JP2002371135A - 水性分散液の製造方法 - Google Patents

水性分散液の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、製造設備を小型化でき省スペース化
がはかれ、設備コストの低減をはかれる高分子物質の水
性分散液の製造方法を提供すること。 【解決手段】ミルを構成するローター1とステーター2
が対向して配設されてなり、該ローター1とステーター
2の対向する面の各々にローター1の回転時に互いに接
触しない歯が形成されており、該ローター1の歯101
の先端とステー夕ー2の歯201の先端の間に該ロータ
ー1とステー夕ー2の間隔が0.05〜1.0mmの範
囲である間隙を形成してなり、該間隙に、予め液状に溶
かした高分子物質からなる原料と、重合度300〜3,
000、鹸化度70〜98の部分鹸化ポバールの水溶液
を送って、該ローター1を回転させることによって連続
的に水性分散液を製造することを特徴とする高分子物質
の水性分散液の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子物質の水性
分散液の製造方法に閑し、詳しくは短時間に大量の水性
分散液を製造でき、粒子径、濃度のバラツキが少なく、
安定した保護コロイド形成能を有し、防水剤、防食剤、
接着剤等として好適に利用できる高分子物質の水性分散
液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、水性分散液組成物の製造方法とし
ては、特開平7−304876号公報に記載の技術が知
られている。この方法は、予め加温された混練機に原料
と分散剤を投入し、次いで剪断力を加えて混練し、次い
で原料を軟化点(160℃)以上まで昇温し、次いで原
料の軟化・混合状態の終点を確認した後、水を加えて所
定濃度の水性分散液を製造する方法であり、原料として
アスファルト等を用い、分散剤として予め6時間を越え
る時間放置してスポンジ状のブロック形態に膨潤させた
部分鹸化ポバールを用いる方法である。
【0003】しかし、上記従来の方法は、原料として軟
化点160℃以下のものでしか使用できず、原料に制限
があった。軟化点160℃以上の原料を使用しようとす
ると混練機の仕様が加温と加圧を同時に計れる高級なも
のが必要となり、高価な設備となる欠点がある。
【0004】また部分鹸化ポバールを水で膨潤させスポ
ンジ状のブロック形態にするのに6時間以上要するの
で、製造時間が長くかかる欠点がある。また混練機への
原料の仕込みから水性分散液の出来上がりまで約60分
を要し、本質的に短時間の製造は困難である難点があ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、製
造設備を小型化でき省スペース化がはかれ、設備コスト
の低減をはかれる高分子物質の水性分散液の製造方法を
提供することを課題とする。
【0006】また本発明の他の課題は、短時間に大量の
水性分散液を製造でき、粒子径、濃度のバラツキが少な
く、安定した保護コロイド形成能を有する高分子物質の
水性分散液の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題は以下の各発明
によって解決される。
【0008】(請求項1)回転体である円盤状のロータ
ーと非回転体であるステーターとからなる混合機である
ミルを用いた高分子物質の水性分散液の製造方法におい
て、該ミルを構成するローターとステーターが対向して
配設されてなり、該ローターとステーターの対向する面
の各々にローターの回転時に互いに接触しない歯が形成
されており、該ローターの歯の先端とステー夕ーの歯の
先端の間に該ローターとステー夕ーの間隔が0.05〜
1.0mmの範囲である間隙を形成してなり、該間隙
に、予め液状に溶かした高分子物質からなる原料と、重
合度300〜3,000、鹸化度70〜98の部分鹸化
ポバールの水溶液を送って、該ローターを回転させるこ
とによって連続的に水性分散液を製造することを特徴と
する高分子物質の水性分散液の製造方法。
【0009】(請求項2)前記ローターとステー夕ーの
歯が、各々円形板の表面に同心円状に配列してなること
を特徴とする請求項1に記載の高分子物質の水性分散液
の製造方法。
【0010】(請求項3)ローターの回転数が、500
〜10,000rpmであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の高分子物質の水性分散液の製造方法。
【0011】(請求項4)高分子物質からなる原料に対
して、0.01〜5%(原料及び界面活性剤を固形分と
して)の量のノニオン系界面活性剤を添加することを特
徴とする請求項1、2又は3に記載の高分子物質の水性
分散液の製造方法。
