JP2002356646A - 架橋樹脂粒子を含有する無鉛性カチオン電着塗料組成物 - Google Patents

架橋樹脂粒子を含有する無鉛性カチオン電着塗料組成物

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JP2002356646A
JP2002356646A JP2001164399A JP2001164399A JP2002356646A JP 2002356646 A JP2002356646 A JP 2002356646A JP 2001164399 A JP2001164399 A JP 2001164399A JP 2001164399 A JP2001164399 A JP 2001164399A JP 2002356646 A JP2002356646 A JP 2002356646A
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epoxy resin
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acid
electrodeposition coating
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Yoshio Kojima
与志夫 児島
Satoru Uchitoi
悟 打土井
Mitsuo Yamada
光夫 山田
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Nippon Paint Co Ltd
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Nippon Paint Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 形成される塗膜の外観を維持しつつ、亜鉛鋼
板適性、耐はじき性、及びつきまわり性に優れ、電着塗
料自体の使用量も少なくて済むために経済性に優れ、環
境に与える影響が少ない無鉛性カチオン電着塗料組成物
を提供すること。 【解決手段】 架橋樹脂粒子を含有する無鉛性カチオン
電着塗料組成物において、カチオン性エポキシ樹脂がア
ミン変性エポキシ樹脂及びスルホニウム変性エポキシ樹
脂を含み、架橋樹脂粒子の含有量が塗料樹脂固形分の3
〜20重量%であり、架橋樹脂粒子が、アンモニウム基
を有するアクリル樹脂を乳化剤として、α,β−エチレ
ン性不飽和モノマー混合物を乳化重合することにより得
られたものである無鉛性カチオン電着塗料組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は無鉛性カチオン電着
塗料組成物に関し、特に亜鉛鋼板適性、耐はじき性及び
つきまわり性に優れた、架橋樹脂粒子を含有する無鉛性
カチオン電着塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物
であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的か
つ連続的に塗装することができるので、自動車車体等の
大型で複雑な形状を有し、高い防錆性が要求される被塗
物の下塗り塗装方法として汎用されている。また、他の
塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて高いこと
から経済的であり、工業的な塗装方法として広く普及し
ている。カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料中に被
塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより
行われる。
【0003】これまで電着塗料には、塗膜の耐食性を改
良するため、鉛を含む金属触媒(耐食性付与剤等)が添
加されてきた。近年、金属イオン、特に鉛イオンは環境
に対して悪影響を与えることから、電着塗料に使用する
金属触媒の量を削減することが要求されている。
【0004】他方、塗装コストの低減の為、塗料自体の
使用量の減少も望まれている。
【0005】カチオン電着塗装の過程における塗膜の析
出は電気化学的な反応によるものであり、電圧の印加に
より、被塗物表面に塗膜が析出する。析出した塗膜は絶
縁性を有するので、塗装過程において、塗膜の析出が進
行して析出膜の膜厚が増加するのに従い、塗膜の電気抵
抗は大きくなる。
【0006】その結果、当該部位への塗料の析出は低下
し、代わって未析出部位への塗膜の析出が始まる。この
ようにして、順次未被着部分に塗料固形分が被着して塗
装を完成させる。本明細書中、被塗物の未着部位に塗膜
が順次形成される性質をつきまわり性という。
【0007】このようなカチオン電着塗装は、通常は下
塗り塗装に使用され、防錆等を主目的として行われるこ
とから、複雑な構造を有する被塗物であっても、すべて
の部分でその被膜の膜厚を所定値以上にする必要があ
る。カチオン電着塗装においては、上述したように被塗
物表面に絶縁性の被膜が順次形成されていくので、理論
的には無限のつきまわり性を有しており、被塗物の全て
の部分に均一に被膜を形成することができるはずであ
る。
【0008】しかしながら、従来のカチオン電着塗料組
成物においては、つきまわり性は必ずしも充分でなく、
膜厚のムラが生じることがある。
【0009】カチオン電着塗装は、通常は下塗り塗装に
使用され、防錆等を主目的として行われることから、複
雑な構造を有する被塗物であっても、すべての部分でそ
の塗膜の膜厚を所定値以上にする必要がある。そのた
め、膜厚にムラがあると、厚い部分は塗り過ぎであり、
塗料が過剰に使用されていることとなる。従って、塗料
の使用量を減少させるためには、電着塗料のつきまわり
性を改良する必要がある。
【0010】カチオン電着塗装の被塗物は、従来から自
動車車体等に用いられる鋼板が大部分を占めている。鋼
板は、防錆油が塗られて保管されている。この防錆油を
アルカリ等で脱脂し、表面処理を行った後の鋼板が、通
常被塗物として用いられる。
【0011】しかしながら、近年では、鋼板の表面に亜
鉛がめっきされた亜鉛鋼板に電着塗装を施すことも多く
なってきた。亜鉛鋼板は、通常の鋼板と比べて防錆性に
優れ、被塗物として用いると塗装物としてもより高い防
錆性が実現できる。他方、亜鉛鋼板を被塗物として用い
ると電着塗膜にピンホールやクレータが発生し易く、外
観不良が生じ易い問題がある。その理由は、亜鉛鋼板は
カチオン電着塗装時の被塗側で発生する水素ガスの放電
電圧が鉄鋼板よりも低いため、水素ガス中で火花放電が
生じ易くなるためではないかと考えられている。
【0012】更に、外観不良の原因となる電着塗膜の欠
陥には、当業者に「はじき」と呼ばれるものがある。こ
の種の塗膜の欠陥は、例えば、塗料組成物に含まれる低
分子量の有機化合物や外部から塗料被膜に付着した油等
が、その後の加熱硬化工程で突沸して生じることが知ら
れている。すなわち、電着された塗料の被膜は加熱硬化
工程では溶融し流動状態にあるため、突沸による局所的
な衝撃で容易に孔が空く。その後、回りの樹脂が平坦化
して孔が完全に埋まる前にバインダー成分が硬化した場
合に、塗料被膜の孔が固定され、形状がクレーターに似
た塗膜の欠陥が形成されるのである。
【0013】従って、塗料組成物中の不純物及び電着塗
装工程における油の飛散等を排除すればこのようなはじ
きは生じないのであるが、工業的規模で実施する場合は
特にそれを徹底することは困難である。はじきは流動性
に優れる低粘度の塗料組成物で特に生じ易い。
【0014】塗膜のはじきを防止するために、一般に、
はじき防止剤を塗料組成物に含有させる。例えば、特公
平2−55466号公報には樹脂粒子を含む粘度調節剤
が記載されており、これははじき防止剤として使用でき
る。
【0015】しかしながら、これらの樹脂粒子は硬化時
の粘度調節機能を重視した設計であるため、はじき防止
効果を十分に発現させる量で添加すると、得られる電着
塗膜の外観が損なわれる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問
題を解決するものであり、その目的とするところは、形
成される塗膜の外観を維持しつつ、亜鉛鋼板適性、耐は
じき性、及びつきまわり性に優れ、電着塗料自体の使用
量も少なくて済むために経済性に優れ、環境に与える影
響が少ない無鉛性カチオン電着塗料組成物を提供するこ
とにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は、水性媒体、水
性媒体中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキ
シ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバイン
ダー樹脂、架橋樹脂粒子、中和酸、有機溶媒、金属触媒
を含有する無鉛性カチオン電着塗料組成物において、上
記カチオン性エポキシ樹脂がアミン変性エポキシ樹脂及
びスルホニウム変性エポキシ樹脂を含み、上記アミン変
性エポキシ樹脂及び上記ブロックイソシアネート硬化剤
の合計100gに含まれるアミノ基を中和するのに必要
な酸のミリ当量数が5〜30であり、上記スルホニウム
変性エポキシ樹脂及び上記ブロックイソシアネート硬化
剤の合計100gに含まれるスルホニウム塩基のミリ当
量数が5〜30であり、被塗物に電着された塗膜の最低
造膜温度(MFT)が20〜35℃であり、上記架橋樹
脂粒子の含有量が塗料樹脂固形分の3〜20重量%であ
り、上記架橋樹脂粒子が、アンモニウム基を有するアク
リル樹脂を乳化剤として、α,β−エチレン性不飽和モ
ノマー混合物を乳化重合することにより得られたもので
ある無鉛性カチオン電着塗料組成物、を提供するもので
あり、そのことにより上記目的が達成される。
【0018】ここで、「無鉛性」とは、実質上鉛を含ま
ないことをいい、環境に悪影響を与えるような量で鉛を
含まないことを意味する。具体的には、電着浴中の鉛化
合物濃度が50ppm、好ましくは20ppmを超える
量で鉛を含まないことをいう。
【0019】
【発明の実施の形態】カチオン電着塗料組成物は、水性
媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、バインダ
ー樹脂、中和酸、有機溶媒、金属触媒等種々の添加剤を
含有する。バインダー樹脂は官能基を有するカチオン性
樹脂とブロックイソシアネート硬化剤とを含む。水性媒
体としては、イオン交換水等が一般に用いられる。
【0020】本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物
は、添加剤として架橋樹脂粒子を含有する。塗装時のウ
