JP2002360300A - 走査型プローブ顕微鏡による二本鎖核酸の分析 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡による二本鎖核酸の分析

Info

Publication number
JP2002360300A
JP2002360300A JP2001171590A JP2001171590A JP2002360300A JP 2002360300 A JP2002360300 A JP 2002360300A JP 2001171590 A JP2001171590 A JP 2001171590A JP 2001171590 A JP2001171590 A JP 2001171590A JP 2002360300 A JP2002360300 A JP 2002360300A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
double
nucleic acid
stranded nucleic
substrate
base pairs
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2001171590A
Other languages
English (en)
Inventor
Minoru Takeuchi
実 竹内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Olympus Corp
Original Assignee
Olympus Optical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Olympus Optical Co Ltd filed Critical Olympus Optical Co Ltd
Priority to JP2001171590A priority Critical patent/JP2002360300A/ja
Publication of JP2002360300A publication Critical patent/JP2002360300A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】二本鎖核酸を、その塩基対を基板の側に向け
て、又はリン酸基を基板の側に向けて露出した状態で、
平滑な表面を有する基板上に配置すること。 【解決手段】まず、二本鎖核酸の塩基対間に差し込まれ
て二本鎖核酸の二重螺旋構造を巻き戻すことができるイ
ンターカレート試薬を二本鎖核酸と反応させ、該二本鎖
核酸の螺旋構造を解消して二本鎖を平行化することによ
り、前記二本鎖核酸の全ての塩基対を、平行化された二
本鎖核酸の基準面の片側に配向させる。こうして平行化
された二本鎖核酸を、その塩基対を基板の側に向けて、
又はリン酸基を基板の側に向けて、平滑な表面を有する
基板上に配置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、螺旋構造を有する
二本鎖核酸分子の塩基対を走査型プローブ顕微鏡の探針
でプロービングすることにより、該二本鎖核酸分子を分
析する方法に関する。より具体的には、そのような塩基
対のプロービングを可能にするために、二本鎖DNAま
たは二本鎖RNA分子の二重螺旋形状を巻き戻すことに
より、その螺旋構造の内側に内包されている塩基対が外
側に露出するようにして二本の核酸鎖を平行化し、これ
を平滑な基板表面上に配置もしくは固定化する方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】ゲノム情報を大規模に解析するには、D
NAの塩基配列を高速に決定する手段の開発が必要であ
る。この点に関して、DNA分子を走査型トンネル顕微
鏡(STM)、原子間力顕微鏡(AFM)等の走査型プ
ローブ顕微鏡を用いて観察することにより、その分子内
にある塩基の種類を識別し、塩基配列を決定する方法
は、塩基配列決定を高速化するための有力な手段として
期待されている。この走査型プローブ顕微鏡を用いた観
察により、二本鎖DNAに固有な螺旋構造が確認されて
いる(Science 243: 370-372(1989), Nature 346: 294-
296(1990))。しかし、塩基配列を同定できるほどにま
で解像度を向上した二本鎖DNAの像は得られていな
い。
【0003】走査型プローブ顕微鏡による分析におい
て、高分解能化を図るための顕微鏡側の要素としては、
例えば、探針の先端系を小さくすること、探針から
の信号に対する感度を上げること、探針の位置制御精
度を上げること等が含まれる。
【0004】しかし、これら顕微鏡側での要素を改善す
ることのみによって、二本鎖DNA上の塩基対を検出お
