JP2002272310A - 珪藻類の生産装置 - Google Patents

珪藻類の生産装置

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JP2002272310A JP2001082651A JP2001082651A JP2002272310A JP 2002272310 A JP2002272310 A JP 2002272310A JP 2001082651 A JP2001082651 A JP 2001082651A JP 2001082651 A JP2001082651 A JP 2001082651A JP 2002272310 A JP2002272310 A JP 2002272310A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鞭毛藻類の競争者である珪藻類を海(湖)域に
供給することによって、養殖漁業に莫大な損害を与える
鞭毛藻類の異常繁殖による赤潮の発生を未然に防止する
方法や、珪藻類を所定海(湖)域に長期にわたって簡便か
つ多量に供給するための珪藻類の生産装置や、かかる生
産装置を用いる珪藻類の生産方法を提供すること。 【解決手段】 基面に珪藻類を増殖させることができる
基体を水中に浸漬し、前記基面に増殖した珪藻類の繁殖
活性期間又はその終了後に、基面に繁殖・付着した珪藻
類をジェット水流剥ぎ取り、珪藻類を増殖させることが
できる基面を新たに露出させ、新たに露出した基面に、
選別された珪藻類を付着させる。この珪藻類の剥取り
と、露出基面での珪藻類の増殖を繰り返し行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、珪藻類の生産装置
及び珪藻類の生産方法、詳しくは、ジェット水流等の珪
藻類の剥取り手段を利用した珪藻類の生産装置及び珪藻
類の生産方法、並びに該珪藻類の生産装置を用いた赤潮
発生の防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】淡水にも海水にも見い出される代表的な
植物プランクトンである珪藻は、単細胞の特殊な形態の
藻類で、単細胞性であるが、細胞はすべて二つの行李状
に重なった殻に覆われ、外側の殻は上殻、内側の殻は下
殻と呼ばれている。これら珪藻の中でも付着性珪藻は、
それぞれの種に特異的な付着器をもち、固体表面に付着
することによって自身の生活を維持するとともに増殖し
種の分布を広げようとすることが知られており、例え
ば、塩化ビニール板状に付着・増殖する珪藻の微細な分
布と分散の様式について、(1)分裂するとともに活発に
滑走をして分布を広げているもの、(2)滑走運動が不活
発で密集した集落を形成するもの、(3)付着柄や盤状付
着器によって強固に付着しながら増殖し、垂直方向に立
体的な群体を形成するもの、の3種のパターンがみられ
ることが報告(養殖研報,7,83〜90,1985)
されている。
【0003】従来、これら付着珪藻の増殖方法として、
例えば、特開昭59−59129号公報には、日光のあ
たる海水中に、その表面に珪藻等を繁殖させることがで
きる多数の穴や凹凸を設けたガラス質基板を漁礁構造体
に装着してなる人工漁礁が開示されているが、この人工
漁礁では表面積が限られている上に、定期的にガラス質
基板をブラシなどで清掃する必要があり、凹凸面のブラ
シ清掃は多大の作業時間と重労働を要するという問題が
あった。また、特開平9−172890号公報には、ウ
ニやアワビなどの種苗生産を行う際の初期餌料として使
用される付着珪藻の増殖させるために、珪藻の付着手段
を備える水槽に海水を流入させながら換水するとともに
空気を供給することにより珪藻を増殖する方法であっ
て、ケイ素、リン、2価の鉄を一定量以上含む鉄分など
からなるガラス状増殖材および窒素肥料を海水の流入位
