JP2002371001A - 白内障の予防または治療剤 - Google Patents

白内障の予防または治療剤

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久富 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 白内障に対する充分な予防、進行の抑制およ
び治療効果を提供するとともに、長期間投与しても副作
用を起こすことのない白内障の予防または治療薬剤を提
供すること。 【解決手段】 白内障の予防または治療剤が開示されて
いる。本発明の予防または治療剤はシソ科植物および/
またはその抽出物を含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、白内障の予防また
は治療剤に関し、詳しくは白内障に対する十分な予防効
果、ならびに当該疾患を患った際の進行の抑制および当
該疾患に対する治療効果を提供する白内障の予防または
治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】白内障は、レンズの役割を果たす眼の水
晶体が白く濁る疾患である。白内障を患ったヒトは、こ
のため網膜に光が届きにくくなり視力低下をきたす。白
内障には、先天性(小児白内障)のもの、および糖尿病
などの他の疾患から誘引され発症するもの、老化による
ものが挙げられる。特に老化による老人性白内障が最も
一般的である。
【0003】このような水晶体白内障を予防または治療
するためのいくつかの技術が知られている。例えば、還
元型グルタチオン点眼薬、チオプロニン錠、ピレノキシ
ン錠、ビタミン類(ビタミンC、E等)が実際の臨床で
使用されている。また、特開2000−256207号
公報には、クロレラおよび/またはクロレラ抽出物を有
効成分とする白内障の予防・治療剤が開示されている。
またさらに、特開平10−59846号公報には、プロ
アントシアニンオリゴマーを含有する白内障の予防また
は治療剤が開示されている。
【0004】しかしながら、これらのものはいずれも、
充分な予防および治療効果を有するものではなく、現時
点では白内障が進行すると手術治療に頼らざるを得な
い。
【0005】
【発明が解決しよとする課題】本発明は、上記問題の解
決を課題とするものであり、その目的とするところは、
白内障に対する充分な予防、進行の抑制および治療効果
を提供するとともに、長期間投与しても副作用を起こす
ことのない白内障の予防または治療薬剤を提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、シソ科植物お
よび/またはその抽出物を含有する、白内障の予防また
は治療剤である。
【0007】好ましい実施形態では、上記シソ科植物
は、延命草、ローズマリーおよびこれらの組合わせから
なる群より選択される少なくとも1種の植物である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明者は、前記課題を解決する
ため鋭意研究を行った結果、意外にもシソ科植物が白内
障の予防または治療効果を発揮することを見出し、本発
明を完成するに至った。
【0009】本発明の白内障の予防または治療剤は、シ
ソ科植物および/またはその抽出物を含有する。このシ
ソ科植物の例としては、シソ科植物の代表的なものとし
て知られている延命草、ローズマリー、およびセージが
挙げられる。ここで、延命草は、苦味健胃薬として古来
より民間療法で使われている。また、その抗潰瘍効果
(特開昭48−5911号公報)、抗腫瘍効果(特開昭
59−5176号公報)、抗菌効果(特開平1−172
333号公報)、育毛効果(特開平5−310537号
公報)および抗肥満効果(特開平10−203990号
公報)などが開示されている。しかし、延命草またはそ
の抽出物に関して白内障の予防または治療効果があるこ
とはこれまで知られていなかった。
【0010】本発明に用いられる延命草は、シソ科ヤマ
ハッカ属に属するものであり、一般に延命草と呼ばれる
一群の植物を包含していう。本発明に用いられる延命草
のより具体的な例としては、ヒキオコシ(Isodon
japonisus)、クロバナヒキオコシ(Iso
don trichocarpus)、およびタカクマ
ヒキオコシ(Isodon sikokianu s
var.intermodius)が挙げられる。この
ような延命草は、生のもの、乾燥品のもの、またはこれ
