JP2002293670A - 絵付き陶体の製造方法 - Google Patents

絵付き陶体の製造方法

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JP2002293670A
JP2002293670A JP2001094027A JP2001094027A JP2002293670A JP 2002293670 A JP2002293670 A JP 2002293670A JP 2001094027 A JP2001094027 A JP 2001094027A JP 2001094027 A JP2001094027 A JP 2001094027A JP 2002293670 A JP2002293670 A JP 2002293670A
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Toshiaki Aono
俊明 青野
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 転写層の造膜性に優れた転写シートを用い、
美術タイル等の建材やセラミックス材などの陶材の表面
に、発色濃度を高く維持しながら、高解像度で階調性に
優れた画像を陶材上に配置・焼結することができ、特に
多色画像の接着性・転写性に優れた絵付陶体の製造方法
を提供する。 【解決手段】 受像体の表面に、テルペンフェノール樹
脂を含有する材料からなる無機顔料像を形成する像形成
工程と、前記無機顔料像を、前記受像体の一部又は全部
とともに陶材の表面に配置する配置工程と、前記無機顔
料像が配置された陶材を加熱して焼結する焼成工程と、
を含む絵付き陶体の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絵付き陶体の製造
方法に関し、詳しくは、美術タイル等の建材やセラミッ
クス材などの陶材に半永久像として無機質の焼結画像を
形成する、絵付き陶体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】美術タイル等の建材やセラミックス材な
どの陶材の表面に、黒白又はカラー画像が形成された陶
材は、風呂場や玄関等の壁に使用する美術タイル等の建
材のみならず、肖像や遺影等のセラミックフォト、ペン
ダント、ブローチ等のアクセサリー等、種々の用途への
適用が期待されている。また、近年陶材の表面に形成さ
れる画像に対しての要求も高く、その要求は個別多様化
してきている。
【0003】従来、陶材上に保存性の良好な画像を形成
する方法としては、無機顔料により形成された画像を陶
材上に焼結する方法があるが、この方法においては、無
機顔料の特性に適する画像形成法を選択する必要があ
る。本発明者は先に、無機顔料を含む熱可塑性樹脂層か
らなる転写層を有する転写シートを用いて転写方式によ
って絵付き陶体を製造する方法を提案した。
【0004】この転写方法では、無機顔料が有機顔料に
比較して吸収係数(単位重量当たり色濃度)が低いた
め、目的とする発色濃度を得るために必要とする転写量
が大きくなる。即ち、目的とする発色濃度を得るために
は転写層の膜厚を厚くする等の必要があった。ところ
が、転写方式で画像を形成する場合に転写層の膜厚が厚
いと、得られる画像の解像度、階調性が悪くなるという
問題がある。高解像度・高階調性の画像を形成するため
には、転写シートにおける転写層の造膜性が、より優れ
たものが望まれている。さらに、転写層中の無機着色材
の含有率を高くすることにより画像濃度を上げた場合に
は、陶体に無機顔料像を焼結する際に焼結が不十分とな
り、結果として無機顔料像が陶材から剥離するという問
題がある。また、フルカラー等の多色画像を陶材上に転
写方式で画像を形成する場合には、従来のままでは、無
機顔料像の接着性・転写性が不十分という問題がある。
特に、無機着色材の含有率が高い系で、2色目以後の転
写を行う際に、転写性が悪化するという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来に
おける諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課
題とする。即ち、本発明は、転写層の造膜性に優れた転
写シートを用い、美術タイル等の建材やセラミックス材
などの陶材の表面に、発色濃度を高く維持しながら、高
解像度で階調性に優れた画像を陶材上に配置・焼結する
ことができ、特に、多色画像の接着性・転写性に優れた
絵付陶体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の具体的手段は以下の通りである。即ち、
【0007】<1> 受像体の表面に、テルペンフェノ
ール樹脂を含有する材料からなる無機顔料像を形成する
像形成工程と、前記無機顔料像を、前記受像体の一部又
は全部とともに陶材の表面に配置する配置工程と、前記
無機顔料像が配置された陶材を加熱して焼結する焼成工
程と、を含むことを特徴とする絵付き陶体の製造方法で
ある。
【0008】<2> 前記受像体が、透水性支持体の表
面に水溶性ポリマーを含有する層を有してなる接着性受
像体である前記<1>に記載の絵付き陶体の製造方法で
ある。
【0009】<3> 前記配置工程において、前記水溶
性ポリマーを含有する層の一部を溶解させて前記接着性
受像体から前記透水性支持体を剥離し、前記接着性受像
体の剥離面が前記陶材の表面に接触するように、前記無
機顔料像を前記陶材の表面に配置する前記<1>又は<
2>に記載の絵付き陶体の製造方法である。
【0010】<4> 前記無機顔料像が、転写シートを
用いた電子写真法、潜像形成液を用いた転写法、溶融転
写法、及び固体インクジェット法のいずれかで形成され
る前記<1>から<3>のいずれかに記載の絵付き陶体
の製造方法である。
【0011】<5> 前記像形成工程が、転写受像体の
表面にテルペンフェノール樹脂を含有する材料からなる
転写無機顔料像を形成する転写像形成工程と、前記転写
無機顔料像を前記受像体の表面に転写して、前記受像体
の表面に前記無機顔料像を形成する像転写工程と、を含
む前記<1>から<3>のいずれかに記載の絵付き陶体
の製造方法である。
【0012】<6> 前記転写無機顔料像が、転写シー
トを用いた電子写真法、潜像形成液を用いた転写法、溶
融転写法、及び固体インクジェット法のいずれかで形成
される前記<5>に記載の絵付き陶体の製造方法であ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の絵付き陶体の製造方法に
おいては、受像体の表面に、テルペンフェノール樹脂を
含有する材料からなる無機顔料像を形成する像形成工程
と、前記無機顔料像を、前記受像体の一部又は全部とと
もに陶材の表面に配置する配置工程と、前記無機顔料像
が配置された陶材を加熱して焼結する焼成工程と、を含
むことを特徴とする。以下、本発明の絵付き陶体の製造
方法について詳細に説明する。
【0014】《絵付き陶体の製造方法》本発明の製造方
法は、既述のように、像形成工程、配置工程、及び焼成
工程を少なくとも有してなり、必要に応じて他の工程を
有していてもよい。まず、本発明の製造方法について、
その基本的態様の一例を図1を用いて説明する。ここ
で、図1は、本発明の製造方法の基本的態様を説明する
ための概略工程図である。
【0015】まず、図1−(a)に示すように、支持体2
の表面に、像の形成が可能な受像層1を少なくとも一層
有する受像体5を用意する。この受像体5に対して、図
1−(b)に示すように、その受像層1の表面上に、所望
の画像記録法(転写シートを用いた電子写真法、潜像形
成液を用いた転写法等)によりテルペンフェノール樹脂
を含有する材料を画像様に付与することによって、所望
の画像(無機顔料像)11を形成する(像形成工程)。
【0016】次に、仮支持体7の表面にカバーコート層
6を有してなる転写体10を用意し、図1−(c)に示す
ように、転写体10のカバーコート層6の表面と、像形
成工程において無機顔料像11が形成された受像層1の
表面とを対向配置し互いに接触するように重ね合わせ、
必要に応じて加圧等しながら加熱してラミネートする。
ラミネートした後、図1−(d)に示すように、転写体1
0の仮支持体7を剥離して受像層1上にカバーコート層
6を転写する(カバーコート層転写工程)。このとき、
カバーコート層は加熱により可塑化され、無機顔料像が
カバーコート層中にめり込んだ状態にある。尚、かかる
工程は任意であり、無機顔料像11が形成された受像層
1の表面にカバーコート層用塗布液を塗布してカバーコ
ート層を形成してもよいし、上記像形成工程において、
受像層1の表面に予めカバーコート層が設けられた受像
体5を用い、該カバーコート層表面に直接無機顔料像1
1を形成してもよい。また、カバーコート層6は必須の
構成ではないが、作業性の点からはカバーコート層6を
設けるのが好ましく、さらに、カバーコート層6は上述
の説明のようにカバーコート層転写工程によって設ける
のが好ましい。
【0017】続いて、無機顔料像11を陶材12に配置
するが、この配置の前後の任意の段階で、受像体5の支
持体2を受像層1との境界部で剥離する。例えば、受像
体5の支持体2が透水性支持体で構成され、かつ受像層
1が水溶性ポリマーを含んでなる場合には、転写後の、
無機顔料像11及びカバーコート層6が設けられた受像
体5(図1−(d)参照)の一部を水に接触若しくは浸漬
させることによって、支持体2を介して水分が浸透し水
溶性ポリマーの一部が溶解して、容易に支持体2を剥離
除去することができる(この時、支持体2が剥離され、
一部溶解した状態にある側の受像層の面を「剥離面」と
称する。)支持体2の剥離後、無機顔料像11をカバー
コート層6と共に所望の陶材12の表面に配置するが、
図1−(e)に示すように、受像層1中の水溶性ポリマー
が一部溶解した状態で、該剥離面において接するように
所望の陶材12の表面に配置する。また、上記剥離面と
は反対側の面、即ちカバーコート層6の表面において接
するように、糊剤を溶解又は分散した液を介して所望の
陶材の表面に配置してもよい(配置工程)。
【0018】以上のようにして、陶材12の表面に無機
顔料像11が配置された後、この陶材12(図1−(e)
参照)を加熱し焼成することにより、図1−(f)に示す
ように、有機質のカバーコート層6及び受像層1等は焼
失し、陶材12の表面に無機顔料像11が焼結され、無
機質の画像11'が形成される(焼成工程)。
【0019】以下、各工程についてさらに詳述する。 〈像形成工程〉 (無機顔料像)上記像形成工程においては、受像体の表
面にテルペンフェノール樹脂を含有する材料からなる無
機顔料像を形成する。本発明の製造方法において、単色
の画像を形成する場合には、該単色の画像となる無機顔
料像がテルペンフェノール樹脂を含む材料からなること
が必要であるが、多色画像を形成する場合には、少なく
とも一つの色相に対応する無機顔料像がテルペンフェノ
ール樹脂を含有する材料からなっていればよく、さらに
全ての色相に対応する無機顔料像がテルペンフェノール
樹脂を含有する材料からなっていてもよい。ここで、無
機顔料像とは、テルペンフェノール樹脂を含有する材料
を用いて描画された画像であり、「テルペンフェノール
樹脂を含有する材料」とは、バインダー成分としてのテ
ルペンフェノール樹脂、無機顔料、結着樹脂等のその他
のバインダー成分、フラックス(熱溶融性無機物質)等
を含み、上記無機顔料像を形成する材料をいう。尚、上
記テルペンフェノール樹脂、無機顔料、その他のバイン
ダー成分等について、ならびに受像体の詳細及び好まし
い態様については各々後述する。
【0020】−テルペンフェノール樹脂− 上述の通り、本発明において無機顔料像を形成する材料
