JP2002338070A - 用紙供給装置および印刷装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡易な構成で複数種類の用紙をセットし、選
択して供給することができる用紙供給装置を提供する。 【解決手段】 複数の用紙トレイ２０、３０および４０
を上下に重ねる際に、平面的には一部分だけが重なるよ
うにして、下方のトレイ２０が上方のトレイ３０と重な
らずに空いたスペース１５ａにピックアップ用のローラ
５２ａを配置することにより、全体が薄くコンパクトな
構成の用紙供給装置（マルチトレイ）１０を実現してい
る。このマルチトレイ１０を搭載することにより、コン
パクトなパーソナルタイプで所望のサイズあるいは種類
の異なる用紙にユーザが手軽に印刷できるプリンタを提
供できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、サイズの異なる用
紙を収納可能な用紙供給装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】サイズまたは種類の異なる用紙を収納可
能な複数の用紙トレイと、各々の用紙トレイに収納され
た用紙をピックアップする複数のピックアップ装置とを
上下に配置し、所望の用紙を選択して印刷することがで
きるプリンタあるいは複写機が知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】これらのプリンタある
いは複写機は、種類あるいはサイズの異なる用紙が予め
セットされているので、種類あるいはサイズの異なる用
紙に印刷しようとしたときに用紙を入れ替える必要がな
く便利である。しかしながら、複数の用紙トレイとピッ
クアップ装置を上下に配置しているために、印刷装置の
うち、用紙を供給する部分の占める体積が非常に大きく
なり、大型のプリンタあるいは複写機でしか採用されて
いない。多くの印刷装置では、ほぼ３種類以上の異なる
用紙を収納しようとすると、用紙を供給する部分の体積
が印刷する部分よりも大きくなってしまい、サイズ的に
も、また、経済的にもコンパクトでパーソナルユースに
適したプリンタでは採用することができない。

【０００４】したがって、インクジェットプリンタで写
真を出力するときに、カラーバランスなどを調整した後
に上質紙に印刷しようとすると、プリンタにセットされ
ている用紙を全て交換する必要がある。また、ワープロ
用にＡ４サイズの用紙をセットしていた場合は、それを
取り除いて、写真に適したＡ６サイズなどの小サイズの
用紙をセットする必要がある。

【０００５】そこで、本発明においては、コンパクトで
簡易な構成でありながら、複数種類の用紙を予めセット
しておける用紙供給装置およびそれを備えた印刷装置を
提供することを目的としている。そして、インクジェッ
トタイプなどのパーソナルユースのプリンタにおいて
も、複数種類の用紙をセット可能とし、所望のサイズあ
るいは種類の異なる用紙にユーザが手軽に印刷できるよ
うにすることを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】このため、本発明の用紙
供給装置においては、用紙トレイを上下に重ねる際に、
平面的には一部分だけが重なるようにして、下方のトレ
イが上方のトレイと重ならずに空いたスペースにピック
アップ用のローラあるいはベルトを配置し、全体が薄く
コンパクトな構成で複数種類の用紙をセットできるよう
にしている。すなわち、本発明の用紙供給装置は、平面
的に１部が重なるように上下に配置され、各々が底板
と、両側板と、給紙方向に分離板とを備えた複数の印刷
用紙を保持可能な複数の用紙トレイと、下方の用紙トレ
イに対し、上方の用紙トレイと重ならないスペースを介
して上方からアクセスし、下方の用紙トレイの印刷用紙
をピックアップ可能なローラまたはベルトとを有する。

【０００７】本発明の用紙供給装置では、複数の用紙ト
レイを用いる際に、それらの用紙トレイと、各々の用紙
トレイに収納された用紙をピックアップするローラある
いはベルトというピックアップ装置とを上下に順番に配
置するのではなく、複数の用紙トレイを平面的には一部
重なるように上下に配置し、下方の用紙トレイに対して
平面的に空いたスペースを介して上方からピックアップ
用のローラあるいはベルトがアクセスできるようにして
いる。このため、下方の用紙トレイから用紙をピックア
ップするローラあるいはベルトを、上方の用紙トレイが
占める位置あるいは高さに配置することができる。した
がって、各々の用紙トレイと、それらに対応したピック
アップ装置を順番に重ねて配置するのに比較し、ピック
アップ装置を配置するための高さ方向のスペース（厚
み）を省くことができる。このため、複数の種類の異な
る用紙を同時に収納可能で、薄くコンパクトな用紙供給
装置を提供することができる。

【０００８】また、複数の用紙トレイを上下に重ねて配
置しているので、水平方向に用紙トレイを並べて配置す
るのに比較し、よりコンパクトになる。さらに、上下方
向に並べることにより、プリンティングする部分に対
し、種類の異なる用紙を同じ紙経路で供給することが可
能となる。

【０００９】したがって、本発明の用紙供給装置と、こ
の用紙供給装置から供給された用紙に印刷するプリンテ
ィング部とを組み合わせることにより、卓上などに容易
に設置できるパーソナルなサイズの低コストな印刷装置
を提供できる。そして、この印刷装置は、複数種類の用
紙を同時にセットし、いつでもユーザの要望により自由
に用紙サイズや用紙の種類を選択して印刷できる使い勝
手の良い印刷装置となる。さらに、各々の用紙トレイの
両側板の少なくともいずれか一方が紙幅方向の位置を変
えられるようになっていれば、それぞれの用紙トレイに
所望のサイズの用紙をセットすることができる。

【００１０】本発明の用紙供給装置においては、各々の
用紙トレイに対し上方からアクセスできるので、縦方向
あるいは紙幅方向に移動可能なピックアップ用のローラ
あるいはベルトを各用紙トレイに対し共通なローラある
いはベルトとして設けることも可能である。しかしなが
ら、ピックアップ用のローラあるいはベルトを紙幅方向
に移動する機構を導入する必要があるので、その機構を
設置するスペースが必要になり、また、そのような機構
を導入するためにコストが新たに発生する可能性があ
る。したがって、各々の用紙トレイに対応した複数のロ
ーラまたはベルトを設けることが望ましい。

【００１１】これらのピックアップ用のローラまたはベ
ルトは、対応する各々の用紙トレイに収納可能な用紙の
最上面の位置に固定して配置し、ボトムプレートなどに
よってピックアップローラに用紙を押し付けるようにし
ても良い。また、すべての用紙トレイを、それらに対し
て上方からアクセスできるように配置することにより、
複数の用紙トレイから用紙をピックアップするためのロ
ーラあるいはベルトを駆動するモータやモータからの動
力を伝達する機構をすべて同じ高さ（レベル）に配置す
ることも可能である。そして、ピックアップするための
装置の支持機構、駆動機構および選択機構などの少なく
ともいずれかを１つの階層に集中できるので、構造も簡
易となり、さらにコンパクトな用紙供給装置を提供でき
る。そのために、紙送りするときに各々のローラまたは
ベルトが印刷用紙の上面に接するように旋回支持する複
数のアームを設けることが可能である。アームの旋回半
径によりローラまたはベルトが用紙と接触するレベルが
自動的に調整される。したがって、各々のローラまたは
ベルトのアームを支持する共通のシャフトを最上段の用
紙トレイの上方に配置することが可能となり、各々のロ
ーラまたはベルトを支持する構成が簡単になる。

