JP2002293225A - 車両運動制御装置 - Google Patents

車両運動制御装置

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JP2002293225A
JP2002293225A JP2001098566A JP2001098566A JP2002293225A JP 2002293225 A JP2002293225 A JP 2002293225A JP 2001098566 A JP2001098566 A JP 2001098566A JP 2001098566 A JP2001098566 A JP 2001098566A JP 2002293225 A JP2002293225 A JP 2002293225A
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JP
Japan
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vehicle
avoidance
yaw rate
obstacle
road
Prior art date
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Application number
JP2001098566A
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English (en)
Inventor
Munenori Matsuura
宗徳 松浦
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Subaru Corp
Original Assignee
Fuji Heavy Industries Ltd
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Publication date
Application filed by Fuji Heavy Industries Ltd filed Critical Fuji Heavy Industries Ltd
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  • Steering Control In Accordance With Driving Conditions (AREA)
  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)
  • Regulating Braking Force (AREA)
  • Arrangement And Driving Of Transmission Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】車両に対する障害物を事前に判断し様々な走行
情報を加味して回避走行全般に亘り車両挙動制御装置が
適切に動作し障害物の回避走行を適切に行う。 【解決手段】自車両1に対する障害物を事前に判断し、
回避走行制御部80では、路面摩擦係数、路面勾配の路
面情報、自車両1と障害物の相対的な運動を考慮して自
車両1が制動操作のみで障害物を回避できるか否か正確
に判定する。そして、自車両1の制動操作のみで障害物
を回避できない場合、ハンドル操作と車両挙動に応じて
車両挙動制御部60,65,70,75を回頭性を向上
する方向のモードか車両安定性を向上する方向のモード
かの回避走行モードに移行させる。回頭性向上のモード
に移行する際は、路面μが小さい場合、走行路前方の道
路状態が滑りやすい場合、或いは前方道路情報が良好で
はない場合は、このモードに入ることを禁止して制御の
信頼性を向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、障害物の回避を回
避前から回避後までを考慮して適切に行わせる車両運動
制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、車両の走行性能を向上させるため
に様々な車両挙動の制御装置が開発・実用化されてい
る。コーナリング等の際に車両にはたらく力の関係から
コーナリング中に制動力を適切な車輪に加えて走行安定
性を向上させる制動力制御装置、車両の走行状態に応じ
て後輪の操舵を制御する後輪操舵制御装置、車両の走行
状態を基に左右輪間の駆動力配分を制御する左右駆動力
配分制御装置、車両の走行状態を基に前後輪間のセンタ
ーデファレンシャル装置の差動制限力を制御して前後輪
間で所定にトルク配分を行う動力配分制御装置がその例
である。
【0003】最近では、車両前方の障害物(先行車も含
む)を認識して安全に停止、或いは、回避できるように
する様々な技術が提案されている。例えば、特開平7−
21500号公報では、運転者のハンドル操作が検知さ
れ、且つ、自車両と障害物とが接近状態にあり、更に、
ブレーキ圧の制御による車両の制動だけでは自車両と障
害物との接触が回避できないと判断された場合にのみ、
運転者のハンドル操作方向への車両の回頭性が高まるよ
うに各車輪毎にブレーキ圧を制御する自動ブレーキ制御
装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記先
行技術では、障害物を回避するまでは適切に制御できる
ものの、回避走行に入ってからの細かな制御は行うこと
ができないという問題がある。
【0005】また、上記先行技術では、自動ブレーキに
よる回頭性向上をめざすものであるが、前述した様々な
車両挙動の制御装置を用いて効率よく行えることが望ま
しい。しかし、車両の障害物の回避走行においては、障
害物を回避する際と障害物の回避後に元の車両姿勢に戻
る操作が短時間に行われ、このような複雑な操作に伴っ
て各車両挙動の制御装置を的確に、安定して自然に作動
させるようにする必要がある。
【0006】更に、回避走行で回頭性向上を行うにあた
り、特に路面が滑りやすくなっているような場合は、制
御介入による回頭性向上により、車両のヨーレートが必
要以上に増大しスピン傾向になり、車両を不安定にして
しまう虞がある。また、障害物認識情報に誤りがあった
場合も同様に、必要以上に回避走行制御が車両挙動制御
に介入してしまい、車両を却って不安定なものにしてし
まう可能性がある。
【0007】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、車両に対する障害物を事前に判断し、様々な走行情
報を加味して回避走行全般に亘り、各車両挙動の制御装
置が適切に動作して、障害物の回避走行を適切に行うこ
とができ、特に路面が滑りやすくなっているような場合
等でも、これを適切に判断し制御に反映して信頼性の高
い車両運動制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
請求項1記載の本発明による車両運動制御装置は、走行
路前方の道路状態を認識して少なくとも障害物情報を検
出する前方道路情報認識手段と、自車両の走行状態を検
出する自車両情報検出手段と、走行する路面情報を推定
する路面情報推定手段と、上記自車両の回頭性能を可変
して車両挙動を制御する車両挙動制御手段と、上記障害
物情報と上記自車両情報と上記路面情報とに基づき上記
自車両の制動操作のみで該自車両が上記障害物を回避可
能か否か判定する制動回避判定手段と、上記自車両が制
動操作のみで上記障害物を回避できない場合にハンドル
操作と車両挙動に応じて上記車両挙動制御手段を回避走
行モードに移行させると共に、該回避走行モードでは、
ハンドル操作と車両挙動に応じて、上記車両挙動制御手
段を通常より回頭性を向上させる方向に制御変更させる
第1のモードと、この第1のモードより車両姿勢を強く
維持させる方向に制御変更させる第2のモードとを選択
して実行する回避制御手段とを備えた車両運動制御装置
において、上記回避制御手段は、上記前方道路情報認識
手段による認識状態が悪いと判断した場合と、上記走行
路前方の道路状態が滑りやすいと判断した場合と、路面
摩擦係数が小さい場合の少なくとも何れかの場合は、上
記第1のモードの実行を禁止することを特徴としてい
る。
【0009】上記請求項1記載の車両運動制御装置は、
前方道路情報認識手段で走行路前方の道路状態を認識し
て少なくとも障害物情報を検出し、自車両情報検出手段
で自車両の走行状態を検出し、路面情報推定手段で走行
する路面情報を推定する。そして、制動回避判定手段で
障害物情報と自車両情報と路面情報とに基づき自車両の
制動操作のみで自車両が障害物を回避可能か否か判定し
て、自車両が制動操作のみで上記障害物を回避できない
場合、回避制御手段は、自車両の回頭性能を可変して車
両挙動を制御する車両挙動制御手段を、ハンドル操作と
車両挙動に応じて上記車両挙動制御手段を回避走行モー
ドに移行させる。回避制御手段は、回避走行モードで
は、ハンドル操作と車両挙動に応じて、車両挙動制御手
