JP2002260569A - Ezフィルタ分光方法及びその装置 - Google Patents

Ezフィルタ分光方法及びその装置

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JP2002260569A
JP2002260569A JP2001051851A JP2001051851A JP2002260569A JP 2002260569 A JP2002260569 A JP 2002260569A JP 2001051851 A JP2001051851 A JP 2001051851A JP 2001051851 A JP2001051851 A JP 2001051851A JP 2002260569 A JP2002260569 A JP 2002260569A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 測定速度の速い電位コントラスト法を提供す
る。 【解決手段】 主電子ビームPEは電子銃2から試料4
の表面に側方から斜入射し、主電子ビームPEによって
励起された2次電子は、試料4の上方に設置された2枚
の平面メッシュフィルタ6,8を通過し、その上側に置
かれた2次電子検出器10によって検出される。下側
(試料側)の平面メッシュフィルタ6は試料4と同電位
の接地電位、上側の平面メッシュフィルタ8は適当な固
定減速電位Vgに設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は液晶装置のTFT
(薄膜トランジスタ)電極の電位観察のような、種々の
電子装置の電位コントラストSEM(二次電子顕微鏡)
像を取得するために使用する検出方法とそれを実現する
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶装置のTFT電極の電位を観察する
ために、電子ビームテスタで行われている全運動エネル
ギー分光法を用いて電位コントラストSEM像を取得す
ることが行なわれている。LSI(大規模集積回路)等
からのSEM像を取得すると、電極電位に応じたコント
ラストを着けることができることは古くから知られてい
る。図9に一例を示す。図9はMOSFET(MOS電界
効果トランジスタ)の電圧コントラスト像を示したもの
であり、Sはソース電極、Gはゲート電極、Dはドレイ
ン電極である。(A)はゲート電極に−6Vを印加し、
他の電極は接地電位とした場合、(B)はさらにドレイ
ン電極に−15Vを印加した場合である。この例では、
負電位が印加された電極が明るく現れている。
【0003】一般に、正電位電極からの2次電子の運動
エネルギーは接地電位空間(ドリフト領域)では減速さ
れて小さくなる。場合によっては、電子はこのポテンシ
ャル障壁に阻まれ試料側に押し返されてしまう。一方、
負電位から生じた2次電子は、接地電位領域では加速さ
れ。より大きな運動エネルギーを持つようになる。この
ためSEM像では、基本的には負電位のところが明る
く、正電位のところは暗くなる。
【0004】しかし実際には、像の明るさは検出器に到
達した2次電子信号量に依るため、コントラストは単に
出射位置の電位のみによって決まるのではない。観察位
置から検出器に至るまでの電子軌道に影響する環境がす
べて関係する。これをローカルフィールド効果と呼んで
いる。
【0005】ローカルフィールド効果の一例を図10に
示す。この例では、検出器は観察試料の上側に置かれて
いる。試料はA,B2つの電極から構成されており、そ
れぞれ独立に電位を印加できる。(a)では、より検出
器側に近い電極Aからの2次電子信号量に注目してい
る。図に示すように、A電極の電位が負側で信号が大き
く、正になるほど小さくなる。これは、上の電位コント
ラストの記述に一致する。しかし、信号量はまた隣接電
極であるB電極の電位にも依存している。A,B電極と
検出器の位置関係から、B電極が負電位にあるときの方
がA電極からの2次電子信号量が大きくなる。これは、
B電極の電位が2次電子の軌道に影響し、検出器に到達
するか否かに影響しているためである。
【0006】(b)では逆に、B電極からの信号に注目
している。この場合も当該電極(ここではB電極)の電
位が負側でより多くの信号が得られることに変わりはな
いが、隣接A電極の電位の信号量への影響は(a)とは
逆である。すなわちA電極が負電位であると信号量は小
さくなっている。これは、B電極からの2次電子軌道が
A電極電位からの影響で曲げられ、検出器から逸れるた
めである。
【0007】このように、通常のSEMシステムで撮ら
れた電位コントラスト像は単純に観察試料の電位を表わ
すものとは言い難い。ローカルフィールド効果やその他
の影響が像コントラストから電位を(準)定量的に類推
することを困難にしている。
