JP2002359406A - 熱電素子とその製造方法 - Google Patents

熱電素子とその製造方法

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JP2002359406A
JP2002359406A JP2001164435A JP2001164435A JP2002359406A JP 2002359406 A JP2002359406 A JP 2002359406A JP 2001164435 A JP2001164435 A JP 2001164435A JP 2001164435 A JP2001164435 A JP 2001164435A JP 2002359406 A JP2002359406 A JP 2002359406A
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sintered body
sintering
temperature
annealing
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Reiko Hara
麗子 原
Goji Kajiura
豪二 梶浦
Hiromasa Umibe
宏昌 海部
Kenichi Tomita
建一 冨田
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Komatsu Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】熱電モジュールを製造するにあたって歩留りが
高く且つ熱電性能に優れた熱電素子と、同熱電素子の効
果的な製造方法とを提供する。 【解決手段】スクッテルダイト型結晶構造を有するAB
3 型化合物を含むチップ状の熱電素子にあって、前記熱
電素子本体の全側面がセラミックス材料又はガラス材料
により被覆されており、セラミックス材料又はガラス材
料の被覆前及び/又は被覆後にアニールを行う。ここで
AB3 型化合物とは、一般式A1-x x3 で表わされ
る置換型化合物、一般式AB3-Z Z で表わされる侵入
型化合物、又は一般式A1-x x 3-Z Z で表される
化合物であって、元素AはCo,Rh,Irのうちの一
種以上、BはP,As,Sbのうちの一種以上、Mは元
素Aと置換するPd,Pt,PdPtのうちのいずれか
の元素でx=0〜0.2、Cは元素Bと置換するNi,
Te,Pdのいずれかの元素でz=0〜0.3である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱電発電や熱電冷
却に適用される熱電材料とその製造方法に関し、特にC
oSb3 を主成分とするスクッテルダイト型の結晶構造
を有する化合物からなる熱電素子とその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】熱電素子は、導体の一端を加熱すると高
温のキャリヤが低温側に拡散して、導体両端に熱起電力
が発生するゼーベック効果により、熱を直接電気に変換
して発電させ、或いはペルチェ効果による熱電冷却に用
いることができる材料であって、高温域に適用されるS
iGe系、中温域に適用されるGeTe系、ZnSb
系、低温域に適用されるBiTe系、BiSb系などか
らなる熱電半導体材料が知られているが、近年、更に熱
電変換効率の高いスクッテルダイト型結晶構造を有する
様々な化合物からなる熱電材料が開発されている。
【0003】このスクッテルダイト系化合物からなる熱
電材料として、例えば特開平11−40860号公報に
挙げられているような、CoSb3 、RhSb3 、Ir
Sb 3 などの二元系、Co1-X Rhx Iry Sb3 らな
る擬四元系、Co1-x x Sb3 からなる擬三元系(M
はPd,Rh,Ruの一種以上で、x=0.001〜
0.2)からなる熱電材料が開示されている。
【0004】更に同公報によれば、その熱電材料の製造
方法として、原料を粉砕して平均粒径1μm以下の粉末
にし、この粉末を温度300〜700℃、圧力2MPa
以上で20時間以内加圧焼結するとしている。ここで、
多結晶体のスクッテルダイト系熱電材料の熱伝導率は、
その平均結晶粒径をきわめて小さくすることにより、熱
伝導率が大幅に低下することを発見して、平均結晶粒径
を1μm以下まで微細化している。
【0005】そのため、原料を平均粒径1μm以下の粉
末に粉砕し、同時に焼結時の結晶粒の成長を抑制する。
すなわち、焼結体の製造を温度300〜700℃、圧力
2MPa以上で20時間以内加圧焼結することによって
行なっている。焼結温度の上限を700℃とするのは、
これを超えると結晶粒の成長速度が大きくなって、焼結
体の平均結晶粒径を1μm以下にするのが困難になるた
めでありた、焼結温度の下限を300℃、圧力の下限を
2MPaとするのは、そのいずれかがこれらの値未満で
は、焼結体の機械的強度が十分大きくならないためであ
る。さらに、加圧焼結の時間の上限を20時間とするの
は、これを超えても焼結体の強度はあまり向上せず、逆
に結晶粒が成長するおそれがあって好ましくないためで
あるとしている。
【0006】そして、好ましい焼結温度と焼結時間と
は、温度400〜500℃では10〜20時間、温度5
00〜600℃では2〜10時間が好ましく、原料の平
