JP2002267803A - 反射防止膜及び光学部品 - Google Patents

反射防止膜及び光学部品

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 紫外域から赤外域までの広い波長帯域での反
射を防止する。 【解決手段】 340nm〜360nmの波長域での反
射率が2.0%以下、360nm〜420nmの波長域
での反射率が1.0%以下、420nm〜690nmの
波長域での反射率が0.9%以下で、平均反射率が0.
6%以下、690nm〜900nmの波長域での反射率
が1.8%以下、900nm〜1000nmの波長域で
の反射率が4.0%以下となっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外、可視或いは
赤外領域で使用される光学機器の光学部品に施される反
射防止膜及び反射防止膜が施された光学部品に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、レンズやプリズムなどの光学
部品の表面には反射防止膜が施される。反射防止膜を形
成することにより、数多くの光学部品により構成される
光学機器全体の透過率が向上し、特に可視域の反射を抑
えて像の明るさや鮮明さ(見え易さ)が向上するためで
ある。
【0003】これまでの光学機器の多くは、可視域やそ
れよりも狭い光の波長域で使用されるため、反射防止膜
も可視域やそれよりも狭い光の波長域の反射を十分に落
とすことにより、その目的に十分供することができた。
しかし近年は、より広い波長域で使用する光学機器が必
要となり、それに対応した光学部品および反射防止膜が
必要となっている。
【0004】従来の反射防止膜としては、特許第271
1697号に記載されている。この反射防止膜は、蒸着
材料としてTiO、SiO,MgFの3種類の材
料を用いた8層構成とすることにより、400nm〜9
00nmの広い波長域で低い反射率を可能としている。
【0005】一方、反射防止膜を成膜する際のゴミ、異
物付着、シミなどは成膜不良となり、このような成膜不
良の光学部品は、十分な光学特性が得られないため、製
品として使用できない。このような場合、レンズ、フィ
ルター、プリズム等の光学部品の基板が高価であるた
め、成膜不良の光学部品から反射防止膜を剥離して再生
利用することにより、不良率、損金を減らすことができ
る。このような基板を再生するための反射防止膜の剥離
には、アルカリ溶液や酸溶液による浸漬溶解方法や再研
磨による物理的剥離方法が用いられている。
【0006】基板からの反射防止膜の除去方法として、
従来では特公平1−57323号公報が知られている。
この方法は、屈折率が基板の屈折率と等しく、且つ酸や
弱アルカリの溶液に溶解する薄膜を基板表面に設けるも
のであり、基板を酸や弱アルカリヘ浸漬することによっ
て基板から反射防止膜を分離することを可能としてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、近年の
光学機器は、可視、赤外域に加え、紫外域でも使用する
ものがあり、それに対応した光学部品及び反射防止膜が
必要となっている。例えば、顕微鏡においては、可視域
(400nm〜700nm)における透過率を高くする
ことはもちろん、様々な紫外域や赤外域の光をプローブ
として用いる観察を並列して行うために、近紫外域(3
40nm〜400nm)、赤外域(700nm〜900
nm)においても透過率を高くする必要がある。このた
めには、近紫外域から赤外域までの広い波長域で高い透
過率を有した光学部品および近紫外域から赤外域までの
広い波長域で反射率を抑えることのできる反射防止膜が
必要となる。
【0008】上述した特許第2711697号の反射防
止膜では、400nm以下の波長域で強い吸収を示すT
iOを使用しているため、この反射防止膜を施した光
学部品は紫外域において高い透過率を確保できないとい
う問題がある。また、同様の膜設計において400nm
以下で吸収を持たない材料を使用したとしても、十分に
広い波長帯域において反射を落とすことが困難である問
題がある。
【0009】また、特公平1−57322号公報に記載
された方法では、高い屈折率の物質と低い屈折率の物質
をそれぞれの蒸発源から制御良く蒸発させて基板と同じ
屈折率の剥離層を形成する必要がある。しかしながら、
真空蒸着では、2種類の材料を混合して屈折率を高精度
に制御することが非常に難しく、現実的でなく、しか
も、対象となる材料が限定される問題を有している。ま
た、目的とする屈折率によっては、剥離層の屈折率が安
定しないため、反射防止膜の光学特性が不安定ともなっ
ている。さらに、目的とする屈折率によって成膜に用い
る材料の量が異なるため、溶解性に差が生じて剥離性能
が変動する問題も有している。
【0010】本発明は、このような従来の問題点を考慮
してなされたものであり、紫外域から赤外域まで反射防
止性能を有することにより、紫外域から赤外域まで高い
透過率を備え、また、条件出しが容易で、屈折率が安定
し、剥離が容易な反射防止膜及びこの反射防止膜を備え
た光学部品を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明の反射防
止膜は、340nm〜360nmの波長域での反射率が
2.0%以下、360nm〜420nmの波長域での反
射率が1.0%以下、420nm〜690nmの波長域
での反射率が0.9%以下で、平均反射率が0.6%以
下、690nm〜900nmの波長域での反射率が1.