エット膜の粘度を制御することにより耐はじき性が向上
するからである。
【0021】また、本発明の無鉛性カチオン電着塗料組
成物では、カチオン性樹脂としてアミン変性エポキシ樹
脂及びスルホニウム変性エポキシ樹脂を同時に用いる。
【0022】アミン変性エポキシ樹脂とは、エポキシ樹
脂にアミンを反応させてそのエポキシ基が開環されるの
と同時にアミノ基が導入された樹脂をいう。
【0023】スルホニウム変性エポキシ樹脂とは、エポ
キシ樹脂にスルフィド化合物及び中和酸を反応させてそ
のエポキシ基が開環されると同時にスルホニウム塩基が
導入された樹脂をいう。
【0024】また、ブロックイソシアネート硬化剤とし
ては、ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロッ
クしたブロックポリイソシアネートを用いることが好ま
しい。
【0025】カチオン性エポキシ樹脂 本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで
変性されたエポキシ樹脂が含まれる。このアミン変性エ
ポキシ樹脂は、例えば、特開昭54−4978号、同昭
56−34186号などに記載されているような従来公
知のものでよい。アミン変性エポキシ樹脂は、典型的に
は、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環をアミ
ンで開環して製造される。
【0026】ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例は
ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ
樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828
(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜19
0)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜
500)、エピコート1010(同、エポキシ当量30
00〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエ
ピコート807、(同、エポキシ当量170)などがあ
る。
【0027】特開平5−306327号公報第0004
段落の式、化3に記載のような、オキサゾリドン環含有
エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよ
い。つきまわり性に優れた塗料組成物が得られ、また、
耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
【0028】エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入す
る方法としては、例えば、メタノールのような低級アル
コールでブロックされたブロックポリイソシアネートと
ポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副
生する低級アルコールを系内より留去することで得られ
る。
【0029】特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリド
ン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優
れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからであ
る。
【0030】二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブ
ロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタ
ン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポ
キシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリ
ドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例え
ば、特開2000−128959号公報第0012〜0
047段落に記載されている。
【0031】これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポ
リオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性の
アルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良
い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジ
カルボン酸との反応を利用して鎖延長することができ
る。
【0032】エポキシ樹脂中のエポキシ樹脂と反応させ
るアミンには1級アミン、2級アミンが含まれる。かか
るアミンのなかでも2級アミンが特に好ましい。エポキ
シ樹脂と2級アミンとを反応させると3級アミノ基を有
するアミン変性エポキシ樹脂が得られるが、この3級ア
ミノ基を有するアミン変性エポキシ樹脂は電着塗料のつ
きまわり性に寄与する析出性に優れ、かつバインダー樹
脂に水分散安定性を付与する。
【0033】アミンの具体例としては、ブチルアミン、
オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メ
チルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノー
ルアミン、N−メチルエタノールアミン、アミノエチル
エタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンの
ジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミン
がある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよ
い。
【0034】本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂に
は、スルフィド化合物で変性されたエポキシ樹脂も含ま
れる。このスルホニウム変性エポキシ樹脂は、例えば、
特開平6−128351号公報、特開平7−20696
8号公報などに記載されているような従来公知のもので
よい。スルホニウム変性エポキシ樹脂は、典型的には、
ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環をスルフィ
ド化合物及び中和酸で開環して製造される。
【0035】エポキシ樹脂と反応させるスルフィド化合
物は、エポキシ基と反応し、かつ妨害基を含まない全て
のスルフィド化合物が含まれる。尚、エポキシ樹脂とス
ルフィド化合物との反応は中和酸の存在下で行なう必要
があり、その結果、エポキシ樹脂にスルホニウム塩基が
導入される。
【0036】スルフィド化合物の具体例としては、脂肪
族スルフィド、脂肪族−芳香族混合スルフィド、アラル
キルスルフィドまたは環状スルフィドであり得る。使用
しうるスルフィド化合物の例には、ジエチルスルフィ
ド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジフ
ェニルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、エチルフェ
ニルスルフィド、テトラメチレンスルフィド、ペンタメ
チレンスルフィド等が挙げられる。
【0037】好ましいスルフィド化合物は、式
【化1】HO−R−S−R’−OH [式中、R及びR’はそれぞれ独立して炭素数2〜8の
直鎖又は分枝鎖アルキレン基である。]で表されるチオ
ジアルコールである。かかるスルホニウム変性エポキシ
樹脂は電着開始後の短時間(約10秒間)塗膜抵抗の形
成を遅くする機能を有し、かつバインダー樹脂に水分散
安定性を付与する。
【0038】本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂と
して特に好ましいものは、エポキシ樹脂と2級アミンと
を反応させて得られたアミン変性エポキシ樹脂と、エポ
キシ樹脂と化2で表されるスルフィド化合物とを反応さ
せて得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂とを、含有
する樹脂である。
【0039】チオジアルコールの例には、チオジエタノ
ール、チオジプロパノール、チオジブタノール、1−
(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール、1
−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2,3−プロパンジ
オール、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−ブタ
ノール、及び1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−3−
ブトキシ−1−プロパノールなどがある。最も好ましく
は、スルフィド化合物は1−(2−ヒドロキシエチルチ
オ)−2−プロパノールである。
【0040】エポキシ樹脂とアミン又はスルフィド化合
物との反応は、当業者に知られている方法及び条件で行
なえばよい。エポキシ樹脂とアミンとの反応について
は、例えば、特開平5−306327号公報、及び特開
2000−128959号公報に記載されている。エポ
キシ樹脂とスルフィド化合物との反応については、例え
ば、特開平6−128351号公報、特開平7−206
968号公報に記載されている。また、中和酸を用いて
これらをカチオン化する反応も、当業者に知られている
方法及び条件で行なえばよい。
【0041】本発明において特に好ましい態様は、エポ
キシ樹脂と2級アミンとを反応させて得られたアミン変
性エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂とチオジアルコールと
を反応させて得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂と
を組み合わせてカチオン性エポキシ樹脂に用いる態様で
ある。この場合、被塗物として亜鉛鋼板を用いる場合で
も塗膜にピンホールやクレータが生じ難くなり、得られ
る電着塗料組成物の亜鉛鋼板適性が向上する。
【0042】ブロックイソシアネート硬化剤 本発明のブロックイソシアネート硬化剤で使用するポリ
イソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2
個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとして
は、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香
族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
【0043】ポリイソシアネートの具体例には、トリレ
ンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイ
ソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネ
ート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香
族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート
(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシ
アネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素
数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロ
ヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイ
ソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシ
ルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシク
ロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシク
ロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3
−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XD
I)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イ
ソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ
ン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等
のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キ
シリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチ
ルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のよう
な芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジ
イソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミ
ド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/
又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これ
らは、単独で、または2種以上併用することができる。
【0044】ポリイソシアネートをエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、
ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/O
H比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリ
マーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
【0045】ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付
加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると
遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0046】ブロック剤としては、ε−カプロラクタム
やブチルセロソルブ等通常使用されるものを用いること
ができる。しかしながら、環境への影響を少なくするた
め、ブロックイソシアネート硬化剤の使用量は必要最小
限とすることが好ましい。
【0047】架橋樹脂粒子 本発明のカチオン電着塗料組成物は、架橋樹脂粒子を含
有している。この架橋樹脂粒子は、アンモニウム基を有
するアクリル樹脂を乳化剤として、α,β−エチレン性
不飽和モノマー混合物を乳化重合することにより得られ
たものである。
【0048】上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混
合物は、樹脂粒子を架橋させるための分子内にα,β−
エチレン性不飽和結合を2個以上有するポリ(メタ)ア
クリレートを通常含んでおり、その量は、先のモノマー
混合物中で5〜20重量%を占める量である。この量が
5重量%未満では樹脂粒子の架橋が充分に進行せず、ま
た、20重量%を上回ると樹脂粒子の架橋が進みすぎ、
ともにカチオン電着により得られる塗膜の物性に問題が
生じる恐れがある。
【0049】上記分子内にα,β−エチレン性不飽和結
合を2個以上有するポリ(メタ)アクリレートとして
は、2価以上のアルコールに複数個の(メタ)アクリル
酸がエステル結合している構造を有する化合物、例え
ば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メ
タ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)ア
クリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル
酸テトラエチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸
トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは2
種以上を混合して用いても構わない。
【0050】上記モノマー混合物は、上記ポリ(メタ)
アクリレート以外に、一般的なα,β−エチレン性不飽
和モノマーを通常含んでいる。このような一般的なα,
β−エチレン性不飽和モノマーとしては、反応性官能基
を有するものと有しないものを挙げることができる。反
応性官能基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー
として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メ
タ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル
酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタクリルア
ルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−
カプロラクトンとの付加物などの水酸基を有するもの、
および(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基
を有するものを挙げることができる。反応性官能基を有
するα,β−エチレン性不飽和モノマーが混合物中に含
まれている場合、その量は混合物の20重量%以下であ
ることがさらに好ましい。また、そのときの上記混合物
の水酸基価またはエポキシ価は、ともに20以下である
ことが好ましい。
【0051】一方、反応性官能基を有しないα,β−エ
チレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸
エステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)
アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、
(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸
n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)
アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチル
ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニ
ル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シ
クロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘ
キシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、
(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル
等)、重合性アミド化合物(例えば、(メタ)アクリル
アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−
ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメ
チル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メ
タ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アク
リルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、
N−モノオクチル(メタ)アクリルアミド、2,4−ジ
ヒドロキシ−4’−ビニルベンゾフェノン、N−(2−
ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロ
キシエチル)メタクリルアミド等)、重合性芳香族化合
物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルケ
トン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビ
ニルナフタレン等)、重合性ニトリル(例えば、アクリ
