JP2002267003A - 自動変速機およびその変速制御装置 - Google Patents

自動変速機およびその変速制御装置

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JP2002267003A
JP2002267003A JP2001065342A JP2001065342A JP2002267003A JP 2002267003 A JP2002267003 A JP 2002267003A JP 2001065342 A JP2001065342 A JP 2001065342A JP 2001065342 A JP2001065342 A JP 2001065342A JP 2002267003 A JP2002267003 A JP 2002267003A
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automatic transmission
torque
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JP2001065342A
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Kunihiro Iwatsuki
邦裕 岩月
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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  • Control Of Transmission Device (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動変速機での変速ショックを悪化させるこ
となく動力損失を低減する。 【解決手段】 二つの部材の間に設けられ、正逆いずれ
か一方の回転方向で係合してこれら二つの部材を連結す
る第1の一方向係合機構F1 と、前記二つの部材の間に
設けられ、正逆いずれか他方の回転方向で係合してこれ
ら二つの部材を連結する第2の一方向係合機構F2 と、
前記第1の一方向係合機構と第2の一方向係合機構との
少なくともいずれか一方を、前記二つの部材の間に係合
方向のトルクが掛かっても前記二つの部材を連結しない
無効状態と前記二つの部材の間に係合方向のトルクが掛
かった場合に係合して前記二つの部材を連結する有効状
態とに切り換える切換手段27とが設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、所定の二つの部
材を連結し、あるいはその連結を解くことにより変速比
を変化させる自動変速機およびその自動変速機での変速
を制御するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両用の自動変速機として、有段式変速
機および無段変速機が従来、知られている。前者の有段
変速機は、複数の遊星歯車機構によって形成される動力
の伝達経路を、クラッチやブレーキなどの係合機構を適
宜に係合・解放させて選択し、それぞれの経路に応じた
変速比を設定するように構成されている。また、後者の
無段変速機は、入力側の部材と出力側の部材との間に、
ベルトやパワーローラなどの動力伝達部材を介在させ、
その動力伝達部材とのトルク伝達点の半径を変更するこ
とにより、変速比を無段階に、すなわち連続的に変化さ
せるように構成されている。
【0003】前述した有段式変速機における係合機構と
して、従来、湿式多板クラッチやブレーキなどのいわゆ
る摩擦式係合機構が使用されている。そのため、変速に
伴って歯車や回転軸あるいはエンジンなどの回転部材の
回転数を変化させる場合、それらの回転部材の慣性エネ
ルギーを変速に関与する摩擦式係合機構の摩擦によって
吸収でき、出力軸トルクの急変を防止して滑らかな変速
をおこなうことができる。また、無段変速機では、それ
自体での変速の際にクラッチやブレーキなどの係合装置
の切り換えをおこなうことはないが、変速比の幅を拡大
したり、あるいは動力の伝達効率を向上させるために、
歯車変速機構を併用することがあり、その場合には、歯
車変速機構におけるトルクの伝達経路を変更するため
に、摩擦式の係合機構を使用することがある。その一例
が、特表平11−504415号公報に記載されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の摩擦式係合機構
におけるトルクの伝達は、交互に配置されているディス
クとプレートとを互いに接触する方向に押圧して摩擦力
を増大させることにより生じる。また、反対にその押圧
力を解放すれば、ディスクとプレートとの間の摩擦力が
ほぼゼロになるので、トルクの伝達が生じなくなる。し
かしながら、係合応答性を良好にし、また限られたスペ
ースに収容するなどの要請があるから、摩擦式係合機構
を解放状態にしても、そのディスクおよびプレートが完
全に離れているわけではなく、押圧力(面圧)が生じな
い程度の状態で接触させている場合がある。特に、潤滑
油を摩擦面の間に介在させる湿式の係合機構では、潤滑
油を介して実質的な接触状態となる。そのため、摩擦式
係合機構では、解放状態であってもトルクの伝達が皆無
にはならず、多板式係合機構や湿式係合機構では、解放
状態でも伝達トルク容量を特に持ちやすい。
【0005】この種の係合機構を使用した上記の自動変
速機や無段変速機では、その係合機構を解放した変速状
態であっても、その係合機構における相対回転によって
トルクの伝達が生じ、それに伴う動力が熱の形で消費さ
れてしまう。いわゆる引き摺りトルクによる動力の損失
である。
【0006】摩擦式の係合機構は、上述したように、係
合もしくは解放の過渡状態で滑りを生じるので、伝達ト
ルク容量が次第に増大し、トルクの変化を緩和すること
ができるが、その反面、燃費の悪化の要因になってお
り、昨今の排ガスの削減や環境の保全などの要請を考慮
すれば、改善が望まれるところである。
【0007】この発明は、上記の技術的課題に着目して
なされたものであり、変速ショックを悪化させることな
く燃費を改善することのできる自動変速機およびその変
速を制御するための装置を提供することを目的とするも
のである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】この発明
の自動変速機は、上記の目的を達成するために、係合方
向が互いに反対の二つの一方向係合機構を、所定の二つ
の部材の間に配置し、かつその少なくともいずれか一方
の一方向係合機構を選択的に有効化する手段を設けたこ
とを特徴とするものである。また、この発明の変速制御
装置は、所定の二つの部材の間に噛み合い式の係合機構
を設け、その噛み合い式の係合機構を有効化する際にそ
れら二つの部材の相対回転数を低減させる手段を設けた
ことを特徴とするものである。
【0009】より具体的には、請求項1の発明は、所定
の変速比を設定している状態ではいずれか二つの部材の
間で相対回転が生じてこれらの部材の間でのトルク伝達
が生じず、他の変速比を設定している状態では、前記二
つの部材がトルク伝達可能に連結されて一体となる自動
変速機において、前記二つの部材の間に設けられ、正逆
いずれか一方の回転方向で係合してこれら二つの部材を
連結する第1の一方向係合機構と、前記二つの部材の間
に設けられ、正逆いずれか他方の回転方向で係合してこ
れら二つの部材を連結する第2の一方向係合機構と、前
記第1の一方向係合機構と第2の一方向係合機構との少
なくともいずれか一方を、前記二つの部材の間に係合方
向のトルクが掛かっても前記二つの部材を連結しない無
効状態と前記二つの部材の間に係合方向のトルクが掛か
った場合に係合して前記二つの部材を連結する有効状態
とに切り換える切換手段とが設けられていることを特徴
とする自動変速機である。
【0010】したがって請求項1の発明では、第1およ
び第2の一方向係合機構が共に有効状態となることによ
り、前記二つの部材が、正転方向および逆転方向のいず
れの方向にも連結され、実質的に一体的に連結される。
また、いずれか一方の一方向係合機構を無効状態にする
と、その一方向係合機構が係合する方向において、前記
二つの部材の連結が解かれる。その結果、これら二つの
