JP2002363593A - 皮膜形成剤及び皮膜 - Google Patents

皮膜形成剤及び皮膜

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JP2002363593A JP2001172444A JP2001172444A JP2002363593A JP 2002363593 A JP2002363593 A JP 2002363593A JP 2001172444 A JP2001172444 A JP 2001172444A JP 2001172444 A JP2001172444 A JP 2001172444A JP 2002363593 A JP2002363593 A JP 2002363593A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 潤滑性及び耐食性に優れ、廃水処理が容易で
ある皮膜形成剤を得る。 【解決手段】 皮膜形成剤に、珪酸塩(A)、ポリカル
ボン酸塩(B)、水親和性ポリマー及び/又は水親和性
有機ラメラ構造体(C)、モリブデン酸塩及び/又はタ
ングステン酸塩(D)などを含ませる。質量比B/Aは
0.02〜0.6であり、質量比C/Aは0.05〜
0.6であり、質量比D/Aは0.05〜0.6であ
る。前記皮膜形成剤は、さらに硫酸塩(E)を含有して
いてもよく、この硫酸塩(E)と前記珪酸塩(A)との
質量比(E/A)は0.01〜0.7程度である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄鋼、ステンレス
鋼、銅、アルミニウム、チタンなどの金属の表面を被覆
するのに有用な皮膜、より詳細には金属材の塑性加工
(引抜き、伸線、圧造、鍛造など)に先立って金属材に
潤滑性を持たせ、塑性加工後には金属加工品に耐食性を
持たせるのに有用な皮膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、金属材(例えば、線材、棒材な
ど)を塑性加工(例えば、引抜き、伸線、圧造、鍛造な
ど)する際には、前記塑性加工に先立って金属材の表面
に皮膜を形成することによって、被加工材と工具との焼
付きを防止したり、潤滑剤の工具への導入性(キャリア
性)を向上させたりしている。前記皮膜を形成する方法
としては、化学反応によって皮膜を生成させる化成処理
方法、物理的に皮膜を付着させる物理的方法などが知ら
れている。化成処理方法では皮膜剤としてリン酸塩、蓚
酸塩などが用いられ、物理的方法では皮膜剤として石灰
石鹸、硼砂、塩素系樹脂などが用いられている。
【0003】前記化成処理用の皮膜剤のうちリン酸塩
(リン酸亜鉛など)を用いる場合、潤滑性(加工性)や
加工後の耐食性に優れているものの、液管理に手間を要
する。また被処理材との化学反応によって大量のスラッ
ジが発生し、その処理に労力と費用とを要する。
【0004】また蓚酸塩を用いる場合も液管理に手間を
要する上に、皮膜処理後の保管中に錆が発生し易い。ま
た蓚酸塩は劇物であるため、その取り扱いに注意を要す
る。
【0005】さらには、これら化成処理においては皮膜
処理後に水洗を要するため、重金属イオン、リン酸イオ
ンなどを含む廃水が発生し、その処理にも労力と費用と
を要する。
【0006】一方、物理的方法用の皮膜剤のうち、石灰
石鹸、硼砂などは液の管理が簡便であるものの、皮膜の
潤滑性や耐食性が十分ではない。さらには、石灰石鹸で
は皮膜が剥離しやすいため、粉塵が発生しやすく、作業
環境の悪化や鍛造時の潤滑性の劣化を招く虞がある。ま
た硼砂では、石灰石鹸に比べて材料との密着性に優れて
おり粉塵の発生は少ないものの、廃水の硼素規制の面か
らその使用が制限されつつある。
【0007】また塩素系樹脂は、環境上または取り扱い
上の問題がある溶剤(トリクロロエチレン、メチレンク
ロライドなど)を使用する必要がある。
【0008】すなわち従来の皮膜剤は、潤滑性及び耐食
性の点でリン酸塩(リン酸亜鉛など)が優れているもの
の、廃水処理の点で問題がある。リン酸塩と同等の潤滑
性及び耐食性を有する環境に優しい皮膜剤の開発が強く
望まれている。
【0009】リン酸塩に代わる皮膜形成剤として、硫酸
塩が注目されている。硫酸塩皮膜は、引抜き、伸線など
の塑性加工時に使用される補助潤滑剤(ステアリン酸塩
など)をダイス等の工具内に持ち込むキャリアとして優
れており、潤滑性に優れている。例えば、特開平10−
36876号公報には、アルカリ金属硫酸塩及びアルカ
リ金属ホウ酸塩を必須成分とし、さらに脂肪酸のアルカ
リ金属塩、脂肪酸のアルカリ土類金属塩、固体潤滑剤及
び水溶性熱可塑性樹脂を含む潤滑剤組成物が開示されて
いる。しかし、前記潤滑剤組成物は、アルカリ金属ホウ
酸塩を必須成分として含有しており、廃水規制の対象と
なる。
【0010】なお特開2000−309793号公報に
は、水溶性無機塩、脂肪酸の金属塩、及びワックスを含
有する金属材料組成加工用水系潤滑剤が開示されてい
る。前記水溶性無機塩としては、ケイ酸カリウムが例示
されているものの、具体的に使用されているのは、タン
