JP2002284797A - サバイビン由来癌抗原ペプチド - Google Patents

サバイビン由来癌抗原ペプチド

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導
しうるペプチドを提供する。 【解決手段】 以下のアミノ酸配列: Ala Tyr Ala Cys Asn Thr Ser Thr Leu で示されるペプチド。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、癌細胞を標的とする細
胞傷害性T細胞(以下、CTLという)を誘導すること
ができるペプチドに関する。また本発明は、前記ペプチ
ドを含む癌ワクチン及び抗癌剤に関する。更に本発明
は、癌細胞を標的とするCTLを誘導するための前記ペ
プチドの使用、得られたCTL及び前記CTLを含む抗
癌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】近年における免疫学と分子生物学の進歩
は、腫瘍免疫の進歩に多大の影響を与えている。ヒトで
インフルエンザウイルス感染が起きた場合に、その感染
に対して免疫が成立して感染症から離脱するという事象
は以下の細胞性免疫により説明することができる。イン
フルエンザウイルスに感染した上皮細胞は、その細胞表
面にある主要組織適合抗原複合体HLA分子上にウィル
スゲノム由来の9〜10のポリペプチドを提示する。こ
のHLA−ウイルスペプチド複合体を提示する感染細胞
は強烈なアロジェニック反応を惹起し、感染細胞は末梢
血中に存在するCD8陽性CTLにより特異的に認識さ
れ、積極的に排除される。この細胞性免疫のメカニズム
は自己の細胞が腫瘍化して生じた癌細胞に対しても同様
に働くと理解される。このことは、ベルギーのThierry
Boonらによる悪性黒色腫からの腫瘍抗原MAGE遺伝子
の単離により証明された(Van der Bruggenら, Scienc
e, 254, 1643-1647(1991))。T細胞が認識する癌抗原
の同定方法としては、T細胞を用いてヒト癌由来のcD
NAライブラリーをスクリーニングする方法が既に開発
されており、この方法を用いて前記のMAGE遺伝子が
単離された。それ以後、悪性黒色腫を初めとした癌細胞
表面上のクラスI分子に提示されてT細胞に認識される
癌由来癌抗原ペプチドが複数同定され、これらのいくつ
かを用いた臨床治験が開始されており、既に一定の成果
が得られている。例えば、癌患者の血清中に存在する抗
体により認識される分子として食道癌より同定されたN
Y−ESO−1分子は、その合成ペプチドがCTLの誘
導能を有することが確認されている(Chen, YT.ら, Pro
c.Natl. Acad. USA, 94, 1914-1918(1997)及びJager,
E.ら, J. Exp. Med., 187,265-270(1998))。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、臨床的に癌の
大部分を占めるリンパ腫、肺癌、膀胱癌等の上皮癌では
癌抗原がほとんど同定されておらず、これらを用いた免
疫療法は確立されていない。そこで本発明は、癌の免疫
療法に使用しうる癌ワクチン及び抗癌剤を提供すること
を解決すべき課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、免疫学的
なヒト癌拒絶が主にCTL、特にCD8(+)CTLに
より担われていることに着目した。CD8(+)CTL
は癌細胞上の主要組織適合抗原複合体(ヒトではHL
A)と当該HLA上に提示された癌抗原ペプチドとから
なる複合体を認識して活性化する。そして、活性化され
たCTLはその細胞表面上のT細胞抗原レセプターを介
して癌細胞を認識し、これを攻撃する。したがって、癌
抗原ペプチドが同定されれば、これを癌ワクチン及び抗
癌剤として使用し、CTLを効率的に誘導して、癌を予