ロニトリル、メタクリロニトリル等)、α−オレフィン
(例えば、エチレン、プロピレン等)、ビニルエステル
(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ジエ
ン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)、重合性芳香
族化合物、重合性ニトリル、α−オレフィン、ビニルエ
ステル、及びジエンを挙げることができる。
【0052】一方、上記架橋樹脂粒子を得るための乳化
重合で乳化剤として用いられるアンモニウム基を有する
アクリル樹脂は、アンモニウム基の個数が1分子あたり
2〜15個であることが好ましい。アンモニウム基の個
数が1分子あたり15個を上回ると、カチオン電着塗料
に用いた際に得られる塗膜の耐水性が低下する恐れがあ
り、2個を下回ると、分散安定性が低下する恐れがあ
る。
【0053】本発明で得られる架橋樹脂粒子をカチオン
電着塗料に用いた際、上記アクリル樹脂がさらにブロッ
クイソシアネート基を有していることにより、塗料種に
よっては、得られる塗膜の塗装外観および防錆性をさら
に向上させることができる。この場合、ブロックイソシ
アネート基の個数は、1分子あたり2〜12個であるこ
とが好ましい。
【0054】上記アンモニウム基を有するアクリル樹脂
は種々の方法で得ることができるが、エポキシ基を有す
るアクリル樹脂に3級アミン化合物と有機酸とを加えて
4級化することにより、容易に得ることができる。な
お、この4級化は、3級アミン化合物と有機酸とを先に
混合しておき、この混合物を4級化剤として、エポキシ
基を有するアクリル樹脂に加えることにより行ってもよ
い。
【0055】4級化に用いられるエポキシ基を有するア
クリル樹脂は、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエ
ポキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーを
その他のα,β−エチレン性不飽和モノマーと共重合す
ることによって得ることができる。この4級化の方法で
は、エポキシ基を3級アミンで開環してアンモニウム基
とするので、先に述べた望ましいアンモニウム基の個数
に応じて、エポキシ基を有するα,β−エチレン性不飽
和モノマーの量を決定することができる。
【0056】また、このエポキシ基を有するアクリル樹
脂を得るのに用いるモノマーのSP値は9以上であるこ
とが好ましい。モノマーのSP値が9未満だと上塗りと
の密着不良の問題が生じる。また、モノマーのSP値の
上限は規定されないが、通常用いられるモノマーのSP
値を考慮すると、12以下であるのが一般的である。な
お、このSP値は濁度法などの当業者によく知られた方
法で決定することができる。
【0057】このエポキシ基を有するアクリル樹脂は、
通常よく知られた開始剤を用いて先のモノマーを溶液重
合するといった常法により行うことができる。このよう
にして得られるエポキシ基を有するアクリル樹脂の数平
均分子量は5000〜20000であることが好まし
い。数平均分子量が20000を上回ると、乳化剤の粘
度上昇の問題が生じ、5000を下回るとハジキ防止効
果が不十分となる問題が生じる可能性がある。
【0058】一方、アンモニウム基をアクリル樹脂に導
入するための3級アミン化合物としては、トリメチルア
ミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオク
チルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタ
ノールアミンなど種々のものを用いることができる。な
お、この3級アミン化合物の量は、導入するアンモニウ
ム基の量に合わせて決定することができる。
【0059】上記アンモニウム基を有するアクリル樹脂
がさらにブロックイソシアネート基を有する場合には、
先にハーフブロック化イソシアネートを用意しておき、
これをジメチルエタノールアミンのような水酸基を有す
る3級アミンと反応させたものを3級アミン化合物とし
て4級化に用いることにより、目的とする樹脂を得るこ
とができる。
【0060】ここでハーフブロック化イソシアネートと
しては、ポリイソシアネートを部分的にブロックした、
当業者によく知られているものを挙げることができる。
このハーフブロック化イソシアネート1分子中のイソシ
アネート残基が、1.0〜0.5個、好ましくは、0.
99〜0.80個となるよう、化学量論計算により反応
割合を定めて、ポリイソシアネートとブロック剤とを反
応させたものである。ポリイソシアネート及びブロック
剤は、既に説明したものを用いることが好ましい。
【0061】4級化に用いられる有機酸としては、ギ
酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、ほう酸、酪酸、ジメチ
ロールプロピオン酸、塩酸、硫酸、りん酸、N−アセチ
ルグリシン、N−アセチル−β−アラニンなどを挙げる
ことができるが、乳化時の安定性の点で、乳酸、酢酸、
ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0062】この4級化において、エポキシ基を有する
アクリル樹脂中のエポキシ基、3級アミン化合物、有機
酸の量はモル比で1/1/1〜1/1/2であることが
好ましい。4級化反応は、一般的に2〜10時間かけて
行われ、必要に応じて60〜100℃に加熱してもよ
い。
【0063】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る架橋樹脂粒子は、このようにして得られるアンモニウ
ム基を有するアクリル樹脂を乳化剤として、乳化重合を
行うことにより得られる。乳化重合としては、通常よく
知られている方法を用いて行うことができる。具体的に
は、水、または必要に応じてアルコールなどのような有
機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌
下、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物およ
び重合開始剤を滴下することにより行うことができる。
乳化剤と水とを用いて予め乳化した、α,β−エチレン
性不飽和モノマー混合物を同様に滴下してもよい。
【0064】好ましくは、水性媒体中に乳化剤を溶解さ
せ、加熱撹拌下、開始剤を滴下した後、一部の上記α,
β−エチレン性不飽和モノマーをまず滴下し、その後、
乳化剤と水とを用いて予め乳化した、残りのα,β−エ
チレン性不飽和モノマー混合物を滴下する方法をとるこ
とができる。この方法をとることにより、目的とする粒
子径からのバラツキが少なくなり、好ましい架橋樹脂粒
子を得ることができる。
【0065】ここで好適に用いうる重合開始剤として
は、アゾ系の油性化合物(例えば、アゾビスイソブチロ
ニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニト
リル)、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン
−2−イル)プロパン)および2,2’−アゾビス
(2,4−ジメチルバレロニトリル)など)および水性
化合物(例えば、アニオン系の4,4’−アゾビス(4
−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(N−(2−カル
ボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)およ
びカチオン系の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピ
オンアミジン));並びにレドックス系の油性過酸化物
(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベン
ゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよ
びt−ブチルパーベンゾエートなど)、および水性過酸
化物(例えば、過硫酸カリおよび過硫酸アンモニウムな
ど)が挙げられる。
【0066】ここで乳化剤として、先のアンモニウム基
を有するアクリル樹脂を用いる。また、さらに当業者に
通常使用されているものや反応性乳化剤、例えば、アン
トックス(Antox)MS−60(日本乳化剤社
製)、エレミノールJS−2(三洋化成工業社製)、ア
デカリアソープNE−20(旭電化社製)およびアクア
ロンHS−10(第一工業製薬社製)などを併用するこ
とができる。なお、この反応性乳化剤は、先のモノマー
混合物に含まれるα,β−エチレン性不飽和モノマーに
は属さないものとする。
【0067】ここで上記α,β−エチレン性不飽和モノ
マー混合物とアンモニウム基を有するアクリル樹脂との
重量比は、95:5〜70:30であることが好まし
い。95:5を上回ると、防錆性が維持できなくなり、
70:30未満だと凝集してブツが発生する恐れがあ
る。
【0068】また、分子量を調節するために、ラウリル
メルカプタンのようなメルカプタンおよびα−メチルス
チレンダイマーなどのような連鎖移動剤を必要に応じて
用いうる。
【0069】反応温度は開始剤により決定され、例え
ば、アゾ系開始剤では60〜90℃であり、レドックス
系では30〜70℃で行うことが好ましい。一般に、反
応時間は1〜8時間である。α,β−エチレン性不飽和
モノマー混合物の総量に対する開始剤の量は、一般に
0.1〜5重量%であり、好ましくは0.2〜2重量%
である。
【0070】このようにして得られる架橋樹脂粒子の平
均粒子径は0.05〜0.30μmの範囲であることが
好ましい。粒子径が0.05μm未満であると作業性の
改善の効果が小さく、0.30μmを上回ると得られる
塗膜の外観が悪化する恐れがある。この粒子径の調節
は、例えば、モノマー組成や乳化重合条件を調整するこ
とにより可能である。
【0071】顔料 電着塗料組成物には着色剤として一般に顔料を含有させ
る。しかしながら、本発明の無鉛性カチオン電着塗料組
成物には顔料を含有させないことが好ましい。塗料のつ
きまわり性が向上するからである。
【0072】塗膜に着色や耐食性を付与するため、着色
顔料、防錆顔料、体質顔料等を含有させる場合は、塗料
組成物中に含まれる顔料と樹脂固形分との重量比(P/
V)が1/9以下になる量とする。塗料組成物中の顔料
の量が樹脂固形分との重量比1/9を越えると塗料固形
分の析出性が低下するため、つきまわり性が低下する。
【0073】本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物に
