JP2002266021A - 鋼部材の熱処理方法 - Google Patents

鋼部材の熱処理方法

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JP2002266021A JP2001068616A JP2001068616A JP2002266021A JP 2002266021 A JP2002266021 A JP 2002266021A JP 2001068616 A JP2001068616 A JP 2001068616A JP 2001068616 A JP2001068616 A JP 2001068616A JP 2002266021 A JP2002266021 A JP 2002266021A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】鋼部材組織のさらなる結晶粒の微細化を図り、
鋼部材の高強度化を達成できる鋼部材の熱処理方法を提
供すること。 【解決手段】本発明の鋼部材の熱処理方法は、鋼部材を
A1変態点以上にまで昇温させて浸炭する浸炭工程と、
該鋼部材をA1変態点以下に冷却する冷却工程と、該鋼
部材をA1変態点以上にまで急速に昇温させる急速加熱
工程と、該鋼部材を急冷却して焼き入れする焼き入れ工
程と、を有することを特徴とする。つまり、冷却工程の
後に急速加熱工程を行うことにより多くの結晶粒が生成
し、鋼部材の強度が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼部材の熱処理方
法に関し、さらに詳しくは鋼部材の結晶粒度を微細化し
て強度を向上できる鋼部材の熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼部材の強度を向上させる手段として結
晶粒の微細化が有効であることが知られている。従来、
結晶粒を微細化する方法として鋼部材をA1変態点以上
に温度上げ浸炭した後に、A1変態点以下にまで温度を
下げ(I)、再び鋼部材をA1変態点以上に加熱(I
I)した後に焼きを入れる方法がある。
【0003】また、従来方法では充分な効果が得られな
い場合があり、種々の改良がなされている。たとえば、
特公平7−13294号公報ではクロム鋼に対する効果
向上を目的とした方法が開示されている。そして特開平
10−296671号公報では結晶粒のよりいっそうの
微細化と共に、炭窒化物を析出させてさらなる高強度化
を目的とする方法を開示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
方法ではクロム鋼に対しての強度向上の効果はある程度
認められるものの、絶対的な効果は充分ではなかった。
また、後者の方法では、(I)工程における降温速度を
ある速度以上に規定していることにより、前者の方法よ
りも、(II)工程における鋼組織のオーステナイト変
態における結晶粒の微細化を促進することができるもの
の、よりいっそうの結晶粒の微細化、つまりさらなる高
強度化が求められた。これは近年、機械の性能向上への
要求が著しく高まった結果、その構成部品である歯車等
に対してもよりいっそうの高強度化が求められているの
である。
【0005】そこで、本発明では鋼部材組織のさらなる
結晶粒の微細化を図り、鋼部材の高強度化を達成できる
鋼部材の熱処理方法を提供することを解決すべき課題と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する目的
で本発明者は鋭意研究を行った結果、以下の知見を見い
だした。すなわち、結晶粒の生成する機構としては、鋼
組織内に存する核となる結晶粒界や転移等の歪みを基に
して(II)工程における加熱により、鋼組織がオース
テナイト変態を起こし、新たなオーステナイト結晶粒が
生成するのであるが、結晶粒生成のための駆動力は(I
I)工程における昇温速度が速いほど大きいことが明ら
かとなった。つまり、結晶粒生成の核となる結晶粒界や
転位等の歪みが同程度である場合には、その後の昇温速
度が大きいほどより多くの結晶粒が生成する。本発明は
本知見に基づいて行われた。
【0007】すなわち、本発明の鋼部材の熱処理方法
は、鋼部材をA1変態点以上にまで昇温させて浸炭する