【００１２】すなわち、各々の用紙トレイに対応した複
数のローラまたはベルトと、ローラまたはベルトが印刷
用紙の上面に接するようにそれぞれを旋回支持する複数
のアームと、ローラまたはベルトを印刷用紙の上面に押
し付ける負荷機構と、ローラまたはベルトの１つを選択
して駆動する選択機構とを有する用紙供給装置を提供で
きる。負荷機構としては、ばねなどの弾性を用いた機構
を採用することも可能であるし、モータなどでアームを
旋回させても良い。アームを旋回させるためにローラま
たはベルトを駆動するモータの動力を利用することも可
能である。また、選択機構は、個々のローラあるいはベ
ルトがそれぞれモータで駆動される場合はそれらのモー
タである。また、ローラあるいはベルトが共通の駆動シ
ャフトにより駆動される場合は駆動シャフトから動力を
選択して伝達する電動クラッチなどの伝達機構が選択機
構となる。

【００１３】すなわち、各々のピックアップ用のローラ
またはベルトを駆動するには、各々のローラまたはベル
トを個別に駆動する複数のモータを設けることが可能で
ある。そして、これらのモータおよびその減速機構を、
ピックアップ用のベルトの一方のプーリ、すなわち、印
刷用紙側あるいは側板などに支持する側のプーリ、また
はローラに内蔵することができる。あるいは、ピックア
ップ用の複数のローラまたはベルトを駆動する共通の駆
動シャフトを設け、この駆動シャフトからの動力を各々
のローラまたはベルトに対し、各々のローラまたはベル
トに対応した電動クラッチを介して伝達しても良い。電
動クラッチとしては、コイルバネを利用したクラッチが
使用でき、簡易な構成でコンパクトに設置でき、制御も
簡単である。

【００１４】本発明の用紙供給装置において、上方の空
いたスペースを介してピックアップ用のローラまたはベ
ルトが用紙トレイにアクセスできるよう複数の用紙トレ
イを配置するには、用紙トレイの両端または中央にロー
ラまたはベルトを配置するのではなく、一方の端または
端に近い位置にそれらを配置することが望ましい。この
ため、各々のローラまたはベルトを各々の用紙トレイの
両側板の一方に沿って配置し、用紙トレイに収納された
用紙の一方の端をローラまたはベルトでピックアップす
ることが望ましい。そして、ローラまたはベルトを一方
の側板に沿って配置することにより、用紙をピックアッ
プのためにローラまたはベルトで紙送りする力を加える
ポイントと、用紙の側片をガイドする側板との距離が近
づき、用紙の腰の強さを利用して歪み無く用紙を紙送り
することができる。

【００１５】したがって、用紙トレイ毎に、両側板の少
なくとも一方の側板の位置が可変である場合は、ピック
アップ用のローラまたはベルトを、位置が可変な側板と
連動して紙幅方向に動かし、側板とローラまたはベルト
との距離が大きくならないようにすることが望ましい。
または、両側板の一方の側板は用紙トレイ毎に異なる位
置に固定し、他方の側板は位置が可変とすると共に、ロ
ーラまたはベルトは、位置が固定された側板に沿って配
置することが望ましい。

【００１６】ピックアップ用のローラまたはベルトが配
置された側の側板の位置を可変とすると、反対側の側板
の位置を固定できるので、用紙トレイの構造は簡易にな
る。しかしながら、同一サイズの用紙をセットしようと
すると紙幅が同じになるので、用紙の向きを変える必要
があり、それに応じてプリンティング部に供給する印刷
データを変える必要が生ずる。一方、側板の両方を移動
可能にすると、プリンティング部で印刷する範囲がバリ
アブルになり、設定が面倒である。これに対し、用紙ト
レイ毎に異なる位置に一方の側板を固定し、他方を移動
可能にすると共に、ローラまたはベルトを位置が固定さ
れた側板に沿って配置することにより、どのようなサイ
ズの用紙に対しても用紙トレイの少なくとも一方の側板
の位置は決まる。したがって、用紙トレイが決まれば印
刷を開始または終了する位置が決まるので、プリンティ
ング部にはその用紙トレイにセットされている用紙サイ
ズまたは紙幅を制御データとしてセットすれば適切な範
囲で印刷することができる。

【００１７】したがって、この用紙供給装置を備えた印
刷装置においては、位置が固定された側板の位置、また
はそれに関連した位置を、印刷を開始および／または終
了する位置として利用できるように記憶した制御部を設
けることにより、用紙トレイ毎に印刷開始位置をプリセ
ットしておくことができる。そして、用紙トレイが選択
されると、位置が固定された側板の位置、またはそれに
関連した位置を、印刷を開始および／または終了する位
置とし、選択された用紙サイズに基づき紙幅方向の印刷
する領域を決定する工程を有する制御方法で印刷を行う
ことができる。この制御方法では、選択された用紙トレ
イと、その用紙トレイにセットされた用紙サイズによっ
て印刷範囲が変わるのでプログラムにより行うことが望
ましく、上記の工程を実行するための命令を備えたプロ
グラムを印刷装置にインストールされるファームウェア
あるいはホストとなるコンピュータにインストールされ
るドライバソフトウェアとしてプロセッサに読み取り可
能なＲＯＭあるいはコンピュータに読み取り可能なＣＤ
−ＲＯＭなどの適当な記録媒体に記録して提供すること
ができる。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下に図面を参照して本発明につ
いてさらに説明する。図１に、本発明に係る用紙供給装
置を備えたプリンタの概要を示してある。このプリンタ
１は、複数のサイズの用紙が同時にセットできる用紙供
給装置（以降ではマルチトレイと称する）１０と、この
マルチトレイ１０から供給された用紙２に印刷するプリ
ンティング部３とを備えている。本例のプリンティング
部３は、用紙フィーダ４と、インクジェットタイプの印
刷ヘッド５と、排紙フィーダ６とを備えているが、プリ
ンティング部３の構成はこれに限定されるものではな
い。さらに、プリンティング部３は、ホストとなるコン
ピュータ８から印刷データおよびコマンドを受信し、そ
れに基づいてヘッド５、フィーダ４あるいは６、さら
に、マルチトレイ１０を制御する制御部７を備えてい
る。

【００１９】図２に、本例のマルチトレイ１０の概要を
斜視図で示してあり、図３にマルチトレイ１０を正面あ
るいは上方Ａから見た様子を示してある。このマルチト
レイ１０は、両側壁１９ａおよび１９ｂと、底板１８と
によりアウターケース１７が構成されており、その中に
３つの用紙トレイ２０、３０および４０が下方からこの
順番で上方に重ねられている。各々の用紙トレイ２０、
３０および４０は、底板２１、３１および４１と、左側
板２２、３２および４２と、分離板２３、３３および４
３とを備えている。底板２１、３１および４１は、数１
０枚から１００枚程度の用紙を収納可能な厚みを開けて
上下に配置されている。また、各々の用紙トレイ２０、
３０および４０の右側板はアウターケース１７の右側の
側板１９ｂが兼ねている。

【００２０】左側板２２、３２および４２はアウターケ
ース１７の内部を紙幅方向Ｗに横断するように配置され
た支持シャフト１６により紙幅方向Ｗに移動可能なよう
になっている。底板３１および４１は左右に分離してお
り、上方Ａから見て、左側の底板３１ａおよび４１ａと
最下段のトレイ２０の底板２１は、左側板３２、４２お
よび２２と一体になっており、これらの左側板２２、３
２および４２を移動すると対応する底板２１、３１ａお
よび４１ａも動く。一方、右側の底板３１ｂおよび４１
ｂはアウターケース１７の右側板１９ｂに固定されてい
る。最下段の用紙トレイ２０の底板２１はアウターケー
ス１７の底板１８の上に配置されており、底板１８が最
下段の用紙トレイ２０の底板を兼ねている。