グステン酸ソーダ、モリブデン酸ソーダ、四ホウ酸カリ
ウム、硫酸カリウムなどである。また前記脂肪酸の金属
塩としては、ステアリン酸塩が開示されているに過ぎな
い。しかもワックスは、水ディスパージョンや水エマル
ジョンの形態で他成分と混合して使用される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、潤滑
性及び耐食性に優れ、廃水処理が容易である皮膜形成
剤、皮膜、前記皮膜を形成した金属材及び金属加工品、
並びに前記金属加工品の製造方法を提供する点にある。
【0012】本発明の他の目的は、液管理が容易である
皮膜形成剤、皮膜、前記皮膜を形成した金属材及び金属
加工品、並びに前記金属加工品の製造方法を提供する点
にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために鋭意研究する過程で、皮膜形成剤とし
て珪酸塩に着目した。珪酸塩は、前記硫酸塩に比べて耐
食性(防錆性)に優れているものの、前記硫酸塩に比べ
て補助潤滑剤のキャリア性が低く、潤滑性に劣るためこ
れまであまり着目されなかった成分である。この珪酸塩
のキャリア性を高め、さらには耐食性も高めてリン酸亜
鉛並の潤滑性及び耐食性を発現すべく鋭意研究したとこ
ろ、ポリカルボン酸塩、水親和性ポリマー、水親和性有
機ラメラ構造体、モリブデン酸塩、タングステン酸塩な
どを用いると、廃水規制上の問題がないだけでなく、珪
酸塩皮膜との相性がよいことを突き止めた。そして前記
各補助成分(ポリカルボン酸塩、水親和性ポリマー、水
親和性有機ラメラ構造体、モリブデン酸塩、タングステ
ン酸塩など)の割合について鋭意検討したところ、珪酸
塩と補助成分とを特定の割合で配合すると、リン酸塩
(ボンデライトなど)に匹敵する程度にまで潤滑性及び
耐食性を高めることができることを見出し、本発明を完
成した。
【0014】すなわち、本発明に係る皮膜形成剤及び皮
膜は、珪酸塩(A)と、ポリカルボン酸塩(B)と、水
親和性ポリマー及び/又は水親和性有機ラメラ構造体
(C)と、モリブデン酸塩及び/又はタングステン酸塩
(D)とを、質量比B/A=0.02〜0.6、質量比
C/A=0.05〜0.6、質量比D/A=0.05〜
0.6で含有している点に要旨を有するものである。前
記皮膜形成剤及び皮膜は、さらに硫酸塩(E)を含有し
ていてもよく、この硫酸塩(E)と前記珪酸塩(A)と
の質量比(E/A)は0.01〜0.7程度である。
【0015】本発明の組成加工用金属材は、前記皮膜が
表面に形成されている。皮膜の付着量は、例えば、3〜
50g/m2である。前記金属材は、線材、棒材、ブラ
ンク材などの形態であるのが好ましく、鋼材であるのが
好ましい。
【0016】本発明の金属加工品は、金属材を塑性加工
した金属加工品であって、前記皮膜が表面に形成されて
いる。
【0017】前記金属加工品は、塑性加工用金属材と、
前記皮膜形成剤及び水系溶剤の混合物(皮膜形成剤の濃
度:例えば、5〜70質量%程度)とを接触させ、金属
材の表面に皮膜を形成した後、塑性加工することによっ
て製造できる。皮膜形成剤と水系溶剤との混合物は、例
えば、温度60℃以上、沸点以下で塗布する。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の皮膜形成剤は、珪酸塩
(A)を主成分(すなわち、質量基準で最も多い成分)
として含有しており、珪酸塩(A)ベースの皮膜を形成
するものである。珪酸塩皮膜は、比較的軟質であるた
め、金属材の塑性加工時の変形に追随しやすく、塑性加
工用工具と金属材との間の焼付きを抑制できる。しか
も、硫酸塩に比べればキャリア性及び潤滑性が劣るもの
の、他の非リン酸塩皮膜(石灰石鹸、硼砂などの皮膜)
に比べればキャリア性及び潤滑性に優れている。
【0019】前記珪酸塩としては、式xMI 2O・ySi
2(式中、x、yは自然数を示し、MIはアルカリ金属
を示す)で表される塩(オルト珪酸塩、ソロ珪酸塩、イ
ノ珪酸塩、フィロ珪酸塩など)の他、珪酸を構成する水
素原子の一部又は全部がアルカリ成分に置き換わったも
のが使用できる。
【0020】前記珪酸には、オルト珪酸(H4SiO4
の他、メタ珪酸(H2SiO3)、メタ二珪酸(H2Si2
5)、メタ三珪酸(H4Si38)、メタ四珪酸(H6
Si411)なども含まれる。
【0021】前記アルカリ成分としては、アルカリ金属
(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土
類金属(マグネシウム、カルシウムなど)などが挙げら
れる。好ましいアルカリ成分は、ナトリウム、カリウ
ム、カルシウムなどである。
【0022】珪酸塩(A)は単独で又は二種以上組合わ
せて使用できる。
【0023】好ましい珪酸塩(A)には、珪酸アルカリ
金属塩(珪酸カリウム、珪酸ナトリウムなど)、メタケ
イ酸アルカリ金属塩(メタケイ酸ナトリウムなど)、珪
酸アルカリ土類金属塩(珪酸カルシウムなど)、水ガラ
ス[例えば、式Na2O・nSiO2(式中、nは2〜4
の整数を示す)で表される化合物など]などが含まれ
る。
【0024】そして本発明の皮膜形成剤は、珪酸塩皮膜
