JP2002363865A - セルロース繊維の加工方法 - Google Patents

セルロース繊維の加工方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 セルロース繊維が本来具備している吸水性,
吸湿性,放湿性,染色性及び風合いを更に向上させる。 【解決手段】 無緊張状態のセルロース繊維をアルカリ
金属水酸化物と架橋剤の混合水溶液で処理するか、また
は無緊張状態のセルロース繊維をアルカリ金属水酸化物
水溶液で処理した後、架橋剤水溶液で処理することによ
って、セルロース繊維本来の風合いを損なうことなく、
吸水性,吸湿性,防湿性及び染色性をも向上させ、優れ
たセルロース繊維製品を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はセルロース繊維の特
徴である吸水性,吸湿性,放水性,染色性,風合いを更
に向上させるための加工方法を提供するもので、これら
の性能を発揮させる紡績糸,織物,編物,不織布,製紙
等の分野に供される優れたセルロース繊維を提供するも
である。
【0002】
【従来の技術】セルロース繊維をアルカリ金属水酸化物
水溶液で処理すると、膨潤して偏平な断面が円形に近く
なり、その後水洗しても円形を保ち染色性がよくなり、
無緊張状態では収縮が起るが、緊張状態ではその長さが
保たれ光沢が増加することは、マーセル化として一般に
よく知られている。
【0003】天然セルロース繊維を用いて製造した紡績
糸,織物,編物をマーセル化すると寸法安定性と染色性
が向上し、絹様光沢が得られる等の新たな機能が付与さ
れるが、風合いが硬くなることも知られている。風合い
が硬化する原因は、紡績糸,織物,編物はセルロース繊
維が高度に束縛された状態にあり、マーセル化によって
膨脹し、その後の水洗で収縮する際に、高度の緊張状態
が保たれるためであることはよく知られている。紡績糸
にする前にマーセル化する方法として、特開昭59−1
73325号公報には、スライバー状のセルロース繊維
をマーセル化し開繊し紡績することで寸法安定性に優れ
た天然セルロース繊維紡績糸が得られることが開示され
ている。この方法では、寸法安定性や染色性は向上する
が、セルロース繊維がマーセル化後に収縮するため開繊
性に劣る欠点がある。
【0004】一方、セルロース繊維に防しわ性や寸法安
定性の機能を付与する方法としては、織物や編物に後加
工で樹脂や触媒等を溶解させた繊維処理液を用いて樹脂
等を架橋させ改質する方法が広く一般に知られている。
しかしながら、これらの方法の架橋反応は繊維表面部分
のみが架橋されるため、反応効率が低く、風合いが硬化
する課題があった。
【0005】セルロース繊維内部に親水基を付加する方
法として、特開平8−100368号公報には、スライ
バー状態のセルロース繊維を親水化剤の溶解液に浸漬し
た後に、使用した同じ溶媒溶液で外側を洗浄した後、同
じ溶媒に水酸化ナトリウムを1.0〜50.0%溶解し
た溶液に浸漬し、30〜100℃でセルロース繊維の外
側から内側へ親水基の置換度が高くなっていくように反
応させる方法が開示されている。この方法で得られたセ
ルロース繊維は、外側は繊維本来の風合いと柔らかい肌
触りを維持しつつ、内側は機能化剤により吸水性が増す
と記載されているが、親水化のための反応をマーセル化
と同時に実施するとの記載はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、無緊
張状態にあるセルロース繊維をアルカリ金属水酸化物と
架橋剤で処理して、セルロース繊維が本来具備している
吸水性,吸湿性,放湿性,染色性及び風合いを更に向上
させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明においては、無緊
張状態のセルロース繊維をアルカリ金属水酸化物と架橋
剤の混合水溶液で処理すること、または無緊張状態のセ
ルロース繊維をアルカリ金属水酸化物水溶液で処理した
後、架橋剤水溶液で処理することにより、セルロース繊
維本来の風合いを損なうことなく、むしろ向上させ、更
に吸水性,吸湿性,防湿性及び染色性をも向上させるこ
とができる。このような処理をしたセルロース繊維を用
いて製編織して、同様に優れた性能を有する製品とす