【0012】(請求項5)前記間隙に供給する対象が、
予め液状に溶かした高分子物質からなる原料と、重合度
300〜3,000、鹸化度70〜98の部分鹸化ポバ
ールの水溶液以外に、可塑剤分散剤を含まないことを特
徴とする請求項1、2,3又は4に記載の高分子物質の
水性分散液の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細
に説明する。
【0014】本発明の水性分散液の製造設備としては、
回転体である円盤状のローターと非回転体であるステー
ターとからなる混合機であるミルを用いた設備である。
【0015】ミルを構成するローターとステーターは図
1に示すように、対向して噛み合った状態で設けられて
いる。同図において、1はローターであり、2はステー
ターである。ローター1には表面に突出した歯101が
形成されており、ステーター2にも歯201が形成され
ている。102はローター用のモーターである。
【0016】歯101、201は、円形のローター1及
びステーター2の表面に同心円状に配列することがで
き、ローターの歯が回転する際に、他方のスターターの
歯に接触せず、わずかな間隙が形成されている。歯の形
状や個数は図示に限定されない。
【0017】ローター1の歯の先端とステー夕ー2の歯
101、201の先端の間に、間隔が0.05〜1.0
mmの範囲である間隙が形成されている。0.05mm
より狭すぎると分散液が破壊され、また1.0mmより
広いと粒子径が粗くなるので好ましくない。
【0018】ローターの回転数が、500〜10,00
0rpmであることが好ましく、より好ましくは4,0
00〜10,000rpmの範囲が好ましく、更に5,
000〜10,000rpmの範囲の高速回転が好まし
い。
【0019】かかる高速回転で連続的に水性分散液を製
造できるのは、ローターとステーターに形成される間隙
に、予め液状に溶かした高分子物質からなる原料と、重
合度300〜3,000、鹸化度70〜98の部分鹸化
ポバールの水溶液を送るからである。従来のブロック形
態のポバールではかかる製造方法は適用できない。かか
る高速回転で製造するがゆえに短時間に大量の水性分散
液が得られる。
【0020】本発明の水性分散液の製造方法において用
いられる原料は、予め溶解槽で液状に溶かした高分子物
質からなる原料である。
【0021】かかる原料は液体にできる高分子物質であ
れば全て使用でき、例えば石油アスファルト(ストレー
ト、ブローン等)、ビチューメン等、あるいはポリエチ
レン、ポリプロピレン、ブタジエン樹脂、ポリスチレ
ン、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、石油樹脂、パラ
フィンワックス、メタアクリル樹脂、AS樹脂、ABS
樹脂等を用いることができ、これらの原料は単体でも2
種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも好ましい
のは、石油アスファルトであり、石油アスファルトに石
油樹脂の組み合わせることも好ましい。
【0022】なお本発明では、液状に溶解した高分子物
質の中に、原料の液状性を阻害しない範囲で、微粉末に
した固体(例えば、シリカなどの無機系物質、エポキ
シ、ポリエステルなどのような熱硬化性樹脂、及び高軟
化点の熱可塑性樹脂など)を混合して使用することがで
きる。
【0023】本発明では、これらの原料は、予め溶解槽
等で液状に熱溶解して使用するものであり、溶解槽等で
熱溶解した後、保温タンク等に保管しておいて使用する
ことが好ましい。本発明の方法では、軟化点の高い高分
子でも加熱温度を上げるだけで使用でき、またアスファ
ルトはローリで運び込まれる加熱液状品をそのまま使用
できる効果がある。
【0024】本発明に用いられるポバールは、水溶液と
して用いる点が重要であり、従来の特開平7−3048
76号公報にはない特徴である。従来は部分鹸化ポバー
ルを水で膨潤させスポンジ状のブロック形態のものを使
用しており、しかもかかるブロック形態にするのに6時
間以上もかけていた訳であるが、本発明では水溶液でよ
いので、製造準備時間が大幅に短縮される。またブロッ
ク形態から水溶液に変わることにより、ポンプ輸送が可
能となり、取り扱い性、作業性が大幅に改善される。
【0025】本発明に用いられるポバールの水溶液とし
ては、重合度が300〜3,000、好ましくは500
〜2,000、鹸化度が70〜98、好ましくは80〜
90の部分鹸化ポバールの水溶液が用いられる。
【0026】ポバールの濃度は、作業性や高濃度の分散
液を製造する観点から10重量%程度が好ましく、この
程度の濃度であれば数分で製造でき、製造時間の短縮上
好ましい。
【0027】ポバール水溶液の添加量は、粘度適正や耐
水性等を考慮し、高分子物質からなる原料に対して0.