段を通常より回頭性を向上させる方向に制御変更させる
第1のモードと、この第1のモードより車両姿勢を強く
維持させる方向に制御変更させる第2のモードとを選択
して実行するが、前方道路情報認識手段による認識状態
が悪いと判断した場合と、走行路前方の道路状態が滑り
やすいと判断した場合と、路面摩擦係数が小さい場合の
少なくとも何れかの場合は、第1のモードの実行を禁止
する。このため、車両に対する障害物を事前に判断し、
様々な走行情報を加味して回避走行全般に亘り、各車両
挙動の制御装置が適切に動作して、障害物の回避走行を
適切に行うことができる。また、前方道路情報認識手段
による認識状態が悪いと判断した場合と、走行路前方の
道路状態が滑りやすいと判断した場合と、路面摩擦係数
が小さい場合には回頭性向上が禁止されるので、回避走
行制御が車両挙動制御に介入して、車両のヨーレートが
必要以上に増大しスピン傾向になったり、車両を不安定
にしたりすることがなく、信頼性を向上することができ
る。
【0010】また、請求項2記載の本発明による車両運
動制御装置は、請求項1記載の車両運動制御装置におい
て、上記回避制御手段による上記回避走行モードは、上
記車両挙動制御手段を上記第1のモードの場合にハンド
ル操舵方向が反転した際は、上記車両挙動制御手段を上
記第2のモードに切り換えることを特徴としている。す
なわち、一般に、回避走行では、回避当初では回頭性が
要求されるが、障害物回避後は元の車両姿勢に戻るため
に安定性が要求される。このため、ハンドル操舵方向の
反転を回避走行中の、障害物回避の分岐点として定め、
回頭性重視の制御から安定性重視の制御に変更させる。
【0011】さらに、請求項3記載の本発明による車両
運動制御装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両運
動制御装置において、上記回避制御手段による上記回避
走行モードは、ハンドル操舵が小さい状態が所定時間以
上継続した場合と、目標とするヨーレートと実際のヨー
レートの偏差が予め定めた設定範囲内である状態が所定
時間以上継続した場合の少なくともどちらかの場合に上
記回避走行モードを解除することを特徴としている。す
なわち、ハンドル操舵が小さい状態が所定時間以上継続
する場合や、目標とするヨーレートと実際のヨーレート
の偏差が予め定めた設定範囲内である状態が所定時間以
上継続する場合は、回避走行が終了したとみなして回避
走行モードを解除する。
【0012】さらに、請求項4記載の本発明による車両
運動制御装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載
の車両運動制御装置において、上記車両挙動制御手段
は、車両の走行状態を基に制動力を所定の選択した車輪
に加えて制御する制動力制御部と、車両の走行状態に応
じて後輪を所定に操舵制御する後輪操舵制御部と、車両
の走行状態に応じて前後輪間の駆動力配分を可変制御す
る前後駆動力配分制御部と、車両の走行状態に応じて左
右輪間の駆動力配分を可変制御する左右駆動力配分制御
部の少なくとも一つであることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実
施の形態を説明する。図1〜図5は本発明の実施の一形
態を示し、図1は車両における車両運動制御装置全体の
概略説明図、図2は回避走行制御部を説明する機能ブロ
ック図、図3は回避走行制御プログラムのフローチャー
ト、図4は図3の続きのフローチャート、図5は図3の
続きのフローチャートである。
【0014】図1において、符号1は自車両を示し、符
号2はエンジンで、車両前部に配置されている。このエ
ンジン2からの駆動力は、エンジン2後方の自動変速装
置(トルクコンバータ等も含んで図示)3からトランス
ミッション出力軸3aを介して、センターデファレンシ
ャル装置4に伝達され、このセンターデファレンシャル
装置4にて、後輪側と前輪側とへ所定のトルク配分比に
て分配される。
【0015】センターデファレンシャル装置4から後輪
側へ分配された駆動力は、リヤドライブ軸5、プロペラ
シャフト6、ドライブピニオン7を介してリヤファイナ
ルドライブ装置8に入力される。
【0016】一方、センターデファレンシャル装置4か
ら前輪側へ分配された駆動力は、トランスファドライブ
ギヤ9、トランスファドリブンギヤ10、フロントドラ
イブ軸11を介してフロントデファレンシャル装置12
に入力されるように構成されている。ここで、自動変速
機3、センターデファレンシャル装置4、及びフロント
デファレンシャル装置12等は、一体的にケース13内
に設けられている。
【0017】リヤファイナルドライブ装置8に入力され
た駆動力は、後輪左ドライブ軸14rlを介して左後輪1
5rlに、後輪右ドライブ軸14rrを介して右後輪15rr
に伝達される。一方、フロントデファレンシャル装置1
2に入力された駆動力は、前輪左ドライブ軸14flを介
して左前輪15flに、前輪右ドライブ軸14frを介して
右前輪15frに伝達される。
【0018】センターデファレンシャル装置4は、ケー
ス13内後方に設けられており、回転自在に収納したキ
ャリヤ16の前方からトランスミッション出力軸3aが
回転自在に挿入される一方、後方からはリヤドライブ軸
5が回転自在に挿入されている。
【0019】入力側のトランスミッション出力軸3aの
後端部には、大径の第1のサンギヤ17が軸着され、後
輪への出力を行うリヤドライブ軸5の前端部には、小径
の第2のサンギヤ18が軸着されており、キャリヤ16
内に第1のサンギヤ17と第2のサンギヤ18が格納さ
れている。
【0020】そして、第1のサンギヤ17が小径の第1
のピニオン19と噛合して第1の歯車列が形成され、第
2のサンギヤ18が大径の第2のピニオン20と噛合し
て第2の歯車列が形成されている。第1のピニオン19
と第2のピニオン20は一体に形成されており、複数対
(例えば3対)のピニオンが、キャリヤ16に回転自在
に軸支されている。また、キャリヤ16は、前端にトラ
ンスファドライブギヤ9が連結されて、このキャリヤ1
6から前輪への出力が行われる。
【0021】すなわち、センターデファレンシャル装置
4は、トランスミッション出力軸3aからの駆動力が第
1のサンギヤ17に伝達され、第2のサンギヤ18から
リヤドライブ軸5へ出力すると共に、キャリヤ16から
トランスファドライブギヤ9,トランスファドリブンギ
ヤ10を経てフロントドライブ軸11へ出力するリング
ギヤのない複合プラネタリギヤ式に構成されている。
【0022】そしてかかる複合プラネタリギヤ式のセン
ターデファレンシャル装置4は、第1,第2のサンギヤ
17,18、及びこれらサンギヤ17,18の周囲に複
数個配置される第1,第2のピニオン19,20の歯数
を適切に設定することで差動機能を有する。
【0023】また、第1,第2のサンギヤ17,18と
第1,第2のピニオン19,20との噛み合いピッチ円
半径を適宜設定することで、基準トルク配分が前後5
0:50の等トルク配分、或いは、前後どちらかに偏重
した不等トルク配分が可能となっており、本実施の形態
においては、前後、36:64の基準トルク配分に設定
されている。
【0024】更に、第1,第2のサンギヤ17,18と
第1,第2のピニオン19,20とを、例えば、はすば
歯車にし、第1の歯車列と第2の歯車列の捩れ角を異に
して、スラスト荷重を相殺させることなくスラスト荷重
を残留させてピニオン端面間に摩擦トルクを生じさせ、
又、第1,第2のピニオン19,20とこれら第1,第
2のピニオン19,20を軸支するキャリヤ16の軸部
の表面に、噛合いによる分離,接線荷重の合成力が作用
して摩擦トルクが生じるように設定し、入力トルクに比
例した差動制限トルクを得ることでセンターデファレン
シャル装置4自身で差動制限機能を有したものとなる。
【0025】また、センターデファレンシャル装置4の
キャリヤ16とリヤドライブ軸5との間には、前後輪間
の駆動力配分を可変する、油圧式多板クラッチを採用し
たトランスファクラッチ21が設けられており、このト
ランスファクラッチ21の締結力を制御することで、前
後輪のトルク配分が、50:50の直結による4WDか
ら、センターデファレンシャル装置4によるトルク配分
比の範囲で可変制御することが可能となっている。
【0026】トランスファクラッチ21は、複数のソレ
ノイドバルブを擁した油圧回路で構成するトランスファ
クラッチ駆動部61と接続されており、このトランスフ
ァクラッチ駆動部61で発生される油圧で解放、連結が
行われる。そして、トランスファクラッチ駆動部61を
駆動させる制御信号(各ソレノイドバルブに対する出力
信号)は、後述の前後駆動力配分制御部60から出力さ
れるようになっている。
【0027】一方、リヤファイナルドライブ装置8は、
左右輪間の差動機能と動力配分機能を有するもので、ベ
ベルギヤ式の差動機構部22と、3列歯車からなる歯車
機構部23と、後輪における左右輪間の駆動力配分を可
変する2組のクラッチ機構部24とから主要に構成さ
れ、デファレンシャルキャリア25内に一体的に収容さ