浸炭工程と、該鋼部材をA1変態点以下に冷却する冷却
工程と、該鋼部材をA1変態点以上にまで急速に昇温さ
せる急速加熱工程と、該鋼部材を急冷却して焼き入れす
る焼き入れ工程と、を有することを特徴とする。
【0008】また、本発明の鋼部材の熱処理方法は、炭
素含有量が質量基準で0.1〜4%である鋼部材に対す
る熱処理方法であって、該鋼部材をA1変態点以上にま
で昇温させる加熱工程と、該鋼部材をA1変態点以下に
冷却する冷却工程と、該鋼部材をA1変態点以上にまで
急速に昇温させる急速加熱工程と、該鋼部材を急冷却し
て焼き入れする焼き入れ工程と、を有することを特徴と
する。
【0009】つまり、これらの浸炭工程で導入された炭
素もしくは最初から含有されている炭素により鋼部材の
結晶組織に歪みが生じ、その後の急速加熱工程でその歪
みの部位を起点にしてオーステナイト化が急速に進行す
る。より多くの起点からオーステナイト化が進行する結
果としてより微細な結晶粒が生ずるものと考えられる。
【0010】そして、オーステナイト変態の核となる結
晶粒界や歪みの量をさらに増加させることができるの
で、前記冷却工程は、前記鋼部材を急冷却して焼き入れ
する工程であることが好ましい。
【0011】また、結晶歪をさらに増加させオーステナ
イト化の核となる転位の密度を上昇できることから、前
記浸炭工程と前記冷却工程との間に、前記鋼部材に少な
くとも窒化を行う第1窒化工程をもつことが好ましい。
【0012】さらに、高強度が付与できる窒化物の形成
が期待できることから、前記急速加熱工程と前記焼き入
れ工程との間に、前記鋼部材に少なくとも窒化を行う第
2窒化工程をもつことが好ましい。窒化物は結晶粒界に
特に析出することから、強度の上昇に寄与できる。
【0013】また、前記急速加熱工程は10℃/秒以上
の昇温速度で加熱を行う工程であることが、オーステナ
イト変態時の結晶粒の生成における駆動力の点からは好
ましい。そして、急速に鋼部材を加熱するために、前記
急速加熱工程は高周波加熱又はレーザ加熱又は電子ビー
ム加熱で行うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)本実施形態の鋼
部材の熱処理方法は、浸炭工程と冷却工程と急速加熱工
程と焼き入れ工程とを有することを特徴とする。
【0015】本方法が適用可能な鋼部材としては特に限
定されず、一般的な鋼からなる部材に適用できる。たと
えば、炭素鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケ
ルクロムモリブデン鋼等である。また、本方法は鋼部材
の全体に適用して部材全体の性質を改質する場合だけで
はなく、鋼部材の強度等が必要な部分のみを特異的に熱
処理して部分的に改質することもできる。
【0016】浸炭工程は鋼部材をA1変態点以上に加熱
して炭素を含む雰囲気に接触させて浸炭させる工程であ
る。本工程における加熱時の昇温速度は特に限定しな
い。浸炭方法としては鋼部材の必要な部分の表面から炭
素を拡散できる方法であれば公知であるか否かを問わず
特に限定されるものではない。浸炭させる場合の温度と
しては少なくともA1変態点以上であることが必要であ
り、好ましくはA3変態点以上の完全オーステナイト化
する温度を採用する。たとえば、900〜950℃程度
が採用可能である。浸炭工程では鋼部材表面の炭素濃度
が0.7〜1.0%程度となるまで行うことが好まし
い。その場合に本工程に要する時間としては数時間程度
である。
【0017】浸炭工程として具体的には、加熱した固体
浸炭剤中に鋼部材を埋設して行う固体浸炭(炭素蒸
し)、浸炭性ガス(天然ガス、都市ガス、プロパンガス
等を変成した変成ガス等)の中で加熱保持するガス浸
炭、液体浸炭浴中で鋼部材を加熱して行う液体浸炭等が
例示できる。
【0018】冷却工程は浸炭工程でオーステナイト化し
た鋼部材をA1変態点以下の温度にまで冷却すること
で、鋼部材の組織中にその後の急速加熱工程でオーステ
ナイト化の核となる歪みや結晶粒界をより多く生じさせ
る工程である。
【0019】冷却工程における鋼部材の冷却速度として
は特に限定されないが、鋼部材を急冷却して焼きを入れ
ることが好ましい。鋼部材を急冷却することで鋼部材の
組織中の転位等の密度が上昇するからである。本工程を
