JP2002256729A - 免震機能を有する回転建造物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 水平に回転可能な建造物において、主要な構
造体を免震構造とすると共に、地震によって生じた主要
な構造体における変位の元位置復帰を容易に行うことが
可能な免震機能を有する回転建造物を提供すること。 【解決手段】 免震機能を有する回転建造物は、基礎構
造体１に構築された回転軸Ａの軸線を含む剛質の塔状構
造体２と、回転軸を中心とした該基礎構造体上の凹面軌
道５に転動手段６を介して水平回転自在に載置された外
囲回転構造体４と、外囲回転構造体を回転駆動する駆動
装置とを備え、外囲回転構造体の重心位置は実質的に側
周に対しては中心部で上下方向には下半部に存在し、外
囲回転構造体の中心頂部１１は塔状構造体における回転
軸上の塔頂部７に対してピン接合手段１２によって係合
されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、地震に対する免震
機能を有する水平に回転可能な建造物に関する。

【０００２】

【従来の技術】水平に回転可能な建造物は、一般的に基
礎構造体に対して固定される箇所が少ないから、地震動
に対して変位を生ずやすい。したがってその主要な構造
体の地震による変位を僅少にすると共に、地震によって
生じた変位を元位置に復帰させなければならないが、そ
のような機能を有する建造物の開発は未だ少ない。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、水平に回転可能な建造物において、主要な
構造体を免震構造として地震力の影響を僅少にすると共
に、地震によって生じた主要な構造体における変位の元
位置復帰を容易に行うことが可能な免震機能を有する回
転建造物を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明の免震機能を有する回転建造物は、基礎構造
体から剛接状に構築された垂直な回転軸の軸線を含む剛
質の塔状構造体と、該塔状構造体を包囲すると共に該回
転軸を中心とした該基礎構造体上の凹面軌道に転動手段
を介して水平回転自在に載置された一体的構造を有する
外囲回転構造体と、該外囲回転構造体を該基礎構造体上
に回転駆動する駆動装置とを備え、該外囲回転構造体の
重心位置は実質的に側周に対しては中心部に存在すると
共に上下方向には下半部に存在するものであり、該外囲
回転構造体の中心頂部は該塔状構造体における該回転軸
上の塔頂部に対して水平回転自在で且つ水平方向の移動
を制限するピン接合手段によって該塔状構造体の該塔頂
部に係合され、該外囲回転構造体における最下位床版の
下面は凸面状の支承面とされ、該転動手段は該支承面と
該凹面軌道の間に介在されると共に該外囲回転構造体の
垂直方向応力を該基礎構造体に伝達するが該凹面軌道の
面に沿う方向には転動可能であることを主な特徴とす
る。

【０００５】また前記転動手段は前記支承面に取付けら
れた球状転動単位の組立体であることを特徴とする。

【０００６】さらに前記塔状構造体には、階段、昇降機
等の交通手段が内蔵されることや、前記外囲回転構造体
には、複数階の床版が設置されていることを特徴とす
る。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について添付
図面を参照して説明する。図１は、本発明にかかる免震
機能を有する回転建造物を概念的に示す垂直断面図であ
り、また図２は図１のａ−ａ線から見た水平断面図であ
る。図中符号１はこの建造物の基礎構造体であって、地
盤上における建造物の投影範囲について平面状に地盤に
対して強固に固定するように構築されている。基礎構造
体１の中央には垂直な回転軸Ａの軸線を含む塔状構造体
２が立設されている。塔状構造体２は自体が曲げ抵抗力
の大きい剛直な構造で、基礎構造体１に対して剛接状に
構築されている。塔状構造体２は剛直ではあるが、その
内部には密実とされない塔内空間３を設けることが可能
であり、この塔内空間３を利用して階段や昇降機等の交
通手段を設置することができる。

【０００８】外囲回転構造体４は、塔状構造体２を包囲
するように配置され、回転軸Ａを中心として基礎構造体
１上に設けられた凹面軌道５に転動手段６を介して水平
回転自在に載置されている。転動手段６は、外囲回転構
造体４の最下位の床版８の下面に形成された凸面状の支
承面９と凹面軌道５の間に介在され、外囲回転構造体４
の垂直方向応力を基礎構造体１に伝達するが凹面軌道５
の面に沿う方向には転動可能である手段であり、例えば
支承面９に取付けられた球状転動単位または玉車輪の組
立体が使用される。凹面軌道５は回転軸Ａ箇所が最下面
となるような曲面であり、塔状構造体２の塔頂部７上に
おける後述するピン接合手段１２を中心とする円弧面と
されていることが好ましい。また転動手段６は球状転動
単位または玉車輪の組立体に限定されず凹面軌道５の面
に沿う方向に円滑な転動が可能である他の手段を採用す
ることができる。外囲回転構造体４の外形は、図示の例
では、截頭円錐状とされているが、円錐状、円筒状、半
球状等の各種の形状が採用される。ただしその重心位置
は実質的に側周に対しては中心部に存在し、また上下方
向には下半部に存在するように構築される。図示の例で
は、最下位の床版８から中心頂部１１にかけて放射状に
複数の壁１０が配設されると共に数階分の床版８が構築
されて居室等を形成しており、それぞれの階は塔状構造
体２の塔内空間３に設けられる適宜の交通手段と連絡し
ている。