含有させてよい顔料の例としては、通常用いられる顔料
であれば特に制限はなく、酸化チタン及びカーボンブラ
ックのような着色顔料、カオリン、タルク、ケイ酸アル
ミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー及びシリカ
のような体質顔料、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アル
ミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化
亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブ
デン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸
カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモ
リブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等が挙げ
られる。
【0074】顔料分散ペースト 顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を
予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。
顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃
度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからであ
る。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストとい
う。
【0075】顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂
と共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂
としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子
量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スル
ホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオ
ン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や
少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料
分散樹脂と顔料との配合比(顔料分散樹脂/顔料)は、
固形分重量基準で10/100〜50/100である。
【0076】金属触媒 本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物には塗膜の耐食
性を改良するための触媒として、金属触媒を金属イオン
として含有させてよい。金属イオンとしては、セリウム
イオン、ビスマスイオン、銅イオン、亜鉛イオンが好ま
しい。これらは適当な酸と組み合わせた塩や金属イオン
を含有する顔料からの溶出物として電着塗料組成物に配
合される。酸としては、カチオン性エポキシ樹脂を中和
するための中和酸として後に説明する塩酸、硝酸、リン
酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸のい
ずれかであればよい。好ましい酸は酢酸である。
【0077】電着塗料組成物 本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物は、上に述べた
金属触媒、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシア
ネート硬化剤、架橋樹脂粒子、及び必要であれば顔料分
散ペーストを水性媒体中に分散することによって調製さ
れる。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹
脂を中和して、バインダー樹脂エマルションの分散性を
向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、
硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または
有機酸である。
【0078】塗料組成物に含有させる中和酸の量が多く
なるとカチオン性エポキシ樹脂の中和率が高くなり、バ
インダー樹脂粒子の水性媒体に対する親和性が高くな
り、分散安定性が増加する。このことは、電着塗装時に
被塗物に対してバインダー樹脂が析出し難い特性を意味
し、塗料固形分の析出性は低下する。
【0079】逆に、塗料組成物に含有させる中和酸の量
が少ないとカチオン性エポキシ樹脂の中和率が低くな
り、バインダー樹脂粒子の水性媒体に対する親和性が低
くなり、分散安定性が減少する。このことは、塗装時に
被塗物に対してバインダー樹脂が析出し易い特性を意味
し、塗料固形分の析出性は増大する。
【0080】従って、電着塗料のつきまわり性を改良す
るためには、塗料組成物に含有させる中和酸の量を減ら
すことが好ましい。他方、中和酸の量を減らすとバイン
ダー樹脂の水分散性が低下するため、塗料の保存安定性
が低下する。
【0081】本発明の電着塗料組成物では、アミン変性
エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤の合計
100gに含まれるアミノ基を中和するのに必要な酸の
ミリ当量数は5〜30、好ましくは10〜25とする。
中和酸の量が5ミリ当量未満であるとアミン変性エポキ
シ樹脂の親水性が不十分となり、塗料の分散安定性が維
持できないこととなり、30ミリ当量を越えると塗料の
つきまわり性が劣ることとなる。
【0082】また、スルホニウム変性エポキシ樹脂及び
ブロックイソシアネート硬化剤の合計100gに含まれ
るスルホニウム塩基のミリ当量数は5〜30、好ましく
は10〜25とする。スルホニウム塩基の量が5ミリ当
量未満であるとスルホニウム変性エポキシ樹脂の親水性
が不十分となり、塗料の分散安定性が維持できないこと
となり、30ミリ当量を越えると塗料のつきまわり性が
劣ることとなる。
【0083】カチオン性エポキシ樹脂としてアミン変性
エポキシ樹脂及びスルホニウム変性エポキシ樹脂、及び
硬化剤としてブロックイソシアネートを配合し、水性媒
体へこれらを分散する方法については、アミン変性エポ
キシ樹脂、スルホニウム変性エポキシ樹脂のそれぞれ、
又はいずれか一方にブロックイソシアネートを溶液状態
で混合し、両者をそれぞれエマルションとし、その後両
エマルションを混合してよく、又はアミン変性エポキシ
樹脂及びスルホニウム変性エポキシ樹脂を予め溶液状態
で混合しておき、これにブロックイソシアネートを加え
た混合溶液を、エマルションとしてもよい。
【0084】アミン変性エポキシ樹脂とスルホニウム変
性エポキシ樹脂との混合割合は、重量比で10/90〜
90/10、好ましくは30/70〜70/30の範囲
であることが好ましい。両者の混合割合が10/90未
満であると塗料のつきまわり性が不十分となり、90/
10を越えると亜鉛鋼板における塗膜の外観不良が解消
され難くなる。
【0085】ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬
化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ
基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬
化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチ
オン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤と
の固形分重量比(エポキシ樹脂/硬化剤)で表して一般
に1/1〜9/1、好ましくは2/1〜4/1の範囲で
ある。
【0086】架橋樹脂粒子は、カチオン電着塗料組成物
を調製するいずれかの工程において添加する。例えば、
アミン変性エポキシ樹脂、スルホニウム変性エポキシ樹
脂、ブロックイソシアネート硬化剤を混合してカチオン
性樹脂エマルションを調製する際に、同時に架橋樹脂粒
子のエマルションを混合すればよい。
【0087】架橋樹脂粒子の添加量は、塗料中の架橋樹
脂粒子の含有量が塗料に含まれる全樹脂固形分の3〜2
0重量%を占める量とする。架橋樹脂粒子の含有量が3
重量%未満であると塗料の耐はじき性や硬化塗膜の防錆
性が低下し、20重量%を越えると電着塗膜の外観が悪
化する。
【0088】塗料組成物は、ジラウリン酸ジブチルス
ズ、ジブチルスズオキサイドのようなスズ化合物や、通
常のウレタン開裂触媒を含むことができる。鉛を実質的
に含まないため、その量は樹脂固形分の0.1〜5重量
%とすることが好ましい。
【0089】有機溶媒はカチオン性エポキシ樹脂、ブロ
ックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分
を合成する際に溶剤として必ず必要であり、完全に除去
するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹
脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が
改良され、塗膜の平滑性が向上する。従って、樹脂成分
からこれらの有機溶媒を完全に除去する必要はなく、ま
た、別途有機溶媒を加えてもよい。
【0090】塗料組成物に通常含まれる有機溶媒として
は、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレン
グリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール
モノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコー
ルモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブ
チルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエー
テル等が挙げられる。
【0091】塗料組成物は、上記のほかに、可塑剤、界
面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の
塗料用添加剤を含むことができる。
【0092】本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物は