【0008】LSIの検査に使われる電子ビームテスタ
では上記のような問題を解決し定量的に電極電位を測定
するため、2次電子の全エネルギーに関するスペクトル
を観察し、その「ずれ」から出射電極の電位を求めてい
る。2次電子のスペクトルデータから電位を求める、と
いう作業を行なっている点で、いわゆる「電位コントラ
スト像」とはその取得原理が全く異なったものと言うこ
とができる。以下、電子ビームテスタの測定原理を説明
する。
【0009】図11に代表的な電子ビームテスタの検出
系を示す。PE(主電子ビーム:図中に垂直方向の矢印
で示されている)によって励起された2次電子を対物レ
ンズ下面に接地した引き出し電極G1によって分光器
(対物レンズ内に組み込んだいくつかの球面メッシュ・
グリッドG2,G3,G4と検出器から構成される)内
に引き込む。G1電極の役割は発生した2次電子を電極
電位周りからのローカルフィールドの影響に依らず「全
て分光器まで導く」ことである。
【0010】前述した「電位コントラスト法」との違い
はここにある。「電位コントラスト法」では、負電位か
ら発生した2次電子を正電位からのものと比べ、より多
く検出することによって電位情報を得ている。全ての発
生2次電子を分光器に入れることを前提としている「電
子ビームテスタ方式」とは電位情報の求め方が全く異な
っている。
【0011】このようにして分光器に入った2次電子
は、球面状の減速グリッド(G2,G3,G4)によっ
てエネルギー分光される。減速グリッドが球面形状をし
ているのは、電子の全運動エネルギーによって分光する
ためである。
【0012】この減速型分光器はハイパスフィルタとし
てはたらくので、減速フィルタに印加される負電位の大
きさによって通過する2次電子量が変化する。その様子
を示したのが図12である。(A)は減速電位と2次電
子信号量を示す。図の3本の線は、それぞれ、観察試料
電位(Usp)が+5,0,−5Vであるときの結果であ
る。減速電位(UG)が浅い(正側)とき、減速グリッ
ドによって押し戻される電子の割合は小さく、大きな信
号が得られる。減速電位を深くする(負側にする)に従
い、2次電子のうち小さな運動エネルギーを持ったもの
はグリッドで止められて検出できなくなり、信号量は徐
々に減ってくる。
【0013】減速グリッド分光はハイパス分光であるの
で、得られた信号を減速電位に関して微分すると2次電
子のエネルギースペクトルを得ることができる。これが
図12(B)である。図に示されるように2次電子のス
ペクトルは電子の出射位置電位Uspによってその位置が
シフトするので、このシフト量を計ることで観察位置の
電位を求めることが可能である。
【0014】電子ビームテスタでは測定速度を上げるた
め、通常運転では2次電子のスペクトル分布を求めるこ
とは行なっていない。図12(A)に破線の横棒で示さ
れるように、得られる測定信号量が一定値になるよう減
速グリッド電位UGをフィードバック調整し、この減速
電位値UGから観察位置電位を類推している。
【0015】このように「電子ビームテスタ方式」は電
子の全運動エネルギーを分光する方法をとっているので
定量的な絶対電位観察に優れているといえる。しかし、
いくつか問題点もある。
【0016】第一点は、測定速度である。微分処理によ
る2次電子の全体スペクトル形状を求めることはせず、
測定信号量から直接電位を類推する方式をとってはいる
が、それでもフィードバックによって減速グリッド電位
を調整する必要があり、特に信号のS/Nが充分に良く
ない場合、一点の測定に比較的長い時間がかかる。この
ため、TVレート(30フレーム/秒)で変化する動的
電位を像全体にわたって追随するような観察には困難が
伴うと考えられる。
【0017】第二点は、全運動エネルギー分光に伴う球
面状グリッドの必要性から生じる。このグリッドできち
んと全運動エネルギー分光を行なうためには測定点(あ
るいは測定点の像)が球面グリッドの中心にあることが
必須である。このため観察点を光学系の光軸(中心軸)
から大きくはずすことができない。これより、一度に観
察可能な領域(走査可能領域:field of view)が狭い
範囲に制限されることになる。
【0018】第一の困難を避けるために、減速電位を固
定し(図12(A)の垂直の破線)、信号量の変化を追
うという代替法が考えられる。しかし、ここでも次のよ
うな制限条件がある。図12(A)と(B)を比較する
とわかるように、この方法で測定可能な電位範囲は2次
電子の初期エネルギースペクトルの分布幅によって決ま
ってしまう。分布幅が狭いとき測定可能な電位レンジは
小さくなり同手法は有効ではない。このことを図13に
より説明する。
【0019】図13では、(B)に示されるように、2
次電子の初期エネルギー(Ese)分布が5eV付近に集
中していると仮定する。このとき、「電子ビームテスタ
方式」で得られる信号は図13(A)のようになり、あ