8%以下、900nm〜1000nmの波長域での反射
率が4.0%以下であることを特徴とする。
【0012】この請求項1の反射防止膜を光学部品に施
すことにより、340nm〜1000nmの波長域で高
い透過率を有した光学機器とすることができる。請求項
1の反射防止膜は、例えば請求項2及び3の反射防止膜
において、設計波長を460nm〜500nmとしたと
きに実現できる。
【0013】請求項2の発明は、基板側から数えて第1
層目は基板と比べて屈折率が小さい材料を、第2,4,
6,8層目に高屈折率材料を、第3,5,7,9層目に
低屈折率材料をそれぞれ形成したものであり、設計波長
をλとしたときの各層の光学的膜厚が、第1層は(2.
1〜2.7)×λ/4、第2層は(0.12〜0.3)
×λ/4、第3層は(0.5〜0.7)×λ/4、第4
層は(0.4〜0.56)×λ/4、第5層は(0.1
〜0.3)×λ/4、第6層は(1.3〜2.5)×λ
/4、第7層は(0.15〜0.28)×λ/4、第8
層は(0.36〜0.52)×λ/4、第9層は(1.
0〜1.2)×λ/4となっていることを特徴とする。
【0014】請求項3の発明は、基板側から数えて1、
3、5、7層目に高屈折率材料が、第2、4、6、8層
目に低屈折率材料をそれぞれ形成したものであり、設計
波長をλとしたときの各層の光学的膜厚が、第1層は
(0.1〜0.6)×λ/4、第2層は(0.15〜
0.7)×λ/4、第3層は(0.4〜0.7)×λ/
4、第4層は(0.05〜0.3)×λ/4、第5層は
(1.4〜2.0)×λ/4、第6層は(0.1〜0.
9)×λ/4、第7層は(0.35〜0.55)×λ/
4、第8層は(0.9〜1.2)×λ/4となっている
ことを特徴とする。
【0015】請求項2及び3の発明では、高屈折率材料
と低屈折率材料とを順次、所定の光学膜厚で積層するこ
とにより、紫外域、赤外域の反射を防止することが可能
となり、広域の波長に対して反射防止することができ
る。
【0016】これらの発明の反射防止膜は、設計波長を
変えることにより異なった波長域においても、広い波長
域の反射防止能を有している。例えば、設計波長を40
0nmとすれば、300nm〜800nm程度の波長域
で反射防止能を有した反射防止膜とすることができる。
また、例えば、設計波長を480nmとすれば、340
nm〜1000nm程度の波長域で、560nmとすれ
ば400nm〜1150nm程度の波長域で反射防止能
を有した広帯域反射防止膜とすることができ、目的に応
じて有効な広帯域反射防止膜となる。このような反射防
止膜は、従来の反射防止帯域が400nm〜900nm
であることと比較した場合、より広い反射防止帯域とな
っている。このため、この反射防止膜を用いた光学部品
や光学機器は従来の反射防止膜を用いたものと比較し
て、より広い波長域において高い透過率を有したものと
なる。
【0017】請求項2及び3の発明の反射防止膜では、
様々な波長帯域において使用することができるが、最終
的な透過率を保証するため、反射防止帯域において吸収
がないことが必要である。また、紫外域においても吸収
のない材料であるSiO、MgF、Al、H
fO、ZrO、Ta、LaTi、Y
を使用することにより、紫外域から赤外域まで高い
反射防止効果効果を得ることができる。ここで、SiO
は透過帯域が200nm〜2000nm、MgF
