【発明の詳細な説明】
アジポニトリルの連続水素化方法
関連出願の相互参照
出願人は、仮出願第60/042,126号(1997年3月28日出願)の
優先権の利益を請求する。
発明の背景
1.発明の分野:
本発明は、アジポニトリル(ADN)のヘキサメチレンジアミン(HMD)お
よびアミノカプロニトリル(ACN)への連続的な水素化を行うための改善され
た方法に関する。より詳細には、限定としてではないが、本発明は、スポンジ状
コバルト触媒の存在下、苛性アルカリを実質的に含まない反応媒体において低温
および低圧のもとでADNを連続的に水素化するための方法に関する。
2.関連技術の説明:
ニトリル類の水素化が、水素化触媒と、ニトリル、水素およびアルカリまたは
塩基を含有する溶液との接触によって実施できることはこの分野では一般に知ら
れている。反応生成物として、一般には、一級アミンが所望の生成物として含ま
れ、1種以上の二級アミンおよび三級アミンが偶発的な副生成物として含まれる
。二級アミンは、一級アミンと、一級アミンの部分的な水素化によって生じるイ
ミン中間体との反応によって生成すると考えらる。一方、三級アミンは、二級ア
ミンとさらなるイミン中間体との反応の生成物である。そのような水素化を行う
ことに関して様々な代替方法が提案されている。そのような方法は、攪拌型オー
トクレーブ反応器での回分プロセス法を含むか、あるいは連続プロセス法として
固定床反応器または気泡流反応器を使用する。
例えば、米国特許第3,758,584号および同第3,773,832号で
は、固定床反応器が、ADNを水素化するために使用される。HMDは、過剰な
水素および無水アンモニアの存在下、85℃から185℃の温度4,000ps
igから6,000psigの圧力のもとで、充填床反応器においてADNを水
素化することによって調製された。コバルトまたは鉄の酸化物が、ペレット化さ内の温度で還元された。この方法の大きな欠点は、高温および高圧、大量のアン
モニア、この方法で使用される鉄またはコバルトの酸化物触媒の還元が必要であ
り、熱除去に関して困難を伴うことである。さらに、この方法で使用される触媒
のコストが時間とともに増加していく。
米国特許第4,429,159号および同第4,491,673号は、気泡カ
ラム反応器におけるRaney(登録商標)ニッケルの使用を記載する。記載さ
れている方法は、より低い圧力(200psigから500psig)および温
度(100℃未満)を使用する。しかし、この方法は、触媒の活性、選択率およ
び寿命を維持するために多量の苛性アルカリを使用する。その結果として、高純
度HMDの製造には、費用のかかる精製ステップが必要である。
HMDを調製するための方法が、米国特許第5,105,015号に開示され
ている。この方法では、HMDは、固定床反応器において、CrおよびNiで活
性化された顆粒状のRaney(登録商標)Co触媒の存在下でADNを水素化
することによって製造される。この反応は、(ADNを基準として)少なくとも
5wt%のアンモニアの存在下、温度および圧力が、それぞれ、60℃から12
5℃の範囲内および50psiから5,000psiの範囲内で行われる。この
ような方法の不都合な点は、本質的に、(溶媒として使用されている)アンモニ
アを回収し、精製し、圧縮して再循環する必要があることである。
分枝状脂肪族ジアミンの対応ジニトリルからの調製が、米国特許第4,885
,391号に記載されている。この特許は、クロムで活性化されたスポンジ状コ
バルト触媒を使用して、0.5重量%から4.0重量%の水の存在下、約80℃
から150℃の温度および約400psigから2,500psigの圧力のも
とで、2−メチルグルタロニトリルを2−メチル−1,5−ペンタメチレンジア
ミンに水素化することを開示する。分枝状脂肪族ジニトリルが直鎖状脂肪族ジニ
トリルと同じように挙動するかどうかは明らかではないが、この方法は、明らか
に、
いくつかの環状縮合生成物を含む多数の副生成物を生成する。このことは、反応
中における所望の生成物の収量を低くし、その分離を必要とする。さらに、触媒
