JP2002235141A - モリブデン線 - Google Patents

モリブデン線

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JP2002235141A
JP2002235141A JP2001030072A JP2001030072A JP2002235141A JP 2002235141 A JP2002235141 A JP 2002235141A JP 2001030072 A JP2001030072 A JP 2001030072A JP 2001030072 A JP2001030072 A JP 2001030072A JP 2002235141 A JP2002235141 A JP 2002235141A
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JP
Japan
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molybdenum
heat treatment
molybdenum wire
bending
temperature
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JP2001030072A
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English (en)
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Yoshiyo Nakano
佳代 中野
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高温でかつ広い温度範囲で熱処理を実施した後
においても加工性に優れ、さらに変形が少ないモリブデ
ン線を提供する。 【解決手段】50〜800ppmのコバルトと50〜8
00ppmのスズとを含有し、残部実質的にモリブデン
から成り、線径が0.05mm以上で、かつ温度120
0〜1700℃の範囲で5分間熱処理した後におけるワ
ーキングレンジが15%以上であることを特徴とするモ
リブデン線である。また、上記ワーキングレンジが50
%以下であることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はモリブデン線に係
り、特に高温でかつ広い温度範囲で熱処理を実施した後
においても加工性に優れ、さらに変形が少ないモリブデ
ン線に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から照明および電子機器用のアンカ
ー,サポート,コイル用マンドレル,炉用ヒータ,グリ
ッド,放電灯用アウタリード,ガラス封着部材などの構
成材として種々のモリブデン線が使用されている。特に
コイル用マンドレルや電子管用グリッドなどのように、
モリブデン線をさらに二次加工して形成する部品用途に
ついては、使用するモリブデン線に高い加工性が要求さ
れている。
【0003】上記のようなモリブデン線は一般に下記の
ような製造方法により製造されている。すなわち、モリ
ブデン酸アンモニウム塩または三酸化モリブデンを水素
ガスなどの還元雰囲気中で還元してモリブデン酸化物と
し、さらに水素ガスなどの還元雰囲気中で還元して金属
モリブデン粉末を得る。さらに得られた金属モリブデン
粉末を所定形状に加工成形後、水素中で焼結して調製し
たモリブデン焼結体を加熱した状態で転打加工と伸線加
工と再結晶化熱処理とを繰り返すことにより、所定線径
を有するモリブデン線を製造している。
【0004】またモリブデン線の最終用途において要求
される特性に応じて、原料粉である酸化モリブデン粉末
または金属モリブデン粉末にドープ剤としてけい素(S
i),カリウム(K),アルミニウム(Al)などの異
種元素を微量に添加する場合もある。特に伸びや折り曲
げ特性を改善するためにけい素(Si)やカリウム
(K)などの元素を添加することが広く実施されてい
る。ドープモリブデン線は、再結晶温度および高温強度
が高く熱処理後の延性に優れている。
【0005】上記ドープ剤の添加方法としては、ドープ
剤の水溶液または粉末を酸化モリブデン粉末、金属モリ
ブデン粉末、またはモリブデン酸アンモニウム塩溶液に
添加することにより、ドープ剤を均一に分散せしめ、モ
リブデン線の特性の安定化を図る方法がある。特に、ド
ープ剤をさらに均一に分散させるために、アンモニウム
塩を析出させる前段階のモリブデンのアンモニア溶解液
中にドープ剤を添加する方法も用いられている。
【0006】こうして調製されたモリブデン線は、タン
グステンフィラメントのコイルを成形するためのマンド
レル(芯金),フィラメント支持用アンカー,電子管用
