JP2002256379A - 大入熱溶接用鋼材 - Google Patents

大入熱溶接用鋼材

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 400kJ/cmを超える大入熱溶接の溶接熱影響部
で優れた靱性が得られる鋼材を提供する。 【解決手段】C:0.03〜0.15mass%、Si:0.05〜0.25ma
ss%、Mn:0.5 〜2.0 mass%、P:0.03mass%以下、
S:0.0005〜0.0030mass%、Al:0.005 〜0.1 mass%、
Ti:0.004 〜0.03mass%、N:0.0020〜0.0070mass%、
Ca:0.0005〜0.0030mass%を含み、かつ、Ca、O、Sの
各含有量は、下記 (1)式を満たして含有し、残部はFeお
よび不可避的不純物からなる組成とする。 記 0.3 ≦(Ca −(0.18 +130 ×Ca) ×O) /1.25/S≦0.8----(1) ただし、Ca、O、Sは各成分の含有量(mass%)を表
す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、造船、建築、土木
等の各種構造物で使用される鋼材、特に溶接入熱量が40
0kJ/cmを超える大入熱溶接に適した鋼材に関する。
【0002】
【従来の技術】造船、建築、土木等の分野で使用される
鋼材は、一般に、溶接接合により所望の形状の構造物に
仕上げられる。これらの構造物においては、安全性の観
点から、使用される鋼材の母材靱性はもちろんのこと、
溶接部の靱性に優れることが要請されている。一方で、
これら構造物や船舶はますます大型化し、使用される鋼
材の高強度化・厚肉化に伴い、溶接施工にはサブマージ
アーク溶接、エレクトロガス溶接およびエレクトロスラ
グ溶接などの高能率な大入熱溶接が適用されている。こ
のため、大入熱溶接により溶接施工したときに、溶接部
の靱性に優れた鋼材が必要となっている。
【0003】しかし、一般に、溶接入熱量が大きくなる
と、溶接熱影響部の組織が粗大化するために、溶接熱影
響部の靱性は低下することが知られている。このような
大入熱溶接による靱性の低下に対して、これまでにも多
くの対策が提案されてきた。例えば、TiNの微細分散に
よるオーステナイト粒の粗大化抑制やフェライト変態核
としての作用を利用する技術はすでに実用化されてい
る。また、Tiの酸化物を分散させる技術(特開昭57−
51243号公報)やBNのフェライト核生成能を組み
合わせる技術(特開昭62−170459号公報)も開
発されている。さらに、Ca(特開昭60−204863
号公報)やREM(特公平4−14180号公報)を添
加して硫化物の形態を制御することにより高靱性を得る
ことも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、TiNを
主体に利用するこれらの従来技術では、TiNが溶解する
温度域に加熱される溶接熱影響部においてはTiが有する
上記の作用がなくなり、さらには地の組織が固溶Tiおよ
び固溶Nにより脆化して靱性が著しく低下するという問
題があった。また、Ti酸化物を利用する技術では、酸化
物を均一微細に分散させることが困難であるという問題
があった。これに対して、酸化物の複合化等の方法で分
散能を改善すべく種々の検討が行われているが、入熱量
が 400 kJ/cmを超えるような大入熱溶接では、オーステ
ナイト粒の成長を十分に抑制することは困難であり、溶
接熱影響部の高靱性を確保することは困難であるという
問題があった。また、特開昭60−204863号公報
に記載のCaを添加する技術や特公平4−14180号公
報に記載のREMを添加する技術では、300kJ/cm程度ま
での入熱量であれば高靱性の確保が可能であるが、400k
J/cmを超えるような大入熱溶接では、これらの技術でも
溶接熱影響部の高靱性を確保することは困難であった。
そこで、本発明は、従来技術が抱えていた上記問題点を
解決し、 400 kJ/cmを超えるような大入熱溶接を行って
も、良好な溶接熱影響部靱性が得られる鋼材を提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らは、種々検討を
重ねた結果、 400 kJ/cmを超える大入熱で溶接した溶接
熱影響部の靱性を向上させるためには、硫化物の形態制
御に必要なCaを適正に含有させることが重要であること
を知見した。すなわち、大入熱溶接熱影響部の靱性向上