の潤滑性及び耐食性を高めるため、ポリカルボン酸塩
(B)、水親和性ポリマー及び/又は水親和性有機ラメ
ラ構造体(C)、モリブデン酸塩及び/又はタングステ
ン酸塩(D)を含有している。
【0025】ポリカルボン酸塩(B) ポリカルボン酸塩(B)は、珪酸塩皮膜を安定して(又
は均一に)形成するのに有用である。前記珪酸塩(A)
に対するポリカルボン酸塩(B)の量(B/A)は、例
えば、0.02(質量基準)以上、好ましくは0.03
(質量基準)以上、さらに好ましくは0.05(質量基
準)以上である。ポリカルボン酸塩(B)の量が少なす
ぎると、皮膜の生成が不均一になり、金属材と塑性加工
用工具との焼付きが発生し易くなる。また耐食性も低下
する。一方ポリカルボン酸塩(B)の量の上限は珪酸塩
皮膜を形成できる限り特に限定されず、質量比B/A
は、例えば、0.6以下である。なおポリカルボン酸塩
(B)の量が多すぎると、皮膜の除去性が低下する。そ
のため加工後に皮膜を除去する必要性が生じた場合(例
えば、メッキ処理を施す場合)に、脱膜が困難になる。
脱膜を行う場合、ポリカルボン酸塩(B)の上限は、例
えば、0.5以下、好ましくは0.4以下、さらに好ま
しくは0.3以下である。
【0026】ポリカルボン酸塩(B)としては、カルボ
ン酸基を有する重合性モノマーの重合体とアルカリ成分
との塩が使用できる。
【0027】前記カルボン酸基を有する重合性モノマー
としては、モノカルボン酸モノマー(アクリル酸、メタ
クリル酸、クロトン酸など)、ジカルボン酸モノマー
(マレイン酸、フマル酸など)などが挙げられる。好ま
しい重合性モノマーは、モノカルボン酸モノマー、特に
アクリル酸、メタクリル酸である。
【0028】重合体としては前記モノマーの単独又は共
重合体が使用できる。好ましい重合体には前記モノマー
の単独重合体、例えば、モノカルボン酸モノマーの単独
重合体[ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸など(以
下、ポリ(メタ)アクリル酸と総称する場合がある)]
が含まれる。
【0029】アルカリ成分としては、珪酸塩(A)を構
成するアルカリ成分と同様の成分(アルカリ金属、アル
カリ土類金属)の他、アンモニア、アミン類などの窒素
含有塩基が使用できる。好ましいアルカリ成分は、アル
カリ金属(ナトリウム、カリウムなど)である。
【0030】ポリカルボン酸塩(B)は単独で又は二種
以上組合わせて使用できる。
【0031】好ましいポリカルボン酸塩としては、ポリ
(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、
カリウム塩など)が挙げられる。
【0032】水親和性ポリマー及び/又は水親和性有機
ラメラ構造体(C) 水親和性ポリマー及び水親和性有機ラメラ構造体は、い
ずれも水(好ましくは熱水、例えば、温度60℃以上の
熱水)に対する親和性を有する有機物であり、低分子化
合物(モノマー、低分子塩基、低分子酸など)が結合
(σ結合、イオン結合、水素結合など)して実質的に高
分子状態となったものである。以下、水親和性ポリマー
及び水親和性有機ラメラ構造体を総称して、水親和性高
分子量化合物(C)と称する場合がある。水親和性高分
子量化合物(C)を用いると、皮膜の潤滑性をさらに高
めることができる。
【0033】前記珪酸塩(A)に対する水親和性高分子
量化合物(C)の量(C/A)は、例えば、0.05
(質量基準)以上、好ましくは0.07(質量基準)以
上、さらに好ましくは0.1(質量基準)以上である。
水親和性高分子量化合物(C)の量が少なすぎると、皮
膜の摩擦係数が高くなり、潤滑性が不十分になる。一
方、水親和性高分子量化合物(C)の量が多すぎると、
皮膜が生成しにくくなり、皮膜の密着性が低下する場合
がある。そのため珪酸塩(A)に対する水親和性高分子
量化合物(C)の量(C/A)は、例えば、0.6以
下、好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.45
以下である。
【0034】水親和性ポリマーとしては、親水性基(ヒ
ドロキシル基;アセトキシル基などのアシルオキシル
基;アミド基;ニトリル基;アミノ基;エーテル基な
ど)を有するポリマー、例えば、前記親水性基を有する
重合性モノマーの単独又は共重合体が挙げられる。
【0035】好ましい親水性ポリマーには、酢酸ビニル
の単独重合体(ポリ酢酸ビニル)又は共重合体(エチレ
ン−酢酸ビニル共重合体など)、ビニルピロリドンの単
独重合体(ポリビニルピロリドン)又は共重合体、ビニ
ルエーテルの単独重合体(ポリビニルエーテル)又は共
重合体、アリルアルコールの単独重合体(ポリアリルア
ルコールなど)又は共重合体(脂肪酸変性スチレン−ア
リルアルコール共重合体など)、ポリビニルアルコー
ル、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコー
ルなど)などが含まれる。
【0036】水親和性有機ラメラ構造体は、芳香族性有
機酸と芳香族性有機塩基との塩(又は付加物)であり、
