JP4238348B2 - ラクタム製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温高圧条件下でオキシムからラクタムを連続的に製造する方法に関するものであり、更に詳しくは、高温高圧混合水条件下で有機溶媒に溶解させたオキシムの転位反応を行ないラクタムを連続的に製造する新規なラクタムの連続製造方法に関するものである。本発明は、従来の濃硫酸を触媒として用いるラクタムの製造方法に見られるような、使用した多量の廃硫酸の中和処理を必要とすることなくラクタムの製造を可能とするものであり、産業技術として、好適、かつ有用な方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ナイロン6の原料となるε―カプロラクタムのようなラクタムを工業的に生産するには、シクロヘキサノンオキシムといったカルボニル化合物のオキシムからベックマン転位反応法によってラクタムを製造している。この転位反応には、酸触媒が使用されているが、この方法では、煮沸して反応させるために、系内における水の存在は微量であってもオキシムが加水分解を起こし、ラクタムの収率が低下する。これを防ぐために、酸触媒として発煙硫酸を使用し、煮沸して反応させる方法が一般的となっている。この方法は、苛酷な条件下での反応であるため、装置材料の腐食、あるいは製造工程における危険性と共に、副生成物である硫酸アンモニウムの処理に問題があることが知られている。ラクタムを回収する際に使用した硫酸は、アンモニアで中和処理する必要があり、硫安(硫酸アンモニウム)が、ラクタム1kg当たり2kg以上副生する。硫安は、商品価値が低いため、利用が困難となってきており、その処理が必要とされている。
近年、地球環境の悪化の懸念が高まりつつあり、化学工業分野においては、発煙硫酸の様な危険物質を大量使用しないで、かつ簡単で効率的な、更には、短時間で反応が終了するような化学プロセスの開発が求められている。ラクタムの製造プロセスにおいては、装置材料の腐食、操作上の安全性や環境面で問題がある発煙硫酸を使用しない、あるいは副生成物を伴わない、効率的な新しい製造プロセスの開発が要望されている。
【0003】
上記課題を解決する方法として、発煙硫酸等の強酸触媒を全く使用せず、高温高圧水下で反応させる方法として、(A)バッチ式合成法(非特許文献1)と(B)流通式合成法(非特許文献2)の2つの方法が提案されている。
【0004】
【非特許文献1】
O.Sato、Y.Ikushima and T.Yokoyama、Journal of Organic Chemistry 1998、63、9100−9102
【非特許文献2】
Y.Ikushima、 K.Hatakeda、 O.Sato、 T.Yokoyama and M.Arai、Journal of American Chemical Society 2000、122、1908−1918
【0005】
(A)のバッチ式合成法では、内容積10mlのステンレス管にシクロヘキサノンオキシムを封入し、塩浴中に入れて30秒程度の時間で200〜400℃に昇温し、3分間反応させて生成物を得ている。この方法は、大量生産プロセスとしては不向きであると考えられるが、発煙硫酸などの酸触媒を使用しない合成法として着目されている。この方法では、一回ごとに反応を終結させるため、操作が断続的で、設定温度への上昇に20―30秒程度の時間を要する。従って、昇温時に加水分解生成物であるシクロヘキサノンが多量に生成し、目的のε―カプロラクタムの収率が低くなる欠点がある。また、シクロヘキサノンは、シクロヘキサノンオキシムの原料であるので、上記方法では、逆方向の反応が生じ、上記方法は、工業プロセスとしては致命的な反応といえる。
(B)の流通式合成法は、操作が連続的で大量生産するには好適であると考えられるが、室温のシクロヘキサノンオキシム水溶液を加熱して、高温高圧のキャリヤー水としているため、設定反応温度への上昇に時間を要すると考えられる。上記基質を、350℃及び22.1MPa条件下で113秒、反応させた実験では、生成物としてシクロヘキサノンだけが得られ、ε―カプロラクタムは全く生成していない結果が示されている。また、374.5℃の条件下でも、ε―カプロラクタムとシクロヘキサノンが生成している結果が示されている。従って、この方法は、(A)のバッチ式合成法と同様に、昇温に時間がかかり、溶媒である水が、例えば、100−300℃の水熱状態を経る間に、シクロヘキサノンオキシムの加水分解反応が進行してシクロヘキサノンが生成し、目的のε―カプロラクタムの収率が低くなる欠点を有すると考えられる。また、この方法では、シクロヘキサノンオキシムが水に溶解し難い欠点があるため、低濃度の基質しか反応に用いることができず、非効率的であり、その改善が必要であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、高温高圧下でオキシムからのラクタムの製造方法について種々研究を進める過程で、高温高圧流体条件下で、オキシムからラクタムを連続的に効率よく製造するためには、少量の酸を存在させることが重要であることを見出し、かかる知見に基づいて更に研究を重ねて、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、本発明者らが、種々の実験を経て開発した本発明の製造法は、例えば、オキシムを溶解した基質流体と酸を高温高圧流体条件下の反応場に連続的に導入し、カプロラクタムを選択的に、かつ効率的に短時間で製造する方法である。本発明は、有機溶媒等をキャリヤー流体として用いた高温高圧流体中に酸とオキシムを導入して反応させ、シクロヘキサノンを生成することなくラクタムを選択的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)基質としてのオキシムと酸を、キャリヤー流体の高温高圧流体中に導入して、所定の高温高圧条件下で反応させることによりラクタムを製造する方法であって、1)酸は、鉱酸又は有機酸であり、酸の濃度は0.001mM〜10Mの濃度範囲であ2)所定の高温高圧条件が、低くても250℃の温度範囲及び低くても15MPaの圧力範囲であ3)設定温度より5〜400℃程度高い温度のキャリヤー流体を使用し、4)オキシムの昇温時間が長くても3秒の短時間であり、反応時間が長くても60秒の短時間でオキシムからラクタムを合成するとを特徴とするラクタムの製造方法。