置近傍に配置し、流入する海水や空気によるエアレーシ
ョンで生じた水流をこの増殖材および窒素肥料に接触さ
せて増殖成分を海水中に溶出させる方法が記載されてい
る。この方法では増殖した珪藻を餌料とすることができ
るが、餌料としない場合には、珪藻付着部(合成樹脂製
波板)表面上の珪藻の増殖には限界があった。
【0004】他方、植物プランクトン等の異常な大増殖
に伴い、水が赤っぽく変色する赤潮現象はよく知られて
いる。赤潮の原因となる主な植物プランクトンとして
は、珪藻類と鞭毛藻類を挙げることができるが、植物プ
ランクトンの種類によって漁場や海苔養殖場等の養殖漁
業に与える影響が異なり、例えば、これまで珪藻類の増
殖によって発生する赤潮が漁業に損害を与えた事例は殆
どなく、むしろ、植食生物の餌料として歓迎される場合
が多い。しかし、シャットネラ、ヘテロカプサなどの鞭
毛藻類の増殖によって発生する赤潮は、養殖漁業等を中
心とする漁業に大きな損害を与えることが知られてい
る。珪藻類と鞭毛藻類は共に植物プランクトンである
が、双方が同時に高い密度で共存することが見られない
ことから、両者は競合関係にあるとされ、日光があたっ
て水温が上昇し、両者が共に増殖する条件が整っている
場合には、鞭毛藻類よりも珪藻類の方が優勢であること
が知られている。例えば、春になって海水の温度が上昇
し、冬の間に蓄積された栄養塩を利用してスプリングブ
ルームと呼ばれる珪藻類の大増殖が起こると、鞭毛藻類
による赤潮の発生は抑制される。シャットネラ、ヘテロ
カプサなどの鞭毛藻類は、発生期である夏季を除く年間
の大部分の季節をシスト(胞子)として海底で過ごし、
この間はいわゆる休眠状態にあるが、海底の水温が20
℃に上昇する初夏に発芽し、この発芽期に表層水中に鞭
毛藻類の有力な競争者である珪藻類等が存在しないと、
鞭毛藻類が異常に増殖して有害な赤潮が発生すると考え
られている。
【0005】このような珪藻類と鞭毛藻類との相互関係
を利用して、赤潮の発生を防止しようとする技術も知ら
れている。例えば、特開平10−94341号公報に
は、有害赤潮の予防方法として、海面または海中に浮体
を設置し、ケイ素を含有したガラス質材料であって、ケ
イ素の溶出速度の大きいガラス質材料からなる珪藻類の
増殖材を前記浮体に装着することによって海水に浸し、
周囲の海水中にケイ素を溶出させ、前記ケイ素の供給に
より珪藻類の増殖を促進させて、周囲の海水中の栄養塩
濃度を低下させることにより、鞭毛藻類の増殖を抑制す
る方法が記載されている。また、特開平11−1966
97号公報には、人工魚礁・増殖礁・養殖施設を利用し
た太陽光利用ケーブルによって植物プランクトン増大・
藻場造成の活性化、炭酸ガス吸収による地球温暖化防止
対策・栄養塩利用による赤潮防止対策、水産資源増大に
利用するために、指定した方向に曲げられた光ケーブル
照射レンズにより太陽光を海底に照射集配し植物プラン
クトン増大・藻場造成の活性化を促進するシステムが記
載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】珪藻には単独性の種と
群体性の種があり、共に浮遊性のものと付着性のものが
知られている。浮遊性の珪藻は鞭毛などによって積極的
に浮遊しているわけではなく、波浪等により攪拌されな
い場合は光合成のできない暗い海底へ沈んでしまう。こ
れに対して、付着性の珪藻は、付着基材が海面や湖面付
近に配設される場合は、日照時には常時光合成を行うこ
とができ、安定的に増殖することができるが、付着基材
表面が増殖した珪藻で覆われると、珪藻の繁殖が停止す
るという問題があった。本発明の課題は、鞭毛藻類と珪
藻類がともに増殖しうる条件下では、鞭毛藻類より珪藻
類が優勢に増殖するという知見に基づいて、鞭毛藻類の
競争者である珪藻類を海(湖)域に供給することによっ
