JP2002254560A - 紫外線遮蔽性積層体および紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物 - Google Patents

紫外線遮蔽性積層体および紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物

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JP2002254560A
JP2002254560A JP2001057404A JP2001057404A JP2002254560A JP 2002254560 A JP2002254560 A JP 2002254560A JP 2001057404 A JP2001057404 A JP 2001057404A JP 2001057404 A JP2001057404 A JP 2001057404A JP 2002254560 A JP2002254560 A JP 2002254560A
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ultraviolet
monomer
group
mass
layer
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JP2001057404A
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Kenji Shimizu
健次 清水
Nobuhisa Noda
信久 野田
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Publication date
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C17/00Surface treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by coating
    • C03C17/28Surface treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by coating with organic material
    • C03C17/32Surface treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by coating with organic material with synthetic or natural resins

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガラスの如き無機質透明基材とする積層体に
おいて、紫外線の侵入を遮断して紫外線による着色、劣
化を防止し、且つ表面の耐擦傷性、ハードコート層との
密着性を改善するために紫外線遮蔽層とハードコート層
が形成された積層体、および、該積層体を製造する際
に、紫外線遮蔽層形成用として使用される樹脂組成物を
提供すること。 【解決手段】 無機質透明基材の両面もしくは片面側
に、紫外線遮蔽層を介してハードコート層が形成された
紫外線遮蔽性積層体であって、上記紫外線遮蔽層とし
て、下記モノマー成分を重合してなる共重合体を含有さ
せる。 (1)反応性シリル基を有するモノマー:40〜95質量
%、(2)紫外線吸収性基を有するモノマー:3〜60質
量%、および(3)その他のモノマー:0〜57質量%。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外線遮蔽性の積
層体と、該積層体を製造する際に、紫外線遮蔽層の形成
に用いられる紫外線遮蔽層形成用の樹脂組成物に関し、
例えば窓や容器、各種ケーシング、ショーウインドーな
どの素材として用いられるガラスの如き無機質透明基材
にコーティングすることにより、太陽光等の紫外線を吸
収して内部への紫外線の侵入を遮断し、紫外線による着
色、退色、劣化を防止する紫外線遮蔽能を有すると共
に、耐擦傷性向上のためのハードコート層が形成された
積層体と、該積層体を製造する際に、紫外線遮蔽層形成
用として使用される樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】代表的な無機質透明基材として汎用され
ているガラスは、通常280nm〜400nmの紫外線
を透過するので、例えば、建物や自動車などの窓や各種
ケーシング、ショーウインドー等として使用すると、内
部に紫外線が侵入してカーテン、家具、カーシート、ア
クセサリーその他の内容物、例えば各種樹脂製品や繊
維、木材製品などが紫外線により着色、退色、劣化を引
き起こす。また透明容器の場合は、内容物であるビタミ
ン剤や各種果汁飲料、茶などの清涼飲料、日本酒、ワイ
ン類、ビールなどが、紫外線により光劣化を受け、それ
らの品質が害される恐れがある。
【0003】そこで、内容物を紫外線から保護するため
の手段として、下記の如き様々の方法が講じられてい
る。すなわち、無機質透明基材に着色剤を添加して基材
そのものを着色する方法、透明基材に紫外線吸収性フィ
ルムを貼り付ける方法、紫外線吸収性樹脂をコーティン
グする方法等である。しかしながら、ガラス等の無機質
透明基材に着色剤等を添加して基材そのものを着色する
方法では、可視光線まで遮断するので、例えばガラス容
器やケーシング、ショーウインドー等として使用した場
合、外部から内容物が見え難くなって所謂ディスプレイ
効果が損なわれ、しかも基材自体が着色されているた
め、リサイクル性が低下するなどの問題が生じてくる。
【0004】また、粘着剤を用いて透明基材に紫外線吸
収性フィルムを貼り付ける方法として、例えば特開20
00−85059号公報には、紫外線硬化された紫外線
吸収性フィルムを使用する方法が開示されている。しか
しこの種のフィルムでは、基材に貼り付ける際に、フィ
ルムと粘着層との界面に空気が入り易く、美観を損わな
い様に貼り付けるには高度の熟練を要するばかりでな
く、貼り付け作業が煩雑で長時間を要し、特に透明基材
の形状が複雑な場合には貼り付け自体が困難になる。
【0005】また、紫外線吸収性のフィルムを例えばア
クリル系粘着剤などを用いて屋外側のガラス面に貼り付
ける方法も知られているが、粘着剤の主体が有機質のア
クリル系樹脂であるため、ガラスの如き無機質透明基材
との接着性や密着性が本質的に悪く、特に屋外耐候性の
点で、屋外側のガラス面への貼付には密着性の低下など
の問題がある。また一方で、例えばガラス容器に貼り付
けた場合は、滅菌や消毒を行なうための煮沸処理などで
フィルムが基材から簡単に剥離する。
【0006】紫外線吸収性アクリル樹脂をコーティング
する方法では、例えば特開平9−3135号公報に開示
されているような紫外線吸収性アクリル樹脂をガラス基
材に塗装することで、ガラス基材に紫外線遮蔽層を形成
できる。しかし、前述した如くガラス窓やガラス容器に
塗装した場合、塗膜素材が有機系で架橋密度が低いた
め、ガラス基材本来の耐擦傷性が損なわれる。また有機
系塗膜であるため、ガラスなどの無機質透明基材との密
着性も本質的に悪く、長期使用に耐えない。更にガラス
容器に塗装した場合には、内容物を煮沸消毒する場合な
どでガラス基材からの剥離する恐れがある。
【0007】一方、表面硬度をガラス基材並みに高めて
耐擦傷性を改善するための手段として、真空蒸着によっ
て無機質透明皮膜を形成したり、熱硬化型や紫外線硬化
型のシリコーン系皮膜、あるいは電子線や紫外線照射に
より硬化する有機系ハードコート層を形成する方法など
が知られている。しかしこれらのハードコート層は、高
硬度で優れた耐擦傷性を有している反面、ハードコート
層形成過程で高架橋密度の皮膜を形成するための昇温・
硬化時に大きな硬化収縮を起こし、皮膜にクラック(以
下、本明細書ではこの現象を「初期クラック」という)
を生じることがある。
【0008】また、上記の如くガラス基材表面にプライ
マー層を介してハードコート層が形成されている場合、
硬化収縮によって生じる硬化歪みがプライマー層にまで
伝播し内部歪みとして蓄積され、時間の経過によりクラ
ックが生じたり、あるいはガラス基材との層間剥離を起
こす原因になる。
【0009】こうした問題を回避するための手段とし
て、ハードコート層を薄膜化して加熱硬化時の硬化収縮
を低減することも考えられるが、あまりに薄肉化すると
ハードコート層本来の表面硬質化作用が満足に発揮され
なくなり、所望の耐擦傷性が得られなくなる。ハードコ
ート層を形成する際に、薄膜塗装と加熱硬化を複数回繰
り返して行なえば、厚肉化できると共にハードコート層
全体としての硬化収縮量も低減できるが、作業が煩雑で
長時間を要するため実用にそぐわない。
【0010】そのため、上記の様な問題を生じることな
く、ガラス基材の表面に硬質で耐擦傷性に優れたハード
コート層を形成し得る様な技術の開発が求められている
が、現状では満足し得る方法は提示されていない。
【0011】例えば、特開平4−120181号公報に
は、アルコキシシリル基を有するモノマーと紫外線吸収
性基を有するモノマー、およびその他のアクリル系モノ
マーを特定比率で共重合せしめてなる共重合体からなる
プライマーが開示されている。このプライマーは、共重
合成分として紫外線吸収性基を有するモノマーが含まれ
ているため、ポリカーボネート樹脂基材を紫外線から保
護する作用を発揮し、しかもプライマー塗膜中に低分子
量の添加型紫外線吸収剤を混入した場合に見られる、該
紫外線吸収剤がブリードアウトするといった問題を生じ
ることもなく、長期間に亘って優れた耐黄変性を発揮す
る。そしてこの公報によれば、アルコキシシリル基を有
するモノマーの共重合比率を45質量%以下に抑えるこ
とにより、樹脂物品との密着性も改善される旨記述され
ている。
【0012】ところが上記公報開示のプライマーでは、
アルコキシシリル基を有するモノマーの共重合比率が4
5質量%以下に抑えられているため、プライマー層上に
ハードコート層を形成する際の該ハードコート層の硬化
収縮に追従できず、硬化歪みの蓄積による初期クラック
の発生が回避できない。また無機質透明基材に適用する
場合は、使用環境の温度変化に応じた基材の膨張・収縮
に応じてプライマー層やハードコート層も膨張・収縮を
繰り返す特性が要求されるが、上記アルコキシシリル基
を有するモノマーの共重合比率が低く抑えられたプライ
マー層では、架橋密度が低いため膨張・収縮の繰り返し
に耐え切れず、耐候性試験において積層塗膜にクラック
が生じたり、あるいは積層塗膜もろとも無機質透明基材
から剥離することがある。しかもアルコキシシリル基を
有するモノマーの共重合比率が低いため、耐擦傷性も不
十分である。
【0013】一方、紫外線吸収層を構成するプライマー
層についても、紫外線吸収性能を高めるため厚肉化する
ことが望まれるが、上記公報記載のプライマー層では、
プライマー層を厚肉化すると、その上にハードコート層
を積層させて昇温・硬化させる過程で初期クラックを起
こし易くなる。そのため、上記公報記載のプライマー樹
脂組成物で初期クラック防止作用と耐擦傷性や耐候性の
双方を改善するには、プライマー層およびハードコート
層のいずれについても均一に薄肉塗装しなければならな
いが、それらを均一に薄肉塗装することは意外に困難で
あり、塗装方法が著しく制限される。具体的には、通常
のフローコート法を採用すると流し塗り方向に膜厚の傾
斜ができ、厚膜部で初期クラックを生じる原因になる。
こうした膜厚の傾斜を抑えるには適正な塗料粘度の調整
が必要となるが、その調整は容易でなく、また流し塗り
基材の長さも自ずと制限される。また、スピンコート
法、浸漬法、ロールコート法、スプレーコート法などで
は均一な膜厚が得られ易いが、数μmの範囲内で膜厚を
コントロールすることは容易でない。
【0014】更に特開平7−286013号公報には、
アルコキシシリル基を有するモノマーと紫外線吸収性基
を有するモノマー、およびその他のアクリル系モノマー
を特定比率で共重合させた被覆用の樹脂組成物が開示さ
れている。そしてこの公報には、被覆層の耐摩耗性や光
沢などを改善するため、該樹脂皮膜上にコロイダルシリ
カとシロキサン樹脂を含む分散液からなるクリアー樹脂
層を形成し得る旨の記述もみられる。
【0015】しかし、該公報の実施例として示された被
覆用樹脂組成物をガラスのような無機質透明基材にプラ
イマーとして適用しても、前記アルコキシシリル基を有