活性を保持するために、大量の水が存在するように反応槽内に連続的に送液しな
ければならない。
発明の概要
上記を考慮して、本発明の目的は、実質的に無機塩基および/または水を含ま
ない適切なスポンジ状コバルト触媒の存在下でアジポニトリルを水素化すること
によって、ヘキサメチレンジアミンおよび/またはアミノカプロニトリルを連続
的に製造するための低温低圧方法を提供することである。さらなる目的は、触媒
を装置内で再生する簡便な方法を提供すること、従って、商業方法において必要
と考えられるような触媒の有効寿命を延ばすことである。
従って、本発明は、実質的に苛性アルカリを含まない反応媒体において、アジ
ポニトリルをヘキサメチレンジアミンおよび必要に応じてアミノカプロニトリル
に連続的に水素化するための改善された方法を提供する。この方法は下記のステ
ップを有する。すなわち、
(i)スポンジ状コバルト触媒の存在下、実質的に苛性アルカリを含まない反
応媒体において、25℃から150℃の温度および2,000psigまでの圧
力のもとで、アジポニトリルおよび水素を十分な時間にわたって接触させ、前記
アジポニトリルの少なくとも一部をヘキサメチレンジアミンおよび必要に応じて
アミノカプロニトリルに変換させる工程;
(ii)アジポニトリルを前記反応媒体に連続的に添加する工程;
(iii)ヘキサメチレンジアミンおよび必要に応じてアミノカプロニトリル
を前記反応媒体から連続的に取り出す工程;および
(iv)前記ヘキサメチレンジアミンおよび必要に応じて前記アミノカプロニ
トリルを回収する工程。
本発明による上記方法は、下記のさらなる工程によって副反応生成物の生成を
制御することをさらに提供する。すなわち、
(i)5モル%と11モル%との間のビスヘキサメチレントリアミン(BHM
T)が反応生成物中に存在するときに水を反応媒体に添加する工程、および
(ii)反応生成物中のBHMTの量が1モル%未満に低下したときに反応媒
体への水の添加を中断する工程。
本発明による方法はまた、有効量の水酸化アンモニウムを反応媒体に定期的に
添加することによって触媒を装置内で復活させる。
発明の詳細な説明
本発明は、任意の直鎖状脂肪族ポリアミンおよび/またはアミノニトリルの対
応する直鎖状脂肪族ニトリルまたは直鎖状脂肪族ポリニトリルからの製造で、ス
ポンジ状コバルト触媒が用いられる製造に一般に適用可能であると考えられるが
、本発明を、そのような製造のための好ましい方法に関して説明する。
本発明はまた、適切なスポンジ状Co触媒の存在下におけるアジポニトリルの
水素化によってヘキサメチレンジアミンおよび/またはアミノカプロニトリルを
連続的に製造するための便利な低温低圧方法を表すと考えられる。そのように、
この方法は、ヘキサメチレンジアミンおよび/またはアミノカプロニトリルの商
業的製造に関して非常に有用であり得る。
下記の実施例に例示されているように、この方法は、典型的には、好ましくは
攪拌型オートクレーブ反応器槽または十分に攪拌されるオートクレーブ反応器槽
において、所望の生成物および水素を、加圧下のもとで、苛性アルカリ溶液の存
在下で接触させ、その後、所望の操作温度に達したときにアジポニトリルなどの
反応物を連続的に添加することによって開始される。このように、連続操作は、
最終的に、苛性アルカリ溶液を実質的に含まない(下記の実施例にもまた例示さ
れている)。本発明の重要な実施形態には、水および/または稀釈された苛性ア
ルカリ溶液を実質的に含まない水素化反応の実施が含まれる。
触媒は、好ましくは、細かく分割されている、クロムおよびニッケルで修飾さ
れた(「クロムおよびニッケルで活性化された」)スポンジ状コバルトである。
「スポンジ状金属」は、溶解したアルミニウムを有し、必要に応じて活性化剤を
含有する金属、好ましくはベース金属(例えば、コバルトまたはニッケル)の広
範囲の多孔質「骨格」または「スポンジ様」構造を有するものである。ニッケル
、
クロム、鉄およびモリブデンからなる群の少なくとも1種の金属活性化剤で修飾
されたスポンジ状コバルトが、特に有用である。スポンジ状金属触媒はまた、表