酸と塩基とから構成されているため水親和性に優れてい
る。前記芳香族性有機酸は、芳香族環に1つ又は複数の
酸基が結合した化合物である。また前記芳香族性有機塩
基は、芳香族環に1つ又は複数の塩基が結合した化合物
である。このような芳香族性有機酸と芳香族性有機塩基
とで塩(又は付加物)を形成すると、複数の芳香族性有
機酸と芳香族性有機塩基とが平面方向に水素結合して層
を形成する。そして各層が重なりあって、全体としてラ
メラ構造を形成する。ラメラ構造体はへき開性を有して
おり、潤滑性に優れている。
【0037】前記芳香族性有機酸を構成する芳香族環と
しては、ベンゼン環、ピリジン環、ジアジン環、トリア
ジン環などが挙げられ、酸基としてはカルボン酸基、フ
ェノール性水酸基などが挙げられる。芳香族環に結合す
る酸基の数は、好ましくは複数個(例えば、2〜3個、
特に3個)である。好ましい芳香族性有機酸としては、
ベンゼンジオール(カテコール、レゾルシノール、ハイ
ドロキノンなど)、ベンゼントリオール、ベンゼンジカ
ルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ウラシル、アザウ
ラシル、バルビツル酸、ジアルル酸、シアヌル酸などが
例示できる。
【0038】前記芳香族性有機塩基を構成する芳香族環
としては、前記芳香族性有機酸と同様の芳香族環が挙げ
られ、塩基としてはアミノ基があげられる。芳香族環に
結合する塩基の数は、好ましくは複数個(例えば、2〜
3個、特に3個)である。好ましい芳香族性塩基には、
ベンゼンジアミン、ベンゼントリアミン、グアナミン、
メラミンなどが含まれる。
【0039】前記芳香族性有機酸及び芳香族性有機塩基
は、芳香族環に酸基と塩基との両方が結合していてもよ
い。このような化合物としては、シトシン、アンメリ
ン、アンメリド、イソウラミル、グアニジン類(マロニ
ルグアニジン、タルトロルグアニジン、メソキサリルグ
アニジン)などが含まれる。
【0040】好ましい水親和性有機ラメラ構造体には、
トリアジン環を有する有機酸と、トリアジン環を有する
有機塩基との塩(又は付加物)が含まれる。
【0041】水親和性高分子量化合物(C)は単独で又
は二種以上組合わせて使用できる。
【0042】モリブデン酸塩及び/又はタングステン酸
塩(D) モリブデン酸塩及びタングステン酸塩は、いずれも廃水
規制の対象とならない環境に優しい塩であり、かつ皮膜
の耐食性を向上させるのに有用である。以下、モリブデ
ン酸塩及びタングステン酸塩を総称して、耐食剤(D)
と称する場合がある。
【0043】前記珪酸塩(A)に対する耐食剤(D)の
量(D/A)は、例えば、0.05(質量基準)以上、
好ましくは0.1(質量基準)以上、さらに好ましくは
0.15(質量基準)以上である。耐食剤(D)の量が
少なすぎると、皮膜の耐食性が低下し、錆が発生しやす
くなる。一方耐食剤(D)の量が多すぎると、皮膜が生
成しにくくなり、皮膜の密着性が低下する。そのため珪
酸塩(A)に対する耐食剤(D)の量(D/A)は、例
えば、0.6以下、好ましくは0.5以下、さらに好ま
しくは0.45以下である。
【0044】耐食剤(D)(モリブデン酸塩、タングス
テン酸塩)としては、モリブデン酸やタングステン酸と
アルカリ成分[例えば、前記珪酸塩(A)を構成するア
ルカリ成分と同様の成分]との塩が使用できる。なお耐
食剤(D)は単独で又は二種以上組合わせて使用でき
る。
【0045】好ましい耐食剤(D)には、モリブデン酸
のアルカリ金属塩(モリブデン酸ナトリウム、モリブデ
ン酸カリウムなど)、モリブデン酸のアルカリ土類金属
塩(モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸カルシウ
ムなど)、タングステン酸のアルカリ金属塩(タングス
テン酸ナトリウム、タングステン酸カリウムなど)、タ
ングステン酸のアルカリ土類金属塩(タングステン酸マ
グネシウム、タングステン酸カルシウムなど)が含まれ
る。特に好ましい耐食剤は、アルカリ金属塩(モリブデ
ン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウムなど)であ
る。
【0046】本発明の皮膜形成剤は、実質的に前記必須
成分[珪酸塩(A)、ポリカルボン酸塩(B)、水親和
性高分子量化合物(C)、耐食剤(D)]のみで構成し
てもよいが、必要に応じて、硫酸塩(E)、固体潤滑剤
(F)、及びその他の成分(G)などを含有してもよ
い。
【0047】硫酸塩(E) 硫酸塩(E)を加えると、キャリア性及び皮膜強度を高
めることができ、金属材と加工用工具との焼付きをさら
に低減できる。硫酸塩(E)は、変形度の高い塑性加工
を行う金属材に皮膜を形成する場合に特に有用である。
珪酸塩(A)に対する硫酸塩(E)の量(E/A)は、
例えば、0.01(質量基準)以上、好ましくは0.0
3(質量基準)以上、さらに好ましくは0.05(質量
基準)以上である。なお硫酸塩(E)の量が多すぎる
と、皮膜が硬くなりすぎて金属材や工具に疵をつけやす
くなる。そのため珪酸塩(A)に対する硫酸塩(E)の
量(E/A)は、例えば、0.7以下、好ましくは0.