(2)連続的に流通させている高温高圧流体にオキシムと酸を導入することを特徴とする前記(1)記載のラクタムの製造方法。
(3)連続的に流通させている高温高圧流体にオキシムと酸を別々に及び/又は同時に溶解した基質溶液を導入することを特徴とする前記(2)記載のラクタムの製造方法。
(4)アルコール、ケトン、水及び/又は二酸化炭素の少なくとも1種類より成る高温高圧流体を用いることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載のラクタムの製造方法。
(5)硫酸、硝酸、塩酸及び/又はリン酸から選ばれた少なくとも1種類の酸を用いることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載のラクタムの製造方法。
(6)所定の高温高圧条件が、250℃から450℃の温度範囲及び15MPaから50MPaの圧力範囲であることを特徴とする前記(1)記載のラクタムの製造方法。
(7)キャリヤー流体及び/又は基質高圧流体の線速度が10−3〜10m/secであることを特徴とする前記(1)記載のラクタムの製造方法。
(8)キャリヤー流体の線速度を1とした場合、被反応物を含有する基質高圧流体の線速度の値が0.0001〜1の範囲の値であることを特徴とする前記(1)記載のラクタムの製造方法。
(9)オキシムが、シクロヘキサノンオキシムであることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載のラクタムの製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の説明を容易にするために、以下、オキシムを溶解した基質流体を、高温高圧流体に導入することにより、3秒以内の短時間で反応温度に到達させ、40MPaの反応圧力条件下で、ラクタムを製造する場合を例にとって詳細に説明する。
本発明者らが、種々の実験を経て開発した本発明の製造方法は、例えば、流通させている高温高圧エタノール流体条件下の反応場にシクロヘキサノンオキシムを溶解した高圧エタノールを連続的に導入し、3秒以下の短時間で、例えば、375℃の反応設定温度に到達させ、反応場に水を存在させないことにより加水分解反応をおこすことなく、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によってε―カプロラクタムを合成する方法である。本発明では、高温高圧流体を反応場あるいは反応溶媒として用いるため、処理しなければならない廃触媒等の廃棄物は排出されない。また、水を使用しない反応系では、シクロヘキサノンオキシムの加水分解反応によるシクロヘキサノンは生成しない。また、本発明では、例え反応系に水を使用しても、昇温時間を3秒以下に設定しているため、シクロヘキサノンオキシムの加水分解反応によるシクロヘキサノンは生成しないと考えられる。未反応の供給原料は、本発明の反応に再使用することが可能である。更に、本発明の方法は、有機溶媒等の基質流体に溶解した高濃度の基質原料を用いることが可能であり、高濃度の製品を収率よく連続的に高速で製造できることから、ラクタムを製造する手段として最も好適な方法であると考えられる。
【0009】
本発明のラクタムの製造方法について、以下に説明する。
本発明では、例えば、オキシムと酸を溶解した有機溶媒を、高温高圧流体条件下の反応場に連続的に導入させることにより、短時間で反応設定温度に到達させ、ラクタムを高選択的に、かつ短い反応時間で、効率的に製造することができる。
【0010】
本発明において、基質原料として使用されるオキシムは、以下の化1の一般式で表され、n=1〜9及びR1 はHあるいはアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜20のものはいずれも使用できる。オキシムを例示すれば、例えば、シクロヘキサノンオキシムを挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0011】
【化1】
Figure 0004238348
【0012】
本発明で得られるラクタムは、以下の化2の一般式で表され、n=1〜9及びR1 はHあるいはアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜20のものはいずれも使用できる。
【0013】
【化2】
Figure 0004238348
【0014】
本発明で得られるラクタムは、五員環ラクタム、六員環ラクタム、七員環ラクタム等の五員環以上の多員環ラクタムである。例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチルラクタム、γ−バレロラクタム、δ―バレロラクタム等が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない
【0015】
本発明によるラクタムの製造の具体例として、例えば、七員環ラクタムの製造例について、シクロヘキサノンオキシムからε−カプロラクタムを生成する反応式を以下の化3の一般式に示す。
【0016】
【化3】
Figure 0004238348
【0017】
オキシムのベックマン転位反応によるラクタムの合成は、煮沸した発煙硫酸中で進行することが知られている。本発明において、高温高圧流体条件下で少量の酸を用いることによりオキシムからベックマン転位反応によってラクタムが合成されることは興味深い事実である。高温高圧流体中では、少量の酸がどの様に機能しているかどうかは、高温高圧流体に関する今後の物理化学的研究の展開による検証が期待される。
【0018】
本発明によれば、所定条件の高温高圧流体中にオキシムと少量の酸を導入することによって、ラクタムを選択的に製造することができる。なお、本反応では、少量のアミノ酸が生成する場合もある。6−アミノヘキサン酸は、ポリカプロラクタムの製造原料モノマーとしても重要である。本反応において、反応系に水を存在させても、シクロヘキサノンオキシムの加水分解反応物であるシクロヘキサノンはほとんど検出されなかった。