当業者に周知の方法で被塗物に電着塗装され、電着塗膜
(未硬化)を形成する。被塗物としては導電性のあるも
のであれば特に限定されず、例えば、鉄板、鋼板、アル
ミニウム板及びこれらを表面処理したもの、これらの成
型物等を挙げることができる。
【0093】好ましい被塗物は亜鉛鋼板である。本発明
の無鉛性カチオン電着塗料組成物は電着開始後の短時間
(約10秒間)、塗膜抵抗の形成を遅くすることで、亜
鉛鋼板に塗装した場合でも塗膜にピンホールやクレータ
が発生し難く、優れた外観の塗装物を提供できるからで
ある。
【0094】電着塗膜の膜厚は10〜20μmとするこ
とが好ましい。膜厚が10μm未満であると、防錆性が
不充分であり、20μmを超えると、塗料の浪費につな
がる。また、被塗物に電着された塗膜の最低造膜温度
(MFT)は従来のものよりも高くすることが好まし
い。電着塗料のつきまわり性が改善されるからである。
【0095】具体的には、電着塗膜のMFTは20〜3
5℃とする。電着塗膜のMFTが20℃未満であると、
少ない熱でフローを起こす特性より膜厚が厚くなりやす
くつきまわり性に不適となり、35℃を越えると、熱に
よるフローが十分でなく外観が劣ることとなる。電着塗
膜のMFTは、好ましくは22〜32℃である。
【0096】電着塗膜のMFTを従来のものと比較して
高くすることによりカチオン電着塗料組成物のつきまわ
り性が改善される理由は明確ではないが、塗装時の浴温
と最低造膜温度が接近していることにより、膜厚の不必
要な増加が抑えられ、内外板比率が向上するためではな
いかと考えられている。電着塗膜のMFTの調節は当業
者に周知の方法により行なえば足りる。例えば、樹脂の
配合を変化させる、析出膜の樹脂Tgを変化させる、溶
剤量を変化させる等である。
【0097】MFTとは熱可塑性有機樹脂粒子が結合し
て造膜するのに最低必要な温度を意味する。MFTの測
定方法は以下の通りである。電着浴温度を10℃〜40
℃まで2℃毎に変化させ、塗装電圧200Vで3分間通
電したものを所定焼付条件で乾燥させた後の塗膜重量を
測定する。この塗膜重量が最低となる浴温度を最低造膜
温度(MFT)とする。
【0098】上述のようにして得られる電着塗膜は、電
着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜2
60℃、好ましくは160〜220℃で、10〜30分
間焼き付けることにより硬化させる。
【0099】
【発明の効果】本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物
は、亜鉛鋼板適性、耐はじき性、及びつきまわり性に優
れ、電着塗料自体の使用量も少なくて済むために経済性
に優れ、環境に与える影響が少なく、更に形成される塗
膜の外観も優れる。
【0100】
【実施例】以下の実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、
「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準
による。
【0101】製造例1 ブロックイソシアネート硬化剤の製造 ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびメ
チルイソブチルケトン(以下「MIBK」という。)2
66.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱
した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。こ
こに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ
944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下
した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペク
トルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が
消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部
を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0102】製造例2 アミン変性エポキシ樹脂の製造 撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を
装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソ
シアネート(重量比=8/2)87部、MIBK85部
およびジブチル錫ジラウレート0.1部を仕込んだ。反
応混合物を撹拌下、メタノール32部を滴下した。反応
は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。反
応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトル
の測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失
するまで継続した。
【0103】次に、ビスフェノールAとエピクロルヒド
リンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエ
ポキシ樹脂550部を反応混合物に加えて、125℃ま
で昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部
を添加し、エポキシ当量330になるまで130℃で反
応させた。
【0104】続いて、ビスフェノールA100部及びオ
クチル酸36部を加えて120℃で反応させたところ、
エポキシ当量は1030となった。その後、反応混合物
を冷却し、ジエタノールアミン79部を加え、110℃
で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80
%となるまで希釈し、3級アンモニウム塩基を有するエ
ポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
【0105】得られた樹脂に製造例1で得られたブロッ
クイソシアネート硬化剤と固形分比で70/30で均一
になるよう混合した。その後、樹脂固形分100g当た
り酸のミリ当量が25になるよう蟻酸を添加し、さらに
イオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でM
IBKを除去することにより、固形分が36%のブロッ
クイソシアネート含有のアミン変性エポキシ樹脂エマル
ションを得た。
【0106】製造例3 スルホニウム変性エポキシ樹脂の製造 撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を
装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソ
シアネート(重量比=8/2)87部、MIBK85部
およびジブチル錫ジラウレート0.1部を仕込んだ。反
応混合物を撹拌下、メタノール32部を滴下した。反応
は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。反
応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトル
の測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失
するまで継続した。
【0107】次に、ビスフェノールAとエピクロルヒド
リンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエ
ポキシ樹脂550部を反応混合物に加えて、125℃ま
で昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部
を添加し、エポキシ当量330になるまで130℃で反
応させた。
【0108】続いて、ビスフェノールA100部及びオ
クチル酸36部を加えて120℃で反応させたところ、
エポキシ当量は1030となった。その後、MIBK
107部を加え反応混合物を冷却し、SHP−100(1
-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-プロパノール、三洋化成
製) 52部、イオン交換水 21部、88%乳酸39
部を加え、80℃で反応させた。反応は酸価が5を下回
るまで継続し、3級スルホニウム塩基を有するエポキシ
樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
【0109】得られた樹脂に製造例1で得られたブロッ
クイソシアネート硬化剤と固形分比で70/30で均一
になるよう混合した。その後、イオン交換水をゆっくり
と加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することに
より、固形分が36%のブロックイソシアネート含有の
スルホニウム変性エポキシ樹脂エマルションを得た。ま
たこのエマルションの樹脂固形分100g当たりの塩基
のミリ当量は20であった。
【0110】製造例4 顔料分散樹脂の製造 まず、撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装
備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以
下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK3
9.1部で希釈した後、ここへジブチル錫ジラウレート
0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した
後、2−エチルヘキサノール131.5部を撹拌下、乾
燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却す
ることにより、反応温度を50℃に維持した。その結
果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI
(樹脂固形分90.0%)が得られた。
【0111】次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタ
ノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6
部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.
