JP4185254B2 - 練和容器、注入器及び練和装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体用充填物質やスラリーを無菌的に製造可能な練和容器、注入器及び練和装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、生体用セメントとして利用可能なリン酸カルシウムセメントを練和するには、リン酸カルシウム粉末と水などの液体を乳鉢に入れ、乳棒で用手的に練和する方法が知られている(特開昭64−37445号公報、特開平4−328185号公報等)。このようなリン酸カルシウムセメントは、単に水と練和するだけで中性付近のpHで硬化するため、生体刺激がなく、骨の欠損部の補填や、骨折部の固定・修復などに使用できる。しかし、その粉体と液体の練和は通常乳鉢と乳棒で行うため、操作が煩雑であり、また、不純物や雑菌が混入する可能性があった。更に、練和したセメントペーストを体内に注入するためには、ペーストを注射器に移す手間が必要であったため、練和操作と同様、操作が煩雑であり、また、不純物や雑菌が混入する恐れがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、粉体と液体の練和作業を無菌的に、かつ、非用手的に簡便に行うことのできる練和容器を提供することである。また、別な目的は、練和物の入った練和容器をそのまま注入器に転用可能とし、無菌的且つ簡便に練和物を体内に注入することのできる注入器を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、粉体と液体を入れる内容器と、該内容器を脱着自在に収容する外容器とからなる二重容器であり、該内容器を収容した外容器に公転回転と自転回転を同時に加えるか、あるいは振動を加えて該内容器内の粉体と液体を練和する練和容器であって、前記外容器は、外容器本体とこの外容器本体の開口を覆う外蓋とからなるとともに、滅菌可能な材料で構成されており、前記外蓋には、内面側中央部に前記内容器に接して保持する保持突部が設けられており、内容器を外容器本体の内周面から離間した状態で保持し、前記練和容器に、外容器と内容器との相対位置を変化させないロック機構が設けられると共に、前記内容器が、練和物を吐出する第1の開口と押出部材が挿入される第2の開口とを有する内容器本体と、これら第1,第2の開口のそれぞれを脱着自在に封止する第1,第2のカバー部材とを含むことを特徴とする無菌練和用の練和容器を提供する。
この練和装置において、前記ロック機構は、前記外容器の内側底面に形成された凹部と、前記内容器の一方のカバー部材に設けられ、前記凹部に嵌入可能な突起とから構成し得る。
この練和装置において、前記内容器本体の外表面に係止部が設けられるとともに、ロック機構となる突起が形成されたカバー部材に螺着外嵌され、前記係止部に係止することによって該カバー部材が緩んで内容器本体から抜け出す方向に移動するのを防止するストッパーが設けられた構成として良い。
この練和装置において、前記突起が形成されたカバー部材が、内容器本体に螺着嵌合されるとともに、該カバー部材と前記ストッパーとが逆ネジの関係になるように螺着される構造とし得る。
【0005】
また本発明は、前記練和容器の内容器本体と、該内容器本体の第1の開口側に取り付けられる基部と該基部から延出した注入管部とを有する注入部材と、該内容器本体の第2の開口から挿入される押出部材とを含む注入器を提供する。
また本発明は、練和容器の内容器本体と、該内容器本体の第1の開口側に取り付けられる基部と注射針を取り付け可能な取付部を有するルアロックと、該内容器本体の第2の開口から挿入される押出部材とを含む注入器を提供する。
この注入器において、前記ルアロックに取り付けられる注射針をさらに含み得る。
さらに本発明は、前記練和容器と、該練和容器に公転回転と自転回転を同時に加える練和装置本体とを含むことを特徴とする無菌練和物製造用の練和装置を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による練和容器の一形態を示すものである。この練和容器1は、外容器本体3とその上部開口を脱着自在に覆う外蓋4とからなる外容器2と、該外容器2内に脱着自在に収容される内容器11とからなる二重容器構造になっている。
【0007】