よび識別するには、次のような原理的な障害が存在す
る。
【0005】第一は、深度方向の障害である。走査型プ
ローブ顕微鏡は、試料の表面ないし表面近傍の構造情報
のみを検出するようになっている。一方、二本鎖DNA
の螺旋構造においては、塩基対は内側に配向するため、
螺旋構造を構成するリン酸基やリボースが深度方向で障
害となり、螺旋構造の内側に内包されている塩基対を検
出することが困難である。
【0006】第二は、水平方向の障害である。走査型の
プローブ顕微鏡による高分解能観察のための条件とし
て、常に探針の先端の一点で試料上を走査する必要があ
る。しかし、二本鎖DNA分子自体は、螺旋を巻いた円
筒型の形状を有しているため、平滑な基板上に固着した
ときには、探針の側面接触が避けられない。この状態で
は、探針の先端で対象DNAの表面を走査することは不
可能であり、水平方向の試料位置の正確な検出を行う上
での障害となる。この問題は、探針の先端径を小さくす
る等のような、顕微鏡側の高分解能化によって独立に解
決することはできない。
【0007】以上のような問題を解決するための技術と
して、本発明者はすでにホスホロチオエート核酸の硫黄
原子を介して配置、及び固着する方法を検討してみた。
しかし、ホスホロチオエート核酸を使用しなければなら
ないことなど、その合成や操作が煩雑であった。また、
基板には硫黄吸着性の金基板等を使用して固着してい
た。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑
みてなされたものであり、その一つの目的は、走査型プ
ローブ顕微鏡によって二本鎖核酸を分析する際に、上記
のような深度方向および水平方向の障害を生じることな
く、二本鎖核酸における塩基対部分の直接的プロービン
グを可能にすることにある。
【0009】本発明のもう一つの目的は、上記のような
塩基対部分の直接的プロービングを、簡単かつ安価に、
塩基対を試料の表面ないし表面の近傍に配置した二本鎖
核酸を基板上に配置する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、二本鎖核酸の螺旋構造を巻き戻して塩
基対部分を外側に露出させると共に、二本鎖核酸の塩基
対を基板の側に向けて、又はリン酸基を基板の側に向け
て、平滑な表面を有する基板上に配置する。
【0011】本発明の一つの態様に従えば、二本鎖核酸
を平滑な表面を有する基板上に固定する方法であって、
二本鎖核酸の塩基対間に差し込まれて二重螺旋構造を巻
き戻すことができるインターカレーション試薬を二本鎖
核酸と反応させ、該二本鎖核酸の二重螺旋構造を解消し
て二本鎖を平行化することにより、二重螺旋構造の内部
に埋没していた塩基対を一方向に露出させる工程と、上
記のように平行化した二本鎖核酸の塩基対を基板の側に
向けて、又はリン酸基を基板の側に向けて、平滑な表面
を有する基板上に配置する工程を具備する方法が提供さ
れる。
【0012】本発明のもう一つの側面に従えば、二本鎖
核酸を一定方向に配向させる方法であって、二本鎖核酸
の塩基対間に差し込まれて二重螺旋構造を巻き戻すこと
ができるインターカレーション試薬を二本鎖核酸と反応
させ、該二本鎖核酸の二重螺旋構造を解消して二本鎖を
平行化することにより、二重螺旋構造の内部に埋没して
いた塩基対を一方向に露出させる工程と、前記平行化し
た二本鎖核酸のリン酸基を原子又は分子の陽イオンを介
して静電気的に架橋し、平滑な表面を有する基板上で一
定方向に整列させる工程とを具備する方法が提供され
る。その場合、上記のように配向された二本鎖核酸を高
密度で前記基板表面に配置させると共に、上記のように
配向された二本鎖核酸の塩基、又はリン酸基を介して平
滑な表面を有する基板表面に固着してもよい。このよう
に陽イオンを介して架橋された二本鎖核酸は新規であり
(図4参照)、本発明の一つの側面を構成する。
【0013】本発明の他の側面に従えば、上記何れかの
方法により前記基板上に配置または固定化された二本鎖
核酸を、走査型プローブ顕微鏡によりプロービングする
ことを特徴とする、二本鎖核酸の分析方法が提供され
る。
【0014】なお本明細書において、「平行化」とは、
厳密に一定距離を維持した状態を指すのではなく、使用
したい長さについてほぼ並行であればよい。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、夫々の項目毎に本発明の詳
細を説明する。
【0016】<二本鎖核酸>本発明において、二本鎖核
酸とは、相補的な塩基配列を有する二本の一本鎖核酸
が、塩基対形成により合体して二本鎖を形成したものを
言う。従って、本発明の二本鎖核酸には、二本鎖DNA
および二本鎖RNAの両者が含まれるだけでなく、DN
AとRNAとのハイブリッド二本鎖も含まれる。また、
ホスホロチオエートDNAのような、核酸誘導体も含ま