【0019】
本発明においては、有機溶媒等に原料基質のオキシムと酸を溶解した基質流体を調製し、高温高圧下で反応させてε−カプロラクタムを得ることができる。本発明において使用する酸は、鉱酸であっても、有機酸であってもいずれも用いることができる。硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、炭酸などの鉱酸は、好適に用いることができる。また、酢酸、蓚酸、乳酸、酒石酸等の有機酸は、いずれも好適に使用できる。これらの酸は、1種類で触媒として用いることができるが、2種以上の酸を混合して用いてもよい。反応に使用する酸は、反応基質であるオキシムと一緒に、あるいは別々に送液ポンプを用いて高温高圧流体中に導入することができる。予めキャリヤー流体中に酸を混合しておいて使用することもできる。
使用する酸の濃度は、キャリヤー流体の最初の温度、反応圧力、キャリヤー流体の流速、基質流体の導入流速、オキシムの導入量、反応器の形態、反応器容量等によって変化させて、調整することができる。一般的には、酸の濃度は0.001mM〜10Mの濃度範囲を好適に選択できる。酸の濃度は0.01mM〜5Mの濃度範囲をより好適に選択できる。また、酸の濃度は0.01mM〜3Mの濃度範囲を更により好適に選択できる。最も好適には酸の濃度は0.01mM〜1Mの濃度範囲を選択できる。
【0020】
本発明において、高温高圧流体に用いる流体として、エタノール、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、水、超臨界二酸化炭素等を好適に用いることができる。これらの溶媒を高温高圧流体として使用する際、溶存酸素は有機物質を酸化分解したり、あるいは酸化反応を起こす可能性があるため、予め窒素ガス等でバブリングして除去してから用いるのが望ましい。また、二酸化炭素等の原料気体からも予め酸素を除去して用いることが望ましい。
【0021】
本発明で用いられる高温高圧流体は、反応器の外からヒーターや溶融塩等を用いて温度を制御できる。あるいは反応器内で内熱方式で温度制御することも可能である。また、予め高温高圧流体を製造しておき、外部から送液ポンプ等を用いて反応器内に注入して反応させることもできる。温度圧力条件の異なる2種類以上の高温高圧流体を反応系に供給して反応条件を制御することも可能である。反応容器内での圧力は、流通式であれば圧力調整弁で制御することができる。更に、窒素ガスなど他の気体を注入することによって圧力をコントロールすることもできる。一般的には、使用する圧力は、使用温度における自生圧力以上であればよい。
基本的には、温度250℃以上及び圧力15MPa以上の高温高圧流体条件下であれば本発明の目的は達成される。温度300℃以上及び圧力15MPa以上の高温高圧条件下では、より好適に本発明の目的を達成できる。温度300℃以上の温度範囲及び20MPa〜50MPaの圧力範囲である高温高圧流体条件を選択すれば、更により好適に本発明の目的は達成される。更に、330℃以上の温度範囲及び20MPa〜50MPaの圧力範囲である高温高圧流体条件を選択すれば、最も好適に本発明の目的は達成される。最適の温度条件は処理時間や圧力によっても変化するが、一般に、250℃から450℃の温度範囲を好適に選択できる。より好適には300℃から420℃の温度範囲を選択できる。最も好適には330℃から400℃の温度範囲を選択できる。また、処理量や反応装置によって適宜の温度及び圧力条件を採用することができる。本発明では、温度が330〜400℃の範囲で反応がかなり進行し、また、圧力が高い程反応が促進される傾向が認められる。
反応装置としては、例えば、高温・高圧反応装置が使用されるが、これに限らず、高温高圧条件下の流体反応系を設定できる装置であれば、その種類は制限されない。ここで、好適な反応装置として、例えば、後記する実施例で使用した流通式高温高圧反応装置が例示される。
【0022】
本発明では、流通させている高温高圧流体中に、例えば、オキシムを溶解した室温の基質流体を導入しているため、混合後の温度が低下する。混合後の温度低下の割合は、キャリヤー流体の最初の温度、反応圧力、キャリヤー流体の流速、オキシム含有基質流体の導入流速、オキシムの導入量、反応器の形態、反応器容量等によって変化する。本発明では、例えば、キャリヤー流体の温度を予め、設定反応温度より高くし、100℃以下の基質溶液と混合することによって、設定反応温度に3秒以下の短時間で到達することができる。キャリヤー流体の設定温度は、反応容器の大きさ、容積、形状、キャリヤー流体と基質流体の種類、温度、圧力、両者の流速比の値等によって変動すると考えられる。しかし、一般的には、キャリヤー流体の温度は、設定反応温度より5〜400℃高く設定することができ、好適には5〜300℃、より好適には5〜250℃、及び最も好適には5〜200℃の温度範囲で設定反応温度よりキャリヤー流体の設定温度を高くして反応させることが望ましい。
【0023】
本発明では、キャリヤー流体と基質流体の混合割合の設定が反応温度を決定するのに重要であり、通常はキャリヤー流体と基質流体の送液速度をコントロールすることによって混合比を制御することができる。キャリヤー流体の流速を1とした場合、通常、基質流体の流速は0.0001〜1の範囲の値を適宜選択できるが、好適には0.001〜1、より好適には0.005〜1、及び最も好適には0.01〜1の範囲の値を選択することが望ましい。
【0024】
同じ流速を用いても、反応容器の大きさ、断面積、長さ等によって使用する流量が変動するので、流速の代わりに線速度を用いることができる。本発明では、キャリヤー流体や基質流体の流量は、通常、10-3〜103 m/sec の線速度の流量を用いることができる。好適には10-2〜103 m/sec の線速度の流量を、より好適には10-2〜102 m/sec の線速度の流量を、更により好適には10-1〜102 m/sec の線速度の流量を、及び最も好適には10-1〜101 m/secの線速度の流量を用いることが望ましい。また、キャリヤー流体と基質流体の混合比は、線速度の比で表すこともできる。キャリヤー流体の線速度を1とした場合、通常、基質流体の線速度は0.0001〜1の範囲の値を適宜選択できるが、好適には0.001〜1、より好適には0.005〜1、及び最も好適には0.01〜1の範囲の値を選択することが望ましい。