図2は、外容器2を示すものである。外容器2の材質は、エチレンオキサイドガス滅菌法、オートクレーブ滅菌法、ガンマ線照射滅菌法、電子線照射滅菌法などの中から選択される滅菌法によって滅菌することが可能であれば特に限定されることなく、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネートなどのプラスチック材料、ステンレス鋼などの金属材料などを使用して作製することができる。好ましくは、内容器11を外部から目視できるように、ポリカーボネートなどの透明硬質プラスチックによって作製される。また、外容器2の形状は、内容器11を収容し、移動不可能に保持できれば特に限定されない。
【0008】
本形態において、外容器本体3は有底円筒状をなしている。外容器本体3の内側底面には、中央から十文字に延びる凹部10が形成されている。また外容器3の外周面下部には、複数の支持体9が周方向に沿って一定間隔毎に設けられている。外容器本体3の上端部には、外蓋4を脱着自在に取り付けるための係合部8が形成されている。
【0009】
外蓋4は、外容器本体3の上部開口に被せ、簡単な操作で着脱できるものが好適に使用される。本形態では、内面側(内容器11と接する側)中央部に、内容器11の上部に接して保持するためのリング状の保持突部5と、外蓋4の周縁垂下部分より径方向内側にリング状の挿入突部6が設けられ、外容器本体3に被せた際に、外容器本体3の上端部が前記周縁垂下部分と挿入突部6の間に挟まれる構造の外蓋4を備えている。この外蓋4の周縁垂下部分には、外容器本体3上端部の係合部8に係合し、外蓋4を簡単に取り外せる程度に保持するための係合突起7が設けられている。これら係合部8と係合突起7による係合構造は、外蓋4を簡単に取り外せる程度に保持する目的を達成できるのであれば特に限定されることなく、例えば係合部8を溝部とし、係合突起7が外蓋4の周縁垂下部分の弾性変形によってその溝部を出入りする構造、あるいは係合部を雌ネジとし、係合突起7を雄ネジとする構造などを採用し得る。
【0010】
内容器11は、図1に示すように、内容器本体12と、該内容器本体12の上方側の開口を脱着自在に塞ぐ上部カバー部材13と、該内容器本体12の下方側の開口を脱着自在に塞ぐ下部カバー部材14とから構成されている。内容器11の材質は、エチレンオキサイドガス滅菌法、オートクレーブ滅菌法、ガンマ線照射滅菌法、電子線照射滅菌法などの中から選択される滅菌法によって滅菌することが可能であれば特に限定されることなく、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネートなどのプラスチック材料、ステンレス鋼などの金属材料などを使用して作製することができる。
【0011】
図3は、内容器本体12を示すものである。内容器本体12は、ほぼ円筒状をなしており、その長手方向中央部には、この内容器本体12を注入器として使用する場合にホルダーとなるフランジ16が径方向外方に向けて鍔状に形成されている。内容器本体12の両端部外周には、上部カバー部材13と下部カバー部材14とをそれぞれ螺着するためのネジ17,18が形成されている。上部カバー部材13は、袋ナットのような形状のものを使用することができる。
【0012】
下部カバー部材14は、図4及び図5に示すように、内容器本体12のネジ18に螺合するネジ19が内周面に形成された袋ナット状をなす本体に、外容器本体3の内側底面に形成された十文字の凹部10内に嵌入される十文字の突部15を設けた構成になっている。これら凹部10と突部15の組み合わせは、内容器11を外容器2内に収容する際、外容器本体3の内側底面に形成された十文字の凹部10内に嵌入し、外容器2に対する内容器11の相対的な回転や移動を防ぐためのロック機構である。
【0013】
前述したように構成された練和容器1は、一方のカバー部材13を取り外した内容器11内に各種の粉体と液体を入れ、内容器本体12にカバー部材13を螺着嵌合して密封し、これを外容器本体3に収容する。外容器本体3の内側底面に形成された十文字の凹部10内に、下部カバー部材14の突部15を嵌入した後、外容器本体3に外蓋4を被せる。この収容状態にあっては、図1に示すように、内容器11はロック機構である下部カバー部材14の突部15を外容器本体3の凹部10に嵌入すること、および内容器11の上端部が外蓋4の保持突起5内に挿入され支持されることによって、外容器2に対する内容器11の相対的な回転や移動が止められ、外容器2に対する内容器11の相対的な回転や移動が止められている。
【0014】
