JP2002228430A - めっき付着量または表面処理被膜の付着量の測定方法 - Google Patents

めっき付着量または表面処理被膜の付着量の測定方法

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JP2002228430A JP2001029249A JP2001029249A JP2002228430A JP 2002228430 A JP2002228430 A JP 2002228430A JP 2001029249 A JP2001029249 A JP 2001029249A JP 2001029249 A JP2001029249 A JP 2001029249A JP 2002228430 A JP2002228430 A JP 2002228430A
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Noriko Makiishi
規子 槙石
Akira Yamamoto
山本  公
Yukio Usui
幸夫 臼井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】コンプトン散乱強度を用いて、金属板と測定系
との距離の変動を補正して付着量を測定する方法を提供
し、もって金属板の製品特性に影響を与える表面処理被
膜付着量を厳密に制御する方法を提供する。 【解決手段】めっき上に表面処理被膜を有する、測定系
との距離が変動する金属板におけるめっき及び表面処理
被膜の付着量を蛍光X線強度を用いて測定する方法にお
いて、金属板に特性X線を照射して該特性X線のコンプ
トン散乱強度を測定し、予め求めておいた静止した金属
板と測定系との距離と該特性X線のコンプトン散乱強度
との関係を用いて、金属板と測定系との補正距離を求
め、該補正距離を用いて蛍光X線強度を補正するめっき
付着量または表面処理被膜の付着量の測定方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、めっき上に表面処
理被膜を有する金属板におけるめっき付着量及びめっき
上に施される化成処理被膜、有機無機複合被膜などの表
面処理被膜の被膜付着量の蛍光X線法によるオンライン
測定方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種めっきのめっき付着量及びめっき金
属板の上に施される化成処理被膜や有機無機複合被膜な
どの表面処理被膜の付着量は、めっき金属板の耐食性、
化成処理性、導電性などの特性に直接に影響を与える。
したがって製品品質管理上、これらの付着量は上記した
特性を発現すべく所定の範囲に厳密に管理されねばなら
ない。そのため、例えば亜鉛めっきの付着量はZnの蛍
光X線強度を、また、表面処理被膜の一例であるクロメ
ート被膜ではCrの蛍光X線強度をオンラインで測定
し、これらを亜鉛めっきの付着量やクロメート被膜の付
着量に換算することにより連続的な付着量測定およびそ
の結果に基づいた操業条件の制御がなされている。
【0003】このようなオンライン付着量測定における
問題の1つが金属板の位置の変動に伴う金属板と測定系
の距離の変動によっておこる蛍光X線の強度変動であ
る。高速に移動する金属板において、金属板と測定系の
距離の変動を皆無にすることは難しい。
【0004】上記の問題を解決するため、金属板と測定
系の距離の変動を測定し、測定結果により影響分を推定
して補正する方法がある。例としては光学的な方法で測
定した距離に関する信号を用いた方法がある。
【0005】しかし、金属板と測定系の距離を測定して
補正するには、蛍光X線測定による付着量測定位置と同
一箇所での金属板と測定系の距離測定が難しく、所望の
測定位置について付着量測定をすることは困難であると
いう問題があった。また、付着量測定のための蛍光X線
測定系とは全く異なる測定系を準備して信号の送受信を
することはシステム設計上煩雑であった。
【0006】一方、特公昭45−22391号公報に示
されるようなめっき成分の蛍光X線強度と母材からのX
線強度、例えばFeとの強度比を用いてめっき付着量を
算出することにより鋼板の位置変動の影響を軽減する方
法もある。しかしこの方法はZnめっき、あるいはZn
−Niめっきのような単層めっきでは可能であるが、め
っきの上にさらに金属元素等を含む表面処理被膜が存在
し、表面処理被膜付着量も含めて測定しなければならな
い場合は困難である。即ち上層の表面処理被膜の付着量
を算出する場合、表面処理被膜中に存在する元素の蛍光
X線強度と下地鋼板からのFeの蛍光X線強度との比を
用いることになるが、Feの蛍光X線強度は下地めっき
の付着量の影響を大きく受けるので、正確な値を得るこ
とはできない。また下地めっきの付着量測定においても
下地めっき成分の蛍光X線強度および下地鋼板からのF
e強度は表面処理被膜の組成や厚さの影響をそれぞれ受
けるため誤差が生じる。従って単層めっきで用いられて
いるような強度比から付着量を算出する方法も実用でな
かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記した従