れる。以下では、二本鎖DNAを例に説明するが、本発
明は上記の何れの二本鎖核酸に対しても同様に適用でき
るものである。
【0017】<走査型プローブ顕微鏡>本発明は、二本
DNA分子を走査型プローブ顕微鏡で分析する際に有用
である。ここで、走査型プローブ顕微鏡とは、原子レベ
ルでの観察が可能な走査型顕微鏡の総称であり、走査型
トンネル顕微鏡(scanning tunneling microscopy;S
TM)、原子間力顕微鏡(atomic force microscopy;
AFM)が含まれる。AFMは斥力型、引力型およびタ
ッピング型(「タッピング型」は、アメリカ合衆国カリ
ホルニア州サンタバーバラに所在するデジタルインスツ
ルメント社の登録商標)等に大別されるが、この分野の
研究は著しく進展している最中であり、摩擦力顕微鏡、
マクスウエル応力顕微鏡、磁気力顕微鏡、フォトン走査
型トンネル顕微鏡等の新しい顕微鏡が開発されつつあ
る。本発明における走査型プローブ顕微鏡とは、その趣
旨に鑑み、現在知られているものに限らず、原子レベル
の分解能を有する顕微鏡であれば将来開発されるものを
も含む。
【0018】上記の走査型プローブ顕微鏡によるDNA
分析は、分子集合体としての性質に基づく従来の分析と
は異なり、1個のDNA分子自体を分析できるという特
徴を有する。従って、原理的には、1分子のDNAが存
在すれば分析が可能であり、多くのクローンを作製する
必要がないという利点を有する。
【0019】<インターカレーション試薬>本発明で
は、二本鎖DNAを走査型プローブ顕微鏡で分析する際
の深度方向の障害を解決するために、二本鎖DNAにお
ける螺旋構造のねじれを解消させて平行化させる。螺旋
構造を有する本来の二本鎖DNAは、塩基対が露出してい
る側とリン酸基が露出している側を両面に持つリボンが
捩れている様な構造を取る。ここで二本鎖DNAの螺旋構
造のねじれを解消させて平行化すれば、リボンの捩れが
なくなりリボンの両面が互いに平行な平面になるよう
に、塩基対が露出している側とリン酸基が露出している
側は共に平行に並ぶことになる。このように塩基対が平
行に並んだ二本鎖DNAを、塩基対を基板側に向けて、ま
たはリン酸基を基板に向けて基板に吸着させると、試料
表面ないし表面近傍に一様に塩基対が並んだ二本鎖DNA
試料ができる。このように作成した試料は走査プローブ
顕微鏡の探針が塩基対へ接近することを可能とし、プロ
ービングの際の深度方向の障害が解消される。
【0020】そのための具体的な手段として、第一に、
インターカレーション試薬を用いる。インターカレーシ
ョン試薬とは、塩基対の間に挟まる形で二本鎖DNAに
結合する物質であり、この試薬の多くは、抗生物質ある
いは抗ガン剤として働くことが知られている。このよう
なインターカレーション試薬の例としては、下記の化学
式a〜eで表される化合物が含まれる。好ましくは、式
c〜式eのようなポリピリジン系配位子を有する金属錯
体(以下、ポリピリジン配位金属錯体という)およびそ
の類縁体であり、最も好ましくは式c〜式dの化合物で
ある。
【0021】
【化2】 なお、式a〜cの化合物の名称は、それぞれ次の通りで
ある。
【0022】式a: エチジウム(ethidium) 式b: プロフラビン(proflavine) 式c: 2−ヒドロキシエタンチオラト(2,2',2''
−ターピリジン)プラチナム(II) 2-Hydroxyethanethiolato(2,2',2''-terpyridine)plati
num(II) 式d: 2,2'−ビピリジン(エチレンジアミン)プラチ
ナム(II) (2,2’-Bipyridine)(ethylendiamine)platinum(II) 式e: 2,2'−ビピリジンジクロロプラチナム(II) (2,2’-Bipyridine)dichloroplatinum(II)
【0023】多くのインターカレーション試薬におい
て、二本鎖DNAの螺旋構造を解消する作用が確認され
ている(Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Ox
ford University Press. P3463-3468; Nature 287:561
-563 (1980); Nature 276:471-474 (1980))。上記の
インターカレーション試薬は、二本鎖DNA分子に結合
して、その構造変化を誘導する。例えば、上記式cおよ
び式dのポリピリジン配位金属錯体は、飽和状態では塩
基対1残基おきに塩基対の間に挟まるインターカレーシ
ョン試薬である(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72: 482
5-4829;Nature 287: 561-563 (1980))。また、DNAのG