6以下、さらに好ましくは0.5以下である。
【0048】硫酸塩としては、アルカリ金属硫酸塩、ア
ルカリ土類金属硫酸塩などが使用できる。硫酸塩は単独
で又は二種以上組合わせて使用できる。
【0049】好ましい硫酸塩は、アルカリ金属硫酸塩
(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなど)であ
る。
【0050】固体潤滑剤(F) 固体潤滑剤(F)を用いると、皮膜の潤滑性をさらに高
めることができる。固体潤滑剤としては、二硫化モリブ
デン、黒鉛、窒化硼素、雲母、フッ化黒鉛、ポリテトラ
フルオロエチレンなどが挙げられる。
【0051】その他の成分(G) 本発明の皮膜形成剤には、その他の成分として、皮膜形
成剤として慣用されている種々の成分が含まれていても
よい。これら成分は、本発明の作用・効果に影響を与え
ない範囲で使用できる。またその他の成分には、不純物
も含まれる。
【0052】皮膜形成剤は、前記有効成分[珪酸塩
(A)、ポリカルボン酸塩(B)、水親和性高分子量化
合物(C)、耐食剤(D)などの必須成分;硫酸塩
(E)、固体潤滑剤(F)、その他の成分(G)などの
補助成分など]を含有している限り特に限定されず、有
効成分のみで構成してもよく、有効成分と水系溶剤(特
に、水)との混合物であってもよい。後述するように皮
膜形成剤は水系溶剤と混合して金属材に塗布するため、
予め水系溶剤との混合物としておくと簡便である。
【0053】本発明の皮膜形成剤は、水系溶剤との混合
物とした上で、その必須成分[特に水親和性高分子量化
合物(C)]が水系溶剤に見掛け上(又は実質的に)溶
解するように調製する。その後、前記調製液と金属材と
を接触させることによって、金属材の表面に皮膜を形成
する。なお見掛け上(又は実質的に)溶解するとは、必
須成分と水系溶剤との混合物が激しく濁ることがなく、
僅かに濁っている(好ましくはクリアーになっている)
状態のことをいう。必須成分が見掛け上(又は実質的
に)溶解するようにすることによって、皮膜の潤滑性を
高めることができる。前記皮膜形成剤は、実質的に金属
材とは化学反応しておらず、金属材表面に物理的に付着
している。
【0054】以下、皮膜形成剤として有効成分のみで構
成された皮膜形成剤を例にとって前記皮膜形成方法をよ
り詳細に説明する。皮膜形成剤として有効成分と水系溶
剤とで構成された皮膜形成剤を用いる場合には、水系溶
剤の使用量を適宜調節して、同様に皮膜を形成できる。
【0055】水系溶剤としては、水の他、水と水溶性溶
剤との混合物が含まれる。前記水溶性溶剤としては、メ
タノール、エタノール、エチレングリコールなどのアル
コール類;アセトンなどのケトン類;テトラヒドロフラ
ン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテ
ル類;アセトニトリルなどのニトリル類が例示できる。
好ましい水系溶剤は、水である。
【0056】皮膜形成剤の必須成分を水系溶剤に見掛け
上(又は実質的に)溶解させるため、皮膜形成剤と水系
溶剤との混合物を加熱することが多い。前記混合物の温
度は、例えば、60℃以上、好ましくは70℃以上、さ
らに好ましくは80℃以上である。なお前記混合物の温
度は、通常、沸点以下であるが、混合物の温度が高すぎ
ると、水の蒸発が顕著となり作業環境が悪化する。その
ため混合物の温度は、97℃以下、好ましくは95℃以
下であることが多い。
【0057】皮膜形成剤の濃度は、例えば、5質量%以
上、好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質
量%以上である。皮膜形成剤の濃度が薄すぎると、皮膜
の生成が不均一になる場合がある。皮膜形成剤の濃度の
上限は、皮膜形成剤が水系溶剤に見掛け上(又は実質的
に)溶解可能である限り特に限定されないが、例えば、
70質量%以下(好ましくは60質量%以下)である。
なお皮膜形成剤の濃度が濃すぎると、皮膜の密着性が低
下する場合がある。皮膜の密着性の低下を防止する場
合、皮膜形成剤の濃度は、例えば、50質量%以下、好
ましくは45質量%以下である。
【0058】皮膜形成剤及び水系溶剤の混合液(調製
液)と金属材とを接触させる方法としては、特に限定さ
れず、慣用の種々の方法が利用できる。例えば、前記混
合液(調製液)に金属材を浸漬する方法、金属材に前記
混合液(調製液)を塗布(スプレーによる塗布など)す
る方法などが挙げられる。
【0059】前記混合液(調製液)と金属材とを接触さ
せた後は、必要に応じて乾燥してもよい。
【0060】皮膜形成剤の付着量(すなわち形成された
皮膜の量)は、例えば、3g/m2(有効成分基準)以
上、好ましくは4g/m2(有効成分基準)以上、さら
に好ましくは5g/m2(有効成分基準)以上である。
皮膜の付着量が少なすぎると、金属材と塑性加工用工具
との間に焼付きが発生しやすくなる。皮膜形成剤の付着
量の上限は特に限定されず、例えば、50g/m2以下
であってもよいが、皮膜形成剤の付着量が多すぎると、