る。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で用いられるセルロース繊
維としては、木綿,麻等の天然セルロース繊維や、レー
ヨン,ポリノジック,キュプラ,テンセル,リヨセル等
の再生セルロース繊維が挙げられるが、本発明による処
理により発現される効果は、天然セルロース繊維のほう
が高い。セルロース繊維の形態としては、繊維が束縛さ
れていない状態、すなわち、無緊張状態であればよく、
本発明における無緊張状態のセルロース繊維は原綿,混
打綿ラップ,スライバー等から適宜選ばれる。また、精
練,漂白の前処理の有無に関係なく本発明を実施するこ
とは可能であるが、反応効率,反応の均一性を考慮する
と精練,漂白の前処理済みのセルロース繊維が好まし
い。
【0009】本発明で用いられるアルカリ金属水酸化物
としては、セルロース繊維をマーセル化する効果があれ
ばよく、例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,
水酸化リチウム,水酸化セシウムが挙げられ、これらか
ら適宜選択される。本発明ではこれらのアルカリ金属水
酸化物を水溶液の状態で用いる。水溶液濃度は10〜4
0重量%が好ましく、使用時の温度は常温でよい。アル
カリ金属水酸化物水溶液をセルロース繊維に浸漬させる
方法として、スプレー法,コーティング法,含浸法が挙
げられるが、いずれの方法であってもよい。また、アル
カリ金属水酸化物水溶液中に浸漬する時間については、
選定する浸漬方法によって様々であるが、通常2秒以上
であり、アルカリ金属水酸化物水溶液が均一にセルロー
ス中に浸透する時間であればよい。
【0010】本発明で用いられる架橋剤としては、アル
カリ性でセルロース繊維と反応可能な官能基を有するも
のであればよく、例えば、エチレングリコールジグリシ
ジルエーテル,プロピレングリコールジグリシジルエー
テル等のジグリシジルエーテル類,エピクロルヒドリ
ン,エピブロモヒドリンのハロゲンヒドリン,ジクロル
エタン等のハロゲン化アルキル,ヘキサメチレンジイソ
シアネート等のジイソシアネート,アジピン酸,セバシ
ン酸,コハク酸等のポリカルボン酸類,ジエステル等及
びエチレングリコール,グリセリン等のポリオール類が
挙げられる。これらの架橋剤は単独、もしくは、混合し
て水溶液として用い、その濃度は目的によって適宜選択
されるが、通常1.0〜10.0重量%であればよく、
処理温度は常温でよい。
【0011】本発明は、上述のアルカリ金属水酸化物と
架橋剤の混合水溶液中に無緊張状態のセルロース繊維を
浸漬処理する方法と、アルカリ金属水酸化物水溶液中で
無緊張状態のセルロース繊維を浸漬処理した後、絞り、
アルカリ金属水酸化物水溶液がセルロース繊維に残存し
ている状態で架橋化剤水溶液中に浸漬処理する方法のい
ずれであっても良い。アルカリ金属水酸化物水溶液中で
処理後に架橋剤で処理する場合に絞り率が高い場合に
は、即ち含水率が高い場合には架橋剤の濃度が希釈され
好ましくなく、絞り率は75〜120%の範囲に有るの
が好ましい。
【0012】処理液で浸漬処理した後のセルロース繊維
は、絞り、室温で長時間放置し架橋反応を完了させる。
この時の時間は5時間〜20時間の範囲であればよい。
その後十分に水洗し、乾燥する。水洗工程に変え酸によ
る中和処理をすることも出来る。処理後のセルロース繊
維は、編織工程を経て各種製品とするが、これらの加工
工程において、従来の未加工のセルロース繊維と何等相
違する点はなく、製品の吸水性,吸湿性,放水性,染色
性,風合いを更に向上させることが出来る。
【0013】
【実施例】以下、本発明について、実施例により具体的
に説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものでは
ない。本発明は、無緊張状態のセルロース繊維の加工方
法であるが、発明の効果を明確にするために、加工後の
繊維を用いて編成した編地について効果を評価した。本
実施例での測定方法と評価方法は、以下の方法に基づい
て実施した。
【0014】・吸水率の評価方法 試料約10g(W0)を秤量後、50℃の0.2重量%
界面活性剤水溶液(ポリオキシエチレン(20)ソルビ