面の水和酸化物、吸着した水素ラジカル、および水素気泡をその空孔内に含有す
る。そのような触媒は、W.R.Grace&Co.およびActivated
Metalsから市販され、約0.5重量%から6.0重量%のクロムおよび0
.5重量%から6.0重量%のニッケルを含有する。そのような触媒およびその
調製方法は、欧州特許出願第0,212,986号に開示されている。
本発明の方法は、スポンジ状金属触媒を使用する固定床(細流床)あるいはス
ラリー相で実施することができる。固定床触媒を使用して本方法を用いる場合、
触媒は、粒子サイズが約0.03インチから0.40インチの範囲である顆粒形
態である。スラリー相を使用して本方法を用いる場合、触媒は、細かく分割され
た形態であり、好ましくは約100μ未満のサイズであり、最も好ましい範囲は
20μから75μである。
ADNの水素化反応は、25℃から150℃の間の範囲の比較的低い温度で行
うことができる。好ましい温度範囲は50℃から125℃であり、最も好ましい
範囲は70℃から100℃である。それよりも低い温度では、水素化反応速度は
小さくなりすぎる。発熱反応の温度を制御する方法は非常に複雑であるので、実
用的ではない。一方、温度が高いほど、通常、最後は廃棄物になる望ましくない
縮合生成物の生成が誘導され、その結果、所望する生成物(ヘキサメチレンジア
ミンまたはアミノカプロニトリル)の選択率および収率が低下する。
本発明の改善された水素化方法は、比較的低い圧力で実施することができる。
米国特許第3,758,584号および同第3,773,832号に記載されて
いるように、アジポニトリルを水素化する現在実施されている商業的方法は、高
圧および高温のもとで行われ、多額の投資を必要とする。低圧方法を使用する利
点は、工業方法の投資費用が低くなるということである。本発明の水素化反応は
、所望する生成物の商業的製造に必要な反応物および生成物の許容され得る流れ
を維持するのに十分な圧力から2,000psi(13.79MPa)未満の圧
力までの範囲の水素圧のもとで進行し得る。しかし、操作圧の好ましい範囲は1
00psiから1,500psi(0.69MPaから10.34MPa)であ
り、
最も好ましい範囲は250psiから1,000psi(1.72MPaから6
.89MPa)である。
本発明の重要な目的は、選択率、従って出発ジニトリルの最も高い可能な変換
においてヘキサメチレンジアミンまたはアミノカプロニトリルの収率を最大にす
ることである。ヘキサメチレンジアミンおよびアミノカプロニトリルの収率は操
作条件に依存する。そのような操作条件には、温度、圧力、水素流速、触媒の量
および種類、溶媒の性質および濃度、添加される無機塩基の有無、ならびに空間
速度などが含まれる。本発明の目的のために、用語「空間速度」は、触媒の単位
重量に対する1時間あたりの反応器内に供給されるアジポニトリルの単位重量と
して定義される。典型的には、アジポニトリルは、ヘキサメチレンジアミンおよ
びアミノカプロニトリルがそれぞれ所望の生成物である場合には、アジポニトリ
ルの空間速度が0.5から5.0の範囲内にあるように反応器に添加されなけれ
ばならない。アジポニトリルの最も好ましい空間速度、すなわちヘキサメチレン
ジアミンおよび/またはアミノカプロニトリルを最大にする空間速度は、従来の
技法を使用して、当業者によって容易に決定することができる。アジポニトリル
の添加速度が、本明細書中に記載されている空間速度よりも小さい場合かまたは
大きい場合には、所望する化合物の選択率および収率は劇的に低下し、触媒活性
の低下および触媒寿命の低下をもたらす。
本発明による連続操作を実施するために有用な反応器には、一般に、任意の従
来の水素化反応器が含まれる。そのような反応器の例には、プラグフロー反応器
、連続攪拌槽反応器および気泡カラム反応器が含まれるが、これらに限定されな
い。本発明の反応に限定されない気泡カラム反応器の例が、米国特許第4,42
9,159号に記載されている。プラグフロー反応器および連続攪拌槽反応器の
説明は、Octave Levenspiel著「Chemical React