塑性加工時に皮膜が剥離し易くなる。すなわち前記金属
材を鍛造加工する場合には、鍛造潤滑油を使用すること
が多いものの、皮膜の剥離量が多くなると前記鍛造潤滑
油が劣化しやすくなる。皮膜の剥離量を少なくする場
合、皮膜形成剤の付着量は、例えば、35g/m2
下、好ましくは30g/m2以下である。
【0061】なお前記金属材の形態は、塑性加工するた
めの金属材である限り特に限定されず、例えば、線材又
は棒材、前記線材又は棒材を切断した切断材(ブランク
材)、鋼板などの種々の金属材が使用できる。好ましい
金属材は、線材、棒材、ブランク材などである。線材又
は棒材としては、例えば、ボルト、ナット、ばね、PC
(prestressed concrete)鋼、スチールコード、ビード
ワイヤーなどを製造するための線材又は棒材が挙げられ
る。ブランク材としては、前方又は後方押出部品を製造
するためのブランク材が挙げられる。
【0062】また金属材の成分も特に限定されず、鋼材
(鉄鋼、ステンレス鋼)、アルミ、チタン、銅などの種
々の金属材が使用できる。好ましい金属材は、鋼材であ
る。
【0063】本発明では上述したように、金属材と、皮
膜形成剤及び水の混合物(調製液)とを接触させること
によって金属材の表面に皮膜を形成すればよく、この皮
膜形成工程の前工程、及び後工程(塑性加工工程)は特
に限定されないが、前工程では金属材表面を清浄化処理
(清浄化工程)することが多い。清浄化処理としては、
脱スケール処理、脱脂処理などが挙げられる。前記脱ス
ケールでは慣用の方法が使用でき、例えば、機械的脱ス
ケール法(ショットブラストなどのブラスト法、ベンデ
ィングなど)、化学的脱スケール法(酸洗など)が使用
できる。好ましい脱スケール法は、機械的脱スケール法
である。機械的脱スケール法によれば、バッチ処理では
なくインライン処理によって脱スケールできるため、物
理的に短時間で皮膜を形成する本発明に適している。
【0064】塑性加工では、金属材の用途に応じて、引
抜又は伸線加工、圧造又は鍛造加工、圧延加工などの種
々の塑性加工を行うことができる。なお金属材の用途に
よっては、複数の塑性加工を行う場合がある。例えば、
ボルト、ナットなどを製造する場合には、引抜加工した
後、圧造を行う。前方又は後方押出部品を製造する場合
には、線材又は棒材を引抜加工し、切断した後で、鍛造
する。スチールコード、ビードワイヤーなどを製造する
場合には、一次伸線、二次伸線などのように複数の段階
に分けて伸線加工を行う。複数の塑性加工を行う場合、
少なくとも一つの塑性加工の前に前記皮膜形成剤で金属
材を処理すればよく、全ての塑性加工の前に前記皮膜形
成剤で金属材を処理してもよい。
【0065】塑性加工を施す場合、必要に応じて補助潤
滑剤を併用してもよい。本発明の皮膜はキャリア性に優
れているため、補助潤滑剤を併用すると潤滑性を著しく
高めることができる。
【0066】補助潤滑剤としては、脂肪酸塩(脂肪酸と
アルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩など)、脂肪
酸エステル、天然ワックスなどが挙げられる。前記脂肪
酸塩及び脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、例えば、
炭素数12〜26程度の脂肪酸であってもよい。
【0067】上記のようにして皮膜形成剤が付着した金
属材を塑性加工することによって、種々の金属加工品
(ボルト、ナット、ばね、PC鋼、スチールコード、ビ
ードワイヤー、前方又は後方押出部品、圧延鋼板など)
を製造できる。この金属加工品には、金属材に付着させ
た皮膜の一部又は全部が付着しており、金属加工品の耐
食性を高めている。
【0068】金属加工品表面の皮膜の付着量は、前記金
属材表面の皮膜付着量と同程度であってもよいが、通
常、金属材表面の付着量よりも小さく、例えば、2g/
2以上(好ましくは3g/m2以上、さらに好ましくは
4g/m2以上)、40g/m 2以下(好ましくは30g
/m2以下、さらに好ましくは20g/m2以下)であ
る。
【0069】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範
囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であ
り、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含され
る。
【0070】皮膜処理材1〜17 珪酸塩(A)としての珪酸カリウム、ポリカルボン酸塩
(B)としてのポリアクリル酸ナトリウム、水親和性高
分子量化合物(C)としてのメラミンシアヌレート、耐
食剤(D)としてのモリブデン酸ナトリウム、及び硫酸
塩(E)としての硫酸ナトリウムを表1に示す割合で含
む皮膜形成剤を、表1に示す濃度となるように水と混合
し、皮膜処理液を得た。
【0071】SCM435の球状化焼鈍材(線材直径φ
=8mm、重量1トン)を酸洗してスケールを除去した