【0025】
本発明において、オキシムを溶解するために用いる基質流体としては、例えば、エタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、水及び/又は超臨界二酸化炭素等を好適に用いて、所定の高温高圧流体を製造することができるが、本発明に使用できるのは、これらの流体に限るものではなく、下記に挙げる流体と上記の流体を適宜1種類以上組み合わせて使用することができる。例えば、水酸基を有するアルコールとしては、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、シクロヘプタノール、オクタノール、シクロオクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘプタノール、メトキシエタノール、クロロエタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロプロパノール、フェノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられ、更に、カルボニル基を有するケトン又はアルデヒドとして、例えば、アセトン、2−ブタノン、3−ペンタノン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等が挙げられ、シアノ基を有するニトリルとして、例えば、ベンゾニトリル等が挙げられ、更に、アミド基を有するアミドないしは尿素として、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられ、更に、アミノ基を有するアミン類を用いることができ、例えば、キノリン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられ、更に、スルフィド、スルホキシドとして、例えば、スルホラン等が挙げられ、更に、リン酸エステルとして、ヘキサメチレンホスホリックアシッド等が挙げられ、更に、カルボン酸又はカルボン酸誘導体であるエステル又は炭酸又は炭酸エステルとして、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸、酢酸、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、プロピレンカーボネート等が挙げられ、更に、エーテルとして、例えば、ジグライム、ジエチルエーテル、アニソール等が挙げられ、更に、極性の小さい炭化水素として、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、ビタジエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペルフルオロベンゼン、フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン等が挙げられ、更に、イオン性流体であるイミダゾール誘導体塩、あるいは塩化メチレン等の含ハロゲン炭化水素等が挙げられ、これらの有機溶媒群より選ばれる少なくとも1種類以上の流体を選択することによって、あるいはこれらの流体を適宜混合することによって、オキシムを溶解する基質流体として、あるいはオキシムのベックマン転位反応を促進させる機能を有する流体として用いることができる。
【0026】
本発明の最も特徴的なことは、上記に記述したように設定温度より5〜400℃程度高い温度の高温高圧流体中にオキシムを溶解した基質流体あるいはオキシムを直接導入することによって、オキシムの昇温時間が3秒以下の短時間になることである。このことにより、例えば、反応系に水を存在させた場合に、オキシムの加水分解反応を抑制でき、その結果、ラクタムの選択性や収率を向上することができる。反応系に水が存在しない場合は、オキシムの加水分解反応はほとんど進行しないと考えられる。より好適なオキシムの昇温時間は1秒以下であることが望ましく、更に好適なオキシムの昇温時間は0.5秒以下であることが望ましく、及び最も好適なオキシムの昇温時間は0.3秒以下であることが望ましい。
【0027】
特に、超臨界状態のキャリヤー水を使用した場合は、液体のキャリヤー水に比べて流体の粘度が低下し、拡散係数が大きくなるため、混合速度が急激に速くなっていると考えられる。また、超臨界点に近い亜臨界水条件以上の高温高圧水では、誘電率が低下して有機物溶解度が急激に大きくなっていくことが知られており、同様に、オキシムや有機溶媒の溶解度も大きくなり、転位反応に好適な条件を与えると考えられる。
【0028】
反応条件は、使用するオキシムの種類及び濃度、反応管体積、高温高圧流体条件、反応時間等によって変化する。本発明では、反応に用いる基質流体に溶解して用いるオキシムは1種類に限定される物でなく、2種類以上の混合物を用いても反応は好適に進行する。
流通方式のキャリヤー流体として用いる高温高圧水の流速及び反応基質であるオキシム含有基質流体の導入流速を制御することによって、反応器に導入するオキシムの濃度をコントロールできる。通常、反応器に導入するオキシムの濃度は、1mMから10Mの濃度範囲で選択できる。好適には2mMから5Mの間の適宜な濃度の値を選択でき、最も好適には2mMから2Mの間の適宜な濃度の値が選択されるが、本発明は、これらの濃度の値に限定されるものではない。
本発明では、オキシムの種類に応じて、反応系の温度、圧力、反応器内径、反応器体積、流速、線速度、有機溶媒の種類、反応基質の濃度、反応時間等を調節することによって、ラクタムの反応収率を制御することができる。
【0029】