ion Engineering」に記載されている。
別途指定されない限り、下記の実施例に例示されているアジポニトリルの水素
化は、Autoclave Engineersによって設計および製造された
300ccのオートクレーブで行った。この300cc反応器はハステロイ−C
から組み立てられ、最大許容使用圧(MAWP)は、300℃で約1,500p
sigであった。反応器内の混合は、中空シャフトに取り付けられ、電気モータ
に駆動される磁気的に連結されたインペラで行った。攪拌機の速度をストロボ光
によってモニターした。反応器を、400ワットの外部のバンドヒータによって
加熱した。
反応器は、熱電対挿入部、破裂板、および5mmのステンレススチールフリッ
トを取り付けた2本の1/8インチの液浸脚(dip leg)(それぞれ、反
応器内への液体添加および反応器からの生成物抜き出しを目的とする)を備えて
いた。水素を、オートクレーブ反応器に、攪拌器の中空シャフトを介して連続的
に供給した。反応器内への水素流速を、Brooks(登録商標)マスフローコ
ントローラによって測定し、モニターした。反応器内の圧力を、Grove背圧
レギュレータを用いて維持した。アジポニトリルを、Iscoシリンジポンプ(
260Dシリーズ)を使用して反応器に連続的に供給した。
反応器を、減圧(let−down)タンクを介して1リットルの生成物受器
に接続した。サンプルを、実験開始時および指定された時間間隔(7時間および
16時間の間隔)で採取した。生成物受器から採取したサンプルを融解し、イソ
プロパノール(溶媒)に溶解した。シクロドデカンを内部標準として生成物サン
プルに添加し、5890A Hewlett−Packardキャピラリーガス
クロマトグラフで分析を行った。
下記の実施例を、本発明の様々な個々の面および特徴をより十分に説明し、さ
らにそれらを例示するために示し、そのように、実施例は、非限定的であること
が考えられ、本発明の例示を意図するが、いかなる点においても過度に限定する
ことを意図しないことを理解しなければならない。
実施例1
水および苛性アルカリの非存在下でのHMD合成:
120gのHMD、0.6mlの苛性アルカリ溶液(50%水酸化ナトリウム)
、および15g(7.5gの乾燥触媒を加えた7.5gの水)の予備活性化Ra
ney(登録商標)コバルト触媒(W.R.Grace 2724)を反応器に
入れた。オートクレーブを封止し、窒素による置換を数回行い、圧力試験を50
0
psigで行った。漏れがないことを確認した後、反応器を75℃に加熱し、撹
拌機を起動させた(1,200rpm)。所望の反応温度に達すると直ちに、反
応器の圧力を、背圧レギュレータを調節することによって500psigに設定
し、水素流速を600sccmに設定した。次いで、ADNを反応器に12g/
時間の速度で連続的に添加した。反応器内の生成物の滞留時間は10時間であっ
た。HMDの生成および生成物分布を、流通時間ならびに触媒1gに対する供給
ADNのグラム数の関数として表1に示す。苛性アルカリ(開始NaOHに関連
するナトリウム)の存在は、48時間流通した後には高周波誘導結合プラズマ(
ICP)分析によって検出されなかった。さらに、水酸化アンモニウム水溶液を
816時間後に添加して888時間で停止し、1035時間後に再開して実験終
了時まで続けた。水酸化アンモニウムの添加目的は、触媒の装置内での回復を実
証するためであった。 比較例
実施例1の実験を繰り返した。しかし、120gのメチルペンタメチレンジア
ミン(MPMD)(所望生成物)をHMDの代わりに使用し、反応を75℃の代
わりに130℃で行った。結果は、上記の操作条件下におけるメチルグルタロニ
トリル(MGN)の反応によって、望ましくない副生成物が主に生成したことを
示した。得られた結果を表Aに示す。 実施例2
実施例1の方法と類似した方法で、2回目の実験を、本質的には同一条件で行
った。しかし、水を、反応器に0.6ml/時間の速度で連続的に添加した。得
られた結果を表2に示す。 実施例3
稀釈した苛性アルカリ溶液の添加効果:
実施例1の方法と類似した方法で、3回目の実験を、本質的には同一条件で行
った。しかし、1wt%苛性アルカリ水溶液を、反応器に0.6ml/時間の速
度で連続的に添加した。得られた結果を表3に示す。 実施例4
アミノカプロニトリルの選択的合成:
4回目の実験を、実施例1と類似した方法で行った。しかし、反応を、500
ccオートクレーブで行い、200gのHMD、0.6mlの苛性アルカリ溶液
(50wt%水酸化ナトリウム)、および10g(5.0gの乾燥触媒を加えた
5.0gの水)の予備活性化Raney(登録商標)コバルト(Grace 2
724)を反応器に入れた。ADNの供給速度を、11.1時間の滞留時間で、
18g/時間で維持した。得られた結果を表4に示す。 このように、本発明をある程度具体的に説明し、例示してきたが、下記の請求
の範囲は、そのように限定されるべきではなく、請求の範囲の各要素およびその
均等物の表現と同等な範囲であることを理解されたい。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成11年3月15日(1999.3.15)
【補正内容】
例えば、米国特許第3,758,584号および同第3,773,832号で
は、固定床反応器が、ADNを水素化するために使用される。HMDは、過剰な
水素および無水アンモニアの存在下、85℃から185℃の温度27.6MPa
から41.4MPa(4,000psigから6,000psig)の圧力のも
とで、充填床反応器においてADNを水素化することによって調製された。コバ
混合物中で300℃から600℃の範囲内の温度で還元された。この方法の大き
な欠点は、高温および高圧、大量のアンモニア、この方法で使用される鉄または
コバルトの酸化物触媒の還元が必要であり、熱除去に関して困難を伴うことであ
る。さらに、この方法で使用される触媒のコストが時間とともに増加していく。
米国特許第4,429,159号および同第4,491,673号は、気泡カ
ラム反応器におけるRaney(登録商標)ニッケルの使用を記載する。記載さ
れている方法は、より低い圧力(1.4MPaから3.4MPa、すなわち20
0psigから500psig)および温度(100℃未満)を使用する。しか
し、この方法は、触媒の活性、選択率および寿命を維持するために多量の苛性ア
ルカリを使用する。その結果として、高純度HMDの製造には、費用のかかる精
製ステップが必要である。
HMDを調製するための方法が、米国特許第5,105,015号に開示され
ている。この方法では、HMDは、固定床反応器において、CrおよびNiで活
性化された顆粒状のRaney(登録商標)Co触媒の存在下でADNを水素化
することによって製造される。この反応は、(ADNを基準として)少なくとも
5wt%のアンモニアの存在下、温度および圧力が、それぞれ、60℃から12
5℃の範囲内および0.34MPaから340MPa(50psiから5,00
0psi)の範囲内で行われる。このような方法の不都合な点は、本質的に、(
溶媒として使用されている)アンモニアを回収し、精製し、圧縮して再循環する
必要があることである。
分枝状脂肪族ジアミンの対応ジニトリルからの調製が、米国特許第4,885
,
391号に記載されている。この特許は、クロムで活性化されたスポンジ状コバ
ルト触媒を使用して、0.5重量%から4.0重量%の水の存在下、約80℃か
ら150℃の温度および約2.76MPaから17.2MPa(400psig
から2,500psig)の圧力のもとで、2−メチルグルタロニトリルを2−
メチル−1,5−ペンタメチレンジアミンに水素化することを開示する。分枝状
脂肪族ジニトリルが直鎖状脂肪族ジニトリルと同じように挙動するかどうかは明
らかではないが、この方法は、明らかに、いくつかの環状縮合生成物を含む多数
の副生成物を生成する。このことは、反応中における所望の生成物の収量を低く
し、その分離を必要とする。さらに、触媒活性を保持するために、大量の水が存
在するように反応槽内に連続的に送液しなければならない。
発明の概要
上記を考慮して、本発明の目的は、実質的に無機塩基および/または水を含ま
