JP2002291865A - 生体用骨充填セメント練和物及びその製造方法 - Google Patents

生体用骨充填セメント練和物及びその製造方法

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JP2002291865A
JP2002291865A JP2001094041A JP2001094041A JP2002291865A JP 2002291865 A JP2002291865 A JP 2002291865A JP 2001094041 A JP2001094041 A JP 2001094041A JP 2001094041 A JP2001094041 A JP 2001094041A JP 2002291865 A JP2002291865 A JP 2002291865A
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Masahiro Hirano
昌弘 平野
Hiroyasu Takeuchi
啓泰 竹内
Nobuyuki Asaoka
伸之 浅岡
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体用補綴物として有用な高粘度の生体用セ
メント練和物の提供、及び高い粉液比での練和が安価、
簡便にでき、かつ雑菌や不純物の混入する恐れの少ない
生体用セメント練和物の製造方法の提供。 【解決手段】 リン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を
含む粉体組成物と硬化用液体とを混合した被練和物を入
れた容器に公転回転と自転回転とを同時に加えることに
より、粉体と液体を練和することを特徴とする生体用セ
メント練和物の製造方法;比表面積が0.3〜2.0m
2/g、あるいは2.0〜4.0m2/gであるリン酸カ
ルシウム粉体とピロリン酸塩を含む粉体組成物と、硬化
用液体とを、粉体と液体の重量混合比(P/L)=3.
0〜5.0、あるいは1.5〜3.5で混合し、上記方
法で処理して得られたことを特徴とする生体用セメント
練和物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、口腔外科を含む医
科用に用いる生体用セメント練和物及びその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来より生体用セメントとして利用可能
なリン酸カルシウムセメントは知られている(特開昭6
4−37445号公報、特開平4−328185号公報
等)。これらは中性付近のpHで硬化するため生体刺激
がなく、骨の欠損部の補填や、骨折部の固定・修復など
に使用できる。しかし、生体用として安全に使用するた
めには使用部位によっては高強度が要求される場合があ
り、また、これらは通常37℃では10分程度で硬化す
るが、使用目的によっては更に短時間で硬化することが
要求される場合があって、用途が限定されていた。ま
た、通常の粉体と液体の練和は乳鉢と乳棒を用いて行う
ため、作業が煩雑で雑菌や不純物が混入する恐れがあっ
た。
【0003】なお、一般にセメント充填物の強度を高め
るためには、練和時の粉体と液体の混合比P/L(粉体
/液体重量混合比、以下、P/L又は粉液比と記す)を
高くすれば良いが、高い粉液比で練和しようとすると、
練和物の流動性が低下するため、均一な練和物を得るこ
とが難しい。このため、粉体粒子を球状にして流動性を
増し、練和時の粉液比を高める試みがなされている(例
えば、特開平1−176252号公報、特開平5−31
9891号公報等)。
【0004】しかし、粉体を球状にするためには、例え
ば「ナラ・ハイブリダイザ」((株)奈良機械製作所)
等の高速気流中衝撃装置に粉体を導入して、衝撃室中で
機械的に衝撃を加える方法、あるいは、例えばアルゴン
・水素混合ガス雰囲気下で、高周波プラズマ等で発生し
たプラズマアーク内に粉体を導入し、粉体の表面の一部
を溶融状態とし、次いでプラズマアーク中から飛散する
前記粉末の一部を冷却固定して球状化する方法等を用い
ねばならず、これらの方法は極めて煩雑でコストのかか
る方法であって現実的ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的
は、硬化時間が短く、補填後極めて高い強度になるた
め、生体用補綴物として有用な、高粘度のリン酸カルシ
ウム粉体とピロリン酸塩とを含む生体用骨充填セメント
練和物(以下、生体用セメント練和物という)を提供す
ることである。また、別の目的は、高い粉液比の粉と液
の練和が安価、簡便にでき、かつ雑菌や不純物の混入す
る恐れの少ない高粘度生体用セメント練和物の製造方法
を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明は、リン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を
含む粉体組成物と硬化用液体とを混合した被練和物を入
れた容器に公転回転と自転回転とを同時に加えることに
より、粉体と液体を練和することを特徴とする生体用骨
充填セメント練和物の製造方法を提供する。また本発明
は、リン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を含む粉体組
成物と硬化用液体とを混合した被練和物を入れた容器
に、該容器を20〜50度傾斜させた状態で公転回転と
自転回転とを同時に加えることにより、粉体と液体を練
和することを特徴とする生体用骨充填セメント練和物の
製造方法を提供する。さらに本発明は、リン酸カルシウ
ム粉体とピロリン酸塩を含む粉体組成物と硬化用液体と
を混合した被練和物を入れた容器に、該容器を20〜5
0度傾斜させた状態で1500rpm以上の公転回転と
300rpm以上の自転回転とを同時に加えることによ