て、養殖漁業に莫大な損害を与える鞭毛藻類の異常繁殖
による赤潮の発生を未然に防止する方法や、珪藻類を所
定海(湖)域に長期にわたって簡便かつ多量に供給するた
めの珪藻類の生産装置や、かかる生産装置を用いる珪藻
類の生産方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため鋭意研究する過程で、水(例えば、海
水、湖水など)中に新しい基面が露出すると、付着性珪
藻類が驚くほど急速に増殖することを見い出した。すな
わち、いままで水に触れていなかった新たな基体が水中
に配置されると、海草や貝類等の他の付着性水生生物よ
り先に、その表面である基面が珪藻類で覆われることを
観察した。基面を覆う珪藻類が一定厚さに達すると、珪
藻類の増殖速度は飽和し、次いで他の水生生物が繁殖す
ることも観察されたが、この増殖速度が飽和する前の繁
殖活性期間に、珪藻類が繁殖した基面から付着性珪藻類
をジェット水流で剥ぎ取り、珪藻類が繁殖していない基
面を露出させてやれば、その新たに露出した基面を再び
高速増殖面として利用し珪藻類が急速に増殖するという
知見を得た。かかる知見に基づき、基面での珪藻類の繁
殖と剥ぎ取りを繰り返すと、効率よく珪藻類を連続的に
生産することができることを見い出し、本発明を完成す
るに至った。
【0008】すなわち本発明は、基面に珪藻類を増殖さ
せることができる基体と、前記基面に繁殖・付着した珪
藻類の剥取り手段と、珪藻類が剥ぎ取られた基面に珪藻
類が増殖する間、基体を水中に保持する保持手段とを備
えたことを特徴とする珪藻類の生産装置(請求項1)
や、珪藻類の剥取り手段が、ジェット水流であることを
特徴とする請求項1記載の珪藻類の生産装置(請求項
2)や、基体が、回転しうる円板から構成されているこ
とを特徴とする請求項1又は2記載の珪藻類の生産装置
(請求項3)や、採苗手段と、採苗手段から採取された
プランクトンを選別するプランクトン選別手段と、選別
された珪藻類を基体の剥ぎ取られた基面上に撒布する撒
布手段とを設けることを特徴とする請求項1〜3のいず
れか記載の珪藻類の生産装置(請求項4)や、プランク
トン選別手段と撒布手段との間に、選別された珪藻類に
栄養を与える栄養付与手段を設けることを特徴とする請
求項4記載の珪藻類の生産装置(請求項5)に関する。
【0009】また本発明は、基面に珪藻類を増殖させる
ことができる基体を水中に浸漬し、前記基面に増殖した
珪藻類の繁殖活性期間又はその終了後に、基面に繁殖・
付着した珪藻類を剥ぎ取り、珪藻類を増殖させることが
できる基面を新たに露出させることを特徴とする珪藻類
の生産方法(請求項6)や、ジェット水流を用いて、基
面に繁殖・付着した珪藻類を剥ぎ取ることを特徴とする
請求項6記載の珪藻類の生産方法(請求項7)や、新た
に露出した基面に、選別された珪藻類を付着させること
を特徴とする請求項6又は7記載の珪藻類の生産方法
(請求項8)や、基面に繁殖・付着した珪藻類を剥ぎ取
り、新たに露出した基面に珪藻類を増殖させることを繰
り返し行うことを特徴とする請求項6〜8のいずれか記
載の珪藻類の生産方法(請求項9)や、請求項1〜5の
いずれか記載の珪藻類の生産装置を、赤潮発生の可能性
のある水域に設置することを特徴とする赤潮発生の防止
方法(請求項10)に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の珪藻類の生産装置として
は、基面に珪藻類を増殖させることができる基体と、前
記基面に繁殖・付着した珪藻類の剥取り手段と、珪藻類
が剥ぎ取られた基面に珪藻類が増殖する間、基体を水中
に保持する手段とを備えたものであれば特に制限される
ものではなく、また、本発明の珪藻類の生産方法として
は、基面に珪藻類を増殖させることができる基体を水中
に浸漬し、前記基面に増殖した珪藻類の繁殖活性期間又