れている。
【0028】そして、ドライブピニオン7は、差動機構
部22のデファレンシャルケース26の外周に設けられ
たファイナルギヤ27と噛合され、センターデファレン
シャル装置4から後輪側に配分された駆動力を伝達す
る。
【0029】差動機構部22は、デファレンシャルケー
ス26に固定したピニオンシャフト28に回転自在に軸
支されたデファレンシャルピニオン(ベベルギヤ)29
と、これに噛み合う左右のサイドギヤ(ベベルギヤ)3
0L,30Rをデファレンシャルケース26内に収容し
て構成され、これらサイドギヤ30L,30Rには後輪
左右ドライブ軸14rl,14rrの端部が、デファレンシ
ャルケース26内でそれぞれ軸着されている。
【0030】すなわち、差動機構部22は、ドライブピ
ニオン7の回転によりデファレンシャルケース26がサ
イドギヤ30L,30Rと同一軸芯上で回転されて、デ
ファレンシャルケース26内部に形成した歯車機構によ
り左右輪間の差動を行う構成となっている。
【0031】歯車機構部23は、差動機構部22を挟
み、その左右に分割構成されており、後輪左ドライブ軸
14rlに第1の歯車23z1が固着され、後輪右ドライブ
軸14rrには第2の歯車23z2と第3の歯車23z3とが
軸着されて、これら第1,第2,第3の歯車23z1,2
3z2,23z3は、同一回転軸芯上に配設されている。
【0032】これら第1,第2,第3の歯車23z1,2
3z2,23z3は、同一回転軸芯上に配設された第4,第
5,第6の歯車23z4,23z5,23z6と噛合され、こ
れら第4,第5,第6の歯車23z4,23z5,23z6の
回転軸芯に配設されたトルクバイパス軸31の左輪側端
部に、第4の歯車23z4が軸着されている。
【0033】また、トルクバイパス軸31の右輪側端部
には、左右輪間の動力配分を実行するクラッチ機構部2
4の第1のデフコントロールクラッチ24aが形成され
ており、トルクバイパス軸31は、この第1のデフコン
トロールクラッチ24aを介して(トルクバイパス軸3
1をクラッチハブ側、第6の歯車23z6の軸部側をクラ
ッチドラム側として)、第1のデフコントロールクラッ
チ24aの左側に配置された第6の歯車23z6の軸部と
連結自在になっている。
【0034】更に、トルクバイパス軸31の、差動機構
部22と第5の歯車23z5の間の位置には、クラッチ機
構部24の第2のデフコントロールクラッチ24bが形
成されており、トルクバイパス軸31は、この第2のデ
フコントロールクラッチ24bを介して(トルクバイパ
ス軸31をクラッチハブ側、第5の歯車23z5の軸部側
をクラッチドラム側として)、第2のデフコントロール
クラッチ24bの右側に配置された第5の歯車23z5の
軸部と連結自在になっている。
【0035】そして、第1,第2,第3,第4,第5,
第6の歯車23z1,23z2,23z3,23z4,23z5,
23z6のそれぞれの歯数z1,z2,z3,z4,z
5,z6は、例えば、82,78,86,46,50,
42に設定されており、第1,第4の歯車23z1,23
z4の歯車列((z4/z1)=0.56)を基準とし
て、第2,第5の歯車23z2,23z5の歯車列((z5
/z2)=0.64)が増速、第3,第6の歯車23z
3,23z6の歯車列((z6/z3)=0.49)が減
速の歯車列となっている。
【0036】このため、第1,第2のデフコントロール
クラッチ24a,24bの両方を連結作動させない場
合、ドライブピニオン6からの駆動力は、そのまま差動
機構部22を経て後輪左右ドライブ軸14rl,14rrに
等配分されるが、第1のデフコントロールクラッチ24
aを連結作動させた場合は、後輪右ドライブ軸14rrに
配分された駆動力の一部が、第3の歯車23z3、第6の
歯車23z6、第1のデフコントロールクラッチ24a、
トルクバイパス軸31、第4の歯車23z4、第1の歯車
23z1と順に経てデファレンシャルケース26に戻さ
れ、結果として左後輪15rlのトルク配分が大きくな
り、通常の路面摩擦係数であれば車両の右旋回性が向上
される。
【0037】逆に、第2のデフコントロールクラッチ2
4bを連結作動させた場合は、ドライブピニオン6から
デファレンシャルケース26に伝達された駆動力の一部
が、第1の歯車23z1、第4の歯車23z4、トルクバイ
パス軸31、第2のデフコントロールクラッチ24b、
第5の歯車23z5、第2の歯車23z2と順に経て後輪右
ドライブ軸14rrにバイパスされて、右後輪15rrのト
ルク配分が大きくなり、通常の路面摩擦係数であれば車
両の左旋回性が向上される。
【0038】第1,第2のデフコントロールクラッチ2
4a,24bは、複数のソレノイドバルブを擁した油圧
回路で構成するデフコントロールクラッチ駆動部66と
接続されており、このデフコントロールクラッチ駆動部
66で発生される油圧で解放、連結が行われる。そし
て、デフコントロールクラッチ駆動部66を駆動させる
制御信号(各ソレノイドバルブに対する出力信号)は、
後述の左右駆動力配分制御部65から出力されるように
なっている。
【0039】一方、符号32は、車両1の後輪操舵部を
示し、この後輪操舵部32には、後述する後輪操舵制御
部70により制御される後輪操舵駆動部71で駆動され
る後輪操舵モータ33が設けられており、この後輪操舵
モータ33による動力が、ウォーム・ウォームホィー
ル、リンク機構を介して伝達され、上記左後輪15rl,
右後輪15rrを転舵するようになっている。
【0040】また、符号76は車両のブレーキ駆動部を
示し、このブレーキ駆動部76には、ドライバにより操
作されるブレーキペダルと接続されたマスターシリンダ
(図示せず)が接続されており、ドライバがブレーキペ
ダルを操作するとマスターシリンダにより、ブレーキ駆
動部76を通じて、4輪15fl,15fr,15rl,15
rrの各ホイールシリンダ(左前輪ホイールシリンダ34
fl,右前輪ホイールシリンダ34fr,左後輪ホイールシ
リンダ34rl,右後輪ホイールシリンダ34rr)にブレ
ーキ圧が導入され、これにより4輪にブレーキがかかっ
て制動されるように構成されている。
【0041】ブレーキ駆動部76は、加圧源、減圧弁、
増圧弁等を備えたハイドロリックユニットで、上述のド
ライバによるブレーキ操作以外にも、後述する制動力制
御部75からの入力信号に応じて、各ホイールシリンダ
34fl,34fr,34rl,34rrに対して、それぞれ独
立にブレーキ圧を導入自在に形成されている。
【0042】こうして、前後駆動力配分制御部60、左
右駆動力配分制御部65、後輪操舵制御部70および制
動力制御部75は、それぞれ車両挙動制御手段として設
けられているものであり、自車両1には、これら各制御
部60,65,70,75に対して、信号出力する回避
走行制御部80が搭載されている。
【0043】そして、自車両1には、自車両の走行状態
を検出する自車両情報検出手段として各センサ、スイッ
チ類が設けられている。すなわち、各車輪15fl,15
fr,15rl,15rrの車輪速度が車輪速度センサ41f
l,41fr,41rl,41rrにより検出されて、所定に
演算され車速Vとして、前後駆動力配分制御部60、左
右駆動力配分制御部65、後輪操舵制御部70、制動力
制御部75および回避走行制御部80に入力される。ま
た、ハンドル角θHがハンドル角センサ42により検出
され、ヨーレートγがヨーレートセンサ43により検出
されて、前後駆動力配分制御部60、左右駆動力配分制
御部65、後輪操舵制御部70、制動力制御部75およ
び回避走行制御部80に入力される。更に、横加速度G
yが横加速度センサ44により検出され、前後駆動力配
分制御部60および左右駆動力配分制御部65に入力さ
れる。また、スロットル開度θthがスロットル開度セン
サ45により検出され、ギヤ位置がインヒビタスイッチ
46により検出され、エンジン回転数Neがエンジン回
転数センサ47により検出されて、前後駆動力配分制御
部60に入力される。また、後輪舵角δrが後輪舵角セ
ンサ48により検出されて後輪操舵制御部70に入力さ
れ、前後加速度Gxが前後加速度センサ49により検出
されて回避走行制御部80に入力されように構成されて
いる。更に、車両1には、回避走行制御部80により回
避走行の際に点灯される警報ランプ55がインストルメ
ントパネルに設けられている。
【0044】また、自車両1にはステレオ光学系が配設
されており、このステレオ光学系は、例えば電荷結合素
子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組のCCDカ
メラ(左側カメラ51L,右側カメラ51R)からな
り、これら左右のCCDカメラ51L,51Rが、それ
ぞれ車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けら
れ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像するよう
になっている。
【0045】CCDカメラ51L,51Rからの画像信
