JP2002356477A - ラクタム製造方法 - Google Patents

ラクタム製造方法

Info

Publication number
JP2002356477A
JP2002356477A JP2002058785A JP2002058785A JP2002356477A JP 2002356477 A JP2002356477 A JP 2002356477A JP 2002058785 A JP2002058785 A JP 2002058785A JP 2002058785 A JP2002058785 A JP 2002058785A JP 2002356477 A JP2002356477 A JP 2002356477A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
reaction
oxime
acid
pressure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002058785A
Other languages
English (en)
Inventor
Kiyotaka Hatada
清隆 畑田
Osamu Sato
佐藤  修
Yutaka Ikushima
豊 生島
Kazuo Torii
一雄 鳥居
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2002058785A priority Critical patent/JP2002356477A/ja
Publication of JP2002356477A publication Critical patent/JP2002356477A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温高圧水下でのラクタムの効率的な連続製
造方法を提供する。 【解決手段】 流通させている高温高圧水条件下の反応
場に反応基質としてオキシムと酸を、あるいは流通させ
ている酸を含有した高温高圧水にオキシムを導入して、
該反応基質を所定の高温高圧条件に短時間で昇温して反
応させることによってオキシムの加水分解反応を抑制し
て、ラクタムを効率的に合成することを特徴とするラク
タムの製造方法であり、250℃以上の温度範囲及び1
5MPa以上の圧力範囲である高温高圧水条件下で酸触
媒を用いてオキシムからラクタムを高速で効率的且つ連
続的に合成することを可能とするラクタムの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温高圧水条件下
でオキシムからラクタムを連続的に製造する方法に関す
るものであり、更に詳しくは、高温高圧水条件下でオキ
シムの転位反応を酸を用いて行ないラクタムを連続的に
製造する新規な連続製造方法に関するものである。さら
に詳しくいえば、本発明は、従来の発煙硫酸を触媒とし
た製造方法に見られるような、使用した多量の廃硫酸の
中和処理を必要としないラクタムの製造を可能とするも
のであり、産業技術としては好適かつ有用な方法を提供
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ナイロン6の原料となるε−カプ
ロラクタムのようなラクタムを工業的に生産するには、
シクロヘキサノンオキシムといったカルボニル化合物の
オキシムからベックマン転位反応によって製造されてい
る。この転位反応には発煙硫酸のような高濃度の酸触媒
が使用されているが、煮沸して反応させるため系内にお
ける水の存在は微量であってもオキシムが加水分解を起
こし、ラクタムの収率を低下させる。これを防ぐため、
酸触媒として発煙硫酸を使用し、煮沸して反応させる方
法が一般的となっている。この方法は、苛酷な条件下で
発煙硫酸を用いて反応させるため、装置材料の腐食、あ
るいは製造工程の危険性と共に副生成物である硫酸アン
モニウムの処理に問題があることが知られている。ラク
タムを回収する際に使用した硫酸はアンモニアで中和処
理する必要があり、硫安(硫酸アンモニウム)が、ラク
タム1kg当たり2kg以上副生する。硫安は、商品価
値が低いため、利用が困難となってきており、その処理
が必要とされている。近年、地球環境の悪化の懸念が高
まりつつあり、化学工業分野において危険物質を使用し
ないで、且つ簡単で効率的な、さらには短時間で反応が
終了するような環境調和型の化学プロセスの開発が求め
られている。ラクタムの製造プロセスにおいては、装置
材料腐食、操作上の安全性や環境面で問題がある発煙硫
酸を使用しないで、且つ効率的な新たな製造プロセスの
開発が要望されてきている。
【0003】上記課題を解決する方法として、発煙硫酸
等の酸触媒を全く使用せず高温高圧水下で反応させる方
法として、(1)バッチ式合成法(O. Sato, Y. Ikushi
ma and T. Yokoyama, Journal of Organic Chemistry 1
998, 63, 9100-9102)と、(2)流通式合成法(Y. Ikus
hima, K. Hatakeda, O. Sato, T. Yokoyama and M. Ara
i, Journal of American Chemical Society 2000, 122,
1908-1918) の2つの方法が提案されている。(1)の
バッチ式合成法では、内容積10mlのステンレス管に
シクロヘキサノンオキシムを封入し、塩浴中に入れて2
0〜30秒で200〜400℃に昇温し、3分間程度反
応させて生成物を得ている。この方法は、大量生産プロ
セスとしては不向きであると考えられるが、発煙硫酸な
どの高濃度酸触媒を使用しない合成法として着目されて
いる。しかし、一回ごとに反応を終結させるため操作が
断続的で、設定温度へ到達するのに20〜30秒程度の
時間を要する。従って、昇温時に加水分解生成物である
シクロヘキサノンが多量に生成しやすく、目的のε−カ
プロラクタムの収率がかなり低くなる欠点を有する。ま
たシクロヘキサノンはシクロヘキサノンオキシムの原料
であるので、反応が逆方向に進行することになり、工業
プロセスとしては致命的な欠点となる。一方、(2)の
流通式合成法は、操作が連続的で大量生産するには好適
であると考えられるが、室温のシクロヘキサノンオキシ
ム水溶液を加熱して高温高圧のキャリヤー水としている
ため、設定反応温度へ到達するのに時間を要すると考え
られる。従って、350℃及び22.1MPa条件下で
113秒、反応させた実験では生成物としてシクロヘキ
サノンだけが得られ、ε−カプロラクタムは全く生成し
ていない結果が示されている。また、374.5℃の結
果でも、ε−カプロラクタムとシクロヘキサノンが生成
していることが報告されている。従って、この方法は、
(1)のバッチ式合成法と同様に昇温に時間がかかり、
溶媒である水が例えば100−300℃の水熱状態を経