後、水洗し、中和処理した(試験材1)。この試験材1
を、温度90℃に加温した前記皮膜処理液に5分間浸漬
し、乾燥することによって表面に皮膜が形成された皮膜
処理材1〜17を製造した。
【0072】皮膜処理材18〜20 皮膜処理液を、下記の濃度及び温度のリン酸亜鉛液、石
灰石鹸液、又はボラックス(硼砂)液に代えて、下記に
示す時間浸漬する以外は、皮膜処理材1〜17と同様に
処理することによって皮膜処理剤18〜20を製造し
た。
【0073】リン酸亜鉛液:濃度75g/L、温度80
℃、時間7分 石灰石鹸液:濃度200g/L、温度65℃、時間5分 ボラックス液:濃度250g/L、温度85℃、時間5
分 皮膜処理材1〜20の潤滑性、及び耐食性を下記の方法
に従って評価した。
【0074】[潤滑性]補助潤滑剤(ステアリン酸カル
シウム)を用いながら前記皮膜処理材1〜20を直径φ
=7mmに引抜加工した後、減面率20%で前方押出試
験を行い、押出荷重を測定した。
【0075】また補助潤滑剤を用いることなく、前記直
径φ=7mmの引抜材を直径φ=4.5mmまで4パス
で(φ=6.2mmまで伸線する第1パス、φ=5.5
mmまで伸線する第2パス、φ=4.9mmまで伸線す
る第3パス、φ=4.5mmまで伸線する第4パス)伸
線加工し、加工後の表面状態(表面肌)を観察した。
【0076】[耐食性]前記皮膜処理材1〜20を温度
40℃、湿度80%の恒温恒湿槽内で2週間放置した
後、材料の表面に発生した錆の面積率を測定した。
【0077】表1に結果を示す。
【0078】
【表1】
【0079】表1より明らかなように皮膜処理材1〜1
0は、従来の石灰石鹸(皮膜処理材19)やボラックス
(皮膜処理材20)に比べて押出荷重が小さく、表面肌
が良好で焼付がなく、潤滑性に優れており、さらには錆
の発生がなく耐食性に優れている。また前記皮膜処理材
1〜10は、廃水規制の対象となるような成分(亜鉛な
ど)を含有していないにも拘わらず、従来の皮膜剤の中
で潤滑性や耐食性が優れているリン酸亜鉛(皮膜処理材
18)に比べて、同等程度の潤滑性及び耐食性を有して
いる。特に硫酸塩(E)を含む皮膜処理材8〜10は、
リン酸亜鉛(皮膜処理材18)に比べて、潤滑性(押出
荷重)が優れている。さらに皮膜処理材1〜10は、リ
ンを含有していないため、リン酸亜鉛に比べて耐遅れ破
壊性も向上する。
【0080】なおポリカルボン酸塩(B)、水親和性高
分子量化合物(C)、耐食剤(D)などが多すぎたり少
なすぎたりする皮膜処理材11〜16では、押出荷重が
高い場合、焼付が発生する場合、錆が発生する場合など
があり、潤滑性や耐食性が劣る。また硫酸塩(E)が多
すぎる皮膜処理材17では、押出荷重が小さく、焼付が
発生せず、錆も発生しないものの、引抜材においてピッ
ト状の疵が多く認められ、表面品質が良好ではない。
【0081】皮膜処理材21〜28珪酸塩(A)として
の珪酸ナトリウム、ポリカルボン酸塩(B)としてのポ
リアクリル酸カリウム、水親和性高分子量化合物(C)
としての酢酸ビニル共重合体、及び耐食剤(D)として
のタングステン酸ナトリウムを以下の割合で含む皮膜形
成剤を、表2に示す濃度となるように水と混合し、皮膜
処理液を得た。
【0082】B/A=0.1(質量比) C/A=0.2(質量比) D/A=0.18(質量比) S45C(線材直径φ=10.5mm)をショットブラ
ストによってスケーを除去した鋼材(試験材2)を、表
2に示す温度に加温した前記皮膜処理液に5分間浸漬
し、乾燥することによって表面に皮膜が形成された皮膜
処理材21〜28を製造した。
【0083】皮膜処理材21〜28の潤滑性を下記の方
法に従って評価し、耐食性を前記皮膜処理材1〜20と
同様にして評価した。
【0084】[潤滑性]補助潤滑剤を用いることなく、
皮膜処理材21〜28を引抜加工して直径φ=9mmの
引抜材を得た後、圧造してM10アップセットボルトを
製造した。皮膜処理材と引抜材について皮膜形成剤の付
着量を測定すると共に、引抜材とボルト頭部の表面状態
(表面肌)を観察した。
【0085】結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】表2より明らかなように、引抜加工して引
抜材を製造する場合、皮膜処理材21〜27は潤滑性
(表面状態)及び耐食性に優れている。前記皮膜処理材
21〜27のうち好ましいのは、皮膜処理材25〜27
を除いた皮膜処理材21〜24である。皮膜処理材25
では引抜加工時の皮膜の剥離量が多く、鍛造時の潤滑油
を劣化させ易く、皮膜処理材26では皮膜処理液の温度
が高くて水の蒸発量が多く、水の補給による濃度調整が
煩雑になると共に作業環境が悪化しやすく、皮膜処理材
27では引抜加工後にさらに圧造する場合には焼付が発
生するのに対して、皮膜処理材21〜24では、引抜加
工時の皮膜の剥離量が少なく、水の蒸発量も少なく、さ
らには引抜加工後にさらに圧造する場合でも高い潤滑性
を維持できる。
【0088】なお皮膜処理材28は、皮膜形成剤の濃度
が薄く皮膜付着量が少ないため、耐食性及び潤滑性のい
ずれも不十分である。