る減速電位閾値の前後で信号量が(0,1)的変化をす
るため、減速電位を固定したとき、観察位置電位を信号
量の変化から類推することが困難になってしまう。2次
電子信号量を電位の関数と考えたとき、ダイナミックレ
ンジが狭く電位がこの範囲を超えたところにあるとき、
信号がいわば「飽和」したようなことになる。
【0020】以上まとめると、「電子ビームテスタ方
式」の問題点として以下のようなものが挙げられる。 1)測定速度が遅い。 2)観察領域をひろくとれない。 3)測定可能電位範囲が2次電子のエネルギー分布幅に
依存する。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの問
題点を解決できる電位コントラスト法とその装置を提供
することを目的とするものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明はEzフィルタ分
光方法を用いた電位コントラスト法とその方法を実現す
るEzフィルタ分光装置である。
【0023】本発明のEzフィルタ分光方法は、以下の
ステップ(A)から(C)を含んでいる。 (A)真空中に置かれた試料の表面に電子ビームを照射
して2次電子を発生させるステップ、(B)前記試料表
面に平行に平面メッシュフィルタを配置し、その平面メ
ッシュフィルタに所定の減速電位を印加して、前記2次
電子のうち前記平面メッシュフィルタを透過するものと
しないものを選別するステップ、及び(C)試料表面の
前記電子ビームが照射される位置に対向するように電子
検出器を配置し、前記平面メッシュフィルタを透過した
2次電子を検出するステップ。
【0024】また、本発明のEzフィルタ分光装置は、
試料部に置かれた試料の表面を励起して2次電子を発生
させるためにその試料表面に電子ビームを照射する電子
銃と、その電子銃からの電子ビームが試料表面を照射す
る試料表面上の位置に対向して配置された電子検出器
と、その電子検出器と試料との間に試料表面に平行に配
置され、所定の減速電位が印加される平面メッシュフィ
ルタと、これら各部材及び試料を真空中に収容する容器
とを備えている。
【0025】平面メッシュフィルタの好ましい一例で
は、互いに平行な複数枚を備え、試料に最も近いメッシ
ュフィルタには試料と同電位が印加され、他のメッシュ
フィルタには2次電子のうちこの平面メッシュフィルタ
を透過するものとしないものを選別する減速電位が印加
されるものである。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明のEzフィルタ装置の一実
施形態の電子光学系構成を図1に示す。主電子ビームP
Eは電子銃2から試料4の表面に側方から斜入射する。
主電子ビームPEの斜入射は絶対条件ではないが望まし
い配置である。試料4は例えば液晶表示装置である。主
電子ビームPEによって励起された2次電子は、試料4
の上方に設置された2枚の平面メッシュフィルタ6,8
を通過し、その上側に置かれた2次電子検出器10によ
って検出される。下側(試料側)の平面メッシュフィル
タ6は試料4と同電位の接地電位、上側の平面メッシュ
フィルタ8は適当な固定減速電位Vgに設定されてい
る。
【0027】「Ezフィルタ方式」は次のような原理に
基づいている。主電子ビームPEによって励起された2
次電子の運動エネルギー(ここでは初期エネルギーEse
を5.0eVと仮定する)は、出射位置電位に応じて、
接地電位であるドリフト領域まで出てきたとき、初期エ
ネルギーからいくらかずれた値を持つ。このことを模式
的に説明したのが図2である。
【0028】図2は2次電子の速度ベクトルの分布を表
している。出射時には、電子の速度ベクトルは初期エネ
ルギーEse(=5.0eV)に応じた速度で上向き2π
の立体角内で分布している。これを模式的に示したのが
図中でEse=5.0eVとして示した半球面である。2
次電子の初期速度の方向密度分布はcos分布している(L
ambert則)ことが知られているので、分布密度は球面の
上部の方が高くなるはずだが、このことは図2には示さ
れていない。図2は速度の分布範囲を示すに止まってい
る。ただし、この後のシミュレーション計算ではcos則
に従う初期立体角分布が考慮されている。
【0029】出射位置電位Veが0Vであれば、ドリフ
ト領域での電子速度分布は初期分布から概ね変化はない
ものと考えられ、図中のEse=5.0eVとして示した
半球面の分布が保たれる。一方、出射電位が負電位(V
e=−2.5eVとした)のとき、ドリフト領域にまで
達した2次電子Eseは、5.0+2.5=7.5eVのエ
ネルギーを持つことになる。そこで、電子の速度ベクト
ルはEse=7.5eVとした図中の半球面で表されたよ
うな分布に変わる。逆に出射電位が正(Ve=+2.5
V)の場合は電子は減速され、図中でEse=5.0−2.