る間にシクロヘキサノンオキシムの加水分解反応による
多量のシクロヘキサノンが生成して、目的のε−カプロ
ラクタムの収率が低くなる欠点を有すると考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中
で、本発明者らは、上記、従来技術に鑑みて、高温高圧
水下でオキシムからのラクタムの製造方法について種々
研究を進める過程で、高温高圧水条件下で、オキシムか
らラクタムを連続的に効率よく製造するためには、酸存
在下でオキシムを短時間で設定反応温度に上昇させるこ
とが重要であることを見出し、かかる知見に基づいて更
に研究を重ねて、本発明を完成させるに至った。即ち、
本発明は、高温高圧水中にオキシムと酸を導入して、あ
るいは酸を含有する高温高圧水中にオキシムを導入し
て、基質物質の昇温時間を短縮して反応させ、シクロヘ
キサノンの生成を抑制してラクタムを効率的に製造する
方法を提供することを目的としてなされたものである。
本発明者らが、種々の実験を経て開発した本発明の合成
法は、例えば、オキシム水溶液或いはオキシムと酸を直
接高温高圧水条件下の反応場に連続的に導入させ、短時
間で反応設定温度に到達させることによりオキシムの加
水分解反応を抑制し、酸によりオキシムの転移反応を促
進させ、カプロラクタムを従来法より短時間で効率的に
製造する方法である。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明は、以下の技術的手段から構成される。 (1)高温高圧水条件下の反応場に反応基質としてオキ
シムと酸を導入して、該反応基質を所定の高温高圧条件
に短時間で昇温して反応させることによりオキシムの加
水分解反応を抑制してラクタムを合成することを特徴と
するラクタムの製造方法。 (2)連続的に流通させている高温高圧水にオキシムと
酸を溶解した基質水溶液を導入して、所定の高温高圧条
件下で反応させることを特徴とする前記(1)記載のラ
クタムの製造方法。 (3)連続的に流通させている高温高圧水にオキシムと
酸を別々に導入して、所定の高温高圧条件下で反応させ
ることを特徴とする前記(1)記載のラクタムの製造方
法。 (4)酸を含有する高温高圧水中にオキシムを導入し
て、所定の高温高圧条件に短時間で昇温して反応させる
ことを特徴とするラクタムの製造方法。 (5)連続的に流通させている酸を含有する高温高圧水
中にオキシム、あるいはオキシムを溶解した基質水溶液
を導入して、所定の高温高圧条件下で反応させることを
特徴とする前記(4)記載のラクタムの製造方法。 (6)溶融したオキシムを導入して、所定の高温高圧条
件下で反応させることを特徴とする前記(1)から
(5)のいずれかに記載のラクタムの製造方法。 (7)250℃以上の温度範囲及び15MPa以上の圧
力範囲である高温高圧水条件下でオキシムを反応させる
ことを特徴とする前記(1)から(6)のいずれかに記
載のラクタムの製造方法。 (8)オキシムを所定の高温高圧条件に3秒以内の短時
間で昇温させて反応させることを特徴とする前記(1)
から(7)のいずれかに記載のラクタムの製造方法。 (9)オキシムを所定の高温高圧条件で60秒以内の時
間で反応させることを特徴とする前記(1)から(8)
のいずれかに記載のラクタムの製造方法。 (10)酸として硫酸、塩酸、硝酸及び酢酸の中から選
択される1種以上を使用することを特徴とする前記
(1)から(5)のいずれかに記載のラクタムの製造方
法。 (11)オキシムとしてシクロヘキサノンオキシムを使
用することを特徴とする前記(1)から(9)のいずれ
かに記載のラクタムの製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】次に、本発明について更に詳細に
説明する。本発明の説明を容易にするために、以下、オ
キシムと酸を含有する水溶液を、高温高圧水に導入する
ことにより例えば3秒以内の短時間で250〜400℃
の反応温度に到達させ、15〜40MPaの反応圧力条
件下で、ラクタムを製造する場合を例にとって詳細に説
明する。本発明者らが、種々の実験を経て開発した本発
明の製造方法は、例えば、流通させている高温高圧水条
件下の反応場にシクロヘキサノンオキシムと酸を含有す
る水溶液を連続的に導入し、3秒以下の短時間で反応設
定温度に到達させることにより加水分解反応を抑制し
て、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によってε−
カプロラクタムを合成する方法である。本発明では、高
温高圧水を反応場あるいは反応溶媒として用い、酸を触
媒として使用するオキシムからラクタムを効率的に製造
する方法であり、有機溶媒は反応に必要としない。また
ε−カプロラクタム等のラクタムを分離精製する場合に
使用した酸を中和する必要がない。従って、この方法を
用いれば、処理しなければならない廃溶媒あるいは硫安
といった類の廃棄物はほとんど排出されない。さらに、
シクロヘキサノンオキシムの加水分解反応によるシクロ
ヘキサノンは微少量しか生成しない。未反応の供給原料
や、酸あるいは水溶液は本発明の反応に再使用すること
が可能である。更に、本発明の方法は、製品を効率よく
連続的に高速で製造できることから、ラクタムの製造方
法の手段として最も好適な方法であると考えられる。
【0007】本発明のラクタムの製造方法について、以
下に説明する。本発明では、例えば、オキシム水溶液或
いはオキシムを酸と一緒にあるいは別々に、高温高圧水
条件下の反応場に連続的に導入させることにより、短時
間で反応設定温度に到達させ、オキシムの加水分解反応
を抑制して酸の存在下でラクタムを選択的に、且つ従来
法より短い反応時間で効率的に製造することができる。
酸を全く導入しない高温高圧水条件下でもこの反応は進
行するが、反応収率が低くくなる場合が多く、本発明で
は、酸を反応に関与させることにより反応効率を促進さ
せることができ、ラクタムの効率的製造方法としてより
優れている。
【0008】本発明において、基質原料として使用され
るオキシムは下記の一般式(1)で表され、n=1〜9
およびR=Hあるいはアルキル基である。アルキル基と
してはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等炭
素数1〜20のものはいずれも使用できる。オキシムを
例示すれば、例えばシクロヘキサノンオキシムを挙げる
ことができるが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0009】
【化1】
【0010】本発明で得られるラクタムは下記の一般式
(2)で表され、n=1〜9およびR=Hあるいはある
いはアルキル基である。アルキル基としてはメチル基、
エチル基、プロピル基、ブチル基等炭素数1〜20のも
のはいずれも使用できる。
【0011】
【化2】
【0012】本発明で得られるラクタムは五員環ラクタ