り、粉体と液体を練和することを特徴とする生体用骨充
填セメント練和物の製造方法を提供する。本発明の製造
方法において、リン酸カルシウム粉体は、α型第3リン
酸カルシウムと第4リン酸カルシウムのいずれか一方か
らなる粉体、あるいはα型第3リン酸カルシウムと第4
リン酸カルシウムの少なくとも一方を必須成分として含
み、第2リン酸カルシウムと第1リン酸カルシウムを任
意成分として含む粉体であることが好ましい。ピロリン
酸塩は、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムの
少なくとも一方が好適に使用される。また、粉体組成物
は、リン酸マグネシウムと硫酸マグネシウムの少なくと
も一方をさらに含有させることができる。また本発明の
製造方法において、硬化用液体は、コハク酸塩、コンド
ロイチン硫酸塩及び亜硫酸水素塩からなる群から選択さ
れる少なくとも1種を含む水溶液として良い。また本発
明の製造方法において、前記容器は、外容器と該外容器
内に収容される内容器とからなる二重容器であること、
さらに外容器と内容器に、外容器内に収容した内容器の
相対位置を変化させないロック機構が設けられているこ
とが好ましい。さらにまた、内容器を、練和物吐出用の
第1の開口と、該内容器内の練和物を第1の開口から押
し出す押し出し部材が挿入される第2の開口とを有する
容器本体と、該容器本体の第1,第2の開口を脱着自在
に密封するカバー部材とを含む構成として良い。これら
の二重容器を用いた製造方法において、外容器内部に収
容される内容器とその内部の被練和物とを滅菌した状態
で練和を行うことが好ましい。
【0007】また本発明は、比表面積が0.3〜2.0
2/gであるリン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を
含む粉体組成物と硬化用液体を、粉体組成物と液体の重
量混合比(P/L)=3.0〜5.0で混合し、本発明
の製造方法で処理して得られたことを特徴とする生体用
セメント練和物を提供する。さらに本発明は、比表面積
が2.0〜4.0m2/gであるリン酸カルシウム粉体
とピロリン酸塩を含む粉体組成物と硬化用液体を、粉体
組成物と液体の重量混合比(P/L)=1.5〜3.5
で混合し、本発明の製造方法で処理して得られたことを
特徴とする生体用セメント練和物を提供する。本発明の
生体用セメント練和物において、稠度が18〜22mm
であることが好ましい。また本発明の生体用セメント練
和物において、気泡量が練和物体積の10%以下である
ことが好ましい。さらに本発明は、本発明の生体用セメ
ント練和物を固体化させて得られ、60MPa以上の強
度を有することを特徴とする生体用骨充填セメント硬化
体を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で使用される粉体組成物
中、必須に配合されるリン酸カルシウム粉体としては、
α型第3リン酸カルシウムと第4リン酸カルシウムのい
ずれか一方からなる粉体、あるいはα型第3リン酸カル
シウムと第4リン酸カルシウムの少なくとも一方を必須
成分として含み、第2リン酸カルシウムと第1リン酸カ
ルシウムを任意成分として含む粉体が好適に使用され
る。必須成分であるα型第3リン酸カルシウムと第4リ
ン酸カルシウムは、水硬性があり、これらの少なくとも
一方を含む粉体組成物に硬化用液体を加えて練和した生
体用セメント練和物を硬化させる働きを持つ。任意成分
の第2リン酸カルシウムと第1リン酸カルシウムは、生
体用セメント練和物の硬化促進、早期強度の向上、生体
適合性の改善などの働きを持つ。
【0009】本発明で使用される粉体組成物中、必須に
配合されるピロリン酸塩は、ピロリン酸のアルカリ金属
塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などからなる
群から選択される少なくとも1種を用いることができ、
好ましくはピロリン酸ナトリウムとピロリン酸カリウム
の少なくとも一方が用いられる。ピロリン酸塩は、リン
酸カルシウム粉体の保存性を改善するために配合され
る。リン酸カルシウム粉体単独では、粉体を室温で長期
間放置しておくと粉体の水硬性が劣化し、硬化用液体と
練和して得た練和物の硬化時間が長くなったり、硬化物
の強度が減少してしまう。これを防ぐため、リン酸カル
シウム粉体は−10℃程度に冷蔵保存している。リン酸
カルシウム粉体にピロリン酸ナトリウムのようなピロリ
ン酸塩を添加することにより、粉体組成物を冷蔵保存す
ることなく、室温保存した場合でも、高強度の硬化物が
得られるようになる。すなわち、リン酸カルシウム粉体
とピロリン酸塩を含む粉体組成物は、室温保存が可能な
ものとなる。さらにピロリン酸塩の添加により、より高
い強度を有する生体用セメント硬化物が得られる効果が
ある。
【0010】本発明で使用される粉体組成物には、前述
したリン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩の他に、マグ
ネシウム含有化合物を含めることができる。このマグネ
シウム含有化合物としては、マグネシウムのリン酸塩、
硫酸塩、炭酸塩、有機酸塩などのマグネシウム塩、カル
シウムとの復塩、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウ
ムなどの化合物からなる群から選択される少なくとも1
種とすることができ、特に好ましくはリン酸マグネシウ
ムと硫酸マグネシウムの少なくとも一方を使用すること
ができる。このマグネシウム含有化合物は、前述したピ
ロリン酸塩と同じく、リン酸カルシウム粉体の保存性を
改善し、室温保存が可能な粉体組成物を得ることがで
き、且つより高い強度を有する生体用セメント硬化物が
得られるなどの効果を奏する。
【0011】本発明で使用される粉体組成物としては、