C pairの含有率に比例してインターカレーション試薬が
取り込まれるという報告もなされている(Biochemistry
18: 5762-5769 (1979))。ポリピリジン配位金属錯体
は、塩基対の間隔を広げることでDNA分子を縦方向に
延ばし、螺旋構造を解消し、平行化する(Nature 287:
561-563 (1980))。ただし、この二本鎖DNAの平行化
を確認する実験においていて、DNAは、束ねた状態で
X線繊維回折像を取るために用いられており、塩基を露
出することを目的とせず、実際に塩基は露出されていな
い。ポリピリジン配位金属錯体以外のインターカレーシ
ョン試薬によっても、螺旋構造がゆるむことは報告され
ているが、完全に平行化することを確認した例はない。
更に、ポリピリジン配位金属錯体に限らず、二本鎖DN
Aの塩基対を露出するための手段としてインターカレー
ション試薬が利用された例はない。
【0024】上記のように、本発明ではインターカレー
ション試薬、特に好ましくはポリピリジン配位金属錯体
を用いる。図1はポリピリジン配位金属錯体の結合を受
けることによって平行化された二本鎖DNAを示したもの
である。螺旋構造を取る二本鎖DNA(図1上)は、各塩基
対の間にポリピリジン配位金属錯体(図1下、明るい部
分)が挿入されることにより、塩基対間の間隔が押し広
げられて平行化する(図1下)。側面図からわかるとお
り、このとき塩基(暗い部分)は平面に沿うかたちで片
側(この場合は図の上側)に露出する。一方リン酸基お
よびリボース(中間の明るさの部分)はうねりながら他
の側(この場合は図の下側)に露出する。このことはAr
nottら(Nature 287: 561-563 (1980))によって示され
ているが、彼等の場合には、ポリピリジン配位金属錯体
と結合した二本鎖DNAは束ねられたものを分析してお
り、インターカレーションにより片側に偏った塩基対、
並びにリン酸基およびリボースの大部分は束ねられた試
料内部に埋没している。
【0025】本発明では、この片側に寄った塩基対を一
方向に配向させた上で、二本鎖DNAを平行な基板表面に
単層になるように吸着させることにより、全ての塩基対
に対して走査型プローブ顕微鏡の探針の接近を可能とす
るものである。即ち、本発明において、ポリピリジン配
位金属錯体等のインターカレーション試薬は、走査型プ
ローブ顕微鏡を用いて塩基対が観察できるように、これ
を試料面ないし表面の近傍に一様に配置するという新規
な用途に用いられるものである。
【0026】<平行化した二本鎖DNAの基板上への配
置>こうして、インターカレーション試薬により塩基対
部分を露出した二本鎖DNAにおいて、塩基対を基板に
向けて、またはリン酸基を基板に向けて平滑な表面を有
する適切な基板上に配置することにより、走査型プロー
ブ顕微鏡による塩基配列の分析が可能になる。そのため
の基板としては、例えば、グラファイト基板、マイカの
劈開面、石英基板、また金、銀、白金等金属基板、さら
に炭素配合白金基板、酸化シリコン基板等が挙げられ
る。また、チオール基を有する有機分子を金または銀の
平滑基板上に層状に吸着させた自己集合膜;脂質分子を
任意の平滑基板に層状に吸着させたラングミュアー・ブ
ロジェット膜;マイカ、シリコン、又はガラスの表面を
シランカップリング剤によって処理したシラン化基、も
しくはアミノシアン化処理して用いてもよい。このと
き、グラファイト基板などの無極性の基板であれば、塩
基対が露出している面を基板の側に向けて吸着し、極性
のある基板、又は電荷を帯びている基板であればリン酸
基が露出している面を一様に基板に向けて吸着すること
が予想される。なお、グラファイト等の無極性基板と塩
基対との間の吸着力は主に疎水性結合であるから、水を
除去した後には吸着力は消失する。従って、上記のよう
に配向させ、水を除去した後、もう一つの基板上に移し
取ることによって塩基対を上に向けた状態で基板上に配
置することができる。
【0027】平行化されたDNA分子を上記のような基
板表面にランダムに配置したときでも、その中の幾つか
は、露出した塩基対部分を上に向けて配置されることに
なる。既述したように、走査型プローブ顕微鏡によれ
ば、1分子でも目的のDNAがあれば所望の分析を行う
ことができる。従って、基板表面への配置に特別な手段
を用いなくても、所望の塩基対部分を探針でプロービン
グすることができる。しかし、次のような手段を用いる
ことにより、基板上に固定するのが好ましい。
【0028】<平行化した二本鎖核酸の固着、及び架橋
>平行化した二本鎖核酸は一方向に塩基対を露出してい
る。インターカレーション試薬はGC pairに依存して、
塩基対の間に挿入される。ここでは説明のために、一方
向に塩基対を露出している平行化した二本鎖核酸の表面
領域を一平面とする、平行化した二本鎖核酸を囲む仮想