5=2.5eVとしたもう一方の半球面上に速度ベクト
ルが分布する。まとめると、ドリフト領域での2次電子
の速度ベクトルは出射位置電位に対応した半径を持った
半球面上に分布するということになる。出射点近傍の電
界の影響もあるので、速度方向の分布は厳密にはLamber
t分布にはならないことも有りうるが、LCDパネルの
ように規則正しく電極が配置されている場合には適当な
電圧印加パターンを採用することによってドリフト領域
での電子速度方向分布をおおよそ半球状cos分布にする
ことができる。これについては後述する。
【0030】このように電子の速度ベクトルが大きさの
異なる半球面上に分布するので、平面グリッド6の電位
G1=接地電位、平面グリッド8の電位G2=減速(re
tarding)電位Vgとした2枚の平面グリッド6,8を
用い、z方向の運動エネルギーに対しハイパスフィルタ
をかける(Ezフィルタ)ことによって、出射点電位に
応じて信号量を変調することができる。図2は、Vg=
−Ez0としたとき、Ez>Ez0という条件を満たす電子
のみがグリッド6,8を通過して検出器10に収集され
るため、出射電位に応じて異なる割合の電子(各速度ベ
クトル半球のうち、電子の速度vz>vz0(=(2Ez0
/m)1/2:mは電子の質量)を満たす部分の割合)が
検出されることを表している。
【0031】ここで注目すべきことは2次電子の初期エ
ネルギーEseを=5.0eVに固定し分布幅が0である
としても出射位置電位に応じて信号量が連続して変化す
ることである。これはエネルギー分光においてEz(z
方向成分)を用いており、全エネルギーEseではないか
らである。電子ビームテスタ方式との違いである。
【0032】これまでにEzフィルタ法の原理を説明し
たが、実際にはローカルフィールド効果等があるため、
これを実用化するためには電子光学系の設計に工夫が必
要である。次にこの点についての考察を行なう。まず、
電子がドリフト領域に移行したときにも半球状cos分布
を保つためには、電圧の印加されている試料面から離れ
るにつれ空間電位が速やかに接地電位に近づくようにす
る必要がある。LCDパネル等の規則的に電極が並んだ
ものが測定対象であれば、各微小電極に交互に正負の電
圧を印加して平均電位を0にすることによって、これを
実現できる(「市松モード」電圧印加パターン)。静電
場分布を規定する方程式(Laplace方程式)より、電
場、電界の空間への染み出しは各電極の寸法程度に抑え
られることがわかっている。
【0033】そこで、図3に示すようなLCDパネルT
FT電極の印加パターンを仮定し、異なる出射電位から
の電子軌道の評価を行った。図で等電圧線を実線でより
多く表示した電極aが負電位に、残りの電極bが正電位
に印加されている(phase A)。図中、X印のところを
2次電子出射点とする。出射点のまわりの条件を変えロ
ーカルフィールドの影響を見積もるため、各電極への印
加電圧の符号を正負逆転させた逆位相(phase B)での
軌道計算も同時に行った。
【0034】シミュレーション計算では2次電子の初期
エネルギーEseを5.0eVに固定し、電極印加電圧の
振幅を、Ve=±25.0〜±1.25Vの範囲で変化さ
せた。それぞれの条件について出射点電位を適当な範囲
で変化させ、電子軌道計算を出射電極からドリフト領域
まで行なう。ドリフト領域でのEzエネルギー分布を見
て、減速グリッド電位Vgに応じた信号検出量を評価し
た。
【0035】図4〜図8に結果を示す。図7を例にグラ
フの示すところを説明する。図7は市松モード電極印加
電圧がVe=±2.5Vの場合の結果である。横軸が第
2グリッド電極(G2)にかけた減速電位Vgを表す。
第1グリッド(G1)は常に接地されているとする。こ
れはグリッドとLCDパネル間に電界ができないように
するためである。縦軸は2次電子の検出効率で、1のと
き主電子ビームによって励起された全ての2次電子が検