本発明の反応系は、温度250℃以上、及び圧力15MPa以上の高温高圧流体中に上記反応基質のオキシムと酸を溶解した基質流体を存在させればよく、その際、例えば、金属イオン、塩基等のような水溶性の触媒、金属担持触媒、固体酸、固体塩基等の固体触媒あるいは酵素等は、特に添加しなくとも反応は進行する。本発明は、基本的には、高温高圧水中に上記反応基質と酸を溶解した基質流体を存在させて、オキシムよりラクタムを合成することを最大の特徴としているが、必要に応じて、金属イオン、塩基等のような水溶性の触媒、金属担持触媒、固体酸、固体塩基等の固体触媒あるいは酵素を添加して反応させても一向にさしつかえない。
【0030】
本発明では、上記反応系により、通常、反応時間0.001秒から60秒の短時間でオキシムからラクタムが合成される。流通式反応装置を用いる場合、反応時間は、反応温度、反応圧力、高温高圧流体の流速や線速度、反応基質や基質流体の導入流速や線速度、反応器の形状、反応器の容積、反応器内径、反応器の流通経路の長さ等を制御することによって反応時間をコントロールできる。より好適には反応時間として0.01秒から30秒の範囲の値を選択でき、より好適には0.01秒から20秒の範囲の値を選択でき、更により好適には0.05秒から10秒の範囲の値を選択でき、及び最も好適には0.05秒から5秒の範囲の値を選択できるがるが、本発明は、これらの値に限定されるものではない。
【0031】
本発明者らは、後記する実施例に示されるように、高温高圧流体条件では、短時間(例えば、反応時間1秒前後)でオキシムからラクタムへの転換反応が可能であることを、高速液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC−MS装置)、ガスクロマトグラフ分析装置、核磁気共鳴スペクトル測定装置(NMR測定装置)やフリエー赤外分光光度測定装置(FTIR測定装置)を用いて確認している。更に、LC−MS装置を用いることにより、オキシムやラクタム及び副生成物のアミノ酸の種類を同定でき、それらの含有量を正確に定量できる。また、連続的に得られるラクタムをイオン交換樹脂カラムによって分離精製して、FTIR測定装置により赤外線吸収スペクトルを計測し、純度の高い特級試薬製品のそれと比較することにより、ラクタム種を正確に同定できる。同様に、NMRスペクトル測定によってもラクタムの種類や純度を確認できる。それらの構造は、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC−MS装置)、LC−MS装置、NMR測定装置やFTIR装置で確認できる。
【0032】
本発明で生成したラクタムの反応収率は、温度、圧力等の反応条件、オキシムの種類、オキシムの濃度、基質流体の種類、酸の種類、酸濃度、反応装置の形態、反応器の大きさ、キャリヤー流体の種類、キャリヤー流体の流速や線速度、オキシム導入速度や線速度、反応時間等によって変動する。例えば、得られるε−カプロラクタムは、原料のシクロヘキサノンオキシムと混合して回収される場合もある。同様に、本発明によって種々のオキシムあるいはそれらの混合物から多種のラクタムやアミノ酸が原料基質とともに回収され得るが、例えば、溶媒抽出法を用いることにより、あるいは陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂あるいはそれらの併用によって、ラクタムやアミノ酸と原料基質のオキシムを分離でき、更に、ラクタムとアミノ酸あるいはラクタム同士の分離も可能であるので、ラクタムやアミノ酸はその種類毎に精製濃縮できる。また、同時に回収されたオキシムは、再度、原料として用いることができる。
従って、高温高圧流体条件下でオキシムを転位反応させ、ラクタムを合成し、得られた反応流体に対して、溶媒抽出法を適用したり、あるいはイオン交換樹脂を用いてラクタムやアミノ酸を分離精製して、高純度のラクタムを好適に製造できる。
【0033】
【作用】
本発明では、高温高圧流体中に、反応基質として所定の濃度のオキシムと酸を溶解した基質流体を導入し、反応基質を短時間で昇温させ、所定の高温高圧条件下で反応させることにより、例えば、シクロヘキサノンオキシムからε−カプロラクタムが合成される。また、これらのオキシム等と酸を溶解した基質流体を流通させている高温高圧流体に連続的に導入することにより、連続的にそれぞれのオキシムに対応した種々のラクタムを合成することができる。
これらのことから、本発明は、上記反応系において、キャリヤー流体の種類、反応条件、反応基質のオキシムの種類、オキシムの濃度、酸濃度、基質流体の種類等を調節することにより、ラクタムを短時間で連続的に製造することを可能とする新規の連続ラクタム製造方法であり、新しいラクタム製造方法を提供するものとして有用である。
【0034】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
図1に示す連続式高温高圧反応装置を用い、温度340℃及び圧力35MPaの高温高圧エタノールに硫酸を添加した条件下で、シクロヘキサノンオキシム試薬(Aldrich Chemical Company、Inc.社製品、純度97%)を用い、転位反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。
反応器の材料は、ハステロイ合金C−276であり、反応器の内径:0.325mm及び反応器の長さ:120cmであり、従って、反応器容積は0.0995cm3 と算出された。各導入調製液は高圧送液ポンプで注入した。エタノールを窒素ガスでバブリングして溶存酸素を追い出した後、加熱して420℃及び35MPaのキャリヤー流体を作製し、4.0ml/minの流速で流した。線速度は8.04×10-1m/secであった。同様に、脱酸素処理したエタノール溶液を用い、シクロヘキサノンオキシム及び濃硫酸を加えて基質溶液を調製した。基質溶液のシクロヘキサノンオキシム濃度は442.5mMであり、及び硫酸濃度は356.4mMであった。室温及び35MPaの基質溶液を1.0ml/min(線速度2.01×10-1m/sec)の流速で反応器入り口のキャリヤー流体中に導入し、混合した。反応器入り口から1cmに設置した熱電対(1)で計測した混合溶液の反応温度は340℃であり、反応器出口の熱電対(2)で計測した温度と一致し、反応器内の温度は一定であり、キャリヤー流体と基質溶液は均質に混合していると考えられる。高温高圧エタノールの流速は5.0ml/minであり、線速度は1.0×100 m/secと計算された。