の直方体を想定する(図3には、インターカレーション
試薬が一塩基ごとに挿入された例を示す。)。このとき
塩基対を露出している側の直方体の平面を上面とする
と、塩基およびリボースの間を繋ぐリン酸基が、インタ
ーカレーション試薬の挿入された塩基対では直方体の側
面に、インターカレーション試薬の挿入されていない塩
基対では直方体の下面に、交互に露出する(図4参
照)。
【0029】ここで上記のインターカレーション試薬と
二本鎖核酸の混合溶液を平滑な表面を有する基板上に加
える。基板が無極性の基板であれば、平行化した二本鎖
核酸の塩基対が露出している面を一様に基板に向けて吸
着する。一方、基板に極性があるか、又は電荷を帯びて
いる基板であれば、リン酸基が露出している面を一様に
基板に向けて吸着することが予想される。いずれの場合
も平行化した二本鎖核酸は側面にリン酸基を等間隔に露
出した状態で吸着する。
【0030】平行化した二本鎖核酸の間を架橋して高密
度に整列させるために、平行化した二本鎖核酸を吸着さ
せる際、又は吸着させた後、基板上に陽イオンを含む中
性溶液を加える。核酸を構成するリン酸基は、中性溶液
中では一つのリン酸基あたり一つの水素イオンが電離し
ており、これによりリン酸基は中性溶液中で負に帯電し
ている。適当な温度と溶媒を選択すると、熱拡散運動に
よって二分子の平行化した二本鎖核酸のリン酸基が向か
い合う配置をとる機会が生じる。この機会に、負に帯電
した二つのリン酸基は、その間に入り込んだ陽イオンを
配位子として挟み込む配置をとり、二分子の平行化した
二本鎖核酸を架橋する。リン酸基は平行化した二本鎖核
酸の側面に等間隔で露出しているため、二分子の平行化
した二本鎖核酸間で複数のリン酸基による架橋が成立す
る(図2参照)。リン酸基が挟み込むための適当な陽イ
オンとして、二価の金属イオン、たとえばCa2+もしくは
Ba 2+、又はスペルミン、スペルミジンなどのポリアニオ
ン分子を用いることができる。また、リン酸基を介した
架橋を促進する物質には、中性水溶液中で電離している
多価の陽イオン元素、及び多価の陽イオン性化合物が含
まれるが、これらに限らない。Mg2+やスペルミンは、螺
旋構造のままの状態の二本鎖核酸の結晶化剤としても用
いられている(Methods in Enzymology, 211:409-42
9)。しかし、水溶液中における三次元結晶であり、基
板上に二本鎖核酸を二次元的に結晶化させるために用い
た例はない。
【0031】以上のように互いに架橋された、平行化し
た二本鎖核酸はさらに同様の架橋を他の側面で行うこと
が可能である。これが繰り返されることにより、図4に
示した一列の平行化した二本鎖核酸の重合体を形成する
ことができる。またこれらの一列に整列した二本鎖核酸
重合体は、列を束ねて横方向にも重合することがある。
この場合、基板上に平行化した二本鎖核酸の二次元結晶
を形成する。
【0032】以上の工程によって作製した二本鎖核酸試
料は、走査型プローブ顕微鏡の観察に供せられる。な
お、上述したように、本発明ではホスホロチオエート核
酸を使用しないので、操作が簡単になり、かつ安価な材
料で二次元結晶を得ることができるという利点も有す
る。
【0033】<固着、整列した核酸重合体>上記方法に
より、平行化した二本鎖核酸の側面に一定の間隔でリン
酸基が露出し、互いにリン酸基を介して架橋された核酸
重合体(図4参照)を形成する。この重合体、
【化3】 は、これまでに報告されていない新規な化合物である。
化合物中のMは陽イオンを示し、好ましくは二価の金属
イオンである。baseは核酸塩基を示し、好ましくはグア
ニン、シトシン、アデニン、チミン、及びウラシルであ
る。intercalatorは、上記のインターカレーション試薬
を表す。
【0034】<他の用途>既述したところから明らかな
ように、本発明は、走査型プローブ顕微鏡による二本鎖
DNAの塩基対を直接プロービングするために有用であ
る。しかし、他の用途についても適用することが可能で
ある。
【0035】例えば、DNAは三本鎖を形成することが
できるので、上記のように塩基対を露出させて基板上に
固定された二本鎖DNAは、他の相補的DNAを捕捉す
るためのプローブとして使用することも可能である。即
ち、本発明の方法により基板上に固定された二本鎖DN
Aは、DNAチップ(Science 251:767-773 (1991)参
照)のプローブとしても使用できる可能性がある。
【0036】また、DNAは或る程度の電流を通すの
で、上記のようにして基板に固定されたDNAを回路素
子として使用することも可能である。
【0037】更に、螺旋を巻き戻して平行化された二本
鎖DNAは光学異性を有するので、上記のDNA重合体
は、偏光板等の光学素子として使用することも可能であ
る。
【0038】
【実施例】以下、具体的な実験例に基づいて本発明を更