には、高温領域でのオーステナイトの粗大化を抑制し、
その後の冷却過程におけるフェライト変態を促進させる
に必要な、変態核を微細に分散させることが肝要であ
り、従来技術ではこれらのいずれもが不十分であること
がわかった。
【0006】そこで、本発明では鋼板を溶製する際の凝
固段階でCaSを晶出させるようにした。CaSは酸化物に
比べて低温で晶出するために、微細に分散させることが
可能となる。ここで、とくに重要なことは、Ca、Sの含
有量および鋼中の溶存酸素量を制御することによってCa
Sの晶出後の固溶S量を確保すれば、CaSの表面上にMn
Sが析出することを見出した。MnSは、それ自身がフェ
ライト核生成能をもっているほか、その周囲にMnの希薄
帯を形成してフェライト変態を促進する作用を有してい
る。また、MnS上には、さらにTiN、BN、AlN、VN
等のフェライト生成核が析出することによって、より一
層フェライト変態が促進されることも知見した。以上の
方策をとることによって、大入熱溶接時の高温下でも溶
解しないフェライト変態生成核を微細に分散させること
ができ、溶接熱影響部の組織を微細なフェライトパーラ
イトの組織として高靱性化を達成することができた。
【0007】本発明は、C:0.03〜0.15mass%、Si:0.
05〜0.25mass%、Mn:0.5 〜2.0 mass%、P:0.03mass
%以下、S:0.0005〜0.0030mass%、Al:0.005 〜0.1
mass%、Ti:0.004 〜0.03mass%、N:0.0020〜0.0070
mass%、Ca:0.0005〜0.0030mass%を含み、かつ、Ca、
O、Sの各含有量は、下記 (1)式を満たして含有し、残
部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする
大入熱溶接用鋼材である。 記 0.3 ≦(Ca −(0.18 +130 ×Ca) ×O) /1.25/S≦0.8----(1) ただし、Ca、O、Sは各成分の含有量(mass%)を表
す。
【0008】また、本発明は、鋼組成が、さらに (1) B:0.0003〜0.0025mass%、V:0.2 mass%以下か
ら選ばれる1種または2種、 (2) Nb:0.05mass%以下、Cu:1.0 mass%以下、Ni:1.
5 mass%以下、Cr:0.7mass%以下、Mo:0.7 mass%以
下から選ばれる1種または2種以上、 の1群または2群を含有する組成になることを特徴とす
る大入熱溶接用鋼材である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、各成分の限定理由について
説明する。 C:0.03〜0.15mass% C量は、構造用鋼として必要な強度を得るために下限を
0.03mass%とし、溶接割れ性を劣化させるので上限を0.
15mass%とする。
【0010】Si:0.05〜0.25mass% Siは、製鋼上0.05mass%以上が必要であり、0.25mass%
を超えると、母材の靱性を劣化させるほか、大入熱溶接
熱影響部に島状マルテンサイトを生成して靱性を劣化さ
せる。
【0011】Mn:0.5 〜2.0 mass% Mnは、母材の強度を確保するために、0.5 mass%以上は
必要であり、2.0 mass%を超えると溶接部の靱性を著し
く劣化させる。
【0012】P:0.03mass%以下 Pは、0.03mass%を超えると溶接部の靱性を劣化させ
る。
【0013】S:0.0005〜0.0030mass% Sは、必要なCaSおよびMnSを生成するために0.0005ma
ss%以上必要であり、0.0030mass%を超えると母材の靱
性を劣化させる。
【0014】Al:0.005 〜0.1 mass% Alは、鋼の脱酸上0.005 mass%以上は必要であり、0.1
mass%を超えて含有すると母材の靱性を低下させると同
時に溶接金属の靱性を劣化させる。
【0015】Ti:0.004 〜0.03mass% Tiは、凝固時にTiNとなって析出し、溶接熱影響部での
オーステナイトの粗大化抑制やフェライト変態核となっ
て高靱性化に寄与する。0.004 mass%に満たないとその
効果が少なく、0.03mass%を超えるとTiN粒子の粗大化
によって期待する効果が得られなくなる。
【0016】N:0.0020〜0.0070mass% Nは、TiNの必要量を確保するうえで必要な元素であ
り、0.0020mass%未満では十分なTiN量が得られず、0.