ない適切なスポンジ状コバルト触媒の存在下でアジポニトリルを水素化すること
によって、ヘキサメチレンジアミンおよび/またはアミノカプロニトリルを連続
的に製造するための低温低圧方法を提供することである。さらなる目的は、触媒
を装置内で再生する簡便な方法を提供すること、従って、商業方法において必要
と考えられるような触媒の有効寿命を延ばすことである。
従って、本発明は、実質的に苛性アルカリを含まない反応媒体において、アジ
ポニトリルをヘキサメチレンジアミンおよび必要に応じてアミノカプロニトリル
に連続的に水素化するための改善された方法を提供する。この方法は下記のステ
ップを有する。すなわち、
(i)スポンジ状コバルト触媒の存在下、実質的に苛性アルカリを含まない反
応媒体において、25℃から150℃の温度および13.8MPa(2,000
psig)までの圧力のもとで、アジポニトリルおよび水素を十分な時間にわた
って接触させ、前記アジポニトリルの少なくとも一部をヘキサメチレンジアミン
および必要に応じてアミノカプロニトリルに変換させる工程;
(ii)アジポニトリルを前記反応媒体に連続的に添加する工程;
(iii)ヘキサメチレンジアミンおよび必要に応じてアミノカプロニトリル
を前記反応媒体から連続的に取り出す工程;および
(iv)前記ヘキサメチレンジアミンおよび必要に応じて前記アミノカプロニ
トリルを回収する工程。
本発明による上記方法は、下記のさらなる工程によって副反応生成物の生成を
制御することをさらに提供する。すなわち、
(i)5モル%と11モル%との間のビスヘキサメチレントリアミン(BHM
T)が反応生成物中に存在するときに水を反応媒体に添加する工程、および
(ii)反応生成物中のBHMTの量が1モル%未満に低下したときに反応媒
体への水の添加を中断する工程。
本発明による方法はまた、有効量の水酸化アンモニウムを反応媒体に定期的に
添加することによって触媒を装置内で復活させる。
本発明の方法は、スポンジ状金属触媒を使用する固定床(細流床)あるいはス
ラリー相で実施することができる。固定床触媒を使用して本方法を用いる場合、
触媒は、粒子サイズが約0.076cmから1.0cm(0.03インチから0
.40インチ)の範囲である顆粒形態である。スラリ一相を使用して本方法を用
いる場合、触媒は、細かく分割された形態であり、好ましくは約100μ未満の
サイズであり、最も好ましい範囲は20μから75μである。
ADNの水素化反応は、25℃から150℃の間の範囲の比較的低い温度で行
うことができる。好ましい温度範囲は50℃から125℃であり、最も好ましい
範囲は70℃から100℃である。それよりも低い温度では、水素化反応速度は
小さくなりすぎる。発熱反応の温度を制御する方法は非常に複雑であるので、実
用的ではない。一方、温度が高いほど、通常、最後は廃棄物になる望ましくない
縮合生成物の生成が誘導され、その結果、所望する生成物(ヘキサメチレンジア
ミンまたはアミノカプロニトリル)の選択率および収率が低下する。
本発明の改善された水素化方法は、比較的低い圧力で実施することができる。
米国特許第3,758,584号および同第3,773,832号に記載されて
いるように、アジポニトリルを水素化する現在実施されている商業的方法は、高
圧および高温のもとで行われ、多額の投資を必要とする。低圧方法を使用する利
点は、工業方法の投資費用が低くなるということである。本発明の水素化反応は
、所望する生成物の商業的製造に必要な反応物および生成物の許容され得る流れ
を維持するのに十分な圧力から13.79MPa(2,000psi)未満の圧
力までの範囲の水素圧のもとで進行し得る。しかし、操作圧の好ましい範囲は0
.69MPaから10.34MPa(100psiから1,500psi)であ
り、最も好ましい範囲は1.72MPaから6.89MPa(250psiから
1,000psi)である。
本発明の重要な目的は、選択率、従って出発ジニトリルの最も高い可能な変換
においてヘキサメチレンジアミンまたはアミノカプロニトリルの収率を最大にす
ることである。ヘキサメチレンジアミンおよびアミノカプロニトリルの収率は操