例えば、α型第3リン酸カルシウムと第4リン酸カルシ
ウムの少なくとも一方を99.97〜50重量%、好ま
しくは95〜60重量%、最も好ましくは90〜70重
量%、第2リン酸カルシウムを0〜49.97重量%、
好ましくは5〜20重量%、第1リン酸カルシウムを0
〜49.97重量%、好ましくは3〜15重量%、を含
むリン酸カルシウム粉体100重量部に、ピロリン酸塩
0.03〜0.5重量%を混合したものなどが挙げられ
る。さらに任意成分として第2リン酸カルシウムと第3
リン酸カルシウムの水和物を2〜10重量%、好ましく
は3〜7重量%を含むものを用いても良い。これらの中
から、生体適合性や使用目的等を考慮してリン酸カルシ
ウム粉体とピロリン酸塩を含む粉体組成物の組成比、焼
成温度、平均粒径等を適宜選択して使用することができ
るが、それらの内容に応じて比表面積はある程度の範囲
に決定される。本発明では、特に比表面積が0.3〜
2.0m2/g、あるいは2.0〜4.0m2/gのリン
酸カルシウム粉体が好適に使用される。
【0012】比表面積は、リン酸カルシウム粉体の粒
度、反応性、流動性等と関連性の高い重要なパラメータ
であり、比表面積が0.3m2/g未満であると、反応
性が乏しいため硬化時間が延長し、生体用セメントとし
て好ましくない。一方、比表面積が4.0m2/gを越
えると、一般的に粒度が小さく反応性も高くなり、その
結果練和ペーストの流動性が低下するので、粉体と液体
の重量混合比P/Lを1.5〜5.0の範囲にまで高く
することができない。
【0013】ピロリン酸塩をリン酸カルシウム粉体と混
合し、粉体組成物とする場合、所定量のリン酸カルシウ
ム粉体とピロリン酸塩の粉末とを混合し、乾式混合、湿
式混合、粉砕混合などの適宜な混合法で均一に混合して
粉体組成物とする。あるいは、ピロリン酸塩の水溶液を
リン酸カルシウム粉体にスプレーし、乾燥させ、リン酸
カルシウム粉体表面にピロリン酸塩をコートした粉体組
成物を製造することもできる。
【0014】本発明で使用される硬化用液体は、水、あ
るいはリン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を含む粉体
組成物と混合、練和する際の練和容易性、練和物の安定
性、pH調整、硬化速度などを改善する目的で水溶性の
無機塩類及び/又は有機塩類を含む水溶液、あるいはそ
れ以外の成分、例えば保存料、殺菌剤などの医薬上許容
される添加物を含む水溶液などを使用することができ
る。水溶性の無機塩類及び/又は有機塩類としては、例
えば、コハク酸二ナトリウム6水和物のようなコハク酸
塩、コンドロイチン硫酸ナトリウムのようなコンドロイ
チン硫酸塩及び亜硫酸水素ナトリウムのような亜硫酸水
素塩を挙げることができる。これらの塩類を配合する場
合、配合量は、コハク酸二ナトリウム6水和物が0〜3
0重量%、好ましくは5〜25重量%、コンドロイチン
硫酸ナトリウムが0〜10重量%、好ましくは3〜7重
量%、亜硫酸水素ナトリウムが0〜1重量%、好ましく
は0.2〜0.5重量%とする。硬化用液体は、バイア
ル等の密封可能で適当な容量の容器に充填し、高圧蒸気
滅菌、放射線滅菌などの方法を用いて滅菌処理するか、
あるいは、滅菌ろ過器を用いて液体をろ過除菌し、滅菌
済み容器内に無菌充填し、密封する方法などによって無
菌状態で製造することが望ましい。
【0015】このような粉体と液体の練和は、乳鉢と乳
棒を使用して行うことが通常であるが、かかる手作業で
比表面積が2.0〜4.0m2/gの粉体と液体を練和
する場合、均一に練和できる粉体と液体の混合割合はP
/Lで高々2.0程度である。また、乳鉢と乳棒による
練和は、当然のことであるが開放系であるため、雑菌や
不純物が混入する可能性が高い。
【0016】本発明者らは鋭意研究の結果、粉体と液体
を滅菌済みの容器に充填した後、容器ごと公転回転を加
えながら、同時に容器を自転させることにより、全く用
手的な作業を伴わずに、その回転の遠心力のみで粉体と
液体が容易に練和できることを見出した。しかも、練和
に要する時間はわずか5〜40秒程度でありながら、均
一な生体用セメント練和物を無菌的に得ることができ
た。
【0017】更に、粉液比が高いことに加え、回転によ
り発生する練和物と容器壁面との摩擦熱も手伝って、硬
化時間が非常に短縮されること、また、回転中に練和物
内部の気泡が抜ける効果により練和物の流動性が極めて
向上することを見出した。
【0018】かかる公転回転と自転回転を与える方法と
しては、例えば「スピンクル」(商品名:モリタ東京製
作所製)や「あわとり練太郎」(商品名:シンキー社
製)を使用して行うことができる。すなわち、夫々の製
品に付属する練和容器をエチレンオキサイドガス等で滅
菌した後、容器内にリン酸カルシウム粉体とピロリン酸
塩を含む粉体組成物と硬化用液体を粉液比1.5〜3.
5、あるいは3.0〜5.0になるように充填し、5〜
40秒程度練和すれば、容易に目的とする均一なペース
ト状又は粘土状の高粘度生体用セメント練和物を得るこ
とが可能である。これらの装置での自転、公転運動によ
る練和、気泡除去については特開平11−309358
号、特開2000−271465号に記載されている
が、この中には歯科用の印象材料、パウダーの混練に使
用されること、その際スラリー中の気泡が公転速度10
00rpm、自転速度500rpm〜1000rpmの
条件での脱気泡性が記載されてはいるが、これによる硬
化時間の短縮及び強度増大の事例は報告されていない。
また併せて、対象物が生体用骨充填用セメントであるこ
と、二重容器を用いて無菌状態で練和を行うこと、高い
粉液比で練和を行うことなどに関しては記載されていな
い。
【0019】生体用セメント練和物を無菌的に提供する
という観点から、練和用容器としては、外容器と該外容
器内に収容される内容器とからなる二重容器が望まし
い。すなわち、粉体と液体(これらが予め滅菌済みであ