するモノマーの共重合比率が少ないため、先の公開公報
に開示された技術と同様に初期クラックが起こり易く、
耐候性試験でも皮膜にクラックを生じることが避けられ
ない。また、最表層側に形成されるハードコート層とプ
ライマー層との密着性も低いため、満足のいく耐擦傷性
も得られ難い。更に当該樹脂組成物は、実質的に紫外線
吸収能を有していないため、ガラス容器等に応用しても
内容物を紫外線による劣化から保護する機能は期待でき
ない。
【0016】更に特開平7-26155号公報には、ア
ルコキシシリル基を有するモノマーと紫外線吸収性基を
有するモノマー、およびその他のアクリル系モノマーを
特定比率で共重合せしめてなる共重合体と硬化触媒を含
む硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしこの公報
ではハードコート層の形成については触れられておら
ず、当該硬化性樹脂単独の塗膜では、本発明で意図する
レベルの耐擦傷性が得られない。しかもこの樹脂組成物
では、ごく少量の紫外線吸収性モノマーが含まれている
だけで紫外線吸収能が不足するため、ガラス容器などの
内容物を紫外線から保護する効果は十分に期待できな
い。皮膜を厚肉化することにより紫外線劣化防止作用を
高めることも可能ではあるが、そうするとガラスの如き
無機質透明基材自身の透明性を低下させる原因となる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラスの
如き無機質透明基材を基材とする紫外線遮蔽性積層体
と、該積層体を製造する際に、紫外線遮蔽性樹脂層の形
成に用いられる樹脂組成物として、無機質透明基材から
なる例えばガラス窓やガラス容器にコーティングして、
主に太陽光などの紫外線を吸収し、室内や容器などの内
部への紫外線の侵入を遮断して紫外線による着色、退
色、劣化防止のための紫外線遮蔽層と、耐擦傷性向上の
ためのハードコート層が形成された積層体を提供すると
共に、該積層体を製造する際に、紫外線遮蔽層形成用と
して使用される樹脂組成物を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る紫外線遮蔽性積層体とは、ガラス
の如き無機質透明基材の両面もしくは、片側に紫外線遮
蔽層を介してハードコート層が形成された紫外線遮蔽性
積層体であって、上記紫外線遮蔽層は、下記モノマー成
分を重合してなる共重合体を含有するところに要旨を有
している。
【0019】(A)反応性シリル基を有するモノマー:4
0〜95質量%、(B)紫外線吸収性基を有するモノマ
ー:3〜60質量%、および(C)その他のモノマー:0
〜57質量%。
【0020】本発明の積層体を構成する上記紫外線遮蔽
層においては、上記その他のモノマー(C)の一部または
全部が、(D)紫外線安定性基を有するモノマーであっ
て、該モノマーを、全モノマー成分を100質量%とし
たときに0.1〜15質量%となる様に含有させて共重
合させ、或いは紫外線遮蔽層内に添加型の紫外線安定剤
を適量含有させれば、紫外線遮蔽層自体の紫外線安定性
が向上してその劣化を抑制することができ、積層体とし
ての性能を一段と高めることができるので好ましい。
【0021】また本発明において、上記反応性シリル基
を有するモノマー(A)として好ましく用いられるの
は、加水分解性シリル基を有するものである。また前記
ハードコート層としては、上記紫外線遮蔽層を構成する
共重合体の主成分となる反応性シリル基を有するモノマ
ー(A)成分の特徴を活かし高レベルの密着性を確保す
る意味から、シリコーン系の硬化性樹脂主体のものが好
ましく使用される。
【0022】そして本発明に係る上記積層体は、実用面
でその特性を有効に発揮させるため、積層体としての可
視光線透過率が60%以上で肉眼で透視することがで
き、また、初期の350nmの紫外線透過率が30%以
下で且つ固定式メタルハライドランプ型促進耐候性試験
機を用いた耐候性試験40サイクル後の紫外線カット率
の低下率が20%以下で、初期の紫外線遮蔽能が優れる
と共にその持続性にも優れたものが好ましい実施形態と
して推奨される。
【0023】また、本発明にかかる紫外線遮蔽層形成用
樹脂組成物とは、上記積層体における紫外線遮蔽層を形
成するための樹脂組成物を提供するもので、下記モノマ
ー成分を重合してなる共重合体を含有するところに要旨
を有している。
【0024】(A)反応性シリル基を有するモノマー:4
0〜95質量%、(B)紫外線吸収性基を有するモノマ
ー:3〜60質量%、および(C)その他のモノマー:0
〜57質量%。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明者らは、無機質透明基材本
来の優れた透明性や耐衝撃性等の特性を保ちながら、紫
外線遮蔽性を付与すると共に、耐擦傷性の劣化を防止す
るためハードコート層を形成し、紫外線に対して安定で
且つ耐擦傷性にも優れた積層体を製造するための条件を
検討した。そして、従来の積層体ではなかなか達成でき
なかった内容物の紫外線劣化防止作用を併せて持ち得る
積層体について更に検討した。そして更に具体的にガラ
スやケーシング、ショーウインドー内の内容物、建物や
自動車内の樹脂製品、繊維、木材など、或いはガラス容
器や各種ケーシング、ショーウインドー内の内容物の紫
外線による着色、退色、劣化から防止するために優れた
紫外線遮蔽性を有し、しかも無機質透明基材とハードコ
ート層の両者に対し優れた密着性を発揮して、高品質の
紫外線遮蔽性積層体を与えると共に、ハードコート層形
成時に生じる初期クラックや、使用時に生じるクラック
や剥離などについても可及的に抑えることのできる紫外
線遮蔽層を得るための好ましい樹脂組成物を明らかにす
べく鋭意検討した。
【0026】その結果、上記の如く反応性シリル基を有
するモノマー(A)と紫外線吸収性基を有するモノマー
(B)、あるいは更にその他の共重合反応性モノマー
(C)を特定比率で共重合せしめてなる共重合体を含む
紫外線遮蔽層は、前述した要求特性に合致するものにな
るとの知見を得、本発明をなすに至ったのである。
【0027】従って本発明にかかる紫外線遮蔽性積層体
の特徴は、無機質透明基材を対象とし、その少なくとも
片面の最表面側にハードコート層を形成する際に、該ハ
ードコート層の下層側に形成されて紫外線の入射を遮断
する遮蔽層を形成してなるところに特徴を有している。
そして特に、上記紫外線遮蔽層を構成する素材として、
反応性シリル基を有するモノマー(A)と紫外線吸収性
基を有するモノマー(B)を特定の比率で含有し、ある
いは更にその他のモノマー(C)を特定比率で重合して
得られる共重合体を使用するところにあり、これらモノ
マーの種類とその含有比率を特定し、得られる共重合体
を主成分とする紫外線遮蔽層をハードコート層と隣接し
て形成することによって、ハードコート層形成時に生じ
る初期クラックや、使用時に生じるクラックや剥離など
についても可及的に抑えることができ、紫外線に対して
安定でしかも最表層部は耐擦傷性の卓越した積層体を得
ることに成功したものである。
【0028】また上記紫外線遮蔽層は、反応性シリル基
を有するモノマー(A)を主たる成分として含む共重合
体であるから、無機質透明基材との密着性に優れると共
に、特にシリコーン系樹脂を主成分とするハードコート
層との密着性にも優れており、それら少なくとも3つの
層が接合された本発明の積層体は、全体として優れた一
体性を示すと共に、最表層側のハードコート層は優れた
耐擦傷性を発現する。
【0029】しかも、無機質透明基材に直接積層した場
合でも、無機質透明基材との優れた密着性により、長期
間の使用による無機質透明基材の膨張・収縮に対しても
耐えることができ、更には該紫外線遮蔽層自身あるいは
ハードコート層のクラックや剥離などを可及的に抑制す
ることができる。
【0030】なお本発明の紫外線遮蔽性積層体とは、無
機質透明基材の表面に紫外線遮蔽層とハードコート層を
直接積層した3層構造層のものが基本となるが、この
他、無機質透明基材の表面に接着性向上のためのプライ
マー層、印刷層、熱線遮蔽層などを介して前記紫外線遮
蔽層とハードコート層を形成した4層構造以上の多層構
造の積層体を包含する。
【0031】従って本発明の紫外線遮蔽性積層体を製造
する方法としては、無機質透明基材の表面に前記紫外線
遮蔽層を形成してからその上にハードコート層を形成す
る方法、あるいは無機質透明基材の表面にプライマー層
や印刷層、熱線遮蔽層などを形成した後、その上に紫外
線遮蔽層とハードコート層を形成する方法が包含され
る。
【0032】また、ハードコート層と隣接して形成され
る紫外線遮蔽層の層構造の状態であるが、本発明におけ
る特定の紫外線遮蔽層とハードコート層との間の優れた
密着性や、ハードコート層形成時に生じる初期クラック
や使用時に生じるクラック、剥離などについても可及的
に抑える効果に影響を及ぼさない限り、ハードコート層
と紫外線遮蔽層との間に他の層が介在しても構わない。
しかし、本発明における効果の要因である「特定の紫外
線遮蔽層とハードコート層との間の優れた密着性」を確
保するには、ハードコート層と直接隣接して積層されて
いる状態であることが好ましい。
【0033】本発明において、紫外線遮蔽層あるいは該
遮蔽層形成用樹脂組成物の主成分となる共重合体のモノ
マー成分として用いられる反応性シリル基を有するモノ
マー(A)として好ましいのは、分子中に重合性二重結
合と加水分解性シリル基を有するものであり、より具体
的には、下記一般式(1)〜(3)で示される少なくとも1種
のモノマーが単独で或いは2種以上を組み合わせて使用
される。ここで、加水分解性シリル基とは、加水分解反
応によってシラノール基を生成する官能基である。
【0034】
【化1】
【0035】(式中、R1は水素原子またはメチル基を
表わし、R2は炭素数1〜6の炭化水素基を表わし、a
は1〜3の整数、bは0または1を表わす)
【0036】
【化2】
【0037】(式中、R3は前記R2と同じ意味もしくは
アルキルオキシアルキル基を表わし、cは0または1を
表わす)
【0038】
【化3】
【0039】(式中、R4はR2と同じ意味、dは0また
は1を表わす)。
【0040】前記一般式(1)で示されるモノマーは、加
水分解性のアルコキシシリル基を有するアクリル系モノ
マーであり、該一般式(1)において、式中、R1は水素原
子またはメチル基、R2は炭素数1〜6の炭化水素基
(メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;
ビニル基、イソプロペニル基、アリル基などのアルケニ
ル基;フェニル基などのアリール基を含む)、aは1〜
3の整数、bは0または1を表わす。
【0041】該アルコキシシリル基を有するアクリル系
モノマーの具体例としては、3−(メタ)アクリロキシ
プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキ
シプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロ
キシプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリ
ロキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、(メタ)
アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アク
リロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロ
キシメチルトリブトキシシラン等が例示される。
【0042】これらの中でも、取り扱い易さや反応性、
架橋密度などを考慮して特に好ましいのは、3−(メ
タ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−
(メタ)アクリロキシトリエトキシシラン、3−(メ
タ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランであ
る。
【0043】また前記一般式(2)で示されるモノマー
は、加水分解性のアルコキシシリル基を有するビニル官
能性化合物、前記一般式(3)で示されるモノマーは、ビ
ニル官能性アルコキシシラン化合物であり、これら一般
式(2),(3)において、式中、R3、R4は前記R2と同じ意
味もしくはアルキルオキシアルキル基を意味し、c、d
