JP2002347096A - 成形品およびその製造方法 - Google Patents

成形品およびその製造方法

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JP2002347096A
JP2002347096A JP2001153943A JP2001153943A JP2002347096A JP 2002347096 A JP2002347096 A JP 2002347096A JP 2001153943 A JP2001153943 A JP 2001153943A JP 2001153943 A JP2001153943 A JP 2001153943A JP 2002347096 A JP2002347096 A JP 2002347096A
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temperature
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crystal polyester
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JP2001153943A
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Hiroshi Kamo
弘 加茂
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Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 十分な補強効果、すなわち優れた引張り
強度と弾性率及び外観に優れる樹脂製射出成形品およ
び、それを得る方法を提供すること。 【解決手段】 (A)液晶ポリエステル樹脂1〜99重
量部および(B)スチレン系樹脂あるいはポリフェニレ
ンエーテル系樹脂99〜1重量部とからなる樹脂組成物
を、以下の式(1)を満たすTp(℃)の温度で射出成
形することを特徴とする成形品の製造方法。 Ta>Tp>Tb+80…式(1) Ta(℃):(A)成分の融点。 Tb(℃):(B)成分のガラス転移温度。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車材料、家電
・OA材料などに用いられる樹脂製射出成形品を得るに
際し、十分な補強効果、すなわち優れた引張り強度と弾
性率及び外観に優れる射出成形品を得る方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】一般に、熱可塑性樹脂の剛性を高める手
法として、ガラス繊維などの無機充填剤を添加して補強
する方法が広く知られている。しかしながら、これらの
無機充填剤は、リサイクルに用いる場合は十分な補強効
果が得られない。すなわち、成形体の粉砕品や成形品く
ずを再び押出機などの装置で溶融混練すると樹脂中の無
機充填剤が破砕されてしまい、充填剤そのもののL/D
が低下してしまい、リサイクル前と比較して十分な剛性
などの物性が発現できなかった。そこで、前述したよう
にリサイクル可能であるという観点によると、分散相と
して有機ポリマー充填剤が適しており、例えば、液晶ポ
リマーを熱可塑性樹脂に添加することが、USP527
5877号公報、EP566149号公報、WO99/
02607号公報に提案されている。しかしながら、有
機ポリマーのフィブリル化による分散相のL/Dは十分
とは言えず、剛性向上の補強効果は十分ではなかった。
また、特開平5−192951号公報には、剪断速度を
規定することにより、フィブリル化させる成形方法が提
示されているが、補強強化および外観においても十分で
はなかった。産業界においては、有機充填剤による、よ
り補強効果の高い、しかも外観特性に優れる成形体を得
る方法が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】十分な補強効果、すな
わち優れた引張り強度と弾性率及び外観に優れる樹脂製
射出成形品およびそれを得る方法を提供することであ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を達
成する技術を鋭意検討した結果、(A)液晶ポリエステ
ル樹脂と(B)スチレン系樹脂あるいはポリフェニレン
エーテル系樹脂からなる樹脂組成物を射出成形するに際
し、(A)の融点が、(B)のガラス転移温度+80℃
より高くなる組み合わせを選択し、さらにその間の温度
にて成形することにより、十分な補強効果、すなわち優
れた引張り強度と弾性率及び外観に優れる射出成形品が
得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち本発明は、 1.(A)液晶ポリエステル樹脂1〜99重量部および
(B)スチレン系樹脂あるいはポリフェニレンエーテル
系樹脂99〜1重量部とからなる樹脂組成物を、以下の
式(1)を満たすTp(℃)の温度で射出成形すること
を特徴とする成形品の製造方法、 Ta>Tp>Tb+80…式(1) Ta(℃):(A)成分の融点。 Tb(℃):(B)成分のガラス転移温度。 2.樹脂組成物が、押出機中で溶融混練された直後に急
冷することにより直径D1のストランドを得、その後、
Ta(℃)未満の温度雰囲気で延伸することにより、
1.2≦D1/D2≦10を満たすように、直径D2の
ストランドにした後、ペレット化されることを特徴とす
る上記1に記載の製造方法、 3.上記1または2に記載の方法により成形され、