200nm〜7000nm、Alは200nm〜
5000nm、HfOは230nm〜2500nm
2、ZrOは320nm〜7000nm、Ta
は350nm〜7000nm、LaTiは350
nm〜7000nm、Yは250nm〜8000
nmである。
【0018】請求項2及び3の発明における低屈折率材
料としては、紫外域においても吸収のない材料の中でも
特に屈折率の低いSiO、MgFを用いることがで
きる。請求項2の発明では、第9層として最も屈折率の
低いMgFを用いることが好ましい。また、請求項3
の発明においても、第8層としてMgFを用いること
が好ましい。
【0019】請求項4の発明は、請求項2または3記載
の反射防止膜であって、前記高屈折率材料が、Hf
、ZrO、Ta、LaTi、Y
のいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とす
る。
【0020】高屈折率材料としてHfOを用いた場
合、230nm程度以上の波長域から反射防止が可能で
あり、特に高い効果を有している。また、高屈折率材料
としてZrOを用いた場合、ZrOがHfOより
も価格が安いために、320nm以上で使用する反射防
止膜においては製造コストを抑えることができる。高屈
折率材料としてTaもしくはLaTiを用
いた場合、これらは蒸発温度よりも低い温度で溶ける材
料のため、成膜が安定する。また、材料を繰り返し使用
できることからコスト的により有利であり、屈折率もH
fO、ZrOに比べて高く、より良好な光学特性を
得やすいものとすることができる。これらの材料は、必
要な反射防止域が360nm程度以上の場合において非
常に効果が高い。
【0021】以上の高屈折率材料を混合した材料を用い
る場合でも、それぞれ効果を得ることができる。
【0022】請求項5の発明は、請求項2または3記載
の反射防止膜であって、前記基板と1層目の高屈折率材
料との間にA1の層が配置されていることを特徴
とする。
【0023】A1はアルカリ溶液に容易に溶解す
る。本発明では、基板と第1層の材料との間にアルカリ
溶液に容易に溶解する層を配置することにより、基板を
アルカリ溶液に浸漬することによって、その上に成膜さ
れている反射防止膜を剥離することができる。従って、
様々な屈折率を有した基板であっても、反射防止膜の剥
離性能を低下させることがなくなる。
【0024】アルカリ溶液に容易に溶解、剥離する層と
しては、MgF,Al等を用いることができる
が、アルカリ溶液に対する溶解性のより良好なA1
が好適である。
【0025】アルカリ溶液に容易に溶解、剥離する層
は、剥離層がAlの場合、物理的膜厚dが10n
m以上で有れば剥灘可能である。また、反射防止効果を
考慮したとき、剥離する層の光学的膜厚は1.0×λ/
4以下とすることが望ましい。
【0026】請求項6の発明の光学部品は、請求項1〜
5のいずれかに記載の反射防止膜が光学面に形成されて
いることを特徴とする。
【0027】このように請求項1〜5のいずれかに記載
の反射防止膜を用いることにより、広い波長域において
高い透過率を有した光学部品となる。
【0028】
【発明の実施の形態】(実施の形態1〜4)実施の形態
1〜4では、成膜に用いる使用材料がMgF、SiO
、HfO であり、基板の屈折率が1.44、1.5
0、1.52、1.56の場合について説明する。
【0029】表1は屈折率が1.44、1.50、1.
