JP2002293671A - 絵付き陶体の製造方法 - Google Patents

絵付き陶体の製造方法

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JP2002293671A
JP2002293671A JP2001102012A JP2001102012A JP2002293671A JP 2002293671 A JP2002293671 A JP 2002293671A JP 2001102012 A JP2001102012 A JP 2001102012A JP 2001102012 A JP2001102012 A JP 2001102012A JP 2002293671 A JP2002293671 A JP 2002293671A
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Toshiaki Aono
俊明 青野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 美術タイル等の建材やセラミックス材などの
陶材の表面に、塗布によることなく、パール色や金属光
沢色等の特別色を有する無機質の焼結画像を簡易かつ低
コストに形成することができ、作業性、生産性、安全性
の向上に資する製造方法を提供すること。 【解決手段】 受像体の表面に雲母系顔料を含有する材
料からなる無機顔料像を、転写シートを用いた電子写真
法、潜像形成液を用いた転写法および溶融転写法のいず
れかの方法を用いて形成する像形成工程と、前記無機顔
料像を前記受像体の一部または全部と共に陶材の表面に
配置する配置工程と、前記無機顔料像が配置された陶材
を加熱して焼結する焼成工程と、を含むことを特徴とす
る絵付き陶体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特別色を用いた無
機質の画像を形成する製造方法に関し、詳しくは、美術
タイル等の建材やセラミックス材などの陶材に半永久像
として無機質の焼結画像を形成する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】美術タイル等の建材やセラミックス材な
どの陶材の表面に、黒白またはカラー画像が形成された
陶材は、風呂場や玄関等の壁に使用する美術タイル等の
建材のみならず、肖像や遺影等のセラミックフォト、ペ
ンダント、ブローチ等のアクセサリー等、種々の用途へ
の適用が期待されている。また、近年陶材の表面に形成
される画像に対しての要求も高く、その要求は個別多様
化してきている。かかる要求の個別多様化に対しては、
画像の耐性を向上させたり、多くの色を用いたり、或い
は、多様な模様を付したりして対応することができる
が、なかでも、金や銀、或いはパール色や金属光沢色な
どの特別色を用いた画像に対する要求は大きい。パール
色、金属光沢色などの特別色(以下、単に「特別色」と
いう場合がある。)を表現する場合には、コスト面や安
全面の観点から雲母系顔料が多く使用されている。
【0003】このような特別色を用いた画像を陶材上に
形成(焼結)する場合、従来、スクリーン印刷法等によ
って転写紙(紙支持体上に水溶性ポリマーを塗設したも
の)上に画像を形成し、この上にカバーコートレジンを
同様にスクリーン印刷法によって塗設し、該転写紙を水
に浸潰して水溶性ポリマーの一部を溶解し、画像とカバ
ーコートレジンとを紙支持体から剥離し、該画像とカバ
ーコートレジンとをその剥離面を介して陶材表面に接着
し、乾燥および焼成することによって特別色の絵付き陶
体を作製する方法がとられてきた。しかし、当該方法で
は、スクリーン印刷用のスクリーンの作製に、時間やコ
ストがかかるといった問題があった。
【0004】また、無機顔料像を形成する際にインクジ
ェット等によって直接雲母系顔料を吐出する方法も考え
られるが、ヘッドが目詰まりしやすいといった問題があ
る。さらに、電子写真法によって、雲母系顔料のトナー
を使用して画像を形成する方法もあるが、使用したい各
種の雲母系顔料についてトナーの処方を検討する必要が
あり、作業が煩雑になり時間がかかるといった問題もあ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】陶材表面に特別色を用
いた無機質の画像を形成する場合に、上記のような塗布
に伴う諸問題を解消し、簡易に画像形成し得る方法が望
まれていた。ところが、作業性、生産性、安全性に優
れ、低コスト化をも実現可能な技術は、未だ提供されて
いないのが現状である。以上の点から、本発明は、前記
従来における諸問題を解決し、美術タイル等の建材やセ
ラミックス材などの陶材の表面に、特別色を用いた無機
質の焼結画像を簡易かつ低コストに形成することがで
き、作業性、生産性、安全性の向上に資する絵付き陶体
の製造方法を提供することを目的し、該目的を達成する
ことを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の具体的手段は以下の通りである。即ち、
【0007】<1> 受像体の表面に雲母系顔料を含有
する材料からなる無機顔料像を、転写シートを用いた電
子写真法、潜像形成液を用いた転写法および溶融転写法
のいずれかの方法を用いて形成する像形成工程と、前記
無機顔料像を前記受像体の一部または全部と共に陶材の
表面に配置する配置工程と、前記無機顔料像が配置され
た陶材を加熱して焼結する焼成工程と、を含むことを特
徴とする絵付き陶体の製造方法である。
【0008】<2> 前記受像体が、透水性支持体の表
面に水溶性ポリマーを含有する層を有してなる接着性受
像体であることを特徴とする<1>の絵付き陶体の製造
方法である。
【0009】<3> 前記配置工程において、前記水溶
性ポリマーを含有する層の一部を溶解させて前記接着性
受像体から前記透水性支持体を剥離し、前記接着性受像
体の剥離面が前記陶材の表面に接触するように、前記無
機顔料像を前記陶材の表面に配置することを特徴とする
<2>の絵付き陶体の製造方法である。
【0010】<4> 前記配置工程において、前記水溶
性ポリマーを含有する層の一部を溶解させて前記接着性
受像体から前記透水性支持体を剥離する前または剥離後
に、糊剤を溶解または分散した液を介して前記接着性受
像体の無機顔料像形成面が陶材の表面に接触するよう
に、前記無機顔料像を陶材の表面に配置することを特徴
とする<2>の絵付き陶体の製造方法である。
【0011】<5> 前記像形成工程が、転写シートを
用いた電子写真法、潜像形成液を用いた転写法および溶
融転写法のいずれかの方法によって転写受像体の表面に
雲母系顔料を含有する材料からなる転写無機顔料像を形
成する転写像形成工程と、前記転写無機顔料像を前記受
像体の表面に転写して、前記受像体の表面に前記無機顔
料像を形成する像転写工程と、を含むことを特徴とする
<1>〜<4>の絵付き陶体の製造方法である。
【0012】<6> 少なくとも前記陶体の前記無機顔
料像を形成する面の色が、燒結後の前記無機顔料像の色
に対して補色の関係を有することを特徴とする<1>〜
<5>の絵付き陶体の製造方法である。
【0013】<7> 前記無機顔料像が形成された前記
陶体の表面の色が黒であることを特徴とする<1>〜<
6>の絵付き陶体の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の絵付き陶体の製造方法に
おいては、受像体の表面に雲母系顔料を含有する材料か
らなる無機顔料像を、転写シートを用いた電子写真法、
潜像形成液を用いた転写法および溶融転写法のいずれか
の方法を用いて形成する像形成工程と、前記無機顔料像
を前記受像体の一部または全部と共に陶材の表面に配置
する配置工程と、前記無機顔料像が配置された陶材を加
熱して焼結する焼成工程と、を含むことを特徴とする。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0015】《絵付き陶体の製造方法》本発明の製造方
法は、既述のように、像形成工程、配置工程、および焼
成工程を少なくとも有してなり、必要に応じて他の工程
を有していてもよい。まず、本発明の製造方法につい
て、その基本的態様の一例を図1を用いて説明する。こ
こで、図1は、本発明の製造方法の基本的態様を説明す
るための概略工程図である。
【0016】まず、図1−(a)に示すように、支持体2
の表面に、像の形成が可能な受像層1を少なくとも一層
有する受像体5を用意する。この受像体5に対して、図
1−(b)に示すように、その受像層1の表面上に、所望
の画像記録法(転写シートを用いた電子写真法、潜像形
成液を用いた転写法(LMIT法等)等)により雲母系
顔料を含有する材料を画像様に付与することによって、
所望の画像(無機顔料像)11を形成する(像形成工
程)。
【0017】次に、仮支持体7の表面にカバーコート層
6を有してなる転写体10を用意し、図1−(c)に示す
ように、転写体10のカバーコート層6の表面と、像形
成工程において無機顔料像11が形成された受像層1の
表面とを対向配置し互いに接触するように重ね合わせ、
必要に応じて加圧等しながら加熱してラミネートする。
ラミネートした後、図1−(d)に示すように、転写体1
0の仮支持体7を剥離して受像層1上にカバーコート層
6を転写する(カバーコート層転写工程)。尚、かかる
工程は任意であり、無機顔料像11が形成された受像層
1の表面にカバーコート層用塗布液を塗布してカバーコ
ート層を形成してもよいし、上記像形成工程において、
受像層1の表面に予めカバーコート層が設けられた受像
体5を用い、該カバーコート層表面に直接無機顔料像1
1を形成してもよい。また、受像層1がカバーコート層
を兼ねることができれば、カバーコート層6は必須の構
成ではない。カバーコート層6は上述の説明のようにカ
バーコート層転写工程によって設けるのが好ましい。
【0018】続いて、無機顔料像11を陶材12に配置
するが、この配置の前後の任意の段階で、受像体5の支
持体2を受像層1との境界部で剥離する。例えば、受像
体5の支持体2が透水性支持体で構成され、かつ受像層
1が水溶性ポリマーを含んでなる場合には、転写後の、
無機顔料像11およびカバーコート層6が設けられた受
像体5(図1−(d)参照)の一部を水に接触若しくは浸
漬させることによって、支持体2を介して水分が浸透し
水溶性ポリマーの一部が溶解して、容易に支持体2を剥
離除去することができる(この時、支持体2が剥離さ
れ、一部溶解した状態にある側の受像層の面を「剥離
面」と称する。)支持体2の剥離後、無機顔料像11を
カバーコート層6と共に所望の陶材12の表面に配置す
るが、図1−(e)に示すように、受像層1中の水溶性ポ
リマーが一部溶解した状態で、該剥離面において接する
ように所望の陶材12の表面に配置する。また、上記剥
離面とは反対側の面、即ちカバーコート層6の表面にお
いて接するように、糊剤を溶解または分散した液を介し
て所望の陶材の表面に配置してもよい(配置工程)。
【0019】以上のようにして、陶材12の表面に無機
顔料像11が配置された後、この陶材12(図1−(e)
参照)を加熱し焼成することにより、図1−(f)に示す
ように、有機質のカバーコート層6および受像層1等は