(A)成分が分散相で、(B)成分が連続相で、かつ分
散相のアスペクト比が4以上であることを特徴とする樹
脂製成形品、 4.流動方向断面において表層から深さ30μmにおけ
る液晶ポリエステル粒子のアスペクト比(r1)と中心
部30μmにおける液晶ポリエステル粒子のアスペクト
比(r2)の比(R)が0.5以上2.0以下であるこ
とを特徴とする上記3に記載の成形品、(ただしR=r
1/r2)を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本願発明について具体的に
説明する。本発明の(A)液晶ポリエステル樹脂は、サ
ーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステル
で、公知のものを使用できる。例えば、p−ヒドロキシ
安息香酸およびポリエチレンテレフタレートを主構成単
位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒド
ロキシ安息香酸および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸
を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステ
ル、p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロ
キシビフェニルならびにテレフタル酸を主構成単位とす
るサーモトロピック液晶ポリエステルなどが挙げられ、
特に制限はない。本発明で使用される液晶ポリエステル
としては、下記構造単位(イ)および/または(ロ)を
含み、必要に応じて(ハ)および/または(ニ)を含む
ものが好ましく用いられる。
【0007】
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】ここで、構造単位(イ)、(ロ)はそれぞ
れ、p−ヒドロキシ安息香酸から生成したポリエステル
の構造単位と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から生
成した構造単位である。構造単位(イ)および/または
(ロ)を使用することで、優れた耐熱性、流動性や剛性
などの機械的特性のバランスに優れた本発明の熱可塑性
樹脂組成物を得ることができる。上記構造単位(ハ)、
(ニ)中のXは、下記(式2)よりそれぞれ任意に1種
あるいは2種以上選択することができる。
【0012】
【化5】
【0013】構造式(ハ)において好ましいのは、エチ
レングリコール、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロ
キシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビ
スフェノールAそれぞれから生成した構造単位であり、
さらに好ましいのは、エチレングリコール、4,4’−
ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンであり、特に
好ましいのは、エチレングリコール、4,4’−ジヒド
ロキシビフェニルである。構造式(ニ)において好まし
いのは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ジカル
ボキシナフタレンそれぞれから生成した構造単位であ
り、さらに好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸
である。
【0014】構造式(ハ)および構造式(ニ)は、上記
に挙げた構造単位を少なくとも1種あるいは2種以上を
併用することができる。具体的には、2種以上併用する
場合、構造式(ハ)においては、1)エチレングリコー
ルから生成した構造単位/ハイドロキノンから生成した
構造単位、2)エチレングリコールから生成した構造単
位/4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構
造単位、3)ハイドロキノンから生成した構造単位/
4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単
位、などを挙げることができる。
【0015】また、構造式(ニ)においては、好ましい
ものとして、1)テレフタル酸から生成した構造単位/
イソフタル酸から生成した構造単位、2)テレフタル酸
から生成した構造単位/2,6−ジカルボキシナフタレ
ンから生成した構造単位、などを挙げることができる。
ここでテレフタル酸量は前記2成分中、好ましくは40
wt%以上、さらに好ましくは60wt%以上、特に好
ましくは80wt%以上である。液晶ポリエステル
(A)成分中の構造単位(イ)、(ロ)、(ハ)、
(ニ)の使用割合は特に限定されないが、好ましくは
(イ)10〜90モル%、(ロ)90〜0モル%、
(ハ)(ニ)0〜50モル%、さらに好ましくは(イ)
50〜80モル%、(ロ)50〜0モル%、(ハ)
(ニ)2〜30モル%である。なお、構造単位(ハ)と
(ニ)は基本的にほぼ等モル量となる。また、構造単位
(ロ)を用いる場合は1〜90モル%が好ましく、さら
に好ましくは5〜70モル%である。
【0016】次に、本発明の(B)成分は、スチレン系
樹脂あるいはポリフェニレンエーテル系樹脂である。ス
チレン系樹脂とは、ビニル芳香族化合物系重合体のこと
であり、具体的にはアタクティックポリスチレン、ハイ
インパクトポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン
共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共
重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、などがあげら
れる。そして、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリ
フェニレンエーテル単独でもよいし、変性ポリフェニレ
ンエーテルでもよい。ここで、変性ポリフェニレンエー
テルとは、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂お
よび/またはエラストマーとの混合物である。ここで、
エラストマーとしては、エチレン/プロピレン共重合
体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピ
レン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エ
チル共重合体、エチレン/ メタクリル酸グリシジル共
重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジ
ル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレ
イン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、
ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステル
ポリエステルエラストマー、ビニル芳香族化合物−共役
ジエン化合物ブロック共重合体、ビニル芳香族化合物−
共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物、など
が挙げられる。特にポリフェニレンエーテルとの親和性
の観点から、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブ
ロック共重合体、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合
物ブロック共重合体の水素添加物が好ましい。
【0017】ポリフェニレンエーテルとは、(式3)の
繰り返し単位構造
【化6】
【0018】(R1、R4は、それぞれ独立して、水素、
第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミ
ノアルキル、炭化水素オキシを表す。R2、R3は、それ
ぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アル
キル、フェニルを表す。)からなり、還元粘度(0.5
g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が、0.1
5〜1.0dl/gの範囲にあるホモ重合体及び/また
は共重合体である。さらに好ましい還元粘度は、0.2
0〜0.70dl/gの範囲、最も好ましくは0.40
〜0.60の範囲である。
【0019】ポリフェニレンエーテルの具体的な例とし
ては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエ
ーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フ
ェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル
−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジク
ロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さ
らに、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類
(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メ
チル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポ
リフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポ
リ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテ
ル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリ
メチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ
(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が
好ましい。
【0020】本発明で使用するポリフェニレンエーテル
の製造方法の例として、米国特許第3306874号明
細書記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒と
して用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法が
ある。米国特許第3306875号、同第325735
7号および同第3257358号の明細書、特公昭52
−17880号および特開昭50−51197号および
同63−152628号の各公報等に記載された方法も
ポリフェニレンエーテルの製造方法として好ましい。