部材の相対回転を生じさせる変速状態を達成することが
できる。その場合、一方向係合機構が、スプラグなどの
転動体を噛み込む形式のものやラチェットなどの可動片
を相手部材に噛み合わせる形式のものなどを採用するこ
とにより、解放状態でトルクの伝達が生じない。また、
一方の一方向係合機構のみを無効化し、また有効化すれ
ば、前記二つの部材の連結を実質的に解いた解放状態と
し、また連結した係合状態とすることができ、その制御
が容易になる。
【0011】また、請求項2の発明は、所定の変速状態
ではいずれか二つの部材を相対回転させてこれら二つの
部材の間でトルクを伝達させず、かつ他の変速状態では
前記二つの部材を一体化させる自動変速機の変速制御装
置において、前記所定の変速状態では無効化されて前記
二つの部材の間でのトルクを伝達することがなくかつ前
記他の変速状態では有効化されて前記二つの部材を一体
化するように連結する、前記二つの部材の間に設けられ
た噛み合い式係合機構と、前記所定の変速状態から前記
他の変速状態への切り換えの指示を検出するシフト検出
手段と、前記所定の変速状態から前記他の変速状態への
切り換えの指示が前記シフト検出手段によって検出され
た場合に、前記二つの部材の相対回転数を低下させる相
対回転数低減手段と、前記二つの部材の相対回転数が所
定値以下になった際に前記噛み合い式係合機構を有効化
する有効化手段とを備えていることを特徴とする変速制
御装置である。
【0012】したがって請求項2の発明では、所定の変
速状態では、噛み合い式係合機構が有効化されて前記二
つの部材が連結される。また、他の変速状態では、その
噛み合い式係合機構が無効化されて前記二つの部材の連
結が解かれ、相対回転が生じる。その場合、これら二つ
の部材を連結する機構が噛み合い式であるため、解放状
態ではトルクの伝達がなく、動力損失が防止される。ま
た、前記他の変速状態から所定の変速状態に変更する場
合、すなわち噛み合い式係合機構を無効状態から有効状
態に変更する場合、前記二つの部材の相対回転数が低減
され、その後、噛み合い式係合機構が有効化される。そ
の結果、二つの部材が連結される時点では、両者の回転
数がほぼ一致しているので、噛み合い式係合機構が有効
化されて二つの部材が連結されることによる回転数の急
変が殆どなく、変速ショックが防止もしくは抑制され
る。
【0013】さらに、請求項3の発明は、請求項2の構
成において、前記相対回転数低減手段が、前記自動変速
機が搭載されている車両の制動をおこなう制動装置を含
むことを特徴とする変速制御装置である。
【0014】したがって請求項3の発明では、所定の変
速状態から他の変速状態に変更する場合、制動装置によ
って車両が減速されることにより、前記二つの部材の相
対回転数が低下する。そのため変速を実行するにあたっ
て噛み合い式係合機構を有効化して前記二つの部材を連
結する場合、既存の制動装置を利用して相対回転数を低
下させることができるので、噛み合い式係合装置が係合
することによるショックを防止できると同時に、自動変
速機あるいは変速制御装置の大型化を防止することがで
きる。
【0015】またさらに、請求項4の発明は、請求項3
の構成に加えて、前記相対回転数低減手段が、前記車両
の動力源に対する出力要求量に応じて前記制動装置の制
動力を制御する手段を含むことを特徴とする変速制御装
置である。
【0016】したがって請求項4の発明では、出力要求
量が大きい場合には、制動力が相対的に大きくなる。出
力要求量が大きくなっているのは、変速状態を直ちに切
り換えてその切り換え後の状態で走行することを強く望
んでいることを意味しているので、制動力を増大させて
相対回転数の低下を促進し、かつ噛み合い式係合機構を
有効化するタイミングを早くする。その結果、運転者の
意図に合致した変速が可能になる。
【0017】そして、請求項5の発明は、請求項2の構
成に加えて、前記相対回転数低減手段が、前記自動変速
機が搭載されている車両の動力源の出力を制御する出力
制御装置を含むことを特徴とする変速制御装置である。
【0018】したがって請求項5の発明では、前記所定
の変速状態から他の変速状態に変更する場合、動力源の
出力が増大もしくは低減されることにより、前記二つの
部材の相対回転数が低下させられ、その後、噛み合い式
係合機構が有効化されて二つの部材が連結される。その
ため、噛み合い式係合機構が有効化されて二つの部材が
連結される際にショックが生じることが防止され、また
既存の手段を利用して相対回転数を低下させるので、自
動変速機あるいは変速制御装置の大型化を防止すること
ができる。
【0019】
【発明の実施の形態】つぎにこの発明を具体例に基づい
て説明する。図1は、この発明に係る自動変速機1を搭
載した車両の駆動系統および制御系統を模式的に示す図
であり、エンジン2が車両の幅方向に向けて配置され、
その出力側に自動変速機1が連結されている。この自動
変速機1は、ベルト式の無段変速機構(バリエータ)3
と歯車変速機構4とを主体として構成されている。
【0020】図2はその自動変速機1のスケルトン図で
あり、エンジン2の出力軸に、自動変速機1における入
力部材としての入力軸5が配置され、その入力軸5とエ
ンジン2とが連結されている。したがってエンジン2の
出力軸と入力軸5とは、常時、共に回転するように構成
されている。なお、エンジン2は、要は、燃料を燃焼し
て動力を出力する動力装置であって、ガソリンエンジン
やディーゼルエンジン、天然ガスエンジンなどを採用す
ることができ、さらにモータあるいはモータ・ジェネレ
ータと併用されたものであってもよい。また、このエン
ジン2は、スロットル開度などの負荷を電気的に制御で
きるように構成されており、その一例として電子スロッ
トルバルブを備えたエンジン2が使用されている。
【0021】その入力軸5の先端側すなわちエンジン2
とは反対側に、バリエータ3における駆動部材である駆
動プーリー6が配置され、その中心軸線上に設けられて
いる駆動軸6Aが、入力軸5と同一軸線上に位置してい
る。この駆動プーリー6は、固定シーブに対して可動シ
ーブを軸線方向に移動させて両者の間隔すなわち溝幅を
大小に変化させるように構成されている。なお、その可
動シーブは、固定シーブに対してエンジン2とは反対側
(すなわち図2での左側)に配置されている。それに伴
って可動シーブを軸線方向に前後動させるためのアクチ
ュエータ7が、可動シーブの背面側(図2での左側)に
配置されている。
【0022】また、バリエータ3における従動部材であ
る従動プーリー8が、上記の駆動プーリー6と平行に配
置されている。この従動プーリー8は、上記の駆動プー
リー6と同様の構成であって、固定シーブと可動シーブ
とを有し、その可動シーブをアクチュエータ9によって
前後動させて溝幅を変更するように構成されている。な
お、各プーリー6,8の溝幅は、一方が増大することに
伴って他方が減少するように制御され、その際にそれぞ
れのプーリー6,8の軸線方向での中心位置が変化しな
いようにするために、従動プーリー8におけるアクチュ
エータ9は、駆動プーリー6におけるアクチュエータ7
とは軸線方向で反対側すなわち図2での右側に配置され
ている。
【0023】そして、これらのプーリー6,8に伝動部
材であるベルト10が巻き掛けられている。したがっ
て、各プーリー6,8の溝幅を互いに反対方向に変化さ
せることにより、これらのプーリー6,8に対するベル
ト10の巻き掛け有効径が変化して各プーリー6,8の
回転数比すなわち入出力回転数比が連続的に変化するよ
うになっている。また、従動プーリー8に対してトルク
を入出力するために、その従動プーリー8に従動軸11
が取り付けられている。
【0024】つぎに、歯車変速機構4について説明する
と、図2に示す例ではその歯車変速機構としてシングル
ピニオン型の遊星歯車機構4が採用されており、その外
歯歯車であるサンギヤ12と、そのサンギヤ12に対し
て同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ13
と、これらのサンギヤ12とリングギヤ13とに噛合し
たピニオンギヤを自転および公転自在に保持したキャリ
ヤ14とを回転要素とするものであって、上記の入力軸
5の外周側に入力軸5と同軸上に配置されている。より