急冷却とする場合は、油、水、熱浴等の焼き入れ液や、
攪拌等の条件を変化させて冷却速度を調節する。なお、
冷却工程を急冷却とする場合でも形状誤差を低減する目
的で、浸炭工程後にA1変態点以下とならない温度にま
で冷却させた後に急冷却を行うことが好ましい。急冷却
の目的は相変化を生起して組織中の転位等を増加させる
ことであるから急冷却の開始温度はA1変態点以上であ
れば充分だからである。
【0020】なお、必要に応じて浸炭工程と冷却工程と
の間には、鋼部材組織の結晶格子中に進入する型の元素
を鋼部材に導入する工程を設けてもよい。そのような元
素の導入によりその後の冷却工程における転位等の発生
を促進するのでよりいっそうの結晶粒の微細化に利する
からである。
【0021】そのような工程としては、窒化を行う窒化
工程(第1窒化工程)が例示できる。窒化工程として
は、通常の窒化処理(ガス窒化、イオン窒化、液体窒化
等)のほかに、前述した浸炭工程において少量の窒素を
導入することでもわずかではあるが窒化を進行させるこ
とができる。第1窒化工程を行う温度としては浸炭工程
後に鋼部材をある程度冷却した後(ただしその後の冷却
工程において急冷を行う場合には、前述した冷却工程に
おける理由と同様の理由により、A1変態点以上とす
る。)に行うことが好ましい。窒化はアンモニアガス等
が熱分解してできた発生期のNが必要であるので、あま
りに雰囲気を高温とすると分解が進みすぎるからであ
る。また、第1窒化工程は窒化のみでなく併せて浸炭を
行うことで、炭窒化を行う工程とすることもできる。
【0022】急速加熱工程は、鋼部材をA1変態点以上
にまで急速に昇温させる工程である。鋼部材を急速に昇
温させることで、より多くの点からオーステナイト化が
進行する。その結果、結晶粒をより微細にすることがで
きる。本工程における昇温速度としては通常の加熱炉に
よる雰囲気加熱(数℃/分)よりも速い10℃/秒以上
の昇温速度であることが好ましい。このように急速に鋼
部材を加熱する方法としては高周波加熱又はレーザ加熱
又は電子ビーム加熱等を採用できる。これらの方法は急
速に鋼部材を昇温できるばかりでなく鋼部材の必要な部
位を局所的に加熱することができる点でも優れている。
特に高周波加熱は周波数等の変化により加熱条件を容易
に制御でき低コストで急速加熱が行える点で好ましい。
また、これらの高周波加熱等の方法を加熱炉内で適用す
ることで、その後も安価に鋼部材を高温に維持すること
ができる。本工程では、最終的に鋼部材の少なくとも高
強度化が必要な部分がオーステナイト化するA1変態点
以上にまで加熱されればよい。また、加熱温度はできる
限り低温とすると鋼部材の形状に歪みが生じ難くなって
好ましい。
【0023】焼き入れ工程では、鋼部材を急冷却して焼
きを入れる工程である。本工程ではオーステナイトがそ
の結晶粒の形態をほぼ維持してもしくは急速に冷却する
ことでより微細な結晶粒となってマルテンサイトに変態
する。したがって、最終的に熱処理された鋼部材の結晶
粒は微細なものとなる。急冷却する方法は、油、水、熱
浴等の焼き入れ液や、攪拌等の条件を変化させて冷却速
度を調節する。
【0024】また、急速加熱工程と焼き入れ工程との間
に鋼部材に窒化処理を行う第2窒化工程を有することが
できる。窒化物は急速加熱工程で微細となった結晶粒界
に析出して強度上昇に大きく寄与することができる。第
2窒化工程で窒化を行う工程としては前述の第1窒化工
程と同様の方法が採用できる。また、第2窒化工程でも
窒化と併せて浸炭処理を行うことも好ましい。
【0025】(第2実施形態)本実施形態の鋼部材の熱
処理方法は、浸炭工程を加熱工程とした以外は前述の第
1実施形態と同様である。
【0026】本方法が適用できる鋼部材は炭素含有量が
質量基準で0.1〜4%である。具体的には、炭素鋼、
クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブ
デン鋼等が例示できる。
【0027】加熱工程はA1変態点以上に鋼部材を加熱
する工程である。本方法では鋼部材に最初から含有され
る炭素が本工程により転位等を生起し、オーステナイト
化の核となりその後の結晶粒の微細化を引き起こす点
で、前述の第1実施形態の方法と原理的にはほぼ同じで