【0021】本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂
は、重合行程後のパウダーのまま用いてもよいし、押出
機などを用いて、窒素ガス雰囲気下あるいは非窒素ガス
雰囲気下、脱揮下あるいは非脱揮下にて溶融混練するこ
とでペレット化して用いてもよい。
【0022】本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂
は、種々のジエノフィル化合物により官能化されたポリ
フェニレンエーテルも含まれる。ジエノフィル化合物に
は、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フ
ェニルマレイミド、イタコン酸、アクリル酸、メタクリ
ル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、グ
リシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ス
テアリルアクリレート、スチレンなどの化合物が挙げら
れる。さらにこれらジエノフィル化合物により官能化す
る方法としては、ラジカル発生剤存在下あるいは非存在
下で押出機などを用い、脱揮下あるいは非脱揮下にて溶
融状態で官能化してもよい。あるいはラジカル発生剤存
在下あるいは非存在下で、非溶融状態、すなわち室温以
上、かつ融点以下の温度範囲で、パウダーが固相状態
で、官能化してもよい。この際、ポリフェニレンエーテ
ルの融点は、示差熱走査型熱量計(DSC)の測定にお
いて、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流
量グラフで観測されるピークのピークトップ温度で定義
され、ピークトップ温度が複数ある場合にはその内の最
高の温度で定義される。あるいは、室温以上、ガラス転
移温度以下の温度範囲で、パウダーが固相状態で、官能
化してもよい。
【0023】本発明における(A)液晶ポリエステル樹
脂の配合量は、1〜99重量部で、好ましくは10〜9
0重量部で、さらに好ましくは30〜70重量部であ
る。この配合量が99重量部より多いと、外観が大きく
低下してしまう。この配合量が1重量部より少ないと、
剛性向上という補強効果が低下してしまう。
【0024】本発明における(B)成分の配合量は、1
〜99重量部で、好ましくは10〜90重量部で、さら
に好ましくは30〜70重量部である。この配合量が9
9重量部より多いと、剛性向上という補強効果が十分得
られない。また、この配合量が1重量部より少ないと、
外観が大きく低下してしまう。
【0025】本発明では、上記の成分の他に、本発明の
特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて他の附
加的成分、例えば、酸化防止剤、難燃剤(有機リン酸エ
ステル系化合物、シリコン化合物、フォスファゼン化合
物、籠状シルセスキオキサン化合物等)、エラストマ
ー、可塑剤(オイル、低分子量ポリエチレン、エポキシ
化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類
等)、難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン
用造核剤、スリップ剤、各種着色剤、離型剤等を添加し
てもかまわない。
【0026】本発明の樹脂組成物は種々の方法で製造す
ることができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロ
ール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバ
リーミキサー等による加熱溶融混練方法が挙げられる
が、中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ま
しい。この際の溶融混練温度は、(A)成分と(B)成
分の混合物を溶融混練できる温度であればよいが、好ま
しくはTb+80(℃)以上がよく、さらに好ましくは
Ta以上がよい。ここで、Tb(℃)とは(B)成分の
ガラス転移温度である。(B)成分のガラス転移温度
は、示差熱走査型熱量計(DSC)の測定において、2
0℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフ
で観測されるガラス転移温度に起因される一次転移温度
のオンセット温度値として定義される。また、Taと
は、(A)成分の融点である。(A)成分の融点は、示
差熱走査型熱量計(DSC)の測定において、20℃/
分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフで観測
されるピークのピークトップ温度で定義される。
【0027】また、押出機中で溶融混練された直後に急
冷して直径D1のストランドを得、その後、Ta(℃)
未満の温度雰囲気で延伸することが好ましい。さらにT
b以上、Ta未満の温度雰囲気で延伸することがより好
ましい。そして延伸することによって、1.2≦D1/
D2≦10を満たすように、直径(D2)のストランド
にした後、裁断することにより、約2〜4mmの長さの
ペレットにすることが好ましい。さらには、1.5≦D
1/D2≦8が好ましく、1.8≦D1/D2≦5がよ
り好ましい。ここでストランドとは、溶融した樹脂が冷
却により固化し、直径0.1〜15mmの円筒形ひも状
樹脂である。ここでD1/D2の比が1.2より小さい
と、延伸比が小さくなり、(A)成分の配向が小さくな