防及び治療することができる。サバイビン(Survivin)
はアポトーシスインヒビター(IAPs)ファミリーに
属するタンパク質であり、強い抗アポトーシス能を有す
る。サバイビンは当初、単一の遺伝子に由来する産物と
して報告されたが、この遺伝子には、スプライスバリア
ントが複数あることが報告されている(Mahotka, C.ら,
Cancer Res.,59, 6097-6102(1999))。サバイビンは肺
癌、膀胱癌等の多くの癌で発現するが、正常組織での発
現は胎児組織と成人胸腺、精巣等に限られていることが
報告されている(Ambrosini, G.ら, Nat. Med., 3, 917
-921(1997))。しかしながら、サバイビンが実際にCT
Lを誘導しうるか否かは明らかにされていなかった。そ
こで本発明者等は、種々のサバイビン由来のペプチドに
ついて癌抗原性、すなわちCTL誘導能について鋭意検
討を重ねたところ、サバイビンエクソン2B遺伝子によ
りコードされる23個からなるアミノ酸配列内にHLA
−A24結合モチーフがあり、このなかの特定のペプチ
ドがCTLを誘導することができることを見いだした。
本発明はこの知見に基づいてなされたものである。すな
わち、本発明は、 (1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、癌
細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導しうるペプチ
ド; (2)前記(1)のペプチドを含む癌ワクチン; (3)前記(1)のペプチドを含む抗癌剤; (4)癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導する
ための前記(1)のペプチドの使用; (5)前記(1)のペプチドにより誘導された細胞傷害
性T細胞及び、 (6)前記(5)の細胞傷害性T細胞を含む抗癌剤;で
ある。
【0005】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導し
うるペプチドは、以下の配列: Ala Tyr Ala Cys Asn Thr Ser Thr Leu (配列番号
1) で示されるペプチドをいう。
【0006】本発明のペプチドの同定は、以下の工程: (1)ヒト主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスI
であるHLA−A24の結合モチーフに対応する配列を
有するサバイビン由来ペプチドを提供する工程、(2)
前記のペプチドを、HLA−A24を発現する抗原提示
細胞に添加し、HLA−A24により前記ペプチドを提
示している抗原提示細胞を得る工程、(3)前記抗原提
示細胞でT細胞を刺激してCTLを誘導する工程、及
び、(4)誘導されたCTLの癌細胞傷害能を測定する
工程、を含む方法により行うことができる。
【0007】本発明のペプチドはアミノ酸数が9と小さ
いので、一般的なアミノ酸の化学合成法、例えばFmo
c法により合成することができる。市販のアミノ酸合成
装置を使用して合成することもできる。また、本発明の
ペプチドはサバイビンに由来するので、癌患者の癌細胞
から文献(Suzuki, K.ら, J. Immunol., 163, 2783-279
1(1999))に記載の方法にしたがいサバイビンを単離し
て、該当するペプチドを得ることもできる。
【0008】本発明のペプチドを使用して癌細胞を標的
とするCTLを誘導することができる。誘導されたCT
Lは癌細胞を認識して、これを攻撃する。したがって、
本発明のペプチドは癌ワクチン及び抗癌剤として使用す
ることができる。本発明の癌ワクチン及び抗癌剤を適用
しうる癌は、本発明のペプチドをHLA−A24により
提示している癌細胞からなる癌、例えば上皮癌である。
上皮癌としては、肺癌、大腸癌、膀胱癌、膵癌、前立腺
癌、乳癌等が挙げられる。本発明のペプチドを癌ワクチ