ることは言うまでもない)をまず滅菌済みの内容器に充
填する。その後、蓋を閉めて内部が汚染されないように
した後、内容器全体を滅菌済みの外容器にセットし、外
容器の蓋を閉める。その後、外容器を上記の「スピンク
ル」や「あわとり練太郎」にセットし、公転回転と自転
回転を加えて粉体と液体を練和する。装置全体を滅菌す
ることはできないので、この際、外容器の外装は無菌状
態ではない。しかし、練和終了後、外容器ごと装置から
取り外し、外容器の蓋を開け、内容器を無菌的に取り出
せば、内容器は内部も外装面も無菌状態が保たれたまま
である。従って、手術に際して術者自身がその中に内包
された練和物を取り出す際にも、無菌状態を保ったまま
容易に取り出せる。なお、外容器と内容器のいずれか
に、外容器内に収容した内容器の回転を防止するロック
機構を設ける必要がある。
【0020】図1は、本発明方法を実施するのに好適な
二重容器の一例を示すものである。この二重容器1は、
外容器本体2aとその上部開口を脱着可能に覆う外蓋2
bとからなる外容器2と、該外容器2内に収容可能な内
容器本体3aとその上部開口を脱着可能に覆うツマミ4
付きの内蓋3bとからなる内容器3とから構成されてい
る。内容器3は、内蓋3bを取り付けた状態で外容器本
体2a内に収容され、外蓋2bを取り付けた状態で、内
容器3のツマミ4の上端が外蓋2b内面に近接するか又
は接触するようになっている。外容器本体2aの内方側
底面には、十文字の凹部が設けられ、一方、内容器本体
3aの外方側底面には、その十文字の凹部に嵌入される
十文字の突起5(ロック機構)が設けられ、外容器2内
に内容器3を収容し、突起5を凹部に嵌入することによ
って、外容器2内で内容器3が回転することなく保持で
きるようになっている。この二重容器1は、滅菌処理し
た内容器本体3aに、滅菌済みのリン酸カルシウム粉体
とピロリン酸塩を含む粉体組成物と硬化用液体とを所定
の粉液比となるように入れ、内蓋3bを閉じ、その内容
器3をやはり滅菌処理した外容器2内に収容し、突起5
を凹部に嵌入した後、外蓋2bを閉め、その外容器2を
前述した練和装置に装着し、公転回転と自転回転とを同
時に加えて練和する。練和終了後、内容器3を取り出
し、内蓋3bを開けて内部の生体用セメント練和物を使
用することにより、無菌的に該生体用セメント練和物を
使用することができる。
【0021】図2は、本発明方法を実施するのに好適な
二重容器の他の例を示すものである。この二重容器11
は、外容器本体12aとその上部開口を脱着可能に覆う
外蓋12bとからなる外容器12と、練和物吐出用の第
1の開口と該内容器内の練和物を第1の開口から押し出
すための押し出し部材が挿入される第2の開口とを有す
る略円筒状の内容器本体13aと、内容器本体13aの
第1,第2の開口を脱着自在に密封する2つのカバー部
材13bとからなる内容器13とから構成されている。
外容器本体12aの内方側底面中央部には、十文字の凹
部が設けられ、一方、内容器13の下方のカバー部材1
3bには、その十文字の凹部に嵌入される十文字の突起
14(ロック機構)が設けられ、外容器12内に内容器
13を収容し、突起14を凹部に嵌入することによっ
て、外容器12内で内容器13が回転することなく保持
できるようになっている。内容器本体13aの中央に
は、内容器13を注入器として使用する場合のホルダー
となるフランジ15が形成されている。この二重容器1
1は、滅菌処理し、上方側のカバー部材13bを開けて
内容器本体13aに滅菌済みのリン酸カルシウム粉体と
ピロリン酸塩を含む粉体組成物と硬化用液体とを所定の
粉液比となるように入れ、上方側のカバー部材13bを
閉じ、その内容器3をやはり滅菌処理した外容器12内
に収容し、下方のカバー部材13bに設けられた突起1
4を外容器本体12aに形成した凹部に嵌入した後、外
蓋12bを閉め、その外容器12を前述した練和装置に
装着し、公転回転と自転回転とを同時に加えて練和処理
する。練和終了後、外容器12から内容器13を取り出
し、一方のカバー部材13bを外し、注射針が一体に取
り付けられた注入用具、あるいは市販の注射針を装着可
能なコネクタを取付け、それに注射針を取り付るととも
に、他方のカバー部材13bを取り外し、注射器用のピ
ストン部材(押出部材)を挿入し、セメント練和物注入
器として使用することができる。
【0022】前述した粉体と液体を滅菌済みの容器に充
填した後、容器に公転回転と自転回転を同時に加え、粉
体と液体とからなる被練和物を練和することにより、そ
の公転によって容器内の被練和物に遠心力が働き、その
遠心力で被練和物が容器の内壁に押圧され、その押圧力
で被練和物中の気泡が外部に放出(脱泡)されるととも
に、容器の自転により容器内の被練和物が撹拌され、強
力且つ効率的な練和が可能となり、粉液比が高い高粘度
の生体用セメント練和物を製造することができる。
【0023】容器に公転回転と自転回転を同時に加え、
粉体と液体とからなる被練和物を練和する際に、容器を
20〜50度に傾斜させた状態で練和を行うことが望ま
しい。容器を傾斜させることにより、遠心力による押圧
力の一部が被練和物に作用し、容器の自転により生じる
作用力と一緒になって被練和物の撹拌、脱泡が促進され
る。傾斜角度が20度より小さいと、被練和物の撹拌、
脱泡の促進効果が十分に得られなくなる。一方、傾斜角
度が50度より大きいと、被練和物の撹拌、脱泡の促進
効果が十分得られなくなるとともに、内容物がこぼれ易
くなるので好ましくない。
【0024】粉体と液体とからなる被練和物を練和する
際に、容器に加える回転は、公転回転数が1500rp
m以上であり、自転回転数が300rpm以上とするこ
とが好ましい。公転回転数及び自転回転数がそれぞれ前
記値より低いと、被練和物の撹拌及び脱泡作用が十分で
なくなり、均一な練和物が得られなかったり、均一な練
和物を得るために必要な練和時間が長くなる不具合があ
る。