り、十分な補強効果が得られない。一方、この比が10
より大きいと、ペレットの径が小さくなりすぎ、取り扱
い性が低下する。
【0028】このようにして得られる本発明の樹脂組成
物は、以下の方法により優れた物性を有する成形体を得
ることができる。すなわち、本発明の成形方法は、射出
成形する際、シリンダー設定温度を次に示す温度、Tp
(℃)に設定することにより成形する。
【0029】Ta>Tp>Tb+80…式(1) Ta(℃):(A)成分の融点。 Tb(℃):(B)成分のガラス転移温度。
【0030】さらにTpとして好ましい温度範囲とし
て、以下の式(4)を満たす温度範囲がより好ましい。 (Ta由来ピークの低温側オンセット温度)>Tp>(Tb+90)…式(4)
【0031】こうすることにより、先に十分に延伸され
た(A)成分である分散相は十分延伸された状態を保
ち、連続相は、十分配向が緩和され、比較的等方的にな
る。優れた物性と外観が得られる。
【0032】本発明の方法により得られる成形品は、
(A)成分が分散相で、(B)成分が連続相で、かつ分
散相のアスペクト比が4以上である。本発明におけるア
スペクト比は以下のように定義される。すなわち、流動
方向と平行に薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡によ
り観察し、任意に30個の分散相を選択し、各々分散相
粒子の長径と、短径の比を求め、30個の平均値をと
る。このアスペクト比は4以上が好ましく、より好まし
くは5以上、さらに好ましくは7以上である。この値が
4未満だと補強効果が十分でなく、また引張り強度が十
分でない。
【0033】またこれらの成形品に対し、流動方向断面
において表層から深さ30μmにおける液晶ポリエステ
ル粒子のアスペクト比(r1)と中心部30μmにおけ
る液晶ポリエステル粒子のアスペクト比(r2)を、上
記の透過型電子顕微鏡観察から求め、比(R=r1/r
2)を算出する。外観、補強効果の観点から、この比が
0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.8以
上1.5以下がより好ましい。アスペクト比が高く、比
Rが1.0の値に近いことは、分散相は、表層部、中心
部、いずれの層も十分に配向していることを意味する。
本発明の成形品は、アスペクト比が高く、成形品の厚み
方向において、比較的アスペクト比のそろったモルフォ
ロジーをしており、物性の均一性、安定性に優れる。
【0034】これら成形品は、自動車用部品、家電・O
A用途部品に好ましく用いることができる。
【0035】本発明を以下、実施例に基づいて説明す
る。但し本発明はその主旨を越えない限り以下の実施例
に限定されるものではない。以下の原料を用いた。
【0036】液晶ポリエステル(LCP1):窒素雰囲
気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキ
シ−6−ナフトエ酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、
重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶
ポリエステル(以下「LCP1」と略すことがある。)
を得た。なお、組成の成分比はモル比を表す。DSCに
より求められた融点(Ta)は280℃であった。
【0037】
【化7】
【0038】液晶ポリエステル(LCP2):窒素雰囲
気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、ハイドロキノ
ン、2,6−ナフタレンジカルボン酸、無水酢酸を仕込
み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構
造式を有する液晶ポリエステル(以下「LCP2」と略
すことがある。)を得た。なお、組成の成分比はモル比
を表す。DSCにより求められた融点(Ta)は325
℃であった。
【0039】
【化8】
【0040】変性ポリフェニレンエーテル:ザイロン2
00H、旭化成(株)製(以下「PPE/PS」と略す
ことがある。)DSCにより求められたガラス転移温度
は、111℃であった。
【0041】ポリフェニレンエーテル:ポリフェニレン
エーテルパウダー(2,6−ジメチルフェノールを酸化
重合して得た還元粘度0.43のポリ(2,6−ジメチ
ル−1,4−フェニレンエーテル)(以下「PPE」と
略すことがある。)DSCにより求められたガラス転移
温度は、210℃であった。
【0042】各樹脂組成物の成形と物性評価を、以下の
方法に従って実施した。 (1)引張り強度および引張り弾性率 オートグラフ(AG−5000、島津製作所(株)社
製)、厚み3.2mmのASTMダンベル試験片を用
い、チャック間距離115mm、試験速度10mm/m
inで引っ張り試験を実施し、引張強度及び引張り弾性
率を測定した。
【0043】(2)外観 上記(1)で用いた試験片の外観を目視により観察し、
以下の判断基準に基づいて判断した。 ○:表面平滑性に優れ、光沢があるもの。 ×:表面がざらざらで、光沢がないもの。
【0044】(3)アスペクト比及びR(r1/r2) アスペクト比:上記(1)で用いたものと同様の試験片
の中央部あたりを流動方向に、ウルトラミクロトームを
用い、切片厚み100nmに切り出し、観察した。測定
機器は日本電子(株)製、透過型電子顕微鏡JEM−2
010を用い、加速電圧100Vで実施した。得られた
像において、任意に30個の分散相を選択し、各々分散
相粒子の長径と、短径の比を求め、30個の平均値をと