は0または1を表わすビニル官能性モノマーである。
【0044】これらビニル官能性モノマーの具体例とし
ては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシ
シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス
(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメト
キシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメ
チルジブトキシシラン、ビニルメチルビス(2−メトキ
シエトキシ)、3−ビニルオキシプロピルトリメトキシ
シラン、3−ビニルオキシプロピルトリエトキシシラ
ン、3−ビニルオキシプロピルメチルジメトキシシラン
などが例示されるが、これらの中でも取り扱い易さや反
応性を考慮して特に好ましいのは、ビニルトリメトキシ
シラン、ビニルトリエトキシシラン、3−ビニルオキシ
プロピルトリメトキシシランなどである。
【0045】これら加水分解性シリル基を有するモノマ
ーを共重合成分として使用することで、紫外線遮蔽層を
構成する共重合体の無機質透明基材に対する接合性が高
められると共に、加水分解反応によって生成したシラノ
ール基同士が縮合反応して架橋し、これにより熱硬化性
が付与され、薄膜としたときの機械的特性や耐候性を高
める。しかも、特定量以上の加水分解性シリル基含有モ
ノマー成分が含まれる共重合体を含む紫外線遮蔽層であ
れば、ハードコート層の昇温・硬化過程で生じる大きな
硬化収縮に追従できるため初期クラックが抑制され、特
に紫外線遮蔽層やハードコート層が厚肉化された場合で
も初期クラックが起こり難く、耐候性試験においてもク
ラックを生じることのない積層体となる。
【0046】更に、ハードコート層との密着性もより強
固となって耐擦傷性が飛躍的に改善されると共に、無機
質透明基材に対し該紫外線遮蔽層を直接接して形成する
際の無機質透明基材との密着性も強固となるため、長期
間使用による無機質透明基材の膨張・収縮にも追従でき
る。例えば無機質透明基材としてガラスを用いた場合
は、表面にGrifith Flawという微細傷が存在するが、
これが応力と水分の影響を受けて成長しガラス基板の強
度を低下させる原因になるが、特定量以上の加水分解性
シリル基を含有するモノマーが含まれる共重合体を表面
にコーティングすると、該共重合体が微細傷の内部にま
で浸透して傷の成長を抑えると共にガラス基材との密着
性も強化し、長期間に亘ってガラス基材の強度劣化を抑
える作用をも発揮する。
【0047】反応性シリル基を有するモノマー(A)と
共重合される紫外線吸収性基を有するモノマー(B)と
しては、分子中に重合性二重結合と紫外線吸収性基を同
時に有する全てのモノマーを使用できるが、本発明にお
いて特に好ましく用いられるのは、下記一般式(4)、(5)、
(6)で表される紫外線吸収性基を有するモノマーから選
ばれる少なくとも1種であり、これらのモノマーを共重
合成分として使用することにより、得られる共重合体に
紫外線吸収能が付与される。
【0048】
【化4】
【0049】(式中、R5は水素原子または炭素数1〜
8の炭化水素基を表し、R6は水素原子、ハロゲン原
子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコ
キシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、R7は炭素数
1〜12の直鎖状もしくは枝分れ鎖状のアルキレン基ま
たは−O−R9−(R9は炭素数2または3の直鎖状もし
くは枝分れ鎖状のアルキレン基を表す)を表し、R8
水素原子またはメチル基を表す)で表されるベンゾトリ
アゾール化合物。
【0050】
【化5】
【0051】(式中、R5、R8は上記と同じ意味を表
し、R10は炭素数1〜12の直鎖状もしくは枝分れ鎖状
のアルキレン基を表し、R11は水素原子または水酸基を
表し、R12は水素原子または炭素数1〜6のアルコキシ
基を表す)で表されるベンゾフェノン化合物。
【0052】
【化6】
【0053】(式中、R8は上記と同じ意味を表し、R13
は直接結合、−(CH2CH2O)n−または−CH2CH
(OH)−CH2O−を表し、nは1〜5の整数を表
す。R 14,R15,R16,R17,R18,R19,R20,R21
は各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルコキシ
基、アルケニル基、アルキル基を表す)で表されるトリ
アジン化合物。
【0054】従ってこの共重合体を主成分とする薄膜
は、それ自身で優れた紫外線遮蔽性を示し、無機質透明
基材からなる容器などの内容物の紫外線劣化を防止する
作用を発揮する。従って、この共重合体よりなる薄膜を
無機質透明基材とハードコート層の間に形成すると、紫
外線が当該基材からなる容器などの中に存在する内容物
等に達する前に当該遮蔽層で吸収され、紫外線による内
容物の変色、劣化を抑えることが可能となる。しかも、
添加型紫外線吸収剤を配合した従来材の如く紫外線吸収
剤がブリードアウトすることもないので、紫外線遮蔽性
能の持続性が高められると共に、その上に形成されるハ
ードコート層との密着性も良好である。
【0055】前記一般式(4)で表されるモノマーの好ま
しい具体例としては、例えば2−[2'−ヒドロキシ−
5'−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−
2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−
5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−
2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−
5'−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]
−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ
−5'−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニ
ル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロ
キシ−3'−tert−ブチル−5'−(メタ)アクリロ
イルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾー
ル、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(β−(メタ)アク
リロイルオキシエトキシ)−3'−tert−ブチルフ
ェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリア
ゾールなどが挙げられる。
【0056】また前記一般式(5)で示されるベンゾフェ
ノン化合物の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−
[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノ
ン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオ
キシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ
−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾ
フェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロ
イルオキシ]エトキシ−4'−(2−ヒドロキシエトキシ)
ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチ
ル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベン
ゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−
4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフ
ェノンなどを挙げることができる。
【0057】また前記一般式(6)で示されるトリアジン
化合物の具体例としては、例えば2,4−ジフェニル−
6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエ
トキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチル
フェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロ
イルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス
(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−
(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン
などを挙げることができる。
【0058】上記一般式(4)、(5)、(6)で示される紫外線
吸収性基を有するモノマー(B)は、各々化合物特有の
紫外線吸収特性を有しているため、紫外線により劣化す
る樹脂製品や内容物の種類、あるいは、紫外線遮蔽層及
びハードコート層が積層される無機質透明基材に求めら
れる紫外線遮蔽性能に応じて単独で使用し、あるいは2
種以上を適宜組み合わせて使用できる。
【0059】また、一般式(4)、(5)、(6)で示されるモノ
マー成分を各々単独重合し、もしくは2種以上を適宜共
重合することによって得られる重合体を、単独で或いは
2種以上をブレンドして紫外線遮蔽層中に含有させるこ
ともできる。特に一般式(4)、(5)で示されるモノマー成
分を使用する場合、紫外線遮蔽層にアルカリ金属や塩基
性の強い塩基性化合物が共存すると、塗膜着色の問題や
経時的な紫外線吸収性能の低下を招き易いため、これら
を抑制する点から、各々の一般式中のR5が炭素数1〜
8のアルキル基であるモノマー成分の使用が特に好まし
い。
【0060】具体的には、車内や室内等に存在する紫外
線劣化性の部品や製品、例えば各種の樹脂製品や繊維製
品は固有の劣化波長を有しているので、例えばポリエス
テル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などの樹脂製品の
場合、これらの樹脂製品は280〜370nmの紫外線
で最も劣化するため、一般式(6)で示されるトリアジン
系化合物単独使用よりも、一般式(5)で示されるベンゾ
フェノン系化合物の単独使用や、一般式(4)で示される
ベンゾトリアゾール系化合物単独使用の方が好ましく、
更に好ましくは、一般式(4)もしくは一般式(5)と一般式
(6)のトリアジン化合物との2種併用が有効である。
【0061】上記共重合体を主成分とする紫外線遮蔽層
には、耐候性試験におけるクラック防止や、紫外線吸収
性基の光分解の抑制、すなわち紫外線遮蔽性能の長期持
続の観点から、紫外線安定剤が含まれていることが好ま
しい。特に好ましいのは、共重合体を構成するその他の
モノマー成分(C)として紫外線安定性基を有するモノ
マー(D)の1種以上を共重合させたもので、それによ
り、紫外線安定剤のブリードアウトを阻止しつつ、共重
合体の耐候性や紫外線遮蔽性能の長期持続性を一層高め
ることができるので好ましい。
【0062】ここで用いられる紫外線安定性基を有する
モノマー(D)としては、分子中に重合性二重結合と紫
外線安定性基を同時に有するものであればその種類は構
わないが、中でも特に好ましいのは、下記一般式(7)や
(8)で示される紫外線安定性基を有するモノマーであ
る。
【0063】
【化7】
【0064】(式中、R22は水素原子またはシアノ基を
表し、R23、R24はそれぞれ独立して水素原子またはメ
チル基を表し、R25は水素原子または炭化水素基を表
し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0065】
【化8】
【0066】(式中、R22は水素原子またはシアノ基を
表し、R23、R24、R23'、R24'はそれぞれ独立して水