52、1.56の基板上に形成した反射防止膜を示す。
表1の項目において光学的膜厚の値は、設計波長λとし
たときのλ/4の倍数で記載している。ここでの設計波
長は480nmである。
【0030】表1に実施の形態1〜4における膜設計値
を記載してある。また、図1〜図4は実施の形態1〜4
のそれぞれにおける反射防止膜の分光反射率特性であ
る。表2は実施の形態1〜4における反射防止膜の特性
を示す代表値である。図1〜図4及び表2から明らかな
ように、各実施の形態における反射防止膜は、340n
m〜1000nmにわたる非常に広い帯域において反射
防止効果を有しており、請求項1の反射防止膜となって
いる。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】実施の形態1〜4を比較して判るように、
ガラスからなる基板と、基板の屈折率よりも屈折率が小
さい材料との屈折率差が大きいほど、分光反射率特性の
波うちがより大きくなる。これは反射防止帯域を広げる
のには役立つが、波うちにより可視域において色づきが
発生しやすくなる。実施の形態4では、基板と第1層目
の屈折率差が0.1程度となっているが、これよりも屈
折率差が大きくなると、波うちによる弊害が大きくなっ
て好ましくない。従って、基板と第1層目の屈折率差は
0.1以内程度であることが好ましい。
【0034】実施の形態1〜4では、膜材料としてMg
、SiO、HfOを使用しているが、これに留
まらず、これらの材料と同様の屈折率を有した材料であ
れば、同様の実施は可能である。特に、Ta、Z
rO、LaTi,Y またはこれらの混合
物やこれらを主成分とする材料は、反射防止帯域におい
て有意な吸収を持たない膜を形成することが可能であ
る。これに加えて、蒸着条件によって実施の形態におけ
るHfOに近い屈折率の膜を形成できるため、HfO
の代替の材料として使用することができる。
【0035】これらの実施の形態においては、基板を2
50℃程度に加熱して行う真空蒸著法により反射防止膜
の形成を行った結果を示しているが、反射防止膜の形成
方法はこれに限定されるものではなく、スパッタリン
グ、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸着などの
他の手法によっても同等の光学特性を有する反射防止膜
を得ることができる。
【0036】また、これらの実施の形態においては、屈
折率が1.44〜1.56の範囲の基板を用いたが、設
計上は1.40〜1.60の範囲の基板に対して高い反
射防止性能を有した反射防止膜を得ることができる。但
し、入手性が良い中で最も低い屈折率を有する光学ガラ
ス(基板)の屈折率が約1.44であり、また上述した
ように基板と第1層目との屈折率差が0.1以下が好ま
しいことから、屈折率1.44〜1.56の範囲の基板
に対して高い効果を得ることができる。すなわち1.4
4〜1.56の範囲の基板を用いた場合には、安定した
屈折率を得やすいMgF、SiOを第1層目の成膜
材料として用いることができるため、反射防止膜の特性
をより安定させることができる.
【0037】このような実施の形態では、紫外波長域か
ら赤外波長域にわたる非常に広い帯域で高い反射防止効
果を有する反射防止膜とすることができる。この反射防
止膜をその光学面に形成することにより、非常に広い帯
域で高い透過率を有する光学部品とすることができる。
【0038】(実施の形態5〜7)実施の形態5〜7で
は、成膜に用いる使用材料がMgF,SiO,Ta
であり、基板の屈折率が1.52の場合について
説明する。
【0039】表3は屈折率が1.52の基板上に設けた
反射防止膜を示す。表3の項目において光学的膜厚の値
は設計波長λとしたときのλ/4の倍数で記載してあ
る。
【0040】表3に実施の形態5〜7における膜設計値
を記載してある。また、図5〜図7は実施の形態5〜7
のそれぞれにおける反射防止膜の分光反射率特性であ
る。表4は実施の形態5〜7における反射防止膜の特性
を示す代表値である。図5〜図7及び表4から明らかな
ように、各実施の形態における反射防止膜は、340n
m〜1000nmにわたる非常に広い帯域において反射
防止効果を有している。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】実施の形態5は、近紫外域及び可視域での
反射が特に低くなっており、目的により有用性が高い
が、900nm付近で反射率が2%を越えるなど、請求
項1の反射防止膜とはなっていない。実施の形態6,7
