JP2002249840A - ピストン用アルミニウム鋳造合金およびピストンの製造方法 - Google Patents
ピストン用アルミニウム鋳造合金およびピストンの製造方法Info
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Abstract
アルミニウム鋳造合金およびピストンの製造方法を提供
すること。 【解決手段】 Mg:0.2重量%以下,Ti:0.1
〜0.3重量%,Si:11〜15重量%,Cu:2〜
3.5重量%,Fe:0.2〜1重量%,Mn:0.2
〜1重量%,Ni:1〜3重量%,P:0.001〜
0.015重量%,残部Alおよび不純物からなり,基
地α−Al相の結晶粒径dと二次デンドライトアーム間
隔DASとの比d/DASが25以下であり,初晶Si
が存在する過共晶組織を有する。
Description
およびこれに用いるアルミニウム鋳造合金に関する。
は,それを構成する部品としてピストンが不可欠であ
り,従来よりアルミニウム鋳造合金を用いて作製されて
いる。このアルミニウム鋳造合金としては,種々のもの
が提案され改善がなされてきている。例えば,特開平8
−104937号公報の「高温強度に優れた内燃機関ピ
ストン用アルミニウム合金及び製造方法」においては,
Cu:3〜7重量%,Si:8〜13重量%,Mg:
0.3〜1重量%,Fe:0.1〜1.0重量%,T
i:0.01〜0.3重量%,P:0.001〜0.0
1重量%,Ca:0.0001〜0.01重量%及び必
要に応じてNi:0.2〜2.5重量%を含み,P/C
aが重量比で0.5〜50の範囲に調整されている合金
が公開されている。
された合金は,従来よりある合金に比べ優れた耐磨耗性
を維持し,且つ高温強度が改善されるという特徴を有す
る。しかし,ピストンのピンボス部に応力集中が生じや
すいため,同部位の実用疲労特性が十分で無いという問
題がある。また,ピストンの高出力化に伴ない,350
℃付近まで晒される頂面部の高温疲労強度がまだ十分で
ないという問題もある。さらにピストンの内部に気孔が
発生し易く疲労特性のばらつきが大きいという問題もあ
る。
高める成分の増量により高温強度をある程度高めている
が,さらに添加量を高めると延性が低下し,それにより
疲労強度が低下してしまうという問題が生じる。またC
u量が高いとCu化合物が晶出する最終凝固部が材料内
に点在し,その部分に凝固収縮により気孔が生じてしま
う。このように,耐熱成分を増量する従来の方法だけで
は,ピストンとしての実用疲労特性をこれ以上向上でき
ない限界に達している。
れたもので,従来よりも実用疲労特性に優れたピストン
用アルミニウム鋳造合金およびピストンの製造方法を提
供しようとするものである。
g:0.2重量%以下,Ti:0.1〜0.3重量%,
Si:11〜15重量%,Cu:2〜3.5重量%,F
e:0.2〜1重量%,Mn:0.2〜1重量%,N
i:1〜3重量%,P:0.001〜0.015重量
%,残部Alおよび不純物からなり,基地α−Al相の
結晶粒径dと二次デンドライトアーム間隔DASとの比
d/DASが25以下であり,初晶Siが存在する過共
晶組織を有することを特徴とするピストン用アルミニウ
ム鋳造合金にある。
ミ組織の最適化を図り,これらにより初めてピストンと
しての実用疲労特性を向上させることができる。まず,
Mg量の低減により,ピストンの実使用中にピンボス部
が晒される200℃付近までの温度域での耐力を低減し
ている。これにより,ピストンに燃焼圧による負荷がか
かった際にピストンピンの変形に追従してピンボス部が
変形できる。そのため,両者の接触面積が広くなり,局
部的な応力集中が防止できる効果がある。この効果によ
り,ピンボス部の実用疲労特性が向上するメリットが生
じる。このような低耐力化による実用疲労特性の向上