来技術の問題点を解決し、めっき上に表面処理被膜を有
する金属板におけるめっき及び表面処理被膜の付着量を
精度よく測定することを可能ならしめることを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は以下の各発明を
提供する。 (1) めっき上に表面処理被膜を有する、測定系との
距離が変動する金属板におけるめっき及び表面処理被膜
の付着量を蛍光X線強度を用いて測定する方法におい
て、金属板に特性X線を照射して該特性X線のコンプト
ン散乱強度を測定し、予め求めておいた静止した金属板
と測定系との距離と該特性X線のコンプトン散乱強度と
の関係を用いて、金属板と測定系との補正距離を求め、
該補正距離を用いて蛍光X線強度を補正するめっき付着
量または表面処理被膜の付着量の測定方法。
【0009】(2) めっき上に表面処理被膜を有す
る、測定系との距離が変動する金属板におけるめっき及
び表面処理被膜の付着量を蛍光X線強度を用いて測定す
る方法において、金属板に特性X線を照射して、X線照
射領域内の2以上の異なる視野からのコンプトン散乱強
度を測定し、該複数のコンプトン散乱強度の測定値の関
係と、予め求めておいた静止した金属板と測定系の距離
と該複数のコンプトン散乱強度の関係とを用いて、金属
板と測定系との補正距離を求め、該補正距離を用いて蛍
光X線強度を補正するめっき付着量または表面処理被膜
の付着量の測定方法。 (3) 測定系との距離が変動する金属板にX線を照射
するX線管球と、照射されたX線からの蛍光X線を測定
する測定系と、X線照射領域からのコンプトン散乱強度
を測定するコンプトン散乱線測定用の1または2以上の
分光器とを有し、予め求めておいた静止した金属板と測
定系との距離と該特性X線のコンプトン散乱強度との関
係を用いて、金属板と測定系との補正距離を求め、該補
正距離を用いて蛍光X線強度を補正するめっき上に表面
処理被膜を有する金属板におけるめっき付着量または表
面処理被膜の付着量を測定する装置。 (4) 上記補正距離を用いて蛍光X線強度を補正する
のが、電子演算装置である上記(3)に記載の装置。
【0010】(5) 上記(1)ないし(4)のいずれ
かに記載の方法または装置の金属板に照射するX線が、
めっきに含有される金属のK吸収端より短い波長領域に
ある特性X線であるめっき付着量または表面処理被膜の
付着量の測定方法または装置。 (6) 上記表面処理被膜の厚さが、10μm以下であ
る上記のいずれかに記載のめっき付着量または表面処理
被膜の付着量の測定方法または装置。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明
する。本発明でいう「 めっき」 とは、下地となる製品の
表面に耐食性、美観、摺動加工性等の理由で付与され
る、下地と異なる金属元素からなる層のことである。鉄
鋼製品を例にとれば、亜鉛めっき、すずめっき、亜鉛ニ
ッケル合金めっきがある。 また、めっきは単一の相であ
る必要は無く、ある相の中に別の相が存在する状態のも
のも含み、2層以上の多層めっきも含む。また、本発明
でいう「表面処理被膜」 とは「めっき」 の上にさらに存
在する表面層であり、金属元素以外の金属化合物、有機
高分子等から主としてなる層であり、「めっき」と同様
の目的で付与されることもあれば、不可避的に存在する
場合もある。鉄鋼製品を例にとれば、めっきの表面に塗
装被膜を持つ塗装鋼板、めっきの表面に樹脂を持つラミ
ネート鋼板、めっきの表面にクロメート層を持つクロメ
ート処理めっき鋼板が挙げられる。
【0012】めっき及びめっき上の表面処理被膜の付着
量を蛍光X線分析法でオンライン測定を行う場合、X線
管球から一次X線を高速で移動する金属板表面に照射
し、金属板から発生するめっきおよび表面処理被膜に含
有される元素の蛍光X線強度を測定する。例えば下地め
っきにZnめっき、上層に金属元素を含む樹脂からなる
表面処理被膜がある場合、Znの蛍光X線強度および上
層の表面処理被膜中の金属元素の蛍光X線強度を測定す
る。測定にあたっては、測定対象とする蛍光X線の各波
長に適した結晶検出器等を適切な光学的配置に組上げた
分光器をX線管球の周囲に配置して測定を行う。そして
予め化学分析等他の手法によって求めておいた各めっき
または表面処理被膜の付着量とそれぞれの蛍光X線強度
の関係を用いて、測定強度からそれぞれの付着量を算出
する。このとき金属板と測定系との距離が変動すると強
度が影響を受けてしまうのである。
【0013】本発明者は、亜鉛めっき及びめっき上層に
表面処理被膜を有する鋼板の製造ラインにおける鋼板と
測定系との距離の変動について調査し、前記変動が大き
い場合には平均的な鋼板の位置から、板厚方向に±3m
m程度変動することを見出した。さらに、板厚方向±3
mmの変動をオフラインにおいて再現して付着量測定実
験を行い、前記変動が蛍光X線による付着量測定結果に
及ぼす影響を調査した。試料は付着量20g/m2 のZ
nめっきの上に1g/m2 の樹脂からなる表面処理被膜
を塗布した鋼板を試料として用いた。なお、表面処理被
膜は5質量%のマンガン酸化物を含み、マンガンの蛍光