焼失し、陶材12の表面に無機顔料像11が焼結され、
無機質の画像11'が形成される(焼成工程)。
【0020】以下、各工程について更に詳述する。 〈像形成工程〉 (無機顔料像)上記像形成工程においては、受像体の表
面に雲母系顔料を含有する材料からなる無機顔料像を形
成する。本発明の製造方法において、単色の画像を形成
する場合には、該単色の画像となる無機顔料像が雲母系
顔料を含む材料からなることが必要であるが、多色画像
を形成する場合には、少なくとも一つの色相に対応する
無機顔料像が雲母系顔料を含有する材料からなっていれ
ばよく、さらに全ての色相に対応する無機顔料像が雲母
系顔料を含有する材料からなっていてもよい。ここで、
無機顔料像は、雲母系顔料を含有する材料を用いて描画
された画像であり、「雲母系顔料を含有する材料」と
は、雲母系顔料のほか、必要に応じて他の無機顔料、結
着樹脂等のバインダー成分、フラックス(熱溶融性無機
材料)等を含み上記無機顔料像を形成する材料をいう。
尚、上記雲母系顔料、他の無機顔料、バインダー成分
等、並びに受像体の詳細および好ましい態様については
各々後述する。
【0021】−雲母系顔料− 上述の通り、本発明において無機顔料像を形成する材料
は少なくとも雲母系顔料を含む。ここで「雲母系顔料」
とは、天然または合成雲母の表面に金属酸化物等を薄く
コーティング(被覆)或いは蒸着した顔料を意味する。
該雲母系顔料は真珠光沢(パール色)や金属光沢を有す
るためパール塗装またはメタリック塗装等に用いられて
いる。該真珠光沢と金属光沢とは雲母系顔料のアスペク
ト比、金属酸化物層の厚み等を調整することで所望の光
沢を表現することができる。本発明において雲母系顔料
は、単独で用いてもよいし、他の色相の顔料と併用して
もよい。雲母系顔料と他の色相の顔料とを併用すること
で他の色相に真珠光沢や金属光沢を付与することができ
る。本発明は、上記雲母系顔料を含有する無機顔料像を
形成し本発明の製造方法で絵付き陶体を製造することに
よって光沢性、特に真珠光沢や金属光沢を有する画像を
有する絵付き陶体を簡易且つ低コストで製造することが
できる。
【0022】上記雲母には、天然雲母または合成雲母が
挙げられ、該合成雲母としては、フッ素金雲母、フッ素
4ケイ素雲母、フッ素テニオライト、並びにこれらの同
形置換体が挙げられる。上記天然雲母は、鉄等の不純物
を含み白色度に劣るため、本発明の製造方法に用いる雲
母としては合成雲母が好ましい。尚、上記合成雲母を用
いる場合には、表面の平滑化のために熱処理を施すのが
好ましく、さらに平滑化性を向上させるために酸性溶液
と接触させてもよい。
【0023】上記天然または合成雲母の粒径としては、
0.5〜100μmが好ましく、1〜20μmが更に好
ましい。また、雲母系顔料のアスペクト比としては5〜
2000が好ましく、10〜1000が更に好ましい。
概述の通り雲母系顔料は、雲母に金属酸化物を被覆また
は蒸着したものであり、該金属酸化物としては、例え
ば、TiO2、Fe23、ZrO2、CrO3、V25
SnO2等が挙げられ、TiO2が好ましい。該金属酸化
物を雲母に被覆または蒸着するには公知の方法を用いる
ことができる。雲母系顔料の無機顔料像中における含有
量としては、所望の色相を得ることができれば特に限定
はないが、通常30〜90質量%が好ましく、50〜8
0質量%が更に好ましい。尚、上記雲母系顔料を含有す
る材料については、無機顔料像を形成する画像記録方法
によって取扱いが異なるため、それぞれにおいて後述す
る。
【0024】(画像形成方法)上記無機顔料像は、転写
シートを用いた電子写真法、潜像形成液を用いた転写
法、溶融転写法、等のいずれかで形成する。
【0025】−電子写真法− 上記転写シートを用いた方法電子写真法(以下、単に
「電子写真法」という場合がある。)は、まず電子写真
技術を利用して、支持体の表面に受像層を有する受像体
の上記受像層表面に、接着性組成物からなる接着性の潜
像(接着性潜像)を形成する。即ち、結着樹脂を含む接
着性組成物を用いて、電子写真技術によって形成された
静電潜像を現像し接着性潜像を形成した後、該接着性潜
像を転写して受像体の受像層上に接着性を有する潜像を
形成する。なお、上記接着性組成物は無色または淡色が
好ましい。
【0026】上記接着性組成物は、像形成工程で転写層
と接着して、転写層を転写シートから剥離可能な状態を
形成し得ることが必要であり、少なくとも熱可塑性の樹
脂(結着樹脂)を含んでなり、必要に応じてフラックス
(熱溶融性無機材料)等を含んで構成される。上記熱可
塑性の樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂の中から適宜
選択することができ、例えば後述の結着樹脂が挙げられ
る。上記フラックス(熱溶融性無機材料)としては、後
述の転写シートの転写層に使用可能なものと同様のもの
が挙げられる。
【0027】接着性組成物で形成された接着性潜像の接
着力としては、像形成工程において、上記接着性潜像と
接触させて加熱した後の転写シートの転写層と該潜像と
の接着力が、転写シートの転写層と仮支持体との接着力
より大きいことが必要とされる。転写層の転写に十分な
接着力を確保することにより、高解像度で階調性の高い
画像を形成し得る転写性を得ることができる。
【0028】上記接着性組成物としては、実質的に有色
画像を形成し得る着色材を含まず、結着樹脂を含んで接
着性を有し、電子写真技術分野におけるトナー製造技術
に従って製造されるトナーであってもよい。該トナーと
しては、市販のものも使用することができる。但し、焼
成によって黒く着色されることがなく、所望の画像色相
が得られる点で、鉄や酸化鉄等の磁気成分を含まないも
のが好ましい。即ち、焼成後に陶材に最終的に形成され
る着色画像ではなく、潜像としての画像が形成される。
【0029】上記接着性組成物を用いた電子写真技術と
しては、例えば特開平9−197719号公報等に記載
の方法によるものであってもよく、着色トナーに代え
て、無機着色材を含まない無色若しくは淡色のトナー、
即ち、少なくとも結着樹脂と必要に応じて熱溶融性無機
物質(フラックス)等とを含んでなる接着機能を持つト
ナー(接着性トナー)を用い、予め形成された静電潜像
を現像して得た接着性潜像を所望の陶材上に転写する方
法であってもよい。接着性潜像の形成は、予め形成され
た静電潜像を接着性トナーを用いて現像し潜像を形成し
た後、該潜像を受像体の受像層表面に転写することによ
っておこなうことができる。該方法の詳細については、
特開平9−197719号公報(無機着色材の記載を除
く)の記載を参照することができる。
【0030】ここで、上記接着性トナーは、少なくとも
結着樹脂を含んでなり、必要に応じて熱溶融性無機物質
等を含んでなり、後の像形成工程で転写層と接着して該
転写層を画像用に剥離可能なように構成される。上記結
着樹脂としては、例えば、特開平9−197719号公
報の段落番号[0012]に記載のもの等が挙げられ、
接着性を十分に確保する観点からは、ポリエステル樹
脂、ブチラール樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、アク
リル系樹脂等が好ましい。
【0031】上記熱可塑性の樹脂(結着樹脂)の含有率
としては、特に制限はなく、後の像形成工程における転
写層の接着性(即ち、転写性)を確保し、高解像度の画
像を形成する観点から、接着性組成物(接着性トナー)
全量(質量)の10質量%以上が好ましく、45質量%
以上がより好ましく、55質量%以上が特に好ましい。
その上限に特に制限はないが、通常、95質量%以下で
あり、60〜85質量%程度が好ましい。接着性組成物
(接着性トナー)が結着樹脂と熱溶融性無機物質とを含
む場合、結着樹脂の含有率としては、トナー全量(質
量)の10質量%以上が好ましく、45質量%以上がよ
り好ましく、55質量%以上が特に好ましい。その上限
は、通常60〜85質量%程度である。該含有率が55
質量%以上であると、帯電特性や定着特性等の、電子写
真用トナーとしての必要特性を確保することができる。
【0032】尚、上記熱溶融性無機物質(フラックス)
としては、例えば該公報の段落番号[0006]〜[0
011]に記載のもの等が挙げられる。
【0033】上記接着性トナーは、電子写真技術分野で
用いられるトナー製造技術に従って製造することができ
る。この場合、接着性トナーには、例えば帯電制御剤な
どの補助成分を添加することができ、帯電制御剤等につ
いては特開平9−197719号公報に記載のものが好
適に挙げられる。
【0034】−潜像形成液を用いた転写法− LMIT法に代表される潜像形成液を用いた転写法は、
無機顔料を含む転写材料からなる転写層を有する転写シ
ートの転写層表面、および上記転写材料を転写可能な受
像層を有する受像シートの受像層表面の少なくとも一方
に、上記転写材料の上記受像層表面への転写を促進させ
得る潜像形成液を画像様に付与して潜像を形成し、上記
転写層表面と上記受像層表面とを少なくとも接触させ
て、上記潜像に対応して転写材料を受像層表面に転写し
て、上記受像層表面に転写材料からなる画像(無機顔料
像)を形成する方法である。また、潜像形成液を用いた
転写法には、通常は固体であり、印画時に加熱され溶融
状態となり像形成可能な粘着性または接着性材料を含む
インク(接着性インク)を用いた固体インクジェット法
も含まれる。尚、無機顔料像の形成後は、該像を所望の
セラミックス体等の陶材表面に配置して加熱焼成し、転
写材料中の無機顔料を陶材表面に焼結して固定する。L
MIT法について具体的には、本発明者等が特願200
0−143304号、および特願平11−281179
号(潜像形成液を用いる方法)において提案している。
また、固体インクジェット法については、特開平2−9
637号公報および特開平8−295836号公報等に
記載されているが、このインクジェットを利用した方法
について具体的には、上記公報記載の固体インク中に上
記潜像形成可能な粘着性または接着性材料を含有させ、
印字時に該インクを溶融して、受像材料の受像層に噴射
ノズルからある程度の粘性を有する液滴として吐出し潜
像を形成する。その後、転写材料の転写層表面と接触さ
せて、上記潜像に対応して転写材料を受像層に転写し、
受像層表面に無機顔料像を形成する方法である。LMI
T法を適用した場合の一例(像形成工程)を、図2およ
び3を用いて以下に説明する。図2および3は、本発明
の製造方法における像形成工程の一実施態様を示す概略
工程図である。
【0035】図2−((a)−2)に示すように、転写シー
ト15と受像体5'とを用意する。転写シート15は、
例えば、仮支持体9の表面に、雲母系顔料を含む転写材
料からなる転写層8を少なくとも有して構成され、受像
体5'は、例えば、支持体2の表面に、水溶性ポリマー
を含有する層1と受像層3とを順次有して構成される。
受像体5'として、図1−(a)のように、単層で構成さ
れる受像体5を用いてもよい。次に、受像体5'の受像
層3の表面に、インクジェット記録装置(不図示)を用
いて、画像情報に応じて潜像形成液を含有する液滴を画
像様に付与して潜像を形成する。その後、図3−((b)
−2)のように、潜像が形成された受像体5'の受像層3