次に、この練和容器1を練和装置にセットし、公転回転と自転回転を同時に加えること、あるいは強い振動を加えることなどによって内容器11内の粉体と液体を無菌的かつ非用手的に練和する。該練和容器1に公転回転と自転回転を同時に加え、内容器11内の粉体と液体を練和する方法は、例えば「スピンクル」(商品名、モリタ東京製作所製)や「あわとり練太郎」(商品名、シンキー社製)を使用して、この練和容器1に1500rpm以上の公転回転と、300rpm以上の自転回転を加え、5〜60秒程度練和すれば容易に実施することができる。なお、「スピンクル」によれば公転回転2500rpm、自転回転500rpmで練和され、「あわとり練太郎」によれば公転回転2000rpm、自転回転400rpmで練和される。内容器に収容された粉体と液体は、公転回転と自転回転による遠心力により壁面に押し付けられるようにして、短時間で均一に練和される。なお「スピンクル」、「あわとり練太郎」のように練和容器に公転回転と自転回転を加える練和装置を使用する場合は、回転装置の容器の嵌合部に適合する形状の支持体9を外容器2に設けておく必要がある。
【0015】
更に具体的には、滅菌した内容器11の一方のカバー部材13を取り外し、該内容器11内にリン酸カルシウムセメント等の粉体と水などの液体を入れ、カバー部材13を螺着嵌合して内容器11を密封する。その後、内容器11全体を、滅菌済みの外容器2にセットし、外蓋4を閉める。その後、練和容器1を前記「スピンクル」や「あわとり練太郎」にセットし、公転回転と自転回転を加えて粉体と液体を練和する。練和装置全体を滅菌することは困難なので、この際、外容器2の外装は無菌状態でない。しかし、練和終了後、練和容器1を練和装置から取り外し、外蓋4を開けて内容器11を無菌的に取り出せば、内容器11は内部も外装面も無菌状態を保ったままである。従って、手術に際して術者自身がその中に内包された練和物を取り出す際にも、無菌状態を保ったまま容易に取り出すことができる。なお、内容器11と外容器2とは、凹部10内に突部15を嵌入するロック機構を有しているので、練和の際外容器2に公転回転と自転回転を加えても、回転中に内容器11が空回りすることなく、内容器11に収容された粉体と液体を効率よく練和することができる。
【0016】
前記以外の練和方法としては、例えば練和容器1を手で振り混ぜるか、又は機械的に(例えば「アマルガムミキサー」:株式会社松風製など)振動を加える方法も採用し得る。
【0017】
本発明の練和容器1に粉体と液体を収容する際、その粉体と液体の混合割合(P/L)を重量比で4.5以下にすることが望ましい。これ以上粉体量が多いと均一な練和物が得られない。また、内容器11への被練和物(粉体と液体)の収容量は、内容器11の内容積:被練和物の体積が、体積比で1:0.9〜0.1の範囲が好ましい。
【0018】
練和を終えた後、内容器11を取り出し、両方のカバー部材13,14を外し、その内容器本体12に注入部材と押出部材を取り付けることによって、内容器本体12内の練和物を注入部材から押し出すための、より具体的には、注入部材の先端部を体内にさし込んで練和物を体内に注入するための注入器を構成することができる。
【0019】
本発明の注入器は、練和物の入った内容器本体12と、注入部材20,23と、押出部材30(図9参照)とから構成し得る。
図6は、本発明の注入器を構成するために好適な注入部材の一例を示すものである。この注入部材20は、内容器本体12に形成されたいずれかのネジ17,18に螺着可能な基部21と、該基部21から延出した注入管部22とを備えている。注入管部22の先端は先細りになっており、その先端を体内に挿入したり、微細な孔から挿入可能になっている。
【0020】
図7は、本発明の注入器を構成するために好適な注入部材の他の例を示すものである。この注入部材23は、内容器本体12に形成されたいずれかのネジ17,18に螺着可能な基部24と、該基部24から延出した注入管部25とを備えており、この例での注入管部25は、同じ太さの円管からなっている。
【0021】
また本発明の注入器は、練和物の入った内容器本体12と、注射針を装着可能なルアロック26と、押出部材30(図9参照)とからも構成し得る。
図8は、本発明の注入器を構成するために好適なルアロック26の一例を示すものである。このルアロック26は、内容器本体12に形成されたいずれかのネジ17,18に螺着可能な基部24と、注射針を取り付け可能な取付部28とを備えている。
【0022】