号は、前方道路情報認識部52に入力され、同一物体に
対する視差から三角測量の原理によって画像全体に渡る
3次元の距離分布を算出し、この距離分布データを処理
して道路形状や複数の立体物を認識して先行車等の走行
路前方の障害物を検出すると共に、画面の輝度分布状態
等から路面の滑りやすい状態の一例として雪状態等の情
報を検出する。また、路面上の輝度エッジ(隣り合った
点の輝度が大きく変化する部分)の数等に基づいて前方
道路情報が良好に取得されたか否か判断される。すなわ
ち、本発明の実施の形態では、上記CCDカメラ51
L,51Rおよび前方道路情報認識部52により前方道
路情報認識手段が構成されている。
【0046】前方道路情報認識部52は、CCDカメラ
51L,51Rで撮像した2枚のステレオ画像に対して
微小領域毎に同一の物体が写っている部分を探索し、対
応する位置のずれ量を求めて物体までの距離を算出し
て、画像のような形態をした距離分布データ(距離画
像)を記憶し、この距離分布データを処理して道路形状
や複数の立体物を認識することにより前方障害物を検出
するように構成されている。
【0047】具体的には、前方道路情報認識部52にお
ける道路検出処理では、記憶された距離画像による3次
元的な位置情報を利用して実際の道路上の白線だけを分
離して抽出し、内蔵した道路モデルのパラメータを実際
の道路形状と合致するよう修正・変更することで、道路
形状、自車の走行レーンを認識する。
【0048】また、前方道路情報認識部52における前
方障害となる物体検出処理では、距離画像を格子状に所
定の間隔で区分し、各領域毎に、走行の障害となる可能
性のある立体物のデータのみを選別して、その検出距離
を算出する。そして、隣接する領域において物体までの
検出距離の差異が設定値以下の場合は同一の物体と見な
し、一方、設定値以上の場合は別々の物体と見なし、検
出した物体(障害物)の輪郭像を抽出する。尚、以上の
距離画像の生成、距離画像から道路形状や物体を検出す
る処理については、本出願人によって先に提出された特
開平5−265547号公報や特開平6−177236
号公報等に詳述されている。
【0049】更に、前方道路情報認識部52は、本出願
人が特願平11−216191号で詳述するように、C
CDカメラ51L,51Rにより得られた撮像画像中の
所定領域に設定された監視領域における画像データに基
づいて、監視領域の水平方向に関する輝度エッジの数
と、監視領域の全体的な輝度の大きさを算出し、輝度エ
ッジの数が判定値よりも少なく、かつ、全体的な輝度の
大きさが判定値よりも大きい場合に一面雪とみなせる状
態(滑りやすい路面状態)と判定(認識)する。
【0050】また、路面上に雪がまばらにある場合等で
路面上の輝度エッジが大きく変化する部分の数が予め設
定した値より大きい場合、若しくは設定値より小さい場
合等の前方道路情報が良好とは云えない場合は、この判
断結果も回避走行制御部80に出力する。
【0051】そして、前方道路情報認識部52で検出さ
れた前方障害物に関するデータ(障害物(先行車)との
距離Ls、障害物(先行車)の速度Vs、障害物(先行
車)の減速度αs等)と前方道路状態(雪情報等)、前
方道路情報の良好さの判断結果は、回避走行制御部80
に入力される。
【0052】加えて、自車両1には、自車両1の走行中
の道路の状況等の情報を電波ビーコン又は光ビーコンな
どの無線通信手段により提供する道路付帯設備(図示せ
ず)からの信号を受信する受信装置90を備えており、
この道路付帯設備が路面温度や気象状況等の道路状態の
情報を送信している場合は、これらの受信した情報も道
路状態の情報として回避走行制御部80に入力する。
【0053】次に、自車両1の車両挙動を制御する各制
御部について説明する。前後駆動力配分制御部60で
は、例えば、本出願人が特開平8−2274号公報で開
示した方法、すなわち、車速V、ハンドル角θH、実ヨ
ーレートγを用いて車両の横運動の運動方程式に基づ
き、前後輪のコーナリングパワーを非線形域に拡張して
推定し、高μ路での前後輪の等価コーナリングパワーに
対する推定した前後輪のコーナリングパワーの比を基に
路面状況に応じて路面摩擦係数μを推定する。そして、
この路面摩擦係数μに感応して予め設定しておいたマッ
プを参照し、ベースとなるクラッチトルクVTDout0を
求め、このベースクラッチトルクVTDout0に対して、
センターデファレンシャル装置3に入力される入力トル
クTi(エンジン回転数Neとギヤ比iから演算)、ス
ロットル開度θthおよび実ヨーレートγ、ハンドル角θ
Hと車速Vとから演算した目標ヨーレートγtと実ヨー
レートγとの偏差(ヨーレート偏差Δγ=γ−γt)、
横加速度Gyを基に補正を加え、前後輪間動力配分の基
本クラッチ締結力FOtbの基となる制御出力トルクVT
Dout を演算する。さらに、この制御出力トルクVTD
out を、ハンドル角θで補正して、ハンドル角感応クラ
ッチトルクとしてトランスファクラッチ21における基
本クラッチ締結力FOtbとして定め、これに対応する所
定の信号をトランスファクラッチ駆動部61に対して出
力し、このクラッチ油圧でトランスファクラッチ21を
作動させ、センターデファレンシャル装置3に対する差
動制限力となるように付与して前後輪間の動力配分制御
を行う。
【0054】ここで、ヨーレート偏差Δγによる補正
は、ベースクラッチトルクVTDout0に対し、車両のオ
ーバーステア傾向、或いはアンダーステア傾向を防止す
るため、旋回時に発生が予想される目標ヨーレートγt
と実ヨーレートγの偏差に応じて、クラッチトルクを追
加、或いは減少補正するものである。
【0055】例えば、旋回時に、目標ヨーレートγt
(絶対値)が大きく実ヨーレートγ(絶対値)が小さい
ことが予想され、車両がアンダーステア傾向になること
が予想される場合には、クラッチトルクを減少補正して
前後の駆動力配分を後輪偏重にして回頭性を向上するよ
うに補正する。
【0056】これとは逆に、旋回時、目標ヨーレートγ
t(絶対値)が小さく実ヨーレートγ(絶対値)が大き
いことが予想され、車両がオーバーステア傾向になるこ
とが予想される場合には、クラッチトルクを増加補正し
て前後の駆動力配分を前後等配分にして安定性を向上す
るように補正する。
【0057】また、前後駆動力配分制御部60には、回
避走行制御部80から、回頭性向上、或いは安定性向上
の制御信号が入力されるようになっている。そして、前
後駆動力配分制御部60に回頭性向上の制御信号が入力
されると、演算した目標ヨーレートγt(絶対値)に1
より大きい係数が乗じられて目標ヨーレートγt(絶対
値)が通常よりも大きく補正され、クラッチトルクが減
少補正されて前後の駆動力配分が後輪偏重になり、回頭
性が向上するように補正される。逆に、前後駆動力配分
制御部60に安定性向上の制御信号が入力されると、演
算した目標ヨーレートγt(絶対値)に1より小さい係
数が乗じられて目標ヨーレートγt(絶対値)が通常よ
りも小さく補正され、クラッチトルクが増加補正されて
前後の駆動力配分が等配分方向になり、安定性が向上す
るように補正される。
【0058】また、左右駆動力配分制御部65は、例え
ば、車速V、ハンドル角θH、横加速度Gyを基に車両
左右間の接地荷重に応じたクラッチトルクを演算し、こ
のクラッチトルクをハンドル角θHと車速Vとから演算
した目標ヨーレートγtと実ヨーレートγとの偏差で補
正して、この最終的なクラッチトルクを発生させるた
め、第1のデフコントロールクラッチ24a或いは第2
のデフコントロールクラッチ24bを作動させて左右輪
間の動力配分制御を実行する。
【0059】左右駆動力配分制御部65におけるヨーレ
ート偏差Δγによる補正も、車両のオーバーステア傾
向、或いはアンダーステア傾向を防止するため、旋回時
に発生が予想される目標ヨーレートγtと実ヨーレート
γの偏差に応じて、クラッチトルクを追加、或いは減少
補正するものである。
【0060】例えば、旋回時に、目標ヨーレートγt
(絶対値)が大きく実ヨーレートγ(絶対値)が小さい
ことが予想され、車両がアンダーステア傾向になること
が予想される場合には、旋回外側車輪の駆動力配分が大
きくなるように補正して旋回性を向上させる。
【0061】これとは逆に、旋回時、目標ヨーレートγ
t(絶対値)が小さく実ヨーレートγ(絶対値)が大き
いことが予想され、車両がオーバーステア傾向になるこ
とが予想される場合には、旋回外側車輪に対する駆動力
配分の増加を抑制し、安定性を向上するように補正す
る。
【0062】また、左右駆動力配分制御部65は、回避
走行制御部80から、回頭性向上、或いは安定性向上の
制御信号が入力されるようになっている。そして、左右
駆動力配分制御部65に回頭性向上の制御信号が入力さ
れると、演算した目標ヨーレートγt(絶対値)に1よ
り大きい係数が乗じられて目標ヨーレートγt(絶対
値)が通常よりも大きく補正され、旋回外側車輪の駆動
力配分が大きくなるように補正されて回頭性が向上され
る。逆に、左右駆動力配分制御部65に安定性向上の制
