングより有意に高いか否かである
【0209】 (2.薬力学) TMは、食事とともにおよび食事を伴わずに投与され、そして後者の条件で十
分に吸収される。TMは、銅およびタンパク質と3成分の複合体を形成し、それ
により、食事とともに投与される場合に食物中の銅を結合し、銅の吸収を妨げる
か、または吸収後に血流中(TM−Cu−アルブミン)において、細胞の銅の取
り込みを妨げる。正常な銅代謝を有する患者において、非セルロプラスミン血漿
銅(潜在的に脈管形成に利用可能)と血漿モリブデンとの間の化学量論的な1:
1の関係は、各々10〜20mgの6の毎日の用量を用いて予期される。軽度の
銅の欠乏の定常状態を生じるTMの用量レベルは、ほとんどの個体について、毎
日40〜90mgの範囲内で変化する。TM−Cu−タンパク質の複合体は、胆
汁中に優先的にゆっくりと排泄され、小量もまた尿中に排泄される。Moおよび
Cuの24時間の尿の測定は、3成分の複合体の排除の速度の決定を助ける。
【0210】 (B.方法) (1.患者) 転移性固形腫瘍を有する18人の成人(測定可能な疾患、3ヶ月以上の平均余
命、および少なくとも60%のカルノフスキー効率状態を示す(表2))を登録
した。疾患の唯一の徴候として滲出または骨髄関与を有する患者、および集中管
理が必要な重篤な介入性疾病を有するかまたは輸血依存性の患者を除外した。患
者は以前の毒性からは回復していなければならず、そして研究室パラメーターに
ついて以下の要件を有した:WBC≧3,000/mm3、ANC≧1,200
/mm3、Hct≧27%、Hgb≧8.0gm/dl、血小板数≧80,00
0/mm3、ビリルビン<2.0mg/dl、AST/ALT<施設基準の上限
の4倍、血清クレアチニン<1.8mg/dlまたは算定されたクレアチニンク
リアランス≧55ml/分、カルシウム<11.0、アルブミン≧2.5gm/
dl、PT<13秒、およびPTT<35秒。他の要件は、手術、化学療法、放
射線療法、および/または免疫療法のような標準的な処置後の、以前3ヶ月にお
ける疾患の実証可能な進行、あるいは従来の処置様式の減退後の進行性疾患であ
った。
【0211】
【表2】 (2.処置計画:用量および段階的増大) 3つの用量レジメを評価した。TM20mgからなる全ての用量レベルを、食
事とともに毎日3回および食間投薬で段階的増大(レベルI、IIおよびIII
)を、毎日3回(1日に全部で6用量)与えた、負荷用量レベルI、IIおよび
IIIは、全ての用量レベルで、食事とともに、各20mgの3用量に加えて、
それぞれ、食間に3回、TMを、10mg、15mgおよび20mg与えた。
【0212】 ベースラインCpを、処置の1日(1日を含む)に最も近いCp測定として選
択した。なぜなら、血液が、全ての患者について、TM前に抜き取られたからで
ある目標CPの減少を、ベースラインCpの20%として規定した。約2%のC
pアッセイの可変性に起因して、ベースラインの22%までのCpの変化を、銅
の所望の減少が達成されたとみなした。さらに、絶対的なCpが5mg/dl未
満である場合、患者を、目標Cpに達成したとみなした。5mg/dl未満の絶
対的Cp(ベースラインから少なくとも78%の減少を伴わない)に起因して、
目標に達した患者はいなかった。目標の銅の欠乏状態に達した後に、TM用量は
、個々にあつらわれ、ベースラインからの70〜90%減少の目標ウインドウ内
でCpを維持した。
【0213】 6人の患者は、各用量レベルにて登録されることになっていた。4人の患者を
レベルIに登録した後、1人の患者が用量限定毒性(DLT)(Hct<ベース
ラインの80%として規定される)を経験した場合、さらに2人の患者をレベル
Iに登録した。DLTが観察されなかった場合、患者を次の用量レベルに登録し
た。患者が以下の規定によって臨床的応答を部分的もしくは完全に経験したかま
たは臨床的に安定な疾患に達成した場合、処置を、目標の銅の欠乏の導入を超え
て続けた。完全な応答を、活性疾患の臨床および研究室徴候および症状の全ての
消失として規定する。部分応答を、病変の最長の垂線直径の積の合計によって規
定した測定可能な病変のサイズにおける50%以上の減少(新たな病変または病
変のサイズの増大なし)として規定する。わずかな応答を、1つ以上の測定可能
な病変の最長の垂線直径の積の合計における25〜49%の減少(いずれの損傷
のサイズの増大も新たな病変もなし)として規定する;安定な疾患は、最小の以
前の測定または新たな病変の出現と比較した、腫瘍測定における任意の変化であ
り、応答または進行性疾患についての基準(これは、任意の測定可能な指標病変
の最長の垂線直径の積の合計において25%異常の増加として規定される)によ
っては表されない。銅の欠乏は、細胞傷害性処置の様式ではないので、進行型の
癌を有する患者のこの集団において、長期治療のためのTMの効力についての情
報を提供する患者は、主に、90日間にわたってベースラインの(20±10)
%の目標Cpウインドウ内に残る患者(疾患進行を有しない)である。
【0214】 (3.銅状態のモニタリング) 方法は、銅状態を容易かつ確実にモニターすることを必要とし、その結果、T
M用量は、この試験の間、適切に調整され得る。TM投与を用いると、血清銅は
、全身銅の有用な測定ではない。なぜなら、TM−銅−アルブミン複合体は、迅
速に除去されず、そして全血清銅(TM−タンパク質複合体に結合した画分を含