出されることになる。
【0036】例えば、出射電極電位Veが0Vのときの
信号量はグリッド電位Vgの関数として図中に示したよ
うに変化する。グリッド電位Vgが深い(負側)とき、
減速グッドでより多くの電子が押し戻されるため、当然
信号は小さくなる。減速電位を浅くするにつれ信号強度
は大きくなっていく。Vg=0Vは、減速を全くかけな
いときの信号量である。
【0037】興味深いことはEzフィルタをかけないと
き(Vg=0V)、出射電極電位Veが異なっても(−
2.5V<Ve<+2.5V)、信号量はそれほど変わら
ないが、適当な減速グリッド電位Vg(−2.5V程
度)をかければ、出射電極電位Veに応じて信号量を変
調することができる、という事実である。すなわち、適
当な検出器動作条件を選ぶことで、信号量が出射電極電
位Veに応じて変化するようにすることが可能である。
また、周りの環境の異なる2つの位相(phase A,phas
e B。図中、実線データと破線データに対応)の信号強
度がほぼ同一であることから、図7の動作条件ではロー
カルフィールド効果の影響が抑えられ、当該電極電位V
eのみによって信号強度が決まると言ってよい。
【0038】ただし、電極電位をきちんと反映した、ロ
ーカルフィールド効果の影響の少ない信号強度を持った
理想的な電位コントラストを得るためには市松モード電
極印加電圧等を調整する必要がある。図4に印加電圧振
幅をV=±25Vと大きくした場合の(減速グリッド電
圧Vg対電子検出効率)の計算結果を示す。図7の場合
と比較して顕著に異なるのは、当該電極電位Veが正側
では信号量が0になっていること(信号強度の飽和)、
phase Aとphase Bで信号強度が大きく異なってきてし
まうこと(ローカルフィールド効果の出現)の2点であ
る。これは両方とも2次電子の初期エネルギー(Ese=
5.0eVを仮定)に比較し、市松モード電極印加電圧
Veが大きいことによって起こる。電極電位Veの振幅
が大きいためドリフト領域での電子の速度ベクトル分布
が図2に示すような単純なものからずれてしまっている
のである。
【0039】図5、図6には、それぞれ、印加電圧振幅
がVe=±12.5V,5Vでの結果を示した。印加電
圧振幅が小さくなるにつれ徐々に望ましい信号特性が得
られるようになってはいるが、図4のところで述べたこ
とと同じような傾向が残っている。
【0040】逆に印加電圧振幅をVe=±1.25Vと
極端に小さくした場合のようすを図8に示す。「信号強
度飽和」「ローカルフィールド効果の影響」はともに無
くなっているが、今度は当該電極電位Veの違いによる
信号強度の変化が小さくなってしまう。
【0041】以上より、当該電極電位を反映したきちん
とした信号強度変化を得るためには市松モード印加電圧
振幅を最適化する必要があることがわかる。ここではV
=±2.5V程度が適当という結果が得られたが、この
振幅強度は2次電子の初期エネルギーに依存している。
この実施例ではこれを、Ese=5.0eVとして計算し
てきたが、実際の初期エネルギー分布の重心値はこれと
異なるかもしれない。その場合には、最適印加電圧は実
測値に比例させてスケーリングして求めてやればよい。
このように、信号強度の飽和やローカルフィールド効果
による影響をとり除くためには、 1)市松モードによる電圧印加、及び 2)2次電子初期エネルギー(分布の重心値)に対応し
た印加電圧 の選定が必要である。電極の配置が規則的で、比較的大
きな領域の電位を高速計測する必要がある電子ビーム液
晶検査装置では特に有効な手法になると考えられる。
【0042】
【発明の効果】本発明では、Ezフィルタを用いて電位
コントラストをつけ、半定量的な電位情報を得るように
したので、2次電子の全運動エネルギースペクトルを分
光器を用いて測定する「電子ビームテスタ方式」と比
べ、以下の効果を達成することができる。 1)平面メッシュフィルタに印加する減速グリッド電位