はより広帯域な特性を有し、特に赤外域における反射率
が低く、請求項1の反射防止膜となっている。これから
明らかなように、各実施の形態における反射防止膜は、
それぞれ紫外波長域から赤外波長域にわたる非常に広い
帯域において反射防止効果を有しており、目的により使
い分けることができ、それぞれ高い効果を有している。
【0044】これらの実施の形態においては、膜材料と
してMgF,SiO,Ta を使用している
が、これに留まらず、これらの材料と同様の屈折率を有
する材料で有れば、同様に実施することができる。特
に、ZrO,LaTiまたはこれらの混合物や
これらを主成分とする材料は、反射防止帯域において有
意な吸収を持たない膜を形成することが可能である。こ
れに加えて、蒸着条件によって実施の形態におけるTa
に近い屈折率の膜を形成できるため、Ta
の代替の材料として使用することにより、同等の光学特
性を有する広帯域の反射防止膜とすることができる。
【0045】これらの実施の形態においては、基板を2
50℃程度に加熱して行う真空蒸著法により反射防止膜
の形成を行つた結果を示しているが、反射防止膜の形成
方法はこれに限定されるものではなく、スパッタリン
グ、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸着などの
他の手法によっても同等の光学特性を有する反射防止膜
を得ることができる。
【0046】これらの実施の形態では、紫外波長域から
赤外波長域にわたる非常に広い帯域で高い反射防止効果
を有する反射防止膜とすることができる。そして、この
反射防止膜をその光学面に形成することにより、非常に
広い帯域で高い透過率を有する光学部品とすることがで
きる。
【0047】(実施の形態8〜10)実施の形態8〜1
0では、成膜に用いる使用材料がMgF及びZrO
とTaとの混合物であり、基板の屈折率が1.4
4の場合について説明する。
【0048】表5は屈折率が1.44の基板上に設けた
反射防止膜を示す。表5の項目において光学的膜厚の値
は設計波長λとしたときのλ/4の倍数で記載してあ
る。
【0049】表5に実施の形態8〜10における膜設計
値を記載してある。また、図8〜図10は実施の形態8
〜10のそれぞれにおける反射防止膜の分光反射率特性
である。表6は実施の形態8〜10における反射防止膜
の特性を示す代表値である。図8〜図10及び表6から
明らかなように、各実施の形態における反射防止膜は、
340nm〜1000nmにわたる非常に広い帯域にお
いて反射防止効果を有している。また、使用している材
料がMgFとZrO及びTaの混合物との2
種類であり、生産管理上有利となっている。
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】実施の形態8では、各層の膜厚が最適化さ
れており、請求項1の反射防止膜となっている。実施の
形態9,10は実施の形態8の各層の膜厚に対して、意
図杓に第1層の膜厚を変えているが、それぞれ広帯域の
反射防止膜となっている。これから明らかなように、第
1層の膜厚は反射防止膜の光学特性に比較的大きい影響
を与えにくい。
【0053】これらの実施の形態においては、膜材料と
してMgF及びZrOとTaとの混合物を使
用しているが、これに留まらず、これらの材料と同様の
屈折率を有する材料であれば、同様に実施することがで
きる。特に、HfO、ZrO、Ta,LaT
、Yまたはこれらの混合物やこれらを主
成分とする材料は、反射防止帯域において有意な吸収を
持たない膜を形成することが可能である。これに加え
て、蒸着条件によって、実施の形態におけるZrO
Taの混合物に近い屈折率の膜を成膜できるた
め、ZrOとTa の混合物の代替の材料として
使用することにより、同等の光学特性を有した広帯域反
射防止膜とすることができる。
【0054】これらの実施の形態においては、基板を2
50℃程度に加熱して行う真空蒸著法により反射防止膜
の形成を行つた結果を示しているが、反射防止膜の形成
方法はこれに限定されるものではなく、スパッタリン
グ、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸着などの
他の手法によっても同等の光学特性を有する反射防止膜
を得ることができる。
【0055】これらの実施の形態では、紫外波長域から
赤外波長域にわたる非常に広い帯域で高い反射防止効果
を有する反射防止膜とすることができる。そして、この
反射防止膜をその光学面に形成することにより、非常に
広い帯域で高い透過率を有する光学部品とすることがで