ム、六員環ラクタム、七員環ラクタム等の五員環以上の
多員環ラクタムである。例えばε−カプロラクタム、γ
−ブチルラクタム、γ−バレロラクタム、δ−バレロラ
クタム等が挙げられるが、本発明はこれらに限定される
ものではない
【0013】本発明によるラクタムの製造の具体例とし
て、例えば七員環ラクタムの製造例として、シクロヘキ
サノンオキシムからのε−カプロラクタム合成の反応式
を下記の一般式(3)に示す。
【0014】
【化3】
【0015】オキシムのベックマン転移反応によるラク
タムの合成は発煙流酸触媒の存在下で進行することが知
られている。本発明の高温高圧水反応下で低濃度の酸を
用いることにより、オキシムのベックマン転移反応によ
るラクタムが効率的に製造できることは興味深い事実で
ある。高温高圧水中ではプロトンの生成あるいは水分子
構造の分極などによって酸触媒機能が発現している可能
性が推察されており、オキシムのベックマン転移反応に
よるラクタムが生成する。さらに、本発明のごとく、低
濃度の酸を加えることにより、更にオキシムのベックマ
ン転移反応が効率的に進行するのは非常に興味深い結果
といえる。高温高圧水に関する今後の物理化学的研究の
展開による更なる検証を期待したい。
【0016】本発明によれば、基質であるオキシムを短
時間で所定の高温高圧条件に設定できるためオキシムの
加水分解反応を抑制でき、その反応場に酸を存在させる
ことにより、ラクタムを高効率的に製造することができ
る。なお、本反応では少量のアミノ酸が生成する場合が
ある。例えば、シクロヘキサノンオキシムからのε−カ
プロラクタム合成を温度375℃、圧力40MPaの高
温高圧条件下で0.728秒間反応させた場合、反応基
質の1.4%モル濃度の塩酸を存在させることにより、
ε−カプロラクタムの収率96.2%及び6−アミノカ
プロン酸の収率3.5%が得られた。酸が存在しない場
合は、ε−カプロラクタムの収率41.4%及び6−ア
ミノカプロン酸の収率0.3%であった。6−アミノカ
プロン酸からのε−カプロラクタムへの変換は比較的容
易であり、高温高圧水中においてもこの反応は簡単に進
行する。この2つの反応において加水分解反応物である
シクロヘキサノンは微少量しか検出されなかった。
【0017】本発明における高温高圧水の原料に用いる
水は蒸留水、イオン交換水、水道水、地下水等を好適に
用いることができる。これらの原料水を高温高圧水とし
て使用する際、溶存酸素は高温高圧水、特に超臨界水と
して使用する場合は有機物質を酸化分解する可能性があ
るため、予め窒素ガス等でバブリングして除去してから
用いるのが望ましい。亜臨界状態で高温高圧水を使用す
る場合は、原料水から溶存酸素を特に除去する必要はな
いが、除去して使用してもよい。
【0018】本発明において使用する酸は鉱酸であって
も、有機酸であってもいずれも触媒として用いることが
できる。硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、炭酸などの鉱酸
は好適に用いることができる。また酢酸、蓚酸、乳酸、
酒石酸等の有機酸はいずれも好適に使用できる。これら
の酸は1種類で触媒として用いることができるが、2種
以上の酸を混合して用いてもよい。反応に使用する酸は
反応基質であるオキシムと一緒にあるいは別々に送水ポ
ンプを用いて高温高圧水中に導入することができる。予
めキャリヤー水中に酸を混合しておいて使用することも
できる。使用する酸の濃度はキャリヤー水の最初の温
度、反応圧力、キャリヤー水の流速、オキシム水溶液あ
るいはオキシムの導入流速、オキシムの導入量、反応器
の形態、反応器容量等によって変化させることができ
る。酸の濃度は0.001mM〜10Mの濃度範囲を好
適に選択できる。より好適には、酸の濃度は0.01m
M〜5Mの濃度範囲を選択できる。さらに好適には酸の
濃度は0.01mM〜3Mの濃度範囲を選択できる。最
も好適には酸の濃度は0.01mM〜1Mの濃度範囲を
選択できる。
【0019】本発明で用いられる高温高圧水は反応器の
外からヒーターや溶融塩等を用いて温度を制御できる。
あるいは反応器内で内熱方式で温度制御することも可能
である。また、予め高温高圧水を製造しておき、外部か
ら送水ポンプ等を用いて反応器内に注入して反応させる
こともできる。温度圧力条件の異なる2種類以上の高温
高圧水を反応系に供給して反応条件を制御することも可
能である。反応容器内での圧力は流通式であれば圧力調
整弁で制御することができる。更に、窒素ガスなど他の
気体を注入することによって圧力をコントロールするこ
ともできる。一般的には使用する圧力は使用温度におけ
る自生圧力以上であればよい。基本的には、温度250
℃以上及び圧力15MPa以上の高温高圧水条件下であ
れば本発明は達成される。温度300℃以上及び圧力1
5MPa以上の高温高圧水条件下では、より好適に本発
明を達成できる。350℃〜420℃の温度範囲及び2
0MPa〜50MPaの圧力範囲である高温高圧水条件
を選択すれば、更に好適に本発明は達成される。350
℃〜400℃の温度範囲及び30MPa〜50MPaの
圧力範囲である高温高圧水条件を選択すれば、最も好適
に本発明は達成される。最適の温度条件は処理時間によ
っても変化するが、一般に、350℃から400℃の温
度範囲を好適に選択できる。また、処理量や反応装置に
よって適宜の温度及び圧力条件を採用することができ
る。本発明では350℃から400℃の温度範囲で反応
が最も進行する傾向が認められる。また圧力が高い程反
応が促進される傾向が認められる。反応装置としては、
例えば、高温・高圧反応装置が使用されるが、これに限
らず、高温高圧水条件下の反応系を設定できる装置であ
れば、その種類は制限されない。ここで、好適な反応装
置として、例えば、本発明で使用した流通式高温高圧反
応装置及び溶融オキシム導入型流通式高温高圧反応装置
が例示される。
【0020】本発明では流通させている高温高圧水中あ
るいは酸を含有した高温高圧水中に、例えば室温のオキ
シム水溶液やオキシムあるいは酸を直接導入しているた
め、混合後の温度が低下する。混合後の温度低下の割合
はキャリヤー水の最初の温度、反応圧力、キャリヤー水
の流速、オキシム水溶液やオキシムの導入流速、オキシ
ムの導入量、酸の導入速度、酸の濃度、酸の導入量、反
応器の形態、反応器容量等によって変化する。通常、キ
ャリヤー水の最初の温度は設定温度より5〜300℃程
度高い温度を適宜選択して使用することによって経験的
に設定温度を調節できる。
【0021】本発明の最も特徴的なことは、上記に記述
したように設定温度より5〜300℃程度高い温度の高
温高圧水中にオキシムを導入することによってオキシム
の昇温時間が3秒以下の短時間になることである。この
ことにより、オキシム加水分解反応を抑制でき、添加し
た酸の触媒機能によりラクタムの選択性や収率を更に飛
躍的に向上することができる。より好適なオキシムの昇