御信号が入力されると、演算した目標ヨーレートγt
(絶対値)に1より小さい係数が乗じられて目標ヨーレ
ートγt(絶対値)が通常よりも小さく補正され、旋回
外側車輪に対する駆動力配分の増加が抑制されて安定性
が向上される。
【0063】後輪操舵制御部70は、例えば、車速V、
ハンドル角θf、ヨーレートγを用い予め所定の制御則
に基づいて目標とする後輪舵角δr'を算出し、現在の後
輪舵角δrと比較して必要な後輪操舵量を設定し、この
後輪操舵量に対応する信号を後輪操舵駆動部71に出力
し、後輪操舵モータ33を駆動させるようになってい
る。そして、回避走行制御部80からの制御信号に応
じ、所定に、前輪舵角とヨーレートに対する後輪舵角の
同相操舵量を大きく設定する補正が行われるようになっ
ている。
【0064】後輪操舵制御部70で行われる制御をさら
に詳述すると、この後輪操舵制御部70に設定されてい
る制御則は、例えば本発明の実施の形態では周知の「ハ
ンドル角逆相+ヨーレート同相制御則」を基本制御則と
するもので、以下の(1)式で与えられる。 δr'=−kδ0・f1・(θH/N)+kγ0・f2・γ …(1) ここで、kδ0はハンドル角感応ゲイン、kγ0はヨー
レート感応ゲイン、Nはステアリングギヤ比である。
【0065】ヨーレート感応ゲインkγ0は、ヨーレー
トγを減少させるように後輪の操舵量を定める係数にな
っている。また、ハンドル角感応ゲインkδ0は、操舵
回頭性を与えるように後輪の操舵量を定める係数になっ
ている。
【0066】すなわち、ヨーレート感応ゲインkγ0は
ヨーレートγに対して同相に後輪を操舵するよう与えら
れており、ヨーレート感応ゲインkγ0が大きいほど車
両は旋回せずに斜めに進む傾向が強くなり、ヨーレート
γの発生を防ぐことができる。換言すれば回頭性が減少
し、安定性が向上した車両特性になる。このようにヨー
レート感応ゲインkγ0は、発生したヨーレートγに対
してどのくらい後輪に対して操舵量を与えてやれば、ヨ
ーレートγの発生を防ぐことができるかの係数とみなす
ことができる。
【0067】しかしながら、ヨーレート感応ゲインkγ
0だけでは、旋回することのできない車両となってしま
う。これを防止するためハンドル角感応ゲインkδ0が
設定される。すなわちハンドル角θHに対して後輪を逆
相に操舵させることで車両の回頭性を向上させるのであ
る。ハンドル角θHに対してハンドル角感応ゲインkδ
0の項の方が大きくなるよう設定することで車両は旋回
する。但し、ステアリングをニュートラルの状態に戻す
ことで、制御則はヨーレート感応ゲインkγ0の項だけ
となるため、旋回終了後はヨーレートγを無くす方向
(車両のふらつきを無くす方向)に後輪が操舵される。
【0068】また、ハンドル角感応ゲインkδ0は、前
輪と後輪のコーナリングパワーに基づき算出されるた
め、車速が一定値以上ではハンドル角感応ゲインkδ0
の値は変化しない。但し、車速が0に近い状態では、後
輪の据え切りを防止するため、ハンドル角感応ゲインk
δ0は小さい値に設定されている。
【0069】上述のように設定されているハンドル角感
応ゲインkδ0とヨーレート感応ゲインkγ0に対し、
本発明の実施の形態では、回避走行制御部80からの制
御信号の入力により、ハンドル角感応ゲインkδ0につ
いては後輪舵角補正値f1を乗じることで補正すること
が可能なように、ヨーレート感応ゲインkγ0について
は後輪舵角補正値f2を乗じることで補正することが可
能なようになっている。
【0070】すなわち、ハンドル角感応ゲインkδ0に
ついては、回頭性を向上するには、1より大きな後輪舵
角補正値f1を乗じることで、その絶対値が大きくなる
ように補正され、ハンドル角θHに対して通常より後輪
が逆相に操舵されるようにしている。
【0071】これとは逆に、ハンドル角感応ゲインkδ
0について安定性を向上するには、1より小さな後輪舵
角補正値f1を乗じることで、その絶対値が小さくなる
ように補正され、ハンドル角θHに対して通常より後輪
が逆相に操舵されることを減少させて車両の回頭性が向
上されることを抑制するように補正するようになってい
る。
【0072】また、ヨーレート感応ゲインkγ0につい
ては、回頭性を向上するには、1より小さな後輪舵角補
正値f2を乗じることで、通常より小さくなるように補
正され、ヨーレートγに対して後輪は同相に小さく補正
される。
【0073】これとは逆に、ヨーレート感応ゲインkγ
0について安定性を向上するには、1より大きな後輪舵
角補正値f2を乗じることで、通常より大きくなるよう
に補正され、ヨーレートγに対して後輪は同相に大きく
されて車両の回頭性が向上されることを抑制するように
補正する。
【0074】尚、車両によってはハンドル角感応ゲイン
kδ0の補正とヨーレート感応ゲインkγ0の補正の一
方のみを行うようにしても効果が得られることはいうま
でもない。
【0075】制動力制御部75は、例えば、車速V、ハ
ンドル角θHから求めた目標ヨーレートγtと実際のヨ
ーレートγとから、制動させる車輪を決定して演算した
制動力を加え、車両に最適なヨーモーメントを発生させ
ることを基本とする。具体的には、目標ヨーレートγt
(絶対値)が大きく実ヨーレートγ(絶対値)が小さ
く、車両がアンダーステア傾向の場合は、旋回方向内側
後輪の制動を実行させて車両の回頭性を向上させる。こ
れとは逆に、目標ヨーレートγt(絶対値)が小さく、
実ヨーレートγ(絶対値)が大きく、車両がオーバース
テア傾向の場合は、旋回方向外側前輪の制動を実行させ
て車両の安定性を向上させる。
【0076】また、制動力制御部75には、回避走行制
御部80から、回頭性向上、或いは安定性向上の制御信
号が入力されるようになっている。そして、制動力制御
部75に回頭性向上の制御信号が入力されると、演算し
た目標ヨーレートγt(絶対値)に1より大きい係数が
乗じられて目標ヨーレートγt(絶対値)が通常よりも
大きく補正される。逆に、制動力制御部75に安定性向
上の制御信号が入力されると、演算した目標ヨーレート
γt(絶対値)に1より小さい係数が乗じられて目標ヨ
ーレートγt(絶対値)が通常よりも小さく補正され
る。
【0077】次に、回避走行制御部80について説明す
る。回避走行制御部80には、車速V、ハンドル角θ
H、ヨーレートγ、前後加速度Gxの自車両1の各走行
情報が入力されると共に、前方道路情報認識部52から
障害物(先行車)情報(障害物(先行車)との距離L
s、障害物(先行車)の速度Vs、障害物(先行車)の
減速度αs等)、前方道路状態(雪情報等)、前方道路
情報認識部52の良好さの判断結果等が入力される。そ
して、これら障害物情報と自車両情報と演算により推定
される路面情報とに基づき自車両1の制動操作のみで自
車両1が障害物を回避可能か否か判定し、制動操作のみ
で障害物を回避できない場合、ハンドル操作と車両挙動
に応じて回避走行モードに移行して、各車両挙動の制御
部60,65,70,75に制御特性を回頭性向上、或
いは安定性向上に制御特性を変更させる信号を出力させ
るようになっている。また、回避走行モード中では、ハ
ンドル操作と車両挙動に応じて回避走行モードでの制御
特性変更の信号を可変制御するようになっている。この
際、回避走行モードの回頭性向上を行う場合には、前方
道路情報認識部52からの情報として得られる路面状態
が雪状態で滑りやすい状態、或いは、前方道路情報認識
部52で得られる情報が良好ではない場合、そして後述
の如く推定する路面摩擦係数が予め設定する値(例えば
0.3)以下の場合の何れかの条件が成立する場合に
は、この回頭性向上は実行しない。
【0078】回避走行制御部80は、図2に示すよう
に、路面摩擦係数推定部81、路面勾配推定部82、必
要減速距離演算部83、必要減速距離補正部84、目標
ヨーレート演算部85、ヨーレート偏差演算部86、制
御変更設定部88及び警報駆動部89とから主要に構成
されている。
【0079】路面摩擦係数推定部81では、車速V、ハ
ンドル角θH、実ヨーレートγが入力され、前述の如
く、車両の横運動の運動方程式に基づき、前後輪のコー
ナリングパワーを非線形域に拡張して推定し、高μ路で
の前後輪の等価コーナリングパワーに対する推定した前
後輪のコーナリングパワーの比を基に路面状況に応じ
て、更には受信装置90からの情報に応じ路面摩擦係数
μを推定する。そして、この推定した路面摩擦係数μ
は、必要減速距離演算部83と制御変更設定部88に出
力される。
【0080】路面勾配推定部82は、車速Vと前後加速
度Gxとが入力され、車速Vの設定時間毎の変化率(m/
s)を演算し、この車速変化率(m/s)と前後加速度
Gxを用いて次の(2)式により路面勾配SL(%)を
演算する。重力加速度をg(m/s)とし、路面勾配の
登り方向を(+)として、 路面勾配SL=(前後加速度Gx−車速変化率/g)・100 …(2)
【0081】尚、以下の(3)式に示すように、エンジ
ン出力トルク(N−m),トルクコンバータのトルク比
(オートマチックトランスミッション車の場合),トラ
ンスミッションギヤ比,ファイナルギヤ比,タイヤ半径