素原子またはメチル基を表し、Yは酸素原子またはイミ
ノ基を表す。)。
【0067】本発明で必要により共重合することのでき
る前記一般式(7)、(8)で示されるモノマーにおいて、式
中、R22で示される置換基は水素原子またはシアノ基、
23、R24、R23'、R24'で示される置換基はそれぞれ
独立して水素原子またはメチル基、R25で示される置換
基は水素原子または炭化水素基、Yで示される置換基は
酸素原子またはイミノ基であるピペリジン類である。
【0068】前記一般式(7)で表される紫外線安定性基
を有するモノマーのより具体的な例としては、例えば4
−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テト
ラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ
−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メ
タ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタ
メチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−
1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シ
アノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,
6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ
−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロ
トノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリ
ジンなどが非限定的に挙げられ、これらは単独で使用し
得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用し
ても構わない。
【0069】前記一般式(8)で表されるモノマーのより
具体的な例としては、例えば1−(メタ)アクリロイル
−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−
テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−
4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,
2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイ
ル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラ
メチルピペリジンなどが非限定的に挙げられ、これらも
単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合
わせて使用してもよい。
【0070】本発明において、紫外線遮蔽層中に含有さ
せることのできる添加型の紫外線安定剤として好ましい
のは、立体障害ピペリジン化合物であり、例えば市販品
としては、「チヌビン123」、「チヌビン144」、「チ
ヌビン765」(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミ
カルズ社製)、「アデカスタブLA−52」、「アデカ
スタブLA−57」、「アデカスタブLA−62」、
「アデカスタブLA−77」(いずれも旭電化工業社
製)等が挙げられるが、特に好ましいのは、前述した分
子中に重合性二重結合を有する立体障害ピペリジン化合
物である。
【0071】次に本発明において、上記共重合体中に占
める前記反応性シリル基を有するモノマー(A)の全モ
ノマー中に占める比率は、薄膜構成材としての機械的・
化学的特性を高めると共に、無機質透明基材やハードコ
ート層との密着性や初期クラック防止作用、耐候性試験
におけるクラック防止作用、耐擦傷性を高めることの必
要上、共重合比率を40質量%以上、95質量%以下が
好ましく、より好ましい下限は50質量%、更に好まし
い下限は55質量%、より好ましい上限は85質量%、
更に好ましくは80質量%である。
【0072】ちなみに、反応性シリル基を有するモノマ
ー(A)の共重合比率が40質量%未満では、無機質透
明基材やハードコート層との密着性向上効果が不十分に
なるばかりでなく、初期クラック抑制作用、耐候性試験
におけるクラック防止作用、耐擦傷性も不十分となる。
逆に共重合比率が95質量%を超えると、紫外線吸収性
モノマー成分量が少なくなるため紫外線遮蔽効果が不十
分となり、また共重合体の合成時にゲル化し易くなる傾
向が生じてくる。
【0073】該共重合体を得る際の前記紫外線吸収性基
を有するモノマー(B)の使用量は、共重合体を構成す
る全モノマー成分中に占める比率で3質量%以上、60
質量%以下が好ましく、より好ましい下限は15質量
%、更に好ましくは22質量%、特に好ましくは25質
量%以上で、より好ましい上限は50質量%、更に好ま
しくは45質量%以下である。
【0074】紫外線吸収性基を有するモノマー(B)の
共重合比率が3質量%未満では、薄膜としたとき、或い
は無機質透明基材上に紫外線遮蔽層として形成したとき
の紫外線遮蔽効果が不十分になるため膜厚を厚くしなけ
ればならなくなり、無機質透明基材が本来有している機
械的、光学的特性の低下が避けられなくなる。逆に60
質量%を超えて過多になると、反応性シリル基含有モノ
マー(A)の共重合量が少なくなるため、無機質透明基
材やハードコート層との密着性が低下する他、初期クラ
ックが起こり易くなったり耐擦傷性を低下させる恐れが
出てくる。
【0075】また、前記一般式(7)、(8)で表される紫外
線安定性基を有するモノマー成分(D)の使用量は特に
限定されないが、紫外線遮蔽層を構成する前記共重合体
中に占める比率で0.1〜15質量%とすることが望ま
れる。より好ましい範囲は、下限側が0.5質量%、更
に好ましくは1質量%、上限側が5質量%、好ましくは
3質量%である。紫外線安定性基を有するモノマー成分
の合計使用量が0.1質量%未満では、紫外線遮蔽層の
耐候性試験におけるクラック防止効果が不足気味とな
り、また紫外線吸収性基の光分解を抑制できず紫外線遮
蔽能を長期的に維持し難くなる。他方15質量%を超え
ると、紫外線遮蔽層の物性低下やハードコート層との層
間密着性や耐擦傷性の低下を招く恐れが生じてくる。
【0076】紫外線遮蔽層中には、上記共重合体と共に
添加型の紫外線安定剤を配合することができ、この場合
の好ましい配合量は、紫外線遮蔽層の主成分である前記
共重合体100質量%に対して0.1〜15質量%の範
囲が好ましい。ちなみに、0.1質量%未満では耐候性
試験におけるクラック防止作用が有効に発揮され難く、
また紫外線吸収性基の光分解抑制作用も不十分で満足の
いく紫外線遮蔽能を長期的に維持し難くなる。逆に15
質量%を超えて過度に添加するとブリードアウトし易く
なり、ハードコート層との層間密着性や耐擦傷性を低下
させる原因になる。
【0077】本発明の前記共重合体には、前記モノマー
成分以外に他の共重合可能な反応性モノマー(C)も、
紫外線遮蔽層に求められる紫外線吸収能、更には無機質
透明基材やハードコート層との密着性などを阻害しない
範囲であれば1種または2種以上を共重合することがで
きる。それら他のモノマー(C)成分としては、共重合
体自身の耐候性や紫外線吸収性基の光分解抑制による紫
外線遮蔽能の長期持続などの観点から、下記一般式(9)
で表されるモノマーが好ましいものとして例示される。
【0078】
【化9】
【0079】(式中、R26は水素原子またはメチル基を
表わし、Zは炭素数が4以上の炭化水素基を表わす)。
【0080】上記式中、Zで表される置換基はシクロヘ
キシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロドデシル基
などの炭素数4以上の脂環式炭化水素基;ブチル基、イ
ソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル
基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウ
ンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシ
ル基など炭素数4以上の直鎖状または分枝鎖状のアルキ
ル基;ボルニル基、イソボルニル基などの炭素数4以上
の多環式炭化水素基であり、中でも脂環式炭化水素基、
分枝鎖状アルキル基、炭素数6以上の直鎖状アルキル基
が好ましい。
【0081】上記一般式(9)で表されるモノマーのより
具体的な例としては、例えばシクロヘキシル(メタ)ア
クリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレー
ト、シクロドデシル(メタ)アクリレート、tert−
ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチ
ル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)ア
クリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボル
ニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリ
レート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど
が非限定的に挙げられ、これらの1種または2種以上が
使用できる。
【0082】これら一般式(9)で表されるモノマーの使
用量も特に限定されないが、前記共重合体中に占める比
率で、好ましくは57質量%以下、より好ましくは1〜
35質量%、更に好ましくは2〜30質量%、更に好ま
しくは2〜20質量%の範囲である。該モノマーは、前
記一般式(7)(8)と同様に紫外線吸収性基の光分解
を抑制する作用を発揮するが、使用量が57質量%を超
えると、相対的に反応性シリル基を有するモノマー
(A)や紫外線吸収性基を有するモノマー(B)の比率
が少なくなり、紫外線遮蔽層が耐候性試験においてクラ
ックを生じたり、紫外線遮蔽能が不足気味となる。
【0083】共重合可能な上記その他のモノマー(C)
としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレ
イン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;2−(メ
タ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等
の酸性リン酸エステル系モノマー;2−ヒドロキシエチ
ル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メ
タ)アクリレート、水酸基末端可撓性(メタ)アクリレ
ート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製;商品名
「プラクセルFM」)等の活性水素を持った基を有する
モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸低級アルキル
エステル;(メタ)アクリルアミド、N,N'−ジメチ
ルアミノメチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)
アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド
等の含窒素モノマー;エチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート等の2個の重合性二重結合を有するモノマ
ー;塩化ビニル等のハロゲン含有モノマー;スチレン、
α−メチルスチレン等の芳香族系モノマー;ビニルエー
テル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるもので
はない。
【0084】これらその他のモノマー(C)も、単独で
使用し得る他、必要により2種以上を併用できる。ま
た、無機質透明基材に塗工したときの塗膜に潤滑性を与
えるため、ラジカル重合性シリコーンマクロマー(例え