【００２１】図２および図３に示した状態では、各々の
用紙トレイ２０、３０および４０の左側板２２、３２お
よび４２は、右側板１９ｂとの間の距離が、各々、２１
０ｍｍ、１４８ｍｍおよび１０５ｍｍ程度にセットされ
ている。このため、各々の用紙トレイ２０、３０および
４０は、Ａ４サイズ（２１０×２９７ｍｍ）の用紙２
ａ、Ａ５サイズ（１４８×２１０ｍｍ）の用紙２ｂおよ
びＡ６サイズ（１０５×１４８ｍｍ）の用紙２ｃを収納
するのに適した状態となっている。したがって、本例の
マルチトレイ１０は、複数のサイズの異なる用紙２ａ、
２ｂおよび２ｃを収納可能な用紙トレイ２０、３０およ
び４０が、右側板１９ｂが共通となるように平面的には
一部重複した状態で、上下に配置されている。

【００２２】各々の用紙トレイ２０、３０および４０の
左側板２２、３２および４２の側には、支持シャフト１
６に対しアーム５１ａ、５１ｂおよび５１ｃにより各々
が旋回可能に取り付けられたピックアップローラ５２
ａ、５２ｂおよび５２ｃが設けられている。左側板２
２、３２および４２は、上記のように、各々の用紙サイ
ズに合わせて配置されているので、最下段の用紙トレイ
２０の左側板２２と中間の用紙トレイ３０の左側板３２
の間には６０ｍｍ程度の空間１５ａがあり、中間の用紙
トレイ３０の左側板３２と最上段の用紙トレイ４０の左
側板４２との間にも４０ｍｍ程度の空間１５ｂがある。
最下段の用紙トレイ２０のピックアップローラ５２ａ
は、左側板２２に沿って配置されているので、中間の用
紙トレイ３０と重ならないスペース１５ａで上下方向に
動き、このスペース１５ａを介して最下段の用紙トレイ
２０に収納された用紙２ａにアクセスできる。また、中
間の用紙トレイ３０のピックアップローラ５２ｂは、左
側板３２に沿って配置されているので、最上段の用紙ト
レイ４０と重ならないスペース１５ｂで上下方向に動
き、中間の用紙トレイ３０に収納された用紙２ｂにアク
セスできる。最上段のトレイ４０のピックアップローラ
５２ｃは、上方にアクセスを遮るトレイがないのでトレ
イ４０に収納された用紙２ｃにアクセスできる。

【００２３】これらのピックアップローラ５２ａ、５２
ｂおよび５２ｃは、正転（右側方から見て時計方向）に
回転すると、各々の用紙トレイ２０、３０および４０に
収納された用紙２ａ、２ｂおよび２ｃに対しプリンティ
ング部３の方向（給紙方向）Ｆの紙送り力を与えること
ができる。そして、用紙２ａ、２ｂおよび２ｃの先端
は、各々のトレイ２０、３０および４０の給紙方向Ｆに
設けられた分離板２３、３３および４３にそれぞれ当
り、最上部の一枚の用紙２ａ、２ｂおよび２ｃがプリン
ティング部３に給紙される。本例では、最下段の用紙ト
レイ２０の分離板２３は、アウターケーシング１７の給
紙側Ｆの壁を兼ねている。

【００２４】図４に、本例のピックアップローラの構成
および動作を示してある。ピックアップローラ５２ａ、
５２ｂおよび５２ｃの構成は共通であり、図４では最上
段の用紙トレイ４０のピックアップローラ５２ｃを参考
に説明する。図４（ａ）に示すように、ピックアップロ
ーラ５２ｃは、モータ５９と減速用のギアボックス５８
を内蔵したローラ本体５７の外側にゴム製の被覆５６を
施したものであり、支持シャフト１６にアーム５１ｃに
より旋回可能に取り付けられている。そして、ローラ５
７と支持シャフト１６とに細い紐状の補助ベルト５５が
取り付けられている。モータ５９の本体はアーム５１ｃ
に固定されており、モータシャフトにギアボックス５８
が繋がり、ギアボックス５８を介してローラ本体５７が
駆動される。

【００２５】したがって、図４（ｂ）に示すように、モ
ータ５９が正転（時計方向）すると、ローラ本体５７に
より補助ベルト５５が時計方向に回転し、支持シャフト
１６に対してアーム５１ｃを反時計方向に駆動する。こ
れにより、ピックアップローラ５２ｃは用紙２ｃの最上
部に押し付けられる。したがって、モータ５９と補助ベ
ルト５５との組み合わせが、ローラ５２ｃを印刷用紙２
ｃの上面に押し付ける負荷機構として機能する。ピック
アップローラ５２ｃの表面はゴム５６により覆われてい
るので、ピックアップローラ５２ｃと用紙２ｃとの間に
十分な摩擦力が働き、用紙２ｃは給紙方向Ｆに紙送りさ
れる。また、いったんピックアップローラ５２ｃが用紙
２ｃに接触すると、摩擦力によりピックアップローラ５
２ｃには給紙方向Ｆと反対側に力が働く。このため、ピ
ックアップローラ５２ｃはアーム５１ｃにより旋回する
ようになっているので、ピックアップローラ５２ｃはよ
り強く用紙２ｃに押し付けられ、確実に紙送りすること
ができる。そして、最上部の用紙２ｃが分離壁４３によ
って分離され、一枚づつプリンティング部３に供給され
る。

【００２６】一方、図４（ｃ）に示すように、モータ５
９が逆転（反時計方向）すると、補助ベルト５５が反時
計方向に回転し、支持シャフト１６に対しアーム５１ｃ
が時計方向に回転する。したがって、ピックアップロー
ラ５２ｃは用紙２ｃから離れる。本例のマルチトレイ１
０では、ピックアップローラ５２ｃにより紙送りされた
用紙２ｃがプリンティング部３のフィードローラ４に食
い込むまでの一定時間だけ正転し、その後、逆転する。
これにより、フィードローラ４により紙送りされる間は
ピックアップローラ５２ｃが用紙２ｃから完全に離れる
ので、抵抗とならず、フィードローラ４の負荷を低減す
ることができる。側板４２には、アーム５１ｃが上方に
回転しすぎるのを防止するためのストッパ５４が設けら
れている。

【００２７】ピックアップローラ５２ｃを断面がＤ字型
になるようにカットあるいは成形して、ローラが一回転
するとフィードローラ４に用紙２ｃを供給でき、その後
は抵抗にならないようにすることも可能であるが、ピッ
クアップローラ５２ｃの径が大きくなり、薄くコンパク
トな設計が難しい。したがって、本例のマルチトレイ１
０では、アーム５１ｃを用いて逆転するとフリーになる
機構とし、用紙２ｃがフィードローラ４に到達するまで
ピックアップローラ５２ｃを回転可能とすることにより
ピックアップローラ５２ｃの径を小さくしている。