ある。なお、本工程は単に加熱を行うばかりでなく、前
述の第1実施形態の方法のように、浸炭処理、窒化処
理、炭窒化処理等を行ってもよい、その他の工程として
は前述の第1実施形態の方法とほぼ同様に行うことがで
きるので、前述の記載・説明をもって本実施形態の各工
程の説明に代える。また、必要に応じて第1実施形態と
同様に第1窒化工程および第2窒化工程を適用してもよ
い。
【0028】
【実施例】(実施例1)図1に示すように、本実施例の
熱処理はT1〜T6の各工程に大別される。T1工程
(浸炭工程に相当)では炭化系ガスを含む雰囲気(雰囲
気中の炭素ポテンシャル(以下、「CP」と称する。)
が0.75%程度)中で鋼部材(SCr420)を90
0〜950℃に昇温させて数時間浸炭を行い、鋼部材の
表面から炭素を拡散させた。鋼部材の炭素濃度は当初の
0.2%からT1工程で鋼部材表面の炭素濃度が0.7
〜1.0%となった。
【0029】T2工程(浸炭工程に相当)では炭化系ガ
スを含む雰囲気(CPが0.75%程度)中で鋼部材を
820〜870℃に降温させて浸炭を行った。T2工程
は20〜60分行った。その後T3工程(冷却工程に相
当)では120℃の油中に鋼部材を浸漬して急冷却を行
った。
【0030】T4工程(急速加熱工程に相当)では高周
波加熱装置を用いて鋼部材の表面を加熱した。その後、
T5工程(第2窒化工程に相当)では800〜850℃
の炭化系ガスおよびアンモニアガスを含有する雰囲気
(CPが0.75%程度、窒素ポテンシャル(以下、
「NP」と称する。)が0.2%程度)中で処理した。
その後、T6工程(焼き入れ工程に相当)では前述の冷
却工程と同様の方法で焼き入れを行った。
【0031】その後、通常の浸炭処理で行われる低温焼
き戻しを行い実施例1の試料とした。
【0032】(実施例2)図2に示すように、T7工程
(浸炭工程に相当)では実施例1のT1工程と同様に9
00〜950℃に昇温し、炭化系ガスを含む雰囲気(C
Pが0.75%程度)中で数時間加熱して鋼部材の表面
に炭素を拡散させた。
【0033】T8工程(第1窒化工程に相当)では1%
未満の窒素が含まれる雰囲気中で20〜60分、鋼部材
を820〜870℃に降温させて浸炭窒化を行った。そ
の後、T9工程(冷却工程に相当)では120℃の油中
に鋼部材を浸漬させて焼き入れた。
【0034】T10工程(急速加熱工程に相当)では高
周波加熱装置を用いて鋼部材の表面を加熱した。その
後、T11工程(第2窒化工程に相当)では800〜8
50℃の炭化系ガスおよびアンモニアガスを含有する雰
囲気(CPが0.75%程度、窒素ポテンシャル(以
下、「NP」と称する。)が0.2%程度)中で処理し
た。その後、T12工程(焼き入れ工程に相当)では前
述の冷却工程と同様の方法で焼き入れを行った。
【0035】その後、通常の浸炭処理で行われる低温焼
き戻しを行い実施例2の試料とした。
【0036】(実施例3)図3に示すところのT13〜
T16工程まではそれぞれ実施例2のT7〜10工程ま
でと同様の処理を行っており、T17工程では実施例2
のT12工程と同様の処理をおこなっているのでここで
は説明を省略する。すなわち、本実施例では実施例2と
比較して実施例2の第2窒化工程に相当するT11工程
を省略した工程である。これを実施例3の試料とした。
【0037】(比較例)急速加熱工程に代えて、鋼部材
を加熱炉内でゆっくり加熱(1〜2℃/秒)する以外
は、前述の実施例1と同様の方法で熱処理を行い、比較
例の試料とした。
【0038】(結晶粒度および炭窒化物の析出量の測
定)各試料表面を顕微鏡で観察して、0.0039mm
2あたりの粒数を測定し、JIS G0551に従い粒
度を決定した。同時にφ10μmあたりの炭窒化物の析
出量を測定した。
【0039】(ピッチング強度試験)ピッチング強度試
験はφ20mmの丸棒を熱間鍛造して所定の形状に加工
した後に各実施例の処理を行ったピッチング試験片と、
SCr420を肌焼き深さ0.7mm程度となるように
浸炭焼き入れされた相手ローラとを用い面圧2940N
(300kgf/mm2)、すべり率−40%、ATフ
ルード(約80℃)中の条件でピッチングが発生するま
でのローラ回転数を測定した。
【0040】(結果)各実施例および比較例について結