は、少なくともテルペンフェノール樹脂を含む。本発明
の絵付き陶体の製造方法においては、無機顔料像を形成
する材料に、バインダー成分としてテルペンフェノール
樹脂を含有させたものを用いることにより、転写シート
における転写層の造膜性が改善され、転写シートの性
能、取扱性が上がるとともに、受像体への転写性もあが
るため、形成された無機顔料像の解像度が高くなり、階
調性にも優れた画像を得ることができる。さらに、フル
カラー等の多色画像を形成する場合に、特に2色目以降
の転写性が上がるため、画像の色再現、転写濃度、均一
性も良くなる。
【0021】本発明において用いられる前記テルペンフ
ェノール樹脂は、テルペン類とフェノールとをBF3
AlCl3のようなフリーデルクラフト触媒の存在下
で、水素の移動により不均一付加反応で合成することが
でき、重量平均分子量としては、600〜1000であ
ることが好ましい。前記テルペンフェノール樹脂の原料
であるテルペン類の具体例としては、モノテルペンとし
てα−ピネン、ジテルペンとしてカンホレン、モノテル
ペンのアルコールとしてボルネオール、ジテルペンのア
ルコールとしてヒノキトール、さらにケトン類としてス
ギオール等が挙げられる。なお、前記テルペン類は、1
種単独で用いてもよく、また2種以上を併用してフェノ
ールとの重合物を作製してもよい。前記テルペンフェノ
ール樹脂の原料であるフェノール類の具体例としては、
クレゾール、ジオキシナフタレン、アルキルフェノー
ル、ハロゲン化フェノール、アリルフェノール、ポリク
レゾール等が挙げられる。なお、前記フェノール類は、
1種単独で用いてもよく、また2種以上を併用して前記
テルペン類との重合物を作製してもよい。
【0022】前記テルペンフェノール樹脂の具体例とし
ては、例えば、YP−90、マイティエースG125、
マイティエースG150、DLN−140、YSレジン
PX1205、YSレジンPX1150、YSレジンP
X1000、YSレジンPX800、YSレジンTO1
25、YSレジンTO115、YSレジンTO105、
YSレジンTO85、YSレジンTR105TR、クリ
アロンP125、クリアロンP115、クリアロンP1
05、クリアロンP85、クリアロンM115、クリア
ロンM105、クリアロンK110、クリアロンK10
0、YSレジンZ115、YSレジンZ115、YSレ
ジンZ100、YSポリスター2115、YSポリスタ
ー2100、YSポリスターU115、YSポリスター
T145、YSポリスターT130、YSポリスターT
115、YSポリスターT100、YSポリスターT8
0、YSポリスターT30、YSポリスターS145、
ダイマロン、ダイマーレジン、YSオイルDA、スタロ
ン2130、ナノレットG1250、YSオイルD、ラ
バーソフト#200、ラバーソフト#300(商品名;
以上全てヤスハラケミカル社製)、レゼムK−627、
レゼムK−628(商品名;以上中京油脂社製)が好適
に挙げられる。前記好ましい具体例の中で、固形のテル
ペンフェノール樹脂は、エマルジョン化することによっ
て、水系塗布で用いることがより好ましい。また、テル
ペンフェノール樹脂は、1種単独で用いてもよく、また
2種以上を併用してもよい。また、テルペンフェノール
樹脂以外のバインダー成分と併用してもよい。
【0023】前記テルペンフェノール樹脂の無機顔料像
中における含有量としては、所望の性能を得ることがで
きれば特に限定はないが、通常1〜30質量%が好まし
く、5〜20質量%が更に好ましい。尚、前記テルペン
フェノール樹脂を含有する材料については、無機顔料像
を形成する画像記録方法によって取扱いが異なるため、
それぞれにおいて後述する。
【0024】(画像形成方法)上記無機顔料像を形成す
る方法(画像記録法)としては、公知の方法の中から適
宜選択することができ、例えば、電子写真法、転写シー
トを用いた電子写真法、潜像形成液を用いた転写法(以
下「LMIT法」と称する場合がある。)、溶融転写
法、固体インクジェット法、等を好適に用いることがで
きる。その中でも、本発明においては、転写シートを用
いた電子写真法、潜像形成液を用いた転写法(LMIT
法)が好ましい。
【0025】−電子写真法− 上記電子写真法としては、転写シートを用いた方法(以
下、単に「電子写真法」という場合がある。)が好まし
い。該電子写真法は、まず電子写真技術を利用して、支
持体の表面に受像層を有する受像体の上記受像層表面
に、好ましくは無色若しくは淡色の、接着性組成物から
なる接着性の潜像(接着性潜像)を形成する。即ち、結
着樹脂を含む接着性組成物を用いて、電子写真技術によ
って形成された静電潜像を現像し無色若しくは淡色の接
着性潜像を形成した後、該接着性潜像を転写して受像体
の受像層上に接着性を有する潜像を形成する。
【0026】上記接着性組成物は、像形成工程で転写層
と接着して転写シートから転写層を像様に剥離可能な状
態を形成し得ることが必要であり、少なくとも熱可塑性
の樹脂(結着樹脂)を含んでなり、必要に応じてフリッ
ト(熱溶融性無機物質)等を含んで構成される。上記熱
可塑性の樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂の中から適
宜選択することができ、例えば後述の結着樹脂が挙げら
れる。上記フリット(熱溶融性無機物質)としては、後
述の転写シートの転写層に使用可能なフラックスが挙げ
られる。
【0027】接着性組成物で形成された接着性潜像の接
着力としては、像形成工程において、上記接着性潜像と
接触させて加熱した後の転写シートの転写層と該潜像と
の接着力が、転写シートの転写層と仮支持体との接着力
より大きいことが必要とされる。転写層の転写に十分な
接着力を確保することにより、高解像度で階調性の高い
画像を形成し得る転写性を得ることができる。
【0028】上記接着性組成物としては、実質的に有色
画像を形成し得る着色材を含まず、結着樹脂を含んで接
着性を有し、電子写真技術分野におけるトナー製造技術
に従って製造されるトナーであってもよい。該トナーと
しては、市販のものも使用することができる。但し、焼
成によって黒く着色されることがなく、所望の画像色相
が得られる点で、鉄や酸化鉄等の磁気成分を含まないも
のが好ましい。即ち、焼成後に陶材に最終的に形成され
る着色画像ではなく、潜像としての画像が形成される。
【0029】上記無色若しくは淡色の接着性組成物を用
いた電子写真技術としては、例えば特開平9−1977
19号公報等に記載の方法において、着色トナーに代え
て、無機着色材を含まない無色若しくは淡色のトナー、
即ち、少なくとも結着樹脂と必要に応じて熱溶融性無機
物質(フリット)等を含んでなる接着機能を持つトナー
(接着性トナー)を用い、予め形成された静電潜像を現
像して得た接着性潜像を所望の陶材上に転写する方法で
あってもよい。接着性潜像の形成は、予め形成された静
電潜像を接着性トナーを用いて現像し無色若しくは淡色
の潜像を形成した後、該潜像を受像体の受像層表面に転
写することによっておこなうことができる。該方法の詳
細については、特開平9−197719号公報(無機着
色材の記載を除く)の記載を参照することができる。
【0030】ここで、上記接着性トナーは、少なくとも
結着樹脂を含んでなり、必要に応じて熱溶融性無機物質
等を含んでなり、後の像形成工程で転写層と接着して該
転写層を画像用に剥離可能なように構成される。上記結
着樹脂としては、例えば、特開平9−197719号公
報の段落番号[0012]に記載のもの等が挙げられ、
接着性を十分に確保する観点からは、ポリエステル樹
脂、ブチラール樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、アク
リル系樹脂等が好ましい。
【0031】上記熱可塑性の樹脂(結着樹脂)の含有率
としては、特に制限はなく、後の像形成工程における転
写層の接着性(即ち、転写性)を確保し、高解像度の画
像を形成する観点から、接着性組成物(接着性トナー)
全量(質量)の50質量%以上が好ましい。接着性組成
物(接着性トナー)が結着樹脂と熱溶融性無機物質とを
含む場合、結着樹脂の含有率としては、トナー全量(質
量)の10質量%以上が好ましく、45質量%以上がよ
り好ましく、55質量%以上が特に好ましい。その上限
は、通常60〜85質量%程度である。該含有率が55
質量%以上であると、帯電特性や定着特性等の、電子写
真用トナーとしての必要特性を確保することができる。
【0032】尚、上記熱溶融性無機物質(フリット)と
しては、例えば該公報の段落番号[0006]〜[00
11]に記載のもの等が挙げられる。熱溶融性無機物質
の含有量としては、上記熱可塑性の樹脂(結着樹脂)の
含有量に対して、10〜50質量%が好ましい。
【0033】上記接着性トナーは、電子写真技術分野で
用いられるトナー製造技術に従って製造することができ
る。この場合、接着性トナーには、例えば帯電制御剤な
どの補助成分を添加することができ、帯電制御剤等につ
いては特開平9−197719号公報に記載のものが好
適に挙げられる。この方法では、例えばトナー状の接着
性組成物を一種準備すればよく、各色に対応したトナ
ー、あるいは特殊色トナーの準備が不要であり、かつ比
較的安価なモノクロ画像形成用のプリンタを用いて、電
子写真技術及び転写法を利用して、多彩な色相の高解像
度な無機質画像(多色若しくはフルカラーを含む)を簡
便かつ低コストに形成することができる。
【0034】−LMIT法− 上記LMIT法は、無機顔料を含む転写材料からなる転
写層を有する転写シートの転写層表面、及び上記転写材
料を転写可能な受像層を有する受像シートの受像層表面
の少なくとも一方に、上記転写材料の上記受像層表面へ
の転写を促進させ得る転写性促進材料又は粘着性材料を
含む潜像形成液を画像様に付与して潜像を形成し、上記
転写層表面と上記受像層表面とを少なくとも接触させ
て、上記潜像に対応して転写材料を受像層表面に転写し
て、上記受像層表面に転写材料からなる画像(無機顔料
像)を形成する方法である。尚、無機顔料像の形成後
は、該像を所望のセラミックス体等の陶材表面に配置し
て加熱焼成し、転写材料中の無機顔料を陶材表面に焼結
して固定する。具体的には、本発明者等が特願2000
−143304号、及び特願平11−281179号
(転写促進材料を用いる方法)において提案している。
LMIT法を適用した場合の一例(像形成工程)を、図
2及び3を用いて以下に説明する。図2及び3は、本発
明の製造方法における像形成工程の一実施態様を示す概
略工程図である。
【0035】図2−((a)−2)に示すように、転写シー
ト15と受像体5'とを用意する。転写シート15は、
例えば、仮支持体9の表面に、テルペンフェノール樹脂
を含む転写材料からなる転写層8を少なくとも有して構
成され、受像体5'は、例えば、支持体2の表面に、水
溶性ポリマーを含有する層1と受像層3とを順次有して
構成される。受像体5'として、図1−(a)のように、
単層で構成される受像体5を用いてもよい。また、水溶
性ポリマーを含有する層1に代えて、良好な剥離性を有
するように、シリコーン樹脂やポリビニルアルコール等
の密着性の弱いポリマー層を設けてもよい。
【0036】次に、受像体5'の受像層3の表面、又は
転写シート15の転写層8の表面に、インクジェット記
録装置(不図示)を用いて、画像情報に応じて転写性促
進材料又は粘着性材料を含有する液滴を画像様に付与し
て潜像を形成する。その後、図3−((b)−2)のよう
に、潜像が形成された受像体5'の受像層3の表面と転
写シート15の転写層8の表面とを対向させて互いに接
触するように重ね合わせ、必要に応じて加圧等しながら
加熱してラミネートする。ラミネートした後、図3−
((b)−3)に示すように、転写シート15を剥離する