具体的には、入力軸5の外周に、サンギヤ軸15が回転
自在に嵌合されており、前記サンギヤ12がこのサンギ
ヤ軸15に一体化されている。
【0025】この遊星歯車機構4におけるキャリヤ14
と入力軸5とを選択的に連結するクラッチCh が設けら
れている。このクラッチCh は、遊星歯車機構4に増速
作用を生じさせるためのものであって、いわゆる高速モ
ード用クラッチである。さらに、キャリヤ14を選択的
に固定するブレーキBr が設けられている。これは、遊
星歯車機構4に反転減速作用を生じさせるためのもので
あって、リバースブレーキとなっている。
【0026】さらに、前記入力軸5の先端側、すなわち
上記の高速モード用クラッチCh と駆動プーリー6との
間に、入力軸5と駆動軸6A(駆動プーリー6)とを選
択的に連結する発進用クラッチCs が設けられている。
この発進用クラッチCs は、そのトルク容量を徐々に変
化させることが可能なクラッチであり、一例として摩擦
クラッチが採用されている。またこの発進用クラッチC
s は、湿式あるいは乾式のいずれでもよい。
【0027】前記の入力軸5を含む平面と該平面に平行
でかつ前記従動軸11を含む平面との間に、これらの軸
5,11と平行に出力部材に相当する出力軸16が回転
自在に配置されている。この出力軸16と前記リングギ
ヤ13とが一対のギヤ17,18によって連結されてい
る。また、この出力軸16とフロントデファレンシャル
19とが、他の一対のギヤ20,21によって連結され
ている。そして、このフロントデファレンシャル19か
ら左右の車輪22,23にトルクを出力するようになっ
ている。したがって上記のリングギヤ13が出力要素と
なっている。
【0028】また、前記従動プーリー8から前記サンギ
ヤ12(サンギヤ軸15)にトルクを伝達するためのギ
ヤ対が設けられている。このギヤ対は、図2に示すよう
に、従動軸11に取り付けられた第1ギヤ24と、出力
軸16に回転自在に保持されているアイドルギヤ25
と、前記サンギヤ軸15に取り付けられた第2ギヤ26
とによって構成されている。この第1ギヤ24と第2ギ
ヤ26とのギヤ比は、前記バリエータ3で設定される最
も小さい回転数比(駆動プーリー6と従動プーリー8と
の回転数の比率)γmin の逆数(1/γmin )とほぼ等
しい値に設定されている。また、前記一対のギヤ17,
18のギヤ比が、前記アイドルギヤ25と第2ギヤ26
とのギヤ比と同じである。
【0029】さらに、出力軸16とアイドルギヤ25と
の間には、これらを選択的に連結するクラッチ機構Cd
が設けられている。このクラッチ機構Cd は、出力軸1
6がアイドルギヤ25に対して相対的に正回転する方向
で係合する第1一方向クラッチ機能(その機能を生じる
部分を第1一方向クラッチF1 と記す)を選択的に有効
にするとともに、出力軸16がアイドルギヤ25に対し
て相対的に逆回転する方向で係合する第2一方向クラッ
チ機能(その機能を生じる部分を第2一方向クラッチF
2 と記す)を選択的に有効にするように構成された4モ
ードクラッチ機構によって構成されている。ここで4モ
ードとは、上記の各一方向クラッチ機能が個別に有効に
なっている2つのモードと、各一方向クラッチ機能が共
に有効になって出力軸16とアイドルギヤ25とが一体
化されているモードと、各一方向クラッチ機能が共に無
効にされているモードとの合計4つのモードである。そ
して、各一方向クラッチF1 ,F2 を選択的に有効・無
効にする制御部27が設けられている。
【0030】なお、その出力軸16が前記一対のギヤ1
7,18を介してサンギヤ12に連結され、またアイド
ルギヤ25が第2ギヤ26およびサンギヤ軸15を介し
てサンギヤ12に連結されているので、4モードクラッ
チ機構Cd のいずれかの一方向クラッチF1 ,F2 が係
合することにより、サンギヤ12とリングギヤ13とが
連結される。そしてこれらのギヤ12,13の相対回転
(差動回転)が阻止されて、遊星歯車機構4の全体が一
体となって回転するようになっている。したがってこの
4モードクラッチ機構Cd はいわゆる直結クラッチとな
っている。
【0031】ここで、この4モードクラッチ機構Cd の
一例を更に具体的に説明すると、図3に示すように、ア
イドルギヤ25を回転自在に保持するための2つの軸受
28,29が、出力軸16に互いに隣接して取り付けら
れている。これらの軸受28,29におけるインナーレ
ース28A,29Aは、半径方向にある程度の厚みをも
ったリング状の部材である。また、アイドルギヤ25の
内周部には、これらのインナーレース28A,29Aの
間に延びたフランジ部30が形成されている。
【0032】各インナーレース28A,29Aにおける
フランジ部30に対向している側面の円周方向での複数
箇所に、凹部(ポケット部)が形成されている。それら
のポケット部には、ラチェットとして機能する薄板状の
爪板31,32が、フランジ部30側に突出できるよう
に収容されている。この爪板31,32は、それぞれが
収容されているポケット部とほぼ同じ形状であって、収
容状態ではポケット部に完全に収まってフランジ部30
側に突出することがなく、また突出時には円周方向での
一端部が、フランジ部30側に突出するようになってい
る。すなわち、円周方向に傾斜した状態で突出するよう
になっている。
【0033】なお、各爪板31,32のフランジ部30
側に突出する端部は、互いに反対になっている。すなわ
ち図3における右側の爪板31は、アイドルギヤ25の
正回転方向での後側の端部が、フランジ部30に向けて
突出するようになっており、したがってこの爪板31が
前述した第1一方向クラッチF1 の一部を構成してい
る。また図3における左側の爪板32は、アイドルギヤ
25の正回転方向での前側の端部が、フランジ部30に
向けて突出するようになっており、したがってこの爪板
32が前述した第2一方向クラッチF2 の一部を構成し
ている。
【0034】これに対してフランジ部30の両側面で前
記各爪板31,32に対向する位置には、爪板31,3
2を入り込ませる凹部33,34が形成されている。前
述したように、各爪板31,32は、円周方向に対して
傾斜した状態でフランジ部30側に突出するので、これ
らを入り込ませる凹部33,34は、爪板31,32の
傾斜と同様に傾斜して形成されている。その一例を図4
に模式的に示してある。すなわち第1一方向クラッチF
1 における爪板31が入り込む凹部33は、アイドルギ
ヤ25の正回転方向での後ろ側が次第に深くなる形状の
凹部である。また第2一方向クラッチF2 における爪板
32が入り込む凹部34は、アイドルギヤ25の正回転
方向での前側が次第に深くなる形状の凹部である。
【0035】つぎに、これらの爪板31,32をフラン
ジ部30側に選択的に突出させ、あるいはポケット部に
後退させる制御部27、すなわち各一方向クラッチF1
,F2 を選択的に有効化し、また無効化する制御部2
7の一例を説明する。前記各爪板31,32のフランジ
部30側に突出する一端部には、フランジ部30の内周
端より回転中心側に延びた押圧部31A,32Aが形成
されており、その押圧部31A,32Aをフランジ部3
0とは反対方向に押圧する弾性部材(例えばコイルバ
ネ)35が、フランジ部30の内周端より回転中心側
に、軸線方向と平行な方向に向けて配置されている。
【0036】このコイルバネ35に対して爪板31,3
2を挟んだ反対側には、ピストン36,37が配置さ
れ、各インナーレース28A,29Aに形成したシリン
ダ部に前後動自在に収容されている。そして、これらの
ピストン36,37の背面側には、各インナーレース2
8A,29Aおよび出力軸16を貫通して形成した制御
油路38,39がそれぞれ連通している。したがってこ
れらの制御油路38,39を介して各ピストン36,3
7の背面側に油圧を供給することにより、ピストン3
6,37がコイルバネ35の弾性力に抗して爪板31,
32を押し動かし、その結果、爪板31,32の一端部
が前記凹部33,34の内部に突出して各一方向クラッ
チF1 ,F2 が有効化される。
【0037】すなわち、アイドルギヤ25が出力軸16
に対して正回転もしくは逆回転しようとすると、いずれ
かの一方向クラッチF1 ,F2 が係合して出力軸16と
アイドルギヤ25とが連結されるようになっている。な