はその終了後に、基面に繁殖・付着した珪藻類を剥ぎ取
り、珪藻類を増殖させることができる基面を新たに露出
させる方法であれば特に制限されるものではないが、上
記珪藻類とは付着性珪藻類を意味する。本発明の珪藻類
の生産装置は、通常海(湖)上に設置されるが、陸上のタ
ンク中に設置して、人工の海水を用いて珪藻類を増殖さ
せ、放出された珪藻類を必要個所に配送することもでき
る。
【0011】本発明の珪藻類の生産装置における上記珪
藻類の剥取り手段としては、基面に繁殖・付着した珪藻
類を剥ぎ取ることができる手段であればどのような手段
でもよく、高圧で噴射する水流により基面に付着した珪
藻類を剥ぎ取るジェット水流や、基面に付着した珪藻類
を機械的に削り落とすスクレパー等を具体的に例示する
ことができるが、海(湖)水が豊富に存在する環境下で用
いられること、基面を損傷させることなく、長期にわた
る基面の繰り返し利用が可能なことから、ジェット水流
が好ましい。ジェット水流の噴出速度としては、線速度
5m/s以上、特に10m/s以上が好ましいが、ジェ
ット水流のノズルの先端から珪藻類を取り剥がす位置ま
での距離が一定でない場合は、ジェット水流の衝撃圧が
等しくなるように噴出速度を変化させることもできる。
また、スクレーパーを用いる場合は、その刃縁を基面の
上面に摺接するように設けることが好ましい。
【0012】剥取り手段による基面に繁殖・付着した珪
藻類の剥ぎ取りは、基面に増殖した珪藻類の繁殖活性期
間又はその終了後に行うことが、珪藻類の生産効率の点
で好ましい。すなわち、珪藻類が繁殖して基面を覆い尽
くし、珪藻類の増殖速度が低下し始めるたときに珪藻類
を剥ぎ取ると、珪藻類を多量に生産することができる。
ここで、珪藻類の繁殖活性期間とは、珪藻類が指数的に
増殖する期間又は珪藻類の増殖が飽和する前の期間をい
う。
【0013】本発明に用いられる基面(基体表面)に珪
藻類を増殖させることができる上記基体は、常時海水中
に浸漬して用いられ、その形状としては特に制限される
ものではなく、板状(円形、矩形等)、粒状、リング
状、ハニカム状等を挙げることができるが、基面に繁殖
した珪藻類を剥ぎ取り、新たな露出基面の形成のし易さ
を考慮すると、表面が平らな板状物が好ましい。また、
上記ジェット水流やスクレパー等の剥取り手段を固定し
た状態で使用し、かつ、連続的に付着した珪藻類を剥ぎ
取るために、基体を回転しうる円板として構成すること
が好ましい。また、基体の材質としては、金属製、プラ
スチック製、木製、繊維製、セラミックス製、ガラス
製、硬質ゴム製など特に制限されないが、ジェット水流
やスクレパー等の剥取り手段による付着珪藻類の剥ぎ取
り処理に対して物理的強度を備えたものが好ましい。
【0014】本発明の珪藻類の生産装置に、採苗手段
と、採苗手段から採取されたプランクトンを選別するプ
ランクトン選別手段と、選別された珪藻類を基体の剥ぎ
取られた基面上に撒布する撒布手段とを設けることが好
ましい。上記採苗手段としては、珪藻類を採取すること
ができるものであればどのようなものでもよく、例え
ば、上記剥取り手段により剥ぎ取られた珪藻類の一部を
採取することができる採苗管や、本発明の生産装置の設
置場所近傍の海(湖)水から珪藻類を含む植物プランクト
ンを採取することができる採苗管を挙げることができ
る。上記採苗手段から採取されたプランクトンを選別す
るプランクトン選別手段としては、採取されたプランク
トンの中から所望の珪藻類を選別することができる手段
であればどのようなものでもよく、所望の珪藻類とし
て、例えば、より大型で増殖速度の速い付着性珪藻類
や、所定の海(湖)域における赤潮の原因となることが予
想される種類の鞭毛藻類に対してその生育抑制あるいは
生育停止作用を有する特定の付着性珪藻類等を挙げるこ
とができる。所望の珪藻類の具体的分別基準としては、