む)は、実際に、TM治療の間に増加するからである(Brewerら、199
1a;1994b;1996)。毎週得た血清セルロプラスミンレベルを、全身
銅状態の代理測定として使用した。血清Cpレベルは、肝臓によるCp合成によ
って制御され、これは次に、肝臓に対する銅のアベイラビリティによって決定さ
れる(Linderら、1979)。従って、全身銅が減少するにつれ、血清C
pレベルは比例して減少する。血清Cpレベルは、正常なコントロールおよび癌
患者について、それぞれ、20〜35mg/dlおよび30〜65mg/dlの
範囲にある。この試験としての目的は、7〜12mg/dlの範囲における代表
的なCp値を用いて、ベースラインの20%またはそれ未満までCpを減少させ
ることであり、そしてベースラインCpの(20±10%)程度にわたるウイン
ドウ内にこのレベルを維持することである。この程度の銅減少のからの臨床効果
は都合が悪くないようであるので、このレベルの銅の欠乏は、「化学的な銅の欠
乏」と称されている。真の臨床的な銅の欠乏の最初の指標は、銅がヘム合成およ
び細胞増殖に必要であるので、血液数における減少、原発性貧血である(Bre
werら、1996)。従って、この試験の銅の欠乏の目的は、(患者のヘマト
クリットまたはWBCを登録時のベースライン値の80%未満まで減少させるこ
となく)ベースラインの20%またはそれ未満までCpを減少させることであっ
た。
【0215】 (4.毒性、追跡、および疾患の評価) 完全な血球数、肝臓および腎臓機能試験、尿検査、ならびにCpレベル(オキ
シダーゼ法による)を、16週間毎週1回行い、次いで2週間に1回行った。毒
性の身体的試験および評価を、8週間2週間毎に行い、次いで、治療の間4週間
毎に行った。毒性を、National Cancer Institute
Common Toxicity Criteriaを用いて評価した(表3)
。TMが使用した用量では細胞傷害性薬物ではなく、既に、上記の詳細に記載さ
れたものとは異なる任意の他の毒性を伴わずにヒトに与えられているので、表3
に列挙される毒性の大部分は、起こるはずであるが、TMに起因して予測できな
い。にもかかわらず、治療を中断し、そして患者を、可能性のある病因にかかわ
らず、グレード3または任意の型のより高い毒性が観察された場合には、この研
究から取り除いた。グレード2の毒性について、それらの病因を確立する試みを
行う。慣用的な支持ケア手段が状態を緩和しない場合、この薬物を中断し、そし
てこの患者を研究から除外する。
【0216】 疾患の程度を、登録時、銅の欠乏(ベースラインの20%またはそれ未満のC
pとして規定した)の達成時、およびその後10〜12週毎に評価した。コンピ
ューター支援断層撮影または磁気共鳴画像化を、全ての公知の部位での疾患の従
来の測定および疾患の任意の可能性のある新たな部位の評価に適切なように使用
した。3次元ドップラー分析を用いる脈管形成感受性超音波を、従来の画像化へ
の補助として、選択した場合に使用して、異なる時点で腫瘍への血流を評価した
【0217】
【表3】 (5.TMの調製および貯蔵) TMを、ヒト投与に適したバルクロットで購入した(Aldrich Che
mical Company、Milwaukee、WI)。TMは、空気に曝
露した場合にゆっくり分解され、酸素がこの分子中の硫黄を置換して、TMを不
活性にする(Brewerら、1991a;1994b;1996)ので、アル
ゴン下で、100グラムロットで貯蔵した。処方を書いた時点で、適切な用量の
TMを、ゼラチンカプセル中に配置した。以前に、本発明者らによって、このよ
うなカプセル中に分散されたTMは、8週の間、その効力の少なくとも90%を
保持したことが示された(Brewerら、1991a)。従って、TMを、こ
の試行の間にわたって、8週分割して、各患者に分配した。
【0218】 (6.血流の測定) 血流を、接近可能な損傷を有する選択患者中で、その患者らが銅欠乏になった
時点で、そしてその後8〜16週間の種々の間隔で、超音波により測定した。3
Dスキャンを、739L、7.5MHz線形アレイスキャンヘッドを備えた、G
E Logiq 700超音波システム上で実施した。このスキャン技術および
血管分布定量技術は、以前に記載されたのと同様である(Carsonら、19
98;LeCarpentierら、1999)。
【0219】 (B.結果) (1.患者の特徴) 他の処置選択肢を通じて進行したかまたは(1つの症例では)減少した、11
の異なる型の転移性癌を有する、18人の好適な患者(10人の男性および8人
の女性)を、この患者らを照会した順で、この試行に登録した。6人、5人、そ
して7人の患者を、プロトコル用量漸増スキームに従って、それぞれ、90mg
/日、105mg/日、および120mg/日の薬物レベルで登録した。もとも
と105mgレベルに割り当てた1人の患者を、疾患の迅速な進行に起因して、
早期に除いて、細胞傷害性化学療法を遂行した。この同じ患者を、後に、より長
い期間の間120mgレベルで再処置した。従って、この同じ患者を、この分析
について120mg薬物レベルでのみカウントする。平均年齢は59歳であり;
平均ベースラインCpは47.8mg/dlであった。これは、その患者の疾患
状態を反映して、正常と比較して高い。表4は、各用量レベルについての患者の
特徴を要約する。
【0220】
【表4】 (2.毒性) ベースラインの20%またはそれを超えるCpレベルが観察された、心臓毒性