お、油圧を抜くことにより、爪板31,32がコイルバ
ネ35に押されてポケット部に後退し、一方向クラッチ
F1 ,F2 が無効化され、その結果、出力軸16とアイ
ドルギヤ25とが相対的に自由に回転する。
【0038】なお、上記のクラッチCh ならびにブレー
キBr は、一例として、前記4モードクラッチ機構Cd
と同様に、油圧によって動作する構成のものが採用され
ており、したがって特には図示しないが、これらの係合
機構を制御する油圧制御装置が設けられている。また、
これらの係合機構の係合・解放状態を制御するととも
に、バリエータ3で設定する入出力回転数比γを制御す
るための電子制御装置(T−ECU)40が設けられて
いる。
【0039】この電子制御装置40は、マイクロコンピ
ュータを主体として構成されたものであって、制御デー
タとして各種の検出信号が入力され、それらの入力信号
および予め記憶しているデータならびにプログラムに従
って、以下に説明する変速モードの切り換えや変速制御
を実行するようになっている。また、上記の自動変速機
1における走行レンジを選択するシフト装置41が設け
られており、このシフト装置41で選択したレンジ(シ
フトポジション)を指示する信号が電子制御装置40に
入力されている。
【0040】ここで、電子制御装置40に入力されてい
る制御データの例を挙げると、エンジン水温(E/G水
温)、キックダウンスイッチ(KD SW)の信号、シ
フトレバー(図示せず)によって選択した変速レンジを
示す信号(レバー信号)、マニュアル操作で変速比もし
くは変速段を選択もしくは制限するスイッチからの信号
(例えばステアマチック信号)、車速、バリエータ3の
油温(CVT油温)、その他の信号が電子制御装置40
に入力されている。
【0041】なお、走行レンジとは、後進段を設定する
リバース(R)レンジ、出力軸トルクを発生させないパ
ーキング(P)レンジおよびニュートラル(N)レン
ジ、前進走行するためのドライブ(D)レンジ、エンジ
ンブレーキを効かせるブレーキ(B)レンジである。さ
らに、前記その他の信号には、アクセル開度、変速機に
対する入力回転数(エンジン回転数)、前記各プーリー
6,8の回転数などの検出信号が含まれる。
【0042】また、動力源の出力すなわち上記のエンジ
ン2の負荷を電気的に制御するための電子制御装置(E
−ECU)42が設けられている。このエンジン用の電
子制御装置42は、上記の変速機用電子制御装置40と
同様にマイクロコンピュータを主体として構成されたも
のであって、この電子制御装置42は、例えば、アクセ
ル開度などで表される出力要求量と車速などの走行状態
とを含む制御データに基づいて目標トルクを求め、出力
トルクがその目標トルクとなるようにエンジン2の負荷
を設定する制御である。そして、上記の各電子制御装置
40,42は相互にデータ通信可能に接続されている。
【0043】さらに、上記の車両にはトラクションコン
トロールシステムが搭載されている。このトラクション
コントロールシステムは、駆動輪に生じる過剰な駆動ト
ルクを抑制して駆動輪のグリップ力を確保するための装
置であり、制動装置とエンジン2の出力制御装置とを主
体として構成されている。すなわち、各車輪の回転数か
ら算出される基準車速と各車輪の回転数とを比較し、基
準車速に対して回転数が過剰な車輪の制動をおこない、
また同時に必要に応じてエンジン2のスロットル開度を
絞って出力を低下させる制御をおこなうように構成され
ている。その制御をおこなうために電子制御装置(TR
C−ECU)43が設けられている。この電子制御装置
43は、前述した各電子制御装置40,42とデータ通
信可能に接続されている。
【0044】そして、上記の入力軸5の回転数を検出す
るNinセンサー44と、バリエータ3の入力回転数であ
る駆動軸6Aの回転数を検出するNcvinセンサー45
と、出力軸16の回転数を検出するNo センサー46と
が設けられている。これらのセンサー44,45,46
の検出信号が、上述したいずれかの電子制御装置40,
42,43(例えば変速機用の電子制御装置40)に入
力されている。
【0045】上述したバリエータ3および遊星歯車機構
4を有する自動変速機では、バリエータ3のみの変速作
用で変速比を設定する変速モード、すなわちバリエータ
3における入出力回転数比γの増大・減少に応じて自動
変速機の変速比が増大・減少する変速モード(仮にダイ
レクトモードあるいはLモードという)と、バリエータ
3の変速作用と遊星歯車機構4の変速作用との両方で変
速比を設定する変速モード、すなわちバリエータ3にお
ける入出力回転数比γが増大・減少すると、それとは反
対に自動変速機の変速比が変化する変速モード(仮に動
力循環モードあるいはHモードという)との2つの変速
モードでの変速をおこなうことができる。したがってL
モードでは、遊星歯車機構4が差動作用をおこなわず、
またHモードでは遊星歯車機構4が差動作用をおこな
う。
【0046】これらの変速モードを含む各走行レンジを
設定するためのクラッチおよびブレーキの係合解放状態
をまとめて示せば、図5のとおりである。なお、図5に
おいて○印は係合状態を示し、空欄は解放状態を示す。
【0047】図5から知られるように、車速が増大して
変速比を低下させるべくHモードが設定されると、各一
方向クラッチF1 ,F2 が解放させられる。すなわちリ
ングギヤ13がサンギヤ12に対して高速回転し、前述
した出力軸16とアイドルギヤ25との間に相対回転が
生じる。これに対して各一方向クラッチF1 ,F2 は前
述したように、いわゆるラチェットタイプの噛み合い式
の係合機構であるから、解放状態(無効化状態)であれ
ば、トルク伝達がほぼ皆無となる。すなわち引き摺りト
ルクに相当するトルクが生じない。その結果、高速走行
時の動力損失が低減され、燃費が向上する。
【0048】図5に示すR、P、D、Nの各レンジは、
前述したシフト装置41を手動操作することにより選択
される。したがってR(リバース)レンジを選択して後
進走行している状態でN(ニュートラル)レンジあるい
はD(ドライブ)レンジに切り換えられることがある。
このような変速状態の切り換えは、第1および第2の一
方向クラッチF1,F2 の解放状態から係合状態への切
り換えを伴う。これらの一方向クラッチF1 ,F2 は係
合方向が互いに反対であるから、共に有効化されて係合
すると、前記遊星歯車機構4におけるリングギヤ13と
サンギヤ12とが連結されて、遊星歯車機構4の全体が
一体化される。
【0049】したがって後進走行中にNレンジもしくは
Dレンジにシフトし、それに伴って各一方向クラッチF
1 ,F2 が直ちに有効化されて係合すると、サンギヤ1
2およびこれに連結されている部材の回転方向が正回転
方向から逆回転方向に反転され、その慣性トルクが出力
軸トルクとして現れ、ショックの原因となる。このよう
な不都合を回避するためにこの発明の変速制御装置は、
以下の制御を実行する。
【0050】図6はその制御例を示すフローチャートで
あって、先ず、変速をおこなうべき状態が成立している
か否かが判断される(ステップS1)。すなわち変速判
断の有無の判断である。このステップS1で否定的に判
断された場合には、特に制御をおこなうことなくリター
ンする。また、肯定的に判断された場合には、その変速
が後進状態から前進状態へのシフト(RレンジからDレ
ンジへのシフト)か否かが判断される(ステップS
2)。このステップS2で肯定的に判断された場合、前
述したように各一方向クラッチF1 ,F2 を無効状態か
ら有効状態に切り換えて共に係合させることになるの
で、以下の制御が実行される。
【0051】後進状態から前進状態に切り換えるため
に、先ず、ブレーキBr を解放させる制御が開始される
(ステップS3)。ついで発進用クラッチCs を解放す
る制御もしくはその伝達トルク容量を低下させる制御が
実行される(ステップS4)。これは、変速時の過渡的
な制御であるから、変速後の前進走行の際に直ちに必要
十分なトルクが伝達されるようにするために、発進用ク
ラッチCs は、パッククリアランスが詰まった状態、す
なわち係合力が僅かに増大することにより直ちに伝達ト
ルク容量を生じるスタンバイ状態に設定することが好ま
しい。
【0052】ついで車速が予め定めた基準車速以下か否