0070mass%を超えると溶接熱サイクルによってTiNが溶
解する領域での固溶N量の増加によって靱性が著しく低
下する。
【0017】Ca:0.0005〜0.0030mass% Caは、Sの固定による靱性改善効果を有する元素であ
る。このような効果を発揮させるには少なくとも0.0005
mass%以上含有することが好ましいが、0.0030mass%を
超えて含有しても効果が飽和する。このため、本発明で
は、0.0005mass%から0.0030mass%の範囲に限定する。
【0018】0.3 ≦(Ca −(0.18 +130 ×Ca) ×O) /
1.25/S≦0.8 (ここに、Ca,O,S:各元素の含有量
(mass%)) CaおよびSは、0.3 ≦(Ca −(0.18 +130 ×Ca) ×O)
/1.25/S≦0.8 の関係を満足するように含有させる必
要がある。この場合には、CaS上にMnSが析出した複合
硫化物の形態となる。(Ca −(0.18 +130 ×Ca) ×O)
/1.25/Sの値が0.3 に満たないと、CaSが晶出しない
ためにSはMnS単独の形態で析出する。このMnSは鋼板
製造時の圧延で伸長されて母材の靱性の低下を引き起こ
すとともに、本発明の主眼である溶接熱影響部でMnSが
溶融するために微細分散が達成されない。一方、(Ca −
(0.18 +130 ×Ca) ×O) /1.25/Sの値が0.8 を超え
ると、SがほとんどCaによって固定され、フェライト生
成核として働くMnSがCaS上に析出しないために十分な
機能が発揮されない。
【0019】本発明では、さらにフェライト生成核とし
ての機能を有する、B、Vから選ばれる1種または2
種、および/または、強度向上などの機能を有する、N
b、Cu、Ni、Cr、Moから選ばれる少なくとも1種または
2種以上を含有させることができる。 B:0.0003〜0.0025mass% Bは、溶接熱影響部でBNを生成して、固溶Nを低減す
るとともにフェライト変態核として作用する元素であ
る。このような効果を得るには0.0003%以上必要である
が、0.0020%を超えて添加すると焼入れ性が増して靱性
が劣化する。
【0020】V:0.2 mass%以下 Vは、母材の強度・靱性の向上およびVNとしてのフェ
ライト生成核として働くが、0.2 mass%を超えるとかえ
って靱性の低下を招く。
【0021】Nb:0.05mass%以下 Nbは、母材の強度・靱性および継手の強度を確保するの
に有効な元素であるが、0.05mass%を超えて含有すると
溶接熱影響部の靱性が劣化する。
【0022】Ni:1.5 mass%以下 Niは、母材の高靱性を保ちつつ強度を上昇させるが、1.