、肺毒性、胃腸毒性、腎臓毒性、肝臓毒性、血液学的毒性、感染毒性、皮膚毒性
、粘膜毒性、または神経学的毒性は存在しなかった。軽い(ベースラインHct
の80%を超える)可逆的貧血が、ベースラインの10〜20%の間のCpレベ
ルの4人の患者で観察された。これらの患者のうちの2人は、細胞傷害性化学療
法で処置されており、そして2人の患者は、この試行にエントリーした時点で、
その疾患への広範な骨髄の関与の証拠を有した。これらの場合のうちの後の方の
2人において、その貧血は処置以外の原因に起因した可能性が最もあるが、2単
位のパックされたRBCの輸液によってHctが受容可能なレベルまで回復され
るまで、TMを一時的に停止した。1人の患者において、TMにより引き起こさ
れた銅欠乏が、貧血を生じた可能性が非常にある。この薬物の停止により、5〜
7日以内に、輸液の必要なしでヘマトクリットが回復するのが可能になった;患
者の要求により、TMを、より低用量で再開して、貧血のさらなる合併症を伴わ
なかった。幾人かの患者は、TM摂取の30分以内に、一過性の、硫黄臭のする
げっぷを時折経験した。いかなる型のさらなる毒性も観察されず、8〜15月に
わたり軽い臨床的銅欠乏を長期維持した。注意すべきことには、胃腸の出血また
は他の粘膜の出血、またはわずかな外傷の治癒の減損の証拠は、長期の治療に伴
って観察されなかった。広範な転移性腎臓癌を有する1人の閉経前の患者が、T
M治療の間に、正常な月経期間を経験した(ベースラインの20%未満の銅欠乏
の間の2.5月の観察を含む)。
【0221】 (3.銅の状態の代理基準としてのセルロプラスミン) 図4A、図4Bおよび図4Cは、TM治療に対する時間の関数としてのCpの
応答を示す。これは、90mg/日(図4A)、105mg/日(図4B)、お
よび120mg/日(図4C)の用量レベルに登録された各患者についてのベー
スラインCpレベルに対する時間tでのCpの割合として表現される。1日あた
り10mgを3回から1日あたり15mgまたは20mgを3回までに食間用量
を増加することは、Cpレベルの減少速度に対する有意な効果を有さず、平均3
0日(中間値=28日)でベースラインの50%のレベルに達した。TM治療に
対する時間の関数としてのCpの応答は、わずかな変動しか示さず、TMを停止
した場合には、48時間以内に、Cpの迅速な増加が観察された。
【0222】 4人の患者を、疾患の進行に起因して、ベースラインの20%の標的Cpを達
成する前に研究から除いたが、残りの14人の患者は、この標的Cpレベルを達
成した。この標的Cpレベルを達成した14人すべての患者が研究続行を望んだ
ので、これらの患者が疾患の進行または毒性を示さない限り、このプロトコルに
従って、これらの患者が研究続行することを許可した。このTM用量を、これら
の患者において、ベースラインの10〜20%の間のCpを維持するように調整
した。これらの患者は、このアプローチの効力および長期の許容性の、予備的証
拠を提供する。
【0223】 (4.標的Cpを維持するための用量調整) ベースラインの20%のCp標的を維持するため、および5mg/dl未満の
絶対Cp値を防ぐために、TM用量を調整した。このCp試験のための慣用的7
日の所要時間に起因して、これらの用量変更を、Cp測定のための血液を採取し
た約7〜10日後に、行った。標的Cpを達成した後、食間用量は、代表的に2
0mg減少された。さらなる15〜30mgの減少が、長期の治療の間に必要で
あった。長期の治療に際して、乳癌の放射線処置に従属的な転移性軟骨肉腫を有
する患者が、12月の銅欠乏の後に安定した疾患を有し、安定した生活の質を伴
った。生検で明らかである第3指上の転移性小節は、容易に測定可能であり、そ
して安定であった。興味深いことに、この患者は、この比較的に長い期間を通じ
て、標的Cpを維持するために、開始負荷用量レベルからこのTM用量へ、わず
かな調整しか必要ではなかった。
【0224】 図5Aおよび図5Bは、約100日の治療にわたる、より代表的な2人の患者
に必要な用量調整に対するCp応答を示す。図5Aの患者は、60日間隔で、あ
る程度まで用量の減少しか必要としなかった。ほとんどの患者は、長期の治療の
間に、用量の増加および減少の両方を必要とした。例えば、図5Bに示されるよ
うに、このTM用量は、標的範囲外のCpの増加に応答するために、100日後
に増加された。全体として、必要な用量調整には、個々のかなりの変動性が存在
した。胸において予期される疾患の他の部位もまた、安定なままである。結論と
して、毎週評価されたTM治療に対するCp応答は、広い変動に過敏でないか、
またはその変動を受けにくい。
【0225】 (5.TMに対する転移性癌の応答の測定) (a.臨床的評価) これらの患者は、異なる開始負荷用量のTMを受けたが、ベースラインの(2
0±10)%のCp維持範囲を、負荷用量に関わらず、すべてのグループで使用
した。90日を超える間、TM用量の行き届いた調整を通じて、この程度の銅欠
乏を維持した患者は、その腫瘍に対するTMの抗脈管形成性活性を反映するよう
である。90日の期間は、2つの主な理由のために選択される。第1に、TMは
、癌または内皮細胞のいずれに対しても細胞傷害性ではなく、そして主に、内皮
細胞機能および前脈管形成因子(pro−angiogenic factor
)産生を損う。この作用機構は、腫瘍塊のサイズに対する非常に遅い効果を有す