は,従来のピストン材にはない全く新しいコンセプトで
ある。
これによりデンドライトアームの整列を防止し,デンド
ライトアームの間隙に生成する晶出物が形成する凝固組
織を等方・均質化することができる。これにより,発生
するひずみの分布を均一にし,疲労強度を向上させてい
る。
り,高温強度を高め,ピストンの頂面部に必要な350
℃付近の高温疲労強度を高めている。また,凝固様式を
α−Al相が指向性凝固する過共晶凝固にすることによ
り,気孔の発生を防止している。
由を記する。 Mg:0.2重量%以下, Mgは200℃以下の低温での低耐力化と350℃付近
の高温での高耐力化を両立するために,低減した。Mg
含有量が0.2重量%を超えると,200℃以下での耐
力が高まることによって,ピンボス部の応力集中が大き
くなるとともに,基地アルミ部の延性が低下して,同部
位のアルミ部に疲労亀裂が生じやすくなるデメリットが
生じる。好ましい範囲は0.1重量%以下である。この
限定により,上記効果はより明確に作用する。含有量が
少ないほど上記メリットは大きいが,高純度でコスト高
となるため,この位の限定が好ましい。
が不十分で,疲労強度を向上させるほど組織の等方・均
質化が達成されない。Ti含有量が0.3重量%を超え
る場合,基地アルミ相がTi固溶により硬くなり過ぎて
せん断破壊を生じるおそれがあるとともに,粗大なTi
化合物が生成し靱性が低下するおそれがある。なお,T
iの添加をAl−Ti−B合金,Al−Ti−C合金な
どによって行う場合には,不純物としてBおよびCの含
有を許容する。
力が十分でなく,疲労強度も不足する。Cu含有量が
3.5重量%を超えると,Cu化合物が晶出する最終凝
固部が点在して,凝固収縮によりこの部位に気孔が生成
する。これにより疲労強度が低下する。好ましい範囲は
2.5〜3.25重量%である。この範囲で,さらに安
定して高い疲労特性が得られる。
共晶凝固させることができず,亜共晶凝固してしまうお
それがある。亜共晶凝固になると,凝固時に気孔の原因
となるガスを放出する基地α−Al相が分散して凝固
し,最終凝固部が点在するため気孔が生じやすい。Si
含有量が15重量%を超えると粗大な初晶Siが多量に
生成して,低温での延性や靭性が著しく低下するおそれ
がある。また,被削性が著しく低下するおそれがある。
Si量が高いほど350℃付近の高温疲労強度は向上す
る。好ましい範囲は12〜14重量%である。この範囲
においてさらに安定して過共晶凝固が得られるととも
に,初晶Siの大きさ,量が適度であるため,さらに高
い疲労特性と適度な被削性を具備することができる。
晶出物の分散強化により高温耐力が向上する。Fe含有
量が0.2重量%未満では晶出物が少なく,高温耐力の
向上が十分でない。Fe含有量が1重量%を超えると,
粗大なFe化合物を生成しやすく,凝固組織が不均質に
なり,局部的な応力集中が生じて疲労特性が低下するお
それがある。なお,Fe化合物とはFeを含む化合物の
総称とする。
高温耐力の向上に寄与する。また,基地アルミ中に固溶
して,固溶強化により高温耐力を向上させる効果もあ
る。1重量%を超えると,粗大なMn化合物を生成しや
すく,凝固組織が不均質になり,局部的な応力集中が生
じて疲労特性が低下するおそれがある。なお,Mn化合
物とはMnを含む化合物の総称とする。Mnはまた,F
e化合物中にも含有される。例えばAl−Si−Fe−
Mn化合物は,FeおよびMnを含むので,Fe化合物
とMn化合物の両方に属する。
化による高温耐力の向上に寄与する。Ni含有量が1重
量%未満では,Ni化合物の晶出が少なく,高温耐力の
向上が不十分である。Ni含有量が3重量%を超えると
粗大なNi化合物が晶出し,凝固組織が不均質になり,
局部的な応力集中が生じて疲労特性が低下するおそれが
ある。
を防止する。また初晶Siを微細化し,延性や靭性を確