作条件に依存する。そのような操作条件には、温度、圧力、水素流速、触媒の量
および種類、溶媒の性質および濃度、添加される無機塩基の有無、ならびに空間
速度などが含まれる。本発明の目的のために、用語「空間速度」は、触媒の単位
重量に対する1時間あたりの反応器内に供給されるアジポニトリルの単位重量と
して定義される。典型的には、アジポニトリルは、ヘキサメチレンジアミンおよ
びアミノカプロニトリルがそれぞれ所望の生成物である場合には、アジポニトリ
ルの空間速度が0.5から5.0の範囲内にあるように反応器に添加されなけれ
ばならない。アジポニトリルの最も好ましい空間速度、すなわちヘキサメチレン
ジアミンおよび/またはアミノカプロニトリルを最大にする空間速度は、従来の
技法を使用して、当業者によって容易に決定することができる。アジポニトリル
の添加速度が、本明細書中に記載されている空間速度よりも小さい場合かまたは
大きい場合には、所望する化合物の選択率および収率は劇的に低下し、触媒活性
の低下および触媒寿命の低下をもたらす。
本発明による連続操作を実施するために有用な反応器には、一般に、任意の従
来の水素化反応器が含まれる。そのような反応器の例には、プラグフロー反応器
、連続攪拌槽反応器および気泡カラム反応器が含まれるが、これらに限定されな
い。本発明の反応に限定されない気泡カラム反応器の例が、米国特許第4,42
9,159号に記載されている。プラグフロー反応器および連続攪拌槽反応器の
説明は、Octave Levenspiel著「Chemical React
ion Engineering」に記載されている。
別途指定されない限り、下記の実施例に例示されているアジポニトリルの水素
化は、Autoclave Engineersによって設計および製造された
300ccのオートクレーブで行った。この300cc反応器はハステロイ−C
から組み立てられ、最大許容使用圧(MAWP)は、300℃で約10.3MP
a(1,500psig)であった。反応器内の混合は、中空シャフトに取り付
けられ、電気モータに駆動される磁気的に連結されたインペラで行った。攪拌機
の速度をストロボ光によってモニターした。反応器を、400ワットの外部のバ
ンドヒータによって加熱した。
反応器は、熱電対挿入部、破裂板、および5mmのステンレススチールフリッ
トを取り付けた2本の0.32cm(1/8インチ)の液浸脚(dip leg
)(それぞれ、反応器内への液体添加および反応器からの生成物抜き出しを目的
とする)を備えていた。水素を、オートクレーブ反応器に、攪拌器の中空シャフ
トを介して連続的に供給した。反応器内への水素流速を、Brooks(登録商
標)マスフローコントローラによって測定し、モニターした。反応器内の圧力を
、Grove背圧レギュレータを用いて維持した。アジポニトリルを、Isco
シリンジポンプ(260Dシリーズ)を使用して反応器に連続的に供給した。
反応器を、減圧(let−down)タンクを介して1リットルの生成物受器
に接続した。サンプルを、実験開始時および指定された時間間隔(7時間および
16時間の間隔)で採取した。生成物受器から採取したサンプルを融解し、イソ
プロパノール(溶媒)に溶解した。シクロドデカンを内部標準として生成物サン
プルに添加し、5890A Hewlett−Packardキャピラリーガス
クロマトグラフで分析を行った。
下記の実施例を、本発明の様々な個々の面および特徴をより十分に説明し、さ
らにそれらを例示するために示し、そのように、実施例は、非限定的であること
が考えられ、本発明の例示を意図するが、いかなる点においても過度に限定する
ことを意図しないことを理解しなければならない。
実施例1
水および苛性アルカリの非存在下でのHMD合成:
120gのHMD、0.6mlの苛性アルカリ溶液(50%水酸化ナトリウム)
、および15g(7.5gの乾燥触媒を加えた7.5gの水)の予備活性化Ra
ney(登録商標)コバルト触媒(W.R.Grace 2724)を反応器に
入れた。オートクレーブを封止し、窒素による置換を数回行い、圧力試験を3.