大きさ、重さ、色等を挙げることができ、その大きさで
選別する場合はフィルタを用いることができ、重さで選
別する場合は連続式遠心分離器を用いることができ、色
で選別する場合は光学的手法を用いることができる。ま
た、上記撒布手段としては、選別された珪藻類を基体の
剥ぎ取られた基面上に撒布する手段であればどのような
ものでもよく、具体的には送液ポンプと撒水管とからな
る撒布手段等を挙げることができるが、前記剥取り手段
としてジェット水流を用いる場合は、そのノズルの先端
に隣接して撒水管の先端を設けて、これを撒布手段とす
ることもできる。
【0015】また、上記プランクトン選別手段と撒布手
段との間に、選別された珪藻類に栄養を与える栄養付与
手段を設けることが好ましい。かかる栄養付与手段とし
ては、ケイ素、リン、チッソ、鉄等の栄養塩などの珪藻
類の栄養源、好ましくは珪藻類の初期成長に適するよう
に配合された栄養源が添加・混合された増殖部を挙げる
ことができる。上記栄養塩が配合された栄養源を添加・
混合することに代えて、栄養塩に富んだ深層水を汲み上
げて増殖部に導入することもできる。この栄養付与手段
により栄養が与えられた選別された珪藻類を、撒布手段
により、珪藻類が剥ぎ取られた基面上に撒布することに
より、所望の珪藻類を多量に生産することができる。特
に、上記採苗手段として前記剥取り手段により剥ぎ取ら
れた珪藻類の一部を採取する場合、所望の珪藻類の割合
を著しく高めていくことができる。また、選別された珪
藻類に代えて、より大型で増殖速度の速い付着性珪藻類
や、所定の海(湖)域における赤潮の原因となることが予
想される種類の鞭毛藻類に対してその生育抑制あるいは
生育停止作用を有する特定の付着性珪藻類等を上記増殖
部に投入・添加し、これを富栄養化した後に撒布するこ
ともできる。
【0016】本発明の珪藻類の生産装置における基体を
水中に保持する手段としては、珪藻類が剥ぎ取られた基
面に珪藻類が増殖する間、基体を日光のあたる水表面近
くの水中に保持することができるものであればどのよう
なものでもよく、水中に構築された支持機構や、海(湖)
上の浮体から綱を使った吊り下げ・懸垂機構、海(湖)上
に浮かべたバージ中の支持機構などを保持手段として例
示することができ、本発明の珪藻類の生産装置を複数並
列して配設する場合は、これら保持手段を連設しておく
こともできる。
【0017】本発明の珪藻類の生産方法は、基面に珪藻
類を増殖させることができる基体を水中に浸漬し、前記
基面に増殖した珪藻類の繁殖活性期間又はその終了後
に、基面に繁殖・付着した珪藻類をジェット水流等によ
り剥ぎ取り、珪藻類を増殖させることができる基面を新
たに露出させ、新たに露出した基面に、選別された珪藻
類を付着させることを特徴とするものであるが、基面に
繁殖・付着した珪藻類を剥ぎ取り、新たに露出した基面
に珪藻類を増殖させることを繰り返し行うことも特徴と
する。かかる繰り返しを行った場合の珪藻類の基面上で
の増殖状態を図1に示す。図1において、縦軸は基面の
珪藻類の密度を表す珪藻プランクトン数を示し、横軸は
時間の経過を示し、横軸における増殖サイクルは、新し
く露出した基面に撒苗してから繁殖した珪藻類を剥ぎ取
るまでの時間、例えば、回転可能な円板状の基体を用い
る場合、基体が1回転する間に珪藻類の増殖が、ほぼ飽
和状態に達するようにすると、基体上の特定位置が1回
転する時間を示している。増殖サイクルの開始時におい
て、ジェット水流により新しく露出した基面にプランク
トンを含む水が撒布されると、付着したプランクトンの
うち、露出基面での初期増殖速度が速い珪藻類が優先的
に増殖する。増殖サイクルの終了時には、ほぼ飽和状態
に繁殖している珪藻類はジェット水流によって再度剥ぎ
取られ(基面洗浄)、剥ぎ取られた珪藻類は水中に放散
されることになる。
【0018】本発明の赤潮発生の防止方法としては、前