【0025】本発明の生体用セメント練和物は、比表面
積が2.0〜4.0m2/gの粉体を用いる場合には、
粉体と液体の混合割合が重量混合比(P/L)で1.5
〜3.5の範囲、比表面積が0.3〜2.0m2/gの
粉体を用いる場合には、粉体と液体の混合割合が重量混
合比(P/L)で3.0〜5.0の範囲で練和されるこ
とを特徴とする。それぞれのP/L範囲の下限値未満で
あれば、本発明の練和方法を用いることなく練和できる
ので、無菌状態を維持できることを除くとそれほどメリ
ットがなく、それぞれのP/L範囲の上限値を超える
と、本発明の練和方法によっても均一な練和物を得るこ
とが難しい。なお、P/L=2.0〜3.0(表面積
2.0〜4.0m2/gの粉体使用時)、あるいはP/
L=3.5〜4.5(表面積0.3〜2.0m2/gの
粉体使用時)であれば、用手的な練和では達成できない
粉液比であることに加え、得られる生体用セメント練和
物は内径2.0mmの針を通して吐出できる程度の流動
性を有するので、本法のメリットを最大限に享受するこ
とができる。
【0026】さらに、本発明の生体用セメント練和物
は、稠度が18〜22mmであることが好ましい。練和
物の稠度は、下記の方法によって測定する。即ち、比表
面積が2.0〜4.0m2/gの粉体の場合はP/L=
2.0で、比表面積が0.3〜2.0m2/gの粉体の
場合はP/L=3.5で練和したセメントペースト1g
をガラス板上に置き、上から静かに120gの自重を有
するガラス板を重ねる。その際、広がったセメントペー
ストの最短径と最長径の長さを測定し、その平均値をm
m単位で求める。稠度が22mmより大きいと、高強度
のセメント硬化物を得ることができなくなり、稠度が1
8mmより小さいと、練和が困難となって均一な練和物
を得ることが困難になるとともに、流動性がなくなり、
取り扱いが困難になる。
【0027】また、本発明の生体用セメント練和物は、
気泡量が練和物体積の10%以下であることが好まし
い。この気泡率は、一定体積の練和物又は硬化物中に含
まれる気泡の体積%で表される。気泡量が練和物体積の
10%より大きいと、練和物の強度低下を招き、好まし
くない。本発明方法によって練和した場合、この気泡率
が極めて小さい生体用セメント練和物を得ることができ
る。
【0028】本発明によって提供される生体用リン酸カ
ルシウム骨充填セメント硬化体は、前述して得られる生
体用セメント練和物を、骨の欠損部の補填や、骨折部の
固定・修復などに補填後固体化されたもの、あるいは必
要とされる形状、大きさのキャビティーが形成された型
内に注入し、固体化せしめたものである。このセメント
硬化体は、60MPa以上の極めて高い強度を有するこ
とを特徴とする。以下、実施例によって本発明の効果を
明確化するが、以下の実施例は単なる例示に過ぎず、本
発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0029】
【実施例】[比表面積が2.0〜4.0m2/gの粉体
組成物に関する実施例1,2] ・合成例1:α型第3リン酸カルシウム 水酸化カルシウム((株)宇部マテリアルズ製)3モル
を水10リットルに懸濁させ、これにリン酸(ラサ工業
社製)2モルを水で希釈して40wt%水溶液としたも
のを徐々に撹拌滴下し、滴下終了後、室温にて1日放置
し、その後乾燥機(ヤマト科学社製、DV61型)にて
110℃、24時間乾燥させた。この凝集塊を1250
℃、3時間焼成した(モトヤマ社製、スーパーバーン2
035型)。最後に擂潰機((株)石川工場社製、かく
はん擂潰機たて型20号)で粉砕し88μmのふるいを
通過させて平均粒径4.5μmのα型第3リン酸カルシ
ウムを得た。
【0030】・合成例2:第4リン酸カルシウム 水酸化カルシウムを4モル、リン酸を2モル用い、合成
例1と同様に乾燥させ、凝集塊を得た。この凝集塊を9
00℃で3時間仮焼成し、取り出して均一に粉砕した
後、更に1400℃で3時間焼成した。最後に擂潰機
((株)石川工場社製、かくはん擂潰機たて型20号)
で粉砕し88μmのふるいを通過させて、平均粒径6.
0μmの第4リン酸カルシウムを得た。
【0031】・実施例1 合成例1で合成したα型第3リン酸カルシウム95%と
市販の第2リン酸カルシウム(和光純薬工業社製、特
級)5%とを混合して、リン酸カルシウム粉体を得た。
比表面積を湯浅アイオニクス社製モノソーブMS-13
型にて測定したところ、2.38m2/gであった。こ
のリン酸カルシウム粉体100重量部に対し、ピロリン
酸ナトリウム(純正化学社製)粉末0.2重量部を加
え、擂潰機を用いて混合し、粉体組成物とした。一方、
硬化用液体として、コハク酸二ナトリウム6水和物(純
正化学社製、特級)を20wt%、コンドロイチン硫酸
ナトリウム(生化学工業社製、注射用グレードND品)
を5wt%溶解した水溶液を作製した。
【0032】次に、粉体組成物10gに対して、液体を
粉液比(P/L)1.5,2.0,2.5,3.0,
3.5,4.0の割合になるように混合し、「あわとり
練太郎」(商品名:シンキー社製、仕様 公転回転20
00rpm、自転回転400rpm)の専用容器に入
れ、同機で15秒練和した。得られた生体用セメント練
和物についての性状試験、吐出試験、硬化時間の結果を
表1に示す。
【0033】・比較例1 比較のために、実施例1と同じ粉体と液体を市販の薬用
乳鉢に入れ、乳棒にて用手練和した。均一なペーストを
得るには1分を要した。表1に性状試験、吐出試験、硬
化時間の結果を実施例1と比較して示す。
【0034】
【表1】 性状試験は完全に均一なペーストまたは粘土状になる場
合は○、完全に均一とは言えないものの、ほぼ均一と認
められる場合は△、均一なものが得られない場合は×と
した。吐出試験は内径2mm、長さ40mmの針から吐
出できる場合は○、出来ない場合は×とした。
【0035】・実施例2 (粉体の準備)合成例2の第4リン酸カルシウム70.