と、受像層3の転写性促進材料又は粘着性材料が付与さ
れた領域(潜像部)にのみ転写層8が転写され、受像層
3上には、無機顔料像として、転写材料からなる画像2
1(図3−((b)−4)参照)が転写形成される(像形成
工程)。尚、単層で構成される受像体5(図1−(a)参
照)を用いた場合には、その受像層1上に画像21が形
成される。ラミネート時には、熱を供与と共に圧力を供
与するのが好ましく、例えば、ヒーター等の加熱手段を
内蔵する一対の加熱ニップローラ等が好適である。な
お、加熱時の加熱温度としては、60〜150℃が好ま
しい。
【0037】次に、LMIT法で用いる転写シート、転
写性促進材料又は粘着性材料を含有する潜像形成液につ
いて詳述する。 −−転写シート−− 上記転写シートは、仮支持体の表面に、テルペンフェノ
ール樹脂を含み着色された転写材料からなる転写層を有
してなり、クッション層等の他の層や被覆シートが設け
られていてもよい。この転写シートは、後述の溶融転写
法や、上記電子写真法(無機顔料を含まない接着性トナ
ーの態様)、転写シートを用いた電子写真法にも好適に
用いることができる。本発明の製造方法において、上記
転写層は、少なくともテルペンフェノール樹脂、及び無
機顔料を含み、さらにその他のバインダーを含んでいて
もよく、必要に応じてフラックス(熱溶融性無機物
質)、可塑剤、ワックス成分等の他の成分を含んでいて
もよい。
【0038】上記無機顔料としては、通常、陶芸に用い
られる上絵具、下絵具を用いることができるが、例え
ば、酸化銅、酸化コバルト等の結晶構造がスピネル、ス
フェイン、パイクロア、ルチール、プライディライト、
フフォスフェイト、フェナサイト、ペリークレイス、オ
リビン、バデライト、ボレート、コランダム、ジルコン
等の金属酸化物;カドミウムイエロー等の硫化物;セレ
ン赤等のセレン化カドミウム化合物等が挙げられる。ま
た、蛍光顔料や蓄光体顔料である無機顔料を使用しても
よい。さらに、雲母等の表面に酸化チタンがコーティン
グされた、金属光沢性の雲母系無機顔料を使用してもよ
い。
【0039】また、後述の焼成工程において、無機顔料
像の陶材表面への融着性を向上させ得る点で、ガラス成
分であるフラックス(熱溶融性無機物質)を併用するこ
とが好ましい。上記フラックスとしては、例えば、炭酸
リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化鉛、酸
化ビスマス、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸
カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミ
ニウム、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ホウ酸、酸
化ジルコニウム、酸化チタン等が挙げられる。また、硼
砂、長石、カオリン等の複合成分を使用することもでき
る。上記フラックスは、1種の単独で又は2種以上を併
用して溶解させ、いわゆるフリットとして用いることも
できる。
【0040】上記転写層中における無機顔料の含有量と
しては、10〜80体積%が好ましく、20〜70体積
%が更に好ましい。上記フラックス(熱溶融性無機物
質)を併用する場合、無機顔料によってフラックスの好
ましい使用量が異なるが、フラックスと無機顔料との混
合物として、上記転写層中における該混合物の含有量と
しては、15〜70質量%が好ましく、30〜80質量
%がより好ましい。
【0041】本発明においては、上記転写層中にバイン
ダー成分として、テルペンフェノール樹脂を含有するこ
とを特徴とする。上記転写シートの転写層にバインダー
成分としてテルペンフェノール樹脂を含有させたものを
用いることにより、転写層の造膜性が改善され、転写シ
ートの性能、取扱性が上がるとともに、受像体への転写
性もあがるため、形成された無機顔料像の解像度が高く
なり、階調性にも優れた画像を得ることができる。さら
に、フルカラー等の多色画像を形成する場合に、色再
現、転写濃度、及び画像の均一性が良くなる。
【0042】上記転写層中におけるテルペンフェノール
樹脂の含有量としては、1〜30質量%が好ましく、5
〜20質量%がより好ましい。該含量が、1質量%未満
であると、効果が不十分となることがあり、30質量%
をこえると、本来画像がないところまで転写されてしま
うことがある。
【0043】また、上記転写シートの転写層には、バイ
ンダー成分として上記テルペンフェノール樹脂以外に、
その他のバインダー成分を含有させてもよい。テルペン
フェノール樹脂以外のバインダーとしては、ホモポリマ
ー及びコポリマーのいずれのポリマーであってもよく、
該ポリマーは、モノマー1種、及び2種以上のモノマー
のいずれで構成されていてもよい。中でも、転写材料か
らなる転写層が転写される、後述する受像体の受像層と
の関係において、上記ポリマーと受像層に用いられるポ
リマーとが、その構成単位として、それぞれ同一の官能
基を有するモノマーを30モル%以上含有してなるポリ
マー(以下、「同一官能基を含むポリマー」という。)
であることが好ましい。両層中のポリマーを構成するモ
ノマーは、少なくとも一種が互いに同一の官能基を有し
ていればよく、他に互いに異なる官能基を有していても
よい。ここで、同一の官能基としては、例えば、ブチラ
ール基、ビニルアルコール基、アミノ基、アミド基、イ
ミノ基、イミド基、スチレン基、アルコキシ基、メタク
リル基及びそのエステル基、アクリル酸及びそのエステ
ル基、マレイン酸及びそのエステル基、ビニルエーテル
基、酢酸ビニル基等が挙げられ、中でもブチラール基が
好ましい。
【0044】上記同一の官能基を有するモノマーは、転
写層中の上記ポリマー及び後述の受像層中のポリマー中
に、それぞれ構成単位として多く含まれるほど好ましい
が、その含有率としては、少なくとも30モル%以上で
あることが望まれ、50モル%以上がより好ましく、8
0モル%以上が特に好ましい。ポリマー中の構成単位と
して上記「同一の官能基を有するモノマー」の含有率
が、30モル%未満であると、転写層中のポリマー及び
後述の受像層中のポリマーのそれぞれの性質の乖離が大
きく、多色転写する際の2回目以降の転写時に、既に転
写が完了した転写部及び未転写領域における転写促進材
料(液状)の吸収性、転写促進材料による受像層の膨潤
性、膨潤した受像層上への接着性、等が不均一となり、
画像ムラを生じやすくなることがある。
【0045】具体的には、軟化点が40〜150℃の非
晶質有機高分子重合体が好ましく、溶融転写法に用いる
転写層の場合、特に低重合度のものが好ましい。上記非
晶質有機高分子重合体としては、例えば、ブチラール樹
脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、スルホ
ンアミド樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、石油樹
脂、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、
2−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニル安息香
酸、ビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、アミノスチレン
等のスチレン及びその誘導体、置換体の単独重合体や共
重合体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレー
ト、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリ
レート等のメタクリル酸エステル類及びメタクリル酸、
メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアク
リレート、α−エチルヘキシルアクリレート等のアクリ
ル酸エステル及びアクリル酸、ブタジエン、イソプレン
等のジエン類、アクリロニトリル、ビニルエーテル類、
マレイン酸及びマレイン酸エステル類、無水マレイン
酸、ケイ皮酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単
量体など、の単独重合体あるいは他の単量体等との共重
合体が挙げられる。これらのバインダーは2種以上を併
用してもよい。
【0046】上記転写層中におけるバインダー含有量
(テルペンフェノール樹脂を含む)としては、10〜7
0質量%が好ましく、20〜50質量%がより好まし
い。該含量が、10質量%未満であると、転写層がもろ
くなり、耐傷性が低下することがあり、70質量%をこ
えると、膜が厚くなり転写画像の解像度、階調性が悪く
なることがある。
【0047】同一の受像層上に、複数の画像層(画像形
成された転写層)を繰返し重ね合せて多色画像を形成す
る場合には、画像間の密着性を高める観点から、可塑剤
を含むことが好ましい。上記可塑剤としては、例えば、
フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル
酸ジ(2−エチルヘキシル、フタル酸ジノニル、フタル
酸ジラウリル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸ブチ
ルベンジル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジ(2
−エチルヘキシル)、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシ
ル)等の脂肪族二塩基酸エステル、リン酸トリクレジ
ル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)等のリン酸トリ
エステル類、ポリエチレングリコールエステル等のポリ
オールポリエステル類、エポキシ脂肪酸エステル等のエ
ポキシ化合物等が挙げられる。また、上記可塑剤のほ
か、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,
2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、トリメ
チロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトー
ルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアク
リレート、ジペンタエリスリトール−ポリアクリレート
等のアクリル酸エステル類も、用いるバインダー種によ
っては好適に併用できる。尚、可塑剤は2種以上を併用
してもよい。
【0048】転写層中における可塑剤の含有量として
は、無機顔料とバインダー(テルペンフェノール樹脂を
含む)との総質量(S)と、可塑剤の質量(s)との比(S:
s)で表した場合、一般に100:1〜100:5が好
ましく、100:1.5〜100:3がより好ましい。
上記転写層には、更に必要に応じて界面活性剤、増粘度
剤等が添加され得る。
【0049】上記転写層中には、転写画像(ドット)の
膜ギレ、解像度を良化する観点から、ワックス成分を含
有させることが好ましい。ワックス成分の含有は、LM
IT法(潜像形成液を用いる方法)及び後述の溶融転写
法のいずれにも好ましいが、特に後者により画像を形成
する場合に重要となる。
【0050】上記ワックス成分としては、例えば、パラ
フィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カル
ナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワック
ス、フィッシャートロプシュワックス、蜜蝋、木蝋、鯨