【００２８】さらに、このアーム５１ｃによりピックア
ップローラ５２ｃを支持シャフト１６から支持する機構
を採用することにより、同様の構成で他のトレイ２０お
よび３０にアクセスするピックアップローラ５２ａおよ
び５２ｂを支持することができる。図５（ａ）、（ｂ）
および（ｃ）に、各々のピックアップローラ５２ａ、５
２ｂおよび５２ｃが、用紙トレイ２０、３０および４０
に収納された用紙２ａ、２ｂおよび２ｃにアクセスする
様子を示してある。これらのピックアップローラ５２ａ
および５２ｂの構成と動作は上述したピックアップロー
ラ５２ｃと同様である。したがって、ピックアップロー
ラ５２ａ、５２ｂあるいは５２ｃに内蔵されたモータ５
９がこれらのローラのいずれかを選択する機構として機
能する。そして、選択されたモータ５９が駆動すること
により、ピックアップローラ５２ａ、５２ｂおよび５２
ｃのいずれかが回転すると共に、それを支持するアーム
５１ａ、５１ｃおよび５１ｃのいずれかが旋回し、トレ
イ２０、３０および４０に収納された用紙２ａ、２ｂお
よび２ｃのいずれかを選択して紙送りすることができ
る。

【００２９】本例のマルチトレイ１０においては、左側
壁４２の近傍にピックアップローラ５２ｃを配置してい
る。このため、ピックアップローラ５２ｃにより用紙２
ｃの一方の端に力を与えて紙送りするときに、用紙の他
方の端などに抵抗があり、モーメントが発生したとして
も、ピックアップローラ５２ｃと左側壁４２との距離が
近いので、用紙２ｃが歪むことがなくモーメントなどに
対抗し、用紙２ｃを側板４２に沿って真っ直ぐに給紙す
ることができる。すなわち、ピックアップローラ５２ｃ
を側板４２の近傍に配置することにより、用紙２ｃの腰
の強さを用いてスキューの要因となる力に対抗すること
が可能であり、用紙２ｃの一方の端をピックアップロー
ラ５２ｃで駆動するだけで真っ直ぐに紙送りすることが
できる。したがって、ピックアップローラ５２ｃは左側
板４２と共に紙幅方向Ｗに移動するようになっている。
このため、トレイ４０にセットされる用紙に合わせて左
側板４２を移動するときはピックアップローラ５２ｃも
共に動いて側板４２とピックアップローラ５２ｃとの間
隔は一定に保たれ、常に側板４２に沿って真っ直ぐに用
紙２ｃをピックアップできるようになっている。

【００３０】他のトレイ２０および３０の用紙をピック
アップするローラ５２ａおよび５２ｂも同様の構成とな
っている。すなわち、それぞれの左側壁２２および３２
の近傍に配置されたローラ５２ａおよび５２ｂにより、
側壁２２および３２にそれぞれ沿って真っ直ぐに用紙２
ａおよび２ｂを給紙することができる。また、左側板２
２あるいは３２をトレイ２０あるいは３０にセットされ
る用紙２ａあるいは２ｂに合わせて移動するときは、ロ
ーラ５２ａあるいは５２ｂも共に移動し、トレイにセッ
トされる用紙の紙幅が変更になっても真っ直ぐに送り出
すことができる。

【００３１】さらに、本例のマルチトレイ１０では、各
々の用紙トレイ２０、３０および４０を一部が重なるよ
うに上下に配置しているので、ローラ５２ａおよび５２
ｂがそれぞれ用紙２ａおよび２ｂにアクセスできる空間
１５ａおよび１５ｂを用紙の両側あるいは中央に配置す
ることは難しい。しかしながら、ピックアップローラを
側壁に沿って配置することにより、用紙の一方の端にア
クセス可能な空間が用意できれば、その空間を通じて各
々の用紙２ａおよび２ｂを確実に紙詰まり無く紙送りす
ることができる。

【００３２】このように、本例のマルチトレイ１０で
は、用紙トレイ２０、３０および４０と、それらの用紙
トレイに収納された用紙２ａ、２ｂおよび２ｃをピック
アップするためのローラ５２ａ、５２ｂおよび５２ｃを
単純に上下あるいは左右に配置するのではなく、複数の
用紙トレイ２０、３０および４０を平面的には一部重な
るように上下に配置し、下方のトレイ２０および３０の
ピックアップローラ５２ａおよび５２ｂを下方の用紙ト
レイ２０および３０に対しては上方が空いたスペース１
５ａおよび１５ｂを通してそれぞれのトレイ２０および
３０にアクセスできるようにしている。このため、下方
の用紙トレイ２０および３０のピックアップローラ５２
ａおよび５２ｂを、上方の用紙トレイ３０および４０と
高さ方向では重ねて、同一のレベルで配置することが可
能となる。さらに、最上段の用紙トレイ４０のピックア
ップローラ５２ｃと同じレベルから最下段の用紙トレイ
２０にアクセスできるので、これらのピックアップロー
ラ５２ａ、５２ｂおよび５２ｃを同一レベルあるいは高
さに設けた支持シャフト１６により支持することができ
る。

【００３３】このように、本例のマルチトレイ１０で
は、下方のトレイに対し、中間あるいは上方のトレイに
邪魔されることなくピックアップローラがアクセスする
ことができる。したがって、複数のサイズの異なる用紙
２ａ、２ｂおよび２ｃを同時に収納することができ、そ
れらの用紙の１つを自由に選択し、同一の紙経路でプリ
ンティング部３に送り込むことが可能な装置を非常に簡
易な構成で、薄くコンパクトにすることが可能となる。

【００３４】このため、本例のマルチトレイ１０を搭載
したプリンタ１は、卓上などに容易に置けるパーソナル
なサイズの低コストなプリンタでありながら、複数種類
の用紙を同時にセットし、いつでもユーザの要望により
自由に用紙サイズや用紙の種類を選択して印刷できる使
い勝手の良いプリンタとなる。たとえば、インクジェッ
トタイプのプリンタ１であれば、マルチトレイ１０にセ
ットされた用紙を入れ替えずに、最下段のトレイ２０に
セットされたＡ４サイズの普通紙２ａを用いて写真を出
力するための予備印刷を行いカラーバランスなどを調整
した後に、最上段のトレイ４０のＡ６サイズの写真用の
上質紙に印刷することができる。あるいは、伝票などに
出力するデータをワープロで作成し最下段のトレイ２０
のＡ４サイズの用紙２ａに出力して校正した後、中間の
用紙トレイ３０に収納されたＡ５サイズで所定のフォー
マットが印刷された伝票用紙２ｂに出力することができ
る。

【００３５】さらに、本例のマルチトレイ１０には、サ
イズの異なる用紙だけではなく、サイズが同じ用紙であ
ってもセットすることができる。最も簡単な方法は、用
紙の向きを変えてセットすることであり、たとえば、最
下段のトレイ２０にＡ５サイズの用紙を横長にセットす
ることにより、中間のトレイ３０と最下段のトレイ２０
にＡ５サイズで異なったフォーマット或いは紙質の用紙
をセットし、簡単に使い分けることができる。さらに
は、本例のマルチトレイ１０では、各トレイ２０、３０
および４０の右側板として、これらのトレイに共通とな
る壁体１９ｂを用いているが、各々のトレイに独立して
紙幅方向Ｗに移動可能な右側板を設けることにより、サ
イズが同じ用紙を異なる用紙トレイに同じ向きでセット
することができる。たとえば、最下段の用紙トレイ２０
の右側板が移動できるようにすれば、最下段のトレイ２
０と中間のトレイ３０にＡ５サイズの用紙を同じ向きで
セットし、使い分けることができる。