【０００９】外囲回転構造体４における中心頂部１１
は、塔状構造体２における回転軸Ａ上の塔頂部７に対し
て水平回転自在で且つ水平方向の移動は制限するように
したピン接合手段１２によって塔頂部７に係合されてい
る。ピン接合手段１２には、例えば外囲回転構造体４に
おける中心頂部１１に固設された多少の角度変位を許容
するラジアル軸受に対して塔頂部７から突設した短軸を
嵌合させる手段が採用される。この接合手段によって、
地震動による外囲回転構造体４および塔状構造体２の相
互の水平力は伝達されるが、常時外囲回転構造体４の垂
直荷重は塔状構造体には伝達されず、転動手段６を介し
て基礎構造体１に伝達される。また基礎構造体１に対し
て外囲回転構造体４を水平回転させるために駆動装置
（図示されていない。）が設置される。駆動装置には、
外囲回転構造体４が地震動等によって基礎構造体１に対
して相対的変位を生じても、変位に追随して回転駆動可
能とする機構が設けられる通常の駆動装置が使用され
る。

【００１０】常時、外囲回転構造体４は、駆動装置によ
って塔状構造体２の周囲を基礎構造体１の凹面軌道５に
沿って水平回転する。地震による水平力が生じた場合
に、外囲回転構造体４は、その中心頂部１１が塔状構造
体２の塔頂部７にピン接合手段１２によって係合されて
いるので上方部の水平移動は拘束されるが、その重心は
下半部に存在すると共に、転動手段６は凹面軌道５の面
に沿う方向には転動可能であるので、基礎構造体１の地
震による変位には追随せず、凹面軌道５面を転動するこ
とにより免震される。したがって外囲回転構造体４は地
震による大きい水平力が作用しないので、耐震構造のよ
うな高強度の構造を必要としない。なお外囲回転構造体
４の重心位置は、実質的に側周に対して中心部に存在す
るので、地震時に不用意な偏心回転を生じたりすること
がなく、また重心の上下方向位置は下半部に存在するか
ら、地震水平力により、塔頂部７、中心頂部１１、ピン
接合手段１２等に過大な応力が発生することがなく、外
囲回転構造体４の転倒の虞もない。そして大きい水平力
が作用した場合にも、塔状構造体２が外囲回転構造体４
の変位を制限するから安全性が向上する。さらに凹面軌
道５は回転軸Ａ箇所が最下面となるような曲面であり、
好ましくは塔状構造体２の塔頂部７上におけるピン接合
手段１２を中心とする円弧面とされているから、外囲回
転構造体４の下方部が基礎構造体１に対して相対的な変
位を生じた場合にも、外囲回転構造体４の中心頂部１１
は塔状構造体２の塔頂部７から大きく変位することがな
く、塔頂部７に過大な水平荷重が加わることがない。

【００１１】地震による水平力によって、外囲回転構造
体４の中心頂部１１は塔頂部７にピン接合手段１２によ
って水平移動が制限されているのに対し下方部は水平移
動が制限されていないので、地震後に外囲回転構造体４
全体が傾斜し、その重心は回転軸Ａ上から外れることに
なる場合を生じる。外囲回転構造体４が傾斜した場合に
は、凹面軌道５上に転動手段６によって転動可能に支持
された外囲回転構造体４には、下半部に存在する重心位
置に重力が作用して重心を回転軸Ａ上の元位置に戻し、
また変位により外囲回転構造体４の中心頂部１１が塔頂
部７に対して作用している水平応力も元位置復帰を助力
する。したがって原理的には、外囲回転構造体４の変位
は自動的に元位置に復帰することになる。そしてたとえ
凹面軌道５上の外囲回転構造体４の摩擦抵抗力等によっ
て傾斜が維持された状態が残留した場合でも、外囲回転
構造体４の水平回転運動を開始すると凹面軌道５上を転
動手段６が転動することによって、外囲回転構造体４は
その重心位置を垂直な回転軸Ａ上に戻すように次第に移
動して元位置に復帰する。