蝋、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、ベトロ
ラクタム、ポリエステルワックス、ラノリン、低分子量
ポリエチレンワックス、アミドワックス、エステルワッ
クス、酸化ポリエチレンワックス、ロジン、ロジンメチ
ロール化アマイド、エステルガム、高級脂肪酸、高級脂
肪酸エステル、高級アルコール等が挙げられる。
【0051】また、上記転写層には、受像体、転写シー
トへの接着性を向上させ、更に多数回転写(対モノクロ
及び2色以上のカラー画像)の場合、2回目移行の転写
層(材料)ののりを良くするために比較的低融点の熱可
塑性樹脂、例えば、低分子量の石油樹脂、ポリビニルブ
チラール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレ
ン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル
酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル
酸エステル共重合体等を添加するのが好ましい。
【0052】上記転写層は、適当な溶媒に上記無機顔料
と上記テルペンフェノール樹脂等の転写材料の各成分を
溶解又は分散した塗布液を調製し、これを仮支持体上
(支持体上に上記下塗り層を有する場合は該下塗り層
上)に塗布し、乾燥して設けることができる。本発明に
おいて、転写シートにおける上記転写層は、環境安全
性、安定性、及び作業性の観点から、溶媒として水系を
用いて塗布するのが特に好ましいが、前記溶媒として、
n−プロピルアルコール、メチルエチルケトン、プロピ
レングリコールモノメチルエーテル(MFG)、メタノ
ール等、又はこれと水との混合溶媒を用いることもでき
る。水系で用いる場合、上記の疎水性の化合物について
は、分散物(ラテックス又はエマルション)として用い
る。塗布、乾燥は、一般に公知の塗布、乾燥方法を利用
して行うことができる。
【0053】転写シートを構成する仮支持体としては、
特に限定はなく公知の各種材料の中から目的等に応じて
適宜選択できる。例えば、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリカーボ
ネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニ
リデン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共
重合体等の合成樹脂材料が好適に挙げられ、中でも、機
械的強度や熱に対する寸法安定性、及びコストの点で、
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0054】上記仮支持体には、その表面に設けられる
転写層との密着性を調節する目的で、粗面化処理及び/
又は一層若しくは二層以上の下塗り層の付設を行うこと
が好ましい。上記粗面化処理の例としては、グロー放電
処理、コロナ放電処理等が挙げられる。下塗り層用の材
料としては、支持体及び転写層の両表面に適度な接着性
と剥離性を示し、かつ熱伝導性が小さく、耐熱性に優れ
たものが好ましい。該観点から、例えば、スチレン、ス
チレン−ブタジエン共重合体、ゼラチン、ポリビニルア
ルコール等が好適である。下塗り層全体の厚さは、通常
0.01〜2μmである。また、転写シートの転写層付
設側とは反対側の表面には、必要に応じて、離型層等の
各種の機能層の付設、あるいは表面処理を行ってもよ
い。
【0055】上記被覆シートは、一時的に保持し得る弱
い接着力で転写層の表面に設けられ、上記仮支持体と同
一若しくは類似の材料からなってもよいが、カバーコー
ト層から容易に分離可能である必要がある点から、例え
ば、シリコーン紙、ポリオレフィン、ポリエチレンテレ
フタレートフィルム等が適当である。該被覆シートの厚
みとしては、約5〜100μmが好ましい。特に好まし
くは、20〜100μm厚のポリエチレンテレフタレー
トフィルムである。これらの被覆シートは転写する前に
予め剥離する。
【0056】−−潜像形成液−− 前記潜像形成液は、熱転写材料の転写温度を低下させ得
る転写性促進材料又は粘着性材料を含有してなる。以
下、まず転写性促進材料について説明する。
【0057】上記転写性促進材料は、転写層に含有され
る転写材料の転写温度を低下させ得る材料である。上記
転写性促進材料は液状組成物が好ましく、経時的に析出
しやすい固形の材料等を含まない構成が好ましい。上記
転写性促進材料としては、例えば、水、有機溶剤類(好
ましくは、常温で水と自由に混和する有機溶剤類)、界
面活性剤類(好ましくは、水と混和し得る界面活性剤
類)、水溶性のホットメルト接着剤(低ガラス転移点を
有するポリマー等)、超微粒子のエマルションあるいは
ディスパージョン、又はこれらの混合物が挙げられる。
また、転写性促進材料は、それ自体無色若しくは淡色の
ものが好ましく、上記転写材料に含まれる無機顔料に化
学的に作用せず、後工程で所望により与えられる熱エネ
ルギーによって着色反応などを起こさない材料であるこ
とが好ましい。
【0058】上記有機溶剤類としては、例えば、メチル
アルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコー
ル、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、
sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エ
チレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチ
レングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコ
ール、1,2,6−へキサントリオール、へキシレングリコ
ール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の一価
又は多価アルコール類;エチレングリコールモノメチル
エーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エ
チレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリ
コールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ
エチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテ
ル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピ
レングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコ
ールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ
エチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエ
ーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
等のエーテル類;ジアセトンアルコール等のケトアルコ
ール類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン
等含窒素系溶媒;等が挙げられる。
【0059】上記界面活性剤類としては、アニオン、カ
チオン、ノニオン及び両性の界面活性剤類のいずれも使
用可能であり、組合わせて使用する転写材料の特性に応
じて任意に選択できる。水に溶解させて使用する場合
は、水に溶解し得る範囲内の濃度で使用可能である。具
体的には、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル
塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル
塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレ
ンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキ
ルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン
酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、ポリ
オキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン
アルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪
酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アル
キルアルカノールアミン、アルキルアミン塩、アルキル
ベタイン、モノ又はジヒドロキシアセチレン化合物等が
挙げられる。
【0060】上記転写性促進材料は、1種を単独使用し
てもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中で
も、効果の点で、上記有機溶剤類及び/又は界面活性剤
類と水とを混合してなる転写性促進材料が好ましい。転
写性促進材料には、液滴として吐出させる際の吐出適性
の調整、及び液滴の拡散防止、保存安定性の向上等の目
的で、表面張力調整剤、防黴剤、粘度調整剤、pH調整
剤、消泡剤等を本発明の効果を損なわない範囲で含有さ
せることができる。
【0061】上記転写性促進材料は、転写層及び/又は
後述の受像体の受像層への浸透性が良好であることが好
ましく、表面張力25〜60mN/m、粘度50mP
a.s以下の物性を有していることが好ましい。また、
上記転写材料自体を可溶化させないものが好ましい。転
写性促進材料が転写材料を溶解させると、画像部と非画
像部との界面部において、転写性促進材料の浸透及び転
写材料(転写層)の溶解が生じ、画像界面の鮮鋭度が低
下することがある。上記転写性促進材料として転写材料
を可溶化するものを用いる場合は、上記転写性促進材料
の吐出量を減少させるとよい。
【0062】転写性促進材料の作用によって転写材料の
転写温度を低下させる低下の程度(目安)としては、転
写性促進材料を用いない場合の転写材料の転写温度に対
して、転写温度の低下幅が3℃以上あることが好まし
い。尚、転写温度は、例えば、少なくとも一方が温度可
変の加熱ローラである一対の加熱ニップローラに、転写
シートと受像シートとを熱電対を挟持させて積層し、こ
の積層体を加熱ニップローラ間に通過させることにより
測定することができる。加熱ローラによる加熱温度を変
化させて熱電対により温度測定を行い、転写が生じる最
も低い温度として、転写温度を求めることができる。
【0063】上記転写性促進材料の中でも、転写温度を
低下させる効果が大きく、微細点の転写性が良化し、高
解像度の転写画像を形成しうる点で、ノニオン性界面活
性剤と水とを含有してなるものが特に好ましい。上記ノ
ニオン性界面活性剤としては、親水基としてエチレンオ
キシド基を付加したノニオン化合物が特に好ましい。エ
チレンオキシド基を付加したノニオン化合物を用いる
と、潜像形成部の転写温度低下効果が大きく、高解像度
化を図ることができる。上記ノニオン系化合物として
は、下記一般式1〜一般式4のいずれかで表される化合
物等が挙げられる。
【0064】
【化1】
【0065】上記一般式1中、Rはアルキル基又はアル
キレン基を表し、nは2〜30、好ましくは2〜20の
いずれかの整数を表す。上記一般式2中、Rはアルキル
基を表し、nは2〜30、好ましくは2〜20のいずれ