ることが予期される。第2に、腫瘍が銅を封鎖する(sequester)ので
、その腫瘍の微小環境が、より長い時間をかけて、銅欠乏にされると予期される
。表5は、この18人の患者の臨床的経過を要約する。
【0226】
【表5】 14人の患者が、疾患の進行または他の疾患合併症の前に、標的銅欠乏を達成
した。これらのうち、8人の患者が、銅欠乏を達成した30日以内に進行したか
、または90日未満の間安定な疾患を有したかのいずれかであった;これらの腫
瘍のほとんどは、この型の治療に対する臨床的応答を評価するに十分長く、抗脈
管形成環境を経験した。疾患の進行または選択に起因してプロトコルから除かれ
たすべての患者において、そして小腸閉塞を軽減するための腹部手術の必要性に
起因して1人の患者において、TM治療の停止の後に、大いにより迅速な速度の
疾患の進行が、臨床的に着目された。
【0227】 残りの6人の患者は、安定した状態の疾患を受けたか(6人のうち5人)、ま
たは1つの部位では疾患が進行し、他の部位では安定した状態の疾患を受けた(
6人のうち1人)。標準的な規準によって安定な状態の疾患を有する2人の患者
はまた、120日および49日に標的Cpでの観察期間の間に、いくつかの肺病
変の完全な消失および他の肺病変の大きさの減少を受けた。安定した状態の疾患
を伴う、長期(90日を超える)維持療法下の5人の患者は、この分析の時点で
、120〜413日間、銅欠乏性であった。
【0228】 (b.放射線学評価) CAT走査またはMRIを用いる従来の画像化による腫瘍塊の連続評価は、特
定の塊の放射線学外見が経時的に有意に変化することを明らかにした。特に、推
定の中心壊死の領域(X線シグナルのより低い減衰に対応する)が、種々の腫瘍
タイプにおいて、最も顕著には、腎臓細胞癌、血管肉腫、および乳癌において観
察された。長期TM療法における銅欠乏の間の時間の関数として、腫瘍に対して
血流を評価しようとして、超音波が到達可能な病変を、銅欠乏の開始時、および
その後2〜4ヶ月の間隔で、カラーフロー(color flow)三次元超音
波で画像化した。
【0229】 従来のCAT走査画像および血流感受性3D超音波を、標的銅欠乏に達した際
、および8週間後に腎臓細胞癌からの肋骨転移において比較した。CAT走査は
、この病変が経時的に安定した大きさであることを示した。一方、(見こみのあ
る)中心壊死のより明確な領域は、標的銅欠乏に達した8週間後に観察される。
比較して、約8週間のこの期間におけるこの塊に対する血流の4.4倍の減少が
、3D超音波によって検出された。これらの2つの技術によって研究された塊に
加えて、この患者は、胸部、骨盤、および大腿において広範な疾患を有した。
【0230】 (c.他の処置様式と組み合わせたTM) 銅欠乏の長期維持の間、さらなる処置様式を、患者の最適な管理に適切である
ように、TMに追加した。以前に処置していない転移性乳癌を有する患者は、処
置の12ヶ月後には、良好から優れた生活レベルを伴える程度に回復している。
この患者は、気管傍リンパ節、後頚部リンパ節、および腹膜後リンパ節鎖におい
て転移を有したが、全ての細胞傷害性療法を辞退した。この患者は、TM処置に
おける6ヶ月を超える間、安定した状態の疾患を有した。このとき、気管傍節お
よび腹膜後節の二次元サイズのわずかな増加(ベースラインの25%未満)に起
因して、この薬物が市販されるようになった後、トラスツズマブ(trastu
zumab)療法を平行して開始した。この患者は、疾患の全ての部位でトラス
ツズマブに対する迅速な応答を示した:1サイクル後、頚部において完全な臨床
応答があり、そして3サイクルのトラスツズマブ後には、全ての以前疾患であっ
た部位で、完全な応答が放射線学的に確証された。この患者は、TMを続けたが
、トラスツズマブは、6投与後に中断した。患者は、トラスツズマブ療法の中断
後の3ヶ月間、TM単独では完全な応答者として状態を維持しつづけた。トラス
ツズマブ療法の追加後に完全な応答が達成されたので、この患者は、表5におい
て、TMに対して安定した状態の疾患のみを有するとして分類される。
【0231】 顔面および頭皮の広範な血管肉腫を有する2人の患者は、TMに対して安定し
た状態の疾患を達成した。眼窩を脅かす眼病変からの重篤な慢性出血を有する1
人の患者において、インターフェロン−α2(IFN−α)を、腫瘍応答を増強
しようとしてTMに追加した。血管腫の進行についての研究に基づいて、低用量
のインターフェロンの使用が、血管腫の処置の間、有効であり得るという示唆(
Takahashiら、1994)を考慮して、IFN−αをこれらの両方の患
者に、1日に2回、500,000単位の用量で、皮下投与した。放射線療法も
また、これらの2人の患者に対し、活発に出血中の(しかし、進行していない)
病変を制御しようとして、TMを行う一方で行った。両患者とも、60日を超え
る間、疾患が安定した。彼らの1人は、患者の選択のために治療を中断する前は
、5ヶ月を超える間、安定した状態の疾患を維持した。TMにこれらの処置様式
を追加することによって、毒性の悪化は見られなかった。
【0232】 これは、癌についての抗脈管形成療法として、テトラチオモリブデートを用い
る銅欠乏の誘導および維持の初めてのヒトでの試験である。進行した癌を伴う患
者群において、TMは、Cpが、処置の17ヶ月までの間に、ベースラインレベ
ルの10〜20%に低下する場合、顕著に無毒であることが実証された。観察さ