ン及び抗癌剤として使用する場合、本発明のペプチド
は、それ自身で又は補助剤と共に使用することができ、
更に医薬的に許容しうる担体を適宜含有させることがで
きる。補助剤としては、免疫応答の強化を目的とするア
ジュバント、例えばフロイドの不完全(完全)アジュバ
ント、アルミニウムアジュバント等が挙げられる。医薬
的に許容しうる担体としては、例えばPBS、蒸留水等
の希釈剤、生理食塩水等が挙げられる。本発明の癌ワク
チン及び抗癌剤は、当該技術分野において周知の方法に
より、液剤、油剤、エマルジョン、ソフトカプセル剤、
ハードカプセル剤、錠剤、顆粒剤、固形剤等の形態にす
ることができる。本発明の癌ワクチン及び抗癌剤は、そ
の使用形態に応じて経口、非経口又は経皮投与すること
ができる。例えば、静注投与、筋射投与が挙げられる。
投与量は、通常、患者の体重、疾患の性質及び状態に依
存して変化するが、成人に使用する場合、1日あたり最
大で5〜10mgである。例えば、成人の癌患者に皮下
注射により使用する場合、1週間あたり100〜100
0μgであり、好ましくは100〜200μgである。
【0009】また、本発明のペプチドを、癌細胞を標的
とするCTLを誘導するために使用することができる。
誘導は、例えば文献(Nabeta, Y.ら, Jpn. J. Cancer R
es.91, 616-621(2000))に記載の方法にしたがい行うこ
とができる。 具体的には以下の工程:HLA−A24を発現している
細胞を提供する工程、前記細胞に本発明のペプチドを添
加して、HLA−A24上に提示させる工程、前記ペプ
チドをHLA−A24により提示している細胞でT細胞
を刺激し、前記T細胞を癌細胞標的CTLへ誘導する工
程、を含む方法を使用することができる。HLA−A2
4を発現する細胞は癌患者から採取したものでもよい
が、非HLA−A24発現細胞に、HLA−A24をコ
ードする遺伝子を導入して作成してもよい。
【0010】得られたCTLは癌細胞を標的とするの
で、これを抗癌剤に使用することができる。この場合、
前記の本発明のペプチドを含む抗癌剤と同様に、適宜医
薬的に許容しうる担体を含み、かつ種々の形態をとるこ
とができる。本発明のCTLを含む抗癌剤は、本発明の
ペプチドを含む癌ワクチン及び抗癌剤と同様に非経口投
与することができる。投与量は、通常、患者の体重、疾
患の性質及び状態に依存して変化するが、成人の癌患者
に皮下注射により使用する場合、1週間あたり100〜
1000μgであり、好ましくは100〜200μgで
ある。
【実施例】次に、実施例により本発明の効果を具体的に
説明するが、本発明は実施例に限定されるものではな
い。
【0011】参考例1 サバイビンmRNAの細胞株に
おける発現 以下の細胞株:LHK−2(肺腺癌細胞)、KMG−A
(胆のう癌細胞)、Fs−1(上顎癌細胞)、OSC4
0(口腔扁平上皮癌細胞)、HC−MA(下咽頭扁平上
皮癌細胞)、KE−4(食道癌細胞)、LB33mel
(悪性黒色腫細胞)、888mel(悪性黒色腫細
胞)、1102mel(悪性黒色腫細胞)、BB64R
CC(腎癌細胞)、LB905BLC(前立腺癌細
胞)、YM−EBV(健常人由来EBV−B細胞)、L
G2−EBV(健常人由来EBV−B細胞)、KK−E
BV(健常人由来EBV−B細胞)、Nabe−EBV
(健常人由来EBV−B細胞)、PHA−blast
(PHA刺激T細胞)及びCTL(細胞傷害性T細胞)
並びに成人の胃、小腸、大腸、脾臓、肺、腎臓、前立
腺、膵臓及び心臓から採取した正常組織に由来するmR
NA 2μgを、サバイビン遺伝子特異的プライマーを
用いてRT−PCRし、得られたPCR産物を電気泳動
した後、エチジウムブロマイドで染色した。内部標準と
してG3PDHを用いた。図1に示されるように、構成
的タンパク質であるG3PDHはいずれの細胞において
も発現が見られた。一方サバイビンは、癌細胞であるL
HK−2、KMG−A、Fs−1、OSC40、HC−