記本発明の珪藻類の生産装置を、赤潮発生の可能性のあ
る海(湖)域に設置する方法であれば、特に制限されるも
のではなく、本発明の珪藻類の生産装置を赤潮発生の可
能性のある海(湖)域に必要数設置すれば、長期にわた
り、連続的にかつ多量に珪藻類を生産することができ、
表層水中の珪藻類の減少を防止することができるので、
鞭毛藻類の異常増殖が抑制され赤潮の発生を未然に防止
することができる。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明の技術的範囲はこれら実施例により何ら限
定されるものではない。図2は本発明の珪藻類の生産装
置の平面図であり、図3は図1のA−A部における断面
図である。また、図2及び3において、1は基体、2は
受台、3は歯車、4はギアボックス、5はモータ、6は
ポンプ、7はジェット水流のノズル、8は採苗管、9は
フィルタ部、10は増殖部、11は撒苗管、12はロー
ラ、13は支持板をそれぞれ示す。
【0020】図2及び3に示される本発明の珪藻類の生
産装置における基体1は、海水中に浸漬されて用いら
れ、その基面は日光のよくあたる方向に向けて支持され
ている。基体1は、ドーナッツ状の円形平板であり、厚
いガラス板で作製されている。受台2は、基体1が嵌着
しうる受台として構成されており、基体1を支持・固定
すると共に、ローラ12で支持されて、支持板13に対
して基体1共々自由に回転できるようになっている。支
持板13に取付けられているモータ5は、一端に取付け
られたギアボックス4で減速した後、ギア3を回転さ
せ、ギア3は受台2の歯車とかみ合って、受台2とそれ
に固定された基体1を図示したBの方向に一定速度で回
転させることができる。ポンプ6はモータ5の他端に取
付けられており、海水を吸引して、ジェット水流のノズ
ル7から基面に海水を均一に吹き付けるようになってい
る。なお、ギア回転用のモータとポンプ用のモータとを
別置きとすることもできる。また、上記のように構成し
ているので、支持板13に対する珪藻類の放散部位・方
向が固定し、潮流の状態や深さに合わせて、珪藻類の放
散を任意の方向・深さに制御することができる。
【0021】採苗管8は、基体外周縁に隣接して開口し
た管であって、ジェット水流のノズル7から噴射され、
基面の珪藻類を剥ぎ取った海水の一部が導入される位置
に配置されている。採苗管8に入った珪藻類を含む海水
は、所定のメッシュのフィルタを内臓したフィルタ部9
に入り、内臓するフィルタで海水中の珪藻類の中から増
殖速度の大きいものを、その大きさを分別基準として選
別する。選別された珪藻類は海水と共に増殖部10に入
り、増殖部10に入った所望の珪藻類を含む海水は、栄
養塩が含まれた海水と混合して、海水中の選別された所
望の珪藻類に栄養を与えた後、撒苗管11からジェット
水流により新たに露出された基面に撒布される。栄養塩
としては、ケイ素、リン、チッソ、鉄等の化合物を、珪
藻類の初期成長に適するように配合したものを用い、か
かる栄養塩を増殖部10に添加・混合する。このよう
に、撒苗前にプランクトンをフィルタで選別し、かつ富
栄養化しているので、基面での珪藻類の増殖が早く、基
板の単位面積あたりに多量の珪藻類を短時間で生産する
ことができる。
【0022】
【発明の効果】本発明によると、基面に付着した珪藻類
を自動的に剥ぎ取ることにより、珪藻類の生産を連続的
に行うことができるので、本発明の珪藻類の生産装置を
必要海域に必要数配置することによって、常に珪藻類が
鞭毛藻類を卓越し、珪藻類が優占種となる状態を維持す
ることができ、このため、鞭毛藻類の異常増殖による有
害な赤潮の発生を未然に防止することができる。珪藻類
は、水中食物連鎖の一次生産者であることから、本発明
の装置を海中に設置することによって、珪藻類の増殖が
促進されると、これを餌料とする動物プランクトンが増