の表面と転写シート15の転写層8の表面とを対向させ
て互いに接触するように重ね合わせ、必要に応じて加圧
等しながら加熱してラミネートする。ラミネートした
後、図3−((b)−3)に示すように、転写シート15を
剥離すると、受像層3の潜像形成液が付与された領域
(潜像部)にのみ転写層8が転写され、受像層3上に
は、無機顔料像として、転写材料からなる画像21(図
3−((b)−4)参照)が転写形成される(像形成工
程)。尚、単層で構成される受像体5(図1−(a)参
照)を用いた場合には、その受像層1上に画像21が形
成される。ラミネート時には、熱を供与と共に圧力を供
与するのが好ましく、例えば、ヒーター等の加熱手段を
内蔵する一対の加熱ニップローラ等が好適である。
【0036】次に、転写シート、潜像形成液について詳
述する。 −−転写シート−− 上記転写シートは、仮支持体の表面に、雲母系顔料を含
み着色された転写材料からなる転写層を有してなり、ク
ッション層等の他の層や被覆シートが設けられていても
よい。この転写シートは、後述の溶融転写法や、上記電
子写真法(無機顔料を含まない接着性トナーの態様)に
も好適に用いることができる。本発明の製造方法におい
て、上記転写層は、少なくとも雲母系顔料を含み、必要
に応じてその他の無機顔料、さらにバインダーを含むこ
とが好ましく、必要に応じてフラックス(熱溶融性無機
材料)、可塑剤、ワックス成分等の他の成分を含んでい
てもよい。
【0037】上記その他の無機顔料としては、通常、陶
芸に用いられる上絵具、下絵具を用いることができる
が、例えば、酸化銅、酸化コバルト等の結晶構造がスピ
ネル、スフェイン、パイクロア、ルチール、プライディ
ライト、フフォスフェイト、フェナサイト、ペリークレ
イス、オリビン、バデライト、ボレート、コランダム、
ジルコン等の金属酸化物;カドミウムイエロー等の硫化
物;セレン赤等のセレン化カドミウム化合物等が挙げら
れる。また、蛍光顔料や蓄光体顔料である無機顔料を使
用してもよい。
【0038】また、後述の焼成工程において、無機顔料
像の陶材表面への融着性を向上させ得る点で、フラック
ス(熱溶融性無機材料)を併用することが好ましい。上
記フラックスとしては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナ
トリウム、炭酸カリウム、酸化鉛、酸化ビスマス、炭酸
バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸
マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化ア
ルミニウム、酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ジルコニウム、
酸化チタン等が挙げられる。また、硼砂、長石、カオリ
ン等の複合成分を使用することもできる。上記フラック
スは、1種の単独でまたは2種以上を併用して溶解さ
せ、いわゆるフリットとして用いることもできる。
【0039】上記転写層中における無機顔料(雲母系顔
料を含む)の含有量としては、20〜80質量%が好ま
しく、40〜70質量%が更に好ましい。また、上記フ
ラックス(熱溶融性無機材料)を併用する場合、併用す
る無機顔料によってフラックスの好ましい使用量が異な
るが、無機顔料との混合物として、上記転写層中におけ
る該混合物の含有量としては、同様に20〜80質量%
が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。なお、
雲母系顔料は、粒径、比重が大きく沈降しやすいため分
散性が低く、液状インク中に含有して使用すると一様な
濃度の画像が得られない場合がある。しかし、雲母系顔
料を含む転写シートを用いて無機顔料像を形成すると、
転写層中で該雲母系顔料が沈降することがないため、均
一な濃度の画像を得ることができる。また、転写シート
を用いると、無機顔料像を形成する際にインクジェット
等によって直接雲母系顔料を吐出することがないため、
インクジェットヘッドの目詰まりによって画像故障をお
こすおそれがなく、安定に画像を形成できる。
【0040】上記バインダーとしては、ホモポリマーお
よびコポリマーのいずれのポリマーであってもよく、該
ポリマーは、モノマー1種、および2種以上のモノマー
のいずれで構成されていてもよい。中でも、転写材料か
らなる転写層が転写される、後述する受像体の受像層と
の関係において、上記ポリマーと受像層に用いられるポ
リマーとが、その構成単位として、それぞれ同一の官能
基を有するモノマーを30モル%以上含有してなるポリ
マー(以下、「同一官能基を含むポリマー」という。)
であることが好ましい。両層中のポリマーを構成するモ
ノマーは、少なくとも一種が互いに同一の官能基を有し
ていればよく、他に互いに異なる官能基を有していても
よい。ここで、同一の官能基としては、例えば、ブチラ
ール基、ビニルアルコール基、アミノ基、アミド基、イ
ミノ基、イミド基、スチレン基、アルコキシ基、メタク
リル基およびそのエステル基、アクリル酸およびそのエ
ステル基、マレイン酸およびそのエステル基、ビニルエ
ーテル基、塩化ビニル基、酢酸ビニル基等が挙げられ、
中でもブチラール基が好ましい。
【0041】上記同一の官能基を有するモノマーは、転
写層中の上記ポリマーおよび後述の受像層中のポリマー
中に、それぞれ構成単位として多く含まれるほど好まし
いが、その含有率としては、少なくとも30モル%以上
であることが望まれ、50モル%以上がより好ましく、
80モル%以上が特に好ましい。ポリマー中の構成単位
として上記「同一の官能基を有するモノマー」の含有率
が、30モル%未満であると、転写層中のポリマーおよ
び後述の受像層中のポリマーのそれぞれの性質の乖離が
大きく、多色転写する際の2回目以降の転写時に、既に
転写が完了した転写部および未転写領域における潜像形
成液(液状)の吸収性、潜像形成液による受像層の膨潤
性、膨潤した受像層上への接着性、等が不均一となり、
画像ムラを生じやすくなることがある。
【0042】具体的には、軟化点が40〜150℃の非
晶質有機高分子重合体が好ましく、溶融転写法に用いる
転写層の場合、特に低重合度のものが好ましい。上記非
晶質有機高分子重合体としては、例えば、ブチラール樹
脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、スルホ
ンアミド樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、石油樹
脂、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、
2−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニル安息香
酸、ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アミノスチ
レン等のスチレンおよびその誘導体、置換体の単独重合
体や共重合体、メチルメタクリレート、エチルメタクリ
レート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタ
クリレート等のメタクリル酸エステル類およびメタクリ
ル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチ
ルアクリレート、α−エチルヘキシルアクリレート等の
アクリル酸エステルおよびアクリル酸、ブタジエン、イ
ソプレン等のジエン類、アクリロニトリル、ビニルエー
テル類、マレイン酸およびマレイン酸エステル類、無水
マレイン酸、ケイ皮酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビ
ニル系単量体など、の単独重合体あるいは他の単量体等
との共重合体が挙げられる。これらのバインダーは2種
以上を併用してもよい。
【0043】上記転写層の厚さとしては、0.2〜4μ
mが好ましく、0.5〜2μmがより好ましい。該厚さ
が0.2μm未満であると、パール色、金属光沢が不十
分となることがあり、4μmをこえると、解像度および
階調性が悪化することがある。
【0044】同一の受像層上に、複数の画像層(画像形
成された転写層)を繰返し重ね合せて多色画像を形成す
る場合には、画像間の密着性を高める観点から、可塑剤
を含むことが好ましい。上記可塑剤としては、例えば、
フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル
酸ジ(2−エチルヘキシル、フタル酸ジノニル、フタル
酸ジラウリル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸ブチ
ルベンジル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジ(2
−エチルヘキシル)、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシ
ル)等の脂肪族二塩基酸エステル、リン酸トリクレジ
ル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)等のリン酸トリ
エステル類、ポリエチレングリコールエステル等のポリ
オールポリエステル類、エポキシ脂肪酸エステル等のエ
ポキシ化合物等が挙げられる。また、上記可塑剤のほ
か、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,
2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、トリメ
チロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトー
ルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアク
リレート、ジペンタエリスリトール−ポリアクリレート
等のアクリル酸エステル類も、用いるバインダー種によ
っては好適に併用できる。尚、可塑剤は2種以上を併用
してもよい。
【0045】転写層中における可塑剤の含有量として
は、無機顔料(雲母系顔料を含む)とバインダーの総質
量(S)と可塑剤の質量(s)との比(S:s)として、一般に
100:1〜100:3が好ましく、100:1.5〜
100:2がより好ましい。上記転写層には、更に必要
に応じて界面活性剤、増粘度剤等が添加され得る。
【0046】上記転写層中には、転写画像(ドット)の
膜ギレ、解像度を良化する観点から、ワックス成分を含
有させることが好ましい。ワックス成分の含有は、LM
IT法(転写促進性材料を用いる方法)および後述の溶
融転写法のいずれにも好ましいが、特に後者により画像
を形成する場合に重要となる。
【0047】上記ワックス成分としては、例えば、パラ
フィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カル
ナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワック
ス、フィッシャートロプシュワックス、蜜蝋、木蝋、鯨
蝋、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、ベトロ