温時間は1秒以下であることが好ましく、更に好適なオ
キシムの昇温時間は0.5秒以下であることが好まし
く、及び最も好適なオキシムの昇温時間は0.3秒以下
であることが好ましい。
【0022】特に超臨界状態のキャリヤー水を使用した
場合は、液体のキャリヤー水に比べて流体の粘度が低下
し、拡散係数が大きくなるため、混合速度が急激に速く
なっていると考えられる。また、超臨界点に近い亜臨界
水条件以上の高温高圧水では誘電率が低下して有機物溶
解度が急激に大きくなっていくことが知られており、同
様にオキシムの溶解度も大きくなり、転移反応に好適な
条件を与えると考えられる。
【0023】反応条件は使用するオキシムの種類及び濃
度、反応管体積、高温高圧水条件等によって変化する。
本発明では、反応に用いるオキシムは1種類に限定され
る物でなく、2種類以上の混合物を用いても反応は好適
に進行する。オキシムを溶融して高温高圧水中に導入し
て溶解できるが、直接オキシムの粉末を高温高圧水中に
導入してもよい。また予め室温でオキシムを溶解させた
基質水溶液を高温高圧水中に導入することもできる。流
通方式のキャリヤー水として用いる高温高圧水の流速及
び反応基質であるオキシムの導入流速を制御することに
よって反応器に導入するオキシムの濃度をコントロール
できる。通常、反応器に導入するオキシムの濃度として
は1mMから10Mの濃度範囲で選択できる。好適には
2mMから5Mの間の適宜な濃度の値を選択でき、最も
好適には2mMから2Mの間の適宜な濃度の値が選択さ
れるが、本発明はこれらの濃度の値に限定されるもので
はない。本発明では、オキシムの種類に応じて、反応系
の温度、圧力、反応器内径、反応器体積、流速、酸濃
度、酸に種類、反応基質の濃度、反応時間等を調節する
ことによって、ラクタムの反応収率を操作することがで
きる。
【0024】本発明の反応系は、温度250℃以上、及
び圧力15MPa以上の高温高圧水中に上記反応基質の
オキシムと酸を存在させればよく、その際、例えば、金
属イオン、金属担持触媒、固体酸、固体塩基等の固体触
媒あるいは酵素等は特に添加する必要がなく、また、有
機溶媒を使用する必要もない。本発明は、基本的には、
高温高圧水中に上記反応基質と酸を存在させて、有機溶
媒を反応に関与させることなく、オキシムよりラクタム
を合成することを最大の特徴としているが、必要に応じ
て、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の
有機溶媒、金属イオン、金属担持触媒、固体酸、固体塩
基等の固体触媒あるいは酵素を添加して反応させても一
向にさしつかえない。
【0025】本発明では、上記反応系により、例えば、
反応時間0.001秒から60秒の短時間でオキシムか
らラクタムが合成される。流通式反応装置を用いる場
合、反応時間は反応温度、反応圧力、高温高圧水の流
速、反応基質の導入流速、反応器の形状、反応器内径、
反応器の流通経路の長さ等を制御することによって反応
時間をコントロールできる。より好適には反応時間とし
て0.01秒から30秒の範囲の値を選択でき、更に好
適には0.05秒から30秒の範囲の値を選択でき、最
も好適には0.05秒から10秒の範囲の値を選択でき
るが、本発明はこれらの値に限定されるものではない。
【0026】本発明者らは、後記する実施例に示される
ように、高温高圧水条件下では、短時間(例えば、反応
時間1秒前後)でオキシムからラクタムへの転換反応が
可能であることを、高速液体クロマトグラフィー質量分
析装置(LC−MS装置)、核磁気共鳴スペクトル測定
装置(NMR測定装置)やフリエー赤外分光光度測定装
置(FTIR測定装置)を用いて確認している。さらに
LC−MS装置を用いることにより、オキシムやラクタ
ム及び副生成物のアミノ酸の種類を同定でき、それらの
含有量を正確に定量できる。また連続的に得られるラク
タムをイオン交換樹脂カラムによって分離精製して、F
TIR測定装置により赤外線吸収スペクトルを計測し、
純度の高い特級試薬製品のそれと比較することにより、
ラクタム種を正確に同定できる。同様にNMRスペクト
ル測定によってもラクタムの種類や純度を確認できる。
それらの構造はガスクロマトグラフィー質量分析装置
(GC−MS装置)、LC−MS装置、NMR測定装置
やFTIR装置で確認できる。
【0027】本発明で生成したラクタムの反応収率は温
度、圧力等の反応条件、酸の種類、酸の濃度、酸の導入
速度、オキシムの種類、オキシムの濃度、反応装置の形
態、反応器の大きさ、キャリヤー水の流速、オキシム導
入速度、反応時間等によって変動する。例えばε−カプ
ロラクタムの場合の反応収率は15.9%から98.0
%であった。これらのε−カプロラクタムはアミノ酸や
原料のシクロヘキサノンオキシムと混合して回収され
る。同様に、本発明によって種々のオキシムやアミノ酸
あるいはそれらの混合物から多種のラクタムが原料基質
とともに回収されるが、例えば陽イオン交換樹脂や陰イ
オン交換樹脂あるいはそれらの併用によってラクタムと
アミノ酸及び原料基質のオキシムを分離でき、更にラク
タム同士の分離も可能なので、ラクタムはその種類毎に
精製濃縮できる。副生のアミノ酸は容易にラクタムに転
換できる。また、同時に回収されたオキシムは再度原料
として用いることができる。従って、高温高圧水条件下
でオキシムを転移反応させラクタムを合成し、得られた
反応溶液に対してイオン交換樹脂を用いてラクタムを分
離精製して、高純度のラクタムを好適に製造できる。
【0028】
【作用】本発明では、高温高圧水条件下の高温熱水中
に、反応基質として所定の濃度のオキシムと酸を存在さ
せて、反応基質を短時間で昇温して、所定の高温高圧水
条件下で反応させることにより、例えば、シクロヘキサ
ノンオキシムからε−カプロラクタムが合成される。ま
た、これらのオキシム等を流通させている酸を含有する
高温高圧水に、あるいはオキシム等と酸を流通させてい
る高温高圧水に連続的に導入することにより、連続的に
それぞれのオキシムに対応した種々のラクタムを効率的
に合成することができる。これらのことから、本発明
は、上記反応系において、反応条件、反応基質のオキシ
ムの種類、オキシムの濃度、酸の種類、酸の濃度を調節
することによりラクタムを短時間で効率的に製造するこ
とを可能とする新規の連続ラクタム製造方法であり、ラ
クタム製造方法として有用である。
【0029】
【実施例】次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説
明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定され
るものではない。 実施例1 図1に示す連続式高温高圧反応装置を用い、温度375
℃、圧力40MPa及び密度0.6096g/cm3
高温高圧水条件下でAldrich Chemical
Company,Inc.社製品であるシクロヘキサ