均粒径を1μm以下の粉末に粉砕するには、メカニカル
アロイング法を採用するとともに、前記加圧焼結をプラ
ズマ放電焼結法により行なうことが望ましいともしてい
る。
【0007】同公報には、その具体的な製造方法が記載
されている。その実施例3の記載によれば、原料粉末の
混合と粉砕にメカニカルアロイングを使うと共に、焼結
はプラズマ放電焼結法を採用しており、メカニカルアロ
イングは原料をAr雰囲気中で回転数200rpm、3
0時間かけて処理し、プラズマ放電焼結法による焼結条
件は焼結温度を500℃、焼結圧力30MPa、焼結時
間0.25(時間)としている。因みに、通常のホット
プレスでは、焼結圧力を30MPaとして、加圧温度を
550℃で10時間の焼結時間が必要であったとしてい
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、熱電材料の
性能は、一般に単位温度差当たり素子に発生する熱起電
力の大きさを示すゼーベック係数をα、電気抵抗率を
ρ、熱伝導率をκとしたとき、熱電材料の性能を示す性
能指数Zは、Z=α2 /ρ・κで示される。この性能指
数Zは、熱電変換効率を決める重要な材料パラメーター
であり、ゼーベック係数αの2乗と電気抵抗率ρとの商
α2 /ρは出力因子と呼ばれ、ゼーベック係数αが大き
く、電気抵抗率ρが小さい材料ほど出力因子が高くな
り、更に熱伝導率κは小さいほど前記性能指数Zが大き
くなり、熱電性能に優れたものとなる。さらに、この性
能指数Zに温度Tを乗じた値を無次元性能指数ZTと呼
び、その無次元性能指数ZTの値が、大きければ大きい
ほど熱伝性能に優れ熱伝変換効率が大きくなる。
【0009】この種の熱電素子は、原料粉末を、例えば
上述の公報に記載された圧力及び温度条件にて高圧で加
圧すると共に長時間高温で加熱して、一次製品である、
例えば厚さ3mm、20mm径の円板状の焼結体を製造
したのち、これを例えば3mm×7mmの角柱状チップ
に切断して得られる。
【0010】一方、前記熱電素子と電極材料とを接合一
体化して得られる発電モジュールを製造するには極めて
多数の熱電素子を必要とする。現状では、この熱電材料
である前記焼結体の製造期間は略1週間がかかるとされ
る。そのため、可能な限り均質で且つ大きな径を有する
焼結体を得ることは、発電モジュールの生産効率を向上
させるとともに、歩留りを向上させる点からも望まし
い。
【0011】しかるに、前記焼結体製造時の焼結温度を
径方向に均一に分布させることは、その製造装置の密閉
高圧下におかれる構造から極めて困難である。もし、径
方向における温度分布に大きな差があると、中心部分と
周縁部分とでは密度(気孔率)が異なり、焼結時の化合
物の組成分布も不均一となり、大きな熱応力が生じて、
焼結後に大きなクラックが発生し破損しやすく、歩留り
が大きく低下するばかりでなく、製品化することも到底
不可能となる。
【0012】そのため、上記公報に開示された焼結体
も、例えばプラズマ放電焼結が15分であるという極め
て短時間で焼結を完了させて、焼結体の中心部と周縁部
との間の温度差の影響を少なくさせていると考えられる
ことから、明示はされていないが、従来と同様に、得ら
れる焼結体は20mm径が上限であると考えられる。
【0013】特に、焼結時における上記温度差は、焼結
体の中心部と周縁部とでは、例えば合金化或いは化合す
べき原子が周辺部において単独で残存することが多くな
り、或いは周縁部の気孔率が中心部よりも大きくなり、
熱電材料としての物性値が大きく異なるばかりでなく、
試料全体の密度の低下、脆性が高くなるという不具合を
発生させる。また実施の段階では、熱電素子の表面が酸
化したり、或いは蒸気圧の高いSbが昇華したりして、
熱電特性が経時的に劣化する。
【0014】本発明の目的は、熱電モジュールを製造す
るにあたって歩留りが高く且つ熱電性能に優れた熱電素
子を提供すると同時に、実用を考慮に入れて熱電特性の
経時変化がなく、耐久性に優れた熱電素子とその効果的
な製造方法とを提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段及び作用効果】本発明者等
は、熱電素子の性能を向上させる要因について多方面か
らの検討を行った。上記公報では熱電材料の原料粒径を
1μm以下とし、その結晶粒径をも1μm以下とするこ
とにより、性能指数Zを決める要因の一つである上記熱
伝導率κを低下させている。
【0016】前記性能指数Zを決める要因としては、前
記熱伝導率κの他に、ゼーベック係数α及び電気抵抗率
ρがある。本発明者等は、これらの要因α、ρ、κに着
目した。ここで、αの値は大きければ大きいほど、また
ρ及びκの値は小さいほど、性能指数Zが大きくなり、
熱電性能が向上する。
【0017】そこで、本発明者等は上記公報の提案の他
にも熱伝導度κを小さくする手段が存在するかどうかの
検討に入ると同時に、如何にすればゼーベック係数αを
大きくすることができ、或いは電気抵抗率ρを小さくで
きるかについて多様な検討を行ったところ、たまたま熱
電材料に対して高温下でアニール処理を行うと、その熱
電性能が向上することを発見した。この熱電性能の向上
が如何なる要因によるかを明らかにすべく、アニール時
の周辺雰囲気、アニール温度、アニール時間などのアニ
ール条件を変えて様々な実験を繰り返した結果、請求項