ラクタム、ポリエステルワックス、ラノリン、低分子量
ポリエチレンワックス、アミドワックス、エステルワッ
クス、酸化ポリエチレンワックス、ロジン、ロジンメチ
ロール化アマイド、エステルガム、高級脂肪酸、高級脂
肪酸エステル、高級アルコール等が挙げられる。
【0048】また、上記転写層には、受像体、転写シー
トへの接着性を向上させ、更に多数回印字(対モノクロ
および2色以上のカラー画像)の場合、2回目移行の転
写層(材料)ののりを良くするために比較的低融点の熱
可塑性樹脂、例えば、低分子量の石油樹脂、ポリビニル
ブチラール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチ
レン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリ
ル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリ
ル酸エステル共重合体等を添加するのが好ましい。
【0049】上記転写層は、適当な溶媒に上記雲母系顔
料と必要に応じて無機顔料と上記バインダー等の転写材
料の各成分を溶解または分散した塗布液を調製し、これ
を仮支持体上(支持体上に上記下塗り層を有する場合は
該下塗り層上)に塗布し、乾燥して設けることができ
る。上記溶媒としては、有機溶媒系でもよいが、環境安
全性の観点より水系が好ましいが、n−プロピルアルコ
ール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノ
メチルエーテル(MFG)、メタノール等、またはこれ
と水との混合溶媒を用いることもできる。塗布、乾燥
は、一般に公知の塗布、乾燥方法を利用しておこなうこ
とができる。
【0050】転写シートを構成する仮支持体としては、
特に限定はなく公知の各種材料の中から目的等に応じて
適宜選択できる。例えば、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリカーボ
ネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニ
リデン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共
重合体等の合成樹脂材料が好適に挙げられ、中でも、機
械的強度や熱に対する寸法安定性およびコストの点で、
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0051】上記仮支持体には、その表面に設けられる
転写層との密着性を調節する目的で、粗面化処理および
/または一層若しくは二層以上の下塗り層の付設をおこ
なうことが好ましい。上記粗面化処理の例としては、グ
ロー放電処理、コロナ放電処理等が挙げられる。下塗り
層用の材料としては、支持体および転写層の両表面に適
度な接着性を示し、かつ熱伝導性が小さく、耐熱性に優
れたものが好ましい。該観点から、例えば、スチレン、
スチレン−ブタジエン共重合体、ゼラチン等が好適であ
る。下塗り層全体の厚さは、通常0.01〜2μmであ
る。また、転写シートの転写層付設側とは反対側の表面
には、必要に応じて、離型層等の各種の機能層の付設、
あるいは表面処理を行ってもよい。
【0052】上記被覆シートは、上記仮支持体と同一若
しくは類似の材料からなってもよいが、カバーコート層
から容易に分離可能である必要がある点から、例えば、
シリコーン紙、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタ
ラートフィルム等が適当である。該被覆シートの厚みと
しては、約10〜200μmが好ましい。特に好ましく
は、20〜100μm厚のポリエチレンテレフタラート
フィルムである。これらの被覆シートは転写する前に予
め剥離する。
【0053】<潜像形成液>潜像形成液は、熱転写材料
の転写温度を低下させ得る転写性促進材料又は粘着性材
料を含有してなる。
【0054】(転写性促進材料)上記転写性促進材料
は、転写層に含有される転写材料の転写温度を低下させ
得る材料である。上記転写性促進材料は液状組成物が好
ましく、経時的に析出しやすい固形の材料等を含まない
構成が好ましい。上記転写性促進材料としては、例え
ば、水、有機溶剤類(好ましくは、常温で水と自由に混
和する有機溶剤類)、界面活性剤類(好ましくは、水と
混和し得る界面活性剤類)、又はこれらの混合物が挙げ
られる。また、転写性促進材料は、それ自体無色若しく
は淡色のものが好ましく、上記転写材料に含まれる無機
顔料に化学的に作用せず、後工程で所望により与えられ
る熱エネルギーによって着色反応などを起こさない材料
であることが好ましい。
【0055】上記有機溶剤類としては、例えば、メチル
アルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコー
ル、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、
sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エ
チレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチ
レングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコ
ール、1,2,6−へキサントリオール、へキシレングリコ
ール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の一価
又は多価アルコール類;エチレングリコールモノメチル
エーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エ
チレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリ
コールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ
エチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテ
ル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピ
レングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコ
ールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ
エチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエ
ーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
等のエーテル類;ジアセトンアルコール等のケトアルコ
ール類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン
等含窒素系溶媒;等が挙げられる。
【0056】上記界面活性剤類としては、アニオン、カ
チオン、ノニオン及び両性の界面活性剤類のいずれも使
用可能であり、組合わせて使用する転写材料の特性に応
じて任意に選択できる。水に溶解させて使用する場合
は、水に溶解し得る範囲内の濃度で使用可能である。具
体的には、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル
塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル
塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレ
ンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキ
ルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン
酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、ポリ
オキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン
アルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪
酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アル
キルアルカノールアミン、アルキルアミン塩、アルキル
ベタイン、モノ又はジヒドロキシアセチレン化合物等が
挙げられる。
【0057】上記転写性促進材料は、1種を単独使用し
てもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中で
も、効果の点で、上記有機溶剤類及び/又は界面活性剤
類と水とを混合してなる転写性促進材料が好ましい。転
写性促進材料には、液滴として吐出させる際の吐出適性
の調整、及び液滴の拡散防止、保存安定性の向上等の目
的で、表面張力調整剤、防黴剤、粘度調整剤、pH調整
剤、消泡剤等を本発明の効果を損なわない範囲で含有さ
せることができる。
【0058】上記転写性促進材料は、転写層への浸透性
が良好であることが好ましく、表面張力25〜60mN
/m、粘度50mPa.s以下の物性を有していること
が好ましい。また、上記転写材料自体を可溶化させない
ものが好ましい。転写性促進材料が転写材料を溶解させ
ると、画像部と非画像部との界面部において、転写性促
進材料の浸透及び転写材料(転写層)の溶解が生じ、画
像界面の鮮鋭度が低下することがある。上記転写性促進
材料として転写材料を可溶化するものを用いる場合は、
上記転写性促進材料の吐出量を減少させるとよい。
【0059】転写性促進材料の作用によって転写材料の
転写温度を低下させる低下の程度(目安)としては、転
写性促進材料を用いない場合の転写材料の転写温度に対
して、転写温度の低下幅が3℃以上あることが好まし
い。尚、転写温度は、例えば、少なくとも一方が温度可
変の加熱ローラである一対の加熱ニップローラに、転写
シートと受像体とを熱電対を挟持させて積層し、この積
層体を加熱ニップローラ間に通過させることにより測定
することができる。加熱ローラによる加熱温度を変化さ
せて熱電対により温度測定を行い、転写が生じる最も低
い温度として、転写温度を求めることができる。
【0060】上記転写性促進材料の中でも、転写温度を
低下させる効果が大きく、微細点の転写性が良化し、高
解像度の転写画像を形成しうる点で、ノニオン性界面活
性剤と水とを含有してなるものが特に好ましい。上記ノ
ニオン性界面活性剤としては、親水基としてエチレンオ
キシド基を付加したノニオン化合物が特に好ましい。エ
チレンオキシド基を付加したノニオン化合物を用いる
と、潜像形成部の転写温度低下効果が大きく、高解像度
化を図ることができる。上記ノニオン系化合物として
は、下記一般式1〜一般式4のいずれかで表される化合
物等が挙げられる。
【0061】
【化1】
【0062】上記一般式1中、Rはアルキル基又はアル
キレン基を表し、nは2〜30、好ましくは2〜20の