かの整数を表す。上記一般式3中、Rはアルキル基を表
し、n及びlは、各々独立に2〜30、好ましくは2〜
20のいずれかの整数を示す。上記一般式4中、R1
びR2は、各々独立に水素又はアルキル基を表し、m及
びnは、各々独立に2〜30、好ましくは2〜20のい
ずれかの整数を表す。また、上記一般式1〜4におい
て、エチレンオキシドの付加数としては、2ないし30
が好ましく、2ないし20が特に好ましい。
【0066】上記一般式1〜4のいずれかで表される化
合物の具体例としては、ポリオキシエチレン(4)ラウリ
ルエーテル、ポリオキシエチレン(7)セチルエーテル、
ポリオキシエチレン(13)ステアリルエーテル、ポリオ
キシエチレン(5)オレイルエーテル、ポリオキシエチレ
ン(10)ノニルフェニールエーテル、エチレンオキシド
ープロピレンオキシド共重合体(n=10,l=7),ア
セチレングリコールのエチレンオキシド付加体(n+m
=10)等が挙げられる。但し、これらに限定されるも
のではない。
【0067】ノニオン性界面活性剤及び水を含む転写性
促進材料中における、上記ノニオン界面活性剤の含有量
としては、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜1
0質量%がより好ましい。上記含有量が、0.1質量%
未満であると、転写促進効果が得られ難くなることがあ
り、20質量%を超えると、解像度が低下する傾向があ
る。また、上記ノニオン界面活性剤と共に水溶性有機溶
剤を併用することもでき、該水溶性有機溶剤としては、
上記「水と自由に混和しうる有機溶剤」が挙げられる。
上記水溶性有機溶剤の含有量としては、転写性促進材料
中、0〜90質量%程度が適切である。
【0068】また、上記転写性促進材料としては、常温
常圧下で沸点が100℃以上で且つ水に相溶性の有機溶
剤と水とを含有してなるものも好ましい。溶液の吐出安
定性が向上し、潜像形成時及び待機後再開始時の吐出不
良を防ぐことができ、また微細ドットの転写性が向上し
高解像度の転写体を得ることができる。上記常温常圧下
で沸点100℃以上で且つ水に相溶性の有機溶剤として
は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、
ポリプロピレングリコール、グリセリン等の1価又は多
価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテ
ル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレン
グリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール
モノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチル
エーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロ
ピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリ
コールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ
ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエ
ーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエー
テル類;ジアセトンアルコール等のケトアルコール類;
N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等含窒素
系溶媒;等が挙げられる。
【0069】この転写性促進材料中における「常温常圧
下で沸点100℃以上で且つ水に相溶性の有機溶剤」の
含有量としては、1〜90質量%が好ましい。該含有量
が、1質量%未満であると、吐出安定性、微細ドットの
転写性の向上が図れないことがあり、90質量%を超え
ると、潜像形成時の吐出安定性を向上し得る反面、転写
像の乾燥性が低下することがある。この場合も、上記有
機溶媒に加え、既述の「水と自由に混和しうる有機溶
剤」や界面活性剤類を添加することができる。
【0070】転写性促進材料は、転写シートの転写層表
面及び後述の受像体の受像層表面の少なくとも一方に画
像様に付与すればよい。上記転写層等の表面に、転写性
促進材料を画像様に付与する方法としては、後述する公
知のインクジェット法を利用することができる。例え
ば、内部に発熱素子を備えたインクジェットヘッドに、
インクに代えて液状の上記転写性促進材料を充填し、画
像情報に基づき所定の位置の発熱素子に電気を流して発
熱させ、近傍の転写性促進材料の溶媒(水や有機溶媒
等)を沸騰させ、ヘッド内の圧力を上昇させて転写性促
進材料を液滴として飛翔させ、転写層等の表面に潜像を
形成することができる。
【0071】次に、前記潜像形成液に含有される粘着性
材料について説明する。前記粘着性材料は、常温または
加熱時に粘着性を有する物質(粘着性物質)を含有し、
粘着性物質としては、主として有機重合体を挙げること
ができる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、ア
クリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル
系モノマーの単独重合体およびその共重合体、ポリ酢酸
ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビ
ニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニ
ル等のようなビニル系モノマーの単独重合体およびエチ
レン−酢酸ビニル等それらの共重合体、ポリエステル、
ポリアミド等のような縮合系ポリマー、スチレン−ブタ
ジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合
体のようなゴム系ポリマーを挙げることができる。これ
らの中でも、ガラス転移点(Tg)が90℃よりも低い
ポリマーであることが好ましい。また、これらは水への
乳化分散体、所謂ラテックス状態で存在するものであっ
てもよい。
【0072】また、粘着性材料は、上記粘着性物質を、
水または有機溶剤類の溶媒に溶解または分散(固体分散
および乳化分散を含む)した液であってもよい。ここに
いう有機溶剤類とは、具体的には、メチルアルコール、
エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロ
ピルアルコールのアルキルアルコール類、ジメチルホル
ムアミド、ジメチルアセトアミド、等のアミド類、エチ
レングリコール、1,2,6ヘキサントリオール、チオ
ジグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリ
コール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ
ール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の1価
または多価アルコール類、ジオキサン、エチレングリコ
ールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチ
ルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテ
ル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリ
プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル
類、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコ
ール等のケトン類またはケトアルコール類等を挙げるこ
とができる。
【0073】これら水または有機溶剤類は、粘着性材料
を溶解または分散させるために、各々単独に使用しても
よく、複数種類の溶剤を混合して使用してもよい。ま
た、上記溶液には、吐出適性、液の保存安定性、接着特
性を改善するために、表面張力調整剤、防黴剤、粘度調
整剤、pH調整剤、消泡剤、可塑剤等を併用することが
できる。
【0074】また、潜像形成液が粘着性材料を分散形態
(固体分散、乳化分散)で含む場合には、下記一般式
(5)で表される化合物を添加することが好ましい。 R−(S−P)n・・・一般式(5) この化合物を添加することにより、分散形態にある粘着
性材料が凝集を起こすことがなく潜像形成液が安定に保
持され、また、ノズル詰まりが発生することも防がれ
る。一般式(5)で示される化合物は、潜像形成液の固
形分に対し3〜20質量%添加されることが好ましい。
【0075】一般式(5)中、Rは疎水性基または疎水
性重合体(からなる基)を表し、Pは下記構造単位A、
B及びCのうちの少なくとも1つを含み、重合度が10
以上3500以下の重合体部位を表す。nは1又は2を
表す。
【0076】
【化2】
【0077】ここで、R1は−H又は炭素数1〜6のア
ルキル基を表し、R2 は−H又は炭素数1〜10のアル
キル基を表わし、R3は−H又は−CH3を表わし、R4
はH、−CH3、−CH2COOH(アンモニウム塩又は
金属塩を含む)又は−CNを表わし、Xは−H、−CO
OH(アンモニウム塩又は金属塩を含む)又は−CON
2を表わし、Yは−COOH(アンモニウム塩又は金
属塩を含む)、−SO3H(アンモニウム塩又は金属塩
を含む)、−OSO3H(アンモニウム塩又は金属塩を
含む)、−CH2SO3H(アンモニウム塩又は金属塩を
含む)、−CONHC(CH32CH2SO3H(アンモ
ニウム塩又は金属塩を含む)又は−CONHCH2CH2
CH2+ (CH33Cl-を表わす。
【0078】前記一般式(5)において、R1は−Hが
好ましく、R2は−CH3が好ましい。また、上記一般式
(5)で表わされる化合物の代表的な例として、ビニル
アルコールとビニルエステルのランダム又はブロック共
重合体あるいは更にカルボキシル基等のアニオン性基を
有する第3モノマー成分を含むビニルアルコールとビニ
ルエステルのランダム又はブロック共重合体の末端をア
ルキル基又は疎水性重合体で変性したものが挙げられ
る。
【0079】前記一般式(5)のRで表される疎水性基
としては、脂肪族基(例えばアルキル基、アルケニル
基、アルキニル基など)、芳香族基(例えばフェニル
基、ナフチル基など)及び脂環基があり、これらは置換
されているものも含む。置換基としては、脂肪族基、芳
香族基、脂環基、複素環基、ハロゲン原子、水酸基、シ
アノ基、ニトロ基、N−置換スルファモイル基、カルバ
モイル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ
基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリ
ールオキシ基、アラルキル基、アシル基などが挙げられ
る。
【0080】前記疎水性基がアルキル基の場合には、炭
素数3〜70、好ましくは4〜50、特に8〜24が好
ましい。Rが疎水性基の場合の具体例は、特開平10−
95942号公報の段落番号[0034]ないし[00
42]に開示されている(S−1)から(S−50)ま
での基が好ましく挙げられる。
【0081】また、一般式(5)におけるRが疎水性重
合体の場合、ポリスチレン及びその誘導体、ポリメタク
リル酸エステル(例えばポリメタクリル酸メチル)及び
その誘導体、ポリアリクル酸エステル及びその誘導体、
ポリブテン、ポリ酢酸ビニル、ポリバーサチック酸ビニ
ル等に代表される水に不溶性のビニル重合体やビニル共
重合体、ポリオキシプロピレンやポリオキシテトラメチ