温度340℃、圧力35MPaにおけるエタノール混合流体の密度は0.4985g/cm3 であった。高温高圧下でのエタノール中での混合後の基質濃度は88.50mM及び硫酸濃度は71.28mMであった。反応時間は0.595秒であった。従って、0.005秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考えられる。反応後に回収したエタノール溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置及びガスクロマトグラフ分析装置で調べた所、主生成物としてε−カプロラクタム及び副生成物である少量の6−アミノヘキサン酸が生成しているのが確認された。6−アミノヘキサン酸はε−カプロラクタムの加水分解で得られたものと考えられ、ポリカプロラクタムの製造モノマーとして重要である。その他には、未反応のシクロヘキサノンオキシムが検出され、原料の加水分解反応物であるシクロヘキサノンはほとんど認められなかった。ε−カプロラクタムの含有濃度は86.80mMであり、その反応収率は98.1%であった。6−アミノヘキサン酸の含有量は0.53mMであり、反応収率は0.6%であった。
【0035】
実施例2
キャリヤー流体としてエタノールを用いて、実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。ただし、硫酸濃度を下げて、下記の反応条件で実施した。
【0036】
反応条件
キャリヤー流体の温度及び圧力:410℃及び35MPa
キャリヤー流体の流速及び線速度:9.0ml/min及び1.81×100 m/sec
442.5mM基質溶液の硫酸濃度:35.6mM
442.5mM基質溶液の温度及び圧力: 室温及び35MPa
442.5mM基質溶液の流速及び線速度:1.0ml/min及び2.01×10-1m/sec
反応高温高圧エタノール混合流体の温度:340℃
反応高温高圧エタノール混合流体の圧力:35MPa
反応高温高圧エタノール混合流体の密度:0.4985g/cm3
反応高温高圧エタノール混合流体の流速及び線速度:10.0ml/min及び2.01×100 m/sec
【0037】
高温高圧下でのエタノール混合流体中での混合後の基質濃度は44.25mM及び硫酸濃度は3.56mMであった。反応時間は0.298秒であった。従って、0.003秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考えられる。反応後に回収したエタノール混合溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置及びガスクロマトグラフ分析装置で調べた所、生成物としてε−カプロラクタムが生成しているのが確認された。その他には、未反応のシクロヘキサノンオキシムが検出され、原料の加水分解反応物であるシクロヘキサノンはほとんど認められなかった。ε−カプロラクタムの含有濃度は37.08mMであり、その反応収率は83.8%であった。
【0038】
比較例1
キャリヤー流体としてエタノールを用いて、実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。ただし、硫酸等の酸を全く用いないで、下記の反応条件で実施した。
【0039】
反応条件
キャリヤー流体の温度及び圧力:370℃及び35MPa
キャリヤー流体の流速及び線速度:4.0ml/min及び8.04×10-1m/sec
442.5mM基質溶液の温度及び圧力: 室温及び35MPa
442.5mM基質溶液の流速及び線速度:1.0ml/min及び2.01×10-1m/sec
反応高温高圧エタノール混合流体の温度:340℃
反応高温高圧エタノール混合流体の圧力:35MPa
反応高温高圧エタノール混合流体の密度:0.4985g/cm3
反応高温高圧エタノール混合流体の流速及び線速度:5.0ml/min及び1.00×100 m/sec
【0040】
高温高圧下でのエタノール混合流体中での混合後の基質濃度は88.50mMであった。反応時間は0.595秒であった。従って、0.005秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考えられる。反応後に回収したエタノール溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置及びガスクロマトグラフ分析装置で調べた所、ε−カプロラクタムは全く生成せず、未反応のシクロヘキサノンオキシムのみが検出された。
【0041】
実施例3
キャリヤー流体としてアセトンを用いて、実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。ただし、硫酸の代わりに塩酸を使用し、下記の反応条件で実施した。
【0042】
反応条件
キャリヤー流体の温度及び圧力:435℃及び25MPa
キャリヤー流体の流速及び線速度:4.0ml/min及び8.04×10-1m/sec
265.5mM基質溶液の塩酸濃度:50.0mM
265.5mM基質溶液の温度及び圧力: 室温及び25MPa
265.5mM基質溶液の流速及び線速度:1.0ml/min及び2.01×10-1m/sec
反応高温高圧アセトン混合流体の温度:350℃
反応高温高圧アセトン混合流体の圧力:25MPa
反応高温高圧アセトン混合流体の密度:0.3170g/cm3
反応高温高圧アセトン混合流体の流速及び線速度:5.0ml/min及び1.00×100 m/sec
【0043】
高温高圧下でのアセトン混合流体中での混合後の基質濃度は53.10mM及び塩酸濃度は10.0mMであった。反応時間は0.379秒であった。従って、0.004秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考えられる。反応後に回収したアセトン溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置及びガスクロマトグラフ分析装置で調べた所、主生成物としてε−カプロラクタム及び副生成物である6−アミノヘキサン酸が生成しているのが確認された。その他には、シクロヘキサノンオキシム及びシクロヘキサノンはほとんど認められなかった。ε−カプロラクタムの含有濃度は51.72mMであり、その反応収率は97.4%であった。6−アミノヘキサン酸の含有量は1.38mMであり、反応収率は2.6%であった。