いずれかの整数を表す。上記一般式2中、Rはアルキル
基を表し、nは2〜30、好ましくは2〜20のいずれ
かの整数を表す。上記一般式3中、Rはアルキル基を表
し、n及びlは、それぞれ独立に2〜30、好ましくは
2〜20のいずれかの整数を示す。上記一般式4中、R
1及びR2は、それぞれ独立に水素又はアルキル基を表
し、m及びnは、それぞれ独立に2〜30、好ましくは
2〜20のいずれかの整数を表す。また、上記一般式1
〜4において、エチレンオキシドの付加数としては、2
ないし30が好ましく、2ないし20が特に好ましい。
【0063】上記一般式1〜4のいずれかで表される化
合物の具体例としては、ポリオキシエチレン(4)ラウリ
ルエーテル、ポリオキシエチレン(7)セチルエーテル、
ポリオキシエチレン(13)ステアリルエーテル、ポリオ
キシエチレン(5)オレイルエーテル、ポリオキシエチレ
ン(10)ノニルフェニールエーテル、エチレンオキシド
ープロピレンオキシド共重合体(n=10,l=7),ア
セチレングリコールのエチレンオキシド付加体(n+m
=10)等が挙げられる。但し、これらに限定されるも
のではない。
【0064】ノニオン性界面活性剤及び水を含む転写性
促進材料中における、上記ノニオン界面活性剤の含有量
としては、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜1
0質量%がより好ましい。上記含有量が、0.1質量%
未満であると、転写促進効果が得られ難くなることがあ
り、20質量%を超えると、解像度が低下する傾向があ
る。また、上記ノニオン界面活性剤と共に水溶性有機溶
剤を併用することもでき、該水溶性有機溶剤としては、
上記「水と自由に混和しうる有機溶剤」が挙げられる。
上記水溶性有機溶剤の含有量としては、転写性促進材料
中、0〜90質量%程度が適切である。
【0065】また、上記転写性促進材料としては、常温
常圧下で沸点が100℃以上で且つ水に相溶性の有機溶
剤と水とを含有してなるものも好ましい。溶液の吐出安
定性が向上し、潜像形成時及び待機後再開始時の吐出不
良を防ぐことができ、また微細ドットの転写性が向上し
高解像度の転写体を得ることができる。上記常温常圧下
で沸点100℃以上で且つ水に相溶性の有機溶剤として
は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、
ポリプロピレングリコール、グリセリン等の1価又は多
価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテ
ル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレン
グリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール
モノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチル
エーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロ
ピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリ
コールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ
ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエ
ーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエー
テル類;ジアセトンアルコール等のケトアルコール類;
N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等含窒素
系溶媒;等が挙げられる。
【0066】この転写性促進材料中における「常温常圧
下で沸点100℃以上で且つ水に相溶性の有機溶剤」の
含有量としては、1〜90質量%が好ましい。該含有量
が、1質量%未満であると、吐出安定性、微細ドットの
転写性の向上が図れないことがあり、90質量%を超え
ると、潜像形成時の吐出安定性を向上し得る反面、転写
像の乾燥性が低下することがある。この場合も、上記有
機溶媒に加え、既述の「水と自由に混和しうる有機溶
剤」や界面活性剤類を添加することができる。
【0067】(粘着性材料)上記粘着性材料は、常温ま
たは加熱時に粘着性を有する物質(粘着性物質)を含有
し、粘着性物質としては、主として有機重合体を挙げる
ことができる。具体的には、アクリル酸、メタクリル
酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のア
クリル系モノマーの単独重合体およびその共重合体、ポ
リ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、
ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ塩
化ビニル等のようなビニル系モノマーの単独重合体およ
びエチレン−酢酸ビニル等それらの共重合体、ポリエス
テル、ポリアミド等のような縮合系ポリマー、スチレン
−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン
共重合体のようなゴム系ポリマーを挙げることができ
る。これらの中でも、ガラス転移点(Tg)が90℃よ
りも低いポリマーであることが好ましい。また、これら
は水への乳化分散体、所謂ラテックス状態で存在するも
のであってもよい。
【0068】また、粘着性材料は、上記粘着性物質を、
水または有機溶剤類の溶媒に溶解または分散(固体分散
および乳化分散を含む)した液であってもよい。ここに
いう有機溶剤類とは、具体的には、メチルアルコール、
エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロ
ピルアルコールのアルキルアルコール類、ジメチルホル
ムアミド、ジメチルアセトアミド、等のアミド類、エチ
レングリコール、1,2,6ヘキサントリオール、チオ
ジグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリ
コール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ
ール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の1価
または多価アルコール類、ジオキサン、エチレングリコ
ールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチ
ルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテ
ル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリ
プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル
類、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコ
ール等のケトン類またはケトアルコール類等を挙げるこ
とができる。
【0069】これら水または有機溶剤類は、粘着性材料
を溶解または分散させるために、各々単独に使用しても
よく、複数種類の溶剤を混合して使用してもよい。ま
た、上記溶液には、吐出適性、液の保存安定性、接着特
性を改善するために、表面張力調整剤、防黴剤、粘度調
整剤、pH調整剤、消泡剤、可塑剤等を併用することが
できる。
【0070】また、潜像形成液が粘着性材料を分散形態
(固体分散、乳化分散)で含む場合には、下記一般式
(5)で表される化合物を添加することが好ましい。 R−(S−P)n・・・一般式(5) この化合物を添加することにより、分散形態にある粘着
性材料が凝集を起こすことがなく潜像形成液が安定に保
持され、また、ノズル詰まりが発生することも防がれ
る。一般式(5)で示される化合物は、潜像形成液の固
形分に対し3〜20質量%添加されることが好ましい。
【0071】一般式(5)中、Rは疎水性基または疎水
性重合体(からなる基)を表し、Pは下記構造単位A、
B及びCのうちの少なくとも1つを含み、重合度が10
以上3500以下の重合体部位を表す。nは1又は2を
表す。
【0072】
【化2】
【0073】ここで、R1は−H又は炭素数1〜6のア
ルキル基を表し、R2 は−H又は炭素数1〜10のアル
キル基を表わし、R3は−H又は−CH3を表わし、R4
はH、−CH3、−CH2COOH(アンモニウム塩又は
金属塩を含む)又は−CNを表わし、Xは−H、−CO
OH(アンモニウム塩又は金属塩を含む)又は−CON
2を表わし、Yは−COOH(アンモニウム塩又は金
属塩を含む)、−SO3H(アンモニウム塩又は金属塩
を含む)、−OSO3H(アンモニウム塩又は金属塩を
含む)、−CH2SO3H(アンモニウム塩又は金属塩を
含む)、−CONHC(CH32CH2SO3H(アンモ
ニウム塩又は金属塩を含む)又は−CONHCH2CH2
CH2+ (CH33Cl-を表わす。
【0074】上記一般式(5)において、R1は−Hが
好ましく、R2は−CH3が好ましい。また、上記一般式
(5)で表わされる化合物の代表的な例として、ビニル
アルコールとビニルエステルのランダム又はブロック共
重合体あるいは更にカルボキシル基等のアニオン性基を
有する第3モノマー成分を含むビニルアルコールとビニ
ルエステルのランダム又はブロック共重合体の末端をア
ルキル基又は疎水性重合体で変性したものが挙げられ
る。
【0075】上記一般式(5)のRで表される疎水性基
としては、脂肪族基(例えばアルキル基、アルケニル
基、アルキニル基など)、芳香族基(例えばフェニル
基、ナフチル基など)及び脂環基があり、これらは置換
されているものも含む。置換基としては、脂肪族基、芳
香族基、脂環基、複素環基、ハロゲン原子、水酸基、シ
アノ基、ニトロ基、N−置換スルファモイル基、カルバ
モイル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ
基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリ
ールオキシ基、アラルキル基、アシル基などが挙げられ
る。
【0076】上記疎水性基がアルキル基の場合には、炭
素数3〜70、好ましくは4〜50、特に8〜24が好
ましい。Rが疎水性基の場合の具体例は、特開平10−
95942号公報の段落番号[0034]ないし[00
42]に開示されている(S−1)から(S−50)ま
での基が好ましく挙げられる。
【0077】また、一般式(5)におけるRが疎水性重
合体の場合、ポリスチレン及びその誘導体、ポリメタク
リル酸エステル(例えばポリメタクリル酸メチル)及び
その誘導体、ポリアリクル酸エステル及びその誘導体、
ポリブテン、ポリ酢酸ビニル、ポリバーサチック酸ビニ
ル等に代表される水に不溶性のビニル重合体やビニル共
重合体、ポリオキシプロピレンやポリオキシテトラメチ
レンの如き水に不溶性のポリオキシアルキレン類、更に
はポリアミド及びポリエステル等の水不溶性重合体等が