ば、信越化学工業社製;商品名「X−12−174D
X」、東亜合成社製;商品名「AK−32」など)を共
重合させることが好ましい。
【0085】上記共重合体を製造する際の重合方法にも
格別の制限はなく、公知の重合法、例えば溶液重合法、
分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法などを使用でき
る。溶液重合法を採用してモノマー成分を重合する際に
用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン、その他
の芳香族系溶媒;iso−プロピルアルコール、n−ブ
チルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテ
ル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ダイアセ
トンアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ
等のアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロ
ソルブアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチ
ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキ
サノン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどを
使用できる。使用する溶媒の種類は勿論これらに限定さ
れるものではない。これらの溶媒は1種のみを使用して
もよいし、2種以上を混合溶媒として使用してもよく、
溶媒の使用量は、得られる共重合体の濃度などを考慮し
適宜に定めればよい。
【0086】また前記モノマー成分を共重合させる際に
は、通常重合開始剤が使用されるが、重合開始剤として
は、たとえば2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロ
ニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチル
ヘキサノエート、2,2'−アゾビスイソブチロニトリ
ル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチル
パーオキサイド等の通常のラジカル重合開始剤が挙げら
れる。重合開始剤の使用量は、要求される共重合体の要
求特性などに応じて適宜決定すべきもので特に限定はな
いが、モノマー成分全量に対し0.01質量%以上、5
0質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量
%以上、20質量%以下である。
【0087】また、必要に応じて例えばn−ドデシルメ
ルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブ
チルメルカプタン、3−メルカプトプロピルトリメトキ
シシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシ
ラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラ
ン、(CH3O)3Si−S−S−Si(OCH33
(CH3O)3Si−S4−Si(OCH33の如き連鎖
移動剤の1種以上を添加し、共重合体の分子量を調整す
ることも有効である。加水分解性シリル基を分子中に有
する連鎖移動剤、例えば3−メルカプトプロピルトリメ
トキシシランなどをモノマー混合溶液に連続添加すれ
ば、分子量調節作用と同時にビニル系モノマーの末端に
加水分解性シリル基を導入することができるので好まし
い。
【0088】反応温度も特に限定されないが、室温〜2
00℃の範囲が好ましく、40〜140℃がより好まし
い。なお反応時間は、用いるモノマー成分の組成や重合
開始剤の種類などに応じて、重合反応が効率よく完結し
得るように適宜設定すればよい。
【0089】該共重合体の分子量(Mw)も特に限定さ
れないが、質量平均分子量で2,000〜500,00
0が好ましく、より好ましくは4,000〜250,0
00の範囲である。ここでいう質量平均分子量とは、ポ
リスチレン標準GPCで測定した値を意味する。
【0090】当該紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物の塗布
は、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、カーテンフローコー
ト、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、バ
ーコート、静電塗装などの方法によって行うことができ
る。
【0091】本発明で使用する無機質透明基材として最
も一般的なのはガラスであり、軟質、硬質、多層、複層
の如何を問わず全てが適用できる。また、シランカップ
リング剤やシランモノマーなどのシラン化合物で表面改
質された無機質透明基材を使用することもできる。これ
らの無機質透明基材は、本発明の特性を有効に活かすこ
との必要上、それ自身は透明で特に紫外線を透過するも
のであり、可視光線透過率が60%以上、好ましくは7
0%以上、より好ましくは80%以上で、350nmで
の紫外線透過率が40%以上、好ましくは55%以上、
更に好ましくは70%以上のものが使用される。従って
該無機質透明基材は、必要に応じて顔料や染料で適度に
着色したものであったり、着色フィルムをコーティング
したものであってもよく、要は適度の可視光透過率を有
し肉眼で透視可能なものであれば良い。
【0092】本発明で使用される上記無機質透明基材の
紫外線透過率や可視光線透過率は、JIS R3106
に基づき、島津製作所社製の分光光度計(形式:UV−
3100)で積分球を使用して測定することができる。
【0093】ちなみに本発明の積層体は、紫外線遮蔽層
により紫外線を遮蔽すると共に、表面をハードコート層
で被覆して耐擦傷性を与えたものであり、これら積層構
造による特性を窓ガラス、ショーウインドー、容器等と
して実用規模で有効に活用するには、上記特性を備えた
無機質透明基材が最も適しているからである。
【0094】また、本発明に係る紫外線遮蔽性積層体を
窓ガラスやショーウインドーなどとして使用する際に紫
外線劣化を起こす製品の種類などには一切制限がなく、
また透明容器として使用する際の内容物も、ビタミン
剤、果汁飲料、日本酒、ワイン類など、紫外線により劣
化、変質を起こす可能性のある全てのものが包含され
る。
【0095】紫外線遮蔽層または該遮蔽層形成用樹脂組
成物を構成する前記共重合体は、その分子中に導入され
た反応性シリル基の存在によって硬化反応性を示すが、
更なる硬化促進のために硬化触媒を使用することも有効
である。硬化触媒としては、例えばジブチルスズジラウ
レート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズジ
ラウレート、オクチル酸スズ等の有機スズ化合物;リン
酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェー
ト、モノブチルホスフェートなどのリン酸またはリン酸
エステル;アルキルチタン酸塩;トリス(エチルアセト
アセテート)アルミニウムの様な有機アルミニウム化合
物;テトラブチルジルコネート、テトラキス(アセチル
アセトナート)ジルコニウム、テトライソブチルジルコ
ネート、ブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジル
コニウムの様な有機ジルコニウム化合物;酢酸、プロピ
オン酸、マレイン酸およびこれらの酸無水物、パラトル
エンスルホン酸等の酸性化合物;ヘキシルアミン、ジ−
2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシル
アミン、ドデシルアミンなどのアミン類;これらアミン
と酸性リン酸エステルとの混合物または反応物;水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物など
が非限定的に例示される。
【0096】これら硬化触媒の中でも好ましいのは、触
媒活性の特に高い有機スズ化合物、酸性リン酸エステ
ル、酸性リン酸エステルとアミンの混合物または有機酸
との混合物、飽和もしくは不飽和多価カルボン酸または
その酸無水物、反応性シリコーン化合物、有機チタネー
ト化合物、有機アルミニウム化合物またはこれらの混合
物などである。
【0097】これら硬化触媒の好ましい使用量は、共重
合体中の反応性シリル基を有するモノマー単位に対して
0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜3
質量%の範囲である。
【0098】シリコーン系の硬化性樹脂として、後述す
る様なアルコキシシランを出発原料とし、加水分解して
得られる樹脂を使用する場合、これらに含まれる水分や
シラノール基縮合触媒も紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物
の硬化触媒となる。そのため、紫外線遮蔽層形成用樹脂
組成物の乾燥条件の選択により、その上に積層されるハ
ードコート層に含まれる硬化触媒が紫外線遮蔽層へしみ
込み、紫外線遮蔽層の硬化を促進するばかりでなく、ハ
ードコート層との密着性が向上する。例えば、紫外線遮
蔽層形成用樹脂組成物を無機質透明基材に塗布してから
ハードコート層を積層して加熱硬化させる2コート1ベ
ーク法の場合、耐候クラック性、耐候密着性が向上す
る。
【0099】また反応性シリル基の導入された前記共重
合体を含む上記紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物中には、
保存時の加水分解とそれによる貯蔵安定性の低下を抑え
るため、必要により脱水剤を含有させておくことも有効
である。かかる脱水剤としては、例えばオルト蟻酸メチ
ル、オルト蟻酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸
エチル、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラ
ン、メチルシリケート、エチルシリケートなどの加水分
解性エステル化合物等が非限定的に挙げられ、これらは
1種または2種以上を使用できる。これらの加水分解性
エステル化合物は、反応性シリル基を有するビニル系モ
ノマーを共重合成分として含む場合は、共重合前、共重
合中あるいは共重合後の何れの段階で加えても構わな
い。
【0100】紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物として用い
られる共重合体は上記の通りであるが、該共重合体を紫
外線遮蔽層形成剤として実用化する際には、共重合反応
により少なくとも反応性シリル基と紫外線吸収性基が導
入された該共重合体と共に、他の重合体を併用すること
も可能である。かかる他の重合体としては、熱可塑性重
合体、もしくは重合体自身の作用あるいは架橋剤によっ
て架橋硬化する熱硬化性重合体が例示される。これら他
の重合体の種類や使用量は、紫外線遮蔽性樹脂積層体の
用途や要求特性などに応じて適宜決定すればよい。当該
他の重合体としては、例えば塩化ビニル樹脂、ポリエス
テル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性
重合体;ウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、シリコー
ン樹脂、エポキシ樹脂等の如き単独硬化型の熱硬化性重
合体;ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂
等の如き硬化剤によって硬化する熱硬化性重合体を挙げ
ることができる。
【0101】紫外線遮蔽層中に含まれる該共重合体は、
紫外線遮蔽層または紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物を構
成する樹脂100質量%に50質量%以上、好ましくは
80質量%以上含まれていることが望ましい。50質量
%未満では、初期クラックを起こしたり、ハードコート
層や無機質透明基材との密着性が不足気味となり、その
結果として耐擦傷性や耐候性も不十分となる。