図9は、本発明の注入器の一例を示すものである。この注入器29は、練和を終えてカバー部材13,14を取り外した内容器本体12と、内容器本体のネジ18に基部27を螺着嵌合したルアロック26と、内容器本端12の該ルアロック26の反対側の開口から挿入した押出部材30とを備えている。取付部28には、図示しない注射針が螺着嵌合される。
【0023】
押出部材29としては、市販されているプラスチック製やガラス製の注射器用ピストンを使用することができる。押出部材29の先端部の形状は、内容器本体12内の練和物を押し出す際に、押出部材29と内容器本体12及びルアロック26との接触部分にデッドスペースが生じない形状であれば特に限定されない。図9の例示では、ルアロック26の内部形状に一致する凸部形状を有するゴム製ガスケット31を押出部材30の先端に取り付けている。
【0024】
この注入器29は、練和物を無菌的に注射針から所望の部分、例えば生体内に注入することができる。すなわち、練和を終え、外容器2から取り出した内容器11のカバー部材14を取り外し、滅菌済みのルアロック26を取り付け、次いで残るカバー部材13を取り外し、内容器本体12に滅菌済みの押出部材を挿入し、さらに滅菌済みの注射針をルアロック26の取付部28に取り付ける。これらの一連の操作を無菌雰囲気で行えば、内容器本体12内の練和物を無菌的に所望の箇所に注入し得る。例えば、生体用セメント練和物を骨折箇所当に補填する場合には、注射針を骨折箇所に挿入し、練和物を所望量注入すればよい。生体用セメント練和物製造用の粉体としては、α型第3リン酸カルシウム及び/又は第4リン酸カルシウムを必須成分として含み、さらに任意成分として第2リン酸カルシウム、第1リン酸カルシウムを含む粉体又は粉体組成物などが挙げられる。また、この注入器を用いれば小型の成型体製造用のキャビティー内に練和物を注入することもできる。
【0025】
図10は、本発明の練和容器の他の形態を示すものである。この形態において、外容器は前述した図1に示す形態の練和装置1における外容器2と同じものを用いることができる。本形態においては、練和時に下部カバー部材44のゆるみを防止するためのストッパー45を設けた内容器41を使用したことを特徴としている。
【0026】
図10に示す内容器41は、略円筒状の内容器本体42と、該内容器本体42の両方の開口を脱着自在に塞ぐ上部カバー部材43と下部カバー部材44と、下部カバー部材44に螺着外嵌されたストッパー45とを主な構成要素として備えている。内容器11の材質は、エチレンオキサイドガス滅菌法、オートクレーブ滅菌法、ガンマ線照射滅菌法、電子線照射滅菌法などの中から選択される滅菌法によって滅菌することが可能であれば特に限定されることなく、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネートなどのプラスチック材料、ステンレス鋼などの金属材料などを使用して作製することができる。
【0027】
図11は、本形態における内容器本体42を示すものであり、この内容器本体42は、略円筒状をなしており、その長手方向の中央より一方の端部(図11においては上端部)寄りの位置には、この内容器本体42を注入器として使用する場合にホルダーとなるフランジ47が径方向外方に向けて鍔状に形成されている。内容器本体42の両端部外周には、上部カバー部材43と下部カバー部材44とをそれぞれ螺着するためのネジ49,50が形成されている。更に内容器本体42の長手方向の中央よりも下方のネジ50に近い位置の外周には、内容器本体42の長手方向中央側のみが漸次突出した鍔状の係止部46が形成されている。
【0028】
上部カバー部材43は、袋ナットのような形状とすることができる。
下部カバー部材44は、図12に示すように、内容器本体42のネジ50に螺合するネジ51が内周面に形成された袋ナット状をなす本体に、十文字の突部48を設けた構成になっている。この突部48は、内容器41を外容器2(図1と図2参照)内に収容する際、外容器本体3の内側底面に形成された十文字の凹部10内に嵌入され、外容器2に対する内容器41の相対的な回転や移動を防ぐためのものである。さらに下部カバー部材44の外周面には、ストッパー45が螺着されるネジ52が形成されている。下部カバー部材44の内周面に形成されたネジ51と、外周面に形成されたネジ52とは、螺着締結する回転方向が反対の、いわゆる逆ネジの関係になっている。
【0029】