レンの如き水に不溶性のポリオキシアルキレン類、更に
はポリアミド及びポリエステル等の水不溶性重合体等が
挙げられる。特にポリスチレン及びその誘導体、ポリメ
タクリル酸エステル及びその誘導体、ポリアクリル酸エ
ステル及びその誘導体並びにポリ塩化ビニルが好ましく
用いられる。また、疎水性重合体の重合度は2以上50
0以下、好ましくは2以上200以下、更に好ましくは
2以上100以下である。
【0082】前記一般式(5)で表される化合物におけ
る重合体部位Pは、上記構造単位A、B及びCのうちの
少なくとも1つを含む重合体である。重合体Aを構成す
る構造単位Aとしては具体的には、ビニルアルコール、
α−メチルビニルアルコール、α−プロピルビニルアル
コール等が挙げられる。重合体部位Pを構成する構造単
位Bとしては酢酸ビニル、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビ
ニル及びこれらのα置換体が挙げられる。更に重合体部
位Pを構成する構造単位Cとしてはアクリル酸、メタク
リル酸又はクロトン酸(それぞれアンモニウム塩、又は
Na、K等の金属塩を含む)、マレイン酸又はイタコン
酸(それぞれモノアルキルエステル、アンモニウム塩、
又はNa、K等の金属塩を含む)、ビニルホスホン酸、
ビニル硫酸、アクリルスルホン酸、メタクリルスルホン
酸、2−アクリルアミド−3−メチルプロパンスルホン
酸又は2−メタクリルアミド−3−メチルプロパンスル
ホン酸(それぞれアンモニウム塩、又はNa、K等の金
属塩を含む)、アクリルアミドプロピルトリメチルアン
モニウムクロリド又はメタクリルアミドプロピルトリメ
チルアンモニウムクロリド等の水中でイオン解離する単
量体単位が挙げられる。特にイタコン酸、マレイン酸が
好ましい。
【0083】これらの中で構造単位Aとしては、ビニル
アルコール単位が、構造単位Bとしては酢酸ビニル単位
が、また構造単位Cとしてはカルボン酸(アンモニウム
塩、又はNa、K等の金属塩を含む)を含むビニルモノ
マー単位又はスルホン酸(アンモニウム塩、又はNa、
K等の金属塩を含む)を含むビニルモノマー単位がより
好ましい単位である。
【0084】重合体部位Pを構成する上記構造単位A、
B及びCの含量については特に制限はないが、A、B、
Cの含率をそれぞれx、y、zモル%とすると、x+y
+z=100、0≦x≦100、0≦y≦75、0≦z
≦100が好ましく、x+y+z=100、0≦x≦1
00、0≦y≦50、0≦z≦50が特に好ましい。ま
た、構造単位Cの含量が1モル%以下の場合、重合体部
位Pが水溶性又は水分散性であるためには、構造単位A
の含量は50モル%〜100モル%であるのが好まし
い。
【0085】一般式(5)で表される化合物は水溶性か
ら水分散性まで広い範囲のものを含む。本発明の一般式
(5)で表される化合物が水溶性又は水分散性である限
りにおいては、重合体部位Pが上記構造単位A、B及び
C以外の構造単位を含むことも何ら差し支えなく、これ
らの構造単位として、例えばエチレン、プロピレン、イ
ソプテン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタク
リルアミド、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル又はフ
ッ化ビニル単位が挙げられる。該重合体部位Pの重合度
は10〜3500、好ましくは10〜2000、更に好
ましくは10〜1000、特に好ましくは10〜500
である。
【0086】該重合体部位Pの構造単位A及びBにおけ
るR1およびR2のアルキル基としては、特にメチル基が
好ましい。また、該アルキル基はヒドロキシル基、アミ
ド基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸
基、スルホンアミド基等により置換されていてもよい。
【0087】一般式(5)で表される化合物は、本発明
の目的により、これを構成するP及びRの最適化学組
成、分子量等は異なるが、どの目的においても、PとR
の質量比が0.001≦R/P≦2、より好ましくは
0.01≦R/P≦1の組成を有するものが特に効果が
優れている。
【0088】(溶融転写法)上記溶融転写法としては、
例えば、無機顔料を含む転写材料からなる転写層を有す
る転写シートに対して、サーマルヘッド等の発熱素子を
備える熱転写プリンタを用いる公知の方法等が好適に挙
げられる。具体的には、黒白又はカラーの写真、印刷
物、絵画等をスキャナーで読み取った画像データ、ある
いは電子スチルカメラ、ビデオカメラ等による撮影画像
やコンピュータで作成した画像(CG)等の画像データ
を電気信号に変換し、該信号をもとに熱転写プリンター
のサーマルヘッド等の発熱素子を発熱させ、被転写体上
に転写層を画像様に溶融させて転写し無機顔料像を形成
する方法である。溶融転写法に用いる上記転写シートは
テルペンフェノール樹脂を含むものであり、既述のLM
IT法における転写シートと同様に構成することができ
る。
【0089】溶融転写法を適用した場合、例えば図2−
((a)−2) と同様に構成された転写シート15及び受
像体5'を用いて、転写性促進材料による潜像は形成せ
ず、前述と同様に転写シート15及び受像体5'を重ね
て(図3−((b)−2)参照)、転写シート15の支持体
9の表面からサーマルヘッド等で直接画像様に熱印加し
剥離することにより(図3−((b)−3)参照)、受像層
3の表面に無機顔料像11を形成することができる(図
3−((b)−4)参照)。
【0090】(固体インクジェット法)上記固体インク
ジェット法については特開平8−295836号公報等
に記載されており、噴射ノズルからある程度の粘性を有
する液滴を吐出させて潜像を形成し、該潜像に固体イン
クを転写して像を形成する方法である。例えば、画像情
報に基づきパルス電圧を圧電素子に印加することによっ
て、ノズル孔から粘性を有する液滴を吐出させ、受像体
上に潜像を形成し、該潜像表面に該述の転写シートなど
の転写可能な材料を転写して、図1−(b)に示すよう
な、無機顔料像11を形成することができる。上記転写
シートとしては概述のものを好適に用いることができ、
無機顔料等の耐熱性着色材を含んでいればよい。無機顔
料の例としては既述の通りである。
【0091】〈受像体〉本発明における像形成工程は、
概述の通り受像体の表面に上記無機顔料像を形成する。
上記受像体は、支持体の表面に、像形成可能な受像層を
少なくとも一層有する構成が好ましく、その態様は、選
択する既述の「無機顔料像を形成する方法」や目的、用
途等に応じて適宜選択でき、支持体と受像層との間にク
ッション層、剥離層、中間層等が設けられていてもよ
い。本発明においては、クッション層、剥離層及び中間
層より選択される少なくとも1層又は2層以上有してな
るものが好ましい。また、搬送性向上の目的で、支持体
の受像層を有する側とは反対側にバック層を設けた態
様、或いは、強度補強の目的で受像層表面にカバーコー
ト層を設けた態様であってもよい。また、該カバーコー
ト層は、例えば受像層表面に無機顔料像を形成した後
に、転写体を用いて転写して、又は、カバーコート層用
塗布液を塗布等して該無機顔料像上に形成してもよい。
尚、カバーコート層を転写体を用いて転写する方法(カ
バーコート層転写工程)については後述する。
【0092】上記像形成可能な受像層としては、無機顔
料像が形成可能であれば特に制限はなく、バインダーと
して疎水性ポリマー又は水溶性ポリマーのいずれを含ん
でなる層であってもよく、配置工程おける、支持体剥離
の簡便さ、陶材への配置の容易さの観点から、水溶性ポ
リマーを含む層(以下、「水溶性ポリマー層」というこ
とがある。)が好ましい。この場合、上記支持体を透水
性支持体とすることがなお好ましく、透水性支持体剥離
後の強度を補強するために上記カバーコート層を設ける
のがさらに好ましい。上記像形成工程において、既述の
「無機顔料像を形成する方法」のいずれかで水溶性樹脂
層上に無機顔料像が形成され、配置工程において、支持
体の水浸透性を利用して水溶性樹脂の一部を溶解しつつ
容易に剥離することができる。
【0093】また、上記接着性トナーを用いる電子写真
法、LMIT法、溶融転写法又は固体インクジェット法
のように、転写シートを用いる方法で無機顔料像を形成
する場合には、透水性支持体に設けられた水溶性ポリマ
ー層上に更に受像層を有してなる受像体(接着性受像シ
ート)が好ましく、該受像層には、バインダーとして既
述の「同一官能基を含むポリマー」(疎水性ポリマー)
を所定量含む態様(以下、「疎水性ポリマー層」という
ことがある。)が特に好ましい。この場合、疎水性ポリ
マー層が上記「像形成可能な受像層」を担い、水溶性ポ
リマー層は、支持体剥離性を向上し、陶材への接着性を
付与する層(剥離層)として機能する。疎水性ポリマー
層が水溶性ポリマー層を介在して設けられることで、多
色転写時の、転写部及び未転写部における液吸収性、層
膨潤時の接着性等の不均一、及び該不均一に伴う画像ム
ラを解消し、転写性を良化することができる。
【0094】上記水溶性ポリマーとしては、支持体が紙
支持体である場合、上記受像体を水に浸漬等した際に、
その一部が溶解して紙支持体が剥離可能になると共に、
剥離後の無機顔料像をその剥離面において、陶材表面に
接着可能となるものが好ましい。この場合の接着とは、
陶材表面に位置ズレすることなく配置可能であれば足り
る。この点から、上記水溶性ポリマーとしては、例え
ば、デキストリン、アラビアゴム等の陶磁器の絵付けに
用いられるポリマー、ポリビニルアルコール、カルボキ
シメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエ
チルセルロース、ゼラチン等が好ましい。水溶性ポリマ
ー層中における水溶性ポリマーの含有量としては、50
質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質
量%が特に好ましい。
【0095】上記疎水性ポリマーとしては、既述の「同
一官能基を含むポリマー」が好ましく、具体的には、炭
素、酸素、窒素、及び水素の各原子から構成され、かつ
ガラス転移点(Tg)が25℃以下である疎水性ポリマ
ーが好ましい。その中でも、炭素、酸素、及び水素の各
原子から構成されたものがより好ましい。また、ガラス
転移点が、15℃以下のものがより好ましく、5℃以下
のものがさらに好ましい。疎水性ポリマーとしては、既
述の「同一官能基を含むポリマー」とともに、例えば、
ポリビニルブチラール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重
合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレ
ン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン
酸−アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、ポリス
チレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル樹脂、セルロー
ス誘導体系、ポリスチレンメタクリル系樹脂、ポリビニ
ルエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネ
ート系樹脂、ロジン系樹脂等の熱可塑性樹脂を併用する
ことができる。また、陶磁器等のセラミックス体の上絵
付け用オーバープリントラッカーとして用いられる樹脂
も好適であり、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂
等も併用できる。
【0096】上記像形成可能な受像層の層厚としては、