れた薬物関連毒性は、1人の患者において軽度の貧血のみであった。これは、C
pレベルを所望の標的にもたらすようにTM用量を調整して、容易に可逆性であ
った。多様な必須の生物学的プロセス(ヘム合成、スーパーオキシドジスムター
ゼおよびシトクローム機能を含む)において銅が果たす多様な役割にもかかわら
ず、継続した有意な有害な効果は、ベースラインの約20%までのCpの減少の
際に観察されなかった。この銅の減少のレベルにより、化学的な銅欠乏の限界が
より低くなり、そして軽度の臨床上の銅欠乏(これは、軽度の貧血の最初の徴候
である)の開始となる。
【0233】 オキシダーゼ法(安価でかつ広く利用可能な試験)により得られた血清Cpレ
ベルの使用は、TM療法の間の全身の銅状態の感受性があり、かつ信頼性のある
代理マーカーとして確証された。1日当たり6回の投薬レジメ、および1日当た
り90〜120mgの範囲の開始TM用量を使用すると、血清Cpは、試験した
18人の患者のうち17人で、ベースラインの50%に再現性をもって低下し、
そして18人の患者のうち14人でベースラインの20%に再現性をもって低下
した。ベースラインの50%への減少は平均30日で達成され、さらに、5〜1
0mg/dlのCpレベルの低下には20〜30日間かかった。このCpの減少
速度は、早期の悪性病変の初期処置またはアジュバント設定には合理的であるが
、広範に転移した進行した癌においては、この速度は、有意な数の患者において
、銅欠乏の誘導の間のいくらかの疾患進行を妨げるために加速される。90〜1
20mg/日の負荷用量の変化は、Cp減少の速度に影響しないようであるので
、そして、食物による銅の代表的な1日摂取を考慮すると、食間におけるより高
い用量が、銅欠乏の誘導の速度を加速するために必要とされる。
【0234】 TM誘導銅欠乏に対するCp応答は、単調であり、そして被験体間の変動をほ
とんど示さないので、用量管理を難しくする、突然の変化または予測し得ない変
動の危険性は本質的にない。Cpレベルに従って、銅状態をモニタリングするに
は、1〜2週間に1回で十分である。結果として、過治療が容易に検出可能であ
り、そして矯正可能である。
【0235】 本研究の結果として、現在のTM用量レジメを用いると、TM療法の開始と、
おそらく抗脈管形成レベルまでの腫瘍中の銅レベルの減少との間には、かなりの
開きがあることが明らかである。銅欠乏の抗脈管形成レベルに達する能力のさら
なる遅延は、ほとんどの腫瘍が銅を隔絶する(sequester)可能性であ
る(ArnoldおよびSasse、1961;Apelgotら、1986;
Gullinoら、1990;FuchsおよびSacerdote de L
ustig、1989)。従って、脈管形成を阻害するのに十分に低いレベルで
あるとして定義される、有効に低いレベルの銅に腫瘍微環境を枯渇させるには、
さらなる時間が必要であり得る。従って、非常に迅速な進行性の大きな腫瘍を有
する患者は、抗脈管形成療法に加えて、本明細書中に記載のようなさらなる処置
様式を必要とし得る。
【0236】 さらに、初期に有効な抗脈管形成は、活発な腫瘍壊死を引き起こし得、このこ
とは、死滅しつつある細胞からさらなる銅の放出を生じる。1人の患者の場合、
Cpにおける一過性の上昇は、超音波が、大きな腫瘍塊が血流の有意な減少に起
因して中心的な壊死を受けることを示唆したのとほぼ同じ時に、観察された。従
って、ベースラインの20%の標的レベルでのCpの60〜90日という期間は
、抗銅療法に対する応答の評価のために合理的な出発点である。肺病変の部分的
な退縮を示した2人の患者では、腫瘍の制御はより早期に始まり得た。これらの
両患者において、肺実質転移が腫瘍退縮の部位であったこともまた、興味深いこ
とである。軽度の臨床上の銅欠乏は、高い酸化ストレスの条件(例えば、肺にお
いて存在するような条件)下では、転移病巣が酸化的損傷により感受性であるよ
うに、スーパーオキシドジスムターゼ機能を損なう可能性がある(Culott
aら、1997)。
【0237】 個体差に関わらず、所定の塊に対する全血流を決定するための3D超音波の使
用は、少なくとも8週間の間に誘導されたベースラインの20%への軽度の銅減
少の維持が、腫瘍血流を変化させるのに十分なようであることを示す。病巣の血
流または代謝状態に対してコンピューター補助断層撮影が相対的に非感受性であ
るために、3D超音波についてここで実証されるように、並行した画像化様式が
、腫瘍の大きさに加えて機能的応答を評価するために好ましい。
【0238】 これらの研究は、種々のタイプの固形腫瘍の大きさが、本研究により定義され
るようにベースラインの20%以下にまでCpを減少させることにより表される
、軽度の臨床上の銅欠乏の状態に十分な時間を考慮して、TMにより安定してい
るか、または減少していることを示す。90日を超える日数の間、標的Cpレベ
ルで維持された患者間で、有意な割合の症例(6人のうち5人)が安定しており
、生活レベルに悪影響はなかった。進行した癌を有するこの患者集団では、処置
された患者のうち39%が、この期間の間、標的Cpで維持され得た。
【0239】 これらの患者において観察された進行パターンおよび進度もまた、有用な情報
を提供した。1人の患者が1つを除いて全ての部位で安定した状態の疾患を達成
し、より生活を脅かす疾患部位(腸リンパ節および気管傍リンパ節)での疾患の
安定のために、TM療法を続けることを選択した。興味深いことに、黒色腫を有