【0102】該共重合体を含む紫外線遮蔽層形成剤を薄
膜状に塗布して硬化させる場合、硬化温度は、紫外線遮
蔽層形成剤の主成分である前記重合体に含まれる架橋性
官能基の種類、使用量、使用する硬化触媒の種類によっ
て異なるが、一般的には室温〜200℃の温度で硬化す
るのが好ましい。
【0103】紫外線遮蔽層の厚さは、Lambert−
Beerの法則により共重合される紫外線吸収性基を有
するモノマー(B)成分の量に依存するため、紫外線遮
蔽性積層体に要求される耐候性や紫外線遮蔽性能を満足
する範囲であれば特に限定されないが、特に紫外線遮蔽
層として形成する際の好ましい厚さは0.5〜100μ
m、より好ましくは1〜50μm、更に好ましくは2〜
30μmである。厚さが100μmを超えると、無機質
透明基材が本来有している機械的および光学的特性を低
下させるといった問題を起こし易くなる。逆に厚さが
0.5μm未満では、無機質透明基材上への均一塗工が
困難となり、また紫外線遮蔽能も不十分になることがあ
る。
【0104】本発明の紫外線遮蔽性積層体は、前述の如
く無機質透明基材の表面に直接、もしくは必要に応じて
接着改善層(プライマー層など)や印刷層、熱線遮蔽
層、粘着層などを介して形成した前記紫外線遮蔽層の更
にその上に、耐擦傷性や表面硬度を高めるためハードコ
ート層が形成されたものである。なお、該ハードコート
層の好ましい厚みは0.5〜30μm、より好ましくは
1〜20μm、更に好ましくは2〜15μmである。
【0105】該ハードコート層は、最終積層製品として
の表面硬度を高めて耐擦傷性を改善するために形成され
るもので、ハードコート層を構成する樹脂の種類は、高
硬度で耐擦傷性向上作用を有する一般に硬化型の樹脂で
あればその種類の如何は特に問わず、シリコーン系硬化
性樹脂や有機系硬化性樹脂などを使用できる。しかし、
前述した紫外線遮蔽層のハードコート層や無機質透明基
材との密着性、耐擦傷性、耐初期クラック性、耐候クラ
ック性などの向上効果を有効に活用する上で特に好まし
いのはシリコーン系硬化性樹脂である。シリコーン系硬
化性樹脂とは、シロキサン結合を持った硬化性の樹脂で
あり、例えばトリアルコキシシランやテトラアルコキシ
シランまたはそれらのアルキル化物の部分加水分解物、
メチルトリアルコキシシランやフェニルトリアルコキシ
シランの混合物を加水分解したもの、コロイド状シリカ
充填オルガノトリアルコキシシランの部分加水分解縮合
物、ペルヒドロポリシラザン等が挙げられる。市販品と
しては、例えば「トスガード510」、「UVHC85
53」(以上、東芝シリコーン社製);「KP−85
1」、「X−12−2400」、(以上、信越シリコー
ン社製);「ソルガードNP720」、「ソルガードR
F0831」(以上、日本ダクロシャムロック社製)、
「P110」、「L110」、「V110」(以上、ク
ラリアントジャパン社製)等が例示される。
【0106】また有機系硬化性樹脂としては、例えばメ
ラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹
脂、多官能アクリル樹脂等が挙げられ、多官能アクリル
樹脂としては、ポリオールアクリレート、ポリエステル
アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリ
レート等の樹脂が好ましいものとして例示される。
【0107】特にハードコート層がシリコーン系樹脂の
場合、硬度や耐擦傷性、耐候性の性能レベルに応じて、
前述した有機系硬化性樹脂や紫外線遮蔽層の主成分であ
る前記共重合体をブレンドすることもできるが、ハード
コート層を構成する樹脂100質量%に対しシロキサン
結合を持った硬化性の樹脂が60質量%以上含まれ、好
ましくは80質量%以上含まれていることが望ましい。
ちなみに60質量%未満では、硬度や耐擦傷性、耐候性
不足となるからである。
【0108】また、本発明において使用される前記紫外
線遮蔽層形成剤、あるいは上記ハードコート層形成剤中
には、前述した構成成分以外に他の種々の添加剤を含ん
でもよい。添加剤としては、シラン、チタネート、アル
ミネート系のカップリング剤が挙げられ、シランカップ
リング剤としては、例えば日本ユニカー社製の「A−1
87」、「A−189」、「A−1100」、「A−1
120」等が挙げられる。また、塗料などの層形成用組
成物に一般に使用されるレベリング剤、酸化防止剤、タ
ルクなどの充填剤、コロイダルシリカ、アルミナゾルな
どの無機微粒子やポリメチルメタクリレート系のアクリ
ル系微粒子、防錆剤、蛍光性増白剤、酸化防止剤、帯電
防止剤、顔料、染料、増粘剤などを含むものであっても
よく、更には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン
系、トリアジン系、インドール系などの有機系紫外線吸
収剤や酸化亜鉛などの無機系紫外線吸収剤、更には紫外
線安定剤を含むものであっても構わない。
【0109】また、特開平7−178335号公報や同
9−302257号公報に記載されているような無機微
粒子の表面に有機ポリマーが固定された複合無機微粒子
を添加することもできる。
【0110】本発明に係る紫外線遮蔽層形成用樹脂組成
物が使用される積層体としては、紫外線遮蔽層を最表
層に有する積層体と、紫外線遮蔽層を中間層とする積
層体がある。の具体例は、無機質透明基材からなる窓
や容器の片面または両面に紫外線遮蔽層を形成し、室内
の紫外線劣化し易い樹脂製品、繊維製品、木材製品など
や、無機質透明基材性容器内の内容物を紫外線劣化から
保護する使用形態であり、の具体例は、無機質透明基
材よりなる窓の片面或いは両面に紫外線遮蔽層を形成
し、更にその上にハードコート層を形成して耐擦傷性、
硬度、耐薬品性などを高める使用形態である。
【0111】更に、積層構造内もしくは積層体の最表面
層に熱線遮蔽層を設けたものは、例えば建築物のガラス
窓に応用することにより、室内の家具などの紫外線劣化
を防ぐと共に、室内の温度上昇を防いで冷暖房費の節減
にも有効に活用でき、無機質透明容器に適用すれば、内
容物の紫外線劣化と共に内容物の保温にも有効となる。
また積層体の最表面に、耐汚染性向上のための光触媒機
能層、ガスバリア層、導電層、磁性層などの記録層、防
曇層などを形成することも有効である。また、2枚の無
機質透明基板の間に本発明の紫外線遮蔽層を中間層とし
て形成し、合せガラスとしての使用も可能である。
【0112】熱線遮蔽機能を持たせるには、例えば、前
述した無機質透明基材を成形する際に、熱線遮蔽性物質
を練り込んでから成形加工することにより熱線遮蔽機能
を与えた透明基材を使用したり、あるいは、無機質透明
基材の最表面の片面もしくは両面に、熱線遮蔽性物質を
含む塗剤を塗布することによって熱線遮蔽層を形成し、
更にその上に紫外線遮蔽層とハードコート層を形成した
り、熱線遮蔽性物質を紫外線遮蔽層に添加してその上に
ハードコート層を形成することも有効である。
【0113】ここで用いられる熱線遮蔽性物質として
は、近赤外線領域(700〜1800nm)に吸収を有
する物質であれは特に制限されないが、用途によって
は、可視光領域(400〜700nm)での着色が少な
く且つモル吸光係数の大きいものが望ましく、それらの
物質を1種もしくは2種以上組合わせて使用できる。ま
た用途によっては可視光線領域の調色を行なったり、目
的とする色に着色するために可視光線領域に吸収のある
物質を含有させることもできる。
【0114】該熱線遮蔽性物質としては、有機系熱線遮
蔽性物質と無機系熱線遮蔽性物質が挙げられる。
【0115】好ましい有機系熱線遮蔽性物質としては、
例えば金属錯体化合物、フタロシアニン、ナフタロシア
ニン、アミニウム塩、アントラキノン、ナフトキノンな
どが挙げられる。これらの中でも特に好ましいのは、フ
タロシアニン骨格の少なくとも1個以上、好ましくは4
個以上に窒素原子が結合したフタロシアニン(例えば、
フェニルアミノ基やアルキルアミノ基で置換されたフタ
ロシアニン)である。更には、特開平5−345861
号公報、特開平6−264050号、特開平6−255
48号などに記載されたフタロシアニン等も好ましく使
用できる。
【0116】また、無機系熱線遮蔽性物質の種類も特に
制限されず、例えば金属、金属窒化物、金属酸窒化物、
金属炭化物、金属酸化物等が挙げられるが、無機系熱線
遮蔽性物質としては分散媒体への溶解性が良好で耐候性
を有しているものが好ましいので、金属酸化物の微粒子
が特に好ましく使用される。かかる好ましい金属酸化物
としては、酸化インジウムあるいはこれにIV価金属元素
及び/又はFを含有させた酸化インジウム系酸化物;酸
化スズ或いはこれにV価金属元素及び/又はFを含有さ
せた酸化スズ系酸化物;酸化亜鉛にIIIB族金属元素やIV
B族金属元素などのIII価金属元素、FおよびCの少な
くとも1つの元素を含有させた酸化亜鉛系酸化物;スズ
酸カドミウムなどの金属酸化物が例示される。
【0117】これら有機系および無機系熱線遮蔽性物質
の使用量は、使用目的や使用する物質のモル吸光係数の
違い、更には有機系および無機系熱線遮蔽性物質の組み
合わせなどによっても変わってくるので画一的に決めら
れるものではないが、通常は基材に対して熱線遮蔽性物
質の総使用量で0.001〜100g/m2の範囲から
選択される。特に好ましい使用量は0.05〜30g/
2の範囲である。
【0118】以上の様にして得られる本発明の紫外線遮
蔽性積層体は、無機質透明基材の表面に、特定の紫外線
遮蔽層とその紫外線遮蔽層を保護するハードコート層が
その片面最表面層に積層されているので、耐擦傷性およ
び透明性を維持しつつ耐候性が非常に良好な紫外線遮蔽
性能を有しており、耐候性試験後においても、その紫外
線遮蔽層は所望の紫外線遮蔽性を維持している。具体的
には、本発明の紫外線遮蔽性積層体は、肉眼による透視
性を活かすため可視光線透過率が60%以上、より好ま
しくは70%以上、更に好ましくは80%以上であり、
且つ優れた紫外線遮蔽性とその持続性を有効に活かすに
は、初期の350nmでの紫外線透過率が30%以下、
より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下
で、しかも例えばスガ試験機社製の固定式メタルハライ
ドランプ型促進耐候性試験機である超エネルギー照射試
験機を用いた耐候試験で40サイクル後の紫外線カット
率の低下率{即ち、初期の紫外線カット率をX、耐候試
験後の紫外線カット率をYとした時、[(X−Y)/
X]×100(%)}が20%以下、より好ましくは1
0%以下のものが好ましい。
【0119】従って、該積層体の製造に使用する紫外線
遮蔽性組成物、塗膜強度などを考慮した膜厚に応じて、
可視光線透過率で60%以上、初期の350nmでの紫
外線透過率で30%以下、上記耐候試験後の紫外線カッ
ト率の低下率で20%以下を確保し得る様な樹脂組成に
調整しておくことが望ましい。
【0120】
【実施例】以下、実施例および比較例によって本発明を
より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるわ
けではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に
変更して実施することも可能であり、それらはいずれも
本発明の技術的範囲に包含される。なお下記実施例およ
び比較例において、「部」および「%」とあるのは、質
量部または質量%を表す。
【0121】[合成例] (紫外線遮蔽層形成剤の合成例1)攪拌機、滴下口、温
度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた500ml
のフラスコに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキ
シシラン93g(信越化学工業社製、商品名「KBM5
03」)、2−[2’―ヒドロキシ−5’−(メタクリ
ロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリア
ゾール(大塚化学製、商品名「RUVA93」)7g、
ダイアセトンアルコール120gを仕込み、窒素ガスを
導入して攪拌しながら110℃に昇温させる。これに、
開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサ
ノエート4.0gとダイアセトンアルコール30gの混
合物を2時間かけて滴下し、滴下後さらに4時間加熱す
ることにより、不揮発分濃度が39.8%の共重合樹脂