保する。0.015重量%を超えると,湯流れ性が悪化
し,凝固組織が不均質になる。
デンドライトアーム間隔DASとの比d/DASは25
以下とする。上記d/DASが25より大きいと,凝固
組織が不均質になり,局部的な応力集中が大きくなり,
その結果として疲労強度が低下する。好適な範囲は20
以下である。この範囲で,デンドライトアームの整列が
ほぼ無くなり,デンドライトアームの間隙に生成する晶
出物がランダムな方位に分散して,凝固組織の均質化が
十分に達成される。以上のようなd/DASの制御はT
i含有量の制御および,必要に応じて後述するTi添加
プロセスの併用により達成される。
共晶組織とする。初晶Siは後述する図2,図3に示す
ごとく塊状の粒子(符号57)である。凝固様式をα−
Al相が指向性凝固する過共晶凝固にすることにより,
気孔の発生を防止することができる。亜共晶凝固になる
と,凝固時に気孔の原因となるガスを放出する基地α−
Al相が分散してて凝固し,最終凝固部が点在するため
気孔が生じやすい。過共晶凝固への制御は主としてSi
量とP添加量の調整で行う。しかし,Ca,Naなど亜
共晶凝固を促進する元素を多量に含む場合には,Pの増
量または亜共晶化促進元素量の低減により過共晶凝固を
達成することが必要である。なお,凝固様式が過共晶凝
固か亜共晶凝固かは初晶Siの有無で判断できる。
g:0.2重量%以下,Ti:0.1〜0.3重量%,
Si:11〜15重量%,Cu:2〜3.5重量%,F
e:0.2〜1重量%,Mn:0.2〜1重量%,N
i:1〜3重量%,P:0.001〜0.015重量
%,V:0.03〜0.3重量%,残部Alおよび不純
物からなり,基地α−Al相の結晶粒径dと二次デンド
ライトアーム間隔DASとの比d/DASが25以下で
あり,初晶Siが存在する過共晶組織を有することを特
徴とするピストン用アルミニウム鋳造合金にある。
さらにV:0.03〜0.3重量%を添加したものであ
る。この場合には,V添加により,高温耐力が顕著に増
加し高温疲労強度がさらに高まる。また,V添加は第1
発明の合金の強化メカニズムを損なうことなく,高温疲
労強度をさらに高めるという付加的効果を発現できる。
V含有量が0.03重量%未満では高温耐力の向上が不
十分である。0.3重量%を超えると均一な溶解が難し
く,組織が不均質になる。
i:0.1〜0.3重量%,Mg:0.5〜2重量%,
Si:11〜13重量%,Cu:2〜3.5重量%,F
e:0〜0.7重量%,Mn:0〜0.7重量%,N
i:0.5〜1.5重量%,P:0.001〜0.01
5重量%,残部Alおよび不純物からなり,基地α−A
l相の結晶粒径dと二次デンドライトアーム間隔DAS
との比d/DASが25以下であり,初晶Siが存在す
る過共晶組織を有することを特徴とするピストン用アル
ミニウム鋳造合金にある。
て,Mg量が高く,それに準じて,Si,Fe,Mn,
Ni量を最適化している。高Mg化により基地アルミ部
が析出強化され延性が乏しくなるので,Si,Fe,M
n,Niなどによって生成する晶出物の大きさと量を適
正にする必要がある。晶出物が粗大またはその量が多す
ぎると,基地アルミとの界面に応力集中が生じて,界面
の剥離や晶出物の割れが生じ易い。それが疲労破壊の起
点となるので,合金の疲労強度が低下する。
る。 Ti:0.1〜0.3重量%, Cu:2〜3.5重量%, P:0.001〜0.015重量%, Ti,Cu,Pの含有量の限定理由は上記第1発明の場
合と同様である。なお,Tiの添加をAl−Ti−B合
金,Al−Ti−C合金などによって行う場合には,不
純物としてBおよびCの含有を許容する。
によって200℃以下の低温での耐力を改善する。2重
量%を超えるとMg2Siが凝固過程で晶出物として生
成し,これにより靭性が低下する。0.5重量%未満で
は析出量が少なく,200℃での材料としての疲労強度