1の発明に到達したものである。
【0018】すなわち、請求項1に係る発明は、スクッ
テルダイト型結晶構造を有するAB 3 型化合物を含むチ
ップ状の熱電素子にあって、前記熱電素子本体の全側面
がセラミック材料又はガラスにより被覆されてなること
を特徴とするスクッテルダイト系熱電素子にある。
【0019】上記AB3 型化合物とは、AB3 、A1-x
x 3 、AB3-Z Z 、A1-x x 3-Z Z の一般
式で表される化合物であって、元素AはCo,Rh,I
rのうちの一種以上、BはP,As,Sbのうちの一種
以上、Mは元素Aと置換する元素でx=0〜0.2、元
素Cはスクッテルダイト型結晶構造内に侵入して置換す
る元素でz=0〜0.3である。元素Aと置換する元素
MはPd,Pt,PdPtのうちのいずれかであり、C
はNi,Te,Pdのいずれかである。
【0020】上記焼結体からなる熱電材料は、空気中、
或いは不活性ガス雰囲気中のいずれでも、アニールを行
うことにより、その熱電性能は向上する。これは加熱に
より焼結体中の元素の拡散が活発化して化学結合が促進
され、所望の化学物質の単層が生成されやすくなるため
であると考えられる。さらに、その理由は定かでない
が、熱電性能の向上は空気雰囲気中の方が不活性ガス雰
囲気中よりも高い。しかるに、空気雰囲気中においてア
ニール処理を行うと、焼結体表面に酸化膜が形成され
る。
【0021】例えば、CoSb3 を主成分とするスクッ
テルダイト型結晶構造を有する焼結体にアニールを行っ
たとき、その表面に形成される酸化膜はSb2 3 を主
成分としていることが判明している。一方、不活性ガス
雰囲気中でアニールした同一原料から製造された焼結体
の表面には、膜の存在はなかった。しかし、アニールを
行うと密度の低下が見られた。このことは蒸気圧の高い
Sbが蒸発していることを意味する。しかして、Sbや
Sb2 3 は毒性が高いため、人体や環境などに対する
影響を排除する必要がある。
【0022】また、スクッテルダイト型結晶構造、特に
CoSb3 を主成分とするスクッテルダイト型結晶構造
を有する焼結体にあっては、アニールを行うと、Sbの
蒸気圧が高く蒸発しやすいため、キャリア濃度が低下し
て、脆くなり、同時に熱電性能も低下する。ここで、蒸
発したSbやSb3 2 の人体や環境などに対する影響
を考えると、いかなる雰囲気中でも直接アニールした
り、放置することは好ましくない。
【0023】また一般に、この種の酸化物は絶縁体であ
ることが多いため、その膜厚が経年ごとに増加すると、
電気抵抗が高くなり熱電性能が低下する。更には、Co
Sb 3 以外にも、例えばTe化合物や、Sb化合物、S
n化合物、或いはTe、Sb、Sn、Seをドーパント
として使用する化合物、具体的にはBiTe系、ZnS
b系、PbTe系、CeCoSb系、CeFeSb系、
YbCoSb系、YbFeSb系などの化合物にあって
も、Sb及びTe等の蒸気圧が高いことから、同様に高
温下では蒸発しやすく、キャリア濃度が低下して脆くな
り、同時に熱電性能も低下する。
【0024】ところで、上記熱電素子は熱電素子原料の
粉末を円板状に成形して、高温・高圧下で焼結した焼結
体を所要の大きさの矩形柱状のチップに切断して製造さ
れるが、これを単独で使用することは皆無に等しく、通
常はP型の熱電素子とN型の熱電素子が導電性の良い金
属材料を介して直列に接続されるように熱電モジュール
を作製し、これに例えばポリイミド系樹脂のごとき耐熱
性合成樹脂材料により被覆して使われる。
【0025】しかしながら、こうして被覆された熱電モ
ジュールも高温下で使用されると、その被覆材が劣化し
たり溶融して、内部の熱電素子が外部に露呈することが
多い。その結果、上述のごとく、その熱電素子の露呈
面、すなわち導電性金属が接合されていない部分が外気
と接触して、Sb2 3 膜が形成されてしまうことにな
る。
【0026】そこで、本発明は既述したとおりスクッテ
ルダイト型結晶構造を有するチップ状の熱電素子本体の
電極接合面を除く全側面をセラミックス材料又はガラス
材料で被覆することにより、熱電モジュールを作製した
のち、大気中に限らず、高温雰囲気下におかれても、熱
電素子に対する酸素や周辺物質との化学的な結合が阻止
され、強度の低下が防止されると共に、アニール処理に
よる単相化が進み熱電性能の向上が図れる。
【0027】前記セラミックス材料としては、請求項2
にも挙げたとおり、窒化ホウ素系セラミックス又はジル
コニウム系セラミックスであることが、加工のしやす
さ、耐熱性が極めて高いことから好ましい。ガラス材料
としては、ガラスの焼成温度、熱膨張係数、熱電素子本
体とガラスとの界面の反応性を考慮する必要がある。焼
成温度はアニール温度より低いかアニール条件に合わせ
たガラス材料であることが好ましい。熱電素子の線膨張
係数は8×10-6/Kであるから、ガラス材料の線膨張
係数は熱電素子のそれより0〜15×10-7/Kだけ低
い範囲にあることが望ましい。
【0028】好ましいガラス材料としては、Al2 3
−B2 3 −SiO2 ,B2 3 −PbO,SiO2
PbO−Al2 3 ,SiO2 −PbO,SiO2 −B
2 3 −PbO,SiO2 −B2 3 −Bi2 3 ,Z
nO−SiO2 −B2 3 ,SiO2 −CaO−Ba
O,SiO2 −ZnO−Ro,SiO2 −Al2 3