グリッドなどの構成材として使用される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
金属モリブデン線を上記フィラメント成形用マンドレル
や電子管用グリッドなどに加工する場合に、曲げ加工や
高速での加工時にモリブデン線の断線や折れが発生し易
く、製造効率が低下するとともに製造設備の保守管理が
煩雑になる問題点があった。
【0008】また、フィラメントとしての二次コイルを
成形するためのマンドレルのように、一次コイルを成形
後に1300〜1600℃の高温熱処理が施された後に
再び加工される場合においては、熱処理後の強度および
加工性が低下する問題もあった。また二次加工での歪み
が大きい場合には、熱処理後にコイル形状が変化し、所
定の特性が得られないという弊害もあった。
【0009】一方、けい素(Si)やカリウム(K)な
どのドープ剤を添加したモリブデン線においては、伸び
や折り曲げ特性が比較的に良好であるため、二次加工で
の断線や折れの発生は少ないが、歪みが大きくなる欠点
があり、熱処理後におけるコイル形状が変化し、十分な
特性を発揮し得ない問題点があった。
【0010】上記の問題点を解消するためには、引張強
さに対する降伏強さの比(ワーキングレンジ)が高く、
かつ熱処理後においても伸びおよび折り曲げ回数が高い
値を示すモリブデン線を実現することが技術上の課題に
なっている。
【0011】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであり、高温でかつ広い温度範囲で熱処理を実
施した後においても加工性に優れ、さらに変形が少ない
モリブデン線を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本願発明者は、モリブデン線の特性および製造工程を
改善するための方策を種々検討した。その結果、特にモ
リブデン母材中にドープ剤を均一に固溶させたときに、
特性が優れたモリブデン線が得られることが判明した。
本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0013】すなわち、本願第1の発明に係るモリブデ
ン線は、50〜800ppm(質量比:以下同様)、の
コバルトと50〜800ppmのスズとを含有し、残部
実質的にモリブデンから成り、線径が0.05mm以上
で、かつ温度1200〜1700℃の範囲で5分間熱処
理した後におけるワーキングレンジが15%以上である
ことを特徴とする。
【0014】また、上記モリブデン線において、線径が
0.15mm以上であることが好ましい。さらに、前記
ワーキングレンジが50%以下であることが好ましい。
【0015】さらに、本願第2の発明に係るモリブデン
線は、50〜800ppmのコバルトと50〜800p
pmのスズとを含有し、残部実質的にモリブデンから成
り、線径が0.05mm以上で、かつ温度1200〜1
700℃の範囲で5分間熱処理した後における伸びが2
0〜40%であることを特徴とする。
【0016】また、本願第3の発明に係るモリブデン線
は、50〜800ppmのコバルトと50〜800pp
mのスズとを含有し、残部実質的にモリブデンから成
り、線径が0.05mm以上で、かつ1200℃未満の
温度で5分間熱処理した後の折り曲げ回数が10回以上
であることを特徴とする。
【0017】さらに、本願第4の発明に係るモリブデン
線は、50〜800ppmのコバルトと50〜800p
pmのスズとを含有し、残部実質的にモリブデンから成
り、線径が0.05mm以上で、かつ温度1300〜1
700℃の範囲で5分間熱処理した後の折り曲げ回数が
1回以上であることを特徴とする。
【0018】また、上記各発明に係るモリブデン線にお
いて、下記の特性、すなわち、温度1200〜1700
℃の範囲で5分間熱処理した後における伸びが20〜4
0%であること、1200℃未満の温度で5分間熱処理
した後の折り曲げ回数が10回以上であること、および
1200℃未満の温度で5分間熱処理した後の折り曲げ
回数が10回以上であること、の少なくとも1種の特性
を備えるように構成することもできる。
【0019】ここで、本発明において規定されるモリブ
デン線の折り曲げ回数は下記の手順で測定される。すな
わち、図1に示すように、半径0.3mmに面取り加工
した角部を有する固定部にモリブデン線2の一端を挿入
して挟持固定し、上記角部に当接したモリブデン線部位
を屈曲点としてモリブデン線2の自由端を180度の折
り曲げ角度を以って繰り返して折り曲げたときに、モリ
ブデン線2が破断するまでの折り曲げ回数として測定さ
れる。
【0020】本発明において、コバルト(Co)および
スズ(Sn)は、モリブデン線の熱処理後における機械
的性質を安定化せしめ、ワーキングレンジを改善するド