った。
【0045】R:流動方向断面において表層から深さ3
0μmにおける液晶ポリエステル粒子のアスペクト比を
r1とし、中心部30μmにおける液晶ポリエステル粒
子のアスペクト比をr2とした。R=r1/r2とし
た。
【0046】
【実施例1】(A)成分としてLCP1、(B)成分と
してPPE/PSを用い、表1に示す割合(重量部)
で、290℃に設定したベントポート付き二軸押出機
(ZSK−25;WERNER&PFLEIDERER
社製)を用いて溶融混練し、急冷し、約径3mmのスト
ランドを得た。これを約60℃近い温度雰囲気下で延伸
した後、ペレタイザーでペレットとして得た。この際の
径は約1mmであった。このペレットを用い、得られた
ペレットを、シリンダー温度260/260/260/
240℃(ノズル側/ホッパー側)、射速70%、金型
温度80℃に設定した射出成形機[IS−80EPN:
東芝機械(株)社製]を用いて成形を行った。上に示し
た方法により、物性評価を実施した。その結果を表1に
示した。
【0047】
【比較例1】射出成形機の設定温度を290/290/
290/250℃にしたこと以外は、実施例1と同様に
実施し、物性評価を実施した。その結果を表1に示し
た。
【0048】
【実施例2】径が約3mmのストランドを延伸により、
約1.5mmにしたことと(A)成分と(B)成分の配
合量を変えたこと以外は、実施例1と同様に実施し、物
性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0049】
【比較例2】射出成形機の設定温度を290/290/
290/250℃にしたこと以外は、実施例2と同様に
実施し、物性評価を実施した。その結果を表1に示し
た。
【0050】
【比較例3】LCP1を用いなかったこと以外は、実施
例1と同様に実施し、物性評価を実施した。その結果を
表1に示した。
【0051】
【実施例3】(A)成分としてLCP2、(B)成分と
してPPEを用い、表1に示す割合(重量部)にしたこ
とと、射出成形機の設定温度を300/300/300
/260℃(ノズル側/ホッパー側)、射速90%、金
型温度130℃としたこと以外は、実施例1と同様に実
施し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0052】
【比較例4】射出成形機の設定温度を340/340/
340/250℃にしたこと以外は、実施例3と同様に
実施し、物性評価を実施した。その結果を表1に示し
た。
【0053】
【比較例5】LCP2を用いなかったこと以外は、実施
例3と同様に実施し、物性評価を実施した。その結果を
表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
【発明の効果】本発明により、十分な補強効果、すなわ
ち優れた引張り強度と弾性率及び外観に優れる樹脂製射
出成形品を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 67/00 C08L 67/00 71/12 71/12 // B29K 67:00 B29K 67:00 71:00 71:00 Fターム(参考) 4F071 AA22 AA43 AA51 AA84 AA86 AH07 AH12 BA01 BB06 4F201 AA13K AA24 AA32K AH17 AH33 AH42 BA02 BC01 BC02 BC12 BC15 BC37 BD04 BL13 BL25 BL42 BL43 4F206 AA13 AA24 AA32 AH17 AH42 AH53 JA07 JM01 JN03 JQ81 4J002 BC02X CF18W CH07X GN00 GQ00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)液晶ポリエステル樹脂1〜99重
    量部および(B)スチレン系樹脂あるいはポリフェニレ
    ンエーテル系樹脂99〜1重量部とからなる樹脂組成物
    を、以下の式(1)を満たすTp(℃)の温度で射出成
    形することを特徴とする成形品の製造方法。 Ta>Tp>Tb+80…式(1) Ta(℃):(A)成分の融点。 Tb(℃):(B)成分のガラス転移温度。
  2. 【請求項2】 樹脂組成物が、押出機中で溶融混練され
    た直後に急冷することにより直径D1のストランドを
    得、その後、Ta(℃)未満の温度雰囲気で延伸するこ
    とにより、1.2≦D1/D2≦10を満たすように、
    直径D2のストランドにした後、ペレット化されること
    を特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の方法により成
    形され、(A)成分が分散相で、(B)成分が連続相
    で、かつ分散相のアスペクト比が4以上であることを特
    徴とする樹脂製成形品。
  4. 【請求項4】 流動方向断面において表層から深さ30
    μmにおける液晶ポリエステル粒子のアスペクト比(r
    1)と中心部30μmにおける液晶ポリエステル粒子の
    アスペクト比(r2)の比(R)が0.5以上2.0以
    下であることを特徴とする請求項3に記載の成形品(た
    だしR=r1/r2)。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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