ノンオキシム試薬(純度97%)及び酢酸を用い、転移
反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。反
応器の材料は合金C−276であり、反応器の内径:
0.325mm及び反応器の長さ:120cmで、従っ
て、反応器容積は0.0995cm3 と算出された。各
導入調製液は高圧ポンプで注入した。窒素ガスでバブリ
ングして溶存酸素を追い出した蒸留水を加熱して480
℃及び40MPaのキャリヤー水を作製し、4.0ml
/minの流速で通水した。同様に、脱酸素処理した蒸
留水を用いて22.7mMシクロヘキサノンオキシム及
び51.3mM酢酸を含有した基質溶液を調製した。室
温及び40MPaの基質溶液を1.0ml/minの流
速で反応器入り口のキャリヤー水中に導入し、混合し
た。反応器入り口から1cmに設置した熱電対(1)で
計測した混合溶液の反応温度は375℃であり、反応器
出口の熱電対(2)で計測した温度と一致し、反応器内
の温度は一定であり、キャリヤー水と基質溶液は均質に
混合していると考えられる。混合後の基質濃度及び酢酸
濃度はそれぞれ4.54mM及び10.26mMであっ
た。反応時間は0.728秒であった。従って、0.0
06秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考え
られる。反応後に回収した水溶液を高速液体クロマトグ
ラフィー質量分析装置で調べた所、主生成物としてε−
カプロラクタムと副生成物である6−アミノカプロン酸
が生成しているのが確認された。ε−カプロラクタムの
含有濃度は4.45mMであり、その反応収率は98.
0%であった。6−アミノカプロン酸の含有量は0.0
74mMであり、反応収率は1.6%であった。全く同
じ条件で、ただし酸を添加しないで実験した場合はε−
カプロラクタムと6−アミノカプロン酸及び原料のシク
ロヘキサノンオキシムが検出された。ε−カプロラクタ
ム及び6−アミノカプロン酸の収率はそれぞれ、59.
1%及び1.1%であった。従って、酢酸を添加するこ
とによってオキシムの転移反応が効率的に促進されたも
のと考えられる。
【0030】実施例2 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし、反応条件を下記の様に変更して実
施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:422℃及び30MPa キャリヤー水の流速:3.9ml/min 22.7mM基質及び8.5mM酢酸を含有する基質溶
液の温度及び圧力: 25℃及び30MPa 基質溶液の流速:1.1ml/min 反応高温高圧水の温度:350℃ 反応高温高圧水の圧力:30MPa 反応高温高圧水の密度:0.6443g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
4.99mM及び酢酸濃度は1.9mMであった。反応
時間は0.667秒であり、反応器内の温度が一定にな
っているため、0.006秒以内の短時間で混合されて
いると推察された。反応後の水溶液を高速液体クロマト
グラフィー質量分析装置で調べた所、主生成物としてε
−カプロラクタムと副生成物である6−アミノカプロン
酸が生成しているのが確認された。その他、未反応のシ
クロヘキサノンオキシムが検出された。ε−カプロラク
タムの含有濃度は2.59mMであり、反応収率は5
1.9%であった。6−アミノカプロン酸の含有量は
0.010mMであり、反応収率は0.2%であった。
全く同じ条件で、ただし酸を添加しないで実験した場合
はε−カプロラクタムと6−アミノカプロン酸及び原料
のシクロヘキサノンオキシムが検出された。ε−カプロ
ラクタム及び6−アミノカプロン酸の収率はそれぞれ、
33.4%及び0.2%であった。従って、酢酸を添加
することによってオキシムの転移反応が促進されたもの
と考えられる。
【0031】実施例3 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし、反応条件を下記の様に変更して実
施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:348℃及び15MPa キャリヤー水の流速:3.1ml/min 22.7mM基質及び0.5385M酢酸を含有する基
質溶液の温度及び圧力: 25℃及び15MPa 基質溶液の流速:2.0ml/min 反応高温高圧水の温度:300℃ 反応高温高圧水の圧力:15MPa 反応高温高圧水の密度:0.7259g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.1ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
9.02mM及び酢酸濃度は0.2112Mであった。
反応時間は0.867秒であり、反応器内の温度が一定
となっているため、0.007秒以内の短時間でキャリ
ヤー水と基質溶液が混合されていると考えられる。反応
後の水溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置
で調べた所、生成物としてε−カプロラクタムが生成し
ているのが確認された。その他、未反応のシクロヘキサ
ノンオキシムが検出された。ε−カプロラクタムの含有
濃度は2.40mMであり、反応収率は26.6%であ
った。全く同じ条件で、ただし酸を添加しないで実験し
た場合はε−カプロラクタムと原料のシクロヘキサノン
オキシムが検出された。ε−カプロラクタムの収率は
5.5%であった。従って、酢酸を添加することによっ
てオキシムの転移反応が促進されたものと考えられる。
【0032】実施例4 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし、反応条件を下記の様に変更して実
施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:345℃及び15MPa キャリヤー水の流速:3.0ml/min 22.7mM基質及び0.5385M酢酸を含有する基
質溶液の温度及び圧力: 25℃及び15MPa 基質溶液の流速:2.0ml/min 反応高温高圧水の温度:250℃ 反応高温高圧水の圧力:15MPa 反応高温高圧水の密度:0.8112g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
9.08mM及び酢酸濃度は0.2154Mであった。
反応時間は0.969秒であり、反応器内の温度が一定
となっているため、0.008秒以内の短時間でキャリ
ヤー水と基質溶液が混合されていると考えられる。反応
後の水溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置