【００３６】図６に、本発明のマルチトレイ１０の異な
る例を示してある。図３に示したマルチトレイでは、側
板、たとえば、最下段のトレイ２０の両方の側壁が移動
可能にすると、プリンティング部３で印刷する範囲がバ
リアブルになり、フレキシビリティが高い反面、印刷範
囲の設定が面倒になる。すなわち、側壁を動かす度に、
印刷を開始するポイントをプリンタ１あるいはそのプリ
ンタにデータを伝送するホストコンピュータのドライバ
などの機能を用いて設定する必要がある。そこで、本例
のマルチトレイ１０では、各々のピックアップローラ５
２ａ、５２ｂおよび５２ｃが沿って配置された側板２
２、３２および４２は位置を固定し、これらの反対側の
側板２４、３４および４４が移動できるようにしてい
る。

【００３７】本例のマルチトレイ１０は、４つの用紙ト
レイ２０、３０、４０および４５を備えており、これら
が一部重複するように上下に配置されている。もっとも
上方のトレイ４０には、Ａ６サイズ（１０５×１４８ｍ
ｍ）の用紙２ｃがセットされ、その下の用紙トレイ４５
にはＡ５サイズ（１４８×２１０ｍｍ）の用紙２ｄがセ
ットされ、その下の用紙トレイ３０にはＢ５サイズ（１
８２×２５７ｍｍ）の用紙２ｂがセットされ、最も下の
用紙トレイ２０にはＡ４サイズ（２１０×２９７）の用
紙２ａがセットされる。そして、各々の用紙トレイ２
０、３０、４５および４０から用紙をピックアップする
ローラ５２ａ、５２ｂ、５２ｄおよび５２ｃは、各々の
用紙トレイ２０、３０、４５および４０の右側に、側壁
２２、３２、４７および４２に沿って配置されている。
さらに、各々のピックアップローラ５２ａ、５２ｂおよ
び５２ｄは、上方のトレイと重ならないスペースに配置
されている。すなわち、用紙トレイ２０に収納された用
紙２ａをピックアップするピックアップローラ５２ａ
は、上の用紙トレイ３０と重ならないスペース１５ａに
配置され、用紙トレイ３０に収納された用紙２ｂをピッ
クアップするピックアップローラ５２ｂは上の用紙トレ
イ４５と重ならないスペース１５ｂに配置され、用紙ト
レイ４５に収納された用紙２ｄをピックアップするロー
ラ５２ｄは上の用紙トレイ４０と重ならないスペース１
５ｃに配置されている。

【００３８】各々のピックアップローラ５２ａ、５２
ｂ、５２ｃおよび５２ｄの構造は上述したピックアップ
ローラと同様であり、また、各々のピックアップローラ
はアーム５１ａ、５１ｂ、５１ｃおよび５１ｄで支持さ
れていることも同様である。本例のマルチトレイ１０に
おいては、各々のピックアップローラ５２ａ、５２ｂ、
５２ｃおよび５２ｄを移動する必要がないので、これら
のアーム５１ａ、５１ｂ、５１ｃおよび５１ｄはそれぞ
れ独立した支持シャフト１６により側壁２２、３２、４
２および４７から支持されている。したがって、各々の
支持シャフト１６の平面的な位置および高さを各々のト
レイ２０、３０、４０および４５で変更することも可能
な構造となっている。また、これらのアーム５１ａ、５
１ｂ、５１ｃおよび５１ｄの先端には、支持シャフト１
６に一端が取り付けられたばね８１の他端が取り付けら
れており、ピックアップローラ５２ａ、５２ｂ、５２ｃ
および５２ｄは、ばね８１が負荷機構となってそれぞれ
の用紙２ａ、２ｂ、２ｃおよび２ｄの上面に押し付けら
れるようになっている。

【００３９】本例のマルチトレイ１０は、各々のトレイ
２０、３０、４５および４０のピックアップローラ５２
ａ、５２ｂ、５２ｄおよび５２ｃが取り付けできる位置
に右側の側板２２、３２、４７および４２が固定されて
いる。そして、左側の側板２４、３４、４９および４４
を移動することができる。したがって、どのサイズの用
紙がセットされる場合でも、各々のトレイ２０、３０、
４５および４０の右側の位置は決まる。さらに、右側の
側壁２４、３４、４９および４４は各々のトレイにピッ
クアップローラがアクセスできるように位置が決まって
いるので、サイズが同じ用紙を異なるトレイに同じ向き
でセットすることも可能である。したがって、各々のト
レイ２０、３０、４５および４０における印刷可能な右
端の位置あるいはその側板の位置に関連した印刷可能な
位置をプリンタ１の制御部７に予めセットしておくこと
が可能である。このため、プリンティング部３で印刷す
る用紙トレイが選択されると、その用紙トレイにセット
された用紙の印刷可能な開始位置あるいは終了位置が決
まり、後は、各々のトレイ２０、３０、４５あるいは４
０に収納された用紙サイズあるいは紙幅が分かるだけ
で、印刷範囲を決定することが可能となり、さらに使い
やすいプリンタを提供することができる。

【００４０】たとえば、図７にフローチャートで示すよ
うに、印刷したい用紙が収納されている用紙トレイがス
テップ８５で選択され、その用紙トレイにセットされて
いる用紙サイズがステップ８６で決まると、右側の側板
は固定されているので右側の印刷可能な開始位置あるい
は終了位置は決まり、用紙サイズからプリンティング部
３で印刷される領域がステップ８７で決まる。したがっ
て、ステップ８８において、その範囲に印刷ヘッド５を
往復動させながら印刷を行うことができる。

【００４１】このような方法で印刷範囲を決定する制御
をプリンタ１の制御部７のファームウェアまたはホスト
コンピュータ８にインストールされるドライバソフトウ
ェアで実行できるようにしておくと、マルチトレイ１０
に側板の位置を判断するセンサや、紙幅を判断するセン
サを設置しなくても印刷範囲が決定される。また、用紙
サイズや用紙の種類とそれを収納した用紙トレイとを予
め関連付けしておくことにより、用紙サイズや種類をア
プリケーションプログラムやドライバソフトウェアで選
択するだけで自動的にその用紙を供給して印刷するよう
に制御することも可能である。そして、本例のマルチト
レイ１０を装着したプリンタ１では、プリンティング部
３に供給される用紙の位置が用紙トレイ毎にずれるが、
印刷する際に用紙サイズと用紙トレイがドライバソフト
ウェアにより選択されるだけで、所望のサイズの用紙内
の所定の位置に印刷することができる。

【００４２】なお、本例では、各用紙トレイの右側の側
板を固定し、右側にピックアップローラを配置すると共
に左側の側板が移動するようにしているが、左側の側板
を固定し、左側にピックアップローラを配置し、右側の
側板を移動するようにしても上記と同様に同一サイズの
用紙を同じ向きセットできる用紙供給装置１を提供でき
る。

【００４３】また、上記のマルチトレイ１０では、モー
タを内蔵したピックアップローラで各々のトレイに収納
された用紙をピックアップするようにしているが、ピッ
クアップの方式はこれに限定されるものではない。図８
にピックアップベルト６１を用いた例を、最上段のトレ
イ４０で示してあり、他のトレイ２０および３０でも同
様になっている。図９（ａ）に示してあるように、この
マルチトレイ１０では、トレイ４０の左側板４２に、ピ
ックアップ用のモータ６２および減速用のギアボックス
６３が収納されたプーリ６４が取り付けられている。そ
して、この支持側のプーリ６４に対し用紙に押し付けら
れる側のプーリ６５がアーム６６で旋回可能に支持され
ており、これら２つのプーリ６４および６５にピックア
ップ用のベルト６１が架けられている。