(m),走行抵抗(N),車両質量(kg),車速変化率
(m/s),重力加速度をg(m/s)により路面勾配S
Lを演算しても良い。 路面勾配SL=tan(sin−1((((エンジン出力トルク・トルクコンバータの トルク比・トランスミッションギヤ比・ファイナルギヤ比/タイ ヤ半径)−走行抵抗)/車両質量−車速変化率)/g))・10 0) ≒((((エンジン出力トルク・トルクコンバータのトルク比 ・トランスミッションギヤ比・ファイナルギヤ比/タイヤ半径) −走行抵抗)/車両質量−車速変化率)/g))・100 …(3)
【0082】このように、回避走行制御部80では、路
面摩擦係数推定部81で路面摩擦係数μが、路面勾配推
定部82で路面勾配SLが推定されるようになってお
り、路面摩擦係数推定部81と路面勾配推定部82は走
行する路面情報を推定する路面情報推定手段として設け
られている。
【0083】必要減速距離演算部83は、車速V、障害
物(先行車)速度Vs、障害物(先行車)減速度αs
(m/s)が入力されると共に、路面摩擦係数推定部8
1から路面摩擦係数μが、路面勾配推定部82から路面
勾配SLが入力されて、自車両1と障害物(先行車)の
相対的な運動を考慮して、自車両1の制動のみで、障害
物(先行車)を回避することのできる最小の距離(必要
減速距離)LGBを演算するものである。必要減速距離L
GBは、以下の(4)式で演算される。 必要減速距離LGB=(1/2)・(V−Vs) /((μ−(SL/100))・g−αs)…(4)
【0084】必要減速距離補正部84は、車速V、障害
物(先行車)速度Vs、障害物(先行車)減速度αsが
入力され、さらに、車速Vから自車両の減速度α(m/s
)を演算して、以下の(5)式に示すように、ドライ
バによる制動操作の遅れを考慮して必要減速距離LGBの
補正を行うようになっている。予め設定しておいたドラ
イバの操作遅れ時間をTtd(s)として、 必要減速距離LGB=LGB+(V−Vs)・Ttd +(1/2)・(αs−α)・Ttd …(5) こうして必要減速距離補正部84にて補正された必要減
速距離LGBは、制御変更設定部88に出力される。
【0085】目標ヨーレート演算部85は、車速V、ハ
ンドル角θHが入力されて、目標ヨーレートγtの演算
を実行する。目標ヨーレートγtの演算は、他の車両挙
動制御部(例えば、前後駆動力配分制御部60、左右駆
動力配分制御部65、制動力制御部75)で実行される
ものと略同様で以下の(6)式により演算される。 目標ヨーレートγt=1/(1+T・S)・γt0 …(6) ここで、Sはラプラス演算子、Tは一次遅れ時定数、γ
t0は目標ヨーレート定常値であり、一次遅れ時定数T
は、以下の(7)式で与えられる。 一次遅れ時定数T=(m・Lf ・V)/(2・L・Kr) …(7) ここで、mは車両質量、Lはホイールベース、Lf は前
軸と重心間の距離、Krはリア等価コーナリングパワー
である。
【0086】また、目標ヨーレート定常値γt0は、以下
の(8)式で与えられる。 目標ヨーレート定常値γt0=Gγδ・(θH/n) …(8) nはステアリングギヤ比、Gγδはヨーレートゲインで
ある。ここで、ヨーレートゲインGγδは、以下の
(9)式で求められる。 ヨーレートゲインGγδ=1/(1+A・V)・(V/L) …(9) Aは車両の諸元で決まるスタビリティファクタであり、
以下の(10)式で演算される。 スタビリティファクタA=−(m/(2・L )) ・(Lf ・Kf−Lr ・Kr)/(Kf・Kr) …(10) (10)式中、Lr は後軸と重心間の距離、Kfはフロ
ント等価コーナリングパワーである。
【0087】ヨーレート偏差演算部86は、ヨーレート
センサ43から実際のヨーレートγと、目標ヨーレート
演算部85から目標ヨーレートγtとが入力され、ヨー
レート偏差Δγを(11)式により演算して制御変更設
定部88に出力するようになっている。 ヨーレート偏差Δγ=γ−γt …(11)
【0088】制御変更設定部88は、ハンドル角θH、
実ヨーレートγ、障害物(先行車)との距離Ls、前方
道路状態(雪情報等)、前方道路情報認識部52の良好
さの判断結果が入力されると共に、路面摩擦係数推定部
81から路面摩擦係数μ、必要減速距離補正部84から
必要減速距離LGB、目標ヨーレート演算部85から目標
ヨーレートγt、ヨーレート偏差演算部86からヨーレ
ート偏差Δγが入力され、回避走行モードに移行するか
否かの判定と、回避走行モードに移行した際の各車両挙
動制御部60,65,70,75に出力する信号(回頭
性を向上する信号(第1のモード)、安定性を向上する
信号(第2のモード)、或いは回避走行モード解除の信
号)を設定して出力するようになっている。ここで特
に、制御変更設定部88は、回避走行モードの第1のモ
ードである回頭性向上を行う場合には、路面状態が雪状
態で滑りやすい状態、前方道路情報認識部52で得られ
る情報が良好ではない場合、路面摩擦係数μが予め設定
する値(例えば0.3)以下の場合の何れかの条件が成
立する場合には、この第1のモードは実行しない。ま
た、回避走行モードに移行した際には、警報駆動部89
に対して信号が出力され、回避走行モードが解除される
まで、警報ランプ55の点灯が行われる。
【0089】すなわち、必要減速距離演算部83、必要
減速距離補正部84と制御変更設定部88で制動回避判
定手段が形成されており、制御変更設定部88は回避制
御手段としての機能も有している。
【0090】次に、自車両1の回避走行制御部80での
回避走行での制御を、図3〜図5の回避走行制御プログ
ラムのフローチャートで説明する。この回避走行制御プ
ログラムは所定時間毎に実行され、まず、ステップ(以
下「S」と略称)101で自車両情報を読み込み、S1
02に進んで前記(6)式により目標ヨーレートγtを
演算する。
【0091】そして、S103に進むと、既に回避走行
モードか否かの判定が行われ、回避走行モードではない
場合はS104に進み、既に回避走行モードの場合には
S120へと進む。
【0092】ここでは先に、回避走行モードではなくS
104へと進む場合について説明する。S104に進む
と障害物情報が読み込まれ、S105に進むと障害物
(先行車も含む)が存在するか否か判定される。
【0093】S105で障害物が存在しないと判定され
るとそのままプログラムを抜ける。一方、障害物が存在
する場合は、S105からS106に進み路面摩擦係数
μを推定し、S107に進んで前記(2)式により路面
勾配SLを推定する。
【0094】その後、S108に進んで前記(4)式に
より必要減速距離LGBを演算し、S109に進んで前記
(5)式により必要減速距離LGBを補正する。
【0095】こうしてS110に進むと、最終的に補正
を加えて演算された必要減速距離LGBと障害物までの距
離Lsとの比較が行われ、この比較の結果、障害物まで
の距離Lsが必要減速距離LGBよりも大きく(Ls>L
GB)、障害物との衝突を自車両1の制動のみで回避可能
と判定できる場合は、そのままプログラムを抜ける。
【0096】一方、S110の判定で、障害物までの距
離Lsが必要減速距離LGB以下(Ls≦LGB)であり、
障害物との衝突を自車両1の制動のみでは回避不可能と
判定した場合は、S111へと進み、その運転状態にお
ける前輪操舵方向をメモりした後、S112に進む。
【0097】そして、S112でハンドル角θHの絶対
値が所定値より大きいか否か、すなわち、既にハンドル
操作が行われているか否かの判定が行われ、ハンドル角
θHの絶対値が所定値より大きく、ハンドル操作が行わ
れてる場合には、S113に進む。
【0098】S113では、目標ヨーレートγtの絶対
値と実ヨーレートγの絶対値の比較が行われて車両挙動
の状態が判定され、目標ヨーレートγtの絶対値が実ヨ
ーレートγの絶対値以下(|γt|≦|γ|)で、車両
の挙動がオーバーステア傾向にあるとみなせるときはS
114に進んで、各車両挙動制御部60,65,70,
75に対して制特性を安定性が向上する方向に変更する
よう信号を出力する。
【0099】具体的には、前後駆動力配分制御部60に
対しては、前後駆動力配分制御部60で用いる演算した
目標ヨーレートγt(絶対値)に1より小さい係数が乗
じられて目標ヨーレートγt(絶対値)が通常よりも小
さく補正され、クラッチトルクが増加補正されて前後の
駆動力配分が等配分方向になり、安定性が向上するよう
に補正される。
【0100】また、左右駆動力配分制御部65に対して
は、左右駆動力配分制御部65で用いる演算した目標ヨ
ーレートγt(絶対値)に1より小さい係数が乗じられ
て目標ヨーレートγt(絶対値)が通常よりも小さく補
正され、旋回外側車輪に対する駆動力配分の増加が抑制
されて安定性が向上される。
【0101】更に、後輪操舵制御部70に対しては、ハ
ンドル角感応ゲインkδ0について、1より小さな後輪
舵角補正値f1を乗じることで、その絶対値が小さくな
るように補正して、ハンドル角θHに対して通常より後
輪が逆相に操舵されることを抑制して安定性を向上す