溶液を得た。なお、この共重合体の質量平均分子量は5
3,000であった。この反応性シリル基を有する紫外
線吸収性共重合体(溶液)を共重合体1とする。表1に
モノマーの種類などと配合量、および得られた共重合体
1の特性を示す。
【0122】(合成例2〜14)表1に示すモノマー組
成など及び配合量で、上記合成例1と同様にして共重合
樹脂溶液を製造し、それらの特性を表1に併記した。製
造した共重合体(溶液)を夫々共重合体2〜14とす
る。
【0123】
【表1】
【0124】(熱硬化型シリコーンハードコート剤Aの
合成)攪拌機、滴下口、温度計、冷却管を備えた100
0mlのフラスコに、メチルトリエトキシシラン164
部とイソブタノール46部を仕込み、氷冷下に攪拌しな
がら5℃以下に維持し、これに、5℃以下に冷却したコ
ロイダルシリカの水分散液(SiO2、20%含有)1
38部を滴下口から滴下し、氷冷下に2時間、更に20
〜25℃で8時間攪拌する。その後、ジアセトンアルコ
ール45部とイソブタノール50部を添加し、次いで1
0%プロピオン酸ナトリウム水溶液を1.5部添加した
後、酢酸でpH6〜7に調整する。次いで、得られた溶
液の不揮発分濃度が15%となる様にイソブタノールを
加えて濃度調整し、常温で3日間熟成してハードコート
剤Aを製造する。
【0125】(無機質透明基材)下記各実施例および比
較例で用いた無機質透明基材は、厚さ3mmの石英ガラ
スであり、島津製作所製の分光光度計(形式:「UV−
3100」)で積分球を用いた測定において、350n
mにおける紫外線透過率が93.1%、可視光線透過率
が93.3%、日射透過率が93.0%のものである。
【0126】実施例1 前記合成例1で得た共重合体1の100gをダイアセト
ンアルコールで不揮発分濃度15%に希釈し、厚さ3m
mのガラス板にバーコーターで乾燥厚さが約5μmとな
る様に塗工し、室温で10分間乾燥した後、120℃で
20分間加熱乾燥させる。その後、前記で得た熱硬化型
シリコーンハードコート層形成剤をバーコーターで約5
μmとなる様に塗工した後、室温で10分間乾燥した
後、120℃で60分間加熱乾燥してガラス積層体を得
る。得られるガラス積層体を下記項目について評価す
る。
【0127】(1)初期クラック ガラス板上に紫外線遮蔽層およびハードコート層を積層
し、焼き付け乾燥後の塗膜外観を下記の基準で評価す
る。〇;異常なし、△;僅かにクラックあり、×;塗膜
全面にクラックあり。
【0128】(2)1次密着性 JIS K5400(1990)8.5.2(碁盤目テ
ープ法)に準拠して密着性試験を行ない、塗膜外観を下
記の基準で評価する。○;異常なし、△;紫外線遮蔽層
とガラス板間で僅かに剥離、×;紫外線遮蔽層とガラス
板間で完全に剥離。
【0129】(3)耐水性 前記(1)と同様にして紫外線遮蔽層およびハードコート
層を形成したガラス板を、60℃の温水中に7日間浸漬
し後、前記(2)と同様にして密着性評価試験を行ない、
下記の基準で耐水密着性と塗膜外観を評価する。 [耐水密着性の評価] ○;異常なし △;紫外線遮蔽層とガラス板間でわずかに剥離 ×;紫外線遮蔽層とガラス板間で完全に剥離 [塗膜外観の評価] 〇;異常なし ×;つや引け、変色、ふくれ等が見られる。
【0130】(4)耐擦傷性 前記(1)で作成した被膜が積層されたガラス板を使用
し、ASTM D 1044に準拠し、テーバー摩耗試
験機により摩耗輪CS−10Fを用いて試験片を摩耗す
る。このときの試験荷重は500gf、試験回数は50
0回および1000回とする。試験片の摩耗した部分の
試験前後のヘイズ(曇価)変化をJISK−7105に
準拠して測定し、耐擦傷性を評価する。
【0131】(5)耐候性 促進耐候試験機の紫外線照射側から前記(1)で作成した
被膜が積層されたガラス板、次にポリカーボネート樹脂
板(PC:旭硝子社製、商品名「レキサン9034」ク
リヤ、厚さ3mm)となるように重ねてセットし、固定
式メタルハライドランプ型促進耐候性試験機であるスガ
試験機社製の超エネルギー照射試験機「UE−IDEC
型」(インナーフィルターとして石英、アウターフィル
ターとして#275を使用)を用いて、[照射条件:温
度70℃×湿度70%RH、紫外線照度:100mW/
cm2で6時間照射]→[結露条件:温度30℃×湿度
90%RHで6時間]を1サイクルとして40サイクル
及び80サイクル繰り返す条件で各試験片を曝露し、耐
候性試験前後の評価として、下記のガラス板に積層され
た被膜の耐候クラック性、耐候密着性、紫外線透過率、
可視光線透過率、40サイクル及び80サイクル後の紫
外線カット率の低下率を測定すると共に、本発明で得た
紫外線遮蔽性積層体の内容物として見立てたポリカーボ
ネート樹脂板の耐候黄変性を評価した。
【0132】[耐候クラック性] 耐候試験後の塗膜外観を下記の基準で評価 ○:異常なし、△:僅かにクラックあり、×:塗膜全体
にクラックあり [耐候密着性]耐候試験後の塗膜について前記(2)の方
法で密着性試験を行ない、塗膜外観を下記の基準で評価
する。○;異常なし、△1;ハードコートと紫外線遮蔽
層間で僅かに剥離、△2;紫外線遮蔽層とガラス板間で
僅かに剥離、×1;ハードコートと紫外線遮蔽層間で剥
離、×2;紫外線遮蔽層とガラス板間で完全に剥離。
【0133】[耐候黄変性] 黄色度:Y1 JIS K−7103に準拠し雰囲気温度23℃におけ
るポリカーボネート樹脂板の着色(特に黄色味)を示す
黄色度(Y1)を測定。
【0134】黄変度:△Y1 耐候性試験後における初期黄色度からの変化を示すもの
で、「黄変度(△Y1)=(試験後の黄色度)−(初期
の黄色度)」によって求める。黄変度(△Y1)の値が
大きいものは初期値に比べて着色した(黄色味が濃くな
った)ことを意味し、この黄変度(△Y1)が4を超え
ると着色したことが目視で明らかにわかる。同時に積層
ガラス板の紫外線遮蔽能を表し、この黄変度が増すほど
積層ガラス板を透過する紫外線量が多いことを示す。上
記黄変度をPC基材の耐黄変データとしてその結果を表
に示した。
【0135】[紫外線透過率、可視光線透過率、日射透
過率の測定]島津製作所社製の分光光度計(形式「UV
−3100」)で積分球を使用し、耐候性試験前後の3
50nmにおける紫外線透過率を測定し、またJIS
R3106に準拠して可視光線透過率を測定した。熱線
遮蔽物質が使用されている場合は日射透過率も測定し
た。
【0136】[低下率:耐候性試験40サイクルまたは
80サイクル後の紫外線カット率の低下率]紫外線カッ
ト率[即ち、(100−紫外線透過率)(%)]の低下
率によって求める。即ち、初期の紫外線カット率を
(X)、耐候試験の40サイクルまたは80サイクル後
の紫外線カット率を(Y)としたとき、[(X−Y)/
X]×100(%)によって求められる値。
【0137】実施例2〜19、比較例1〜6 上記実施例1と同様にして、厚さ3mmのガラス板上
に、表2,4,6に示す所定の共重合体を含む紫外線遮
蔽層を形成してからその上にハードコート層を形成し、
同様にして評価試験を行なった。結果を表3,5,7に
示す。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
【表5】
【0142】
【表6】
【0143】
【表7】
【0144】表2〜7の結果より、次の様に考えること
ができる。
【0145】実施例1〜18は、ガラス基材上に紫外線
遮蔽層を形成し、更にその上に耐擦傷性付与のためのシ
リコーン系ハードコート層を形成したもので、本発明の
規定要件を満たす例であり、総合的に見て優れた紫外線
遮蔽効果を有していることが分かる。このうち実施例4
は、実施例3に対して紫外線遮蔽層の膜厚を厚くしたも
ので、実施例3に比べると耐候性試験後にクラックをや
や起こし易くなる傾向が見られる。実施例5は、実施例
4の紫外線遮蔽層中の架橋官能基であるアルコキシシリ
ル基の硬化触媒を添加したもので、実施例4に比べると
耐擦傷性、耐候クラック性が向上している。
【0146】実施例6は、実施例4の紫外線遮蔽層構成
成分である共重合体の紫外線吸収性基含有モノマーをte
rt-ブチル基を有するモノマーに代えたもので、実施例
4に比べて耐候クラック性が向上しており、また耐候性
試験前後で紫外線透過率や可視光線透過率は殆ど変化し
ておらず、紫外線遮蔽性を長期的に維持し得ることが分
かる。
【0147】実施例7は、ハードコート層に含まれるハ
ードコート剤の硬化触媒成分を紫外線遮蔽層にしみ込ま
せ易くして紫外線遮蔽層の硬化促進のために、実施例6
における紫外線遮蔽層形成時の乾燥温度を室温とし、次
いでハードコート層の乾燥温度を120℃とする2コー
ト1ベークの乾燥条件を選択した例で、実施例6に比べ
て耐候クラック性、耐候密着性が向上している。実施例
8は、実施例5の紫外線遮蔽層構成成分に対し、共重合
成分としてシクロヘキシルメタクリレートを共重合させ
たもので、実施例5に比べて、耐候密着性、耐候クラッ
ク性が向上しており、更に耐候性試験前後で紫外線透過
率や可視光線透過率は全く変化しておらず、長期的に紫
外線遮蔽能を維持している。
【0148】実施例9,10は、実施例5の紫外線遮蔽
層構成成分に対し紫外線安定剤を添加した例、および紫
外線安定性モノマー成分を共重合させた例であり、実施
例9は実施例5に比べて耐候クラック性が向上してお
り、実施例10は、実施例9に比べて耐候密着性が向上
している。尚実施例11は、実施例4の紫外線遮蔽層構
成成分に対し、紫外線遮蔽層構成成分中に共重合成分と
してシクロヘキシルメタクリレートと紫外線安定性モノ
マーを共重合させたもので、耐候クラック性、耐候密着
性が向上している。また実施例9,10,11のいずれ
も、実施例5に比べて耐候性試験前後で紫外線透過率お
よび可視光線透過率の変化が見られず、優れた紫外線遮
蔽能を長期的に維持し得ることが分かる。
【0149】実施例12,13は、前記一般式(5)また
は一般式(6)で示される紫外線吸収性基含有モノマーを
それぞれ単独で共重合させた紫外線遮蔽層形成剤を用い
た例であり、実施例13では、実施例3に比べて耐候性
試験後の紫外線透過率が小さく、高い紫外線遮蔽能を示
している。実施例14は、前記一般式(4)で示される紫
外線吸収性基含有モノマーを単独で共重合して得られる
共重合体と、一般式(6)で示される紫外線吸収性基含有
モノマーを単独で共重合して得られる共重合体をブレン
ドして使用した例であり、実施例3に比べて優れた耐候
クラック性、耐候密着性を示している。また耐候性試験
後の紫外線透過率は小さくなり、紫外線遮蔽能が向上し
ている。実施例15は、ハードコート層として紫外線遮
蔽層構成成分である共重合体3をブレンドしたもので、
実施例3に比べて一段と優れた耐候密着性を示してい
る。実施例16は、紫外線遮蔽層側にハードコート層成
分であるハードコート剤Aをブレンドしたもので、実施
例3に比べて耐候クラック性が更に向上している。
【0150】実施例17は、実施例10のハードコート
層を厚膜にした例であるが、実施例10と同じ性能を有
している。
【0151】また実施例18は、有機系熱線遮蔽性物質
としてフタロシアニン系化合物(日本触媒社製;商品名
「イーエクスカラーIR−10」)2.0部と、シラン
カップリング剤(信越化学社製;商品名「A−18
7」)10部、アクリル系樹脂(日本触媒社製;商品名
「ユーダブルS−5141」)100部に溶解させ、更
にトルエンで不揮発分3%に希釈した後、厚さ3mmの
ガラス板にバーコーターで乾燥厚さが約5μmとなる様
に塗工し、室温で10分間放置後120℃で10分間加
熱乾燥させ、次いで表4に示す所定の共重合体5を含む
紫外線遮蔽層を形成してから、その上にハードコート層
を形成して得た積層体である。この実施例18からも明
らかな様に、ガラス基材と紫外線遮蔽層との間に熱線遮
蔽層を形成した積層体でも同様の性能を有している。ま
たこの積層体の日射透過率は74.5%であり、紫外線
遮蔽効果と共に熱線遮蔽性にも優れた積層体が得られる
ことを確認できる。
【0152】実施例19は、実施例11に示した積層体
からハードコート層を省略し紫外線遮蔽層を設けただけ
のものであり、実施例11と同様に耐候性試験後におい
ても紫外線透過率や可視光線透過率は全く変化しておら
ず、長期的に紫外線遮蔽能を持続している。
【0153】また上記実施例1〜19に示した各積層体
の紫外線カット率の低下率(初期の紫外線カット率に対
する耐候試験の40サイクル後の紫外線カット率の低下
率)は、最も高い実施例1でさえ[(98.7−91.