挙げられる。特にポリスチレン及びその誘導体、ポリメ
タクリル酸エステル及びその誘導体、ポリアクリル酸エ
ステル及びその誘導体並びにポリ塩化ビニルが好ましく
用いられる。また、疎水性重合体の重合度は2以上50
0以下、好ましくは2以上200以下、更に好ましくは
2以上100以下である。
【0078】上記一般式(5)で表される化合物におけ
る重合体部位Pは、上記構造単位A、B及びCのうちの
少なくとも1つを含む重合体である。重合体Aを構成す
る構造単位Aとしては具体的には、ビニルアルコール、
α−メチルビニルアルコール、α−プロピルビニルアル
コール等が挙げられる。重合体部位Pを構成する構造単
位Bとしては酢酸ビニル、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビ
ニル及びこれらのα置換体が挙げられる。更に重合体部
位Pを構成する構造単位Cとしてはアクリル酸、メタク
リル酸又はクロトン酸(それぞれアンモニウム塩、又は
Na、K等の金属塩を含む)、マレイン酸又はイタコン
酸(それぞれモノアルキルエステル、アンモニウム塩、
又はNa、K等の金属塩を含む)、ビニルホスホン酸、
ビニル硫酸、アクリルスルホン酸、メタクリルスルホン
酸、2−アクリルアミド−3−メチルプロパンスルホン
酸又は2−メタクリルアミド−3−メチルプロパンスル
ホン酸(それぞれアンモニウム塩、又はNa、K等の金
属塩を含む)、アクリルアミドプロピルトリメチルアン
モニウムクロリド又はメタクリルアミドプロピルトリメ
チルアンモニウムクロリド等の水中でイオン解離する単
量体単位が挙げられる。特にイタコン酸、マレイン酸が
好ましい。
【0079】これらの中で構造単位Aとしては、ビニル
アルコール単位が、構造単位Bとしては酢酸ビニル単位
が、また構造単位Cとしてはカルボン酸(アンモニウム
塩、又はNa、K等の金属塩を含む)を含むビニルモノ
マー単位又はスルホン酸(アンモニウム塩、又はNa、
K等の金属塩を含む)を含むビニルモノマー単位がより
好ましい単位である。
【0080】重合体部位Pを構成する上記構造単位A、
B及びCの含量については特に制限はないが、A、B、
Cの含率をそれぞれx、y、zモル%とすると、x+y
+z=100、0≦x≦100、0≦y≦75、0≦z
≦100が好ましく、x+y+z=100、0≦x≦1
00、0≦y≦50、0≦z≦50が特に好ましい。ま
た、構造単位Cの含量が1モル%以下の場合、重合体部
位Pが水溶性又は水分散性であるためには、構造単位A
の含量は50モル%〜100モル%であるのが好まし
い。
【0081】一般式(5)で表される化合物は水溶性か
ら水分散性まで広い範囲のものを含む。本発明の一般式
(5)で表される化合物が水溶性又は水分散性である限
りにおいては、重合体部位Pが上記構造単位A、B及び
C以外の構造単位を含むことも何ら差し支えなく、これ
らの構造単位として、例えばエチレン、プロピレン、イ
ソプテン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタク
リルアミド、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル又はフ
ッ化ビニル単位が挙げられる。該重合体部位Pの重合度
は10〜3500、好ましくは10〜2000、更に好
ましくは10〜1000、特に好ましくは10〜500
である。
【0082】該重合体部位Pの構造単位A及びBにおけ
るR1およびR2のアルキル基としては、特にメチル基が
好ましい。また、該アルキル基はヒドロキシル基、アミ
ド基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸
基、スルホンアミド基等により置換されていてもよい。
【0083】一般式(5)で表される化合物は、本発明
の目的により、これを構成するP及びRの最適化学組
成、分子量等は異なるが、どの目的においても、PとR
の質量比が0.001≦R/P≦2、より好ましくは
0.01≦R/P≦1の組成を有するものが特に効果が
優れている。
【0084】なお、上記粘着性材料としては、通常は固
体であり、印画時に加熱され溶融状態となり潜像を形成
可能となる接着性インク(粘着性または接着性材料を含
むインク)も含まれる。
【0085】(溶融転写法)上記溶融転写法としては、
例えば、無機顔料を含む転写材料からなる転写層を有す
る転写シートに対して、サーマルヘッド等の発熱素子を
備える熱転写プリンタを用いる公知の方法等が好適に挙
げられる。具体的には、黒白またはカラーの写真、印刷
物、絵画等をスキャナーで読み取った画像データ、ある
いは電子スチルカメラ、ビデオカメラ等による撮影画像
やコンピュータで作成した画像(CG)等の画像データ
を電気信号に変換し、該信号をもとに熱転写プリンター
のサーマルヘッド等の発熱素子を発熱させ、被転写体上
に転写層を画像様に溶融させて転写し無機顔料像を形成
する方法である。溶融転写法に用いる上記転写シートは
雲母系顔料を含むものであり、既述の潜像形成液を用い
た転写法における転写シートと同様に構成することがで
きる。
【0086】溶融転写法を適用した場合、例えば図2−
((a)−2) と同様に構成された転写シート15および
受像体5'を用いて、潜像形成液による潜像は形成せ
ず、前述と同様に転写シート15および受像体5'を重
ねて(図3−((b)−2)参照)、転写シート15の支持
体9の表面からサーマルヘッド等で直接画像様に熱印加
し剥離することにより(図3−((b)−3)参照)、受像
層3の表面に無機顔料像11を形成することができる
(図3−((b)−4)参照)。
【0087】〈受像体〉本発明における像形成工程は、
概述の通り受像体の表面に上記無機顔料像を形成する。
上記受像体は、支持体の表面に、像形成可能な受像層を
少なくとも一層有する構成が好ましく、その態様は、選
択する既述の「無機顔料像を形成する方法」や目的、用
途等に応じて適宜選択でき、支持体と受像層との間にク
ッション層、剥離層、中間層等が設けられていてもよ
い。本発明においては、クッション層、剥離層および中
間層より選択される少なくとも1層または2層以上有し
てなるものが好ましい。また、搬送性向上の目的で、支
持体の受像層を有する側とは反対側にバック層を設けた
態様、或いは、強度補強の目的で受像層表面にカバーコ
ート層を設けた態様であってもよい。また、該カバーコ
ート層は、例えば受像層表面に無機顔料像を形成した後
に、転写体を用いて転写して、または、カバーコート層
用塗布液を塗布等して該無機顔料像上に形成してもよ
い。尚、カバーコート層を転写体を用いて転写する方法
(カバーコート層転写工程)については後述する。
【0088】上記像形成可能な受像層としては、無機顔
料像が形成可能であれば特に制限はなく、バインダーと
して疎水性ポリマーまたは水溶性ポリマーのいずれを含
んでなる層であってもよく、配置工程おける、支持体剥
離の簡便さ、陶材への配置の容易さの観点から、水溶性
ポリマーを含む層(以下、「水溶性ポリマー層」という
ことがある。)が好ましい。この場合、上記支持体を透
水性支持体とすることがなお好ましく、透水性支持体剥
離後の強度を補強するために上記カバーコート層を設け
るのがさらに好ましい。上記像形成工程において、既述
の「無機顔料像を形成する方法」のいずれかで水溶性樹
脂層上に無機顔料像が形成され、配置工程において、支
持体の水浸透性を利用して水溶性樹脂の一部を溶解しつ
つ容易に剥離することができる。
【0089】また、本発明の上記接着性トナーを用いる
電子写真法、潜像形成液を用いた転写法(LMIT法若
しくは接着性インクを用いた固体インクジェット法等)
または溶融転写法のように、転写シートを用いる方法で
無機顔料像を形成するため、透水性支持体に設けられた
水溶性ポリマー層上に更に受像層を有してなる受像体
(接着性受像シート)が好ましく、該受像層には、バイ
ンダーとして既述の「同一官能基を含むポリマー」(疎
水性ポリマー)を所定量含む態様(以下、「疎水性ポリ
マー層」ということがある。)が特に好ましい。この場
合、疎水性ポリマー層が上記「像形成可能な受像層」を
担い、水溶性ポリマー層は、支持体剥離性を向上し、陶
材への接着性を付与する層(剥離層)として機能する。
疎水性ポリマー層が水溶性ポリマー層を介在して設けら
れることで、多色転写時の、転写部および未転写部にお
ける液吸収性、層膨潤時の接着性等の不均一、および該
不均一に伴う画像ムラを解消し、転写性を良化すること
ができる。一方、上記着色性トナーを用いる電子写真法
で無機顔料像を形成する場合には、上記同様に水溶性ポ
リマー層および疎水性ポリマー層を有して構成されても
よいが、焼成工程において、無機顔料像の陶材への焼結
をより安定的に行い得る観点から、疎水性ポリマーを含
む層が介在しない態様が好ましい。
【0090】上記水溶性ポリマーとしては、支持体が紙
支持体である場合、上記受像体を水に浸漬等した際に、
その一部が溶解して紙支持体が剥離可能になると共に、
剥離後の無機顔料像をその剥離面において、陶材表面に
接着可能となるものが好ましい。この場合の接着とは、
陶材表面に位置ズレすることなく配置可能であれば足り
る。この点から、上記水溶性ポリマーとしては、例え
ば、デキストリン、アラビアゴム等の陶磁器の絵付けに
用いられるポリマー、ポリビニルアルコール、カルボキ
シメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエ
チルセルロース、ゼラチン等が好ましい。
【0091】上記疎水性ポリマーとして、既述の「同一
官能基を含むポリマー」と共に、例えば、ポリビニルブ
チラール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレ
ン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル
酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル
酸エステル共重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ
エステル、ポリ酢酸ビニル樹脂、セルロース誘導体系、
ポリスチレンメタクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系
樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、
ロジン系樹脂等の熱可塑性樹脂を併用することができ
る。また、陶磁器等のセラミックス体の上絵付け用オー
バープリントラッカーとして用いられる樹脂も好適であ
り、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等も併用で
きる。
【0092】上記像形成可能な受像層の層厚としては、
一般には0.3〜7μmであり、好ましくは0.7〜4
μmである。また、上記接着性受像シートの場合の「水
溶性ポリマー層」の層厚としては、0.2〜20μmが
好ましい。
【0093】上記受像体の支持体としては、プラスチッ
クシート、金属シート、ガラスシート、紙等のような通
常のシート状の基材が挙げられる。プラスチックシート
の例としては、ポリエチレンテレフタレートシート、ポ