MA、KE−4、LB33mel、888mel、11
02mel、BB64RCC、LB905BLC、YM
−EBV、LG2−EBV、KK−EBV、Nabe−
EBV及びPHA−blastでサバイビンの発現が見
られたが、正常細胞では発現が見られなかった。この結
果より、サバイビンは多くの癌細胞に特異的に発現する
ことが理解される。
【0012】実施例1 本発明のサバイビン由来癌抗原
ペプチドの製造 以下のアミノ酸配列: Ala Tyr Ala Cys Asn Thr Ser Thr Leu (配列番号
1) を有するペプチドを合成した。ペプチドは、9−フルオ
レニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)戦略に基づ
いて固相同時多重ペプチド合成機PSSM−8(島津製
作所)を使用して合成し、次いでC18逆相高速液体ク
ロマトグラフィー(HPLC)(Millipore)により精
製した。ペプチドの純度及び同一性は、それぞれ分析用
HPLC及び質量分析により測定した。ペプチドを、ジ
メチルスルホキシド中に濃度1.5mg/mlで溶解
し、−80℃で保存した。
【0013】実施例2 本発明のサバイビン由来癌抗原
ペプチドを用いたCTLのin vitro誘導 ヒトの末梢血をフィコール・コンレイ密度勾配中で遠心
分離して末梢血単核球(PBMC)を集め、次いで接着
細胞と非接着細胞とに分離した。接着細胞をAIM−V
(Gibco Co.)中、100ng/mlのGM−CSF(N
ovartis Pharmaceuticals)及び10IU/mlのIL
−4(Gibco-BRL)と共にインキュベートした。この細
胞を抗原提示細胞(APC)として使用した。非接着細
胞をAIM−V中、30〜100IU/mlの組換えI
L−4(味の素)と共にインキュベートした。7〜10
日目に、本発明のペプチド(終濃度30μg/ml)を
APCに添加し、1日後、組換えTNF−α及びIFN
−α(住友製薬)を添加してAPCを成熟させた。次い
でAPCに放射線を照射した後、APCと自家非接着細
胞から分離したCD8陽性細胞とを、IL−2を含まな
いAIM−V中で混合した。インキュベート2日後、I
L−2(武田薬品工業)を終濃度100IU/mlで培
養へ添加した。7日毎に、T細胞マイトジェンであるP
HAで刺激した自家PHAブラスト(PHA刺激T細
胞)をAPCとして、CD8陽性細胞を刺激した。刺激
毎に、培養に100IU/mlのIL−2を含む新鮮培
地を追加した。28日目のCTLを以下の活性試験に使
用した。
【0014】実施例3 本発明のCTLの細胞傷害性 (1)試験方法 CTLの細胞傷害能を51Cr細胞傷害試験により評価し
た。CTLの標的細胞を100μCiのクロム酸ナトリ
ウム(51Cr)を用いて37℃で2時間標識し、洗浄
し、再懸濁した。試験ペプチドが提示された標識標的細
胞は、前記の標的細胞(5×105細胞/ml)を51
rで標識し、30μg/mlの試験ペプチドと室温で2
時間インキュベートすることにより得た。エフェクター
細胞(CTL)をV字底マイクロタイタープレートCo
star3894(Corning Incorporated)の各ウェル
に入れ、ここに前記標識標的細胞を濃度5×103細胞
/ウェルで添加し、容量0.2mlとした。6時間のイ
ンキュベート後、0.1mlの上清を集め、自動化ガン
マカウンター(LKB Wallac)により51Crの放出を測定
した。測定は3重に行い標準偏差を計算した。特異的細
胞傷害能の百分率は、特異的51Cr放出の百分率を下記
の式:[(実験値)−(自発的放出値)/(最大放出
値)−(自発的放出値)]×100を用いて計算するこ
とにより決定した。自発的放出値は、標的細胞をエフェ
クター細胞の非存在下で単独でインキュベートしたとき
の放出値より得た。最大放出値は界面活性剤である10
%Nonidet−P40(ナカライケミカルCo.)