5〜10%(高分子物質からなる原料及びポバールを固
形分として)が好ましく、より好ましくは1〜3%であ
る。
【0028】また、乳化剤としてポバールの水溶液を使
用するだけでエマルジョンは製造できるが、エマルジョ
ンの粒子径をより小さく均質化するために界面活性剤を
併用することが好ましい。
【0029】界面活性剤としては、カチオン系、アニオ
ン系、ノニオン系のいずれのものも用いることができる
が、中でも好ましいのはノニオン系界面活性剤である。
ノニオン系界面活性剤は、AE減水剤との急激な反応性
もなく、空気の連行も少ないので好ましい。
【0030】ノニオン系界面活性剤の添加量は、高分子
物質からなる原料に対して、0.01〜5%(原料及び
界面活性剤を固形分として)が好ましい。
【0031】本発明において、界面活性剤を使用する場
合、ノニオン系とアニオン系とを組み合わせて使用する
ことができ、好ましい添加量としてはアニオン系2%、
ノニオン系0.3%になるように配合することである。
【0032】本発明では、上述した予め液状に溶かした
高分子物質からなる原料と、重合度300〜3,00
0、鹸化度70〜98の部分鹸化ポバールの水溶液以外
に、可塑剤分散剤を含まないことが好ましい。可塑剤分
散剤を添加しなくても良好なエマルジョンが製造できる
からである。
【0033】ミルヘ送る原料とポバール水溶液の圧力
は、小さいと分散液の粒子径が粗くなり、大きすぎると
分散液が破壊されるので、1〜10kgf/cmの範
囲が好ましく、より好ましくは3〜6kgf/cm
ある。
【0034】本発明の製造方法では、ほとんど瞬時に分
散を行うので、生産性は大幅に向上する。従来の方法で
は混練機への原料の仕込みから水性分散液の出来上がり
まで約60分を要するが、本発明では上記のように大幅
に時間短縮が計れる。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例によって詳細に説明す
るが、本発明は以下の実施例によって限定されるもので
はない。
【0036】実施例1 150℃に溶解したストレートアスファルトをポンプで
4kgf/cmの圧力でミルヘ送った。
【0037】また重合度500,鹸化度88%の部分鹸
化ポバール(ゴーセノールGL05日本合成化学社製)
の10%水溶液をポンプで4kgf/cmの圧力でミ
ルヘ送った。
【0038】ミルのローターとステーターの間隔は0.
3mmとした。ローターの回転数を6,000rpmと
してアスファルトの水性分散液を製造した。
【0039】得られた水性分散液を光学顕微鏡で粒子径
を調べたところ、平均1μmであった。この分散液は1
ケ月を経ても分離は見られず、安定していた。
【0040】実施例2 100℃に溶解した石油樹脂(日本石油化学社製 ネオ
ポリマー#80)をポンプで4kgf/cmの圧力で
ミルヘ送った。
【0041】また重合度500,鹸化度88%の部分鹸
化ポバール(ゴーセノールGL05日本合成化学社製)
の10%水溶液をポンプで4kgf/cmの圧力でミ
ルヘ送った。
【0042】ミルのローターとステーターの間隔は0.
3mmとした。ローターの回転数を6,000rpmと
して石油樹脂の水性分散液を製造した。
【0043】得られた水性分散液を光学顕微鏡で粒子径
を調べたところ、平均1μmであった。この分散液の保
存安定性は十分であった。
【0044】実施例3 150℃に溶解したストレートアスファルトと、100
℃に溶解した石油樹脂(日本石油化学社製 ネオポリマ
ー#80)と、ゴーセノールGL05の10%水溶液を
各々別々にポンプで4kgf/cmの圧力でミルヘ送
った。
【0045】ミルのローターとステーターの間隔は0.