【００４４】したがって、図９（ｂ）に示すように、モ
ータ６２が時計方向に正転すると、ベルト６１が時計方
向に回転し、先端のプーリ６５が時計方向に回転してベ
ルト６１が用紙２ｃに押付けられる。ベルト６１は時計
方向に回転しているので、ベルト６１によって用紙２ｃ
は給紙方向Ｆに紙送りされる。一方、図９（ｃ）に示す
ように、モータ６２が反時計方向に逆転すると、ベルト
６１が反時計方向に回転し、先端のプーリ６５が反時計
方向に動いてベルト６１が用紙２ｃから離れる。したが
って、用紙２ｃがプリンティング部３に送られた後はベ
ルト６１を用紙２ｃから離して抵抗にならないようにす
ることができる。さらに、側板４２には、ベルト６１が
反時計方向に旋回しすぎないようにストッパ６７が設け
られている。また、支持シャフト１６は、左側板４２が
紙幅方向Ｗに移動できるようにアウターケーシング１７
の幅方向に設けられている。

【００４５】さらに、上記のマルチトレイでは、各々の
トレイ２０、３０および４０のピックアップローラある
いはピックアップベルトを個別に駆動する複数のモータ
が設けられているが、これらのピックアップローラある
いはベルトを１つのモータで駆動することも可能であ
る。

【００４６】図１０に、共通の駆動シャフト７１と、こ
の駆動シャフトを回転する共通のモータ７２を備えたマ
ルチトレイ１０を上方から見た様子を示してある。この
マルチトレイ１０もＡ４サイズの用紙２ａを収納可能な
最下段のトレイ２０と、Ａ５サイズの用紙２ｂを収納可
能な中間のトレイ３０と、Ａ６サイズの用紙２ｃを収納
可能な最上段のトレイ４０とが右側板１９ｂに沿って上
下に重ねられて配置されており、左側板１９ａの側の上
方に空いたスペース１５ａおよび１５ｂに、最下段のト
レイ２０および中間のトレイ３０の用紙をピックアップ
するためのローラ５２ａおよび５２ｂが配置されてい
る。また、最上段のトレイ４０の上方にトレイ４０の用
紙をピックアップするローラ５２ｃが配置されている。

【００４７】さらに、位置決め用の支持バー１６ａと、
駆動シャフト７１がアウターケーシング１７を紙幅方向
Ｗに横断するように配置されており、アウターケーシン
グ１７の右側壁１９ｂの外側に配置されたモータ７２に
より減速ギア７３を介して駆動されるようになってい
る。そして、ピックアップローラ５２ａ、５２ｂおよび
５２ｃは、アーム５１ａ、５１ｂおよび５１ｃに駆動シ
ャフト７１から旋回可能に支持されていると共に、駆動
シャフト７１から動力が供給され回転する。駆動シャフ
ト６１には、駆動シャフト７１からピックアップローラ
５２ａ、５２ｂおよび５２ｃに動力を供給するためのバ
ネクラッチ７５ａ、７５ｂおよび７５ｃが配置されてお
り、支持バー１６ａにはこれらのクラッチ７５ａ、７５
ｂおよび７５ｃを制御するためのソレノイド７６ａ、７
６ｂおよび７６ｃが取り付けられている。

【００４８】図１１に、最上段のトレイ４０のピックア
ップローラ５２ｃを駆動する機構を代表して示してあ
る。他のピックアップローラ５２ａおよび５２ｂも同様
の機構で駆動される。図１１（ａ）は、ローラ５２ｃの
近傍を上方から見た様子を示し、図１１（ｂ）はローラ
５２ｃの近傍を側方から見た様子を示してある。アーム
５１ｃには４つのギア７７ａ、７７ｂ、７７ｃおよび７
７ｄが駆動シャフト７１からローラ５２ｃに向かって配
置されており、駆動シャフト７１と同軸に取り付けられ
たギア７７ａにバネクラッチ７５ｃの一方の端が接続さ
れている。バネクラッチ７５ｃは駆動シャフト７１と同
軸に取り付けられたコイルバネであり、一方の端がギア
７７ａと繋がり、他方の端が支持バー１６ａにネジ７７
で取り付けられたソレノイド７６ｃに繋がっている。そ
して、ソレノイド７６ｃがエナジャイズされてクラッチ
７５ｃの他方の端を引っ張ると、コイルバネ式のクラッ
チ７５ｃが駆動シャフト７１と接触し回転力が伝達され
る。

【００４９】ピックアップローラ５２ｃを紙送り方向
（本例では右側方から見て時計方向）に正転させるため
には、駆動シャフト７１を反時計方向に回転させる必要
がある。そして、コイルバネ式のクラッチ７５ｃはギア
７７ａに接続された一方の端を固定してコイルバネ本体
を反時計方向に回すと、コイルバネの直径が小さくなる
方向にコイルが巻かれている。このため、コイルバネ式
のクラッチ７５ｃが駆動シャフト７１に接触し、いった
ん回転力が伝達されだすと、ギア７７ａに接続された一
方の端が抵抗となって内径が小さくなり、シャフト７１
に密着する。このため、シャフト７１の回転力がクラッ
チ７５ｃを介して歯車７７ａに伝達される。

【００５０】このため、ギア７７ａは、まず、アーム５
１ｃを反時計方向に回転して先端に取り付けられている
ローラ５２ｃをトレイ４０の用紙２ｃに押し付ける。さ
らに、歯車７７ａ、７７ｂおよび７７ｃを介し、ローラ
５２ｃと繋がった歯車７７ｄに動力が伝達され、ローラ
５２ｃが時計方向に正転する。したがって、上述したピ
ックアップローラ５２ｃと同様に、ローラ５２ｃが用紙
２ｃに押し付けられ、用紙２ｃに十分な紙送り力を作用
させることができる。その結果、最上の用紙２ｃが分離
壁４３によって分離されて紙送り方向Ｆ、すなわち、印
刷機構であるプリンティング部３の方向に紙送りされ
る。

【００５１】一方、ソレノイド７６によりコイル式のク
ラッチ７５ｃの他端を押すと、コイル式のクラッチ７５
ｃの内径が大きくなり、駆動シャフト７１からの動力が
クラッチ７５ｃに伝達されなくなる。このため、コイル
バネ７５ｃの径が復帰し、歯車７７ａに時計方向の力が
加わる。この結果、アーム５１ｃは時計方向に回転し、
ピックアップローラ５２ｃが用紙２ｃから離れる方向に
動く。したがって、このマルチトレイ１０においても、
ピックアップが終了すると、ローラ５２ｃは用紙２ｃか
ら離れて抵抗にならない。さらに、ローラ５２ｃと、先
端の歯車７７ｄのシャフト７７ｅとはブレーキコイル７
８を介して接続されており、このブレーキコイル７８も
バネクラッチ７５ｃと同様の機能を果たす。すなわち、
シャフト７７ｅに動力があればブレーキコイル７８を介
してローラ５２ｃに動力が供給されてピックアップする
方向に力が作用する。一方、シャフト７７ｅに動力がな
ければ、ブレーキコイル７８の内径が大きくなり、ロー
ラ５２ｃは空回りする。したがって、ローラ５２ｃがソ
レノイド７６ｃで選択されていなければ、ローラ５２ｃ
の動きは紙送り上は殆ど抵抗にならない。