ープ剤としてそれぞれ50〜800ppmの範囲で含有
される。このCoまたはSnの含有量が50ppm未満
の場合にはドープ効果が不十分であり、熱処理後のモリ
ブデン線の強度および延性を高めることが困難である。
一方、含有量がそれぞれ800ppmを超えるように過
剰となると、モリブデン線の伸び特性が低下し、高温度
での熱処理後における折り曲げ回数が小さくなり加工性
も劣化し、変形も起こり易くなる。
【0021】また、ワーキングレンジは、日本工業規格
(JIS H 4481)にも例示されているように、
引張試験に供した材料の引張強さに対する降伏荷重また
は0.2%の永久伸びを起こす荷重の割合(%)として
定義されている。本発明に係るモリブデン線において、
上記ワーキングレンジは15%以上と規定する。上記ワ
ーキングレンジが15%未満と過少な場合には、モリブ
デン線を二次加工する際の加工性が低下し、破断や割れ
が発生し易い。一方、ワーキングレンジが50%を超え
るようなモリブデン線は現時点では、製造条件を変えて
も製造することが困難である。
【0022】本発明のモリブデン線の線径は、0.05
mm以上、さらには0.15mm以上を対象とする。
【0023】また本発明のモリブデン線の伸びは、日本
工業規格(JIS H 4481)にも規定されている
ように、引張速度を0.3〜0.8mm/sに設定する
とともに、試験温度を20±5℃に設定した定速ひずみ
引張試験機を使用して引張試験を実施した際の材料の伸
びとして測定される。
【0024】本願第2の発明に係るモリブデン線におい
て、その加工性および耐変形性を共に満足するために、
1200〜1700℃の温度で5分間熱処理した後のモ
リブデン線の伸びが20〜40%であることが必要であ
る。上記伸びが20%未満であると、モリブデン線の二
次加工性が低下してしまう。一方、伸びが40%を超え
るように過大になると、変形の発生量が増加し、所定の
寸法精度を有する機器部品を製造することが困難にな
る。
【0025】本願第3および第4の発明に係るモリブデ
ン線においては、熱処理後における耐久性を表わす指標
として折り曲げ回数を規定している。この折り曲げ回数
は各温度条件で加熱処理したモリブデン線について、図
1に示す方法で測定できる。すなわち、半径0.3mm
に面取り加工した角部を有する固定部にモリブデン線2
の一端を挿入して挟持固定し、上記角部に当接したモリ
ブデン線の部位を屈曲点としてモリブデン線2の自由端
を180度の折り曲げ角度を以って繰り返して、交互に
折り曲げたときに、モリブデン線2が破断するまでの折
り曲げ回数として測定される。なお、1回目の折り曲げ
操作時に破断した場合は、折り曲げ回数は0回となる。
【0026】そして、水素炉中で1200℃未満の温度
で5分間熱処理した後のモリブデン線の折り曲げ回数が
10回以上であることが必要である。10回未満の折り
曲げ回数では実用上の耐久性が得られないからである。
【0027】また、第4の発明に係るモリブデン線にお
いて、1300〜1700℃の温度で5分間熱処理した
後のモリブデン線の折り曲げ回数は1回以上であること
が必要である。初回の折り曲げ操作で破断してしまうモ
リブデン線では、高温度の加熱を要する二次加工後に十
分な耐久性が得られないからである。
【0028】本発明に係るモリブデン線は、例えば下記
の手順によって製造される。すなわち、モリブデン酸ア
ンモニウム塩または三酸化モリブデン(MoO)を水
素中で還元して二酸化モリブデン(MoOx,但しX=
2〜2.75)粉末を調製し、この二酸化モリブデン粉
末にドープ剤としてのコバルト塩溶液とスズ単体および
化合物の微細粉末または水溶液とを、焼結体に含まれる
Coが50〜800ppmでSnが50〜800ppm
となるように添加して原料混合体を調製し、撹拌しなが
ら加熱乾燥を実施した後に、得られた原料混合体を水素
中で還元してドープモリブデン粉末を生成せしめ、得ら
れたドープモリブデン粉末を成形・焼結した後に、転打
加工と再結晶化熱処理と伸線加工とを繰り返すことによ
り、所定線径のモリブデン線が形成される。
【0029】上記製造方法によれば、ドープ剤としての
CoおよびSnが均一に固溶したモリブデン焼結体が得
られる。このモリブデン焼結体を転打・伸線加工して得
られたモリブデン線の熱処理温度と引張試験特性との関
係から、1200〜1700℃の熱処理後におけるドー
プモリブデン線の降伏強さは純モリブデン線より小さく
なり、ワーキングレンジが増加すると同時に、高い伸び
特性および折り曲げ特性も得られることが判明してい
る。
【0030】なお上記ドープ剤としてのスズ化合物粉末
の粒子径は、焼結体中におけるスズ成分の均一分散性に
影響を及ぼし、モリブデン線の伸び特性,折り曲げ特
性,加工性,および耐変形性にも影響を与える因子であ