に詳細に説明する。
【0039】例1 二本鎖DNAの合成 以下の塩基配列を有するDNA合成オリゴヌクレオチド
を合成した。
【0040】5'TGTGTGCGTGTGTG3' 5'CACACACGCACACA3' 両オリゴヌクレチドを水溶液に溶解し、両オリゴヌクレ
チドが等モル量含まれるように両水溶液を混合する。90
℃に加熱した後、混合された水溶液を2時間かけて徐々
に室温まで冷却することにより、両オリゴヌクレチドの
ハイブリダイゼーションをおこない、14残基長の二本鎖
DNAを作製する。
【0041】例2 ポリピリジン配位金属錯体による二本鎖DNAの平行化 インターカレーション試薬として、ポリピリジン配位金
属錯体の一種であるビピリジンエチレンジアミンプラテ
ィヌム(II)50 マイクログラムを、250 ピコモルの
分量の上記二本鎖DNAを含む水溶液に加え、100 マイ
クロリットル水溶液を作製する。この水溶液を40℃で30
分間放置する。
【0042】例3 基板への固着及び架橋 上記二本鎖DNA水溶液を希釈し、50 フェムトモルか
ら500 フェムトモルの間の分量の二本鎖DNAを含む20
マイクロリットルを、新しく劈開したグラファイト基
板に対して、滴下する。滴下した水溶液をグラファイト
基板に載せたまま40 ℃に保温した状態で30 分間放置す
る。次に、1 ミリモルの濃度の塩化カルシウムと10 ミ
リモルの濃度のトリスヒドリキシメチルアミノメタンを
含む水溶液を過剰量加えグラファイト基板上の溶液を置
換する。この塩化カルシウム溶液をグラファイト基板上
に残した状態で、40 ℃で12 時間放置する。グラファイ
ト面を蒸留水ですすいだあと、水を表面から取り除き、
デシケーター内で乾燥させる。
【0043】例4 走査型プローブ顕微鏡による観察 上記処理を行ったグラファイト面を走査型プローブ顕微
鏡の試料台に載せ、観察する。
【0044】以下、原子間力顕微鏡を用いた観察結果を
示す。
【0045】図5は、上記手続きに従い作製した試料で
ある。また、図6は、上記手続きに従い、インターカレ
ーション試薬を挿入した二本鎖DNAをグラファイト基
板上に滴下して30分間放置した段階で、処理を中断し
て、その後ラファイト面を蒸留水ですすいだあと、水を
表面から取り除き、デシケーター内で乾燥させた試料で
ある。
【0046】図5において、直線的な境界構造を持つ試
料領域が確認できる。これらの直線的な境界は互いに60
度に配向する外形を持つ。これは、二本鎖DNAが原
子レベルで、正六角形の頂点に炭素原子を配した単位構
造を有するグラファイト基板の結晶構造と相互作用する
ことによって成長した平行化した二本鎖DNAの二次元
結晶であるといえる。二本鎖DNAを含まない試料にお
いては、基板上にいかなる構造も現れなかった。また陽
イオン存在下でのインキュベーションを省略すると、D
NA試料の結晶状の規則的な構造は確認されなかった
(図6)。
【0047】各試料領域を見ると、突起を伸ばしている
成長の早い長軸方向と、直線的な成長の遅い短軸方向と
いう特徴的な二つの境界を持つことが分かる。長軸方向
は一列に並んだ平行化した二本鎖核酸重合体の成長する
方向に、また短軸方向はこの重合体の列を束ねて成長す
る方向に対応していると考えられる。長軸方向に伸びる
突起の最小幅は8 ナノメートルで共通であった。14 残
基長の二本鎖DNAでらせん構造を解消したものの全長
によく符合する。すなわち、この最小幅の部分が一列に
並んだ平行化した二本鎖核酸重合体となっている。
【0048】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
二本鎖核酸を巻き戻して平行化することにより、塩基対
部分を試料の表面ないし表面近傍に一様に配置すること
ができる。従って、二本鎖核酸を走査型プローブ顕微鏡
で分析する際に、深度方向および水平方向の障害を伴わ
ずに塩基対部分を探針でプロービングすることができる
等、顕著な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】B型核酸から、ポリピリジン配位金属錯体の結
合により平行化した二本鎖核酸への変形を空間充填モデ
ルで表した図である。上がB型核酸、下が平行化した二
本鎖核酸である。
【図2】二分子の平行化した二本鎖核酸が側面に露出し
たリン酸基で両側から白い球で表されている陽イオンを
挟み込んでいる様子を示す空間充填モデルである。この
図において塩基対が露出する上面を下に向け基板上に配
置されている場合を示してある。背面図は、基板に向い
た塩基対の背後から平行化した二本鎖核酸を見たもので
ある。正面図は平行化した二本鎖核酸の前方から見たも
のである。その下に基板が存在する。
【図3】平行化した二本鎖核酸を囲む仮想の直方体を描
いた図である。上面に塩基が露出し、両側面と下面にリ