Roを挙げることができる。ここで、RoはMa,C
a,Baのうちの1種である。熱電素子本体の側面を、
上述のセラミックス材料やガラス材料で被覆された本発
明の熱電素子は、請求項3及び請求項4に係る製造方法
の発明により効率的に製造される。
【0029】すなわち、請求項3に係る発明は、スクッ
テルダイト型結晶構造を有する上記AB3 型化合物を含
む熱電素子の製造方法であって、原料粉末を混合して高
圧・高温下で焼結することと、この焼結体を所要の時
間、高温下でアニールすることと、アニール処理後の焼
結体を所要の大きさのチップ状に切断することと、切断
されたチップ状の熱電素子本体の全側面をセラミックス
又はガラスで被覆することとを含んでなることを特徴と
するスクッテルダイト系熱電素子の製造方法にある。
【0030】また、請求項4に係る発明は、同じくスク
ッテルダイト型結晶構造を有する上記AB3 型化合物を
含む熱電素子の製造方法であって、原料粉末を混合して
高圧・高温下で焼結することと、この焼結体を所要の大
きさのチップ状に切断して熱電素子本体を得ることと、
切断されたチップ状の熱電素子本体の全側面をセラミッ
クス又はガラスで被覆することと、セラミックス又はガ
ラスで被覆された熱電素子本体を高温下でアニールする
こととを含んでなることを特徴とするスクッテルダイト
系熱電素子の製造方法にある。
【0031】上記AB3 型化合物とは、AB3 、A1-x
x 3 、AB3-Z Z 、A1-x x 3-Z Z の一般
式で表される化合物であって、元素AはCo,Rh,I
rのうちの一種以上、BはP,As,Sbのうちの一種
以上、Mは元素Aと置換する元素でx=0〜0.2、元
素Cはスクッテルダイト型結晶構造内に侵入して置換す
る元素でz=0〜0.3である。
【0032】請求項3と請求項4との違いは、アニール
処理の時期にあり、請求項3では焼結体が製造されたの
ちに、アニールを直ち行い、チップ状の熱電素子が製造
されて、その全側面にセラミックス材料又はガラス材料
で被覆したのちの、任意の段階でアニールが行われる。
なお、本発明にあっては、これらを組み合わせて2回以
上のアニールを行うこともできる。また、本発明では、
チップ状の熱電素子本体を製造した直後にアニールする
場合もあり、更には前記熱電素子を組み立てて、熱電モ
ジュールを製造したのちにアニールすることも含むもの
である。
【0033】
【発明の実施形態】一般に、この種の熱電材料は、原料
粉末を、例えば上記公報に記載された圧力及び温度条件
にて高圧で加圧すると共に長時間高温で加熱して、一次
製品である、例えば厚さ3mm、20mm径の円板状の
焼結体として製造されたのち、これを例えば3mm×7
mmの角柱状チップに切断して熱電素子材料を得てい
る。
【0034】一方、前記熱電材料と電極材料とを接合一
体化した発電モジュールを製造するには、焼結体をチッ
プ状に切断して得られる熱電素子を極めて多数を必要と
する。現状では、この熱電材料の製造期間は略1週間が
かかるとされる。そのため、可能な限り大きな径を有す
る熱電材料である前記焼結体が得られることが、発電モ
ジュールの生産効率を向上させるとともに、歩留りが向
上することからも望ましい。
【0035】しかるに、前記焼結体製造時の焼結温度を
径方向に均一に分布させることは、その製造装置の密閉
高圧下におかれる構造の点から極めて困難である。も
し、径方向における温度分布に大きな差があると、中心
部分と周縁部分とでは焼結時の化合物の組成分布が不均
一となり、熱応力にも大きな差が生じ、焼結後に大きな
クラックが発生し破損してしまい、歩留りが大きく低下
するばかりでなく、製品化することも到底不可能であ
る。
【0036】そのため、上記公報に開示された焼結体
も、例えばプラズマ放電焼結が15分であるという極め
て短時間で焼結を完了させており、焼結体の中心部と周
縁部との間の温度差の影響を少ないと考えられることか
ら、明示はされていないが、従来と同様に得られる焼結
体も20mm径が上限であると考えられる。
【0037】また、焼結時における上記温度差は、焼結
体の中心部と周縁部とでは、例えば合金化或いは化合す
べき原子が周辺部において単独で残存することが多くな
り、或いは周縁部の気孔率が中心部よりも大きくなり、
熱電材料としての物性値が大きく異なるばかりでなく、
試料全体の密度が低下し、脆性が高くなるという不具合
を発生させる。
【0038】焼結体からなる熱電材料を切断して得られ
る熱電素子の歩留りを大幅に向上させて、しかも均質で
従来の熱電素子に劣らない性能指数をもつ大型の熱電材
料が強く要望されている。そこで、本発明者等は大型の
熱電材料の製造技術について別途提案している。
【0039】単にその焼結径を大きくするだけでは、上
述のごとく、かえってクラックによる歩留りの大幅な低
下を招くことになる。そのクラックが発生する大きな要
因の一つに焼結時の焼結中心から周縁にかけての制御が
不可能な焼結温度差があるとの認識に立って、温度分布
を少なくするための可能な限りの制御を試みた。その結
果、焼結装置の大型化を招き、実用化に馴染まない。
【0040】また、上記焼結温度の分布が不均一である
以外に、焼結体の径方向に分布するスクッテルダイト型
の結晶構造を有する様々な化合物相や単独原子相の分布
は、物性面ばかりでなくクラックの発生とも無関係では
ない。上記相分布、特に単独原子相の存在は物性以外に