か、すなわち車両が停止しているか否かが判断される
(ステップS5)。車速が生じていることによりこのス
テップS5で否定的に判断された場合には、後進走行し
ているか否かが判断される(ステップS6)。車両が後
退移動していることによりステップS6で肯定的に判断
された場合には、フットブレーキがオンか否かが判断さ
れる(ステップS7)。すなわち人為的な制動操作がお
こなわれているか否かが判断される。
【0053】人為的な制動操作がおこなわれていないこ
とによりステップS7で否定的に判断された場合には、
アクセル開度に応じた制動が実行される(ステップS
8)。これは、例えば前述したトラクションコントロー
ルシステムを使用して全ての車輪もしくは少なくとも駆
動輪22,23の制動をおこなう。その制動力は、例え
ば図7に示すように、車両の出力要求量を表すアクセル
開度に応じて増大する制動力とする。ここでアクセル開
度で表される出力要求量は、変速後の状態での出力要求
量であるから、後進状態から前進状態への切り換えを迅
速化するために、出力要求量に応じて制動力を増大させ
る。
【0054】その後、再度、車両が停止しているか否か
が判断される(ステップS9)。このステップS9は、
前述したサンギヤ12とリングギヤ13との相対回転数
(出力軸16とアイドルギヤ25との相対回転数)がゼ
ロになったか否かを車速で判断しているステップであ
る。したがってこのステップS9で否定的に判断された
場合にはリターンし、また反対に肯定的に判断された場
合には、4モードクラッチ機構Cd を有効化されて係合
させられる(ステップS10)。すなわち遊星歯車機構
4の全体を一体化させる。これと併せて発進用クラッチ
Cs の伝達トルク容量を増大させられる(ステップS1
1)。
【0055】したがって車両が後退移動している状態で
RレンジからDレンジにシフトされた場合、噛み合い式
係合機構である4モードクラッチ機構Cd によって連結
するべき二つの部材すなわちサンギヤ12とリングギヤ
13との相対回転数(出力軸16とアイドルギヤ25と
の相対回転数)を低減するように制動操作されから、変
速に要する時間が短くなって変速応答性が良好になる。
また、4モードクラッチ機構Cd を構成している各一方
向クラッチF1 ,F2 が有効化されて係合する時点で
は、その一方向クラッチF1 ,F2 によって連結されて
る部材の共に停止している(言い換えれば、回転状態が
同じである)から、係合に伴う回転変化やそれに起因す
るショックが発生しない。
【0056】なお、人為的な制動操作がおこなわれてい
てステップS7で肯定的に判断された場合には、直ちに
ステップS9に進み、車両が停止しているか否かが判断
される。すなわち、人為的な制動操作による車両の停止
を待って、各一方向クラッチF1 ,F2 を有効化して係
合させる。したがってその場合であっても、係合に伴う
ショックが発生することはない。
【0057】他方、RレンジからDレンジにシフトした
際に既に車両が停止していることによりステップS5で
肯定的に判断された場合には、直ちにステップS10に
進み、各一方向クラッチF1 ,F2 を有効化して係合さ
せる。したがってその場合であっても、係合に伴うショ
ックが発生することはない。
【0058】これに対して車両が前進走行していること
によりステップS6で否定的に判断された場合には、前
進クラッチCs の伝達トルク容量を増大させる(ステッ
プS12)。こうすることにより、ブレーキBr のトル
クに抗してサンギヤ12およびこれに連結されている部
材の回転数が増大する。
【0059】そして、サンギヤ12の回転数がリングギ
ヤ13の回転数に同期したか否かが判断される(ステッ
プS13)。これは、入力回転数と出力軸回転数ならび
に変速比に基づいて判断することができる。同期してい
ないことによりステップS13で否定的に判断された場
合にはリターンし、これとは反対に同期した場合、すな
わち回転数が一致した場合には、ステップS10に進ん
で、各一方向クラッチF1 ,F2 を有効化して係合させ
る。
【0060】さらにまた、RレンジからDレンジへのシ
フトではないことによりステップS2で否定的に判断さ
れた場合には、それぞれのシフトに応じた変速処理が実
行される(ステップS14)。
【0061】上記の制御をフットブレーキがオフ、アク
セル開度が全閉、後進走行中におこなった場合のタイム
チャートを図8に示してある。RレンジからDレンジへ
のシフトがt1 時点に成立すると、これと同時に、発進
クラッチCs のスタンバイ状態への制御、リバースブレ
ーキBr の解放開始の制御、トラクションコントロール
システムによる制動の制御が開始される。発進クラッチ
Cs の伝達トルク容量Tscが低下することにより、それ
より上流側の慣性トルク低減され、かつ出力軸トルクが
負トルクからほぼゼロに変化する。また、サンギヤ12
の回転数が次第に低下し、さらにリングギヤ13の回転
数が後進方向の回転数から次第にゼロになる。なお、リ
バースブレーキBr が完全には解放されておらず、所定
のトルク容量Trevbを有しているので、キャリヤ14の
回転数はゼロになっている。
【0062】サンギヤ12およびリングギヤ13の回転
数がゼロになる直前のt2 時点に強制的な制動力が解除
される。これによって車両の加速度が負から次第に正に
変化する。そして、その直後のt3 時点にサンギヤ12
およびリングギヤ13の回転が止まり、それに伴って各
一方向クラッチF1 ,F2 が有効化されて係合すること
によ所定のトルク容量Towc を持ち、かつ発進クラッチ
Cs の伝達トルク容量Tscが増大させられる。その結
果、車両加速度が増大し、かつ出力軸トルクが現れる。
【0063】なお、この発明の制御装置によらずに、各
一方向クラッチF1 ,F2 をシフトの判断の直後に有効
化して係合させた場合には、出力軸トルクおよびサンギ
ヤ12とリングギヤ13との回転数が破線で示すように
変化する。その結果、出力軸トルクの急激かつ大きな変
化によってショックが発生し、あるいはバリエータ3で
ベルト10の滑りが発生する。これは、乗り心地の悪化
や耐久性の低下の要因になる。
【0064】なお、リバースブレーキBr の伝達トルク
容量をt2 時点もしくはt3 時点まで残しておかずに、
変速の判断の成立の直後にリバースブレーキBr を完全
に解放することもできる。その場合、遊星歯車機構4の
サンギヤ12、リングギヤ13、キャリヤ14の回転数
が共に完全にゼロに一致しない状態で各一方向クラッチ
F1 ,F2 を係合させる場合も生じるが、その慣性トル
クが小さいので、係合に伴うショックを大幅に低減する
ことができる。
【0065】また、図5に示すように、この発明ではN
レンジ(非走行レンジ)で各一方向クラッチF1 ,F2
を係合させておく。そのため、Nレンジを設定している
状態で車両が登降坂路を移動している状態でDレンジに
シフトした場合、Dレンジへの切り換えに伴って、遊星
歯車機構4での回転要素の相対回転数に変化が生じるこ
とがないので、ショックを防止することができる。
【0066】ところでこの発明は、上述したベルト式の
バリエータ3を有する自動変速機およびこれを対象とし
た変速制御装置に限定されないのであり、いわゆる有段
式の自動変速機およびその自動変速機を対象とした変速
制御装置にも適用することができる。以下、その例を説
明する。
【0067】図9は、この発明を前進5段後進1段の自
動変速機に適用した例を示すスケルトン図であって、こ
こに示す自動変速機は、トルクコンバータや自動クラッ
チなどの発進装置50を介してエンジンなどの動力源
(図示せず)の出力側に連結されている。そしてこの自
動変速機は、副変速部51と主変速部52とを備えてい
る。
【0068】副変速部51は、いわゆるオーバードライ
ブ部であって1組のシングルピニオン型遊星歯車機構5
3によって構成され、そのキャリヤ54が入力軸55に
連結され、またこのキャリヤ54とサンギヤ56との間
に、第1の3モードクラッチ機構57が設けられてい
る。この3モードクラッチ機構57は、前述した図2に
示す4モードクラッチ機構Cd と類似した構成の機構で
あって、サンギヤ56がキャリヤ54に対して相対的に
正回転(入力軸55の回転方向の回転)する方向に係合
する噛み合い式の第1一方向クラッチF01と、この第1