らの組合わせのいずれであってもよい。特に、入手が容
易である点から、乾燥品として市販されている生薬「延
命草(葉または茎)」を用いることが好ましい。これら
延命草は、適切なサイズに裁断または粉砕することによ
り、それ自体で白内障の予防または治療剤として用いる
ことができる。
【0011】本発明に用いられるシソ科植物の他の例で
あるローズマリー(Rosmarinus offic
inalis L.)は、別名「マンネンロウ」とも呼
ばれ、西洋ではハーブとして、薬用、香料用、料理用に
広く使用されている。薬用としてのローズマリーの効果
は古くから多岐にわたり記載されており、例えば、英国
ハーブ薬局方「British Herbal Pha
rmacopia」の1983年集大成版には、駆風、
鎮痛、殺菌、防腐、鎮静、利尿、抗菌などの効果が記載
されているにすぎない。また、近年の公開特許公報によ
れば、消臭効果(特開平4−173070号公報)、抗
う蝕効果(特開平4−13630号公報)、抗酸化効果
(特開平3−197595号公報)、育毛効果(特開平
4−18026号公報)、シワ形成抑制皮膚化粧料(特
開平10−291929号公報)、抗潰瘍効果(特開2
000−72685号公報)などの効果が開示されてい
る。しかし、ローズマリーまたはローズマリー抽出物に
白内障の予防または治療効果があることはこれまで報告
されていない。本発明においては、このローズマリーも
また、適切なサイズに裁断または粉砕することにより、
それ自体で白内障の予防または治療剤として用いること
ができる。なお、本発明においては上記延命草とローズ
マリーとを組合わせて使用してもよい。
【0012】本発明において、上記シソ科植物の抽出物
を用いる場合について説明する。本発明に用いられるシ
ソ科植物の抽出物は、任意の手段を用いて抽出したもの
であってもよい。代表的には、水もしくは有機溶媒また
はそれらの混合物を使用して溶媒抽出したもの(抽出
液)が利用される。この抽出液をそのまま用いてもよ
く、あるいは濃縮もしくは希釈して、または溶媒を留去
して用いてもよい。従って、本発明において使用される
上記抽出物の形態としては、抽出液それ自体、その濃縮
物、希釈液、乾燥物、または顆粒物などが挙げられる。
【0013】上記抽出に使用され得る有機溶媒として
は、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−プ
ロパノールなどの低級アルコール;アセトン;酢酸エチ
ル;エーテル;塩化メチレン;クロロホルム;ベンゼ
ン;四塩化炭素;石油エーテルなどが用いられる。
【0014】上記抽出は室温で行うこともできるが、好
ましくは、0℃〜100℃、より好ましくは、40℃〜
100℃行われる。抽出時間は、抽出温度によって変化
するが、代表的には1日〜7日で終了する。抽出終了
後、濾過または遠心分離することにより粗抽出液を得る
ことができる。本発明においては、この粗抽出物をその
まま使用してもよく、あるいは、所望により、濃縮、希
釈または乾燥などの後処理を行ったものを使用してもよ
い。
【0015】本発明の白内障の予防または治療薬剤はま
た、上記シソ科植物および/またはその抽出物を単独で
含有していてもよく、あるいはその他一般的に使用され
ている成分と併用されてもよい。本発明の白内障の予防
または治療薬剤は、食品、医薬品、医薬部外品などの様
々な用途に利用することが可能である。
【0016】例えば、食品に使用する場合には、上記シ
ソ科植物および/またはその抽出物とともに、砂糖、果
糖等の糖質、安定剤、酸味剤、ビタミン類、ミネラルな
どの成分を配合し、お茶、コーヒー、果汁飲料、発酵
乳、ゼリー、飴、錠菓などの形態で用いることができ
る。
【0017】また、医薬品に使用する場合には、その剤
形は任意に選定され得る。一般的には、上記シソ科植物
および/またはその抽出物は、薬学的に許容できる液状
または固体状の担体と配合され、且つ必要に応じて溶
剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、増量
剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤などの成分が添加され、錠
剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤、注射剤、点眼
剤などに製剤される。
【0018】なお、本発明においては、上記シソ科植物
および/またはその抽出物以外に別種の薬効を奏する成