リカーボネートシート、ポリエチレン−2,6−ナフタ
レートシート、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニリ
デンシート、ポリスチレンシート、スチレン−アクリロ
ニトリルシート、ポリエステルシート等が挙げられ、上
記ガラスシートの例としては、ガラスエポキシシート等
が挙げられ、上記紙支持体としては、平滑性の良好な印
刷本紙、コート紙等が挙げられる。
【0094】受像シートの上記支持体の厚さとしては、
通常10〜400μmであり、25〜200μmが好ま
しい。また、支持体の表面は、像形成可能な受像層(あ
るいはクッション層)との密着性の向上、または転写シ
ートの転写層との密着性の向上の目的で、コロナ放電処
理、グロー放電処理等の表面処理が施されていてもよ
い。
【0095】(転写像形成工程・像転写工程)また、本
発明の製造方法は、受像体表面に無機顔料像を転写法に
よって形成してもよい。この場合、上記像形成工程は、
転写受像体の表面に雲母系顔料を含有する材料からなる
転写無機顔料像を形成する転写像形成工程と、上記転写
無機顔料像を上記受像体の表面に転写して、上記受像体
の表面に上記無機顔料像を形成する転写工程と、を含む
のが好ましい。転写法によって受像体表面に無機顔料像
を形成すると、2色以上の画像を形成する場合に混色等
を防止して、色純度の高い画像を得ることができる。例
えば、転写法を用いずにLMIT法によって受像体表面
に直接無機顔料像を形成する場合を例にとって説明する
と、2色目以降の無機顔料像を形成する際に、既に形成
された無機顔料像上に転写層の一部が付着してしまい、
いわゆる2次色かぶりを起こしてしまう場合がある。こ
れに対し、各色ごとに転写無機顔料像を転写受像体に形
成し(転写像形成工程)、それを受像体に転写して無機
顔料像を形成すれば(像転写工程)、実質的に既に形成
された無機顔料像上に転写層がくることはないので、2
次色かぶりを防止することができる。
【0096】上記転写像形成工程は、転写受像体の表面
に雲母系顔料を含有する材料からなる転写無機顔料像を
形成する工程である。上記転写受像体としては上述の受
像体と同様のものを好適に用いることができ、転写受像
体表面に無機顔料像を形成する方法についても上述の方
法を好適に用いることができる。また、上記転写無機顔
料像は、雲母系顔料を含有する材料からなり、該雲母系
顔料およびこれを含有する材料は上述の無機顔料に用い
る材料と同様である。また、上記転写無機顔料像を上記
受像体の表面に転写する方法としては公知の転写方法を
利用することができる。
【0097】(カバーコート層転写工程)本発明におい
て上記無機顔料像が形成された受像体にカバーコート層
を設ける場合には、カバーコート層転写工程によって該
カバーコート層を設けるのがコスト面および作業効率の
観点から好ましい。カバーコート転写工程においては、
上記像形成工程おいて無機顔料像が形成された受像層表
面と、カバーコート層を有する転写体の上記カバーコー
ト層表面とを少なくとも接触させて加熱し、上記カバー
コート層を上記受像層上に転写する。即ち、無機顔料像
を覆うようにカバーコート層を重ね合わせ、その状態で
加熱しながら密着させて積層体を形成する。その後、該
積層体から転写体の仮支持体を剥離除去することによ
り、受像層の一部または全面にカバーコート層を転写形
成することができる。
【0098】加熱して積層体とする過程では、加圧しな
がら加熱してもよく、例えばヒーター等の加熱手段を内
蔵する一対の加熱ニップローラを備える装置(例えば、
ヒートロールラミネーター)等によりラミネートして両
層を密着させることができる。加熱時の加熱温度として
は、一般には50〜200℃が好ましい。
【0099】上記転写体は、仮支持体の表面に少なくと
もカバーコート層を有してなり、必要に応じてフリット
層等の他の層や被覆シートが設けられていてもよい。こ
こで、上記仮支持体および被覆シートとしては、特に制
限はなく、既述の転写シートを構成する仮支持体、およ
び被覆シートと同様のものを用いることができる。
【0100】上記カバーコート層は、疎水性ポリマーを
少なくとも含んで構成される。疎水性ポリマーを主に構
成されることで、後述の配置工程で水中に浸漬等して受
像体の支持体を剥離する際に、無機顔料像をカバーコー
ト層表面で保持でき、画像に支障を来すこともない。上
記疎水性ポリマーとしては、転写層に使用可能なものと
同様のバインダーが挙げられ、既述の「同一官能基を含
むポリマー」が好適である。中でも、凹凸表面や湾曲面
への密着、転写を可能とする観点から、ガラス転移点が
室温(使用環境温度)以下のポリマーが好ましい。ここ
で、使用環境温度とは、25℃をいう。更には、上記ガ
ラス転移点としては、ー50℃〜25℃が好ましく、−
30℃〜15℃がより好ましい。具体的には、市販品と
して、互応化学工業(株)製のカバーコートレジンLO
−210、同LO−176S、同LO−200H、同L
O−170H等が挙げられる。
【0101】上記カバーコート層にフラックス(熱溶融
性無機材料)を含有させてもよい。フラックスを含有さ
せることにより、既述の像形成工程で形成された無機顔
料像中の無機着色材含有率が高い場合でも陶材に強固に
焼結され易く、しかも焼結後の画像安定性、および表面
光沢性をも向上させることができる。上記フラックスと
しては、上記転写シートの転写層に使用可能なものと同
様のものが挙げられる。該フラックスの含有量として
は、カバーコート層中の疎水性ポリマー含量(質量)に
対して、1〜100質量%が好ましい。
【0102】上記カバーコート層の層厚としては、5〜
50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
該層厚が、5μm未満であると、配置工程における作業
性が悪くなることなることがあり、50μmを超える
と、焼成時に品質が悪化することがある。
【0103】上記のように、カバーコート層にフラック
スを含有せず、または含有すると共に、上記カバーコー
ト層の仮支持体と接しない側の表面にフリット層を設け
ることが好ましい。フリット層は、フラックス(熱溶融
性無機材料)および熱可塑性樹脂を少なくとも含んでな
り、該層の層厚としては、0.5〜2μmが好ましい。
上記フラックスとしては、上記転写シートの転写層に使
用可能なものと同様のものが挙げられ、該フラックスの
含有量としては、転写層の雲母系顔料量(質量)に対し
て、10〜100質量%が好ましい。また、上記熱可塑
性樹脂としては、例えば、転写シートの転写層に用いる
熱可塑性樹脂の等の中から適宜選択できる。
【0104】〈配置工程〉本発明における配置工程は上
記無機顔料像を上記受像体の一部または全部と共に陶材
の表面に配置する。また、受像体から支持体を剥離して
無機顔料像を陶材表面に配置する場合、支持体剥離後に
おいて、必ずしも受像体の受像層および/または水溶性
ポリマーを含有する層(水溶性ポリマー層)を除去する
必要はなく、受像層および/または水溶性ポリマー層を
介在させて陶材の表面に配置してもよい。カバーコート
層にフラックスを含有またはフリット層を有する場合、
好ましくはカバーコート層は無機顔料像の上に配置させ
ない。カバーコート層の無機顔料像の上に存在させると
パール光沢色、金属光沢色が失われる。
【0105】陶材表面への配置は、無機顔料像を少なく
ともカバーコート層と共に陶体表面に、必要に応じて加
熱圧着することにより行える。加熱圧着時には、陶材と
無機顔料像との間に受像層や水溶性ポリマー層を介在さ
せて配置してもよいし、カバーコート層の無機顔料像を
有しない側の表面を陶材表面と対向させて配置してもよ
い。前者では、受像体を、透水性支持体の表面に水溶性
ポリマーを含有する層と受像層とを順次有する態様に構
成することが好ましい。
【0106】支持体の表面に水溶性ポリマーを含有する
層と受像層とを順次有する受像体(以下、「接着性受像
体」ということがある。)を用いた場合、支持体が透水
性支持体のとき、像形成工程の後、受像体の透水性支持
体側の一部を水に接触若しくは浸漬し、上記水溶性ポリ
マーの一部を溶解させて支持体を剥離除去すると共に、
剥離した剥離面において陶材表面に接着することができ
る。この場合上記カバーコート層転写工程によってカバ
ーコート層を設けておけば、カバーコート層で強度を補
いながら無機顔料像を陶材表面に配置することができ
る。したがって、この場合は糊剤を溶解または分散した
液は不要であり、コスト面や作業面で有利である。ま
た、焼成後に高品質な画像を得るために、上記支持体を
剥離する前または剥離後に、糊剤を溶解または分散した
液を介して上記接着性受像体の無機顔料像形成面が陶材
の表面に接触するように、上記無機顔料像を陶材の表面
に配置してもよい。さらに、支持体がプラスチックフィ
ルム支持体のとき、後述のように予めプラスチックフィ
ルム支持体に離型性を付与する表面処理を施しておくこ
とによって、水に浸漬等することなく、プラスチックフ
ィルム支持体を容易に剥離することができる。この場
合、糊剤を溶解または分散した液を介して陶材表面に配
置することができる。
【0107】上記において、糊剤を溶解または分散した
液としては、水に、糊剤として、例えば水溶性ポリマ
ー、ゼラチン、でんぷん、デキストリン、ヒドロキシエ
チルセルロース、ラテックスまたはエマルション(例え
ばポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、アク
リル樹脂など)等を溶解または分散した液等が挙げられ
る。
【0108】上記陶材としては、タイル等の建材等に用
いられる陶板、陶器、陶磁板、陶磁器等や、セラミック
ス材料などが挙げられる。陶材の色、形状、厚み等の形
態については目的、用途に応じて適宜選択することがで
きる。
【0109】〈焼成工程〉本発明における焼成工程は、
上記無機顔料像が配置された陶材を加熱して焼結する。
上記焼成工程においては、少なくとも無機顔料像が配置
された陶材を加熱し、上記無機顔料像を陶材の表面に焼
結する。無機顔料が陶材の表面に焼結されると共に、無
機顔料以外の成分、および像と共に陶材表面に配置され
た受像層等の成分が蒸発または焼却される。したがっ
て、無機顔料と共に陶材表面に配置された材料(転写層
や受像層中の成分など)は、焼成工程時に蒸発または燃
焼により消失しない原子、化合物等を含んだり、無機顔
料と反応して変色等を伴う原子、化合物等を含まないこ
とが好ましい。
【0110】陶材の加熱は、温度制御、発色性等の観点
から、例えば、電気窯等を用いておこなうことが好まし
い。加熱条件は選択した材料、陶材の体積、画像の大き
さ等に応じて、適宜設定することができる。加熱は焼成
温度まで緩やかに昇温させるか、300〜500℃で一
定時間定温加熱した後に、焼成温度まで緩やかに昇温し
ていくのが好ましい。焼成は、通常750〜900℃で
30分〜4時間おこなう。
【0111】以上のように、美術タイル等の建材やセラ
ミックス材などの陶材の表面にパール色や金属光沢色な
どの特別色を用いた無機質の焼結画像を形成するにあた
り、大規模かつコストのかかる塗布装置が不要となり、
しかも塗布液の調製が不要であると共に、溶剤使用によ
る作業環境の悪化や危険性を回避でき、塗布液の粘度等