で調べた所、生成物としてε−カプロラクタムが生成し
ているのが確認された。その他、未反応のシクロヘキサ
ノンオキシムが検出された。ε−カプロラクタムの含有
濃度は1.44mMであり、反応収率は15.9%であ
った。全く同じ条件で、ただし酸を添加しないで実験し
た場合はε−カプロラクタムと原料のシクロヘキサノン
オキシムが検出された。ε−カプロラクタムの収率は
0.6%であった。従って、酢酸を添加することによっ
てオキシムの転移反応が促進されたものと考えられる。
【0033】比較例1 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし、反応条件を下記の様に変更して実
施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:314℃及び15MPa キャリヤー水の流速:3.5ml/min 22.7mM基質及び0.5385M酢酸を含有する基
質溶液の温度及び圧力: 25℃及び15MPa 基質溶液の流速:1.5ml/min 反応高温高圧水の温度:200℃ 反応高温高圧水の圧力:15MPa 反応高温高圧水の密度:0.8746g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
6.81mM及び酢酸濃度は0.1616Mであった。
反応時間は1.066秒であり、反応器内の温度が一定
となっているため、0.009秒以内の短時間でキャリ
ヤー水と基質溶液が混合されていると考えられる。反応
後の水溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置
で調べた所、ε−カプロラクタムの生成は全く認められ
なかった。全く同じ条件で、ただし酸を添加しないで実
験した場合もε−カプロラクタムは全く検出されていな
い。
【0034】比較例2 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし、反応条件を下記の様に変更して実
施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:345℃及び9MPa キャリヤー水の流速:3.3ml/min 22.7mM基質及び0.5385M酢酸を含有する基
質溶液の温度及び圧力: 25℃及び9MPa 基質溶液の流速:1.7ml/min 反応高温高圧水の温度:300℃ 反応高温高圧水の圧力:9MPa 反応高温高圧水の密度:0.7134g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
7.72mM及び酢酸濃度0.1831Mであった。反
応時間は0.852秒であり、反応器内の温度が一定で
あるため、0.007秒以内の短時間でキャリヤー水と
基質溶液が混合されていると考えられる。反応後の水溶
液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置で調べた
所、ε−カプロラクタムの生成は全く認められなかっ
た。全く同じ条件で、ただし酸を添加しないで実験した
場合もε−カプロラクタムは全く検出されていない。
【0035】実施例5 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし、硝酸を用いて反応条件を下記の様
に変更して実施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:500℃及び40MPa キャリヤー水の流速:3.8ml/min 22.1mM基質及び1.6mM硝酸を含む基質溶液の
温度及び圧力: 25℃及び40MPa 基質溶液の流速:1.2ml/min 反応高温高圧水の温度:380℃ 反応高温高圧水の圧力:40MPa 反応高温高圧水の密度:0.5948g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
5.30mM及び硝酸濃度は0.38mMであった。反
応時間は0.710秒であり、反応器内の温度が一定と
なっているため、0.006秒以内の短時間で混合され
ていると考えられる。反応後の水溶液を高速液体クロマ
トグラフィー質量分析装置で調べた所、主生成物として
ε−カプロラクタムと副生成物である6−アミノカプロ
ン酸が生成しているのが確認された。ε−カプロラクタ
ムの含有濃度は5.14mMであり、反応収率は97.
0%であった。6−アミノカプロン酸の含有量は0.1
5mMであり、反応収率は2.8%であった。
【0036】実施例6 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし、塩酸を用いて反応条件を下記の様
に変更して実施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:500℃及び40MPa キャリヤー水の流速:3.7ml/min 22.1mM基質及び0.30mM塩酸を含有する基質
溶液の温度及び圧力: 25℃及び40MPa 基質溶液の流速:1.3ml/min 反応高温高圧水の温度:375℃ 反応高温高圧水の圧力:40MPa 反応高温高圧水の密度:0.6096g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
5.75mM及び塩酸濃度は0.078mMであった。
反応時間は0.728秒であり、反応器内の温度が一定
となっているため、0.006秒以内の短時間で混合さ
れていると考えられる。反応後の水溶液を高速液体クロ
マトグラフィー質量分析装置で調べた所、主生成物とし
てε−カプロラクタムと副生成物である6−アミノカプ
ロン酸が生成しているのが確認された。ε−カプロラク
タムの含有濃度は5.53mMであり、反応収率は9
6.2%であった。6−アミノカプロン酸の含有量は
0.20mMであり、反応収率は3.5%であった。
【0037】実施例7 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし硫酸を用い、反応条件を下記の様に
変更して実施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:550℃及び40MPa キャリヤー水の流速:3.8ml/min 22.1mM基質及び0.5mM硫酸を含有する基質溶
液の温度及び圧力: 25℃及び40MPa 基質溶液の流速:1.2ml/min 反応高温高圧水の温度:380℃ 反応高温高圧水の圧力:40MPa 反応高温高圧水の密度:0.5948g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
5.30mM及び硫酸濃度は0.12mMであった。反
応時間は0.710秒であり、反応器内の温度が一定と
なっているため、0.006秒以内の短時間で混合され
ていると考えられる。反応後の水溶液を高速液体クロマ