ン酸基が露出する。
【図4】インターカレーション試薬の挿入によるリン酸
基の向きの違いを模式的に示した図である。インターカ
レーション試薬が挿入されている塩基対の間では、その
間隔が引き延ばされ、リン酸基は側面に露出し、この部
位で陽イオンと結合する。インターカレーション試薬が
挿入されなかった塩基対の間では、近傍で重なり合うよ
う引き合うため、リン酸基が押しのけられて下面に露出
する。図中Mは陽イオンを示している。
【図5】原子間力顕微鏡を用いて二次元結晶化された核
酸試料を観察した画像である。
【図6】原子間力顕微鏡を用いて、図5の試料を作製す
る過程で塩化カルシウム溶液を加えるところで中断した
核酸試料を観察した画像である。
フロントページの続き Fターム(参考) 2G045 BB41 BB48 BB50 DA13 DA14 FA16 FB02 4B024 AA11 BA80 CA01 CA09 CA11 HA12 4B063 QA01 QA18 QQ42 QQ52 QR55 QR82 QS34 QS36 QX01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二本鎖核酸を平滑な表面を有する基板上
    に固定する方法であって、 二本鎖核酸の塩基対間に差し込まれて二重螺旋構造を巻
    き戻すことができるインターカレーション試薬を二本鎖
    核酸と反応させ、該二本鎖核酸の二重螺旋構造を解消し
    て二本鎖を平行化することにより、二重螺旋構造の内部
    に埋没していた塩基対を一方向に露出させる工程と、 上記のように平行化した二本鎖核酸の塩基対を基板の側
    に向けて、又はリン酸基を基板の側に向けて、平滑な表
    面を有する基板上に配置する工程を具備する方法。
  2. 【請求項2】 二本鎖核酸を一定方向に配向させる方法
    であって、 二本鎖核酸の塩基対間に差し込まれて二重螺旋構造を巻
    き戻すことができるインターカレーション試薬を二本鎖
    核酸と反応させ、該二本鎖核酸の二重螺旋構造を解消し
    て二本鎖を平行化することにより、二重螺旋構造の内部
    に埋没していた塩基対を一方向に露出させる工程と、 前記平行化した二本鎖核酸のリン酸基を原子又は分子の
    陽イオンを介して静電気的に架橋し、平滑な表面を有す
    る基板上で一定方向に整列させる工程とを具備する方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の方法であって、 前記配向された二本鎖核酸を高密度で前記基板上に配置
    して基板表面に配置させると共に、前記のように配向さ
    れた二本鎖核酸の塩基、又はリン酸基を介して平滑な表
    面を有する基板表面に固着する工程を具備する方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れか1項に記載の方法
    により、前記基板上に配置または固定された二本鎖核酸
    を、走査型プローブ顕微鏡によりプロービングすること
    を特徴とする、二本鎖核酸の分析方法。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載の方法によって形成され
    る、次式で表される核酸重合体 【化1】 。ここで、化合物中のMは陽イオンを示し、baseは核酸
    塩基を示し、intercalatorはインターカレーション試薬
    を示す。
JP2001171590A 2001-06-06 2001-06-06 走査型プローブ顕微鏡による二本鎖核酸の分析 Withdrawn JP2002360300A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001171590A JP2002360300A (ja) 2001-06-06 2001-06-06 走査型プローブ顕微鏡による二本鎖核酸の分析

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001171590A JP2002360300A (ja) 2001-06-06 2001-06-06 走査型プローブ顕微鏡による二本鎖核酸の分析

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002360300A true JP2002360300A (ja) 2002-12-17

Family

ID=19013340

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001171590A Withdrawn JP2002360300A (ja) 2001-06-06 2001-06-06 走査型プローブ顕微鏡による二本鎖核酸の分析