が十分でない。
発明の合金は耐力が高く,ピストンのピンボス部におい
てピンとの接触による応力集中を生じ易い。従って,こ
の合金を使用する場合には,ピンボス部の接触面積を増
やして応力集中を低減するピン穴形状の最適設計が必要
である。すなわち,ピンボス部の応力集中を形状設計な
どによって解決できる場合には,本第3発明の合金が最
適であるのに対して,形状設計等の他の方法により解決
できない場合には,第1,第2発明の合金を用いること
が好ましい。それゆえ,第1〜3の合金により,種々の
設計をしたピストンのいずれにも対応できる。
より重視し,ピンボス部の応力集中を最適形状設計によ
りある程度抑えたピストンの場合には,第1,第2の合
金のMg量を0.2〜0.5重量%まで高めた合金が最
適である。0.2重量%以上のMg量により適度な析出
強化が図られ,200℃付近における疲労強度が著しく
向上する。0.5重量%を超えると基地アルミ相が析出
強化により硬くなり過ぎて,晶出物との界面に応力集中
が生じ,界面剥離や晶出物の割れが生じて,疲労強度が
低下する。すなわち,Mg量が0.5重量%を超える場
合には第3発明の合金のごとく,Si,Fe,Mn,N
i量を次のように最適化する必要がある。
し,またその生成量が増加して,低温での延性や靱性が
十分確保できない。
上のFeの含有が必須となるが,本合金では,ピンボス
部の200℃付近での疲労強度をより重視するため,F
eの下限は0まで許容する。Fe含有量が低いと材料の
延性が増す効果も発現し,応力集中部での亀裂の発生を
防止する。
ボス部の疲労強度を重視するためである。また,Mn含
有量が低いと延性が向上する効果も発現し,応力集中部
での亀裂の発生を防止する。
の合金より,含有量を少なくした。Ni含有量が0.5
重量%未満では,Ni化合物の晶出が少なく,高温耐力
の向上が不十分である。Ni含有量が1.5重量%を超
えるとNi化合物が大きすぎて,剥離や割れが生じて疲
労特性が低下するおそれがある。
に,基地α−Al相の結晶粒径dと二次デンドライトア
ーム間隔DASとの比d/DASは25以下とし,組織
形態は,初晶Siが存在する過共晶組織とする。
記第1〜第3発明のピストン用アルミニウム鋳造合金よ
りなるピストンを製造する方法であって,Ti含有量が
0.1重量%以下の合金溶湯を準備し,該合金溶湯にA
l−Ti合金を添加して上記合金溶湯内のTi含有量を
増した後,該合金溶湯を700℃以上の温度に保持する
と共に上記Al−Ti合金の添加後8時間以内に,鋳型
内に注湯して上記ピストンを鋳造することを特徴とする
ピストンの製造方法にある。
スで行うことにより,d/DASが25以下の凝固組織
が均質な合金およびその合金からなるピストンを量産工
程で円滑に安定して製造できる。
量%が好適である。最適含有量は5重量%であり,1〜
5kg塊の形で供給されるインゴットを用いることがよ
り好ましい。これにより,添加用合金の品質が安定し,
製作した合金およびピストンの品質が安定する。
またはAl−Ti−C合金などの結晶粒微細化用母合金
を用いても良い。すなわち,上記Al−Ti合金は,A
l−Tiの他に添加元素を含有する合金をも含む概念で
ある。但し,この場合には,合金が溶解し微細化効果が
出現するまでの潜伏時間と微細化効果が低下するととも
にTi化合物が凝集・沈降する時間が供試母合金ごとに
規定されているので,その条件に従い,添加後,注湯ま
でのプロセスを厳密に管理する必要がある。Al−Ti
合金添加の場合には,700℃以上で保持しておけばT
i化合物の凝集が生じ難く,溶解後30分程度から少な
くとも8時間程度は微細化効果を維持できる。
溶湯にAl−Cu−P合金の形でPを添加して,過共晶
凝固させると共に初晶Si粒径を50μm以下に微細化
することが好ましい。P添加は,初晶Siの微細化用に
供給されるAl−Cu−P合金の形で行うのが好まし