トグラフィー質量分析装置で調べた所、主生成物として
ε−カプロラクタムと副生成物である6−アミノカプロ
ン酸が生成しているのが確認された。その他、未反応の
シクロヘキサノンオキシムが少量検出された。ε−カプ
ロラクタムの含有濃度は4.94mMであり、反応収率
は93.2%であった。6−アミノカプロン酸の含有量
は0.14mMであり、反応収率は2.6%であった。
【0038】実施例8 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし硫酸を用い、反応条件を下記の様に
変更して実施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:475℃及び40MPa キャリヤー水の流速:15.6ml/min 22.1mM基質及び5mM硫酸を含有する基質溶液の
温度及び圧力: 25℃及び40MPa 基質溶液の流速:4.4ml/min 反応高温高圧水の温度:375℃ 反応高温高圧水の圧力:40MPa 反応高温高圧水の密度:0.6096g/cm3 反応高温高圧水の流速:20.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
4.86mMであった。反応時間は0.182秒であ
り、反応器内の温度が一定となっているため、0.00
2秒以内の短時間で混合されていると推察される。反応
後の水溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置
で調べた所、主生成物としてε−カプロラクタムと副生
成物である6−アミノカプロン酸が生成しているのが確
認された。ε−カプロラクタムの含有濃度は4.53m
Mであり、反応収率は93.2%であった。また6−ア
ミノカプロン酸の含有量は0.26mMであり、反応収
率は5.3%であった。
【0039】実施例9 図2に示す連続式反応装置を用い、温度350℃、圧力
30MPa及び密度0.6443g/cm3 の高温高圧
水条件下でAldrich ChemicalComp
any,Inc.社製品であるシクロヘキサノンオキシ
ム(純度97%)の溶融液を導入して用い、転移反応に
よるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。反応器の
材料は合金C−276であり、反応器の内径:4.68
mm及び反応器の長さ:200mmで、従って、反応器
容積は3.440cm3 と算出された。各導入調製液は
高圧ポンプで注入した。蒸留水に硫酸を加えて0.02
Mとし、窒素ガスでバブリングして溶存酸素を追い出し
た後、加熱して357℃及び30MPaのキャリヤー水
を作製し、24.6ml/minの流速で通水した。シ
クロヘキサノンオキシムを95℃で加温して基質溶融液
を調製した。基質溶融液を加圧水で30MPaで加圧し
て0.4ml/minの流速で反応器入り口のキャリヤ
ー水中に導入して混合した。反応器入り口から1cmに
設置した熱電対(1)で計測した混合溶液の反応温度は
350℃であり、反応器出口の熱電対(2)で計測した
温度と一致し、反応器内の温度は一定であり、硫酸を含
むキャリヤー水と基質溶融液は均質に混合していると考
えられる。混合後の基質濃度は141.6mM及び硫酸
濃度は19.7mMであった。反応時間は5.165秒
であった。従って、0.258秒以内の短時間で混合溶
解は完全に行われていると考えられる。反応後の水溶液
を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置で調べた
所、主生成物としてε−カプロラクタムと副生成物であ
る6−アミノカプロン酸が生成しているのが確認され
た。ε−カプロラクタムの含有濃度は129.8mMで
あり、その反応収率は91.7%であった。6−アミノ
カプロン酸の含有量は10.3mMであり、反応収率は
7.3%であった。
【0040】実施例10 実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノン
オキシムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製
造を試みた。ただし、硝酸を溶解したキャリヤー水を用
い、反応条件を下記の様に変更して実施した。 (反応条件) キャリヤー水の硝酸濃度:0.8mM キャリヤー水の温度及び圧力:500℃及び40MPa キャリヤー水の流速:3.8ml/min 22.1mM基質を含む基質溶液の温度及び圧力:25
℃及び40MPa基質溶液の流速:1.2ml/min 反応高温高圧水の温度:380℃ 反応高温高圧水の圧力:40MPa 反応高温高圧水の密度:0.5948g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
5.30mM及び硝酸濃度は0.61mMであった。反
応時間は0.710秒であり、反応器内の温度が一定と
なっているため、0.006秒以内の短時間で混合され
ていると考えられる。反応後の水溶液を高速液体クロマ
トグラフィー質量分析装置で調べた所、主生成物として
ε−カプロラクタムと副生成物である6−アミノカプロ
ン酸が生成しているのが確認された。ε−カプロラクタ
ムの含有濃度は5.16mMであり、反応収率は97.
4%であった。6−アミノカプロン酸の含有量は0.1
3mMであり、反応収率は2.5%であった。
【0041】実施例11 実施例1と同様に反応させて、シクロヘキサノンオキシ
ムの転移反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試
みた。溶存酸素を除去した蒸留水から3.2mM硝酸水
溶液を調製した。ただし、図3に示した連続反応装置を
用い、硝酸水溶液と基質水溶液を異なった2つの送水ポ
ンプで反応器に注入し、反応条件を下記の様に変更して
実施した。 (反応条件) キャリヤー水の温度及び圧力:500℃及び40MPa キャリヤー水の流速:3.8ml/min 22.1mM基質を含む基質溶液の温度及び圧力: 25
℃及び40MPa基質溶液の流速:0.6ml/min 4.0mM硝酸水溶液の温度及び圧力:25℃及び40
MPa 硝酸水溶液の流速:0.6ml/min 反応高温高圧水の温度:380℃ 反応高温高圧水の圧力:40MPa 反応高温高圧水の密度:0.5948g/cm3 反応高温高圧水の流速:5.0ml/min 混合した時のシクロヘキサノンオキシムの基質濃度は
2.65mM及び硝酸濃度は0.48mMであった。反
応時間は0.710秒であり、反応器内の温度が一定と
なっているため、0.006秒以内の短時間で混合され
ていると考えられる。反応後の水溶液を高速液体クロマ
トグラフィー質量分析装置で調べた所、主生成物として
ε−カプロラクタムと副生成物である6−アミノカプロ
ン酸が生成しているのが確認された。ε−カプロラクタ
ムの含有濃度は2.57mMであり、反応収率は97.