0wt%、市販の第2リン酸カルシウム(和光純薬工業
社製)を30.0wt%混合してリン酸カルシウム粉体
を得た。このリン酸カルシウム粉体100重量部に、ピ
ロリン酸ナトリウム(純正化学社製)0.4重量部を加
えて混合し、得られた粉体組成物の比表面積を実施例1
と同様にして測定したところ、3.48m2/gであっ
た。
【0036】(滅菌)次に、粉体組成物にγ線を25k
Gy照射して滅菌し、実施例1の液体も孔径0.22μ
mの滅菌用フィルタ(日本ポール社製)を通してろ過滅
菌した。一方、図1に示す形状の二重容器を用意し、外
容器(特別仕様、栃木精工社製、ポリカーボネート製)
を121℃、20分の条件で高圧蒸気滅菌するととも
に、内容器(特別仕様、栃木精工社製、ポリプロピレン
製)を日東理科工業社製のエチレンオキサイドガス滅菌
器(CL−30−B型)で滅菌した。
【0037】(練和)その後、粉体組成物10gと、こ
れに対して液体をP/L=2.0,2.5,3.0にな
るような割合で内容器に充填し、更に内容器を外容器に
セットした。次に、外容器を「スピンクル」(モリタ東
京製作所社製、仕様 公転回転2500rpm、自転回
転500rpm)にセットし、同機で10秒練和した。
【0038】(試験)得られた生体用セメント練和物の
硬化時間と強度試験の結果を表2に示す。また、該練和
物を日本薬局方一般試験法の「無菌試験法」に則り無菌
試験を実施したところ、無菌であることが確認された。
【0039】・比較例2 比較のために、実施例2と同じ粉体と液体を、粉液比
2.0の割合で市販の薬用乳鉢に入れ、乳棒にて1分間
用手練和した。表2に硬化時間及び圧縮強度の結果を比
較して示す。
【0040】
【表2】 (*)比較例2と実施例2の粉液比2.0の圧縮強度の
結果は統計学的に有意差あり(t検定、危険率5%)。
【0041】圧縮強度及び硬化時間は、JIS T66
02「歯科用リン酸亜鉛セメント」に準拠して測定し
た。ただし、圧縮強度については、検体(7mmφ×1
4mmL)を表3の疑似体液中に7日間浸漬した後、取
り出して濡れたまま測定した。加重速度は0.5mm/
分とし、インストロン社製4455型試験器を使用し
た。
【0042】
【表3】
【0043】表1及び表2に示した結果より、本発明の
製造方法に従って製造した実施例1,2の生体用セメン
ト練和物は、用手法(乳鉢使用)によって製造した比較
例1,2の練和物に比べて、短時間で製造でき、高い粉
液比で粉体組成物と液体とを練和することが可能であ
り、得られた生体用セメント練和物は、比較例3,4と
比較して硬化時間が短縮されることが判る。さらに、実
施例1では、粉液比1.5〜3.0の範囲で針から吐出
可能な生体用セメント練和物が製造できた。また、表2
の結果から、本発明の製造方法に従って製造した実施例
2の生体用セメント練和物は、用手法による比較例2の
練和物に比べ、硬化時に高い圧縮強度が得られることが
判る。さらに、実施例2の如く、二重容器を用いて無菌
的に練和物を製造することにより、無菌状態の生体用セ
メント練和物を製造することができた。また、実施例
1,2で製造した粉体組成物を、室温で1年間保管し、
硬化物の硬化時間と圧縮強度を測定した結果、硬化時間
は保管後でも変化はなく、圧縮強度の経時的劣化はわず
かであった。
【0044】前記実施例1,2において、粉液比、練和
条件(公転回転数、自転回転数)を変えて種々の生体用
セメント練和物を製造し、性状試験、吐出試験、硬化時
間及び圧縮強度を測定し、用手法(乳鉢)により製造し
た比較例1,2の練和物と比較した。結果を表4〜表7
にまとめて記す。
【0045】
【表4】 性状試験は完全に均一なペーストまたは粘土状になる場
合は○、完全に均一とは言えないものの、ほぼ均一と認
められる場合は△、均一なものが得られない場合は×と
した。吐出試験は内径2mm、長さ40mmの針から吐
出できる場合は○、出来ない場合は×とした。
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】 性状試験は完全に均一なペーストまたは粘土状になる場
合は○、完全に均一とは言えないものの、ほぼ均一と認
められる場合は△、均一なものが得られない場合は×と
した。吐出試験は内径2mm、長さ40mmの針から吐
出できる場合は○、出来ない場合は×とした。
【0048】
【表7】
【0049】[比表面積が0.3〜2.0m2/gの粉
体組成物に関する実施例3,4] ・合成例3:α型第3リン酸カルシウム 水酸化カルシウム((株)宇部マテリアルズ製)3モル
を水10リットルに懸濁させ、これにリン酸(ラサ工業
社製)2モルを水で希釈して40wt%水溶液としたも
のを徐々に撹拌滴下し、滴下終了後、室温にて1日放置
し、その後乾燥機(ヤマト科学社製、DV61型)にて
110℃、24時間乾燥させた。この凝集塊を1400
℃、3時間焼成した(モトヤマ社製、スーパーバーン2
035型)。最後に擂潰機((株)石川工場社製、かく
はん擂潰機たて型20号)で粉砕し88μmのふるいを
通過させて平均粒径6.50μmのα型第3リン酸カル
シウムを得た。
【0050】・合成例4:第4リン酸カルシウム 水酸化カルシウムを4モル、リン酸を2モル用い、合成
例1と同様に乾燥させ、凝集塊を得た。この凝集塊を9
00℃で3時間仮焼成し、取り出して均一に粉砕した
後、更に1400℃で3時間焼成した。最後に擂潰機
((株)石川工場社製、かくはん擂潰機たて型20号)
で粉砕し88μmのふるいを通過させて、平均粒径6.