2部を順に加え、65℃で約半時間撹拌して、4級化剤
を調製した。
【0112】次に、エポン(EPON)829(シェル
・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキ
シ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部と
ビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕
込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したとこ
ろ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜16
0℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した
後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロッ
ク化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
【0113】反応混合物を110〜120℃に約1時間
保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル
463.4部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、
均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添
加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃
に保持した後、脱イオン水964部を加えて、エポキシ
−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4
級アンモニウム塩部分を有する顔料分散用樹脂を得た
(樹脂固形分50%)。
【0114】製造例5 顔料分散ペーストの製造 サンドグラインドミルに製造例5で得た顔料分散用樹脂
を120部、カーボンブラック2.0部、カオリン10
0.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸
アルミニウム18.0部およびイオン交換水221.7
部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料
分散ペーストを得た(固形分48%)。
【0115】製造例6 アンモニウム基を有するアクリル樹脂の製造 反応容器にブチルセルソルブ120部を入れ120℃に
加熱攪拌した。ここにt−ブチルパーオキシ−2−エチ
ルヘキサノエート2部およびブチルセルソルブ10部を
混合した溶液と、グリシジルメタクリレート15部、2
−エチルヘキシルメタクリレート50部、2−ヒドロキ
シエチルメタクリレート20部およびn−ブチルメタク
リレート15部からなるSP値が10.1であるモノマ
ー混合物とを3時間で滴下した。30分間エージングし
た後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエー
ト0.5部およびブチルセルソルブ5部を混合した溶液
を30分で滴下し、2時間のエージングを行った後、冷
却した。ポリスチレン換算のGPCにより求められた、
このエポキシ基を有するアクリル樹脂の数平均分子量は
12000、重量平均分子量は28000であった。こ
こにN,N−ジメチルアミノエタノール7部および50
%乳酸水溶液15部を加えて80℃で加熱攪拌すること
により4級化を行った。酸価が1以下になり、粘度上昇
が止まった時点で加熱を停止し、アンモニウム基を有す
るアクリル樹脂を得た。このアンモニウム基を有するア
クリル樹脂の1分子あたりのアンモニウム基の個数は
6.0個であった。
【0116】製造例7 架橋樹脂粒子の製造 反応容器に、製造例6で製造したアンモニウム基を有す
るアクリル樹脂 20部と脱イオン水270部とを加
え、75℃で加熱攪拌した。ここに2,2’−アゾビス
(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)1.
5部の酢酸100%中和水溶液を5分かけて滴下した。
5分間エージングした後、メチルメタクリレート30部
を5分かけて滴下した。さらに5分間エージングした
後、製造例6で製造したアンモニウム基を有するアクリ
ル樹脂 70部と脱イオン水250部とを混合した溶液
にメチルメタクリレート170部、スチレン40部、n
−ブチルメタクリレート30部、グリシジルメタクリレ
ート5部およびネオペンチルグリコールジメタクリレー
ト30部からなるα,β−エチレン性不飽和モノマー混
合物を加え攪拌して得られたプレエマルションを40分
かけて滴下した。60分間エージングした後、冷却し、
架橋樹脂粒子の分散液を得た。得られた架橋樹脂粒子の
分散液の不揮発分は35%、pHは5.0、平均粒子径
は100nmであった。
【0117】実施例1 製造例2で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルショ
ンと製造例3で得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂
エマルションとを固形分比で70/30で混合し、さら
に製造例7で得られた架橋樹脂粒子を、前記で混合によ
り得られた樹脂エマルションに、その樹脂固形分の7重
量%となるように加えた。またジブチル錫オキサイドを
樹脂固形分の合計に対し1重量%分加えた後に、固形分
が25%となるようにイオン交換水を加えて実施例1の
カチオン電着塗料組成物を得た。またこの塗料の最低造
膜温度を測定したところ29℃であった。
【0118】実施例2 実施例1と同様にして製造例2で得られたアミン変性エ
ポキシ樹脂エマルションと製造例3で得られたスルホニ
ウム変性エポキシ樹脂エマルションとを固形分比で50
/50にし、さらに製造例7で得られた架橋樹脂粒子
を、前記で混合により得られた樹脂エマルションに、そ
の樹脂固形分の12重量%となるように加える事以外は
同様にして、実施例2のカチオン電着塗料組成物を得
た。またこの塗料の最低造膜温度を測定したところ34
℃であった。
【0119】実施例3 実施例2と同じ比率で混合されたエマルションに、製造
例7で得られた架橋樹脂粒子を混合された樹脂エマルシ
ョンの樹脂固形分に対し3重量%加えた後に、製造例5
の顔料分散ペーストを顔料分と合計の樹脂分の固形分比
率で1/10となるよう顔料分散ペーストを添加し、さ
らにジブチル錫オキサイドを樹脂固形分に対し1重量%
分とイオン交換水を加えて固形分が25%である実施例
3のカチオン電着塗料組成物を得た。またこの塗料の最
低造膜温度を測定したところ32℃であった。
【0120】比較例1 製造例2で得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルショ
ンにn−ヘキシルセロソルブを樹脂固形分に対し5重量
%分添加し、さらにジブチル錫オキサイドが樹脂固形分
に対し1重量%分とイオン交換水を添加し固形分濃度が
20%となるよう希釈し、比較例1のカチオン電着塗料
組成物を得た。またこの塗料の最低造膜温度を測定した
ところ19℃であった。
【0121】比較例2 製造例3で得られたスルホニウム変性エポキシ樹脂エマ
ルションにジブチル錫オキサイドを樹脂固形分に対し1
重量%分加え、さらにイオン交換水で固形分濃度が30
%となるよう希釈し、比較例2のカチオン電着塗料組成
物を得た。またこの塗料の最低造膜温度を測定したとこ
ろ32℃であった。
【0122】実施例および比較例で得られたカチオン電
着塗料組成物と焼き付けて得られたカチオン電着塗膜に
ついて、以下の評価試験を行い、その結果を表3に示し
た。
【0123】<つきまわり性>つきまわり性は、いわゆ
る4枚ボックス法により評価した。すなわち、図1に示
すように、4枚のリン酸亜鉛処理鋼板(JIS G 3141 SPC
C-SDのサーフダインSD-5000(日本ペイント社製)処
理)11〜14を、立てた状態で間隔20mmで平行に
配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁
体で密閉したボックス10を調製した。なお、鋼板14
以外の鋼板11〜13には下部に8mmφの貫通穴15
が設けられている。
【0124】カチオン電着塗料4リットルを塩ビ製容器
に移して第1の電着浴とした。図2に示すように、上記
ボックス10を、被塗装物として電着塗料21を入れた
電着塗装容器20内に浸漬した。この場合、各貫通穴1
5からのみ塗料21がボックス10内に侵入する。
【0125】マグネチックスターラー(非表示)で塗料
21を撹拌した。そして、各鋼板11〜14を電気的に
接続し、最も近い鋼板11との距離が150mmとなる
ように対極22を配置した。各鋼板11〜14を陰極、
対極22を陽極として電圧を印加して、鋼板にカチオン
電着塗装を行った。塗装は、印加開始から5秒間で鋼板
11のA面に形成される塗膜の膜厚が20μmに達する
電圧まで昇圧し、その後175秒間その電圧を維持する
ことにより行った。このときの浴温は30℃に調節し
た。
【0126】塗装後の各鋼板は、水洗した後、170℃
で25分間焼き付けし、空冷後、対極22に最も近い鋼
板11のA面に形成された塗膜の膜厚と、対極22から
最も遠い鋼板14のG面に形成された塗膜の膜厚とを測
定し、膜厚(G面)/膜厚(A面)の比(G/A値)に
よりつきまわり性を評価した。この値が大きいほどつき
まわり性が良いと評価できる。
【0127】<亜鉛鋼板適性>化成処理を行った合金化
溶融亜鉛めっき鋼板に、200V、220V、240
V、260V、280Vへそれぞれ5秒で昇圧後、17
5秒で電着した後、水洗し、170℃で25分間焼き付
けし、塗面状態を観察した。クレーターが発生した電圧
が高いほど亜鉛鋼板適性が良いと評価できる。
【0128】<塗装外観>得られたカチオン電着塗料
を、りん酸亜鉛処理鋼鈑に対して、焼付け後の膜厚が1
0μmになるような電圧で電着塗装し、170℃で25
分間焼付けを行って硬化膜を得た。この塗膜の表面粗度
(Ra)を、表面粗さ計サーフテスト−211(ミツト
ヨ社製)を用いて、カットオフ0.8mmおよび走査長
4.0mmの条件で測定した。測定で得られたRa値は
小さいほど平滑であることを示している。
【0129】<耐はじき性>りん酸亜鉛処理鋼鈑に対し
て、焼付け後の膜厚が10μmになるような電圧で電着
塗装し、水洗し、10分間室温放置したウエット板(1
0cm×15cmの電着塗装された鋼板)を水平に置い
た。次に、試験板の中央に直径15mm、高さ5mmの
アルミホイル製のカップを両面テープで貼付った。この
アルミホイル製カップに防錆油と水をスポイトで1滴づ
つ入れ、ウエット板ごとを170℃に設定したオーブン
中に水平に維持して25分間焼付けた。焼付け後のウエ
ット板上の電着塗膜表面上に油が飛散して発生したクレ
ーター等の塗膜異常の程度を、以下の評価基準により目
視評価する。
【0130】
【表1】
【0131】<塩水浸積耐食性>カチオン電着塗料組成
物をリン酸亜鉛処理した冷延鋼板に乾燥塗膜の膜厚が1
0μmになるように電着を行った。これを170℃で2
5分焼き付けて得られたカチオン電着塗膜を、5%食塩
水に55℃で240時間浸漬した後、カット部をテープ
剥離した。カット部両側の剥離幅を以下の基準で評価し
た。
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】実施例の結果により、本願発明のカチオン
電着塗料組成物は亜鉛鋼板適性、塗膜外観が良好で、塩
水環境耐食性が従来と同等に維持されつつ、つきまわり
性及び耐はじき性に優れていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 つきまわり性を評価する際に用いるボックス
の一例を示す斜視図である。
【図2】 つきまわり性の評価方法を模式的に示す断面
図である。
【符号の説明】
10…ボックス、 11〜14…リン酸亜鉛処理鋼板、 15…貫通穴、 20…電着塗装容器、 21…電着塗料、 22…対極。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C25D 13/06 C25D 13/06 E 13/10 13/10 B (72)発明者 山田 光夫 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 Fターム(参考) 4J038 CG002 CH032 CH192 DB061 DB281 DB391 DB401 DG161 DG301 GA08 GA09 GA11 GA13 JA37 JB18 JC15 KA02 KA03 KA04 KA06 KA08 LA02 MA02 MA10 MA14 NA23 NA27 PB07 PC02

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水性媒体、水性媒体中に分散するか又は
    溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシ
    アネート硬化剤を含むバインダー樹脂、架橋樹脂粒子、
    中和酸、有機溶媒、金属触媒を含有する無鉛性カチオン
    電着塗料組成物において、 該カチオン性エポキシ樹脂がアミン変性エポキシ樹脂及
    びスルホニウム変性エポキシ樹脂を含み、 該アミン変性エポキシ樹脂及び該ブロックイソシアネー
    ト硬化剤の合計100gに含まれるアミノ基を中和する
    のに必要な酸のミリ当量数が5〜30であり、 該スルホニウム変性エポキシ樹脂及び該ブロックイソシ
    アネート硬化剤の合計100gに含まれるスルホニウム
    塩基のミリ当量数が5〜30であり、 被塗物に電着された塗膜の最低造膜温度(MFT)が2
    0〜35℃であり、 該架橋樹脂粒子の含有量が塗料樹脂固形分の3〜20重
    量%であり、 該架橋樹脂粒子が、アンモニウム基を有するアクリル樹
    脂を乳化剤として、α,β−エチレン性不飽和モノマー
    混合物を乳化重合することにより得られたものである無
    鉛性カチオン電着塗料組成物。
  2. 【請求項2】 前記アミン変性エポキシ樹脂とスルホニ
    ウム変性エポキシ樹脂との重量比が10/90〜90/
    10の範囲である請求項1記載の無鉛性カチオン電着塗
    料組成物。
  3. 【請求項3】 前記中和酸が酢酸、乳酸、ギ酸、スルフ
    ァミン酸、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロー
    ルブタン酸からなる群から選択される1種以上である請
    求項1記載の無鉛性カチオン電着塗料組成物。
  4. 【請求項4】 更に顔料を含み、塗料組成物中に含まれ
    る顔料と樹脂固形分との重量比が1/9以下である請求
    項1記載の無鉛性カチオン電着塗料組成物。
  5. 【請求項5】 前記α,β−エチレン性不飽和モノマー
    混合物が、分子内にα,β−エチレン性不飽和結合を2
    個以上有するポリ(メタ)アクリレートを5〜20重量
    %の量で含有する請求項1記載のカチオン電着塗料組成
    物。
  6. 【請求項6】 前記アンモニウム基を有するアクリル樹
    脂のアンモニウム基の個数が、1分子あたり2〜15個
    である請求項1記載の無鉛性カチオン電着塗料組成物。
  7. 【請求項7】 前記アンモニウム基を有するアクリル樹
    脂が、エポキシ基を有するアクリル樹脂に3級アミン化
    合物と有機酸とを加えて4級化することにより得られる
    ものである、請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  8. 【請求項8】 前記エポキシ基を有するアクリル樹脂の
    数平均分子量が、5000〜20000である請求項7
    記載のカチオン電着塗料組成物。
  9. 【請求項9】 前記アンモニウム基を有するアクリル樹
    脂がさらにブロックイソシアネート基を有するものであ
    る請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
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