0%であった。6−アミノカプロン酸の含有量は0.0
7mMであり、反応収率は2.6%であった。
【0042】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明は、流通させ
ている高温高圧水条件下の反応場に反応基質としてオキ
シムと酸を導入して、該反応基質を所定の高温高圧条件
に短時間で昇温して反応させることによってオキシムの
加水分解反応を抑制して、ラクタムを連続合成すること
を特徴とするラクタム連続製造方法、高温高圧水条件下
で酸を用いてオキシムからラクタムを選択的に製造する
ことを特徴とする連続ラクタム製造方法に係り、本発明
により、1)高温高圧水下でのオキシムの加水分解反応
を抑制することによってオキシムからラクタムを選択的
に製造することができる、2)オキシムを高温高圧下で
反応させてラクタムを短時間で製造することができる、
3)酸を触媒として用いて効率的なラクタム製造方法を
提供することができる、4)環境に優しい化学物質生産
システムである、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いた送水ポンプ2台付属の流通式高
温高圧反応装置のフローシートを示す。
【図2】本発明で用いた送水ポンプ2台付属の溶融オキ
シム導入型流通式高温高圧反応装置を示す。
【図3】本発明に用いた送水ポンプ3台付属の流通式高
温高圧反応装置のフローシートを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鳥居 一雄 宮城県仙台市太白区西中田1丁目19番13号 Fターム(参考) 4H039 CA71 CH90 CJ10

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高温高圧水条件下の反応場に反応基質と
    してオキシムと酸を導入して、該反応基質を所定の高温
    高圧条件に短時間で昇温して反応させることによりオキ
    シムの加水分解反応を抑制してラクタムを合成すること
    を特徴とするラクタムの製造方法。
  2. 【請求項2】 連続的に流通させている高温高圧水にオ
    キシムと酸を溶解した基質水溶液を導入して、所定の高
    温高圧条件下で反応させることを特徴とする請求項1記
    載のラクタムの製造方法。
  3. 【請求項3】 連続的に流通させている高温高圧水にオ
    キシムと酸を別々に導入して、所定の高温高圧条件下で
    反応させることを特徴とする請求項1記載のラクタムの
    製造方法。
  4. 【請求項4】 酸を含有する高温高圧水中にオキシムを
    導入して、所定の高温高圧条件に短時間で昇温して反応
    させることを特徴とするラクタムの製造方法。
  5. 【請求項5】 連続的に流通させている酸を含有する高
    温高圧水中にオキシム、あるいはオキシムを溶解した基
    質水溶液を導入して、所定の高温高圧条件下で反応させ
    ることを特徴とする請求項4記載のラクタムの製造方
    法。
  6. 【請求項6】 溶融したオキシムを導入して、所定の高
    温高圧条件下で反応させることを特徴とする請求項1か
    ら5のいずれかに記載のラクタムの製造方法。
  7. 【請求項7】 250℃以上の温度範囲及び15MPa
    以上の圧力範囲である高温高圧水条件下でオキシムを反
    応させることを特徴とする請求項1から6のいずれかに
    記載のラクタムの製造方法。
  8. 【請求項8】 オキシムを所定の高温高圧条件に3秒以
    内の短時間で昇温させて反応させることを特徴とする請
    求項1から7のいずれかに記載のラクタムの製造方法。
  9. 【請求項9】 オキシムを所定の高温高圧条件で60秒
    以内の時間で反応させることを特徴とする請求項1から
    8のいずれかに記載のラクタムの製造方法。
  10. 【請求項10】 酸として硫酸、塩酸、硝酸及び酢酸の
    中から選択される1種以上を使用することを特徴とする
    請求項1から5のいずれかに記載のラクタムの製造方
    法。
  11. 【請求項11】 オキシムとしてシクロヘキサノンオキ
    シムを使用することを特徴とする請求項1から9のいず
    れかに記載のラクタムの製造方法。
JP2002058785A 2001-03-26 2002-03-05 ラクタム製造方法 Pending JP2002356477A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002058785A JP2002356477A (ja) 2001-03-26 2002-03-05 ラクタム製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001-88085 2001-03-26
JP2001088085 2001-03-26
JP2002058785A JP2002356477A (ja) 2001-03-26 2002-03-05 ラクタム製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002356477A true JP2002356477A (ja) 2002-12-13

Family

ID=26612068

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002058785A Pending JP2002356477A (ja) 2001-03-26 2002-03-05 ラクタム製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002356477A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007204407A (ja) * 2006-01-31 2007-08-16 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 含窒素化合物の製造方法及びその装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007204407A (ja) * 2006-01-31 2007-08-16 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 含窒素化合物の製造方法及びその装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3649104B1 (en) Process for producing long chain amino acids and dibasic acids
WO2017088218A1 (zh) 长链末端氨基酸和二元酸的联产方法
CN110483332B (zh) 2,6-二氯氯苄氨碘化法制备2,6-二氯苯腈的方法
CN114685253A (zh) 一种丙硫菌唑中间体3,5-二氯-2-戊酮的制备方法
JP3837467B2 (ja) ラクタムの製造方法
Dennehy et al. Development of a continuous process for α-thio-β-chloroacrylamide synthesis with enhanced control of a cascade transformation
US6197999B1 (en) Photonitrosation of cyclododecane in chloroform in quasi-anhydrous medium
JP2002356477A (ja) ラクタム製造方法
JP2002212153A (ja) アミノ基導入法及びアミノ酸の合成方法
JP4195929B2 (ja) ラクタムの製造法
JP4238348B2 (ja) ラクタム製造法
WO2002076942A1 (en) Process for producing lactam
JP2007204407A (ja) 含窒素化合物の製造方法及びその装置
JP2929003B2 (ja) 高温熱水中におけるラクタムの製造方法
US6750336B2 (en) Method of production of lactam
WO1999054281A1 (fr) Procede de production de dimethylacetamide
CN113979965B (zh) 一种4,5-二氯-2-辛基-4-异噻唑啉-3-酮的连续化生产方法
JP3845723B2 (ja) アルキルアミノ基導入法及びアミノ酸の合成方法
JP2003034669A (ja) アミノ基導入方法及びアミノ酸化合物合成方法
KR101106848B1 (ko) 락탐의 제조
WO2003091208A1 (fr) Procede de synthese de lactame
JPH0798785B2 (ja) オキシム類の製造法
US20040199030A1 (en) Process for production of high-temperature and high-pressure fluid and high-temperature and high-pressure reaction system
CN118026851A (en) Micro-channel preparation method of o-nitrobenzaldehyde
JPS62263149A (ja) アルキルアミドの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060214

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060214

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060417

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061030

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070104

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20070320