44MPa(500psig)で行った。漏れがないことを確認した後、反応器
を75℃に加熱し、撹拌機を起動させた(1,200rpm)。所望の反応温度
に達すると直ちに、反応器の圧力を、背圧レギュレータを調節することによって
3.44MPa(500psig)に設定し、水素流速を600sccmに設定
した。次いで、ADNを反応器に12g/時間の速度で連続的に添加した。反応
器内の
生成物の滞留時間は10時間であった。HMDの生成および生成物分布を、流通
時間ならびに触媒1gに対する供給ADNのグラム数の関数として表1に示す。
苛性アルカリ(開始NaOHに関連するナトリウム)の存在は、48時間流通し
た後には高周波誘導結合プラズマ(ICP)分析によって検出されなかった。さ
らに、水酸化アンモニウム水溶液を816時間後に添加して888時間で停止し
、1035時間後に再開して実験終了時まで続けた。水酸化アンモニウムの添加
目的は、触媒の装置内での回復を実証するためであった。
請求の範囲
1. 実質的に苛性アルカリを含まない反応媒体において、アジポニトリルをヘ
キサメチレンジアミンおよび必要に応じてアミノカプロニトリルに連続的に水素
化するための方法であって、
(i)スポンジ状コバルト触媒の存在下、前記アジポニトリルおよび触媒の空
間速度が0.5h-1と5.0h-1との間であり、実質的に苛性アルカリを含まな
い反応媒体において、25℃から150℃の温度および13.79MPa(2,
000psig)までの圧力のもとで、アジポニトリルおよび水素を十分な時間
にわたって接触させ、前記アジポニトリルの少なくとも一部をヘキサメチレンジ
アミンおよび必要に応じてアミノカプロニトリルに変換させる工程;
(ii)アジポニトリルを前記反応媒体に連続的に添加する工程;
(iii)ヘキサメチレンジアミンおよび必要に応じてアミノカプロニトリル
を前記反応媒体から連続的に取り出す工程;および
(iv)前記ヘキサメチレンジアミンおよび必要に応じて前記アミノカプロニ
トリルを回収する工程
を有することを特徴とする方法。
2.(i)5モル%と11モル%との間のビスヘキサメチレントリアミン(BH
MT)が前記反応生成物中に存在するときに水を前記反応媒体に添加する工程と
、
(ii)前記反応生成物中のヘキサメチレントリアミン(BHMT)の量が1
モル%未満に低下したときに前記反応媒体への水添加を中断する工程と
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
3. 前記反応媒体に供給されるアジポニトリルの量は、触媒1gあたり0.5
g/時間から5.0g/時間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
4. 前記スポンジ状コバルトは、0.5重量%から6.0重量%のニッケル、
クロム、鉄およびモリブデンからなる群の少なくとも1つで修飾されることを特
徴とする請求項3に記載の方法。
5. 水酸化アンモニウムを前記反応媒体に定期的に添加して前記触媒を復活さ
せる工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),BR,CA,CN,I
D,JP,KR,MX,SG
(72)発明者 セングプタ,ソウラブ,ケー.
アメリカ合衆国 19809 デラウェア州
ウィルミントン クロイスター ロード
919 アパートメント ディー