を固定で信号量変化から観察位置電位を求める方式であ
るので、測定速度を高速にできる。 2)減速グリッドが平面メッシュフィルタであるため、
観察範囲がこれによって制限されることはなく、観察フ
ィールドを大きくできる。 3)測定可能電位は2次電子初期エネルギーの絶対値で
決まりその分布幅に依存することはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のEzフィルタ装置の一実施形態にお
ける電子光学系を示す正面断面図である。
【図2】 2次電子の速度ベクトルの分布を表わす斜視
図である。
【図3】 LCDパネルTFT電極の印加パターンを示
す平面図である。
【図4】 印加電圧振幅Veを±25Vとした場合の減
速グリッド電圧Vg対電子検出効率の計算結果を示す図
である。
【図5】 印加電圧振幅Veを±12.5Vとした場合
の減速グリッド電圧Vg対電子検出効率の計算結果を示
す図である。
【図6】 印加電圧振幅Veを±5Vとした場合の減速
グリッド電圧Vg対電子検出効率の計算結果を示す図で
ある。
【図7】 印加電圧振幅Veを±2.5Vとした場合の
減速グリッド電圧Vg対電子検出効率の計算結果を示す
図である。
【図8】 印加電圧振幅Veを±1.25Vとした場合
の減速グリッド電圧Vg対電子検出効率の計算結果を示
す図である。
【図9】 MOSFETの電圧コントラスト像を示2次
電子顕微鏡写真である。
【図10】 ローカルフィールド効果の一例を説明する
図である。
【図11】 電子ビームテスタの検出系の一例を示す正
面断面図である。
【図12】 (A)は電子ビームテスタで減速フィルタ
を通過する2次電子量を示す図、(B)はその信号を減
速電位で微分したものである。
【図13】 2次電子の初期エネルギー分布が狭いと仮
定した場合の図12と同様の2次電子量(A)とその微
分値(B)である。
【符号の説明】
4 試料 6,8 平面メッシュフィルタ 10 2次電子検出器 PE 主電子ビーム SE 2次電子 Vg 減速電位

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下のステップ(A)から(C)を含む
    Ezフィルタ分光方法。 (A)真空中に置かれた試料の表面に電子ビームを照射
    して2次電子を発生させるステップ、 (B)前記試料表面に平行に平面メッシュフィルタを配
    置し、その平面メッシュフィルタに所定の減速電位を印
    加して、前記2次電子のうち前記平面メッシュフィルタ
    を透過するものとしないものを選別するステップ、及び (C)試料表面の前記電子ビームが照射される位置に対
    向するように電子検出器を配置し、前記平面メッシュフ
    ィルタを透過した2次電子を検出するステップ。
  2. 【請求項2】 試料部に置かれた試料の表面を励起して
    2次電子を発生させるためにその試料表面に電子ビーム
    を照射する電子銃と、 前記電子銃からの電子ビームが試料表面を照射する試料
    表面上の位置に対向して配置された電子検出器と、 前記電子検出器と前記試料との間に試料表面に平行に配
    置され、所定の減速電位が印加される平面メッシュフィ
    ルタと、 これら各部材及び前記試料を真空中に収容する容器とを
    備えたEzフィルタ分光装置。
  3. 【請求項3】 平面メッシュフィルタは互いに平行な複
    数枚を備え、前記試料に最も近いメッシュフィルタには
    試料と同電位が印加され、他のメッシュフィルタには前
    記2次電子のうちこの平面メッシュフィルタを透過する
    ものとしないものを選別する減速電位が印加される請求
    項2に記載のEzフィルタ分光装置。
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