も強度分布を不均一にする。
【0041】強度分布が均一な大型の熱電材料は、少な
くとも1回目の混合・粉砕をメカニカルアロイング法に
より行い、これを加圧・加熱して得られる焼結体を再度
粉砕して混合し、改めて加圧・加熱して焼結体を得るこ
とにより製造できる。
【0042】このように、1回目の焼結体を粉砕すると
共に、同粉砕物を原料として更に少なくとも1回以上の
焼結を行うことにより、採取的な焼結体における径方向
の成分相分布が均一化されるばかりなく、単独に存在し
た原子相までが化合物化して消滅し、物性的にも優れた
ものが得られる。更に、驚くべきことには、例えば従
来、限度とされていた20mm径の焼結体の2倍以上の
径をもつ50mm径の大径の焼結体が、表1に示すごと
く、従来の焼結体と同等の相対密度をもって製造するこ
とができ、その結果、大径であるにも関わらずクラック
の発生がなく、高密度且つ高性能な熱電材料を製造する
ことが可能となる。
【0043】
【表1】
【0044】上記公報にも記載されているように、この
種の代表的な焼結手法としては、ホットプレス法とプラ
ズマ放電焼結法がある。プラズマ放電焼結法は、ホット
プレス法と比較すると、短時間に焼結処理が行えること
と、得られる焼結体の気孔率が小さく緻密性に優れるこ
とから、プラズマ放電焼結法を採用することが好まし
い。
【0045】一般に、焼結径が20mm径を超えたと
き、例えば50mm径の焼結体を得ようとして、その中
心部の温度を740℃に設定すると、周縁部の温度は6
00℃程度となり、その差は100℃以上にも達する。
焼結体の中心部と周縁部に、このように大きな温度差が
生じると、例えばCoSb3 を主成分とするスクッテル
ダイト系熱電材料を製造しようとする場合、中心部では
低融点(630℃)であるSb3 が溶融状態にあり、周
縁部では固相に近い状態となる。
【0046】しかも、他の材料についてはともかくとし
て、特にCoSb3 の生成は温度とCo、Sbの成分割
合に厳しく影響されることが知られている。すなわち、
温度条件が623℃〜859℃の範囲内で、且つCo原
子が75%、Sb原子が25%の原子割合にあるとき、
初めてCoSb3 が生成される。従って、前記温度差に
基づく熱拡散と前記生成条件の分布斑とにより、CoS
3 が生成される領域も均一に分布せず、特に中心部と
比較すると周縁部にSb原子が単独で相を形成する割合
が多くなる傾向が強い。
【0047】そこで、初期の加熱勾配を大きくして、例
えば短時間で600℃まで上昇させ、次いで緩かな温度
勾配で2時間ほどかけて740℃程度まで上昇させ、所
要の時間を同温度に維持して焼結処理を行い、3〜8時
間かけて徐冷する。このように、従来のごとく一気に焼
結温度まで昇温させて焼結を行ったのちに急冷させる場
合と比較すると、多少は焼結時間が長くなるものの、径
方向の温度分布が緩和されて、周縁部における緻密度が
確保されるとともに、2回以上の粉砕及び焼結と相まっ
て大径の焼結体が得られる。
【0048】以下、本発明の代表的な実施形態である熱
電素子と、その製造方法を図面及びグラフを使って具体
的に説明する。本実施形態にあっては、AB3 型の代表
的な化合物であるCoSb3 を主成分とするスクッテル
ダイト型結晶構造からなる熱電素子を例示する。まず、
個々のチップ状の熱電素子に切断される前の円板状の焼
結体からなる熱電材料の製造方法について説明する。原
料として、純度99.9985%のCo粉末と99.9
999%の粒状Sbとを秤量し、重量比で86.5:1
3.5に調整してメカニカルアロイング法により混合し
て一部を合金化した。次いで、分級し平均粒径を38μ
mに揃えた。こうして得られた混合粒体を、プラズマ放
電焼結装置を使い、焼結圧力30MPaで、図1に実線
で示す時間(min)/温度(℃)曲線に倣い、原料円
板の周縁温度を制御して1回目の焼結を終了させて、5
0mmの大径の焼結体を製造した。参考のため、図1に
は従来の同質の熱電原料による20mm径の焼結体を得
るときの一般的な時間/温度曲線を破線で示している。
【0049】同図からも理解できるように、本実施形態
では大型の焼結体を得るために、図1に実線で示すごと
く、12分間で600℃まで急激に昇温させたのち、9
5分かけて焼結温度である740℃までゆっくりと加熱
してから、同温度を維持して120分間で焼結させる。
この焼結の終了後の冷却を、3段階の温度勾配をもたせ
てトータル215分をかけて徐々に冷却していく。
【0050】焼結開始直後の昇温を短時間(12分間)
で行ったのちに、ある程度の時間(95分間)をかけて
ゆっくりと焼結温度である740℃まで昇温させるの
は、本実施形態による熱電材料の主成分がCoSb3
あることに起因する。CoSb 3 の生成条件は極めて厳
しく、例えばCoとSbの成分割合についてみると、C
oが13.5(重量%)であり、一方のSbが86.5
(重量%)であって、且つその合成温度を623〜85
9℃としたとき初めてCoSb3 が生成され、例えばC
oを19.0(重量%)、Sbを81.0(重量%)と
して、その合成温度が859〜919℃の範囲でCoS
2 などが生成されてしまう。
【0051】そのため、本実施形態ではCoとSbの成
分割合を上述のごとく設定し、焼結にあたって短時間で
合成温度に近い600℃の付近まで昇温させ、原料全体
の温度分布を可能な限り均一にすべく、充分な時間をか