一方向クラッチF01とは反対の方向に係合する噛み合い
式の第2一方向クラッチF02と、この第2一方向クラッ
チF02を有効状態および無効状態に切り換える切換機構
(図示せず)とを備えている。したがって、第2一方向
クラッチF02を無効化した状態では、第1一方向クラッ
チF01が解放する方向でのサンギヤ56とキャリヤ54
との相対回転が可能になり、また第2一方向クラッチF
02を有効化した場合には、サンギヤ56とキャリヤ54
とが連結されて遊星歯車機構53の全体が一体となって
回転するようになっている。
【0069】またサンギヤ56の回転を選択的に止める
多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速
部51の出力要素であるリングギヤ58が、主変速部5
2の入力要素である中間軸59に接続されている。
【0070】したがって副変速部51においては、第2
一方向クラッチF02が有効化された状態では、遊星歯車
機構53の全体が一体となって回転するため、中間軸5
9が入力軸55と同速度で回転し、低速段となる。また
ブレーキB0 を係合させてサンギヤ56の回転を止めた
状態では、リングギヤ58が入力軸55に対して増速さ
れて正回転し、高速段となる。
【0071】他方、主変速部52は、三組の遊星歯車機
構60,61,62を備えており、三組の遊星歯車機構
60,61,62を構成する回転要素が、以下のように
連結されている。すなわち、第1遊星歯車機構60のサ
ンギヤ63と、第2遊星歯車機構61のサンギヤ64と
が互いに一体的に連結されている。また、第1遊星歯車
機構60のリングギヤ65と、第2遊星歯車機構61の
キャリヤ66と、第3遊星歯車機構62のキャリヤ67
とが連結されている。さらに、キャリヤ67に出力軸6
8が連結されている。さらにまた、第2遊星歯車機構6
1のリングギヤ69が、第3遊星歯車機構62のサンギ
ヤ70に連結されている。
【0072】この主変速部52の歯車列においては、後
進側の1つの変速段と、前進側の4つの変速段とを設定
することができる。このような変速段を設定するための
摩擦係合装置、つまりクラッチおよびブレーキが、以下
のように設けられている。先ずクラッチについて述べる
と、リングギヤ69およびサンギヤ70と、中間軸59
との間に多板式の第1クラッチC1 が設けられている。
また、互いに連結されたサンギヤ63およびサンギヤ6
4と、中間軸59との間に多板式の第2クラッチC2 が
設けられている。
【0073】つぎにブレーキについて述べると、第1ブ
レーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機
構60のサンギヤ63、および第2遊星歯車機構61の
サンギヤ64の回転を止めるように配置されている。ま
たこれらのサンギヤ63,64とケーシング71との間
には、一方向クラッチF11と、多板ブレーキである第2
ブレーキB2 とが直列に配列されている。この一方向ク
ラッチF11はスプラグなどの転動体をインナーレースと
アウターレースとの間に噛み込ませる形式の一方向クラ
ッチであって、サンギヤ63,64が逆回転、つまり入
力軸55の回転方向とは反対方向に回転しようとする際
に係合してトルクを伝達するようになっている。
【0074】また、第1遊星歯車機構60のキャリヤ7
2とケーシング71との間に、多板ブレーキである第3
ブレーキB3 が設けられている。そして第3遊星歯車機
構62はリングギヤ73を備えており、リングギヤ73
の回転を止めるブレーキとして、第2の3モードクラッ
チ機構74が設けられている。この3モードクラッチ機
構74は、上記の副変速部51に設けられている3モー
ドクラッチ機構74と同様の構成であって、リングギヤ
73が逆回転しようとする方向に係合する第1一方向ク
ラッチF21と、この第1一方向クラッチF21とは反対の
方向に係合する第2一方向クラッチF22と、この第2一
方向クラッチF22を有効状態および無効状態に切り換え
る切換機構(図示せず)とを備えている。したがって、
第2一方向クラッチF22を無効化した状態では、第1一
方向クラッチF21が解放する方向にリングギヤ73の回
転が可能になり、また第2一方向クラッチF22を有効化
した場合には、リングギヤ74がケーシング71に連結
されてその回転が阻止されるようになっている。
【0075】上記のように構成された自動変速機におい
ては、各クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置および
噛み合い式係合機構を、図10の図表に示すように係合
・解放することにより、前進5段・後進1段の変速段を
設定することができる。なお、図10において○印は係
合すること(一方向クラッチについては有効化されるこ
と)を示し、△印はエンジンブレーキ時に係合すること
を示し、●印は駆動時に係合することを示し、空欄は解
放されること(一方向クラッチについては無効化される
こと)を示している。
【0076】上記の図9に示す自動変速機における引き
摺りトルクを生じる可能性のある多板式の係合機構は、
副変速部51のブレーキB0 、主変速部52における第
1および第2のクラッチC1 ,C2 、第2および第3の
ブレーキB2 ,B3 の合計5つの係合機構である。これ
らのうち前進第1速では、第1クラッチC1 が係合する
ので、他の4つの係合機構で引き摺りトルクが生じる可
能性があるが、前進第1速での相対回転数が特には大き
くないうえに、この変速段が設定されている時間が短い
ので、動力損失が特には生じない。また前進第2速で
は、第1クラッチC1 と第3ブレーキB3 とが係合する
ので、他の3つの係合機構で引き摺りトルクが生じる可
能性があるが、上記の3モードクラッチ機構57,74
に替えて多板式の係合機構と一方向クラッチとを併用す
る構成と比較して引き摺りトルクの生じる係合機構を少
なくでき、その分、動力損失を低減することができる。
【0077】さらに前進第3速では、第1クラッチC1
と第2ブレーキB2 とが係合するので、他の3つの係合
機構で引き摺りトルクが生じる可能性がある。さらに前
進第4速では、第1および第2のクラッチC1 ,C2 と
第2ブレーキB2 とが係合するので、他の2つの係合機
構で引き摺りトルクが生じる可能性がある。そして、最
高速段である前進第5速では、第1および第2のクラッ
チC1 ,C2 と、副変速部51のブレーキB0 と、主変
速部52の第2ブレーキB2 とが係合するので、引き摺
りトルクを生じる可能性のある係合機構は、第3ブレー
キB3 の一つに過ぎない。
【0078】このように図9に示す自動変速機では、一
対の一方向クラッチを組み合わせて構成した3モードク
ラッチ機構を採用していることにより、引き摺りトルク
の生じる可能性のある係合機構の数を少なくすることが
できる。特に、第4速や第5速などの高速段側では相対
回転数が大きくなり、またその変速段で走行する時間が
長くなるが、これらの変速段で引き摺りトルクを生じる
可能性のある係合機構の数を少なくすることができるの
で、燃費(特に高速燃費)の向上効果を増大させること
ができる。
【0079】図10に示すよう第2の3モードクラッチ
機構74における第2一方向クラッチF22は、前進第1
速でエンジンブレーキを効かせる場合に係合させられ
る。この変速状態は、シフト装置(図示せず)を所定の
レンジ(ロー(L)レンジ)にシフトすることにより選
択される。このようなシフト操作によって第2一方向ク
ラッチF22を有効化して係合させる場合、第3遊星歯車
機構62のリングギヤ73が回転していれば、すなわち
リングギヤ73とケーシング71との相対回転が生じて
いれば、第2一方向クラッチF22が有効化されて係合す
ることにより、リングギヤ74の回転が急激に止められ
るので、その慣性力に起因するショックが生じる可能性
がある。そこで図9に示す自動変速機を対象とするこの
発明に係る変速制御装置は、Lレンジへシフトして第2
一方向クラッチF22を有効化する際の制御を以下のよう
に実行する。
【0080】図11はその制御例を示すフローチャート
であって、先ず、変速すべき状態となっているか否か、
すなわち変速判断の有無が判断される(ステップS2
1)。このステップS21で否定的に判断された場合に