【0044】
比較例2
キャリヤー流体としてアセトンを用いて、実施例3と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。ただし、塩酸等の酸を全く用いないで、下記の反応条件で実施した。
【0045】
反応条件
キャリヤー流体の温度及び圧力:390℃及び25MPa
キャリヤー流体の流速及び線速度:4.0ml/min及び8.04×10-1m/sec
265.5mM基質溶液の温度及び圧力: 室温及び25MPa
265mM基質溶液の流速及び線速度:1.0ml/min及び2.01×10-1m/sec
反応高温高圧アセトン混合流体の温度:350℃
反応高温高圧アセトン混合流体の圧力:25MPa
反応高温高圧アセトン混合流体の密度:0.3170g/cm3
反応高温高圧アセトン混合流体の流速及び線速度:5.0ml/min及び1.00×100 m/sec
【0046】
高温高圧下でのアセトン混合流体中での混合後の基質濃度は53.10mMであった。反応時間は0.379秒であった。従って、0.004秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考えられる。反応後に回収したアセトン溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置及びガスクロマトグラフ分析装置で調べた所、ε−カプロラクタムは全く生成せず、未反応のシクロヘキサノンオキシムのみが検出された。
【0047】
実施例4
キャリヤー流体として超臨界二酸化炭素を用い、実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。ただし、エタノールを用いて作製した基質溶液により、シクロヘキサノンオキシムと硝酸を導入して、下記の反応条件で実施した。
【0048】
反応条件
キャリヤー流体の温度及び圧力:580℃及び40MPa
キャリヤー流体の流速及び線速度:5.0ml/min及び1.00×100 m/sec
442.5mM基質溶液の硝酸濃度:40.0mM
442.5mM基質溶液の温度及び圧力: 室温及び40MPa
442.5mM基質溶液の流速及び線速度:0.5ml/min及び1.00×10-1m/sec
反応高温高圧二酸化炭素混合流体の温度:400℃
反応高温高圧二酸化炭素混合流体の圧力:40MPa
反応高温高圧二酸化炭素混合流体の密度:0.2982g/cm3
反応高温高圧二酸化炭素混合流体の流速及び線速度:5.5ml/min及び1.10×100 m/sec
【0049】
高温高圧下での二酸化炭素混合流体中での反応時間は0.324秒であった。従って、0.003秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考えられる。反応後に回収したエタノール溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置及びガスクロマトグラフ分析装置で調べた所、生成物としてε−カプロラクタムが生成しているのが確認された。その他には、シクロヘキサノンオキシム及びシクロヘキサノンはほとんど認められなかった。従って、ε−カプロラクタムの反応収率は100%である。
【0050】
比較例3
キャリヤー流体として超臨界二酸化炭素を用い、実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。ただし、エタノールを用いて作製した基質溶液によりシクロヘキサノンオキシムを硝酸等の酸を全く用いないで導入して、下記の反応条件で実施した。
【0051】
反応条件
キャリヤー流体の温度及び圧力:580℃及び40MPa
キャリヤー流体の流速及び線速度:5.00ml/min及び1.00×100 m/sec
442.5mM基質溶液の温度及び圧力: 室温及び40MPa
442.5mM基質溶液の流速及び線速度:0.50ml/min及び1.00×10-1m/sec
反応高温高圧二酸化炭素混合流体の温度:400℃
反応高温高圧二酸化炭素混合流体の圧力:40MPa
反応高温高圧二酸化炭素混合流体の密度:0.2982g/cm3
反応高温高圧二酸化炭素混合流体の流速及び線速度:5.5ml/min及び1.10×100 m/sec
【0052】
高温高圧下での二酸化炭素混合流体中での反応時間は0.324秒であった。従って、0.003秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考えられる。反応後に回収したエタノール溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置及びガスクロマトグラフ分析装置で調べた所、ε−カプロラクタムは全く生成せず、未反応のシクロヘキサノンオキシムのみが検出された。
【0053】
実施例5
キャリヤー流体として10%含水エタノールを用いて、実施例1と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。ただし、基質溶液は10%含水エタノールを用いて調製し、また、酸としてリン酸を用いて下記の反応条件で実施した。
反応条件
キャリヤー流体の温度及び圧力:465℃及び35MPa
キャリヤー流体の流速及び線速度:4.0ml/min及び8.04×10-1m/sec
442.5mM基質溶液のリン酸濃度:356.4mM
442.5mM基質溶液の温度及び圧力: 室温及び35MPa
442.5mM基質溶液の流速及び線速度:1.0ml/min及び2.01×10-1m/sec
反応高温高圧10%含水エタノール混合流体の温度:375℃
反応高温高圧10%含水エタノール混合流体の圧力:35MPa
反応高温高圧10%含水エタノール混合流体の密度:0.4542g/cm3