きる。
【0056】(実施の形態11)この実施の形態では、
成膜に用いる使用材料がAl、MgF、SiO
、HfOであり、基板の屈折率が1.52の場合に
ついて説明する。また、この実施の形態では、Al
からなる剥離層を有している。
【0057】表7は屈折率が1.52の基板上に設けた
反射防止膜を示す。表7の項目において光学的膜厚の値
は設計波長λとしたときのλ/4の倍数で記載してあ
る。
【0058】表7にこの実施の形態における膜設計値を
記載してある。また、図11はこの実施の形態における
反射防止膜の分光反射率特性である。表8は反射防止膜
の特性を示す代表値である。図11及び表8から明らか
なように、この実施の形態における反射防止膜は、34
0nm〜1000nmにわたる非常に広い帯域において
反射防止効果を有しており、請求項1の反射防止膜とな
っている。
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】本実施の形態の反射防止膜を施した基板を
3分間アルカリ溶液に浸漬したところ、基板への影響な
く反射防止膜を基板から剥離することができた。これは
Al 層がアルカリ溶液に対し、容易に溶解するた
め、その上に積層された反射防止層と基板との解離が容
易となるためである.ここでは、アルカリ溶液として
は、水酸化ナトリウム水溶液(90wt%)を用いた。
また、剥離層として用いたAlは、使い勝手が良
く、耐環境性も高いため、反射防止膜の材料として使用
することができる。さらに、成膜にあたっての条件設定
が容易であり、得られる反射防止膜の特性も安定しやす
い。なお、この剥離層の物理膜厚は約11nmである。
【0062】この実施の形態では、膜材料として、Al
、MgF、SiO、HfOを使用している
が、これに留まらず、これらの材料と同様の屈折率を有
する材料で有れば、同様に実施することができる。特
に、Ta、ZrO、LaTi、Y
またはこれらの混合物やこれらを主成分とする材料は、
反射防止帯域において有意な吸収を持たない膜を形成す
ることが可能である。これに加えて、蒸着条件によっ
て、この実施の形態におけるHfOに近い屈折率の膜
を形成できるため、HfOの代替の材料として使用す
ることにより、同等の光学特性を有する反射防止膜とす
ることができる。
【0063】この実施の形態においては、基板を250
℃程度に加熱して行う真空蒸著法により反射防止膜の形
成を行つた結果を示しているが、反射防止膜の形成方法
はこれに限定されるものではなく、スパッタリング、イ
オンプレーティング、イオンアシスト蒸着などの他の手
法によっても同等の光学特性を有する反射防止膜を得る
ことができる。
【0064】この実施の形態では、紫外波長域から赤外
波長域にわたる非常に広い帯域で高い反射防止効果を有
し、しかもアルカリ溶液への浸漬によって容易に基板か
ら剥離することの可能な反射防止膜とすることができ
る。そして、この反射防止膜をその光学面に形成するこ
とにより、非常に広い帯域で高い透過率を有する光学部
品とすることができる。
【0065】(実施の形態12〜14)表9に実施の形
態12〜14の膜設計値を記載してある。表10は実施
の形態12〜14における反射防止膜の特性を示す代表
値である。反射防止膜は、10 −4〜10−6Torr
の真空域内での真空蒸着により薄膜を形成した。反射防
止膜の形成方法は、これに限定されるものでなく、スパ
ッタリング、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸
着によっても形成することができる。
【0066】これらの実施の形態では、低屈折率材料と
してMgF及びSiOを用い、高屈折率材料として
HfOを用いたが、これに限定されるものではなく、
これらの材料と同様な屈折率を有する材料であれば、同
様な反射防止膜を得ることができる。
【0067】
【表9】
【0068】
【表10】
【0069】図12〜図14は実施の形態12〜14の
分光反射率特性をそれぞれ示している。および表10か
ら明らかなように、各種屈折率を有する基板に対し、波
長340nm〜1000nmにわたる非常に広い帯域に
おいて反射防止効果を有している。
【0070】また、これらの実施の形態では、低屈折率
材料としてMgFとSiOを用いているが、このよ
うに中間層(2、4、6層)にSiOを用いること
で、膜による光の散乱を減らし、全体の透過率を増やす
ことが可能となる。
【0071】これらに実施の形態では、紫外域から赤外
域にわたる広い波長帯域において、有効な反射防止効果