するこの患者における進行の部位は、大副腎転移である。この部位は、現時点で
、照射を受けている。この試験におけるこの所見および他の所見は、銅欠乏が、
脈管形成の大部分の阻害性となり得るが、腫瘍タイプの異質性および転移の特異
的な局在が、この治療様式に対する応答を調整し得ることを示唆する。病変は、
TM療法を受けているときよりも銅が枯渇した際にずっと早く進行するようであ
るので、補助様式(全身的または局所局部的のいずれかで)が、患者に銅欠乏状
態を残しながら、進行の特異的部位に取り組むために、使用され得る。
【0240】 これらの研究はまた、TMと放射線療法、トラスツズマブ、およびインターフ
ェロンαとの組み合わせ療法が、追加した様式の明らかな毒性悪化を伴うことな
く生じることを示した。全体として考慮すると、この試験に由来する安全性およ
び予備的な効力データは、早期転移性疾患、最小疾患の処置のために、および伴
う高リスク臨床設定(化学防御を含む)において、TMを単独で、または組み合
わせて使用することを支持する。
【0241】 (実施例4:抗癌療法としてのTMの第二期/第三期臨床試験) (A.序) この試験における薬物用量およびスケジュールの設計に、4つの考慮要件が提
起される。第一の要件は、以前使用した投薬レジメは、銅の減少に有効ではある
が、余りにも長くかかりすぎ、効力を適切に評価するためにCp終点に達するこ
とができないことである。腫瘍は銅を隔絶することが知られているので(Ape
lgotら、1986;ArnoldおよびSasse、1961)、抗脈管形
成効果は、全身銅欠乏が、おそらく少なくとも数週間から数ヶ月まで維持される
まで、検出されないようである。従って、効力についての可能性を最大にするた
めにできるだけ迅速に全身銅欠乏の終点(0〜20%Cpレベル)に達すること
が重要である。従って、現在の試験は、「負荷」用量を利用して(2週間用いる
)、Cp規準を達成し、続いて、より低い維持用量を利用して、0〜20%ベー
スラインの標的Cpが続くようにする。この設計は、第一期試験で得られた知識
を利用し、そして安定な状態の疾患または腫瘍の減少を提供するTMの効力を決
定する。
【0242】 第二に、この試験は、有効な応答が、どれほど厳密にCpレベルが制御される
かに依存するか否かを評価する。従って、第一の患者群では、Cpレベルは、1
0〜20%の間で維持され、そして第二の患者群では、Cpレベルは、0〜10
%の間で維持される。
【0243】 第三に、この試験は、低い銅状態の維持が、亜鉛療法と共により容易に維持さ
れるか否かを決定する。本発明者らは、ウィルソン病のFDA認可療法として亜
鉛を開発した。これは、腸メタロチオネインを誘導し、そして銅の吸収を阻止す
ることによって作用する。従って、6人の患者では、低い銅状態が、1日3回2
5mgの亜鉛を使用することにより維持される。この用量は、Cp規準を維持す
るのに必要なように調整される。
【0244】 (B.第二期研究) (1.負荷用量) 本発明者らは、食事と共に1日3回20mgおよび食事間に1回の60mgの
投与の投薬スケジュールが、食事と共に1日3回20mgおよび食事間に1日3
回の20mgの投与の投薬スケジュールよりも、Cpレベルを迅速に20%未満
に減少することを見出した。従って、この投薬スケジュールを第二期試験で研究
する。TMの3つの他の負荷用量もまた研究する:レベル1:食事間に1日3回
20mgおよび食事と共に1日3回20mg、Cpが20%未満になるまで(1
0人の患者);レベル2:食事間に1日3回25mgおよび食事と共に1日3回
25mg、Cpが20%未満になるまで(10人の患者);ならびにレベル3:
食事間に1日3回30mgおよび食事と共に1日3回30mg、Cpが20%未
満になるまで(10人の患者)。
【0245】 負荷用量研究の目的は、2〜3週間以内で所望のCpレベル(ベースラインの
20%未満)に達することである。この試験は、レベル1で開始する。レベル1
が、所望のCpレベルを達成すれば、全ての30人の患者は、用量レベル1の用
量で負荷する。レベル1が所望のCpレベルを達成しなければ、この試験は、レ
ベル2の負荷用量に移り、そして必要であればレベル3の用量に移る。これらの
用量の各々は、数週間から数ヶ月の間は安全である。
【0246】 (2.TMの維持用量) 2つのレベルの維持用量を研究する:レベル1:TM用量を、必要に応じて、
Cpをベースラインの10〜20%に維持するように調整する(12人の患者)
;およびレベル2:TM用量を、必要に応じて、Cpをベースラインの0〜10
%に維持するように調整する(12人の患者)。
【0247】 2つの維持用量レベルを比較する目的は、よりストリンジェントな銅制御が効
力を増強する傾向にあるか否かの全体像を得ることである。一般に、腫瘍タイプ
を、2つのレベル間で無作為化する。
【0248】 (3.亜鉛の維持用量) 各負荷用量群からの2人の患者(合計で6人の患者)を、維持制御のために亜
鉛療法で処置する。この試験は、(食事とは別に)1日3回の25mgの亜鉛で
開始し、そしてベースラインの20%未満にCpを維持するように用量を調整す
る。
【0249】 亜鉛研究の目的は、TMを用いるよりも、亜鉛を用いる維持の間に銅状態を制
御することがより容易であるかを知ること、および亜鉛を用いる効力がTMを用
いる効力にほぼ匹敵し得るか否かの全体像を得ることである。