5 mass%を超えても効果が飽和するのでこの含有量を上
限とした。
【0023】Cu:1.0 mass%以下 Cuは、Niと同様の働きを有しているが、1.0 mass%を超
えると熱間脆性を生じ、鋼板の表面性状を劣化させる。
【0024】Cr:0.7 mass%以下 Crは、母材の高強度化に有効な元素であるが、多量に添
加すると靱性に悪影響を与えるために上限を0.7 mass%
とする。
【0025】Mo:0.7 mass%以下 Moは、母材の高強度化に有効な元素であるが、多量に添
加すると靱性に悪影響を与えるために上限を0.7 mass%
とする。
【0026】上述したように、本発明では、とくにCa、
Sを限定された範囲に調整して含有させることによっ
て、大入熱溶接における溶接熱影響部の靱性に優れた鋼
材を提供することができる。なお、本発明の鋼材は、例
えば、以下のようにして製造される。まず溶銑を転炉で
精錬して鋼とした後、RH脱ガスを行い、連続鋳造また
は造塊−分塊工程を経て鋼片とする。これを再加熱し、
熱間圧延するか、あるいはまた、前記熱間圧延後に、加
速冷却、直接焼入れ焼戻し、再加熱焼入れ−焼戻し、再
加熱焼準−焼戻しなどの工程で製造される。
【0027】
【実施例】次に本発明を実施例に基づいて説明する。10
0 kgの高周波溶解炉にて、表1および表2に示す組成
の鋼を溶製し、熱間圧延により厚さ100 mmのスラブと
した。このスラブを1150℃に1時間加熱後、 930℃以上
の温度域で全圧下量の50%を圧延した後、900 ℃から
700 ℃の温度域にて20mm厚の鋼板に仕上げ、10℃
/sの冷却速度で加速冷却した。これらの鋼板から溶接
熱サイクル後の特性を測定するため、幅80mm×長さ
80mm×厚み15mmの試験片を採取し、1400℃に加
熱後800 〜500 ℃の冷却速度を1℃/s(エレクトロガ
ス溶接での入熱量450 kJ/cm の溶接熱影響部に相当)と
した溶接熱サイクルを付与し、溶接熱影響部の靱性を2
mmVノッチシャルピー試験にて評価した。表3に、得
られた溶接熱影響部の靱性を母材の強度・靱性とともに
示す。表3から、発明例ではいずれも良好な溶接熱影響
部靱性が得られた。これに対し、比較例では、溶接熱影
響部の靱性が劣り、中には母材の靱性も劣るものがあっ
た。これらの比較例は、(Ca −(0.18 +130 ×Ca) ×
O) /1.25/Sの値、Ca、Ti、C、Mn、Si、S、N、C
u、Cr、Mo、V、Bなどの各成分含有量のいずれかが本
発明範囲を外れるものであった。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
400kJ/cmを超える大入熱溶接を行っても優れた溶接熱影
響部靱性を有する鋼材が得られる。したがって、本発明
は、サブマージアーク溶接、エレクトロガス溶接、エレ
クトロスラグ溶接などの大入熱溶接により施工される大
型の構造物の品質向上に寄与するところ大である。
フロントページの続き (72)発明者 岡津 光浩 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.03〜0.15mass%、 Si:0.05〜0.25mass%、 Mn:0.5 〜2.0 mass%、 P:0.03mass%以下、 S:0.0005〜0.0030mass%、 Al:0.005 〜0.1 mass%、 Ti:0.004 〜0.03mass%、 N:0.0020〜0.0070mass%、 Ca:0.0005〜0.0030mass%を含み、 かつ、Ca、O、Sの各含有量は、下記 (1)式を満たして
    含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを
    特徴とする大入熱溶接用鋼材。 記 0.3 ≦(Ca −(0.18 +130 ×Ca) ×O) /1.25/S≦0.8----(1) ただし、Ca、O、Sは各成分の含有量(mass%)を表
    す。
  2. 【請求項2】請求項1において鋼組成が、さらに (1) B:0.0003〜0.0025mass%、V:0.2 mass%以下か
    ら選ばれる1種または2種、 (2) Nb:0.05mass%以下、Cu:1.0 mass%以下、Ni:1.
    5 mass%以下、Cr:0.7mass%以下、Mo:0.7 mass%以
    下から選ばれる1種または2種以上、 の1群または2群を含有する組成になることを特徴とす
    る大入熱溶接用鋼材。
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