分を適宜含有させてもよい。
【0019】本発明の予防または治療剤の用量は、使用
する上記シソ科植物および/またはその抽出物の種類、
その含有量、予防または治療剤としての剤形、また患者
の年齢、体重、適応症状などの種々の条件によって一概
に限定されない。代表的には、本発明の予防または治療
剤を食品として使用し、かつその中に上記シソ科植物の
乾燥物を使用する場合、その予防または治療剤の用量と
しては、一日1mg〜20000mg、好ましくは10
mg〜10000mgを数回に分けて食する例が挙げら
れる。また、上記シソ科植物の抽出物を含有させ、予防
または治療剤として注射剤に製剤して使用する場合で
は、成人一日一回あたり、0.01mg〜5000m
g、好ましくは0.1mg〜1000mg、同様に予防
または治療剤として内服剤に製剤して使用する場合で
は、成人一日あたり一回量約0.1mg〜10000m
g、好ましくは1mg〜3000mgの割合で数回投与
する例があげられる。さらに、予防または治療剤として
点眼剤に製剤して使用する場合では、上記シソ科植物の
抽出物を0.01%(W/W)〜10%(W/W)、好
ましくは0.5%(W/W)〜3%(W/W)の濃度に
調製したものを一日1回〜5回、好ましくは一日2回〜
4回、いずれも一回につき1滴〜3滴点眼する例があげ
られる。
【0020】本発明の白内障の予防または治療剤は、上
記のようなシソ科植物および/またはその抽出物を有効
成分として含有する。この有効成分は被験体にとって有
害な物質ではない。そのため、本発明の予防または治療
剤を、被験体に長期間投与したとしても、副作用を起こ
すという問題を回避することができる。
【0021】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】<製造例1:延命草抽出物の製造>延命草
(全草・粗切)320Kgに常水10倍量を加えて、9
5℃以上で1時間温浸した。これを60℃に放冷した
後、遠心分離し、第1の抽出液を得た。残渣に再び常水
8倍量を加え、同様に温浸し、第2の抽出液を得た。第
1の抽出液と第2の抽出液とを合わせて、40℃にて減
圧濃縮し、濃縮抽出液を130L得た。この濃縮抽出液
をスプレードライにかけて、延命草抽出物38Kgを得
た。
【0023】<製造例2:ローズマリー抽出物の製造>
乾燥し、裁断したローズマリーの茎葉320Kgに常水
10倍量を加えて、95℃以上で1時間温浸した。これ
を60℃に放冷した後、遠心分離し、第3の抽出液を得
た。残渣に再び常水8倍量を加え、同様に温浸し、第4
の抽出液を得た。第3の抽出液を第4の抽出液とを合わ
せて、40℃にて減圧濃縮し、濃縮抽出液を128L得
た。この濃縮抽出液をスプレードライにかけて、ローズ
マリー抽出物35Kgを得た。
【0024】<実施例1:延命草抽出物またはローズマ
リー抽出物の経口投与によるICR/fラット(5〜6
匹/群)に対する抗白内障効果>5週齢、雄、ICR/
fラットを用い、まず、予備飼育を1週間行った。次い
で、6週齢のICR/fラットに製造例1で得られた延
命草抽出物を飲料水に0.5%(W/W)の割合で溶解
して、36日間ラットに自由摂取させた。
【0025】また、他の6週齢のICR/fラットに製
造例2で得られたローズマリー抽出物を飲料水に0.5
%(W/W)の割合で溶解し、上記と同日間ラットに自
由摂取させた。
【0026】さらに、別の6週齢のICR/fラット
(対照群)には、上記いずれの抽出物をも含有させてい
ない飲料水を、上記と同日間ラットに自由摂取させた。
【0027】これら3群のラットについて、それぞれ投
与開始15日目から写真撮影を行い、白内障が発生して
いる眼の数を数え、白内障発生率(%)を算出した。
【0028】これらの3群の結果を図1に示す。図1
は、延命草抽出物またはローズマリー抽出物をそれぞれ
使用した際の抗白内障効果を示すグラフである。図1に
示されるグラフにおいて、縦軸は白内障発生率を示し、
横軸は投与日数を示す。黒丸(●)印は対照群を、黒三
角(▲)印は0.5%(W/W)延命草抽出物投与群
を、白四角(□)印は0.5%(W/W)ローズマリー
抽出物投与群を示す。図1に示されるように、対照群は
試験期間の経過に伴って顕著な水晶体の白濁が認めら
れ、投与後36日での白内障発生率は66.7%であっ
た。一方、延命草抽出物0.5%(W/W)飲料水投与
群は、対照群に比べ投与後36日での白内障発生率は2
0.0%であった。さらに、ローズマリー抽出物0.5
%(W/W)飲料水投与群は対照群に比べ、白内障の発