は、特に制御を行うことなくリターンし、これとは反対
に肯定的に判断された場合には、その変速がLレンジへ
のシフトによる変速か否かが判断される(ステップS2
2)。
【0081】Lレンジへのシフトであることよりステッ
プS22で肯定的に判断された場合には、高速段側の係
合要素を解放する(ステップS23)。この高速段側の
係合要素とは、Lレンジで設定される第1速の直前の変
速段を設定するために係合しておりかつ第1速で解放さ
れるクラッチもしくはブレーキであり、例えば第2速を
上限とする“2”レンジからLレンジにシフトする場合
には、第3ブレーキB3 がこの高速段側の係合要素に相
当する。
【0082】ついで、パワーオフ状態か否かが判断され
る(ステップS24)。パワーオフ状態であることによ
りステップS24で肯定的に判断された場合には、制動
力を生じさせるようにブレーキ制御をおこなう(ステッ
プS25)。これは、例えば前述した具体例におけるト
ラクションコントロールシステムにより制動力を発生さ
せることにより実行できる。また、その制動力は、Lレ
ンジで設定される第1速で生じる制動力(エンジンブレ
ーキ力)に相当する制動力であることが好ましい。
【0083】また、これと同時に、エンジン(図示せ
ず)のスロットル開度を増大させる(ステップS2
6)。この制御は、例えばエンジンに設けられている電
子スロットルバルブ(図示せず)を電気的に制御してそ
の開度を増大させることにより実行される。また、ハイ
ブリッド車の場合には、動力源として備えられている電
動機の出力回転数を増大させることにより実行される。
【0084】このように制御することにより、入力軸回
転数が同期回転数に達したか否かが判断される(ステッ
プS27)。この同期回転数とは、第1速の変速比と出
力軸68との回転数に基づいて決まる入力軸55の回転
数である。したがって、動力源の出力を増大させること
により入力軸回転数を増大させ、その回転数が第1速の
変速比と出力軸回転数とから決まる回転数に一致したか
否かが判断される。
【0085】入力回転数を増大させると、第3遊星歯車
機構62のリングギヤ73の回転数が次第に低下し、入
力回転数が同期回転数に達した時点では、第2の3モー
ドクラッチ機構74における第1一方向クラッチF21が
係合し、リングギヤ73の回転が止まる。したがって同
期回転数に達していないことによりステップS27で否
定的に判断された場合にはリターンして従前の制御を継
続し、また反対に同期回転数に達したことが検出されて
ステップS27で肯定的に判断された場合には、第2一
方向クラッチF22を有効化してこれを係合させる(ステ
ップS28)。その場合、リングギヤ73の回転が止ま
っているから、すなわちケーシング71との相対回転数
がゼロであるから、第2一方向クラッチF22を有効化し
て係合させても回転変化が生じず、ショックが発生する
ことはない。
【0086】そして、第2一方向クラッチF22を有効化
して係合させるのに要する所定時間が経過したか否かが
判断される(ステップS29)。このステップS29で
否定的に判断された場合、すなわち所定時間が経過して
いない場合にはリターンし、所定時間が経過したことに
よりステップS29で肯定的に判断された場合には、動
力源の出力を徐々に減じる(ステップS30)。また、
これに合わせて制動力を徐々に解除する(ステップS3
1)。その場合、動力源の出力の低減は、例えば電子ス
ロットルバルブを閉じることにより実行され、具体的に
は、パワーオフ状態まで急速に出力を低下させ、その
後、出力をゆっくり低下させることが好ましい。また、
制動力は、動力源の出力をパワーオフ状態まで急速に低
下させた後に、低下させることが好ましい。
【0087】一方、パワーオン状態であることによりス
テップS24で否定的に判断された場合には、入力回転
数が同期回転数に達したか否かが判断される(ステップ
S32)。同期回転数に達していないことによりこのス
テップS32で否定的に判断された場合にはリターン
し、また反対に同期回転数に達したことによりステップ
S32で肯定的に判断された場合には、上記のパワーオ
フの場合と同様に、第2一方向クラッチF22を有効化し
てこれを係合させる(ステップS33)。この場合も、
回転変化やそれに起因するショックが生じることはな
い。
【0088】さらに、Lレンジへのシフトではないこと
によりステップS22で否定的に判断された場合には、
それぞれの変速の態様に応じて変速処理が実行される
(ステップS34)。
【0089】上記の制御をパワーオフ状態でかつ“2”
レンジからLレンジへのシフトの際に実行した場合の過
渡特性を図12にタイムチャートで示してある。t11時
点に“2”レンジからLレンジへのシフトの判断が成立
すると、第3ブレーキB3 を解放する制御が実行されて
そのトルクTb3が低下する。第3ブレーキB3 がほぼ完
全に解放されたt12時点に電子スロットルバルブの開度
が増大させられて動力源の出力が増大し、それに伴って
入力回転数が増大する。またこれと同時に制動が実行さ
れるので、出力軸トルク(負のトルク)が更に低下す
る。
【0090】こうして入力回転数が同期回転数に達する
と(t13時点)、出力軸トルクが変速後のトルクに低下
するとともに、第2一方向クラッチF22が有効化されて
係合し、所定のトルクTf22 を持つ。そして、所定時間
後(t14時点)に電子スロットルバルブが閉じられて動
力源の出力が急激に低下させられ、パワーオフ状態にな
ったt15時点にその出力の低下度合いが緩やかになり、
同時に制動力が次第に低下させられる。最終的には電子
スロットルバルブが閉じられ、かつ制動力が解除される
(t16時点)。
【0091】このように多段式の自動変速機に、係合方
向が互いに反対の一対の一方向クラッチを並列的に使用
し、かつ少なくともとの一方を選択的に無効化・有効化
するように構成した場合であっても、変速ショックを悪
化させることなく変速を実行でき、また、同期を促進す
るように制御するので、変速の遅れを回避することでき
る。さらに一方向クラッチは解放状態あるいは無効状態
では引き摺りトルクが皆無に近いので、動力損失を低減
して燃費を向上させることができる。
【0092】ここで、上記の各具体例とこの発明との関
係を説明すると、図2に示す各一方向クラッチF1 ,F
2 および図11に示す各一方向クラッチF01,F02,F
21,F22が、請求項1における第1もしくは第2の一方
向係合機構に相当し、また請求項2の噛み合い係合機構
に相当する。また、図2に示す制御部27が、この発明
の切換手段に相当する。さらに、上述したステップS2
およびステップS22の機能的手段が、請求項2ないし
請求項5の発明におけるシフト検出手段に相当し、上述
したステップS8およびステップS22,S26の機能
的手段が、請求項2ないし請求項5の発明における相対
回転数低減手段に相当し、ステップS10およびステッ
プS28の機能的手段が、請求項2ないし請求項5の発
明における有効化手段に相当する。
【0093】なお、この発明は上述した各具体例に限定
されないのであって、一方向クラッチはスプラグなどの
転動体を使用したタイプ、ラチェットを使用したタイプ
などの適宜の構造のものを使用でき、またこれを有効化
・無効化する切換手段は、油圧式や電気式あるいは両者
を併用した構造など、必要に応じて適宜に構造のものを
使用することができる。さらに、この発明における噛み
合い式係合機構は、要は、完全係合と完全解放との二つ
の状態に切り換えられ、その中間の滑りの状態のない係
合機構であり、一方向クラッチを組み合わせた構造のも
のに限らず適宜の構造のものを使用できる。そして、一
対の一方向クラッチを併用した構造の場合、いずれか一
方を選択的に有効化・無効化できればよい。
【0094】そしてまた、この発明で対象とする自動変
速機のギヤトレーンは、上述した具体例で示したものに
限定されない。またさらに、この発明の制動装置は、前
述したトラクションコントロールシステムに限定されな
いのであって、例えば自動変速機に組み込まれている他
の係合装置を係合させて、自動変速機の内部をロック状
態にして制動力を発生させるように構成してもよい。
【0095】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に