けて焼結温度である740℃まで昇温させている。ま
た、焼結が終了したのちの冷却を急激に行うと、特に本
実施形態による大径の焼結体にあっては、その中心部と
周縁部との間に大きな温度差が生じて、径方向に均一な
性能上の分布が得られない。更に、この大きな温度差の
ために中心部と周縁部との間で大きな熱応力が生じ、且
つSbの単独原子が多く存在するようになる。その結
果、焼結体の熱電性能が低いばかりでなく、クラックが
多発する。
【0052】本実施形態では、上述のようにして得られ
た焼結体を、更めて破砕し、その破砕物を通常の回転翼
を有するミキサーや遊星ボールミルにより粉砕混合して
平均粒径が38μmの混合物を得た。次いで、同混合物
を、上述のプラズマ放電焼結装置を使って、2回目の焼
結を行った。このときの焼結条件は、1回目の焼結条件
と同じであり、得られる焼結体も、1回目の焼結体と同
様に50mm径とした。
【0053】こうして、2回の焼結処理がなされた50
mm径の焼結体は、クラックが発生せず、相対密度が理
論密度の98%以上の熱電材料が得られた。その熱電性
能の分布は径方向において一律となり、従来の20mm
径の焼結体と比較しても、同様の熱電性能をもつもので
あった。図2〜図5は、実質的に同じ原料からなり、1
回目の焼結により得られた50mm径の焼結体A、2回
の焼結により得られた50mm径の焼結体B、及び図1
に破線で示した焼結温度制御により得られる従来の20
mm径の焼結体Cからなる各熱電材料の温度変化に基づ
く各種性能の変動をグラフで示している。
【0054】これらの図を参照して、1回目の焼結によ
り得られた50mm径の焼結体A、本発明に係る2回の
焼結により得られた50mm径の焼結体B、及び図1に
破線で示した焼結温度制御により得られる従来の20m
m径の焼結体Cの熱電性能を比較する。
【0055】まず、焼結体Bと焼結体Cとを比較する。
ゼーベック係数αについては、図2において、両者の値
は全温度範囲(300〜950K)でほぼ同一の値を示
している。更に、図3を参照して電気抵抗率ρについて
みると、焼結体Bの電気抵抗率ρが焼結体Cの略1.1
5倍と大きい。熱伝導率κの値は、焼結体Bと焼結体C
とが700Kで逆転しており、700K以下では焼結体
Bの熱伝導率κが焼結体Cのそれよりも高く、700K
以上では焼結体Bの熱伝導率κが焼結体Cを下回る(図
4参照)。性能指数Zでみると、焼結体Bが焼結体Cの
性能指数Zの8割以上の値を示している(図5参照)。
【0056】次に、本発明による焼結体Bと、同一の径
をもつ1回の焼結により得られる焼結体Aとの熱電性能
について、図2〜図5に基づいて比較する。これらの図
から明らかなように、焼結体Bのゼーベック係数αは焼
結体Aよりも15%高くなり、電気抵抗率ρについては
焼結体Bが焼結体Aより5%低下している。また、焼結
体A及び焼結体Bの熱伝導率κはほぼ一致している。全
体の性能指数Zについてみると、焼結体Bが焼結体Aよ
りも30%向上している。表1によれば、焼結体Aの相
対密度は理論密度の90%であるのに対して、焼結体B
の相対密度は理論密度の98%と高い値となり緻密なも
のが得られている。
【0057】次に、径が20mmの従来の上記小型焼結
体Cにアニールを行い、アニールがなされない小型焼結
体Cとの熱電性能を示す無次元性能指数(ZT)を比較
した。試料は、径が20mmの焼結体である従来の上記
小型焼結体Cを大気中で絶対温度773〜950Kの範
囲で、各48時間アニールを行い、その表面に形成され
た三酸化アンチモン(Sb2 3 )を研磨して除去した
のち、チップ状に切断した熱電素子本体である。図6
に、前記焼結体Cに対してアニールしたときと、アニー
ルしないときの熱電性能の温度依存性を示している。こ
の図から理解できるように、上記温度範囲内でアニール
を行うと、いずれのアニール温度であってもアニールを
行わないものよりも熱電性能が向上することを示してい
る。
【0058】図7〜図9は、2回焼結した大型の焼結体
(φ50×10mm)を試料サイズ2mm×1mm×1
5mmに切断して得られた熱電素子本体を、923Kの
大気中で12時間、48時間、134時間アニールを行
ったときの表面部の断面構造と組成分布状態とを示して
いる。図10はアルゴン雰囲気中でアニールを行ったと
きの熱電材料の表面部の断面構造とその組成分布状態と
を示している。
【0059】大気中でアニールを行った試料は、アニー
ル後の表面が黒色を呈している。一方、同一条件で焼結
した焼結体をアルゴン雰囲気中で、同様にアニールした
試料の表面は金属色を呈している。図7〜図9から、大
気中でアニールしたときの試料表面に2層構造の膜が形
成されていることが分かる。各試料について、XRDに
より検出された各層の主成分は、最外層がアンチモンと
酸素からなり、2層目はコバルト、アンチモン及び酸素
の混合物であった。一方、アルゴン中でアニールを行っ
た試料の表面には膜が存在しないことが確認された。
【0060】図11は、最外層及び2層目の各膜厚t
1,t2について、アニール時間の依存性をプロットし
たものである。最外層の膜厚t1は、時間の1/2乗に
比例しており、この層の形成が拡散律速であることを示
している。134時間アニールした図9に示す試料によ
ると、試料の表面の最外層の膜厚t1は16μmであ
り、その内側に厚さ32μmの層(2層目)が存在する