タンモノオレート、商品名:Tween80、関東化学
(株)製)中に5分間浸漬し、次いで、家庭用電気洗濯
機の遠心脱水機を用いて3分間脱水した。脱水後の試料
の重量(W1)を秤量し、次式により吸水率を求めた。
【数1】
【0015】・吸湿率及び放湿率の測定方法 重量Whgの既知の秤量瓶に試料約1g入れ、蓋を開い
た状態で105℃で60分間乾燥した後、シリカゲル入
りデシケータ中にて30分間放置して冷却し、重量W2
gを測定した。次いで、相対湿度53%のデシケータ内
に一晩放置した後、35℃、相対湿度90%に調湿した
恒温恒湿器内に秤量瓶の蓋を開けて入れ、60分後に蓋
を閉めて秤量瓶を取り出し、重量W3gを測定した。更
に25℃、相対湿度53%に調湿した高温恒湿器内に秤
量瓶の蓋を開けて入れ、60分後に蓋を閉めて秤量瓶を
取り出し、重量W4gを測定した。これらの結果から、
吸湿率,放湿率を次式により求めた。
【数2】
【数3】
【0016】・染色性の評価方法 編物とした試料を浴比1:30で精練助剤(商品名:ク
リーンN−15、一方社油脂工業(株)製)1.0g/
l、ソーダ灰2g/lを用いて80℃で30分間精練し
た後、浴比1:30で反応性染料(商品名:Sumif
ix Black B 150%、住化染料テック
(株)製)2.5%owf、芒酸50g/l、ソーダ灰
20g/lを含む染色中で、65℃で60分間染色し
た。次いで、水洗,湯洗,ソーピング,水洗した後、乾
燥し染色した試料を得た。この試料の測色データをフラ
ットベッドスキャナー(型式:GT−9500、EPS
ON製)を用いて測定し、混合減色モデルのシアン
(C),マゼンダ(M),イエロー(Y)成分を各25
6段階で数値化し、次式により染色性を求めた。
【数4】
【0017】・風合いの評価方法 10名のパネラーで本発明の方法で得たセルロース繊維
を用いて編物とした後、染色,乾燥した試料及び比較試
料の風合いを触感測定し、風合いがよいもの1点、悪い
もの0点とし、各人の評価の合計点から下記の基準に従
い風合いを判定した。 8〜10点 ○(良好) 4〜 7点 △(ややよい) 0〜 3点 ×(悪い)
【0018】〔実施例1〕常法により精練・漂白した木
綿原綿(平均繊維長29mm,平均繊度0.222te
x)60kgを準備し、5,10,15,30,45,
50重量%の水酸化ナトリウム水溶液にエチレングリコ
ールグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX−8
10、ナガセ化成(株)製)を3重量%になるように溶
解した6種の100lの水溶液に夫々30分間浸漬し
た。次いで、浸漬処理した木綿原綿を絞り率100%に
なるように遠心脱水した後に、室温で18時間静置し
た。その後、静置した木綿原綿を洗浄液が中性になるま
で十分に水洗して、遠心脱水した後、102℃で温風乾
燥して6種の架橋原綿を得た。得られた架橋原綿夫々を
クイックスピンシステム(型式:QSS−R20、SD
L International LTD製)を用いて
6種の29.53tex番手の紡績糸を得、これらの紡
績糸を使用して丸編機を用いて6種類の編地を作成し、
試料1〜試料6とした。
【0019】また、比較のために上記の精練・漂白した
木綿原綿を原料として、クイックスピンシステムを用い
て29.53tex番手の紡績糸とし、この紡績糸を使
用して丸編機を用いて編地を作成し、比較試料1とし
た。この1kgの比較試料1を15重量%の水酸化ナト
リウム水溶液にエチレングリコールグリシジルエーテル
を3重量%になるように溶解した水溶液10lのに30
分間浸漬し、絞り率100%になるように遠心脱水した
後に、室温で18時間静置し、次いで、洗浄液が中性に
なるまで十分に水洗して、遠心脱水した後、102℃で
温風乾燥して比較試料2を得た。
【0020】得られた各試料の吸水率,吸湿率,放湿
率,染色性,風合いを測定し、その結果を表1に示し
た。
【0021】
【表1】
【0022】表1より明らかな通り、水酸化ナトリウム
水溶液の濃度10.0〜45.0重量%で架橋処理した
試料2〜試料5はいずれも未処理の比較試料1と比較し
て、吸水性,吸湿性,放湿性が向上しており、また染色
性も大きく向上した。更に風合いも柔らかく非常によい
感触のものが得られた。また、水酸化ナトリウム50.