反応高温高圧10%含水エタノール混合流体の流速及び線速度:5.0ml/min及び1.00×100 m/sec
【0054】
高温高圧下での10%含水エタノール混合流体中での混合後の基質濃度は88.50mM及びりん酸濃度は71.28mMであった。反応時間は0.542秒であった。従って、0.005秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考えられる。反応後に回収した10%含水エタノール溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置及びガスクロマトグラフ分析装置で調べた所、主生成物としてε−カプロラクタム及び副生成物である6−アミノヘキサン酸が生成しているのが確認された。その他には、未反応のシクロヘキサノンオキシムが検出され、原料の加水分解反応物であるシクロヘキサノンはほとんど認められなかった。ε−カプロラクタムの含有濃度は85.14mMであり、その反応収率は96.2%であった。6−アミノヘキサン酸の含有量は2.09mMであり、反応収率は2.4%であった。
【0055】
比較例4
キャリヤー流体として10%含水エタノールを用いて、実施例5と同様な操作で反応させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応によるε−カプロラクタムの連続製造を試みた。ただし、硫酸等の酸を全く用いないで、下記の反応条件で実施した。
【0056】
反応条件
キャリヤー流体の温度及び圧力:465℃及び35MPa
キャリヤー流体の流速及び線速度:4.0ml/min及び8.04×10-1m/sec
442.5mM基質溶液の温度及び圧力: 室温及び35MPa
442.5mM基質溶液の流速及び線速度:1.0ml/min及び2.01×10-1m/sec
反応高温高圧10%含水エタノール混合流体の温度:375℃
反応高温高圧10%含水エタノール混合流体の圧力:35MPa
反応高温高圧10%含水エタノール混合流体の密度:0.4542g/cm3
反応高温高圧10%含水エタノール混合流体の流速及び線速度:5.0ml/min及び1.00×100 m/sec
【0057】
高温高圧下での10%含水エタノール混合流体中での混合後の基質濃度は88.50mMであった。反応時間は0.542秒であった。従って、0.005秒以内の短時間で混合は完全に行われていると考えられる。反応後に回収した10%含水エタノール溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置及びガスクロマトグラフ分析装置で調べた所、ε−カプロラクタムは全く生成せず、未反応のシクロヘキサノンオキシムのみが検出された。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明は、流通させている高温高圧流体中に基質流体に溶解したオキシムと酸を導入することによって、加水分解反応をおこすことなく、高濃度のラクタムを効率的に合成することを特徴とするラクタム連続製造方法、高温高圧混合流体条件下でオキシムからラクタムを選択的に製造することを特徴とする連続ラクタム製造方法に係り、本発明により、1)所定の高温高圧条件に短時間で昇温して反応させることができる、2)それにより、オキシムの加水分解反応を抑制して、オキシムの転位反応によってラクタムを合成することができる、3)基質流体に溶解させた高濃度のオキシムからラクタムを効率的に製造することができる、4)基質流体と酸を用いることにより、高収率でラクタムを製造することができる、5)オキシムを高温高圧下で反応させてラクタムを短時間で製造することができる、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた送水ポンプ2台付属の流通式高温高圧反応装置の概念図を示す。

Claims (9)

  1. 基質としてのオキシムと酸を、キャリヤー流体の高温高圧流体中に導入して、所定の高温高圧条件下で反応させることによりラクタムを製造する方法であって、1)酸は、鉱酸又は有機酸であり、酸の濃度は0.001mM〜10Mの濃度範囲であ2)所定の高温高圧条件が、低くても250℃の温度範囲及び低くても15MPaの圧力範囲であ3)設定温度より5〜400℃程度高い温度のキャリヤー流体を使用し、4)オキシムの昇温時間が長くても3秒の短時間であり、反応時間が長くても60秒の短時間でオキシムからラクタムを合成するとを特徴とするラクタムの製造方法。
  2. 連続的に流通させている高温高圧流体にオキシムと酸を導入することを特徴とする請求項1記載のラクタムの製造方法。
  3. 連続的に流通させている高温高圧流体にオキシムと酸を別々に及び/又は同時に溶解した基質溶液を導入することを特徴とする請求項2記載のラクタムの製造方法。
  4. アルコール、ケトン、水及び/又は二酸化炭素の少なくとも1種類より成る高温高圧流体を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のラクタムの製造方法。
  5. 硫酸、硝酸、塩酸及び/又はリン酸から選ばれた少なくとも1種類の酸を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のラクタムの製造方法。
  6. 所定の高温高圧条件が、250℃から450℃の温度範囲及び15MPaから50MPaの圧力範囲であることを特徴とする請求項1記載のラクタムの製造方法。
  7. キャリヤー流体及び/又は基質高圧流体の線速度が10−3〜10m/secであることを特徴とする請求項1記載のラクタムの製造方法。
  8. キャリヤー流体の線速度を1とした場合、被反応物を含有する基質高圧流体の線速度の値が0.0001〜1の範囲の値であることを特徴とする請求項1記載のラクタムの製造方法。
  9. オキシムが、シクロヘキサノンオキシムであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のラクタムの製造方法。
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