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002360300A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008275481A (ja) * 2007-04-27 2008-11-13 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 生体分子機能構造解析装置およびこれを用いた生体分子機能構造解析方法
JP2014048241A (ja) * 2012-09-03 2014-03-17 Osaka Univ 試料の固定化方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008275481A (ja) * 2007-04-27 2008-11-13 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 生体分子機能構造解析装置およびこれを用いた生体分子機能構造解析方法
JP2014048241A (ja) * 2012-09-03 2014-03-17 Osaka Univ 試料の固定化方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4347049B2 (ja) オリゴヌクレオチドを付着させたナノ粒子とその使用方法
US7169556B2 (en) Nanoparticles having oligonucleotides attached thereto and uses therefor
US20090018028A1 (en) Self-Assembled Nucleic Acid Nanoarrays and Uses Therefor
JP2002510791A (ja) インターカレート性のレドックス活性部分を使用する電気化学的センサ
JP2002542794A (ja) 標識担持標的を検出するための単層および電極ならびにその使用方法
US10444179B2 (en) Apparatuses and methods for detecting molecules and binding energy
JP2010539991A (ja) 電子顕微鏡を用いた核酸ポリマーの配列決定
JP2002522748A (ja) サンプル中の標的の検出
CN101014532A (zh) 使用肽或核酸微图案结构产生碳纳米管的方法
JP2010539468A (ja) 表面結合分子を有する固体基質およびこの基質を生成および使用する方法
Cao et al. Seeding the self-assembly of DNA origamis at surfaces
Traeger et al. Influence of oligonucleotide grafting density on Surface-Mediated DNA transport and hybridization
JPH05244997A (ja) Dnaまたはrnaの塩基配列決定法
US7049073B2 (en) Double stranded nucleic acid biochips
US20070082352A1 (en) Microscopy tip
JP2002360300A (ja) 走査型プローブ顕微鏡による二本鎖核酸の分析
CN111164222A (zh) 带有电荷标签的核苷酸及其使用方法
JP2561396B2 (ja) Dnaの塩基配列検出方法
JP4382933B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡による二本鎖核酸の分析
JP4426700B2 (ja) Dna分析素子あるいはpna分析素子を用いる相補性を有する試料核酸断片の高感度定量法
US20240052414A1 (en) Nucleic acid nanostructures
US20230146476A1 (en) Nanoswitch caliper trains for high-throughput, high-resolution structural analysis of biomolecules
JP3843134B2 (ja) 液体媒体の複合化による処理のための方法および装置
JP5100236B2 (ja) 一本鎖ヌクレオチド多量体の伸張固定化基板およびその製造方法
Yang DNA nanopore as a signal transducer for the detection of short oligonucleotides

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20080902