を有したものとなっている。そして、この反射防止膜を
光学面に設けた光学部品とすることにより、非常に広い
帯域で高い透過率を有する光学部品とすることができ
る。
【0072】(実施の形態15〜17)表11に実施の
形態15〜17の膜設計値を記載してある。表12は実
施の形態15〜17における反射防止膜の特性を示す代
表値である。反射防止膜は、10−4〜10−6Tor
rの真空域内での真空蒸着イオンアシストにより薄膜を
形成した。反射防止膜の形成方法は、これに限定される
ものでなく、スパッタリング、イオンプレーティングに
よっても形成することができる。
【0073】これらの実施の形態では、低屈折率材料と
してMgFを用い、高屈折率材料としてTa
用いたが、これに限定されるものではなく、これらの材
料と同様な屈折率を有する材料であれば、同様な反射防
止膜を得ることができる。
【0074】
【表11】
【0075】
【表12】
【0076】図15〜図17は実施の形態15〜17の
分光反射率特性をそれぞれ示している。および表12か
ら明らかなように、各種屈折率を有する基板に対し、波
長340nm〜1000nmにわたる広い帯域において
反射防止効果を有している。
【0077】また、これらの実施の形態では、高屈折率
材料として高い屈折率を有するTa を用いること
により、各波長域帯で反射率を更に低下させることがで
きる。
【0078】これらの実施の形態では、より高い屈折率
を有する高屈折率材料を用いることにより、紫外域から
赤外域にわたる広い波長帯域において、より高い反射防
止効果を有したものとなっている。そして、この反射防
止膜を光学面に設けた光学部品とすることにより、非常
に広い帯域で高い透過率を有する光学部品とするこてと
ができる。
【0079】(実施の形態18〜20)表13に実施の
形態18〜20の設計値を記載してある。表14は実施
の形態18〜20における反射防止膜の特性を示す代表
値である。反射防止膜は、10 −4〜10−6Torr
の真空域内での真空蒸着薄膜を形成した。また、基板と
第1層との間に、Al層を光学的膜厚で(0.1
9〜0.21)×λ/4形成した。
【0080】
【表13】
【0081】
【表14】
【0082】図18〜図20は実施の形態18〜20の
分光反射率特性をそれぞれ示している。および表14か
ら明らかなように、各種屈折率を有する基板に対し、波
長340nm〜1000nmにわたる広い帯域において
反射防止効果を有している。
【0083】表15に反射防止膜のアルカリ溶液浸漬時
の剥離性を示す。アルカリ溶液としては水酸化ナトリウ
ム水溶液(90wt%)を用いた。
【0084】膜の剥離は基板をアルカリ溶液に浸漬し、
反射防止膜の剥離までの時間を計測した。その結果、実
施の形態18〜20の剥離時間がもっとも短く、剥離性
が高いことが分かる。また、屈折率の異なる基板に対し
ても、同様の剥離時間となっている。これは、A1
層がアルカリ溶液に対し、容易に溶解するため、その
上に積層された反射防止膜と基板の解離が容易となるた
めである。
【0085】
【表15】
【0086】これらの実施の形態では、紫外域から赤外
域にわたる広い波長帯域において、有効な反射防止効果
を有すると共に、アルカリ浸漬により容易に剥離するこ
とができる。このため、高価な光学部品の再生が可能と
なる。
【0087】
【発明の効果】請求項1〜請求項4の発明によれば、紫
外域から赤外域までの広い波長域において反射防止能を
有し、特に可視域において反射率が著しく低い反射防止
膜となる。従って、広い波長帯域において高い透過率が
要求される光学部品、光学機器に適用することができ
る。
【0088】請求項5の発明によれば、請求項1〜4の
発明の効果に加えて、基板からの剥離が容易となり、基
板の再利用を行うことができる。
【0089】請求項6の発明によれば、広い波長帯域に
おいて高い透過率を有した光学部品となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の分光反射特性図である。
【図2】実施の形態2の分光反射特性図である。
【図3】実施の形態3の分光反射特性図である。
【図4】実施の形態4の分光反射特性図である。
【図5】実施の形態5の分光反射特性図である。
【図6】実施の形態6の分光反射特性図である。
【図7】実施の形態7の分光反射特性図である。
【図8】実施の形態8の分光反射特性図である。
【図9】実施の形態9の分光反射特性図である。
【図10】実施の形態10の分光反射特性図である。