【0250】 (4.患者選択規準) 患者選択規準は、以下を包含する:a)転移性腺癌、扁平上皮癌、または肉腫
が任意の器官に由来すること;b)疾患が、胸部X線、CAT走査、または骨単
純写真により測定可能であること;c)疾患の進行が、開始3ヶ月以内で少なく
とも1回示されること;d)インフォームドコンセントを受けることができるこ
と;e)動作状態がECOG 0−1であること;およびF)余命6ヶ月以上で
あること。
【0251】 排除規準は、以下を包含する:ヘマトクリットが29未満であること、LFT
が正常の4倍を超えること、または重篤な共存する医学的疾患が集中的な管理を
必要とすること。
【0252】 (5.パラメーター) 患者において伴われるパラメーターは、以下である:1)CBC血小板(毎週
);2)電解質、BUN、クレアチニン、LFT(毎週);3)血清中銅、モリ
ブデン、セルロプラスミンのための血液(毎週);4)検尿(毎週);5)臨床
状態(2週間毎);6)腫瘍測定(4週間毎);および7)脈管形成の探索−感
受性の超音波(8週間毎)。
【0253】 (6.毒性終点) 既に述べたとおり、薬物は、ヘマトクリットまたはWBCのいずれかがベース
ラインの80%より下方に低下した場合に停止する。薬物はまた、考えられる全
身毒性(例えば、異常な肝臓もしくは腎臓機能試験)、またはNCI規準により
3級以上のいかなる他の毒性もの形跡がある場合にも停止する。
【0254】 (7.研究の長さ) 6ヶ月までに患者において疾患の安定または減少の形跡がなかった場合、その
患者での研究は終了する。そうでない場合、治療は、疾患が、全ての部位の最初
の大きさの25%以内に制御され、有意な毒性がなく、そして患者が続けること
を望む限り、続ける。
【0255】 本明細書中に開示され、そして請求された全ての組成物および/または方法は
、本開示を考慮して過度の実験を伴うことなく作製され、そして実施され得る。
本発明の組成物および方法は、好ましい実施態様によって記載されるが、この組
成物および/または方法に対して、ならびに本明細書中で開示された方法の工程
または一連の工程において、発明の概念、精神、および範囲から逸脱することな
く変更が適用されることが、当業者に明らかである。より詳細には、化学的かつ
生理学的の両面で関連しているある薬剤が、同じまたは類似の結果が達成されれ
ば本明細書中に記載の薬剤について置きかえられ得ることも明らかである。当業
者に明らかである、このような全ての同様の置き換えおよび改変は、上記の特許
請求の範囲に定義されるような発明の精神、範囲、および概念内であるとみなさ
れる。
【0256】 (参考文献) 以下の参照文献は、それらが、本明細書中の記載を補充して、代表的な手順ま
たは他の詳細を提供する程度に、参照として本明細書中に詳細に援用される。
【0257】
【表6】
【0258】
【表7】
【図面の簡単な説明】
以下の図面用紙は本明細書の一部であり、そして本発明の特定の局面をさらに
実証するために含まれる。本発明は、本明細書中に提示される特定の実施態様の
詳細な記述と組み合わせて、1つ以上のこれらの図面を参照することにより、よ
り良好に理解され得る。
【図1】 図1は、日齢の関数としてのTM処置動物およびコントロール動物の無疾患(
disease−free)生存である。毎日のTM処置は、各々の動物につい
て、約100日齢で始めた。処置群(□)およびコントロール群(△)は、遺伝
的に同一の癌易発性HER2−neuトランスジェニックマウスである。無疾患
である動物の割合を縦軸に示し、日齢を横軸に示す。
【図2】 図2は、TM処置マウスにおける時間の関数としてのセルロプラスミン活性で
ある。活性の分光光度アッセイを、処置の間、規則的な間隔で処置マウスおよび
コントロールマウスの血清について用いた。コントロールセルロプラスミンの画
分を縦軸に示し、TM治療の日数を横軸に示す。
【図3】 図3は、SUM149乳癌細胞株細胞を注射したヌードマウスにおける経時的
な腫瘍サイズである。5匹のマウスの3つの群は、106SUM149乳癌細胞
を注射され、そしてこの群の2つに、−7日に開始して、飲み水を介して1.2
mg/日/マウスのTMを与えた。34日後、マウスのこれら2つの群において
TMを抜き、次いで以前の用量の半分(0.6mg/日/マウス;▲)または完
全な用量(1.2mg/日/マウス;●)で再開した。コントロールマウス(◆
)にTMを与えなかった。腫瘍断面積(mm2)の平均を縦軸に示し、そして時
間(日)を横軸に示す。
【図4A】 図4Aは、全身の銅状態の代理マーカーとしてのセルロプラスミンである。T
M治療の日数の関数としての、時間tでのCp対ベースラインCpの比率の減少
の割合は、用量レベルI(図4A)、用量レベルII(図4B)、および用量レ
ベルIII(図4C)に示す。Cpの50%減少までの平均時間は、30日であ
る。
【図4B】 図4Bは、全身の銅状態の代理マーカーとしてのセルロプラスミンである。T
M治療の日数の関数としての、時間tでのCp対ベースラインCpの比率の減少
の割合は、用量レベルI(図4A)、用量レベルII(図4B)、および用量レ
ベルIII(図4C)に示す。Cpの50%減少までの平均時間は、30日であ
る。
【図4C】 図4Cは、全身の銅状態の代理マーカーとしてのセルロプラスミンである。T
M治療の日数の関数としての、時間tでのCp対ベースラインCpの比率の減少
の割合は、用量レベルI(図4A)、用量レベルII(図4B)、および用量レ