る。また、ヨーレート感応ゲインkγ0については、1
より大きな後輪舵角補正値f2を乗じることで、通常よ
り大きくなるように補正して、ヨーレートγに対して後
輪を同相方向に大きくなるように補正して安定性を向上
する。
【0102】また、制動力制御部75に対しては、制動
力制御部75で用いる演算した目標ヨーレートγt(絶
対値)に1より小さい係数が乗じられて目標ヨーレート
γt(絶対値)が通常よりも小さく補正されて安定性が
向上される。
【0103】一方、上記S113での目標ヨーレートγ
tの絶対値と実ヨーレートγの絶対値の比較の結果、目
標ヨーレートγtの絶対値が実ヨーレートγの絶対値よ
り大きく(|γt|>|γ|)、車両の挙動がアンダー
ステア傾向にあるとみなせるときはS115〜S117
にかけての、各車両挙動制御部60,65,70,75
に対して制御特性を回頭性が向上する方向に変更する条
件の判定手順に進む。
【0104】また、S112で、ハンドル角θHの絶対
値が所定値以下の場合は、今後障害物回避のためにハン
ドル操作が行われ、旋回されることが予想されるためS
115〜S117にかけての、各車両挙動制御部60,
65,70,75に対して制御特性を回頭性が向上する
方向に変更する条件の判定手順に進む。
【0105】そして、S112或いはs113からS1
15に進むと、まず、路面摩擦係数μ(路面μ)が予め
設定しておいた値(0.3)以下か否か判定され、路面
μが設定値以下ならば、この条件で回頭性を向上する方
向に制御すると、車両のヨーレートが必要以上に増大し
スピン傾向になり、却って車両を不安定にしてしまう虞
があるため、回頭性を向上する回避走行モードは行わ
ず、そのままプログラムを抜ける。
【0106】また、S115で路面μが設定値より大き
ければS116に進み、路面は雪状態等の滑りやすい状
態か否か判定する。この結果、路面が滑りやすい状態な
らば、この条件で回頭性を向上する方向に制御すると、
車両のヨーレートが必要以上に増大しスピン傾向にな
り、却って車両を不安定にしてしまう虞があるため、回
頭性を向上する回避走行モードは行わず、そのままプロ
グラムを抜ける。
【0107】また、S116で路面が滑りやすい状態で
はない場合はS117に進み、前方道路情報認識部52
で得られる情報(前方道路情報)が良好か否か判定す
る。この判定の結果、前方道路情報が良好ではないと判
定した場合は、障害物認識情報に誤りがあった場合、必
要以上に回避走行制御が車両挙動制御に介入してしま
い、車両を却って不安定なものにしてしまう可能性があ
るため、回頭性を向上する回避走行モードは行わず、そ
のままプログラムを抜ける。尚、これら3つの判定手順
S115、S116、S117の順番は、この例以外の
順番でも良いことは云うまでもない。
【0108】そして、S117で、前方道路情報が良好
と判定した場合は、S118に進んで、各車両挙動制御
部60,65,70,75に対して制御特性を回頭性が
向上する方向に変更するよう信号を出力する。
【0109】具体的には、前後駆動力配分制御部60に
対しては、前後駆動力配分制御部60で用いる演算した
目標ヨーレートγt(絶対値)に1より大きい係数が乗
じられて目標ヨーレートγt(絶対値)が通常よりも大
きく補正され、クラッチトルクが減少補正されて前後の
駆動力配分が後輪偏重になり、回頭性が向上するように
補正される。
【0110】また、左右駆動力配分制御部65に対して
は、左右駆動力配分制御部65で用いる演算した目標ヨ
ーレートγt(絶対値)に1より大きい係数が乗じられ
て目標ヨーレートγt(絶対値)が通常よりも大きく補
正され、旋回外側車輪の駆動力配分が大きくなるように
補正されて回頭性が向上される。
【0111】更に、後輪操舵制御部70に対しては、ハ
ンドル角感応ゲインkδ0について、1より大きな後輪
舵角補正値f1を乗じることで、その絶対値が大きくな
るように補正して、ハンドル角θHに対して通常より後
輪が逆相に操舵されるようにして回頭性を向上させる。
また、ヨーレート感応ゲインkγ0については、1より
小さな後輪舵角補正値f2を乗じることで、通常より小
さくなるように補正して、ヨーレートγに対して後輪を
同相に小さく補正して回頭性を向上する。
【0112】また、制動力制御部75に対しては、制動
力制御部75で用いる演算した目標ヨーレートγt(絶
対値)に1より大きい係数が乗じられて目標ヨーレート
γt(絶対値)が通常よりも大きく補正されて回頭性が
向上される。
【0113】こうして、S114或いはS118の処理
の後はS119へと進み、回避走行モードであることを
ドライバに報知するため、警報駆動部89に信号出力し
て警報ランプ55を点灯させてプログラムを抜ける。
【0114】次に、上記S103で回避走行モード中と
判定されてS120に進んだ場合について説明する。S
103からS120へと進むと、現在の回避走行モード
が各車両挙動制御部60,65,70,75に対して制
御特性を回頭性が向上する方向に変更させるものか否か
判定する。
【0115】S120で回頭性向上方向に変更中と判定
した場合、S121に進み前輪の操舵方向が反転、すな
わち、前記S111でメモリした前輪操舵方向に対して
今回の前輪操舵方向が反転しているかの判定が行われ、
反転していなければそのままプログラムを抜け、反転し
ていればS122に進んで、回頭性向上方向に変更中の
各車両挙動制御部60,65,70,75に対する制御
特性の変更出力を、安定性が向上する方向に変更するよ
うに信号を出力する。
【0116】一方、S120で安定性向上方向に変更中
と判定した場合は、S123へと進む。S123ではハ
ンドル角θHの絶対値が所定値以下の状態が所定時間以
上継続したか否か判定し、継続していない場合はS12
4に進みヨーレート偏差Δγを前記(11)式により演
算して、S125に進んでヨーレート偏差Δγの絶対値
が所定値以下の状態が所定時間以上継続したか否か判定
し、継続していない場合はそのままプログラムを抜け
る。
【0117】S123、或いはS125のどちらか一方
でも条件を満たす場合、すなわち、ハンドル角θHの絶
対値が所定値以下の状態が所定時間以上継続、或いはヨ
ーレート偏差Δγの絶対値が所定値以下の状態が所定時
間以上継続した場合はS126へと進み、各車両挙動制
御部60,65,70,75に対して制御特性を変更す
る指示を解除(回避走行モードの解除)して、S127
に進み警報駆動部89への信号出力を解除してプログラ
ムを抜ける。
【0118】このように本発明の実施の形態では、自車
両1に対する障害物を事前に判断し、路面摩擦係数、路
面勾配の路面情報、自車両1と障害物の相対的な運動を
考慮して自車両1が制動操作のみで障害物を回避できる
か否か正確に判定するようになっている。そして、自車
両1が自車両1の制動操作のみで障害物を回避できない
場合に、そのときのハンドル操作とアンダーステア、或
いはオーバーステア状態の車両挙動に応じて各車両挙動
制御部60,65,70,75を回避走行モードに移行
して作動させるため、ドライバは安全かつ容易に障害物
の回避運転を実行することができる。また、一般に回避
走行では、前半は回頭性が重視され、障害物を通過して
ハンドルを反転してからの後半は安定性が重視される
が、回避走行モード中では、ハンドル操作と車両挙動の
変化からこのことを正確に判定し必要な制御を各車両挙
動制御部60,65,70,75に実行させるようにな
っている。特に、回避走行モードに移行し、回頭性を向
上する方向に制御する際には、路面μが小さい場合や走
行路前方の道路状態が滑りやすい場合は、車両のヨーレ
ートが必要以上に増大しスピン傾向になり、却って車両
を不安定にしてしまう虞があるため、回頭性を向上する
回避走行モードを行わないようになっており、走行環境
に応じた信頼性の高い制御が行えるようになっている。
また、前方道路情報が良好ではないと判定した場合も、
障害物認識情報に誤りがあった場合、必要以上に回頭性
を向上する回避走行制御が車両挙動制御に介入してしま
い、車両を却って不安定なものにしてしまう可能性があ
るため、回頭性を向上する回避走行モードは行わないよ
うになっており、制御の信頼性を向上するようになって
いる。更に、回避走行モードの解除も、ドライバのハン
ドル操作による回避走行終了を検出し、或いは、障害物
回避後の車両挙動の安定を検出して正確なタイミングで
実行されるようになっている。
【0119】尚、本発明の実施の形態では、前方障害物
の検出に、一対のCCDカメラ51R,51Lによって
捉えた画像を処理して行う例を示したが、これに限定す
ることなく、例えば超音波レーダ、レーザ等の装置を用
いて障害物を検出するようにしても良い。
【0120】また、本発明の実施の形態では、自車両1
は、車両挙動の制御部として前後駆動力配分制御部6
0、左右駆動力配分制御部65、後輪操舵制御部70及
び制動力制御部75の4つを備え、回避走行制御部80
からこれら4つに信号出力するようになっているが、こ
れらの車両挙動制御部60,65,70,75のうち少