い。これにより,量産工程で初晶Si粒径を50μm以
下に安定的に微細化できる。
上記ピストンを,温度470〜500℃で2〜12時間
溶体化加熱後,温水中に焼き入れした後,温度200〜
250℃で2〜12時間時効処理を施すことが好まし
い。すなわち,上記アルミニウム鋳造合金よりなるピス
トンは,鋳造後,溶体化処理と時効処理を施し,目的形
状に機械加工して得られる。
件が好ましい。特に溶体化加熱温度の上限は500℃を
超えない様,厳密に制御することが好ましい。500℃
を超えると部分的に溶融し,再凝固の際に気孔を生成す
るおそれがある。このような熱処理条件により,上記合
金の特性を十分に発揮し,均質で性能の安定したピスト
ンを得ることができる。
溶体化処理の代わりに鋳造焼き入れ(鋳造直後に温水中
に焼き入れ)を用いてもよい。この場合,焼き入れ直前
のピストン温度は400℃以上であることが好ましい。
ピストンの鋳造方法としては,低コストな重力鋳造が利
用できる。但し,高圧鋳造,ダイカストなどでも鋳造可
能である。
Al−Ti合金,Al−Ti−B合金,またはAl−T
i−C合金などの母合金添加の形で行うのが望ましい。
これにより,結晶粒が十分に微細化され組織が等方・均
質化されるとともに,凝集したTi化合物の混入を抑制
できる。
造合金につき4つの実施例と4つの比較例を用いて説明
する。
ルミニウム合金を溶製した。各合金は,Ti含有量が
0.1重量%以下の合金溶湯を準備し,該合金溶湯にA
l−Ti合金等を添加して上記合金溶湯内のTi含有量
を増した後,該合金溶湯を700℃以上の温度に保持す
ると共に上記Al−Ti合金の添加後8時間以内に,鋳
型内に注湯して鋳造した。
れAl−5wt%Ti合金,Al−5wt%V合金,A
l−19wt%Cu−1.4wt%P合金を他の成分を
調整した上記合金溶湯中に最後に溶解して行った。その
後740〜760℃でフラックス添加による脱酸処理を
施した後,真空中で20分間保持する真空脱ガス処理を
施した後,表面にBNを塗布した室温のJIS4号試験
片採取用舟型に鋳込んだ。
めバーナー加熱し十分に水分を除去した後室温に冷却し
たものを用いた。得られた鋳造素材に,495℃×3時
間の加熱後50℃の温水中に焼き入れる溶体化処理を施
し,次いで210℃×3時間の時効処理を施した。さら
に,疲労試験片を採取する素材については,その試験温
度と同じ350℃または200℃で100時間加熱す
る,予備加熱処理を施した。
Mg量が低く,Tiを添加したものである。実施例2の
合金は,実施例1の合金にVを添加した第2発明に属す
る合金である。実施例3の合金は第3発明に属する合金
で,Mgを増量し,Si,Ni,Fe,Mnを減量した
合金である。実施例4の合金は実施例1の合金にMgを
適量添加した合金である。
JISのAC8A合金である。比較例2の合金はCu量
を高くし,高温強度を高めた公知合金である。比較例3
は実施例1に比ぺCu量のみ低い合金である。比較例4
は実施例1に比ぺCu量が高い合金である。
により疲労試験片,組織観察試料および硬さ測定試料を
採取した。疲労試段片の平行部はφ4mm×長さ6mm
とし,舟型底から14mm高さの位置を試験辺の軸中心
として加工した。硬さ測定試料は200℃で100時間
の予備加熱を行った素材から採取した。
の平行部を有する平滑試験片を用いて,電気油圧式疲労
試験機により,引張−圧縮の50Hzの正弦波応力波形
にて実施した。また,200℃での切欠材の疲労試験
は,φ6mmの平行部に3本の環状切欠(切欠底径φ4
mm,切欠底R0.1)付き試験片を用いて,電気油圧
式疲労試験機により,引張−圧縮の50Hzの正玄波応
力波形にて実施した。
度,室温におけるビッカース硬さおよび組織観察によっ
て調べた気孔の有無を表2に示す。表示した疲労強度は
いずれも試験結果の応力振幅−破断寿命線図から求めた