アニール時間の経過とともにその膜厚部分が増加してい
る。最外層及び2層目からなる全体の膜厚t3は(t1
+t2)である。これらの試料による膜厚のアニール時
間の依存度から算出した10年後の全体の膜厚は370
μmとなる。
【0061】図12〜図14は、前述のようにして得ら
れた熱電素子本体の温度変化に対するゼーベック係数
α、電気抵抗率ρ、パワーファクターPFのアニール時
間依存性を示している。これらの図から、αはアニール
時間に依存しない。またρについて見ると、850Kに
おいて最大15%の差が見られ、全体でアニールする時
間とともにPFが小さくなり、性能が劣化する傾向を示
している。従って、本実施形態にあっては12時間以上
のアニール時間を設定しても、あまり熱電性能の向上が
期待できない。
【0062】しかして、既述したとおり、熱電素子にア
ニールを行うと確実に熱電性能が増加する。しかしなが
ら、大気中で、これを行うと環境,衛生上の点から好ま
しくないだけでなく、アンチモンの蒸発と酸化膜の増大
が熱電性能の低下につながり、結果的に密度と耐久性を
低下させる。これを回避するには、高温下において熱電
素子本体を酸素と接触させないようにする必要がある。
そのためには、以後の熱電モジュールの製造によっても
熱電素子本体が外部に露呈する部分に、酸素を通過させ
ず、且つ母体と反応しない耐熱性セラミックス或いはガ
ラスにてコーティングをすることが有効である。
【0063】本実施形態では、セラミックス材料に窒化
ホウ素を主成分とし、2酸化チタン、硫酸アルミニウ
ム、水を添加したBN系セラミックス材料を、前記熱電
素子本体の表面全体にスプレーにて50μm厚の膜が形
成されるようにして塗布し、自然乾燥させたのち、これ
を350℃で10分キュアして試料を得た。こうして得
られた試料を823kまで5時間で昇温して、同温度下
で2時間放置した。その後、1時間かけて室温まで降温
させる。この条件でゼーベック係数αと電気抵抗率ρを
測定しながら昇降温を6回繰り返す。
【0064】前記セラミック材料としては、前記BN系
に限らず、各種のセラミックス材料を使うことができ、
例えばジルコニア(ZrO2 )を主成分とするセラミッ
クス材料も好適である。また、セラミックス材料又はガ
ラス材料を熱電素子本体に塗布する手段としては、上記
スプレーの他に、溶射、CVD、スパッタリングなどを
採用することができる。或いは、耐熱ポリイミド系樹脂
のシートでモジュールの外周を囲み、その中に素子と同
じ線膨張係数をもつセラミックス材料或いはガラス材料
を流し込み、300℃前後で焼成し、ポリイミド系樹脂
を外してモジュールとして使用することができる。
【0065】図15は、前記昇降温を6回繰り返した試
料を大気中で12時間以上かけて、550Kでアニール
を行ったときのSEM観察による断面と、その成分分布
を示している。同図から、BN系セラミックスコーティ
ングしても、2層膜が形成されている。その最外層はB
N膜槽であり、第2層が酸化膜である。これを12時間
かけてアニールした図7に示す最外層及び第2層の膜厚
と比較しても、その酸化膜の膜厚は1/3であり、酸化
膜の成長速度が極めて遅くなることが理解できる。
【0066】図16は、2回の焼結を行った上記大型の
熱電材料から得られるチップ状の熱電素子本体からなる
試料Cと同本体に前記セラミックスコーティングを行っ
た熱電素子からなる試料Dとのコーティングによる性能
比較を示している。この実験によると、試料Cに対する
アニールは行わず、試料Dに対して大気中でアニール温
度550K、12時間のアニールを行っている。同図か
ら、セラミックスコーティング後の試料Dの性能指数Z
は300K〜900Kの高温雰囲気中で全て向上してい
ることが理解でき、特に800K以下の高温雰囲気下で
の性能指数Zは大幅に増加している。
【0067】表1に、従来の1回の焼結により得られる
20mm径からなる小径焼結材料の母体試料#1、同じ
く1回の焼結により得られる50mm径の大型焼結材料
の母体試料#2、2回の焼結により得られる50mm径
の大型焼結材料の母体試料#3、同試料#3のアニール
後の母体試料#4、及び前記試料#3の表面にセラミッ
クコーティングした試料#5の、理論密度(7.643
×103 kg/m3 )に対するそれぞれの相対密度を示
している。
【0068】このときの格子定数は9.0385Åを用
いた。1回の大型焼結により得られる試料#2の相対密
度は90〜92%ともっとも低いが、これを2回焼結す
ると98%以上に達し、従来の試料#1と同レベルに達
する。ここでアニールすると、相対密度は材料#4のご
とく95%まで小さくなる。これはSbの蒸気圧が高く
高温で蒸発することによる。しかしながら、それ以上長
い時間をかけてアニールを行っても相対密度の低下は見
られない。
【0069】表2は、上記各母体試料#1〜#5の成分
のmol比、キャリア密度(n×1026-3)及びモビ
リティ(μ×10-4m/V・s)をアニール時間の経時
変化と共に示している。この分析は誘導結合プラズマ質
量分析装置により行った。表2から、母体試料の組成は
分析制度の範囲内でアニール時間により変化しないこと
が分かる。一方、キャリア密度nとモビリティμについ
て見ると、アニール前と比較してアニール後のnが低く
なり、更にアニール時間に伴ってnが減少する。これに