一般には0.3〜20μmであり、好ましくは0.7〜
15μmである。また、上記接着性受像シートの場合の
「水溶性ポリマー層」の層厚としては、0.2〜20μ
mが好ましい。
【0097】上記受像体の支持体としては、プラスチッ
クシート、金属シート、ガラスシート、紙等のような通
常のシート状の基材が挙げられる。プラスチックシート
の例としては、ポリエチレンテレフタレートシート、ポ
リカーボネートシート、ポリエチレン−2,6−ナフタ
レートシート、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニリ
デンシート、ポリスチレンシート、スチレン−アクリロ
ニトリルシート、ポリエステルシート等が挙げられ、上
記ガラスシートの例としては、ガラスエポキシシート等
が挙げられ、上記紙支持体としては、平滑性の良好な印
刷本紙、コート紙等が挙げられる。
【0098】受像シートの上記支持体の厚さとしては、
通常10〜400μmであり、25〜200μmが好ま
しい。また、支持体の表面は、像形成可能な受像層(あ
るいはクッション層)との密着性の向上、又は転写シー
トの転写層との密着性の向上の目的で、コロナ放電処
理、グロー放電処理等の表面処理が施されていてもよ
い。
【0099】(転写像形成工程・像転写工程)また、本
発明の製造方法は、受像体表面に無機顔料像を転写法に
よって形成してもよい。この場合、上記像形成工程は、
転写受像体の表面にテルペンフェノール樹脂を含有する
材料からなる転写無機顔料像を形成する転写像形成工程
と、上記転写無機顔料像を上記受像体の表面に転写し
て、上記受像体の表面に上記無機顔料像を形成する転写
工程と、を含むのが好ましい。転写法によって受像体表
面に無機顔料像を形成すると、2色以上の画像を形成す
る場合に混色等を防止して、色純度の高い画像を得るこ
とができる。例えば、転写法を用いずにLMIT法によ
って受像体表面に直接無機顔料像を形成する場合を例に
とって説明すると、2色目以降の無機顔料像を形成する
際に、既に形成された無機顔料像上に転写層の一部が付
着してしまい、いわゆる2次色かぶりを起こしてしまう
場合がある。これに対し、各色ごとに転写無機顔料像を
転写受像体に形成し(転写像形成工程)、それを受像体
に転写して無機顔料像を形成すれば(像転写工程)、実
質的に既に形成された無機顔料像上に転写層がくること
はないので、2次色かぶりを防止することができる。
【0100】上記転写像形成工程は、転写受像体の表面
にテルペンフェノール樹脂を含有する材料からなる転写
無機顔料像を形成する工程である。上記転写受像体とし
ては上述の受像体と同様のものを好適に用いることがで
き、転写受像体表面に無機顔料像を形成する方法につい
ても上述の方法を好適に用いることができる。また、上
記転写無機顔料像は、テルペンフェノール樹脂を含有す
る材料からなり、テルペンフェノール樹脂を含有する材
料は、上述の無機顔料像を形成する材料と同様である。
また、上記転写無機顔料像を上記受像体の表面に転写す
る方法としては公知の転写方法を利用することができ
る。
【0101】(カバーコート層転写工程)本発明におい
て上記無機顔料像が形成された受像体にカバーコート層
を設ける場合には、カバーコート層転写工程によって該
カバーコート層を設けるのがコスト面及び作業効率の観
点から好ましい。カバーコート転写工程においては、上
記像形成工程おいて無機顔料像が形成された受像層表面
と、カバーコート層を有する転写体の上記カバーコート
層表面とを少なくとも接触させて加熱し、上記カバーコ
ート層を上記受像層上に転写する。即ち、無機顔料像を
覆うようにカバーコート層を重ね合わせ、その状態で加
熱しながら密着させて積層体を形成する。その後、該積
層体から転写体の仮支持体を剥離除去することにより、
受像層の一部又は全面にカバーコート層を転写形成する
ことができる。
【0102】加熱して積層体とする過程では、加圧しな
がら加熱してもよく、例えばヒーター等の加熱手段を内
蔵する一対の加熱ニップローラを備える装置(例えば、
ヒートロールラミネーター)等によりラミネートして両
層を密着させることができる。加熱時の加熱温度として
は、一般には50〜200℃が好ましい。
【0103】上記転写体は、仮支持体の表面に少なくと
もカバーコート層を有してなり、必要に応じてフリット
層等の他の層や被覆シートが設けられていてもよい。こ
こで、上記仮支持体及び被覆シートとしては、特に制限
はなく、既述の転写シートを構成する仮支持体、及び被
覆シートと同様のものを用いることができる。
【0104】上記カバーコート層は、疎水性ポリマーを
少なくとも含んで構成される。疎水性ポリマーを主に構
成されることで、後述の配置工程で水中に浸漬等して受
像体の支持体を剥離する際に、無機顔料像をカバーコー
ト層表面で保持でき、画像に支障を来すこともない。上
記疎水性ポリマーとしては、転写層に使用可能なものと
同様のバインダーが挙げられ、既述の「同一官能基を含
むポリマー」が好適である。中でも、凹凸表面や湾曲面
への密着、転写を可能とする観点から、ガラス転移点が
室温(使用環境温度)以下のポリマーが好ましい。ここ
で、使用環境温度以下とは、25℃以下をいう。前記疎
水性ポリマーとしては、具体的には、炭素、酸素、窒
素、及び水素の各原子から構成され、かつガラス転移点
(Tg)が25℃以下である疎水性ポリマーが好まし
い。その中でも、炭素、酸素、及び水素の各原子から構
成されたものがより好ましい。前記ガラス転移点(T
g)としては、−50〜25℃が好ましく、−30〜1
5℃がより好ましい。前記疎水性ポリマーの市販品の具
体例としては、互応化学工業(株)製のカバーコートレ
ジンLO−210、同LO−176S、同LO−200
H、同LO−170H等が挙げられる。カバーコート層
中における疎水性ポリマーの含有量としては、50質量
%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%
が特に好ましい。
【0105】上記カバーコート層にフリット(熱溶融性
無機物質)を含有させてもよい。フリットを含有させる
ことにより、既述の像形成工程で形成された無機顔料像
中の無機顔料含有率が高い場合でも陶材に強固に焼結さ
れ易く、しかも焼結後の画像安定性、及び表面光沢性を
も向上させることができる。上記フリットとしては、上
記転写シートの転写層に使用可能なものと同様の、フラ
ックスが挙げられる。該フリットの含有量としては、カ
バーコート層中の疎水性ポリマー含量(質量)に対し
て、1〜100質量%が好ましい。
【0106】上記カバーコート層の層厚としては、5〜
50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
該層厚が、5μm未満であると、配置工程における作業
性が悪くなることがあり、50μmを超えると、焼成時
に品質が悪化することがある。
【0107】上記のように、カバーコート層にフリット
を含有せず、又は含有すると共に、上記カバーコート層
の仮支持体と接しない側の表面にフリット層を設けるこ
とが好ましい。フリット層は、フリット(熱溶融性無機
物質)及び熱可塑性樹脂を少なくとも含んでなり、該層
の層厚としては、1〜20μmが好ましい。上記フリッ
トとしては、上記転写シートの転写層に使用可能なもの
と同様のものが挙げられ、該フリットの含有量として
は、熱可塑性樹脂含量(質量)に対して、20〜100
質量%が好ましい。また、上記熱可塑性樹脂としては、
例えば、前記転写層に使用可能な、軟化点40〜150
℃の非晶質有機高分子重合体等の公知のものの中から適
宜選択できる。
【0108】〈配置工程〉本発明における配置工程は、
上記無機顔料像を上記受像体の一部又は全部と共に陶材
の表面に配置する。また、受像体から支持体を剥離して
無機顔料像を陶材表面に配置する場合、支持体剥離後に
おいて、必ずしも受像体の受像層及び/又は水溶性ポリ
マーを含有する層(水溶性ポリマー層)を除去する必要
はなく、受像層の態様に応じて、陶材と無機顔料像との
間に、受像層及び/又は水溶性ポリマー層を介在させて
配置してもよいし、カバーコート層の無機顔料像を有し
ない側の表面を陶材表面と対向させて配置してもよい。
この時、水溶性ポリマー層は、陶材への接着剤として機
能する。
【0109】支持体の表面に水溶性ポリマーを含有する
層と受像層とを順次有する受像体(以下、「接着性受像
体」ということがある。)を用いた場合、支持体が透水
性支持体のとき、像形成工程の後、受像体の透水性支持
体側の一部を水に接触若しくは浸漬し、上記水溶性ポリ
マーの一部を溶解させて支持体を剥離除去すると共に、
剥離した剥離面において陶材表面に接着することができ
る。この場合上記カバーコート層転写工程によってカバ
ーコート層を設けておけば、カバーコート層で強度を補
いながら無機顔料像を陶材表面に配置することができ
る。したがって、この場合は糊剤を溶解又は分散した液
は不要である。また、支持体がプラスチックフィルム支
持体のとき、後述のように予めプラスチックフィルム支
持体に離型性を付与する表面処理を施しておくことによ
って、水に浸漬等することなく、プラスチックフィルム
支持体を容易に剥離することができる。尚、プラスチッ
クフィルム自身が、無機顔料像及びカバーコートレジン
等に対して離型性を有する場合には表面処理をしなくて
もよい。この場合、糊剤を溶解又は分散した液を介して
陶材表面に配置することもでき、ホットメルト接着剤を
介在させることにより、陶材表面に配置することができ
る。ここで、前記水等の液体は、水のみならず、水と該
水に相溶性の溶剤等との混合溶液などの、受像体中の水
溶性ポリマーを溶解可能なものの中から、適宜選択すれ
ばよい。
【0110】陶材表面に受像層上の無機顔料像を反転さ
せて配置する場合には、予め受像層上に反転画像を形成
しておき、カバーコート層の無機顔料像が形成されてい
る側の表面での陶材の表面に配置してもよく(像の再反
転)、正像を形成することができる。この場合、カバー
コート層表面は接着性を有しないので、陶材及びカバー
コート層のいずれかの表面に、糊剤を溶解又は分散した
液あるいはホットメルト接着剤を介在させることによ
り、陶材表面に配置することができる。
【0111】上記において、糊剤を溶解又は分散した液
としては、例えば水に、糊剤として水溶性ポリマー(例
えば、ゼラチン、デンプン、デキストリン、ヒドロキシ
エチルセルロース等)、ラテックス又はエマルション
(例えば、ポリエステル樹脂、エチレン、酢酸ビニル樹
脂、アクリル樹脂等)を溶解又は分散した液等が挙げら
れる。
【0112】上記陶材としては、タイル等の建材等に用
いられる陶板、陶器、陶磁板、陶磁器、ホーロー等や、
セラミックス材料などが挙げられる。陶材の色、形状、
厚み等の形態については目的、用途に応じて適宜選択す
ることができる。
【0113】〈焼成工程〉本発明における焼成工程は、
上記無機顔料像が配置された陶材を乾燥後加熱して焼結
する。上記焼成工程においては、少なくとも無機顔料像
が配置された陶材を加熱し、上記無機顔料像を陶材の表
面に焼結する。無機顔料が陶材の表面に焼結されると共
に、無機顔料以外の成分、及び像と共に陶材表面に配置
された受像層等の成分が蒸発又は焼却される。したがっ
て、無機顔料と共に陶材表面に配置された材料(転写層
や受像層中の成分など)は、焼成工程時に蒸発又は燃焼
により消失しない原子、化合物等を含んだり、無機顔料
と反応して変色等を伴う原子、化合物等を含まないこと
が好ましい。
【0114】陶材の加熱は、温度制御、発色性等の観点
から、例えば、電気窯等を用いておこなうことが好まし
い。加熱条件は選択した材料、陶材の体積、画像の大き
さ等に応じて、適宜設定することができる。加熱は焼成
温度まで緩やかに昇温させるか、300〜500℃で一