と共にインキュベートしたときの最大放出量により得
た。
【0015】(2)本発明のCTLの細胞傷害性 文献(Ambrosiniら、前出及びMahotkaら、前出)に記載
のサバイビンのアミノ酸一次配列: Met Gly Ala Pro Thr Leu Pro Pro Ala Trp Gln Pro Phe Leu Lys Asp 16 His Arg Ile Ser Thr Phe Lys Asn Trp Pro Phe Leu Glu Gly Cys Ala 32 Cys Thr Pro Glu Arg Met Ala Glu Ala Gly Phe Ile His Cys Pro Thr 48 Glu Asn Glu Pro Asp Leu Ala Gln Cys Phe Phe Cys Phe Lys Glu Leu 64 Glu Gly Trp Glu Pro Asp Asp Asp Pro Ile Gly Pro Gly Thr Val Ala 80 Tyr Ala Cys Asn Thr Ser Thr Leu Gly Gly Arg Gly Gly Arg Ile Thr 96 Arg Glu Glu His Lys Lys His Ser Ser Gly Cys Ala Phe Leu Ser Val 112 Lys Lys Gln Phe Glu Glu Leu Thr Leu Gly Glu Phe Leu Lys Leu Asp 128 Arg Glu Arg Ala Lys Asn Lys Ile Ala Lys Glu Thr Asn Asn Lys Lys 144 Lys Glu Phe Glu Glu Thr Ala Lys Lys Val Arg Arg Ala Ile Glu Gln 160 Leu Ala Ala Met Asp (配列番号4) の中から、表1に示すHLA−A24の結合モチーフに
対応する3種のペプチドを、実施例1に記載の方法にし
たがい製造した。
【0016】表1.試験ペプチド
【0017】2名のHLA−A24陽性の健常人A及び
Bの末梢血を用いて、実施例2と同様の方法により各群
のペプチドを用いてCTLを誘導した。CTLの標的細
胞として、サバイビンを発現する(以降、サバイビン陽
性という)C1R細胞株(ATCCより入手)に、HLA−
A24*2402遺伝子を、ベクターpIRES(Clon
etech, Inc.)を用いて、文献(Suzukiら、前出)にし
たがい導入し、HLA−A24分子を細胞表面に発現さ
せた(以降、HLA−A24陽性という)C1R−A*
2402細胞を用いた。前記(1)の試験法にしたが
い、各標的細胞に試験ペプチドを添加して、標的細胞上
にペプチドを提示させ、これを試験に使用した。各ペプ
チドを用いて誘導したCTLについての51Cr細胞傷害
試験の結果をそれぞれ図2に示す。縦軸は標的細胞の融
解の百分率を、横軸はE/T比(エフェクター細胞(C
TL)/標的細胞)を示す。健常人A及びBの両方にお
いて、本発明のペプチド(サバイビン2B80)により
誘導されたCTLはC1R−A*2402細胞に対して
高い細胞融解を示したが、その他のペプチドにより誘導
されたCTLはいずれの細胞に対しても低い細胞融解性
を示した(図2)。これらの結果より、本発明のペプチ
ドにより誘導されたCTLが、HLA−A24陽性かつ
サバイビン陽性の細胞、すなわち癌細胞に対し高い細胞
傷害性を有していることが理解される。(3)本発明のCTLの細胞傷害性 前記の健常人B由来の本発明のCTLについて、下記表
2に示す細胞を標的として、本発明のペプチドを添加し
た場合と未添加の場合の細胞傷害性を試験した。 表2.標的細胞 +:陽性 −:陰性51 Cr細胞傷害試験の結果をそれぞれ図3に示す。試験
は1種の標的細胞につき、3つのE/T比(20、6及
び2)を用いて行った。図3に示す各標的細胞における
結果において、左側の棒はE/T=20での結果、真ん
中の棒はE/T=6での結果及び右側の棒はE/T=2
における結果を示している。本発明のCTLは、本発明
のペプチドを未添加のC1R−A*2402、888m
el、LG2−mel、OSC40、KE−4、LHK
−2、PC−9に対しても細胞傷害性を示した。これは
前記細胞が元々HLA−A24及びサバイビンを発現し
ているためであると考えられる。一方、本発明のサバイ
ビン由来ペプチドを添加した場合、本発明のCTLはよ
り高い細胞傷害性を示した。一方、HLA−A24を発
現していないK562に対しては、たとえ本発明のペプ
チドを添加した場合であっても細胞傷害性を示さなかっ
た。これらの結果より、本発明のペプチドにより誘導さ
れたCTLが、HLA−A24陽性かつサバイビン陽性
の細胞、すなわち癌細胞に対し高い細胞傷害性を有して
いること、及び、細胞外からサバイビン由来癌抗原ペプ
チドを添加した細胞だけでなく細胞内でサバイビンを発
現している癌細胞に対しても高い細胞傷害性を有してい
ることが理解される。
【0018】実施例4 本発明のCTLクローンの作成
及び反応性の解析 (1)CTLのクローンの作成 本発明のCTLの反応性を検討するために、単一のCT
Lクローンを、Riddellら(Walter, EA.ら, N. Engl.