寿命が107回となる疲労強度である。
iを0.2重量%添加した実施例1〜4および比較例
3,4の合金は結晶粒径dと二次デンドライトアーム間
隔DASとの比d/DASが25以下でデンドライトア
ームの整列がほとんどない均質な凝固組織であるのに対
し,Ti添加量が0.1重量%以下である比較例1,2
の合金ではd/DASが25より大きくデンドライトア
ームの整列が多く認められる不均質な凝固組織であっ
た。
トアーム間隔DASとの関係を,図1を用いて模式的に
説明する。同図より知られるごとく,上記アルミニウム
鋳造合金の組織における結晶粒5は,主として基地α−
Al相56と,これと同じ相よりなりデンドライト50
とそれを取り囲む晶出物55とにより構成されている。
そして,二次デンドライトアーム間隔DASは,この二
次デンドライトアーム54の平均間隔の寸法である。
は,符号6に示す様な二次デンドライトアームの整列し
た部分が明らかに認められる。これに対し図3に示す本
発明の合金の組織においては,このような二次デンドラ
イトアームの整列が認められず,組織が均質であると判
断できる。このように組織の均質性の判断基準として上
記d/DASの代りに二次デンドライトアームの整列部
の有無を用いてもよい。この場合,二次デンドライトア
ームが10個以上,明確に同一方向に並んでいる図2の
符号6のような組織を整列有りと判断する。なお,この
判断は試料の標準的な組織写真を用いて行うものとし,
ごく一部の特異組織は判断対象としないこととする。
は気孔が観察され,安定した疲労強度が要求されるピス
トン材料としては好ましくない。また,供試した全合金
はAl−Cu−P合金の形でP添加を行っており,その
結果初晶Siの平均粒径は50μm以下と微細であるこ
とを確認した。表2から知られるごとく,実施例1〜4
の合金はいずれも比較例1〜3の合金に比べて350℃
における高温疲労強度が高い。
ストンの頂面部に要求される350℃付近の温度域での
疲労特性に優れると考えられる。また,実施例3,4の
合金は比較例2の合金に比べて200℃の切欠疲労強度
が高い。比較例1の合金も同強度が高いが350℃の疲
労強度が極めて低い欠点がある。実施例1,2の合金は
200℃切欠疲労強度が比較例2に比べてやや高いレベ
ルにしかないが,硬さが著しく低いという特徴を持つ。
すなわち,硬さが低い実施例1,2の合金でピストンを
製造すると,ピストンピンの変形に応じてピンボス部が
変形し易く,両者の接触面が増して応力集中が低減され
るという効果が期待できる。
強度が適度である上,このような接触応力の低減効果が
期待できるので,ピンボス部の実用疲労特性に優れると
考えられる。なお,比較例3の合金は,さらに硬さが低
い特徴を持つが,200℃における平滑材の疲労強度が
極度に低い上,350℃疲労強度も実施例1〜4ほど高
くない。
を均質化し,Cu量を適度に増量し,Mg量に応じてS
i,Ni,Fe,Mn量を調整した第1〜第3発明に属
する実施例1〜4の合金が,頂面およびピンボス部の実
用疲労特性に優れることが分かった。なお,Vの適量添
加によりさらに疲労強度が向上することが分かった。
用いて製造したピストンの一例を示す。本例のピストン
1は,図4に示すごとく,全体形状が円筒状であって,
その上端に頂面部3を有し,その裏側にピンボス部2を
2つ有している。各ピンボス部2にはピン穴20が設け
られており,各ピン穴20に図示しないコンロッドを固
定するためのピストンピンを挿入するように構成されて
いる。
上記実施形態例1の試験片を製造する場合と同様に行
う。すなわち,Ti含有量が0.1重量%以下の合金溶
湯を準備し,合金溶湯にAl−Ti合金,Al−Cu−
P合金等を添加して上記合金溶湯内のTi含有量を増
す。その後,この合金溶湯を700℃以上の温度に保持
すると共に上記Al−Ti合金の添加後8時間以内に,