定時間定温加熱した後に、焼成温度まで緩やかに昇温し
ていくのが好ましい。焼成は、無機顔料として上絵具を
使用した場合、焼成温度を通常650℃〜900℃、好
ましくは750℃〜850℃とし、焼成時間を10〜1
80分とするのが好ましい。また、無機顔料として下絵
具を使用した場合、焼成温度を1000〜1300℃、
好ましくは1100〜1250℃とし、焼成時間を10
分〜8時間とするのが好ましい。
【0115】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明するが、本
発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0116】(実施例1) <転写性促進材料溶液の調製>下記成分を混合し均一に
攪拌した後、0.45μmのミクロフィルターによって
濾過し、転写性促進材料溶液を得た。 ・n−プロピルアルコール 45質量部 ・エマルゲン104P (Cn2n+1−O−(CH2CH2O)mH系;花王(株)製) 5質量部 ・蒸留水 50質量部
【0117】<転写シートの作製> (1)イエロー用転写シートの作製 −無機顔料分散液の調製− 下記成分をマイクロスMC−0型(奈良機械製作所
(株)製)にて2時間分散し、無機顔料分散液Wを得
た。 ・イエロー顔料(13651;セルデック社製) 40質量部 ・水 60質量部
【0118】−転写層用塗布液の調製− 下記組成の成分を混合して十分に攪拌し、転写層用塗布
液を調製した。 [転写層用塗布液の組成] ・上記顔料分散液 40質量部 ・ポリオキシエチレン(n=10)ノニルフェノールエーテル 0.5質量部 (20質量%水溶液) ・カルナバワックス分散液(31質量%) 20質量部 (K−332;中京油脂(株)製) ・ブチラール樹脂分散液(25質量%) 60質量部 (レゼムJ667;中京油脂(株)製) ・テルペンフェノール樹脂分散物(35質量%) 5質量部 (レゼムJ628;中京油脂(株)製)
【0119】上記転写層用塗布液を、厚み25μmのポ
リエステルフィルムの表面に乾燥膜厚2μmとなるよう
に塗布、乾燥して転写層を形成し、イエロー用転写シー
トを作製した。
【0120】(2)マゼンタ用、シアン用、ブラック用
各転写シートの作製 上記イエロー用転写シートの作製において、上記イエロ
ー顔料を、マゼンタ顔料(77571;セルデック社
製)、シアン顔料(14209;セルデック社製)、ブ
ラック顔料(14209;セルデック社製)に、各々変
更した点以外は、上記イエロー用転写シートと同様にし
て、マゼンタ用、シアン用、及びブラック用の各転写シ
ートを作製した。
【0121】<受像体の作製>秤量100gの平滑な紙
支持体の表面にアラビアゴムの10%水溶液を乾燥層厚
5μmとなるように塗布、乾燥して、第一層(水溶性ポ
リマー層)を形成した。この第一層上に、更にメタクリ
ル酸系樹脂を主成分とするカバーコートレジン(プラス
サイズLO−210、互応化学工業(株)製)を乾燥層
厚15μmとなるように塗布、乾燥して、第二層(受像
層)を積層し、受像体を作製した。
【0122】<転写体の作製>仮支持体として、厚み5
0μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィル
ムを用意し、該PETフィルムの表面に、ポリビニルア
ルコール(PVA−105、(株)クラレ製)の10質
量%水溶液を乾燥層厚0.2μmとなるように塗布、乾
燥した(剥離層)。この上に更に、メタクリル酸系樹脂
を主成分カバーコートレジン(プラスサイズLO−21
0、互応化学工業(株)製)に、その固形分に対して1
5質量%となる量のフラックス(19164、セルデッ
ク社製)を加えて3本ロールミルにて分散し、得られた
分散液を乾燥層厚17μmとなるように塗布、乾燥して
カバーコート層を形成した。以上より、PETフィルム
表面に剥離層とフラックス含有カバーコート層を順次有
する転写体を得た。
【0123】<LMIT法による画像形成>図4と同様
の構造を有する画像形成装置40を用いて、上記より得
た受像体の受像層上に、上記より得た4色の転写シート
を用いて、転写層よりなるフルカラー画像(無機顔料
像)を形成した(像形成工程)。具体的には、以下の通
りである。
【0124】画像形成装置40は、受像体20と転写シ
ート41とを加熱、加圧しながら搬送可能に対向配置さ
れた支持ドラム44及びピンチローラ46と、受像体2
0の搬送路の支持ドラム44より上流側に位置し、受像
体20の第二層(受像層)表面に転写性促進材料溶液の
液滴を画像様に付与可能な吐出ヘッド42とを備え、更
に転写シート41の搬送路の終点部に配設された巻き取
りローラ48と、転写シート41の搬送路の巻き取りロ
ーラ48より上流側であって、支持ドラム44より下流
側に配置された直方体状の剥離バー50とを備えてい
る。また、受像体20の搬送路には、画像様に吐出され
た転写性促進材料溶液を加熱乾燥するための加熱ヒータ
52と、受像体20上に転写された転写画像を乾燥する
ための加熱ヒータ54とを備える。
【0125】図4のように構成された画像形成装置40
に、上記より得た受像体Aとイエロー用転写シートと
を、受像層面とイエロー転写層面とが互いに対向するよ
うにセットし、吐出ヘッド42に上記より得た転写性促
進材料溶液を充填した。画像形成装置40を起動する
と、支持ドラム44及びピンチローラ46は各々矢印方
向に同期して回転する一方、受像体20の第二層(受像
層)上には、吐出ヘッド42から転写性促進材料溶液が
画像様に吐出され、イエロー画像を形成しうる潜像が形
成された。
【0126】この潜像部は、更に支持ドラム44及びピ
ンチローラ46の圧着部まで搬送され、加熱(80℃)
の条件下、転写シートのイエロー転写層表面と受像体の
受像層表面とを密着した。密着された状態で更に矢印方
向に搬送されると、剥離バー50で剥離され、剥離後の
受像層上にはイエロー画像(鏡面反転像)が形成され
た。その後、同様の操作をイエロー画像が形成された前
記同一受像体に対して、上記より得たマゼンタ、シアン
及びブラック転写シートのそれぞれを用いて繰り返し、
同一受像体の受像層表面にフルカラー画像(鏡像反転
像)を形成した。
【0127】次いで、フルカラー画像(鏡像反転像)が
形成された受像層表面と、上記より得た転写体のカバー
コート層表面とが互いに接触するようにして重ね合わ
せ、ヒートロールラミネーター(120℃)を通してラ
ミネートして密着させた後、転写体の仮支持体のみを剥
離して画像を覆うようにカバーコート層を転写した。こ
の時、図1−(d)に示すように、受像体上には、フルカ
ラー画像(無機顔料像)とカバーコート層とが順次形成
されていた。
【0128】続いて、フルカラー画像が形成された受像
体の紙支持体側の一部を、水中に浸漬させ、第一層の一
部を溶解させつつ紙支持体を剥離除去した。その後、紙
支持体が剥離されて露出し溶解状態にある第一層(水溶
性ポリマー層)の表面(剥離面)が陶材の表面に接触す
るようにして配置した(配置工程)。この時、陶材の表
面には、第一層(水溶性ポリマー層)と第二層(受像
層)と無機顔料像とカバーコート層とが順次積層されて
いた。
【0129】この状態の陶材を、無機顔料像がカバーコ
ート層等と共に形成された陶材を850℃にて1時間焼
成し、無機顔料を陶材表面に焼結させて、フルカラー画
像付の陶体を得た(焼成工程)。
【0130】以上のように、上記で作製した本発明の転
写シートを用いることにより、簡易な工程でフルカラー
画像付の絵付き陶体を作製することができた。しかも、
溶剤を用いた塗布液の調製作業がなく、作業性、安全性
をも確保することができた。また、絵付きの陶体には、
画像の色ムラ、濃度ムラがなく、高解像度で、階調性に
優れた画像が形成されており、耐水性、耐光性も共に良
好であった。
【0131】
【発明の効果】本発明によると、転写層の造膜性に優れ
た転写シートを用い、美術タイル等の建材やセラミック
ス材などの陶材の表面に、発色濃度を高く維持しなが
ら、高解像度で階調性に優れた画像を陶材上に配置・焼
結することができ、特に、多色画像の接着性・転写性に
優れた絵付き陶体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法の基本的態様を説明するた
めの概略工程図である。
【図2】 本発明の製造方法における像形成工程の一実
施態様の一部を示す概略工程図である。
【図3】 本発明の製造方法における像形成工程の一実
施態様の一部を示す概略工程図である。
【図4】 実施例で用いた画像形成装置の概略図であ
る。
【符号の説明】
1,3…受像層(水溶性ポリマー層) 2…支持体 5…受像体 6…カバーコート層 7,9…仮支持体 8…転写層 10…転写体 11,21…無機顔料像 12…陶材 15、41…転写シート

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 受像体の表面に、テルペンフェノール樹
    脂を含有する材料からなる無機顔料像を形成する像形成
    工程と、 前記無機顔料像を、前記受像体の一部又は全部とともに
    陶材の表面に配置する配置工程と、 前記無機顔料像が配置された陶材を加熱して焼結する焼
    成工程と、を含むことを特徴とする絵付き陶体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記受像体が、透水性支持体の表面に水
    溶性ポリマーを含有する層を有してなる接着性受像体で
    ある請求項1に記載の絵付き陶体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記配置工程において、前記水溶性ポリ
    マーを含有する層の一部を溶解させて前記接着性受像体
    から前記透水性支持体を剥離し、前記接着性受像体の剥
    離面が前記陶材の表面に接触するように、前記無機顔料
    像を前記陶材の表面に配置する請求項1又は2に記載の
    絵付き陶体の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記配置工程において、前記水溶性ポリ
    マーを含有する層の一部を溶解させて前記接着性受像体
    から前記透水性支持体を剥離し、糊剤を溶解又は分散し
    た液あるいはホットメルト接着剤を介在させて、前記接
    着性受像体の画像形成面を陶材表面に配置する請求項1
    又は2に記載の絵付き陶体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記無機顔料像が、転写シートを用いた
    電子写真法、潜像形成液を用いた転写法、溶融転写法、
    及び固体インクジェット法のいずれかで形成される請求
    項1から4のいずれかに記載の絵付き陶体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記像形成工程が、 転写受像体の表面にテルペンフェノール樹脂を含有する
    材料からなる転写無機顔料像を形成する転写像形成工程
    と、 前記転写無機顔料像を前記受像体の表面に転写して、前
    記受像体の表面に前記無機顔料像を形成する像転写工程
    と、 を含む請求項1から4のいずれかに記載の絵付き陶体の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 前記転写無機顔料像が、転写シートを用
    いた電子写真法、潜像形成液を用いた転写法、溶融転写
    法、及び固体インクジェット法のいずれかで形成される
    請求項6に記載の絵付き陶体の製造方法。
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