J. Med., 333, 1038-1044(1995))の方法にしたがい作
成した。96穴U字型プレートにて1ウェルあたり0.
3、3又は10細胞/ウェルとなるようにCTLを調整
し、ここに放射線を照射して不活化した。次いで、健常
人由来PBMC細胞(1×104)とLG2−EBV細
胞(5×104)と共に培養した。培養液として、10
% ヒトAB血清、40ng/ml抗CD3抗体(BD P
harmingn, San Diego)、50μM 2−ME、10m
MHepes、150U/ml IL−2を含むAIM
−V溶液を1ウェルあたり全量200μlで用いた。培
養7日目に100U/ml IL−2を用いたことを除
いて前記と同様の新鮮培養液と交換した。培養10日目
ないし14日目に、48穴プレートに移し、実験28日
目に3種類のクローン:7F6、7H2及び4F9を得
た。この中からクローン7H2についてFACSにより
細胞表現型を解析した。(2)CTLクローン7H2のFACS解析 1次抗体として、マウス抗ヒトCD3、CD4、CD
8、CD16、CD56、TCRαβ、TCRγδ分子
標識抗体(Becton-Dickinson)を使用した。CTLクロ
ーン7H2を1次抗体で4℃、30分処理した後、PB
Sで2回洗浄した。次いでFITCで標識した抗マウス
2次抗体で4℃、30分処理し、PBSで2回洗浄した
後、フローサイトメーターFACSCalibur(Be
cton-Dickinson)により蛍光強度を測定した。結果を図
4に示す。縦軸は細胞数(カウント数)、横軸はFIT
C蛍光強度を示す。各図の下には使用した1次抗体が認
識する細胞表面抗原を記載した。図中の常に右側に位置
する線は1次抗体及び2次抗体で処理したときの結果を
示し、図中の常に左側に位置する線は1次抗体なしで2
次抗体のみで処理した陰性対照を示す。陰性対照を示す
線に対して1次抗体で処理したときの線がどれだけ右に
移動したかを検討することにより、陽性率を判断した。
CTLクローン7H2はCD3、CD8及びTCRαβ
については陽性であったが、CD4、CD16及びTC
Rγδについては陰性であった。以上の結果より、CT
Lクローン7H2はCD3、CD8及びTCRαβ陽性
の典型的なCTLであることが理解される。(3)CTLクローンの細胞傷害性 (1)で得た3種類のクローン7F6、7H2及び4F
9について、肺癌細胞LHK−2細胞(HLA−A24
陽性かつサバイビン陽性)を標的として、本発明のペプ
チドを添加した場合と未添加の場合の細胞傷害性を試験
した。51Cr細胞傷害試験の結果をそれぞれ図5に示
す。図5に示す各CTLクローンの結果において、左側
の棒は標的細胞LHK−2、本発明のペプチド添加の場
合の結果、真ん中の棒は標的細胞LHK−2、本発明の
ペプチド未添加の場合の結果及び右側の棒は標的細胞K
562の場合の結果を示している。本発明のCTLは、
本発明のペプチドを未添加のLHK−2に対しても細胞
傷害性を示した。これはLHK−2細胞が元々HLA−
A24及びサバイビンを発現しているためであると考え
られる。一方、本発明のサバイビン由来ペプチドを添加
した場合、本発明のCTLはより高い細胞傷害性を示し
た。一方、HLA−A24を発現していないK562に
対しては、たとえ本発明のペプチドを添加した場合であ
っても細胞傷害性を示さなかった。これらの結果より、
本発明のペプチドにより誘導されたCTLが、HLA−
A24陽性かつサバイビン陽性の細胞、すなわち癌細胞
に対し特異的な細胞傷害性を有していること、及び、細
胞外からサバイビン由来癌抗原ペプチドを添加した細胞
だけでなく細胞内でサバイビンを発現している癌細胞に
対しても高い細胞傷害性を有していることが理解され
る。
【0019】
【発明の効果】本発明のペプチドは、本発明のペプチド
を提示したHLA−A24を有する癌細胞を標的とする
CTLを誘導することができる。HLA−A24の発現
率は高く、欧米人では20〜30%であり、特に日本人
では50%以上が発現している。したがって、本発明の
癌抗原ペプチドは有用な癌ワクチン及び抗癌剤として使
用することができる。
【0020】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Hokkaido Technology Licensing Office Co. Ltd. <120> A cancer antigen peptide derived from survivin <130> y1i-0018 <140> <141> <160> 4 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 9 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 1 Ala Tyr Ala Cys Asn Thr Ser Thr Leu 1 5 <210> 2 <211> 9 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 2 Ala Phe Leu Ser Val