る。
【0031】本発明に係るモリブデン線によれば、高温
でかつ広い温度で熱処理を実施した後においても加工
性,耐久性に優れたモリブデン線を安定して提供するこ
とが可能になる。また、このモリブデン線を使用するこ
とにより、変形が少ないコイル用マンドレル,フィラメ
ント用アンカー,電子管用グリッドなどの各種の電子機
器部品を提供することが可能になる。
【0032】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施形態について、
以下の実施例および比較例に基づいて具体的に説明す
る。
【0033】実施例1〜6 ドープ剤としてのCoおよびSnの含有量が表2に示す
値となるように、規定量の硝酸コバルト溶液と、表2に
示す一次粒子径を有する二酸化スズ粉末と、水とを混練
装置に投入して十分に撹拌混合して各実施例用のドープ
剤原料をそれぞれ調製した。なお上記混錬装置は原料を
撹拌しながら加熱できるようにヒータを付設したものを
採用した。
【0034】各ドープ剤原料を調製した混練装置に、二
酸化モリブデン粉末を規定量投入し、温度120〜20
0℃で加熱しながら均一に撹拌した後に乾燥して、ドー
プした二酸化モリブデン粉末をそれぞれ調製した。次に
ドープした各二酸化モリブデン粉末を水素雰囲気中で8
00〜1100℃に加熱して、それぞれ各実施例用のド
ープモリブデン粉末を得た。
【0035】次に各ドープモリブデン粉末を150〜2
00MPaの成形圧力で加圧して成形体とした後に、水
素雰囲気中で温度1800℃で焼結して、それぞれモリ
ブデン焼結体を調製した。続いて、この焼結体に対して
転打加工および伸線加工を実施し、適宜、1100〜1
600℃の温度範囲で再結晶化熱処理を実施することに
より、線径が0.2mmである実施例1〜6に係るモリ
ブデン線を多数調製した。
【0036】比較例1 一方、ドープ剤を全く添加しない点以外は実施例1と同
様に処理して、線径が0.2mmである比較例1に係る
モリブデン線を調製した。
【0037】比較例2 ドープ剤としてCoおよびSnを添加せずにSiとKと
を合計で200ppmとなるように添加した点以外は実
施例1と同様に処理して線径が0.2mmである比較例
2に係るモリブデン線を調製した。
【0038】比較例3 ドープ剤としてCoおよびSn成分の含有率が、表2に
示すように、それぞれ1500ppmとなるように過剰
に添加した点以外は、実施例1と同様に処理して線径が
0.2mmである比較例3に係るモリブデン線を調製し
た。
【0039】上記のように調製した各実施例および比較
例に係る線径0.2mmのモリブデン線について、温度
800〜1700℃の範囲で熱処理した後のワーキング
レンジ,伸び,折り曲げ回数を測定するとともに、マン
ドレル用途での加工性および変形の発生の有無について
調査した。
【0040】上記ワーキングレンジ,伸び,折り曲げ回
数は、各モリブデン線を800℃から100℃おきに1
700℃までの温度で熱処理したモリブデン線について
それぞれ測定した。また折り曲げ回数は、前記のよう
に、図1に示すような測定治具1を用いて測定した。す
なわち、半径0.3mmに曲面状に面取り加工した角部
を有する治具1の固定部にモリブデン線2の一端(固定
端)を挿入して挟持固定し、上記角部に当接したモリブ
デン線の部位を屈曲点としてモリブデン線2の自由端を
180度の折り曲げ角度を以って繰り返して、交互に折
り曲げたときに、モリブデン線2が破断するまでの折り
曲げ回数を測定した。
【0041】また、マンドレル用途での加工性は、Wフ
ィラメント用二次コイルを作成する際の一次マンドレル
としてモリブデン線を使用した場合に、一次コイルの熱
処理後における加工で50本のモリブデン線全てに折れ
が発生しないときには○と評価する一方、少なくとも1
本のモリブデン線に折れが発生したときには×と評価し
た。また、上記マンドレル用途に使用した場合に、50
本のモリブデン線の少なくとも1本のモリブデン線の変
形によってコイルの変形が生じた場合には×と評価する
一方、変形が生じない場合には○と評価した。
【0042】なお、前記ワーキングレンジ,伸びおよび
各熱処理後の折り曲げ回数については、実用上の要求特
性から下記表1に示す判定基準によって適性(○)また
は不適性(×)を評価した。
【0043】
【表1】
【0044】各実施例および比較例に係るモリブデン線
の組成および特性値を含めて、前記ワーキングレンジ,
伸び,折り曲げ回数,加工性,耐変形性についての測定
・評価結果を下記表2に示す。なお、各モリブデン線の
総合評価については、上記ワーキングレンジ,伸び,折
り曲げ回数,加工性,耐変形性の全ての特性を満足する
場合には◎と評価した。また、高温度処理後の折り曲げ
回数、加工性、耐変形性のいずれかにやや難点があって