の液性や膜性(均一性)の調整および乾燥工程(条件)
等に伴う煩雑な作業を除去することができる。その結
果、パール色や金属光沢色無機質の焼結画像を、塗布工
程を伴わず簡便かつ低コストに形成することが可能とな
り、大幅に作業性、安全性が改善され、小規模な場合な
どにも対応して生産性が向上され、これもコスト低減に
寄与し得る。
【0112】また、陶材の無機顔料像形成面の色と燒結
後の画像の色が補色の関係を有するように所望の陶材、
雲母系顔料、その他の無機顔料像などを適宜選定するこ
とにで模様が際立ったパール色の画像や金属光沢色の画
像を得ることができる。ここで「補色」とは、一般に二
つの色の光を適当な割合で混合した結果白色光となる場
合の一方の色に対する他の色をいい、ここでいう「補色
の関係」とは、一般にいう補色の関係を有する色の他に
もその周辺色を含み、例えば、赤色と青緑等が挙げられ
る。尚、本発明においては、白系色と黒系色、金色と紺
色等も含むものとする。さらに、本発明の製造方法にお
いてネガ型の無機顔料像を陶材表面に形成すると、陶体
と画像の色との関係により趣のある画像を得ることがで
きる。例えば、黒色の陶体の表面にパールホワイトある
いは金色、銀色その他のパール色、金属光沢色のネガ画
像を形成すると、模様が際立った趣のある画像をえるこ
とができる。
【0113】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明するが、本
発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0114】[実施例1]:LMIT法 <潜像形成液溶液の調製>下記成分を混合し均一に攪拌
した後、0.45μmのミクロフィルターによって濾過
し、潜像形成液溶液を得た。 ・n−プロピルアルコール 45質量部 ・エマルゲン104P(花王(株)製) 5質量部 ・蒸留水 50質量部
【0115】<転写シートの作製> (1)ゴールド転写シートの作製 −ゴールド転写層用塗布液の調製− 下記組成の成分を混合して十分に攪拌し、ゴールド転写
層用塗布液(塗布液W)を調製した。 〔塗布液Wの組成〕 ・雲母金彩(101;伊勢久) 10質量部 ・ポリオキシチレン(n=10)ノニルフェノールエーテル 0.5質量部 (20質量%水溶液) ・カルナバワックス分散液(31質量%) 20質量部 (K−332;中京油脂(株)製) ・水 20質量部 ・ブチラール樹脂分散液(25質量%) 60質量部 (レゼムJ667;中京油脂(株)製) ・テルペンフィノール樹脂分散物(35質量%) 5質量部 (レゼムJ628;中京油脂(株)製)
【0116】上記塗布液Wを、厚み25μmのポリエス
テルフィルムの表面に乾燥膜厚2μmとなるように塗
布、乾燥してゴールド転写層を形成し、ゴールド転写シ
ートを作製した。
【0117】<受像体の作製>秤量100gの平滑な紙
支持体の表面にアラビアゴムの10%水溶液を乾燥層厚
5μmとなるように塗布、乾燥して、第一層(水溶性ポ
リマー層)を形成した。この第一層上に、更にメタクリ
ル酸系樹脂を主成分とするカバーコートレジン(プラス
サイズLO−210、互応化学工業(株)製)を乾燥層
厚15μmとなるように塗布、乾燥して、第二層(受像
層)を積層し、受像体を作製した。
【0118】<画像形成>まず、図4と同様の構造を有
する画像形成装置40を用いて、図2および3に示すよ
うにして、上記より得た受像体の受像層上に、上記より
得たゴールド転写シートを用いて、転写層からなるゴー
ルドの画像(無機顔料像)を形成した(像形成工程)。
尚、無機顔料像は陶材表面に配置された状態でネガ型の
画像となるように形成した。具体的には、以下の通りで
ある。
【0119】画像形成装置40は、対向配置され、受像
体20と転写シート41とを加熱、加圧しながら搬送可
能な支持ドラム44およびピンチローラ46と、受像体
20の搬送路の支持ドラム44より上流側に位置し、受
像体20の第二層(受像層)表面に潜像形成液溶液の液
滴を画像様に付与可能な吐出ヘッド42とを備え、更に
転写シート41の搬送路の終点部に配設された巻き取り
ローラ48と、転写シート41の搬送路の巻き取りロー
ラ48より上流側であって、支持ドラム44より下流側
に配置された直方体状の剥離バー50とを備えている。
また、受像体20の搬送路には、画像様に吐出された潜
像形成液溶液を加熱乾燥するための加熱ヒータ52と、
受像体20上に転写された転写画像を乾燥するための加
熱ヒータ54とを備える。
【0120】図4のように構成された画像形成装置40
に、上記より得た受像体とゴールド転写シートとを、受
像層面とゴールド転写層面とが互いに対向するようにセ
ットし、吐出ヘッド42に上記より得た潜像形成液溶液
を充填した。画像形成装置40を起動すると、支持ドラ
ム44およびピンチローラ46は各々矢印方向に同期し
て回転し、受像体20の第二層(受像層)上には、吐出
ヘッド42から潜像形成液溶液が画像様に吐出され、ゴ
ールド画像を形成しうる潜像が形成された。この潜像部
は、更に支持ドラム44およびピンチローラ46の圧着
部まで搬送され、加熱(75℃)の条件下、転写シート
のゴールド転写層表面と受像体の受像層表面とをラミネ
ートした。ラミネートされた状態で更に矢印方向に搬送
されると、剥離バー50で剥離され、剥離後の受像層上
にはゴールド画像が形成された。
【0121】続いて、画像が形成された受像体の紙支持
体側の一部を水中に浸漬させ、第一層の一部を溶解させ
つつ紙支持体を剥離除去した。その後、紙支持体が剥離
されて露出し溶解状態にある第一層(水溶性ポリマー
層)の表面(剥離面)が黒色の陶材の表面に接触するよ
うにして配置した(配置工程)。この時、陶材の表面に
は、第一層(水溶性ポリマー層)と第二層(受像層)と
無機顔料像とカバーコート層とが順次積層されていた。
【0122】この状態の陶材を、無機顔料像がカバーコ
ート層等と共に形成された陶材を400℃にて1時間、
さらに850℃にて4時間焼成し、無機顔料を陶材表面
に焼結させて、ゴールドの画像付の陶体を得た(焼成工
程)。
【0123】以上のように、簡易な工程でゴールド(雲
母金彩)を用いた画像付の陶体を作製することができ
た。そのため、生産性も向上し、コストダウンを図るこ
とが可能となった。しかも、溶剤を用いた塗布液の調製
作業がなく、作業性、安全性をも確保することができ
た。また、絵付き付の陶体には、画像の色ムラ、濃度ム
ラのない良好な画像が形成されており、耐水性、耐光性
も共に良好であった。さらに、黒色の陶材にゴールドの
ネガ画像を形成したため、画像が際立った趣のある画像
を得ることができた。
【0124】
【発明の効果】本発明によれば、美術タイル等の建材や
セラミックス材などの陶材の表面に、塗布によることな
く、無機質の焼結画像を簡易かつ低コストに形成するこ
とができ、作業性、生産性、安全性の向上に資する製造
方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法の基本的態様を説明するた
めの概略工程図である。
【図2】 本発明の製造方法における像形成工程の一実
施態様の一部を示す概略工程図である。
【図3】 本発明の製造方法における像形成工程の一実
施態様の一部を示す概略工程図である。
【図4】 実施例で用いた画像形成装置の概略図であ
る。
【符号の説明】
1,3…受像層(水溶性ポリマー層) 2…支持体 5…受像体 6…カバーコート層 7,9…仮支持体 8…転写層 10…転写体 11,21…無機顔料像 12…陶材 15…転写シート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B44C 3/02 B44C 3/02 Z Fターム(参考) 2H086 BA01 BA05 BA15 BA21 BA26 BA35 BA51 3B005 EA01 EB05 EC11 EC30 FA03 FB01 FB25 GA02 GB01 GB03 GC03 GC08 GD10 4G055 AA07 BA32 BA40

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 受像体の表面に雲母系顔料を含有する材
    料からなる無機顔料像を、転写シートを用いた電子写真
    法、潜像形成液を用いた転写法および溶融転写法のいず
    れかの方法を用いて形成する像形成工程と、 前記無機顔料像を前記受像体の一部または全部と共に陶
    材の表面に配置する配置工程と、 前記無機顔料像が配置された陶材を加熱して焼結する焼
    成工程と、を含むことを特徴とする絵付き陶体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記受像体が、透水性支持体の表面に水
    溶性ポリマーを含有する層を有してなる接着性受像体で
    あることを特徴とする請求項1に記載の絵付き陶体の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記配置工程において、前記水溶性ポリ
    マーを含有する層の一部を溶解させて前記接着性受像体
    から前記透水性支持体を剥離し、前記接着性受像体の剥
    離面が前記陶材の表面に接触するように、前記無機顔料
    像を前記陶材の表面に配置することを特徴とする請求項
    2に記載の絵付き陶体の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記配置工程において、前記水溶性ポリ
    マーを含有する層の一部を溶解させて前記接着性受像体
    から前記透水性支持体を剥離する前または剥離後に、糊
    剤を溶解または分散した液を介して前記接着性受像体の
    無機顔料像形成面が陶材の表面に接触するように、前記
    無機顔料像を陶材の表面に配置することを特徴とする請
    求項2に記載の絵付き陶体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記像形成工程が、 転写シートを用いた電子写真法、潜像形成液を用いた転
    写法および溶融転写法のいずれかの方法によって転写受
    像体の表面に雲母系顔料を含有する材料からなる転写無
    機顔料像を形成する転写像形成工程と、 前記転写無機顔料像を前記受像体の表面に転写して、前
    記受像体の表面に前記無機顔料像を形成する像転写工程
    と、を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに
    記載の絵付き陶体の製造方法。
  6. 【請求項6】 少なくとも前記陶体の前記無機顔料像を
    形成する面の色が、燒結後の前記無機顔料像の色に対し
    て補色の関係を有することを特徴とする請求項1〜5の
    いずれかに記載の絵付き陶体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記無機顔料像が形成された前記陶体の
    表面の色が黒であることを特徴とする請求項1〜6のい
    ずれかに記載の絵付き陶体の製造方法。
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