よって、電気抵抗率ρはアニール時間が長くなると大き
くなる。つまり、コーティングを行わずにアニールをす
ると熱電性能が劣化する。
【0070】また表2から、コーティング前後ではキャ
リア濃度もモビリティにも変化が見られない。つまり、
コーティングすることにより、熱電性能の経時変化が抑
制され、図16からも理解できるように、性能劣化を防
止することができる。μについてはアニール前後で変化
が見られない。
【0071】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例におけるCoSb3 焼結体と従来のC
oSb3 焼結体の焼結時における昇温、焼結、冷却を説
明する線図である。
【図2】本発明による1回目及び2回目の焼結を終了し
たときの、それぞれの電熱材料の温度変化に伴うゼーベ
ック係数αの変化を示す相関図である。
【図3】従来の焼結法による小径焼結体と本発明による
1回目及び2回目の焼結を終了した大径焼結体からなる
各熱電材料の温度変化に伴う電気抵抗率ρの変化を示す
相関図である。
【図4】従来の焼結法による小径焼結体と本発明による
1回目及び2回目の焼結を終了した大径焼結体からなる
各熱電材料の温度変化に伴う熱伝導率κの変化を示す相
関図である。
【図5】従来の焼結法による小径焼結体と本発明による
1回目及び2回目の焼結を終了した大径焼結体からなる
各熱電材料の温度変化に伴う性能指数Zの変化を示す相
関図である。
【図6】従来の小径焼結体のアニール前とアニール後の
熱電性能の温度依存度を示す説明図である。
【図7】上記大型焼結材料の大気中における12時間ア
ニールによる表面部構造と成分分布を示す説明図であ
る。
【図8】上記大型焼結材料の大気中における48時間ア
ニールによる表面部構造と成分分布を示す説明図であ
る。
【図9】上記大型焼結材料の大気中における134時間
アニールによる表面部構造と成分分布を示す説明図であ
る。
【図10】上記大型焼結材料のアルゴン中における48
時間アニールによる表面部構造と成分分布を示す説明図
である。
【図11】同焼結材料の表面成膜厚のアニール時間に対
する変化を示す説明図である。
【図12】同焼結材料のゼーベック係数のアニール時間
に基づく温度依存性を示す説明図である。
【図13】同焼結材料の電気抵抗率のアニール時間に基
づく温度依存性を示す説明図である。
【図14】同焼結材料のパワーファクターのアニール時
間に基づく温度依存性を示す説明図である。
【図15】セラミックスコーティング後のアニールによ
る表面膜構造と成分分布を示す説明図である。
【図16】2回焼結による上記大型焼結材料のセラミッ
クスコーティング前と同コーティング後の性能指数の温
度依存性を示す説明図である。
【符号の説明】
A,B,C 焼結体(熱電材料) #1〜#5 試料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 海部 宏昌 神奈川県平塚市万田1200 株式会社小松製 作所研究本部内 (72)発明者 冨田 建一 神奈川県平塚市万田1200 株式会社小松製 作所研究本部内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スクッテルダイト型結晶構造を有するA
    3 型化合物を含む熱電素子であって、 前記熱電素子本体の電極接合部を除く全側面がセラミッ
    クス又はガラスにより被覆されてなることを特徴とする
    スクッテルダイト系熱電素子。ただし、元素AはCo,
    Rh,Irのうちの一種以上、BはP,As,Sbのう
    ちの一種以上である。
  2. 【請求項2】 前記セラミックスが窒化ホウ素系セラミ
    ックス又はジルコニウム系セラミックスであることを特
    徴とする請求項1記載のスクッテルダイト系熱電素子。
  3. 【請求項3】 スクッテルダイト型結晶構造を有するA
    3 型化合物を含む熱電素子の製造方法であって、 原料粉末を混合して高圧・高温下で焼結することと、 この焼結体を所要の時間、高温下でアニールすること
    と、 アニール処理後の焼結体を所要の大きさのチップ状に切
    断することと、 切断されたチップ状の熱電素子本体の電極接合部を除く
    全側面をセラミックス又はガラスで被覆することと、を
    含んでなることを特徴とするスクッテルダイト系熱電素
    子の製造方法。ただし、元素AはCo,Rh,Irのう
    ちの一種以上、BはP,As,Sbのうちの一種以上で
    ある。
  4. 【請求項4】 スクッテルダイト型結晶構造を有するA
    3 型化合物を含む熱電素子の製造方法であって、 原料粉末を混合して高圧・高温下で焼結することと、 この焼結体を所要の大きさのチップ状に切断して熱電素
    子本体を得ることと、 切断されたチップ状の熱電素子本体の電極接合部を除く
    全側面をセラミックス又はガラスで被覆することと、 セラミックス又はガラスで被覆された熱電素子本体を高
    温下でアニールすることと、を含んでなることを特徴と
    するスクッテルダイト系熱電素子の製造方法。ただし、
    元素AはCo,Rh,Irのうちの一種以上、BはP,
    As,Sbのうちの一種以上である。
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