も実用上問題とならない場合は○と評価した。さらに、
ワーキングレンジ,伸び,高温度処理後の折り曲げ回
数、加工性,耐変形性の基本特性のうちの少なくとも3
個以上の特性が未達成であり、実用に耐えない場合には
×と評価した。
【0045】
【表2】
【0046】上記表2に示す結果から明らかなように、
ドープ剤としてのCo成分およびSn成分を均一に含有
するモリブデン焼結体から調製された実施例1〜4に係
るモリブデン線においては、いずれもワーキングレンジ
および伸びが大きく優れた加工性を有することが判明し
た。また各処理後における折り曲げ回数も大きく、優れ
た耐久性を有し、またマンドレル用途で使用した場合の
熱処理後の加工性も良好であり、変形が少ない部品が得
られることが確認できた。
【0047】しかしながら、全実施例のモリブデン線の
うち、ドープ剤としての酸化スズ粉末の一次粒子径を粗
大にした実施例5〜6に係るモリブデン線においては、
伸び特性がやや低下し、高温度での熱処理後の折り曲げ
回数で規定される耐久性が低下する傾向が判明した。
【0048】一方、ドープ剤を含有していない比較例1
のモリブデン線および従来のSi,Kから成るドープ剤
を含有する比較例2のモリブデン線では、ワーキングレ
ンジおよび伸びが小さく、耐久性および加工性が不十分
であることが確認できた。
【0049】また、ドープ剤としてのCo成分およびS
n成分を過剰に添加した比較例3のモリブデン線におい
ては、伸びがやや低下する傾向があり、高温度熱処理後
の折り曲げ特性が低下し、加工性も低下することが判明
した。
【0050】次に本発明に係るモリブデン線の製造方法
において、ドープ剤を均一かつ正確に含有させることが
可能となる効果について、以下の実施例に基づいて説明
する。
【0051】実施例7 ドープモリブデン粉末中に含有されるCo,Sn成分の
含有量がそれぞれ200ppmとなるように、モリブデ
ン酸アンモニウム溶解液に、ドープ剤としての塩化コバ
ルト溶液と強酸性のグリコールスズ溶液とを添加し、常
法に従って均一に撹拌混合した後に水素雰囲気中で還元
処理して実施例7のドープモリブデン粉末を50試料調
製した。
【0052】前記実施例2および実施例7に係るドープ
モリブデン粉末試料に含まれるドープ剤(Co,Sn)
の含有量の平均値および標準偏差を算出して以下の結果
を得た。すなわち、モリブデンアンモニウム溶解液にド
ープ剤を添加した実施例7におけるCo含有率の平均値
は231ppmであり、その標準偏差は44である一
方、Sn含有率の平均値は190ppmであり、その標
準偏差は25であった。これに対して、二酸化モリブデ
ン粉末にドープ剤を添加した実施例2におけるCo含有
率の平均値は201ppmであり、その標準偏差は7で
ある一方、Sn含有率の平均値は194ppmであり、
その標準偏差は14であった。
【0053】上記の結果から明らかなように、二酸化モ
リブデン粉末に硝酸コバルト溶液と二酸化スズ粉末とを
添加した実施例2の場合には、ドープ剤の含有量は、ほ
ぼ目標値に近く、そのばらつきを示す標準偏差も極めて
小さく、ドープ剤の添加精度が高くできた。
【0054】また、実施例2のように、酸化モリブデン
粉末にドープ剤としての硝酸コバルト溶液と微細な二酸
化スズ粉末とを添加した場合には、添加したドープ剤の
ほぼ全量が原料混合粉中に含有されることになるため、
ドープ剤としてのCo、Sn成分の含有率の制御が極め
て容易であり、かつ正確になり、ばらつきが少ない特性
値を有するモリブデン線が安定して得られるという効果
も奏する。
【0055】
【発明の効果】以上説明の通り、本発明に係るモリブデ
ン線によれば、高温でかつ広い温度範囲で熱処理を実施
した後においても加工性,耐久性に優れたモリブデン線
を提供することが可能になる。また、このモリブデン線
を使用することにより、変形が少ないコイル用マンドレ
ル,フィラメント用アンカー,電子管用グリッドなどの
各種の電子機器部品を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るモリブデン線の折り曲げ回数特性
を測定する方法を示す断面図。
【符号の説明】
1 治具 2 モリブデン線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 691 C22F 1/00 691C 1/18 1/18 C

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 50〜800ppmのコバルトと50〜
    800ppmのスズとを含有し、残部実質的にモリブデ
    ンから成り、線径が0.05mm以上で、かつ温度12
    00〜1700℃の範囲で5分間熱処理した後における
    ワーキングレンジが15%以上であることを特徴とする