鋳型内に注湯して上記ピストン1を鋳造する。その後,
ピストン1は,温度470〜500℃で2〜12時間溶
体化加熱後,温水中に焼き入れした後,温度200〜2
50℃で2〜12時間時効処理を施す。
用する合金(実施例1〜4)ごとに,それぞれ上記実施
形態例1において述べたような優れた作用効果を発揮す
る。それ故,ピストン1は,過共晶凝固による気孔発生
の防止,Ti添加による凝固組織の均質化,最適Cu添
加,Ti,V,Fe,Mn添加による高温強度向上,A
l−Cu−P添加による初晶Si微細化,Mg低減によ
る低耐力化を併用することにより,ピストンとしての多
様な実用疲労特性を総合的に高めることができる。
りも実用疲労特性に優れたピストン用アルミニウム鋳造
合金およびピストンの製造方法を提供することができ
る。
ドライトアーム間隔DASとの関係を示す説明図。
顕微鏡組織を示す図面代用写真。
顕微鏡組織を示す図面代用写真。
斜視図。
子), 56...基地α−Al相(白い基地部), 57...初晶Si(塊状の粒子), 6...二次デンドライトアームが整列した部分,
Claims (6)
- 【請求項1】 Mg:0.2重量%以下,Ti:0.1
〜0.3重量%,Si:11〜15重量%,Cu:2〜
3.5重量%,Fe:0.2〜1重量%,Mn:0.2
〜1重量%,Ni:1〜3重量%,P:0.001〜
0.015重量%,残部Alおよび不純物からなり,基
地α−Al相の結晶粒径dと二次デンドライトアーム間
隔DASとの比d/DASが25以下であり,初晶Si
が存在する過共晶組織を有することを特徴とするピスト
ン用アルミニウム鋳造合金。 - 【請求項2】 Mg:0.2重量%以下,Ti:0.1
〜0.3重量%,Si:11〜15重量%,Cu:2〜
3.5重量%,Fe:0.2〜1重量%,Mn:0.2
〜1重量%,Ni:1〜3重量%,P:0.001〜
0.015重量%,V:0.03〜0.3重量%,残部
Alおよび不純物からなり,基地α−Al相の結晶粒径
dと二次デンドライトアーム間隔DASとの比d/DA
Sが25以下であり,初晶Siが存在する過共晶組織を
有することを特徴とするピストン用アルミニウム鋳造合
金。 - 【請求項3】 Mg:0.5〜2重量%,Ti:0.1
〜0.3重量%,Si:11〜13重量%,Cu:2〜
3.5重量%,Fe:0〜0.7重量%,Mn:0〜
0.7重量%,Ni:0.5〜1.5重量%,P:0.
001〜0.015重量%,残部Alおよび不純物から
なり,基地α−Al相の結晶粒径dと二次デンドライト
アーム間隔DASとの比d/DASが25以下であり,
初晶Siが存在する過共晶組織を有することを特徴とす
るピストン用アルミニウム鋳造合金。 - 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載のピ
ストン用アルミニウム鋳造合金よりなるピストンを製造
する方法であって,Ti含有量が0.1重量%以下の合
金溶湯を準備し,該合金溶湯にAl−Ti合金を添加し
て上記合金溶湯内のTi含有量を増した後,該合金溶湯
を700℃以上の温度に保持すると共に上記Al−Ti
合金の添加後8時間以内に,鋳型内に注湯して上記ピス
トンを鋳造することを特徴とするピストンの製造方法。 - 【請求項5】 請求項4において,上記合金溶湯にAl
−Cu−P合金の形でPを添加して,過共晶凝固させる
と共に初晶Si粒径を50μm以下に微細化することを
特徴とするピストンの製造方法。 - 【請求項6】 請求項4又は5において,鋳造後の上記
ピストンを,温度470〜500℃で2〜12時間溶体
化加熱後,温水中に焼き入れした後,温度200〜25
0℃で2〜12時間時効処理を施すことを特徴とするピ
ストンの製造方法。
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