え、さらにこれを補食する魚介類が増えるという、食物
連鎖による魚類等の活性の向上をも期待できる。このた
め、本発明は生産性の高い良好な漁場形成にも資するも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】珪藻類の基面上での増殖状態を説明する図であ
る。
【図2】本発明の珪藻類の生産装置の平面図である。
【図3】図2のA−A部における断面図である。
【符号の説明】
1 基体 2 受台 3 歯車 4 ギアボックス 5 モータ 6 ポンプ 7 ジェット水流のノズル 8 採苗管 9 フィルタ部 10 増殖部 11 撒苗管 12 ローラ 13 支持板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 土井 康明 広島県東広島市高美が丘9−10−9 (72)発明者 大春 槇之助 広島県東広島市西条西本町8−18シティコ ーポ西条107 (72)発明者 松田 治 広島県東広島市八本松南6−8−13 Fターム(参考) 2B003 AA01 BB01 CC04 DD01 DD02 DD03 EE04 2B104 CA01 CC36 FA20

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基面に珪藻類を増殖させることができる
    基体と、前記基面に繁殖・付着した珪藻類の剥取り手段
    と、珪藻類が剥ぎ取られた基面に珪藻類が増殖する間、
    基体を水中に保持する保持手段とを備えたことを特徴と
    する珪藻類の生産装置。
  2. 【請求項2】 珪藻類の剥取り手段が、ジェット水流で
    あることを特徴とする請求項1記載の珪藻類の生産装
    置。
  3. 【請求項3】 基体が、回転しうる円板から構成されて
    いることを特徴とする請求項1又は2記載の珪藻類の生
    産装置。
  4. 【請求項4】 採苗手段と、採苗手段から採取されたプ
    ランクトンを選別するプランクトン選別手段と、選別さ
    れた珪藻類を基体の剥ぎ取られた基面上に撒布する撒布
    手段とを設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれ
    か記載の珪藻類の生産装置。
  5. 【請求項5】 プランクトン選別手段と撒布手段との間
    に、選別された珪藻類に栄養を与える栄養付与手段を設
    けることを特徴とする請求項4記載の珪藻類の生産装
    置。
  6. 【請求項6】 基面に珪藻類を増殖させることができる
    基体を水中に浸漬し、前記基面に増殖した珪藻類の繁殖
    活性期間又はその終了後に、基面に繁殖・付着した珪藻
    類を剥ぎ取り、珪藻類を増殖させることができる基面を
    新たに露出させることを特徴とする珪藻類の生産方法。
  7. 【請求項7】 ジェット水流を用いて、基面に繁殖・付
    着した珪藻類を剥ぎ取ることを特徴とする請求項6記載
    の珪藻類の生産方法。
  8. 【請求項8】 新たに露出した基面に、選別された珪藻
    類を付着させることを特徴とする請求項6又は7記載の
    珪藻類の生産方法。
  9. 【請求項9】 基面に繁殖・付着した珪藻類を剥ぎ取
    り、新たに露出した基面に珪藻類を増殖させることを繰
    り返し行うことを特徴とする請求項6〜8のいずれか記
    載の珪藻類の生産方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜5のいずれか記載の珪藻類
    の生産装置を、赤潮発生の可能性のある水域に設置する
    ことを特徴とする赤潮発生の防止方法。
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