よれば、変速状態に応じて相対回転し、また一体となっ
て回転する二つの部材の間に、係合方向が反対となる噛
み合い式の一方向係合機構を設け、かつその少なくとも
一方を選択的に無効状態とできるように構成したので、
これらの二つの回転部材を相対回転させる場合に、その
一方向係合機構でいわゆる引き摺りトルクが生じず、そ
の結果、動力損失を低減して燃費を向上させることがで
きる。また、一方の一方向係合機構を無効状態と有効状
態とに切り換えることにより変速を実行できるので、変
速制御が容易になる。
【0096】また、請求項2の発明によれば、所定の二
つの部材を連結する機構が噛み合い式であるため、解放
状態では、トルクの伝達がなく、動力損失を防止もしく
は低減することができる。また、前記他の変速状態から
所定の変速状態に変更する場合、すなわち噛み合い式係
合機構を無効状態から有効状態に変更する場合、前記二
つの部材の相対回転数が低減され、その後、噛み合い式
係合機構が有効化されるので、二つの部材が連結される
時点では、両者の回転数がほぼ一致しており、したがっ
て、噛み合い式係合機構が有効化されて二つの部材が連
結されることによる回転数の急変が殆どなく、変速ショ
ックを防止もしくは抑制することができる。
【0097】さらに、請求項3の発明によれば、所定の
変速状態から他の変速状態に変更する場合、制動装置に
よって車両が減速されることにより、前記二つの部材の
相対回転数が低下するため、変速を実行するにあたって
噛み合い式係合機構を有効化して前記二つの部材を連結
する場合、既存の制動装置を利用して相対回転数を低下
させることができ、したがって噛み合い式係合装置が係
合することによるショックを防止できると同時に、自動
変速機あるいは変速制御装置の大型化を防止することが
できる。
【0098】またさらに、請求項4の発明によれば、出
力要求量が大きい場合には、制動力が相対的に大きくな
るので、制動力を増大させて相対回転数の低下を促進
し、かつ噛み合い式係合機構を有効化するタイミングを
早くすることができ、その結果、運転者の意図に合致し
た変速が可能になる。
【0099】そして、請求項5の発明によれば、前記所
定の変速状態から他の変速状態に変更する場合、動力源
の出力が制御されることにより、前記二つの部材の相対
回転数が低下させられ、その後、噛み合い式係合機構が
有効化されて二つの部材が連結されるため、噛み合い式
係合機構が有効化されて二つの部材が連結される際にシ
ョックが生じることを防止でき、また既存の手段を利用
して相対回転数を低下させるので、自動変速機あるいは
変速制御装置の大型化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る自動変速機を搭載した車両の
駆動系統および制御系統を模式的に示す図である。
【図2】 その自動変速機のスケルトン図である。
【図3】 この発明で使用可能な4モードクラッチ機構
の一例を示す断面図である。
【図4】 その爪板およびその制御部の一例を模式的に
示す斜視図である。
【図5】 その各クラッチおよびブレーキの係合・解放
状態をまとめて示す図表である。
【図6】 図1に示す自動変速機におけるRレンジから
Dレンジへの変速の制御例を示すフローチャートであ
る。
【図7】 強制的に生じさせる制動力とアクセル開度と
の関係を示す線図である。
【図8】 図6に示す制御をおこなった場合の過渡特性
を示すタイムチャートである。
【図9】 この発明に係る他の自動変速機を模式的に示
すスケルトン図である。
【図10】 図9に示す自動変速機についての各変速段
を設定するため係合機構の係合・解放状態を示す図表で
ある。
【図11】 図10に示す自動変速機でのLレンジへの
シフトの際の制御例を示すフローチャートである。
【図12】 図11に示す制御をおこなった場合の過渡
特性を示すタイムチャートである。
【符号の説明】 1…自動変速機、 2…エンジン、 3…無段変速機
(バリエータ)、 12…サンギヤ、 13…リングギ
ヤ、 14…キャリヤ、 16…出力軸、 23…アイ
ドルギヤ、 27…制御部、 40,42,43…電子
制御装置、 57,74…3モードクラッチ機構、 7
1…ケーシング、 73…リングギヤ、Cd …4モード
クラッチ機構、 F1 ,F2 ,F21,F22 …一方向ク
ラッチ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16H 59:10 F16H 59:10 59:18 59:18 59:38 59:38 59:54 59:54 63:06 63:06 Fターム(参考) 3D041 AA21 AA53 AB01 AC01 AC15 AC20 AD10 AD14 AD23 AD31 AD35 AD37 AD51 AE01 AE31 AE36 AF01 3D046 BB00 BB29 GG06 HH02 HH05 HH07 HH15 HH17 HH22 3J552 MA07 MA13 NA01 NB01 PA02 PA59 RA20 RB17 RC12 SA26 UA05 UA07 VA32W VA36W VA62Z VD02W VD11W

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の変速比を設定している状態ではい
    ずれか二つの部材の間で相対回転が生じてこれらの部材
    の間でのトルク伝達が生じず、他の変速比を設定してい
    る状態では、前記二つの部材がトルク伝達可能に連結さ
    れて一体となる自動変速機において、 前記二つの部材の間に設けられ、正逆いずれか一方の回
    転方向で係合してこれら二つの部材を連結する第1の一
    方向係合機構と、 前記二つの部材の間に設けられ、正逆いずれか他方の回
    転方向で係合してこれら二つの部材を連結する第2の一
    方向係合機構と、 前記第1の一方向係合機構と第2の一方向係合機構との
    少なくともいずれか一方を、前記二つの部材の間に係合
    方向のトルクが掛かっても前記二つの部材を連結しない
    無効状態と前記二つの部材の間に係合方向のトルクが掛
    かった場合に係合して前記二つの部材を連結する有効状
    態とに切り換える切換手段とを備えていることを特徴と
    する自動変速機。
  2. 【請求項2】 所定の変速状態ではいずれか二つの部材
    を相対回転させてこれら二つの部材の間でトルクを伝達
    させず、かつ他の変速状態では前記二つの部材を一体化
    させる自動変速機の変速制御装置において、 前記所定の変速状態では無効化されて前記二つの部材の
    間でのトルクを伝達することがなくかつ前記他の変速状
    態では有効化されて前記二つの部材を一体化するように
    連結する、前記二つの部材の間に設けられた噛み合い式
    係合機構と、 前記所定の変速状態から前記他の変速状態への切り換え
    の指示を検出するシフト検出手段と、 前記所定の変速状態から前記他の変速状態への切り換え
    の指示が前記シフト検出手段によって検出された場合
    に、前記二つの部材の相対回転数を低下させる相対回転
    数低減手段と、 前記二つの部材の相対回転数が所定値以下になった際に
    前記噛み合い式係合機構を有効化する有効化手段とを備
    えていることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
  3. 【請求項3】 前記相対回転数低減手段が、前記自動変
    速機が搭載されている車両の制動をおこなう制動装置を
    含むことを特徴とする請求項2に記載の自動変速機の変
    速制御装置。
  4. 【請求項4】 前記相対回転数低減手段が、前記車両の
    動力源に対する出力要求量に応じて前記制動装置の制動
    力を制御する手段を含むことを特徴とする請求項3に記
    載の自動変速機の変速制御装置。
  5. 【請求項5】 前記相対回転数低減手段が、前記自動変
    速機が搭載されている車両の動力源の出力を制御する出
    力制御装置を含むことを特徴とする請求項2に記載の自
    動変速機の変速制御装置。
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