0重量%水溶液で処理した試料6は架橋原綿の強力低下
があったため糸切れが多く、紡績糸を得ることができな
かった。水酸化ナトリウム5.0重量%水溶液で処理し
た試料1の吸水性,吸湿性,放湿性,染色性,風合い
は、精練,漂白した比較試料1と比べてほとんど差はな
かった。また、編物成形後に加工した比較試料2は、ほ
ぼ本発明品と同程度の吸水性,吸湿性,放湿性,染色性
を示したが、風合いが非常に硬く、一般衣料の用途には
不向きであった。
【0023】〔実施例2〕常法により精練・漂白した木
綿原綿(平均繊維長29mm、平均繊度0.222te
x)60kgを準備し、5,10,15,30,45,
50重量%の水酸化ナトリウム水溶液100lの6種に
夫々精練・漂白した木綿原綿10kgを常温で30分間
浸漬した。次いで、浸漬処理した木綿原綿を絞り率10
0%になるように遠心脱水した後に、水酸化ナトリウム
溶液が残存している状態で3.0重量%エチレングリコ
ールグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX−8
10、ナガセ化成(株)製)水溶液100lに夫々浸漬
処理した木綿原綿を常温で30分間浸漬した。次いで、
浸漬処理した木綿原綿を絞り率100%になるように遠
心脱水した後に、室温で18時間放置した。その後、浸
漬処理した木綿原綿を洗浄液が中性になるまで十分に水
洗した後、102℃で温風乾燥して架橋原綿を得た。
【0024】得られた架橋原綿夫々をクイックスピンシ
ステム(型式:QSS−R20、SDL Intern
ational LTD製)を用いて29.53tex
番手の紡績糸とし、この糸を使用して丸編機を用いて6
種類の編地を作成し、試料7〜試料12とした。
【0025】得られた各試料の吸水率,吸湿率,放湿
率,染色性,風合いを測定し、その結果を表2に示し
た。参考までに比較試料1のデータを付記した。
【0026】
【表2】
【0027】表2より明らかな通り、予め水酸化ナトリ
ウム水溶液の濃度10.0〜50.0重量%で処理した
後に、アルカリ性の条件下で架橋処理した試料8〜試料
11は、上記実施例1と同様にいずれも未処理の比較試
料1と比較して、吸水性,吸湿性,放湿性が向上してお
り、また染色性も大きく向上した。更に風合いも柔らか
く非常によい感触のものが得られた。水酸化ナトリウム
5.0重量%水溶液で処理した試料7の吸湿性,放湿
性,染色性は未処理の比較試料1と比較してほとんど変
化がなかった。また、水酸化ナトリウム50.0重量%
水溶液で予め処理した後、架橋反応させた試料12は架
橋原綿の強力低下があったので糸切れが多く紡績糸が得
られなかった。
【0028】
【発明の効果】本発明のセルロース繊維の加工方法によ
り得られるセルロース繊維を製編織してなる製品は、紡
糸、製編織の工程において従来のセルロース繊維と何等
相違するところがなく、しかも、セルロース繊維本来の
特徴である吸水性,吸湿性,放湿性,染色性,風合いが
より優れたものとすることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D21H 11/20 D06M 101:06 // D06M 101:06 11/14 (72)発明者 藤井 崇利 静岡県駿東郡小山町小山129−1 (72)発明者 谷邊 博昭 静岡県御殿場市東田中1959−37 Fターム(参考) 4L002 AA02 AB01 AC00 AC06 BA00 EA00 EA03 4L031 AA02 AB01 BA11 CA15 DA00 DA01 DA08 DA09 4L033 AA02 AB01 AC07 AC15 BA00 BA08 4L048 AA08 AA47 AA54 AB01 AC07 AC15 CA00 CA07 4L055 AF09 AF44 FA16 FA30

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無緊張状態のセルロース繊維を、アルカ
    リ金属水酸化物と架橋剤の混合水溶液で処理することを
    特徴とするセルロース繊維の加工方法。
  2. 【請求項2】 無緊張状態のセルロース繊維を、アルカ
    リ金属水酸化物水溶液で処理した後、架橋剤水溶液で処
    理することを特徴とするセルロース繊維の加工方法。
  3. 【請求項3】 アルカリ金属水酸化物と架橋剤の水溶液
    で処理した無緊張状態のセルロース繊維を用いて、製編
    織してなるセルロース繊維製品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101874513B1 (ko) 2017-03-30 2018-07-04 (주)셀바이오휴먼텍 흡습성이 우수한 흡습발열 섬유제품 및 그 제조 방법

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