ベルIII(図4C)に示す。Cpの50%減少までの平均時間は、30日であ
る。
【図5A】 図5Aは、2患者におけるCp標的の20%のベースラインを維持するための
TMでの長期治療の管理である。図5A。患者は、60日離れた2つの時間点で
、用量の減少を必要とした。この患者は、Cpが5mg/dを割ることを防ぐた
めに、以後のTM用量の減少を必要とするようである。図5B。TM用量を、上
記の標的範囲のCpのドリフトを防ぐために100日後増加させた。食餌および
腫瘍の挙動(例えば、腫瘍細胞消化)の異質性は、用量調整の必要性における個
体の可変性で説明され得る。
【図5B】 図5Bは、2患者におけるCp標的の20%のベースラインを維持するための
TMでの長期治療の管理である。図5A。患者は、60日離れた2つの時間点で
、用量の減少を必要とした。この患者は、Cpが5mg/dを割ることを防ぐた
めに、以後のTM用量の減少を必要とするようである。図5B。TM用量を、上
記の標的範囲のCpのドリフトを防ぐために100日後増加させた。食餌および
腫瘍の挙動(例えば、腫瘍細胞消化)の異質性は、用量調整の必要性における個
体の可変性で説明され得る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 35/00 A61P 35/00 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CR, CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI,G B,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL ,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ, LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT ,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL, TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,V N,YU,ZA,ZW (72)発明者 ブルワー, ジョージ ジェイ. アメリカ合衆国 ミシガン 48109, ア ン アーバー, メディカル サイエンス ザ セカンド 4708, デパートメント オブ ヒューマン ジェネティックス アンド インターナル メディシン, ザ ユニバーシティー オブ ミシガン内 (72)発明者 メラジバー, ソフィア ディー. アメリカ合衆国 ミシガン 48109, ア ン アーバー, メディカル サイエンス ザ ファースト 5510, デパートメン ト オブ インターナショナル メディシ ン, ザ ユニバーシティー オブ ミシ ガン内 (72)発明者 オクウィグ, ネイサン アメリカ合衆国 ミシガン 48109, ア ン アーバー, デパートメント オブ ケミストリー, ザ ユニバーシティー オブ ミシガン内 (72)発明者 クークーバニス, ディミトリ アメリカ合衆国 ミシガン 48109, ア ン アーバー, デパートメント オブ ケミストリー, ザ ユニバーシティー オブ ミシガン内 Fターム(参考) 4C084 AA19 ZA362 ZB261 ZB262 4C086 AA02 DA31 HA03 HA08 HA25 HA28 MA01 MA02 MA04 ZA36 ZB26

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも第1の炭水化物分子と結合されたチオモリブデー
    ト化合物を含有する組成物。
  2. 【請求項2】 前記チオモリブデート化合物がテトラチオモリブデートであ
    る、請求項1に記載の組成物。
  3. 【請求項3】 前記少なくとも第1の炭水化物分子がショ糖である、請求項
    1または2に記載の組成物。
  4. 【請求項4】 癌の処置または予防における使用のための、請求項1〜3の
    いずれか1項に記載の組成物。
  5. 【請求項5】 ヒト被験体における異常な血管新生によって特徴付けられる
    疾患を処置または予防するための医薬の製造における、銅を結合しかつ薬剤−銅
    −タンパク質複合体を形成する薬剤の使用。
  6. 【請求項6】 前記薬剤が少なくとも第1の炭水化物分子と結合したチオモ
    リブデート化合物である、請求項5に記載の使用。
  7. 【請求項7】 前記薬剤がテトラチオモリブデート化合物である、請求項5
    に記載の使用。
  8. 【請求項8】 前記医薬が癌の処置または予防について意図されている、請
    求項5〜7のいずれか1項に記載の使用。
  9. 【請求項9】 ヒト被験体に投与するための治療用キットであって、少なく
    とも第1の適切な容器中に、以下: a)銅を結合しかつ薬剤−銅−タンパク質複合体を形成する少なくとも第1の
    薬剤;および b)少なくとも1つの亜鉛または第2の抗癌剤、 の治療に有効な組み合わせた量を含む、キット。
  10. 【請求項10】 癌を処置するための医薬の製造におけるテトラチオモリブ
    デートの使用。
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