3mmとした。ローターの回転数を6,000rpmと
して、アスファルトと石油樹脂の2成分系の水性分散液
を製造した。
【0046】得られた水性分散液を光学顕微鏡で粒子径
を調べたところ、一層細かく平均0.5μmで、保存安
定性も全く問題なかった。
【0047】実施例4 実施例1及び実施例2において高分子物質からなる原料
に対して表1に示す界面活性剤を加えて実験を行った。
その結果を表1に示す。なお、表1中の粒子径とは平均
粒子径のことである。
【0048】カチオン系界面活性剤としては日本油脂社
製「カチオンF2」、アニオン系界面活性剤としては花
王社製「レノベールW」、ノニオン系界面活性剤として
は日本油脂社製「ノニオンNS」を使用した。
【0049】
【表1】
【0050】実施例5 実施例1で得られた水性分散液、特開平7−30487
6号公報の実施例3で得られた水性分散液(トキワケミ
カル社製ブラジックC)を防水剤として用いて、コンク
リートを製造し、スランプ値、空気量、圧縮強度を以下
の測定法に従って測定し、その結果を表2に示した。
【0051】〈測定法〉 スランプ値:JISA1101 空気量:JISA1128 圧縮強度:JISA1108
【0052】
【表2】
【0053】また得られたコンクリートについて以下の
吸水試験を行い、吸水率を求め、その結果を表3に示し
た。
【0054】吸水試験:10×10×40cmの角柱体
を、打設後7日間20℃の水中養生を行い、水中より取
り出し、80℃で48時間乾燥し、20℃の室温まで徐
冷した後、重量を測定し水中に浸漬した。浸漬後、0.
5,1,2,4,8,24,48時間に水中より取り出
し、直ちにコンクリート表面の水を抜き取り、重量の測
定を行い、再び水中へ浸漬した。吸水前の重量と各時間
での重量の差を吸水前の重量で除した値を吸水率とし
た。
【0055】実験1〜4:実施例1において、表1に示
す界面活性剤を添加したものである。 実験5〜8:実施例2において、表1に示す界面活性剤
を漆加したものである。
【0056】
【表3】
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、製造設備を小型化でき
省スペース化がはかれ、設備コストの低減をはかれる高
分子物質の水性分散液の製造方法を提供すること、及び
短時間に大量の水性分散液を製造でき、粒子径、濃度の
バラツキが少なく、安定した保護コロイド形成能を有
し、防水剤、防食剤、接着剤等として好適に利用できる
高分子物質の水性分散液の製造方法を提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるミルの一例を示す要部断面
【符号の説明】
1:ローター 2:ステーター 101、201:歯(突部) 102:モーター

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転体である円盤状のローターと非回転体
    であるステーターとからなる混合機であるミルを用いた
    高分子物質の水性分散液の製造方法において、 該ミルを構成するローターとステーターが対向して配設
    されてなり、該ローターとステーターの対向する面の各
    々にローターの回転時に互いに接触しない歯が形成され
    ており、該ローターの歯の先端とステー夕ーの歯の先端
    の間に該ローターとステー夕ーの間隔が0.05〜1.
    0mmの範囲である間隙を形成してなり、 該間隙に、予め液状に溶かした高分子物質からなる原料
    と、重合度300〜3,000、鹸化度70〜98の部
    分鹸化ポバールの水溶液を送って、該ローターを回転さ
    せることによって連続的に水性分散液を製造することを
    特徴とする高分子物質の水性分散液の製造方法。
  2. 【請求項2】前記ローターとステー夕ーの歯が、各々円
    形板の表面に同心円状に配列してなることを特徴とする
    請求項1に記載の高分子物質の水性分散液の製造方法。
  3. 【請求項3】ローターの回転数が、500〜10,00
    0rpmであることを特徴とする請求項1又は2に記載
    の高分子物質の水性分散液の製造方法。
  4. 【請求項4】高分子物質からなる原料に対して、0.0
    1〜5%(原料及び界面活性剤を固形分として)の量の
    ノニオン系界面活性剤を添加することを特徴とする請求
    項1、2又は3に記載の高分子物質の水性分散液の製造
    方法。
  5. 【請求項5】前記間隙に供給する対象が、予め液状に溶
    かした高分子物質からなる原料と、重合度300〜3,
    000、鹸化度70〜98の部分鹸化ポバールの水溶液
    以外に、可塑剤分散剤を含まないことを特徴とする請求
    項1、2,3又は4に記載の高分子物質の水性分散液の
    製造方法。
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