なくとも1つを回避走行制御部80で制御するものであ
れば本発明が適用できることはいうまでもない。
【0121】更に、本発明の実施の形態では、車両挙動
制御部60,65,70,75でのパラメータ(目標ヨ
ーレート、或いはハンドル角感応ゲイン、ヨーレート感
応ゲイン)の絶対値の増加補正には、1より大きい定数
を乗じることで行い、減少補正には1より小さい定数を
乗じることで行うようになっているが、補正できればこ
れに限るものではない。
【0122】また、本発明の実施の形態では、前後駆動
力配分制御部60は、制御中に目標ヨーレートを補正パ
ラメータとして用いるものであるが、この制御方法に限
るものではない。この場合、回頭性を向上するには後輪
偏重の駆動力配分となるように、安定性を向上するには
前後等配分の駆動力配分になるようにトランスファクラ
ッチ21の締結トルクを設定できれば良い。
【0123】更に、本発明の実施の形態では、左右駆動
力配分制御部65でも制御中に目標ヨーレートを補正パ
ラメータとして用いるものであるが、この制御方法に限
るものではない。この場合、回頭性を向上するにあた
り、車両が基準となるステア特性よりも更に強いアンダ
ーステア傾向と判断される時、目標とする左右駆動力配
分比を外輪がより強く駆動する方向、或いは内輪がより
強く制動する方向に補正する。また、安定性を向上させ
る場合には、車両が基準となるステア特性よりも更に弱
いアンダーステア傾向或いはオーバーステア傾向と判断
される時、目標とする左右駆動力配分比を内輪がより強
く駆動する方向、或いは、外輪がより強く制動する方向
に補正する。
【0124】また、本発明の実施の形態では、後輪操舵
制御部70での制御則は「ハンドル角逆相+ヨーレート
同相制御則」を基本制御則とするものを例に説明した
が、これに限るものではなく、例えば周知の「ヨーレー
トフィードバック方式の制御則」や「前輪舵角比例方式
の制御則」等であっても良い。そして、他の制御則であ
っても、回頭性を向上する場合は、前輪に対する後輪の
転舵角を同相方向への操舵量を減らすことも含め、逆相
方向に補正する。また、安定性を向上させる場合には、
前輪に対する後輪の転舵角を逆相操舵量を減らすことも
含め、同相方向に補正する。
【0125】更に、制動力制御部75での制動力制御
は、本発明の実施の形態のものに限るものではない。そ
して、回頭性を向上するには、車両が基準となるステア
特性よりも更に強いアンダーステア傾向と判断される
時、目標ヨーモーメントを大きくして付加する制動力を
増加補正する。また、安定性を向上させる場合には、車
両が基準となるステア特性よりも更に弱いアンダーステ
ア傾向或いはオーバーステア傾向と判断される時、目標
ヨーモーメントを大きくして付加する制動力を増加補正
するようにしても良い。
【0126】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、
車両に対する障害物を事前に判断し、様々な走行情報を
加味して回避走行全般に亘り、各車両挙動の制御装置が
適切に動作して、障害物の回避走行を適切に行うことが
でき、特に路面が滑りやすくなっているような場合等で
も、これを適切に判断し制御に反映して信頼性の高い制
御を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両における車両運動制御装置全体の概略説明
【図2】回避走行制御部を説明する機能ブロック図
【図3】回避走行制御プログラムのフローチャート
【図4】図3の続きのフローチャート
【図5】図3の続きのフローチャート
【符号の説明】 1 自車両 42 ハンドル角センサ(自車両情報検出手段) 43 ヨーレートセンサ(自車両情報検出手段) 49 前後加速度センサ(自車両情報検出手段) 51R,51L CCDカメラ(前方道路情報認識手
段) 52 前方道路情報認識部(前方道路情報認識手段) 60 前後駆動力配分制御部(車両挙動制御手段) 65 左右駆動力配分制御部(車両挙動制御手段) 70 後輪操舵制御部(車両挙動制御手段) 75 制動力制御部(車両挙動制御手段) 80 回避走行制御部(路面情報推定手段、制動回避
判定手段、回避制御手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B60K 41/00 B60K 41/00 301G 41/28 41/28 B60R 21/00 624 B60R 21/00 624C 627 627 B60T 7/12 B60T 7/12 C B62D 6/00 ZYW B62D 6/00 ZYW // B62D 101:00 101:00 103:00 103:00 111:00 111:00 113:00 113:00 137:00 137:00 Fターム(参考) 3D032 CC12 DA03 DA24 DA25 DA29 DA33 EA06 EB16 FF01 FF08 GG01 3D041 AA40 AA47 AA48 AA49 AA57 AA59 AA65 AA66 AB01 AC06 AC26 AC28 AC30 AD02 AD17 AD18 AD41 AD46 AD47 AE16 AE17 AE41 AE43 AF09 3D043 EA02 EA23 EA25 EA38 EA42 EA43 EA44 EB03 EB06 EB09 EB13 EE01 EE02 EE03 EE07 EE08 EE09 EE12 EE18 EF02 EF03 EF06 EF09 EF13 EF18 EF19 EF26 EF27 EF30 3D046 BB18 BB21 BB23 GG04 GG10 HH05 HH07 HH08 HH17 HH20 HH21 HH23 HH25 HH26 HH36

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 走行路前方の道路状態を認識して少なく
    とも障害物情報を検出する前方道路情報認識手段と、 自車両の走行状態を検出する自車両情報検出手段と、 走行する路面情報を推定する路面情報推定手段と、 上記自車両の回頭性能を可変して車両挙動を制御する車
    両挙動制御手段と、 上記障害物情報と上記自車両情報と上記路面情報とに基
    づき上記自車両の制動操作のみで該自車両が上記障害物
    を回避可能か否か判定する制動回避判定手段と、 上記自車両が制動操作のみで上記障害物を回避できない
    場合にハンドル操作と車両挙動に応じて上記車両挙動制
    御手段を回避走行モードに移行させると共に、該回避走
    行モードでは、ハンドル操作と車両挙動に応じて、上記
    車両挙動制御手段を通常より回頭性を向上させる方向に
    制御変更させる第1のモードと、この第1のモードより
    車両姿勢を強く維持させる方向に制御変更させる第2の
    モードとを選択して実行する回避制御手段と、 を備えた車両運動制御装置において、 上記回避制御手段は、上記前方道路情報認識手段による
    認識状態が悪いと判断した場合と、上記走行路前方の道
    路状態が滑りやすいと判断した場合と、路面摩擦係数が
    小さい場合の少なくとも何れかの場合は、上記第1のモ
    ードの実行を禁止することを特徴とする車両運動制御装
    置。
  2. 【請求項2】 上記回避制御手段による上記回避走行モ
    ードは、上記車両挙動制御手段を上記第1のモードの場
    合にハンドル操舵方向が反転した際は、上記車両挙動制
    御手段を上記第2のモードに切り換えることを特徴とす
    る請求項1記載の車両運動制御装置。
  3. 【請求項3】 上記回避制御手段による上記回避走行モ
    ードは、ハンドル操舵が小さい状態が所定時間以上継続
    した場合と、目標とするヨーレートと実際のヨーレート
    の偏差が予め定めた設定範囲内である状態が所定時間以
    上継続した場合の少なくともどちらかの場合に上記回避
    走行モードを解除することを特徴とする請求項1又は請
    求項2に記載の車両運動制御装置。
  4. 【請求項4】 上記車両挙動制御手段は、車両の走行状
    態を基に制動力を所定の選択した車輪に加えて制御する
    制動力制御部と、車両の走行状態に応じて後輪を所定に
    操舵制御する後輪操舵制御部と、車両の走行状態に応じ
    て前後輪間の駆動力配分を可変制御する前後駆動力配分
    制御部と、車両の走行状態に応じて左右輪間の駆動力配
    分を可変制御する左右駆動力配分制御部の少なくとも一
    つであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れ
    かに記載の車両運動制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114179905A (zh) * 2021-12-29 2022-03-15 吉林大学 双模式后轮主动转向系统控制方法

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