    モリブデン線。
  2. 【請求項2】 前記線径が0.15mm以上であること
    を特徴とする請求項1記載のモリブデン線。
  3. 【請求項3】 前記ワーキングレンジが50%以下であ
    ることを特徴とする請求項1記載のモリブデン線。
  4. 【請求項4】 50〜800ppmのコバルトと50〜
    800ppmのスズとを含有し、残部実質的にモリブデ
    ンから成り、線径が0.05mm以上で、かつ温度12
    00〜1700℃の範囲で5分間熱処理した後における
    伸びが20〜40%であることを特徴とするモリブデン
    線。
  5. 【請求項5】 50〜800ppmのコバルトと50〜
    800ppmのスズとを含有し、残部実質的にモリブデ
    ンから成り、線径が0.05mm以上で、かつ1200
    ℃未満の温度で5分間熱処理した後の折り曲げ回数が1
    0回以上であることを特徴とするモリブデン線。
  6. 【請求項6】 50〜800ppmのコバルトと50〜
    800ppmのスズとを含有し、残部実質的にモリブデ
    ンから成り、線径が0.05mm以上で、かつ温度13
    00〜1700℃の範囲で5分間熱処理した後の折り曲
    げ回数が1回以上であることを特徴とするモリブデン
    線。
  7. 【請求項7】 温度1200〜1700℃の範囲で5分
    間熱処理した後における伸びが20〜40%であること
    を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のモリ
    ブデン線。
  8. 【請求項8】 1200℃未満の温度で5分間熱処理し
    た後の折り曲げ回数が10回以上であることを特徴とす
    る請求項1ないし3のいずれかに記載のモリブデン線。
  9. 【請求項9】 温度1300〜1700℃の範囲で5分
    間熱処理した後の折り曲げ回数が1回以上であることを
    特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のモリブ
    デン線。
  10. 【請求項10】 1200℃未満の温度で5分間熱処理
    した後の折り曲げ回数が10回以上であることを特徴と
    する請求項4記載のモリブデン線。
  11. 【請求項11】 温度1300〜1700℃の範囲で5
    分間熱処理した後の折り曲げ回数が1回以上であること
    を特徴とする請求項4記載のモリブデン線。
  12. 【請求項12】 温度1300〜1700℃の範囲で5
    分間熱処理した後の折り曲げ回数が1回以上であること
    を特徴とする請求項5記載のモリブデン線。
  13. 【請求項13】 温度1200〜1700℃の範囲で5
    分間熱処理した後における伸びが20〜40%であり、
    かつ1200℃未満の温度で5分間熱処理した後の折り
    曲げ回数が10回以上であることを特徴とする請求項1
    ないし3のいずれかに記載のモリブデン線。
  14. 【請求項14】 温度1200〜1700℃の範囲で5
    分間熱処理した後における伸びが20〜40%であり、
    かつ温度1300〜1700℃の範囲で5分間熱処理し
    た後の折り曲げ回数が1回以上であることを特徴とする
    請求項1ないし3のいずれかに記載のモリブデン線。
  15. 【請求項15】 1200℃未満の温度で5分間熱処理
    した後の折り曲げ回数が10回以上であり、かつ温度1
    300〜1700℃の範囲で5分間熱処理した後の折り
    曲げ回数が1回以上であることを特徴とする請求項4記
    載のモリブデン線。
  16. 【請求項16】 温度1200〜1700℃の範囲で5
    分間熱処理した後における伸びが20〜40%であり、
    かつ1200℃未満の温度で5分間熱処理した後の折り
    曲げ回数が10回以上であり、かつ1300〜1700
    ℃の範囲で5分間熱処理した後の折り曲げ回数が1回以
    上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか
    に記載のモリブデン線。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008144250A (ja) * 2006-12-13 2008-06-26 Allied Material Corp モリブデン材料とその製造方法
WO2012169258A1 (ja) * 2011-06-08 2012-12-13 株式会社東芝 モリブデン造粒粉の製造方法およびモリブデン造粒粉
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