生が1日遅れ、投与後36日での白内障発生率は60%
であった。このことから、延命草抽出物およびローズマ
リー抽出物は、白内障の予防剤として有用であることが
わかる。
【0029】<実施例2:延命草抽出物の毒性試験>製
造例1で得られた延命草抽出物を、2,000および
4,000mg/Kg/日の割合で5週齢のCrj:C
H(SD)雄性ラットの群(11匹/群)に28日間反
復経口投与した。その結果、ラットの一般状態、体重、
摂食量推移、尿所見、血液学的所見、血液科学的所見、
臓器重量所見、病理解剖学的所見および病理組織学的所
見に異常は認められなかった。即ち、雄性ラットに対す
る延命草抽出物の無毒性量は4,000mg/Kg/日
以上であった。このことから、上記延命草抽出物は、白
内障の予防または治療剤として使用したとしても副作用
がなく、毒性の問題が回避されることがわかる。
【0030】<実施例3:ローズマリー抽出物の毒性試
験>製造例2で得られたローズマリー抽出物を、2,0
00および4,000mg/Kg/日を5週齢のCr
j:CH(SD)雄性ラットの群(11匹/群)に28
日間反復経口投与した。その結果、ラットの一般状態、
体重、摂食量推移、尿所見、血液学的所見、血液科学的
所見、臓器重量所見、病理解剖学的所見および病理組織
学的所見に異常は認められなかった。即ち、雄性ラット
に対するローズマリー抽出物の無毒性量は4,000m
g/Kg/日以上であった。このことから、上記ローズ
マリー抽出物は、白内障の予防または治療剤として使用
したとしても副作用がなく、毒性の問題が回避されるこ
とがわかる。
【0031】<実施例4:食品>製造例1で得られた延
命草抽出物を用いて、以下の組成を有する食品を調製し
た。
【0032】 成分 重量(Kg) 延命草抽出物 2.0 大豆サポニン 2.0 黒酢エキス 2.0 リンゴファイバー 2.0 レシチン 1.0 フラクトオリゴ糖 2.0 果糖 1.0 粉末酢 0.1 シクロデキストリン 1.0 蜂蜜 1.0 骨粉 1.0 デキストリン 4.9 合計 20.0k
g。
【0033】各成分を流動造粒機中で混合した後、水を
噴霧して造粒を行い、入風温度80℃で乾燥して、顆粒
でなる食品を得た。
【0034】<実施例5:硬ゼラチンカプセル>製造例
2で得られたローズマリー抽出物を用いて,常法に従い
硬ゼラチンカプセルを調製した。
【0035】 成分 量(mg/カプセル) ローズマリー抽出物 250 デンプン 100 セルロース 100 ステアリン酸マグネシウム 10 合計 460 mg。
【0036】<実施例6:錠剤>製造例1で得られた延
命草抽出物を用いて、常法に従い錠剤を調製した。
【0037】 成分 量(mg/錠剤) 延命草抽出物 250 セルロース 400 二酸化ケイ素 10 ステアリン酸 5 合計 665mg。
【0038】<実施例7:点眼剤>製造例1で得られた
延命草抽出物を用いて点眼剤を調製した。
【0039】 成分 量(mg/錠剤) 延命草抽出物 1000 ホウ酸 700 塩化ナトリウム 600 P−オキシ安息香酸メチル 20 クロロブタノール 300 合計 2620mg。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、安全性を高く保持した
まま、白内障発生率を顕著に抑制することができる。特
に、予防または治療剤として、延命草および/またはそ
の抽出物を使用する場合、その効果はさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】延命草抽出物またはローズマリー抽出物をそれ
ぞれ使用した際の抗白内障効果を示すグラフであって、
黒丸(●)印は対照群を、黒三角(▲)印は0.5%
(W/W)延命草抽出物投与群を、白四角(□)印は
0.5%(W/W)ローズマリー抽出物投与群を用いた
場合の投与日数(横軸)に対する白内障発生率(%:縦
軸)を表すグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シソ科植物および/またはその抽出物を
    含有する、白内障の予防または治療剤。
  2. 【請求項2】 前記シソ科植物が、延命草、ローズマリ
    ーおよびこれらの組合わせからなる群より選択される少
    なくとも1種の植物である、請求項1に記載の白内障の
    予防または治療剤。
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