【００１２】

【発明の効果】本発明は、次のような効果を奏する。 Ａ．地震による水平力が生じた場合に、外囲回転構造体
は、その中心頂部が塔状構造体の塔頂部にピン接合手段
によって係合されてはいるので上方部の水平移動は拘束
されるが、その重心は下半部に存在すると共に、転動手
段は凹面軌道の面に沿う方向には転動可能であるので、
基礎構造体の地震による変位には追随せず、凹面軌道面
を転動することにより免震される。したがって外囲回転
構造体は地震による大きい水平力が作用しないので、耐
震構造のような高強度の構造を必要としない。 Ｂ．外囲回転構造体の重心位置は、実質的に側周に対し
て中心部に存在するので、地震時に不用意な偏心回転を
生じたりすることがなく、また重心の上下方向位置は下
半部に存在するから、地震水平力により、塔状構造体の
塔頂部、外囲回転構造体の中心頂部、ピン接合手段等に
過大な応力が発生することがなく、外囲回転構造体の転
倒の虞もない。 Ｃ．大きい水平力が作用した場合にも、塔状構造体が外
囲回転構造体の変位を制限するから、安全性が向上す
る。

【００１３】Ｄ．凹面軌道は回転軸箇所が最下面となる
ような曲面であるから、外囲回転構造体の下方部が基礎
構造体に対して相対的な変位を生じた場合にも、外囲回
転構造体の中心頂部は塔状構造体の塔頂部から大きく変
位することがなく、塔頂部に過大な水平荷重が加わるこ
とがない。 Ｅ．地震による水平力によって、外囲回転構造体の中心
頂部は塔頂部からの水平移動が制限されているのに対し
下方部は水平移動が制限されていないので、地震後に外
囲回転構造体全体が傾斜し、その重心は回転軸上から外
れることになる。外囲回転構造体が傾斜した場合には、
凹面軌道上に転動手段によって転動可能に支持された外
囲回転構造体には、下半部に存在する重心位置に重力が
作用して重心を回転軸上の元位置に戻し、また変位によ
り外囲回転構造体の中心頂部が塔頂部に対して作用して
いる水平応力も元位置復帰を助力する。したがって原理
的には、外囲回転構造体の変位は自動的に元位置に復帰
することになる。そしてたとえ凹面軌道上の外囲回転構
造体の摩擦抵抗力等によって傾斜が維持された状態が残
留した場合でも、外囲回転構造体の水平回転運動を開始
すると、凹面軌道上を転動手段が転動することによっ
て、外囲回転構造体はその重心位置を垂直な回転軸上に
戻すように次第に移動し、元位置に復帰する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる回転建造物を概念的に示す垂直
断面図である。

【図２】図１のａ−ａ線から見た水平断面図である

【符号の説明】

１ 基礎構造体 ２ 塔状構造体 ３ 塔内空間 ４ 外囲回転構造体 ５ 凹面軌道 ６ 転動手段 ７ 塔頂部 ８ 床版 ９ 支承面 １１ 中心頂部 １２ ピン接合手段 Ａ 回転軸

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 基礎構造体から剛接状に構築された垂直
   な回転軸の軸線を含む剛質の塔状構造体と、該塔状構造
   体を包囲すると共に該回転軸を中心とした該基礎構造体
   上の凹面軌道に転動手段を介して水平回転自在に載置さ
   れた一体的構造を有する外囲回転構造体と、該外囲回転
   構造体を該基礎構造体上に回転駆動する駆動装置とを備
   え、該外囲回転構造体の重心位置は実質的に側周に対し
   ては中心部に存在すると共に上下方向には下半部に存在
   するものであり、該外囲回転構造体の中心頂部は該塔状
   構造体における該回転軸上の塔頂部に対して水平回転自
   在で且つ水平方向の移動を制限するピン接合手段によっ
   て該塔状構造体の該塔頂部に係合され、該外囲回転構造
   体における最下位床版の下面は凸面状の支承面とされ、
   該転動手段は該支承面と該凹面軌道の間に介在されると
   共に該外囲回転構造体の垂直方向応力を該基礎構造体に
   伝達するが該凹面軌道の面に沿う方向には転動可能であ
   ることを特徴とする免震機能を有する回転建造物。
2. 【請求項２】 前記転動手段は前記支承面に取付けられ
   た球状転動単位の組立体であることを特徴とする請求項
   １記載の免震機能を有する回転建造物。
3. 【請求項３】 前記塔状構造体には、階段、昇降機等の
   交通手段が内蔵されることを特徴とする請求項１又は請
   求項２記載の免震機能を有する回転建造物。
4. 【請求項４】 前記外囲回転構造体には、複数階の床版
   が設置されていることを特徴とする請求項１乃至３のい
   ずれか１項記載の免震機能を有する回転建造物。