図13は、ストッパー45を示すものである。該ストッパー45は、内周面に下部カバー部材44の外周面に形成されたネジ52に螺合するネジ53が形成されたリング状をなしている。その上端部には、内容器本体42の係止部46先端に係止させるための係止縁部54が形成されている。該係止縁部54は、内容器本体42の中央部分は移動可能であるが、係止部46の先端によって係止されるような径寸法に形成されている。
【0030】
このストッパー45は、図10に示すように、内容器本体42に下部カバー部材44を螺着嵌合した後、下部カバー部材44の外周のネジ52に該ストッパー45を螺着し、その係止縁部54が係止部46に係止された状態として装着される。このストッパー45を締結する回転方向は、下部カバー部材44を内容器本体42に螺合し締結するための回転方向と逆になっている。
【0031】
この内容器41は、練和すべき粉体と液体を入れて上下のカバー部材43,44を取り付けた後、図1に示すと同じく、外容器2内に収容し、下部カバー部材44の突部48を外容器本体3の凹部10に嵌入し、外蓋4を締め、この練和容器を練和装置にセットし、公転回転と自転回転を同時に加えるか、あるいは振動を加えることによって、内容器41内の粉体と液体とを練和する。そして被練和物、内容器41および外容器2を滅菌しておくことにより、内容器本体42内に無菌状態の練和物を得ることができる。
【0032】
この内容器41は、下部カバー部材44を内容器本体42に係止し、抜けを防止するためのストッパー45を設け、しかも該ストッパー45と下部カバー部材44が逆ネジの関係となるように構成したので、この内容器41を外容器2に収容した練和容器に公転回転と自転回転を同時に加え、あるいは強い振動を加えて粉体と液体の練和を行う際に、内容器41の回転を防いでいる突部48を介して、下部カバー部材44が緩む方向の力が該部材44に加わったとしても、ストッパー45によって下部カバー部材44の緩みが防止され、下部カバー部材44の緩みに起因した液体漏れ出しなどの不具合を未然に防ぐことができる。
【0033】
図14は、本発明の注入器の別な例として、本形態によるストッパー付きの内容器本体42を備えた注入器を例示するものである。この注入器61は、ストッパー45を備えた内容器本体42に、該内容器本体42のネジ50に螺着嵌合される基部63と注射針を取り付け可能な取付部64を有するルアロック62を取り付けると共に、内容器本体42の他方の開口から押出部材65を挿入した構成になっている。押出部材65としては、市販されているプラスチック製やガラス製の注射器用ピストンを使用することができる。押出部材65の先端部の形状は、内容器本体42内の練和物を押し出す際に、押出部材65と内容器本体42及びルアロック62との接触部分にデッドスペースが生じない形状であれば特に限定されない。図14の例示では、ルアロック62の内部形状に一致する凸部形状を有するゴム製ガスケット66を押出部材65の先端に取り付けている。
【0034】
この注入器61は、練和物を無菌的に注射針から所望の部分、例えば生体内に注入することができる。すなわち、練和を終え、外容器2から取り出した内容器41のストッパー45を外した後、カバー部材44を取り外し、滅菌済みのルアロック62を取り付け、次いで残るカバー部材43を取り外し、内容器本体42に滅菌済みの押出部材65を挿入し、さらに滅菌済みの注射針をルアロック62の取付部64に取り付ける。これらの一連の操作を無菌雰囲気で行えば、内容器本体42内の練和物を無菌的に所望の箇所に注入し得る。例えば、生体用セメント練和物を骨折箇所等に補填する場合には、注射針を骨折箇所に挿入し、練和物を所望量注入すればよい。生体用セメント練和物製造用の粉体としては、α型第3リン酸カルシウム及び/又は第4リン酸カルシウムを必須成分として含み、さらに任意成分として第2リン酸カルシウム、第1リン酸カルシウムを含む粉体又は粉体組成物などが挙げられる。また、この注入器を用いれば小型の成形体製造用のキャビティー内に練和物を注入することもできる。
【0035】
なお、前述した各実施の形態においては、ロック機構として、外容器2側に形成した十文字の凹部10と、該凹部10内に嵌入する内容器11,41側に形成した十文字の突部15,48とから構成したが、ロック機構は、外容器内に内容器を固定した状態で収容可能であれば、これに限定されることなく、例えば他の形状の凹部と突部の組み合わせ、フック状の係止爪と係止片の組み合わせ、ネジによる螺着など種々のロック機構を代替として使用し得る。