0μmの第4リン酸カルシウムを得た。
【0051】・実施例3 合成例3で合成したα型第3リン酸カルシウム95%と
市販の第2リン酸カルシウム(和光純薬工業社製、特
級)5%とを混合して、リン酸カルシウム粉体を得た。
このリン酸カルシウム粉体100重量部に、ピロリン酸
ナトリウム(純正化学社製)を0.2重量部加え、擂潰
機で混合して粉体組成物とした。得られた粉体組成物の
比表面積を湯浅アイオニクス社製モノソーブMS-13
型にて測定したところ、0.82m2/gであった。一
方、硬化用液体として、コハク酸二ナトリウム6水和物
(純正化学社製、特級)を20wt%、コンドロイチン
硫酸ナトリウム(生化学工業社製、注射用グレードND
品)を5wt%溶解した水溶液を作製した。
【0052】次に、粉体組成物10gに対して、液体を
粉液比(P/L)3.0,3.5,4.0,4.5,
5.0,5.5の割合になるように混合し、「あわとり
練太郎」(商品名:シンキー社製、仕様 公転回転20
00rpm、自転回転400rpm)の専用容器に入
れ、同機で15秒練和した。得られた生体用セメント練
和物についての性状試験、吐出試験、硬化時間の結果を
表8に示す。
【0053】・比較例3 比較のために、実施例3と同じ粉体と液体を市販の薬用
乳鉢に入れ、乳棒にて用手練和した。均一なペーストを
得るには1分を要した。表8に性状試験、吐出試験、硬
化時間の結果を実施例3と比較して示す。
【0054】
【表8】 性状試験は完全に均一なペーストまたは粘土状になる場
合は○、完全に均一とは言えないものの、ほぼ均一と認
められる場合は△、均一なものが得られない場合は×と
した。吐出試験は内径2mm、長さ40mmの針から吐
出できる場合は○、出来ない場合は×とした。
【0055】・実施例4 (粉体の準備)合成例1のα型第3リン酸カルシウム7
5.0wt%、合成例2の第4リン酸カルシウム20.
0wt%、市販の第2リン酸カルシウム(和光純薬工業
社製)を5.0wt%混合してリン酸カルシウム粉体を
得た。このリン酸カルシウム粉体100重量部に、ピロ
リン酸ナトリウム(純正化学社製)を0.2重量部加
え、擂潰機で混合して粉体組成物とした。得られた粉体
組成物の比表面積を実施例1と同様にして測定したとこ
ろ、1.27m2/gであった。
【0056】(滅菌)次に、粉体組成物にγ線を25k
Gy照射して滅菌し、実施例3の液体も孔径0.22μ
mの滅菌用フィルタ(日本ポール社製)を通してろ過滅
菌した。一方、図1に示す形状の二重容器を用意し、外
容器(特別仕様、栃木精工社製、ポリカーボネート製)
を121℃、20分の条件で高圧蒸気滅菌するととも
に、内容器(特別仕様、栃木精工社製、ポリプロピレン
製)を日東理科工業社製のエチレンオキサイドガス滅菌
器(CL−30−B型)で滅菌した。
【0057】(練和)その後、粉体組成物10gと、こ
れに対して液体をP/L(重量比)=3.0,3.5,
4.0になるような割合で内容器に充填し、更に内容器
を外容器にセットした。次に、外容器を「スピンクル」
(モリタ東京製作所社製、仕様 公転回転2500rp
m、自転回転500rpm)にセットし、同機で10秒
練和した。
【0058】(試験)得られた生体用セメント練和物の
硬化時間と強度試験の結果を表9に示す。また、該生体
用セメント練和物を日本薬局方一般試験法の「無菌試験
法」に則り無菌試験を実施したところ、無菌であること
が確認された。
【0059】・比較例4 比較のために、実施例4と同じ粉体と液体を、粉液比
2.0の割合で市販の薬用乳鉢に入れ、乳棒にて1分間
用手練和した。表9に硬化時間及び圧縮強度の結果を比
較して示す。
【0060】
【表9】 (*)比較例4と実施例4の粉液比3.0の圧縮強度の
結果は統計学的に有意差あり(t検定、危険率5%)。
【0061】表8及び表9に示した結果より、本発明の
製造方法に従って製造した実施例3,4の生体用セメン
ト練和物は、用手法(乳鉢使用)によって製造した比較
例3,4の練和物に比べて、短時間で製造でき、高い粉
液比で粉体組成物と液体とを練和することが可能であ
り、得られた生体用セメント練和物は、比較例3,4と
比較して硬化時間が短縮されることが判る。さらに、実
施例3では、粉液比3.0〜4.5の範囲で針から吐出
可能な生体用セメント練和物が製造できた。また、表9
の結果から、本発明の製造方法に従って製造した実施例
4の生体用セメント練和物は、用手法による比較例4の
練和物に比べ、硬化時に高い圧縮強度が得られることが
判る。さらに、実施例4の如く、二重容器を用いて無菌
的に練和物を製造することにより、無菌状態の生体用セ
メント練和物を製造することができた。また、実施例
3,4で製造した粉体組成物を、室温で1年間保管し、
硬化物の硬化時間と圧縮強度を測定した結果、硬化時間
は保管後でも変化はなく、圧縮強度の経時的劣化はわず
かであった。
【0062】前記実施例3,4において、粉液比、練和
条件(公転回転数、自転回転数)を変えて種々の生体用
セメント練和物を製造し、性状試験、吐出試験、硬化時
間及び圧縮強度を測定し、用手法(乳鉢)により製造し
た比較例3,4の練和物と比較した。結果を表10〜表
13にまとめて記す。
【0063】
【表10】 性状試験は完全に均一なペーストまたは粘土状になる場
合は○、完全に均一とは言えないものの、ほぼ均一と認
められる場合は△、均一なものが得られない場合は×と
した。吐出試験は内径2mm、長さ40mmの針から吐
出できる場合は○、出来ない場合は×とした。
【0064】
【表11】
【0065】
【表12】 性状試験は完全に均一なペーストまたは粘土状になる場
合は○、完全に均一とは言えないものの、ほぼ均一と認
められる場合は△、均一なものが得られない場合は×と
した。吐出試験は内径2mm、長さ40mmの針から吐
出できる場合は○、出来ない場合は×とした。
【0066】
【表13】
【0067】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、リ
ン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を含む粉体組成物と
硬化用液体とを容器に入れ、容器に公転回転と自転回転
を同時に加えて練和することによって、従来の用手的な
練和方法では均一な練和が困難であった高い粉液比で粉
体と液体を均一に練和することができ、高い粉液比の均
一な高粘度セメント練和物を安価、簡便かつ短時間で製
造することができる。また、本発明によれば、雑菌や不
純物を混入させることなしに生体用セメント練和物を製
造できるので、無菌状態の練和物を簡単、確実に提供す
ることができる。また、本発明によれば、同じ粉液比で
練和物を製造した場合でも、従来の用手的な練和方法で
製造した練和物よりも硬化時の強度が高く、硬化時間の
短い練和物を製造することができる。さらに本発明によ
れば、従来法では製造困難であった生体用補綴物として
有用な高粘度の生体用セメント練和物を製造することが