【図11】実施の形態11の分光反射特性図である。
【図12】実施の形態12の分光反射特性図である。
【図13】実施の形態13の分光反射特性図である。
【図14】実施の形態14の分光反射特性図である。
【図15】実施の形態15の分光反射特性図である。
【図16】実施の形態16の分光反射特性図である。
【図17】実施の形態17の分光反射特性図である。
【図18】実施の形態18の分光反射特性図である。
【図19】実施の形態19の分光反射特性図である。
【図20】実施の形態20の分光反射特性図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡邊 正 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 和田 順雄 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 川俣 健 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 Fターム(参考) 2K009 AA09 CC03 CC06 CC14 4F100 AA27C AA27E AG00 AT00B BA05 BA07 BA08 BA10B BA10E BA26 EH66 EH662 GB51 GB90 JL14 JN06A JN06C JN06D JN06E JN08 JN18 JN18A JN18B JN18C JN18D JN18E YY00A YY00C YY00D YY00E 4G059 AA11 AB11 AC04 EA01 EB03 EB04 GA02 GA04 GA12

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 340nm〜360nmの波長域での反
    射率が2.0%以下、360nm〜420nmの波長域
    での反射率が1.0%以下、420nm〜690nmの
    波長域での反射率が0.9%以下で、平均反射率が0.
    6%以下、690nm〜900nmの波長域での反射率
    が1.8%以下、900nm〜1000nmの波長域で
    の反射率が4.0%以下であることを特徴とする反射防
    止膜。
  2. 【請求項2】 基板側から数えて第1層目は基板と比べ
    て屈折率が小さい材料を、第2,4,6,8層目に高屈
    折率材料を、第3,5,7,9層目に低屈折率材料をそ
    れぞれ形成したものであり、設計波長をλとしたときの
    各層の光学的膜厚が、第1層は(2.1〜2.7)×λ
    /4、第2層は(0.12〜0.3)×λ/4、第3層
    は(0.5〜0.7)×λ/4、第4層は(0.4〜
    0.56)×λ/4、第5層は(0.1〜0.3)×λ
    /4、第6層は(1.3〜2.5)×λ/4、第7層は
    (0.15〜0.28)×λ/4、第8層は(0.36
    〜0.52)×λ/4、第9層は(1.0〜1.2)×
    λ/4となっていることを特徴とする反射防止膜。
  3. 【請求項3】 基板側から数えて1、3、5、7層目に
    高屈折率材料を、第2、4、6、8層目に低屈折率材料
    をそれぞれ形成したものであり、設計波長をλとしたと
    きの各層の光学的膜厚が、第1層は(0.1〜0.6)
    ×λ/4、第2層は(0.15〜0.7)×λ/4、第
    3層は(0.4〜0.7)×λ/4、第4層は0.05
    〜0.3)×λ/4、第5層は(1.4〜2.0)×λ
    /4、第6層は(0.1〜0.9)×λ/4、第7層は
    0.35〜0.55)×λ/4、第8層は(0.9〜
    1.2)×λ/4となっていることを特徴とする反射防
    止膜。
  4. 【請求項4】 前記高屈折率材料が、HfO、ZrO
    、Ta、LaTi、Yのいずれか
    又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項2ま
    たは3記載の反射防止膜。
  5. 【請求項5】 前記基板と1層目の間にA1の層
    が配置されていることを特徴とする請求項2または3記
    載の反射防止膜。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の反射防
    止膜が光学面に形成されていることを特徴とする光学部
    品。
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