晶粒度およびピッチング強度の値を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】表1より明らかなように、急速加熱工程の
有無のみ異なる実施例1と比較例との結果から、実施例
1のように急速加熱工程を行うことにより結晶粒度がG
c13程度からGc14程度に向上し、結晶粒がより微
細になることが明らかとなった。結晶粒の微細化の結
果、鋼部材の強度が上昇しピッチング強度の値が1.4
倍に向上した。また、実施例1では第2窒化工程による
炭窒化物の析出量も著しく増加している。これは炭窒化
物の析出が結晶粒界において生起しやすいために、結晶
粒度が上昇、すなわち結晶粒界が増加することで炭窒化
物の析出量も増加したものと考えられる。
【0043】そして、実施例1と実施例2との比較か
ら、実施例2のように第1窒化工程を行うことで、結晶
粒度がGc14からGc15に向上し、さらにピッチン
グ強度の値が2.6倍に向上することが明らかとなっ
た。
【0044】なお、実施例3では実施例2と比較して第
2窒化工程を省略したことから炭窒化物の析出量が減少
し、ピッチング強度の値が下がっている。しかしなが
ら、結晶粒度に影響を与えるそれ以前の工程に異同は無
いので結晶粒度は同等である。また、第2窒化工程にお
ける加熱保持を行わないので、焼き入れ歪みの量が少な
くなることや第2窒化工程を行わないことによるコスト
低減の点では優れている。
【0045】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明方法によ
れば冷却工程後に急速に加熱することで従来方法よりも
鋼部材中に生成する結晶粒を微細にすることが可能とな
り、鋼の強度を著しく上昇できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の熱処理方法のヒートパターンの概略
を示す図である。
【図2】実施例2の熱処理方法のヒートパターンの概略
を示す図である。
【図3】実施例3の熱処理方法のヒートパターンの概略
を示す図である。
【符号の説明】
T1、T2、T7、T13…浸炭工程 T8、T14…第1窒化工程 T3、T9、T15…冷却工程 T4、T10、T16…急速加熱工程 T5、T11…第2窒化工程 T6、T12、T17…焼き入れ工程

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼部材をA1変態点以上にまで昇温させ
    て浸炭する浸炭工程と、 該鋼部材をA1変態点以下に冷却する冷却工程と、 該鋼部材をA1変態点以上にまで急速に昇温させる急速
    加熱工程と、 該鋼部材を急冷却して焼き入れする焼き入れ工程と、 を有することを特徴とする鋼部材の熱処理方法。
  2. 【請求項2】 炭素含有量が質量基準で0.1〜4%で
    ある鋼部材に対する熱処理方法であって、 該鋼部材をA1変態点以上にまで昇温させる加熱工程
    と、 該鋼部材をA1変態点以下に冷却する冷却工程と、 該鋼部材をA1変態点以上にまで急速に昇温させる急速
    加熱工程と、 該鋼部材を急冷却して焼き入れする焼き入れ工程と、 を有することを特徴とする鋼部材の熱処理方法。
  3. 【請求項3】 前記冷却工程は、前記鋼部材を急冷却し
    て焼き入れする工程である請求項1又は2に記載の鋼部
    材の熱処理方法。
  4. 【請求項4】 前記浸炭工程と前記冷却工程との間に、
    前記鋼部材に少なくとも窒化を行う第1窒化工程をもつ
    請求項1〜3のいずれかに記載の鋼部材の熱処理方法。
  5. 【請求項5】 前記急速加熱工程と前記焼き入れ工程と
    の間に、前記鋼部材に少なくとも窒化を行う第2窒化工
    程をもつ請求項1〜4のいずれかに記載の鋼部材の熱処
    理方法。
  6. 【請求項6】 前記急速加熱工程は10℃/秒以上の昇
    温速度で加熱を行う工程である請求項1〜5のいずれか
    に記載の鋼部材の熱処理方法。
  7. 【請求項7】 前記急速加熱工程は高周波加熱又はレー
    ザ加熱又は電子ビーム加熱で行う請求項1〜6のいずれ
    かに記載の鋼部材の熱処理方法。
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