【0089】
【発明の効果】本発明によれば、珪酸塩(A)をベース
とした皮膜を形成し、かつ前記珪酸塩皮膜の耐食性及び
潤滑性を向上するためにポリカルボン酸塩(B)、水親
和性高分子量化合物(C)、及び耐食剤(D)を特定の
割合で混ぜているため、廃水処理が容易であるにも拘わ
らず、耐食性や潤滑性に優れた皮膜を形成することがで
きる。
【0090】また本発明によれば、金属材や金属加工品
の表面に物理的に皮膜を形成するため、煩雑な液管理を
必要とせず、簡便である。
【0091】さらに本発明によれば、皮膜形成剤が実質
的にリンを含有していないため、侵リンを防止でき、皮
膜処理した金属材又は金属加工品の耐遅れ破壊性を高め
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10M 145/04 C10M 145/04 145/08 145/08 145/14 145/14 145/16 145/16 145/26 145/26 149/10 149/10 159/00 159/00 C23C 22/40 C23C 22/40 // C10M 103/06 C10M 103/06 E C10N 10:02 C10N 10:02 10:04 10:04 10:12 10:12 20:00 20:00 Z 30:12 30:12 40:24 40:24 Z 50:02 50:02 (72)発明者 田中 勝正 神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会社神戸 製鋼所神戸製鉄所内 (72)発明者 中野 和生 奈良県北葛城郡王寺町畠田8丁目1488番地 マコトフックス株式会社内 (72)発明者 池田 正彦 奈良県北葛城郡王寺町畠田8丁目1488番地 マコトフックス株式会社内 Fターム(参考) 4H104 AA11C AA21A AA21C BE28C CB02C CB04C CB08C CB09C CB14C CE05C DB01C EA17C FA01 FA02 FA06 LA06 PA23 PA32 PA33 PA34 PA35 QA01 QA08 4K026 AA02 AA24 BA01 BA02 BB04 BB08 CA16 CA27 CA29 CA31 CA33 CA38 CA39 DA13 DA15 DA16

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 珪酸塩(A)と、ポリカルボン酸塩
    (B)と、水親和性ポリマー及び/又は水親和性有機ラ
    メラ構造体(C)と、モリブデン酸塩及び/又はタング
    ステン酸塩(D)とを含有し、前記各成分の質量比が以
    下の通りである皮膜形成剤。 B/A=0.02〜0.6 C/A=0.05〜0.6 D/A=0.05〜0.6
  2. 【請求項2】 さらに硫酸塩(E)を含有し、この硫酸
    塩(E)と前記珪酸塩(A)との質量比(E/A)が
    0.01〜0.7である請求項1記載の皮膜形成剤。
  3. 【請求項3】 珪酸塩(A)と、ポリカルボン酸塩
    (B)と、水親和性ポリマー及び/又は水親和性有機ラ
    メラ構造体(C)と、モリブデン酸塩及び/又はタング
    ステン酸塩(D)とを以下の割合で含む皮膜。 B/A=0.02〜0.6 C/A=0.05〜0.6 D/A=0.05〜0.6
  4. 【請求項4】 さらに硫酸塩(E)を含有し、この硫酸
    塩(E)と前記珪酸塩(A)との質量比(E/A)が
    0.01〜0.7である請求項3記載の皮膜。
  5. 【請求項5】 請求項3又は4に記載の皮膜が表面に形
    成されている塑性加工用金属材。
  6. 【請求項6】 皮膜の付着量が3〜50g/m2である
    請求項5記載の塑性加工用金属材。
  7. 【請求項7】 線材、棒材、又はブランク材である請求
    項5又は6に記載の塑性加工用金属材。
  8. 【請求項8】 鋼材である請求項5〜7のいずれかに記
    載の塑性加工用金属材。
  9. 【請求項9】 金属材を塑性加工した金属加工品であっ
    て、請求項3又は4に記載の皮膜が表面に形成されてい
    る金属加工品。
  10. 【請求項10】 塑性加工用金属材と、請求項1又は2
    に記載の皮膜形成剤及び水系溶剤の混合物とを接触さ
    せ、金属材の表面に皮膜を形成した後、前記金属材を塑
    性加工する金属加工品の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記混合物中の皮膜形成剤の濃度を5
    〜70質量%とする請求項10記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 皮膜形成剤と水系溶剤との混合物を温
    度60℃以上、沸点以下で塗布する請求項10又は11
    に記載の製造方法。
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