Lys Lys Gln Phe 1 5 <210> 3 <211> 10 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 3 Gln Phe Glu Glu Leu Thr Leu Gly Glu Phe 1 5 10 <210> 4 <211> 165 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 4 Met Gly Ala Pro Thr Leu Pro Pro Ala Trp Gln Pro Phe Leu Lys Asp 1 5 10 15 His Arg Ile Ser Thr Phe Lys Asn Trp Pro Phe Leu Glu Gly Cys Ala 20 25 30 Cys Thr Pro Glu Arg Met Ala Glu Ala Gly Phe Ile His Cys Pro Thr 35 40 45 Glu Asn Glu Pro Asp Leu Ala Gln Cys Phe Phe Cys Phe Lys Glu Leu 50 55 60 Glu Gly Trp Glu Pro Asp Asp Asp Pro Ile Gly Pro Gly Thr Val Ala 65 70 75 80 Tyr Ala Cys Asn Thr Ser Thr Leu Gly Gly Arg Gly Gly Arg Ile Thr 85 90 95 Arg Glu Glu His Lys Lys His Ser Ser Gly Cys Ala Phe Leu Ser Val 100 105 110 Lys Lys Gln Phe Glu Glu Leu Thr Leu Gly Glu Phe Leu Lys Leu Asp 115 120 125 Arg Glu Arg Ala Lys Asn Lys Ile Ala Lys Glu Thr Asn Asn Lys Lys 130 135 140 Lys Glu Phe Glu Glu Thr Ala Lys Lys Val Arg Arg Ala Ile Glu Gln 145 150 155 160 Leu Ala Ala Met Asp 165
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、種々の癌細胞及び正常細胞におけるサ
バイビンの発現を示す図である。
【図2】図2は、種々のサバイビン由来ペプチドを用い
て誘導したCTLについての51Cr細胞傷害試験の結果
を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明のCTLの種々の標的細胞に対
する51Cr細胞傷害試験の結果を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明のCTLクローン7H2の細胞
表面抗原についてのFACS解析の結果を示すグラフで
ある。
【図5】図5は、本発明のCTLクローンの肺癌細胞L
HK−2に対する51Cr細胞傷害試験の結果を示すグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 14/47 A61K 37/02 C12N 5/06 C12N 5/00 E (72)発明者 鳥越 俊彦 北海道札幌市南区澄川5条11丁目9−13 Fターム(参考) 4B065 AA94X BB19 BB34 CA44 CA45 4C084 AA02 AA07 BA01 BA08 BA17 CA56 NA14 ZB262 4C085 AA02 BB01 BB11 CC32 EE01 GG04 4H045 AA10 AA11 AA30 BA15 CA41 DA86 EA28 EA31

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列番号1に示されるアミノ酸配列から
    なり、癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導しう
    るペプチド。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のペプチドを含む癌ワク
    チン。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のペプチドを含む抗癌
    剤。
  4. 【請求項4】 癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を
    誘導するための請求項1に記載のペプチドの使用。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載のペプチドにより誘導さ
    れた細胞傷害性T細胞。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の細胞傷害性T細胞を含
    む抗癌剤。
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