でき、生体用セメントの利用範囲を広げることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法において好適に使用される
練和用二重容器の一例を示す正面断面図である。
【図2】 本発明の製造方法において好適に使用される
練和用二重容器の他の例を示す正面断面図である。
【符号の説明】
1 二重容器 2 外容器 3 内容器 5 突起(ロック機構) 11 二重容器 12 外容器 13 内容器 13a 内容器本体 13b カバー部材 14 突起(ロック機構)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅岡 伸之 埼玉県秩父郡横瀬町大字横瀬2270番地 三 菱マテリアル株式会社医用材料センター内 Fターム(参考) 4C081 AB02 AB06 BB08 BC02 CF011 CF24 EA01 4C089 AA02 BA16 BA18 BC05 BE14

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を
    含む粉体組成物と硬化用液体とを混合した被練和物を入
    れた容器に公転回転と自転回転とを同時に加えることに
    より、粉体と液体を練和することを特徴とする生体用骨
    充填セメント練和物の製造方法。
  2. 【請求項2】 リン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を
    含む粉体組成物と硬化用液体とを混合した被練和物を入
    れた容器に、該容器を20〜50度傾斜させた状態で公
    転回転と自転回転とを同時に加えることにより、粉体と
    液体を練和することを特徴とする生体用骨充填セメント
    練和物の製造方法。
  3. 【請求項3】 リン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を
    含む粉体組成物と硬化用液体とを混合した被練和物を入
    れた容器に、該容器を20〜50度傾斜させた状態で1
    500rpm以上の公転回転と300rpm以上の自転
    回転とを同時に加えることにより、粉体と液体を練和す
    ることを特徴とする生体用骨充填セメント練和物の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 前記リン酸カルシウム粉体が、α型第3
    リン酸カルシウムと第4リン酸カルシウムのいずれか一
    方からなる粉体、あるいはα型第3リン酸カルシウムと
    第4リン酸カルシウムの少なくとも一方を必須成分とし
    て含み、第2リン酸カルシウムと第1リン酸カルシウム
    を任意成分として含む粉体であることを特徴とする請求
    項1ないし3のいずれか1項に記載の生体用骨充填セメ
    ント練和物の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ピロリン酸塩が、ピロリン酸ナトリ
    ウム、ピロリン酸カリウムの少なくとも一方であること
    を特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の
    生体用骨充填セメント練和物の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記粉体組成物が、リン酸マグネシウム
    と硫酸マグネシウムの少なくとも一方をさらに含有して
    いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項
    に記載の生体用骨充填セメント練和物の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記硬化用液体が、コハク酸塩、コンド
    ロイチン硫酸塩及び亜硫酸水素塩からなる群から選択さ
    れる少なくとも1種を含む水溶液であることを特徴とす
    る請求項1ないし6のいずれか1項に記載の生体用骨充
    填セメント練和物の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記容器が、外容器と該外容器内に収容
    される内容器とからなる二重容器であることを特徴とす
    る請求項1ないし7のいずれか1項に記載の生体用骨充
    填セメント練和物の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記外容器と内容器に、外容器内に収容
    した内容器の相対位置を変化させないロック機構が設け
    られていることを特徴とする請求項8項に記載の生体用
    骨充填セメント練和物の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記内容器が、練和物吐出用の第1の
    開口と、該内容器内の練和物を第1の開口から押し出す
    押出部材が挿入される第2の開口とを有する容器本体
    と、該容器本体の第1,第2の開口を脱着自在に密封す
    るカバー部材とを含むことを特徴とする請求項9に記載
    の生体用骨充填セメント練和物の製造方法。
  11. 【請求項11】 外容器内部と内容器とその内部の被練
    和物とを滅菌した状態で練和を行うことを特徴とする請
    求項8ないし10のいずれか1項に記載の生体用骨充填
    セメント練和物の製造方法。
  12. 【請求項12】 比表面積が0.3〜2.0m2/gで
    あるリン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を含む粉体組
    成物と硬化用液体を、粉体組成物と液体の重量混合比
    (P/L)=3.0〜5.0で混合し、請求項1ないし
    11のいずれか1項に記載の方法で処理して得られたこ
    とを特徴とする生体用骨充填セメント練和物。
  13. 【請求項13】 比表面積が2.0〜4.0m2/gで
    あるリン酸カルシウム粉体とピロリン酸塩を含む粉体組
    成物と硬化用液体を、粉体組成物と液体の重量混合比
    (P/L)=1.5〜3.5で混合し、請求項1ないし
    11のいずれか1項に記載の方法で処理して得られたこ
    とを特徴とする生体用骨充填セメント練和物。
  14. 【請求項14】 稠度が18〜22mmであることを特
    徴とする請求項12または13に記載の生体用リン酸カ
    ルシウム骨充填セメント練和物。
  15. 【請求項15】 気泡量が練和物体積の10%以下であ
    ることを特徴とする請求項12ないし14のいずれか1
    項に記載の生体用骨充填セメント練和物。
  16. 【請求項16】 請求項12ないし15のいずれか1項
    に記載の生体用骨充填セメント練和物を固体化させて得
    られ、60MPa以上の強度を有することを特徴とする
    生体用骨充填セメント硬化体。
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