【0036】
【実施例】
粉体としてリン酸カルシウムセメント粉体を用い、本発明の練和容器により無菌的に練和した。
【0037】
・合成例1:α型第3リン酸カルシウム
水酸化カルシウム((株)宇部マテリアルズ製)3モルを水10リットルに懸濁させ、これにリン酸(ラサ工業社製)2モルを水で希釈して40wt%水溶液としたものを徐々に撹拌滴下し、滴下終了後、室温にて1日放置し、その後乾燥機(ヤマト科学社製、DV61型)にて110℃、24時間乾燥させた。この凝集塊を1400℃、3時間焼成した(モトヤマ社製、スーパーバーン2035型)。最後に擂潰機((株)石川工場社製、かくはん擂潰機たて型20号)で粉砕し88μmのふるいを通過させて平均粒径6.5μmのα型第3リン酸カルシウムを得た。
【0038】
・合成例2:第4リン酸カルシウム
水酸化カルシウムを4モル、リン酸を2モル用い、合成例1と同様に乾燥させ、凝集塊を得た。この凝集塊を900℃で3時間仮焼成し、取り出して均一に粉砕した後、更に1400℃で3時間焼成した。最後に擂潰機((株)石川工場社製、かくはん擂潰機たて型20号)で粉砕し88μmのふるいを通過させて、平均粒径6.0μmの第4リン酸カルシウムを得た。
【0039】
(実施例)
合成例1のα型第3リン酸カルシウムを75%、合成例2の第4リン酸カルシウムを20%、市販のリン酸水素カルシウム2水和物(和光純薬工業社製、特級)5%とを混合してリン酸カルシウムセメント粉体を得た。なお、粉体はガンマ線照射滅菌法によって滅菌処理した。
一方、液体として、コハク酸二ナトリウム6水和物(純正化学社製、特級)を20wt%、コンドロイチン硫酸ナトリウム(生化学工業社製、注射用グレードND品)を5wt%溶解した水溶液を作製した。この液体は孔径0.22μmのフィルタを通してろ過滅菌した。
【0040】
この粉体10gと液体3.5mLを図1の内容器(エチレンオキサイドガス滅菌済み)に入れ、オートクレーブ滅菌した外容器に無菌的に収容して外蓋を閉めた。その後、この練和容器を「スピンクル」(商品名、モリタ東京製作所製)にセットし、50秒間練和したところ、均一なペースト状の練和物が得られた。
【0041】
内容器の上下のカバー部材を取り外し、図9に示すように、内容器本体にルアロックを螺着嵌合するとともに、反対側の開口から押出部材を挿入し、さらにルアロックには市販の内径2.0mmφ、長さ40mmの注射針(栃木精工株式会社製)を取り付け、注入器とした。この注入器の押出部材を押し込んで、針先からペーストを吐出したところ、非常にスムーズに吐出させることができた。
【0042】
また、押出されたペーストの強度試験と無菌試験を実施したところ、表1の実施例に記載した通りの結果を得た。強度試験はJIS T6602「歯科用リン酸亜鉛セメント」に準拠して測定した。ただし、検体は7mmφ×14mmLの円柱とし、表2の疑似体液中に7日間浸漬した後、取り出して濡れたまま測定した。加重速度は0.5mm/分とし、インストロン社製4455型試験器を使用した。また無菌試験は日本薬局方一般試験法の「無菌試験法」に則り実施した。
【0043】
(比較例)
比較のために、実施例と同じ粉体と液体を市販の薬用乳鉢に入れ、乳棒にて練和したところ、均一になるまで1分間を要した。得られたペーストを実施例と同じく強度試験に供した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
(*)強度試験はt検定にて有意差があった(危険率5%)
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】
本発明の練和容器は、粉体と液体を入れる内容器と該内容器を脱着自在に収容する外容器とからなる二重容器とし、外容器と内容器との相対位置を変化させないロック機構を設け、該内容器を収容した外容器に公転回転と自転回転を同時に加えるか、あるいは振動を加えて内容器内の粉体と液体を練和できるようにしたものなので、粉体と液体の練和作業を無菌的に、かつ、非用手的に簡便に行うことのできる。
また本発明の注入器は、該内容器本体と、注入部材と、押出部材を含む構成としたことによって、練和物の入った内容器本体に注入部材、押出部材を取り付けて、そのまま注入器とすることができるので、無菌的且つ簡便に練和物を体内に注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の練和容器の一例を示す正面断面図である。