4)/98.7=7.4(%)]で、10%以下に抑え
られており、実施例8,9,10,11,17,18,
19などはいずれも低下率ゼロ(初期の紫外線カット率
=耐候試験の40サイクル後の紫外線カット率)であ
り、卓越した持続性を有していることが分かる。
【0154】これらに対し、比較例1〜5は本発明で定
める規定要件の何れかを欠く比較例であり、これらのう
ち比較例1,4,5は、初期の塗膜にクラックが発生し
たので、塗膜性能試験は行なわなかった。また比較例2
は、比較例1の初期クラック性を向上させるため紫外線
遮蔽層を薄肉にしたもので、初期クラック性は向上する
ものの、耐擦傷性、耐候クラック性、耐候密着性が殆ど
改善されない。比較例3も、比較例1の初期クラック性
を向上させるためハードコート層を薄肉にしたものであ
るが、耐候密着性の向上が見られず、耐擦傷性のレベル
は低い。
【0155】また比較例2,3は、紫外線カット率の低
下率(初期の紫外線カット率に対する耐候試験の40サ
イクル後の紫外線カット率の低下率)は、比較例2が9
0.4%、比較例3が90.7%で、紫外線遮蔽性の持
続性においても著しく劣っており、80サイクル後には
殆ど紫外線遮蔽能を失うので、ポリカーボネート樹脂板
が破壊を起こしている。
【0156】比較例4,5は、比較例1に対して紫外線
遮蔽層を構成する共重合体中の反応性シリル基を有する
モノマー量を多くして初期クラックの改善を試みたもの
であるが、その改善効果は不十分である。
【0157】参考例1(合わせガラスの中間体としての
性能評価) 表1に示した共重合体8:100gに、硬化触媒として
ジブチル錫ラウレート0.01gと酢酸0.2gを添加
し、トルエンで不揮発分濃度を20%に調整した後、厚
さ3mmのガラス板の片面にバーコーターで乾燥厚さが
約5μmとなるように塗工し、室温で10分間放置した
後、120℃で30分間加熱乾燥した。更にその上に厚
さ3mmのガラス板を重ね合せ、これを真空バックに入
れて真空度10torrで20分間脱気し、脱気状態を
保持したままオーブンに移して150℃で30分間保持
することにより合せガラスを作成した。
【0158】次に、固定式メタルハライドランプ型促進
耐候性試験機であるスガ試験機社製の超エネルギー照射
試験機「UE−IDEC型」(インナーフィルターとし
て石英、アウターフィルターとして#275を使用)を
使用し、[照射条件:温度70℃×湿度70%、紫外線
照度:100mW/cm2で6時間照射]→[結露条
件:温度30℃×湿度90%で6時間]を1サイクルと
して、40サイクル及び80サイクル繰り返す条件で各
試験片を曝露し、該耐候性試験前後における350nm
の紫外線透過率と可視光線透過率を島津製作所社製の分
光光度計(型式:「UV−3100」)で積分球を用い
て測定した。
【0159】結果は表8に示す通りであり、合わせガラ
スの形態とした場合でも耐候性試験前後の紫外線透過率
や可視光線透過率は全く変化しておらず、長期的に紫外
線遮蔽能を維持することが分かる。
【0160】
【表8】
【0161】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、ガ
ラスの如き無機質透明基材の両面もしくは片方の最表面
側にハードコート層を形成して耐擦傷性などを改善する
際に、紫外線遮蔽層として、反応性シリル基を有するモ
ノマーと紫外線吸収性基を有するモノマーを特定比率で
含有する共重合体を含む紫外線遮蔽性樹脂組成物を使用
することにより、紫外線劣化しやすい樹脂製品や飲料食
品など内容物の紫外線劣化を防止しつつ、ハードコート
層および無機質透明基材との密着性を改善し、耐候性や
耐擦傷性、耐クラック性などが大幅に改善された積層体
を提供し得ることになった。
【0162】特に、無機質透明基材の両面もしくは片方
の最表面にシリコーン系硬化性樹脂よりなるハードコー
ト層を形成して耐擦傷性を改善する際に、紫外線遮蔽層
を下地層として使用することにより、無機質透明基材の
内側にある紫外線劣化しやすい樹脂製品や飲料食品など
内容物の紫外線による変色・劣化などを抑えると共に、
ハードコート層との密着性も大幅に高めることができ、
ハードコート層や紫外線遮蔽層を厚肉化しても、紫外線
遮蔽層上に積層されるハードコート層の昇温、硬化過程
で生ずるクラックを可及的に防止し得ると共に、耐候性
試験中に生じるクラックを防止することができ、更に
は、紫外線遮蔽層と無機質透明基材との接合力向上によ
り積層体としての一体性を高め得るなど、実用面で多く
の特長を備えた積層体を提供し得ることになった。
【0163】従って本発明の紫外線安定性積層体は、ガ
ラスに代表される無機質透明基材として紫外線遮蔽能が
求められる用途、例えば紫外線カットガラス、複層ガラ
ス、合わせガラス、熱線反射紫外線吸収カットガラス、
紫外線・熱線吸収ガラス、防曇性紫外線カットガラスな
どの住宅用の窓、ショーウインドー、自動車、電車、航
空機、船舶などの機能性ガラスとして、あるいはショー
ケース、標本箱、掲示板、額縁など、更には眼鏡、サン
グラス、ブラウン管、LOD(液晶ディスプレイ)、S
TN(スーパーツイステッドネマチック)、PDP(プ
ラズマディスプレイ)、太陽電池、光学レンズ、光ファ
イバー、フォトクロミック素子やエレクトロクロミック
素子等の各種光学素子モジュール、光学フィルター、照
明基材、更には、食品、清涼飲料、酒、食用油、化粧品
などの包装用瓶など、無機質透明基材が使用され紫外線
遮蔽能が求められるあらゆる用途に幅広く有効に活用で
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 5/32 C09D 5/32 143/04 143/04 183/04 183/04 201/02 201/02 Fターム(参考) 4F100 AA00A AG00 AG00A AK52B AK52C AK52D AK52E AK52J AL01B AL01C AT00A BA03 BA05 BA06 BA07 BA10A BA10D BA10E CA07B CA07C CC00D CC00E DA01 EH46 GB07 GB16 GB23 GB32 JB07 JD09 JD09B JD09C JK06 JK12D JK12E JK14 JL09 JN01A JN08 YY00 YY00B YY00C 4G059 AA01 AA04 AC07 FA07 FB05 FB06 GA01 GA04 GA11 4J038 CG141 CG171 CH111 CH181 CH191 CH201 CH221 CH231 CJ131 CJ151 CJ181 DL031 FA211 GA03 GA08 GA12 GA15 JB29 KA12 NA03 NA11 NA12 NA19 PB14 PC03 4J100 AE09P AF10Q AL08P AL08Q AL08R AM21R AP16P BA02Q BA03Q BA12Q BA77P BC43Q BC65R BC73Q BC75Q BD14Q CA04 CA05 JA32

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機質透明基材の少なくとも片面側最表
    面に、紫外線遮蔽層を介してハードコート層が形成され
    てなり、上記紫外線遮蔽層は、下記モノマー成分を重合
    してなる共重合体を含有することを特徴とする紫外線遮
    蔽性積層体。 (A)反応性シリル基を有するモノマー:40〜95質量
    %、 (B)紫外線吸収性基を有するモノマー:3〜60質量
    %、および (C)その他のモノマー:0〜57質量%。
  2. 【請求項2】 前記その他のモノマー(C)の一部または
    全部が、(D)紫外線安定性基を有するモノマーであっ
    て、該モノマーが、前記モノマー成分を100質量%と
    したとき0.1〜15質量%となる様に含まれている請
    求項1に記載の紫外線遮蔽性積層体。
  3. 【請求項3】 前記紫外線遮蔽層が、添加型の紫外線安
    定剤を含むものである請求項1または2に記載の紫外線
    遮蔽性積層体。
  4. 【請求項4】 前記ハードコート層がシリコーン系樹脂
    を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の紫外
    線遮蔽性積層体。
  5. 【請求項5】 可視光線透過率が60%以上であり、初
    期の350nmの紫外線透過率が30%以下で且つ固定
    式メタルハライドランプ型促進耐候性試験機を用いた耐
    候性試験40サイクル後の紫外線カット率の低下率が2
    0%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線
    遮蔽性積層体。
  6. 【請求項6】 前記請求項1〜5のいずれかに記載され
    た積層体を製造するに当たり、紫外線遮蔽層を形成する
    ために用いる樹脂組成物であって、下記モノマー成分を
    重合してなる共重合体を含有することを特徴とする紫外
    線遮蔽層形成用樹脂組成物。 (A)反応性シリル基を有するモノマー:40〜95質量
    %、 (B)紫外線吸収性基を有するモノマー:3〜60質量
    %、および (C)その他のモノマー:0〜57質量%。
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