【００５２】このように、本例のマルチトレイ１０であ
れば、モータ１つで３つのトレイ用のピックアップロー
ラ５２ａ、５２ｂおよび５２ｃに動力を供給でき、電動
クラッチ７６ａ、７６ｂおよび７６ｃを選択機構として
共用のシャフト７１から各々のローラ５２ａ、５２ｂお
よび５２ｃを選択して動力を伝達し、駆動できる。ま
た、この方式をピックアップベルトに適用することによ
り、各トレイの用紙をピックアップするベルトを共通の
モータで駆動することも可能である。

【００５３】そして、本例のマルチトレイ１０において
は、下方のトレイ３０および２０を平面的に一部重ねて
配置し、上方に空いたスペース１５ａおよび１５ｂを設
け、ピックアップするローラ５２ａおよび５２ｂをそれ
らの上方が空いたスペースに配置している。したがっ
て、最上段のトレイ４０の上方のローラ５２ｃが設置さ
れた階層（位置あるいはレベル）から各々のトレイ２０
および３０にアクセスすることが可能である。このた
め、１つの階層に、複数のローラ５２ａ、５２ｂおよび
５２ｃを支持する支持バー１６ａなどの支持機構、ロー
ラ５２ａ、５２ｂおよび５２ｃに動力を供給する共通の
駆動シャフト７１などの駆動機構を配置することが可能
である。したがって、極めて薄く簡易な構成で、紙サイ
ズの異なる複数種類の用紙をセットし、随時、所望の種
類の用紙をピックアップして印刷のために供給できる用
紙供給装置１０を提供できる。また、同一の紙サイズで
種類の異なる用紙をセットすることも可能であり、その
場合は、上記のマルチトレイで説明したように、ピック
アップローラが配置された側の側壁を固定にすることが
制御上は簡単である。

【００５４】なお、以上では、３段あるいは４段の用紙
トレイを収納したマルチトレイを参考に本発明を説明し
ているが、２段の用紙トレイを収納したマルチトレイ、
あるいは５段以上の用紙トレイを収納したマルチトレイ
であっても本発明を適用することが可能である。また、
本発明のマルチトレイ、すなわち用紙供給装置において
は、各々の用紙トレイに対し上方からアクセスできるの
で、縦方向あるいは紙幅方向に移動可能なピックアップ
用のローラあるいはベルトを、各用紙トレイに対し共通
に設けることも可能である。しかしながら、ピックアッ
プ用のローラあるいはベルトを紙幅方向に移動する機構
が必要となるので、その機構の設置スペースが増え、ま
た、複雑な機構となるので信頼性のある機構を開発およ
び設計するためのコストが新たに発生する可能性があ
る。したがって、上述したマルチトレイのように各々の
用紙トレイに対応した複数のローラまたはベルトを設け
ることが望ましく、各々の用紙トレイに対応したピック
アップローラなどのピックアップ装置を配置しても、構
成はシンプルとなり、厚みは薄く、低コストで提供でき
るものとなる。

【００５５】本発明のマルチトレイは、インクジェット
タイプに限らず、サーマルプリンタ、レーザプリンタな
どの様々なタイプのプリンタに装着することが可能であ
り、制限はない。そして、本発明のマルチトレイを装着
することにより小型で多種多様な用紙を随時選択して印
刷することができるプリンタを供給することができる。
印刷対象の用紙は、シートペーパに限定されることはな
く、複数の定型サイズが設定されている封筒や、薬袋な
どに印刷するためにも使用できる。特に、薬局において
個々のユーザ毎に薬を調合して提供する場合は、ユーザ
毎に薬の量が異なり、ユーザの名前、使用上の留意事項
なども異なる。本例のマルチトレイを装着したプリンタ
であれば、予め複数のサイズの異なる薬袋をマルチトレ
イにセットしておくことにより、薬剤師またはオペレー
タが薬袋のサイズを指定するだけでそのサイズの薬袋に
印刷して出力することができる。

【００５６】また、上記ではマルチトレイがプリンタと
一体になった例を示してあるが、マルチトレイをプリン
タ本体から分離してオプションとして販売することも可
能である。また、上記の例では、マルチトレイが鉛直方
向に対して傾斜してセットされ、各々のトレイでは用紙
を傾斜した状態で保持するようにしているが、プリンタ
に対して水平にセットされ、各々のトレイ内で用紙が水
平に保持されるマルチトレイであっても良い。また、マ
ルチトレイ全体を１つのハウジング内に収納してシング
ルトレイと同じような外観およびサイズとし、シングル
トレイと差し替え可能なマルチトレイとして提供するこ
とも可能である。

【００５７】さらに、本発明のマルチトレイを装着した
印刷装置には、パーソナルコンピュータなどの周辺機器
として使用されるプリンタに限らず、単独の印刷装置と
して使用されるファクシミリや複写機などの他の印刷装
置も含まれる。そして、それらの印刷装置の紙送り装置
として本発明の用紙供給装置を採用することにより、複
数種類の用紙を自由に選択できるコンパクトな印刷装置
を提供できる。

【００５８】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、用紙トレイを上下に重ねる際に、平面的には一部分
だけが重なるようにして、下方のトレイが上方のトレイ
と重ならずに空いたスペースにピックアップ用のローラ
あるいはベルトを配置することにより、複数種類の用紙
をセットし、選択して供給することができる、全体が薄
くコンパクトな構成の用紙供給装置を提供している。し
たがって、本発明の用紙供給装置を搭載することによ
り、コンパクトなパーソナルタイプで所望のサイズある
いは種類の異なる用紙にユーザが手軽に印刷できるプリ
ンタなどの印刷装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のマルチトレイを搭載したプリンタの概
要を示す図である。

【図２】図１に示すマルチトレイの概要を示す斜視図で
ある。

【図３】図１に示すマルチトレイを上方あるいは正面か
ら見た図である。

【図４】ピックアップローラの近傍を拡大して示す図で
あり、図４（ａ）は平面図、図４（ｂ）はピックアップ
ローラが用紙に押し付けられた状態を示す側面図、図４
（ｃ）はピックアップローラが離れた様子を示す側面図
である。

【図５】各々のトレイに配置されたピックアップローラ
を示す側面図であり、図５（ａ）は最下段の用紙トレイ
用のピックアップローラ、図５（ｂ）は中間の用紙トレ
イ用のピックアップローラ、図５（ｃ）は最上段の用紙
トレイ用のピックアップローラを示す。

【図６】ピックアップローラを固定したマルチトレイの
例を示す平面図である。

【図７】図６のマルチトレイを採用したプリンタの制御
の一例を示すフローチャートである。

【図８】ピックアップベルトを用いたマルチプリンタの
例を示す斜視図である。

【図９】ピックアップベルトの近傍を拡大して示す図で
あり、図９（ａ）は平面図、図９（ｂ）はベルトが用紙
に押し付けられた状態を示す側面図、図９（ｃ）はベル
トが離れた様子を示す側面図である。

【図１０】共通の駆動シャフトを採用したマルチトレイ
の概要を示す上面あるいは正面図である。

【図１１】ピックアップローラの近傍を拡大して示す図
であり、図１１（ａ）は平面図、図１１（ｂ）は側面図
である。

【符号の説明】

１ プリンタ ３ プリンティング部 ７ 制御部 １０ マルチトレイ ２０ 最下段の用紙トレイ ３０ 中間の用紙トレイ ４０ 最上段の用紙トレイ ５２ａ、５２ｂ、５２ｃ、５２ｄ ピックアップロー
ラ

フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｂ６５Ｈ 3/06 ３５０ Ｂ６５Ｈ 3/06 ３５０Ｃ 3/44 ３２０ 3/44 ３２０Ｂ Ｆターム(参考） 3F343 FA02 FB02 FB04 FC18 FC30 GA01 GB01 GC01 GD01 HA23 HA29 HA37 HB02 HC06 HC24 HC30 HD08 HD09 HD17 HE03 HE14 JA10 JA15 JA29 JA33 JA35 KB03 KB05 KB14 KB17 KB19

Claims (21)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 平面的に１部が重なるように上下に配置
   されており、各々が底板と、両側板と、給紙方向に位置
   する分離板とを備え、複数の印刷用紙を保持可能な複数
   の用紙トレイと、 下方の前記用紙トレイに対し、上方の前記用紙トレイと
   重ならないスペースを介して上方からアクセスし前記下
   方の用紙トレイの印刷用紙をピックアップするローラま
   たはベルトとを有する用紙供給装置。
2. 【請求項２】 請求項１において、各々の前記用紙トレ
   イの前記両側板の少なくともいずれか一方は紙幅方向の
   位置を変えられる用紙供給装置。
3. 【請求項３】 請求項１において、各々の前記用紙トレ
   イに対応した複数の前記ローラまたはベルトを有する用
   紙供給装置。
4. 【請求項４】 請求項３において、各々の前記ローラま
   たはベルトは各々の前記用紙トレイの前記両側板の一方
   に沿って配置されている用紙供給装置。
5. 【請求項５】 請求項４において、前記両側板の少なく
   とも一方の側板の位置が可変であり、前記ローラまたは
   ベルトは、位置が可変な前記側板と連動して紙幅方向に
   動く用紙供給装置。
6. 【請求項６】 請求項４において、前記両側板の一方の
   側板は前記用紙トレイ毎に異なる位置に固定され、他方
   の側板は位置が可変であり、 前記ローラまたはベルトは、位置が固定された前記側板
   に沿って配置されている用紙供給装置。
7. 【請求項７】 請求項３において、前記ローラまたはベ
   ルトが印刷用紙の上面に接するようにそれぞれを旋回支
   持する複数のアームを有する用紙供給装置。
8. 【請求項８】 請求項７において、各々の前記ローラま
   たはベルトを駆動する複数のモータを有する用紙供給装
   置。
9. 【請求項９】 請求項８において、前記モータおよびそ
   の減速機構が、前記ベルトの一方のプーリまたは前記ロ
   ーラに内蔵されている用紙供給装置。
10. 【請求項１０】 請求項９において、前記アームを支持
    する共通のシャフトを有する用紙供給装置。
11. 【請求項１１】 請求項７において、前記複数のローラ
    またはベルトに駆動力を供給可能な共通の駆動シャフト
    と、 この駆動シャフトからの動力を各々の前記ローラまたは
    ベルトを選択して伝達する選択手段とを有する用紙供給
    装置。
12. 【請求項１２】 請求項１１において、前記選択手段は
    電動クラッチである用紙供給装置。
13. 【請求項１３】 請求項１において、各々の前記用紙ト
    レイに対応した複数の前記ローラまたはベルトと、 前記ローラまたはベルトが印刷用紙の上面に接するよう
    にそれぞれを旋回支持する複数のアームと、 前記ローラまたはベルトを印刷用紙の上面に押し付ける
    負荷機構と、 前記ローラまたはベルトのいずれか１つを選択して駆動
    する選択機構とを有する用紙供給装置。
14. 【請求項１４】 請求項１３において、各々の前記ロー
    ラまたはベルトを駆動し、前記選択機構として機能する
    複数のモータを有する用紙供給装置。
15. 【請求項１５】 請求項１３において、前記複数のロー
    ラまたはベルトに駆動力を供給可能な共通の駆動シャフ
    トと、 この駆動シャフトからの動力を各々の前記ローラまたは
    ベルトを選択して伝達する電動クラッチとを有する用紙
    供給装置。
16. 【請求項１６】 請求項１に記載の用紙供給装置と、 この用紙供給装置から供給された用紙に印刷するプリン
    ティング部とを有する印刷装置。
17. 【請求項１７】 請求項１６において、各々の前記用紙
    トレイに対応した複数の前記ローラまたはベルトと、 前記ローラまたはベルトが印刷用紙の上面に接するよう
    にそれぞれを旋回支持する複数のアームと、 前記ローラまたはベルトを印刷用紙の上面に押し付ける
    負荷機構と、 前記ローラまたはベルトのいずれか１つを選択して駆動
    する選択機構とを有する印刷装置。
18. 【請求項１８】 請求項１６において、各々の前記用紙
    トレイに対応した複数の前記ローラまたはベルトを備
    え、 前記両側板の一方の側板は前記用紙トレイ毎に異なる位
    置に固定され、他方の側板は位置が可変であり、前記ロ
    ーラまたはベルトは、位置が固定された前記側板に沿っ
    て配置されており、 さらに、前記位置が固定された側板の位置、またはそれ
    に関連した位置を、印刷を開始および／または終了する
    位置として利用できるように記憶した制御部を有する印
    刷装置。
19. 【請求項１９】 請求項１８において、前記制御部は、
    紙幅方向の印刷する領域を、選択された前記用紙トレイ
    と用紙サイズに基づきに決定する印刷装置。
20. 【請求項２０】 各々が底板と、両側板と、給紙方向に
    位置する分離板とを備え、複数の印刷用紙を保持可能な
    複数の用紙トレイが平面的に１部重なるように上下に配
    置され、下方の前記用紙トレイに対し、上方の前記用紙
    トレイと重ならないスペースを介して上方からローラま
    たはベルトがアクセスして前記下方の用紙トレイの印刷
    用紙をピックアップする用紙供給装置を有する印刷装置
    の制御方法であって、 前記両側板の一方の側板は前記用紙トレイ毎に異なる位
    置に固定され、他方の側板は位置が可変であり、前記ロ
    ーラまたはベルトは、位置が固定された前記側板毎に、
    その側板に沿って配置されており、 前記用紙トレイが選択されると、前記位置が固定された
    側板の位置、またはそれに関連した位置を、印刷を開始
    および／または終了する位置とし、選択された用紙サイ
    ズに基づき紙幅方向の印刷する領域を決定する工程を有
    する印刷装置の制御方法。
21. 【請求項２１】 各々が底板と、両側板と、給紙方向に
    位置する分離板とを備え、複数の印刷用紙を保持可能な
    複数の用紙トレイが平面的に１部重なるように上下に配
    置され、下方の前記用紙トレイに対し、上方の前記用紙
    トレイと重ならないスペースを介して上方からローラま
    たはベルトがアクセスして前記下方の用紙トレイの印刷
    用紙をピックアップする用紙供給装置を有する印刷装置
    の制御用のプログラムであって、 前記両側板の一方の側板は前記用紙トレイ毎に異なる位
    置に固定され、他方の側板は位置が可変であり、前記ロ
    ーラまたはベルトは、位置が固定された前記側板毎に、
    その側板に沿って配置されており、 前記用紙トレイが選択されると、前記位置が固定された
    側板の位置、またはそれに関連した位置を、印刷を開始
    および／または終了する位置とし、選択された用紙サイ
    ズに基づき紙幅方向の印刷する領域を決定する処理を実
    行するための命令を有するプログラム。