【図2】 同じ練和容器の外容器を示す一部断面視した正面図である。
【図3】 同じ練和容器の内容器本体を示す一部断面視した正面図である。
【図4】 同じく下部カバー部材の一部断面視した正面図である。
【図5】 同じ下部カバー部材の底面図である。
【図6】 本発明の注入器に使用される注入部材の一例を示す断面図である。
【図7】 同じく注入部材の別な例を示す断面図である。
【図8】 本発明の注入器に使用される注射針装着用のルアロックの一例を示す一部断面図である。
【図9】 本発明の注入器の一例を示す一部断面視した正面図である。
【図10】 本発明の練和容器の別な例を示し、内容器の一部断面視した正面図である。
【図11】 同じく内容器本体の一部断面視した正面図である。
【図12】 同じく下部カバー部材の一部断面視した正面図である。
【図13】 同じ内容器に設けられたストッパーの一部断面視した正面図である。
【図14】 本発明の注入器の別な例を示す一部断面視した正面図である。
【符号の説明】
1……練和容器、2……外容器、3……外容器本体、4……外蓋、10……凹部(ロック機構)、11……内容器、12……内容器本体、13……上部カバー部材、14……下部カバー部材、15……突部(ロック機構)、20……注入部材、21……基部、22……注入管部、23……注入部材、24……基部、25……注入管部、26……ルアロック、27……基部、28……取付部、29……注入器、30……押出部材、41……内容器、42……内容器本体、43……上部カバー部材、44……下部カバー部材、45……ストッパー、46……係止部、54……係止縁部、61……注入器、62……ルアロック、63……基部、64……取付部、65……押出部材。
Claims (8)
- 粉体と液体を入れる内容器と、該内容器を脱着自在に収容する外容器とからなる二重容器であり、該内容器を収容した外容器に公転回転と自転回転を同時に加えるか、あるいは振動を加えて該内容器内の粉体と液体を練和する練和容器であって、前記外容器は、外容器本体とこの外容器本体の開口を覆う外蓋とからなるとともに、滅菌可能な材料で構成されており、前記外蓋には、内面側中央部に前記内容器に接して保持する保持突部が設けられており、内容器を外容器本体の内周面から離間した状態で保持し、前記練和容器に、外容器と内容器との相対位置を変化させないロック機構が設けられると共に、前記内容器が、練和物を吐出する第1の開口と押出部材が挿入される第2の開口とを有する内容器本体と、これら第1,第2の開口のそれぞれを脱着自在に封止する第1,第2のカバー部材とを含むことを特徴とする無菌練和用の練和容器。
- 前記ロック機構が、前記外容器の内側底面に形成された凹部と、前記内容器の一方のカバー部材に設けられ、前記凹部に嵌入可能な突起とからなることを特徴とする請求項1に記載の練和容器。
- 前記内容器本体の外表面に係止部が設けられるとともに、前記突起が形成されたカバー部材に螺着外嵌され、前記係止部に係止することによって該カバー部材が緩んで内容器本体から抜け出す方向に移動するのを防止するストッパーが設けられたことを特徴とする請求項2に記載の練和容器。
- 前記突起が形成されたカバー部材が、内容器本体に螺着嵌合されるとともに、該カバー部材と前記ストッパーとが逆ネジの関係になるように螺着される構造としたことを特徴とする請求項3に記載の練和容器。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載された練和容器の内容器本体と、該内容器本体の第1の開口側に取り付けられる基部と該基部から延出した注入管部とを有する注入部材と、該内容器本体の第2の開口から挿入される押出部材とを含む注入器。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載された練和容器の内容器本体と、該内容器本体の第1の開口側に取り付けられる基部と注射針を取り付け可能な取付部を有するルアロックと、該内容器本体の第2の開口から挿入される押出部材とを含む注入器。
- 前記ルアロックに取り付けられる注射針をさらに含む請求項6に記載の注入器。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載された練和容器と、該練和容器に公転回転と自転回転を同時に加える練和装置本体とを含むことを特徴とする無菌練和物製造用の練和装置。
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