X線を表面処理被膜付着量測定に用いた。その結果、亜
鉛めっき付着量に対する付着量の変動は±4g/m2
及び、また表面処理被膜付着量に対するそれは±0.3
g/m2 にも達したのである。
【0014】これらの付着量の変動に関する許容値は一
概には決められないが、付着量増大によるコスト増大や
品質への悪影響(例としては表面処理被膜付着量増大に
よる溶接性悪化)を考えれば付着量測定精度向上に関す
る要求はつきることがないのである。本発明者らは、前
記の調査結果から、金属板と測定系との距離の変動を補
正する必要性を強く認識し、板厚方向±5mmの変動に
おいても、亜鉛めっき付着量に対する付着量の変動は±
0.5g/m2 程度、また表面処理被膜付着量に対する
それは±0.1g/m2 程度であることを目標にして、
さらに検討を重ねて発明を完成させたのである。
【0015】さて、X線が金属板に照射されると、金属
板からは各元素に特有な波長を有する特性X線ととも
に、散乱X線も大量に発生する。散乱X線は弾性散乱で
あるレーリー散乱と非弾性散乱であるコンプトン散乱に
大別される。コンプトン散乱とは、試料に照射されたX
線が試料を構成する原子の電子に運動エネルギーを与
え、その分だけエネルギーを失うことによって波長が長
く(エネルギーは低く)なって散乱される現象であり、
この散乱は、入射波長が短い程、また試料を構成する元
素の原子番号が低いほど強く現れる。またレーリー散乱
に比べて下地金属板の集合組織の影響を受けにくいとい
う特徴がある。
【0016】このようなコンプトン散乱は、従来のオン
ライン分析においてはCやOの軽元素で構成されかつ数
十μm以上の厚さを有する有機系の表面処理被膜の付着
量測定に用いられることが主であった。例えば特開昭5
7−197410号公報ではコンプトン散乱線を用いて
高分子膜の付着量を測定する方法が開示されている。前
記公報に記載の発明はコンプトン散乱強度が原子番号が
低いほど強く現れるという特徴を利用したもので、軽元
素であるCやOが主成分で、かつ厚さが数十μm(塩化
ビニールで100g/m2 以上)と大きいため、表面処
理被膜付着量の変動をコンプトン散乱強度の変動として
捕らえることが可能なことを利用したものである。
【0017】一方、本発明で対象としている表面処理被
膜は10μm以下であり、表面処理被膜付着量の変動を
コンプトン散乱強度の変動として捕らえることが出来な
い。しかし、本発明者らは表面処理被膜の厚さが10μ
m以下と薄い場合には表面処理被膜の厚さの変化にもか
かわらずコンプトン散乱強度が一定であることに逆に注
目し、コンプトン散乱強度を金属板と測定系との距離の
変動補正に用い、付着量測定自体は蛍光X線測定を用い
ることを考えた。前記の散乱強度が一定であることの検
証例については後述する。
【0018】まず、コンプトン散乱強度に与える金属板
と測定系との距離の変動の影響を図面を用いて説明す
る。X線管球から照射される一次X線強度は距離の二乗
に反比例して減衰するため、金属板と測定系の距離が遠
くなれば強度は減少する。金属板の位置が変動しない場
合には、X線管球および検出系を検出強度が最大となる
ような位置に配置できる。図1にこのような配置の1例
を示す。図1に示す装置では、金属板10の表面から上
方の垂直位置にX線管球5を配置し、一方の斜方位置に
付着量測定系である付着量測定用分光器3を配置し、X
線管球5によって照射されたX線によって金属板表面の
めっきまたは表面処理被膜中の特定元素が発する蛍光X
線強度を測定する。他方の斜方位置にコンプトン散乱強
度測定用の分光器1を配置し、同様に特定元素が発する
コンプトン散乱強度を測定する。
【0019】図3(b)では、金属板の位置がその厚さ
方向に変動するようすを細かい点線:下方変動位置10
2、実線:基準位置100、粗い点線:上方変動位置1
01で示してある。金属板の特定位置を示す実線を基準
位置100と呼ぶことにする。今、金属板が基準位置1
00から、金属板表面に垂直な方向に数mm程度、測定
系(X線管球や検出系等の測定手段)から遠ざかった下
方位置102にある場合を考える。X線は、通常中心部
が強度の高い分布を持って照射される。図1および図3
(b)に示す例では、一次X線を金属板に対して垂直入
射としているので、金属板上での一次X線の強度の中心
位置は変化せず、金属板とX線管球が遠ざかった分だけ
下方位置102に照射されるX線の強度分布は同心円状
に広がる。一次X線の強度分布は、例えば、図3(a)
の模式的なグラフのように示される。一方、付着量測定
系は金属板の表面に対して、測定方向を垂直の配置には
出来ない。何故ならば、X線管球5の存在により、付着
量測定系を配置する場所を確保することが困難だからで
ある。図1に示す金属板10と付着量測定系用分光器3
の配置の場合、金属板が測定系から遠ざかると、付着量
測定系が検出するコンプトン散乱の発生範囲(視野)
は、照射される一次X線の照射範囲の変動のように最大
強度の位置を中心とした同心円状の変動だけでなく、金
属板の表面方向の移動が加わる。例えば、図3(b)に
示す分光器1の視野11は金属板10が下方に移動する
に従い、視野がコンプトン散乱発生範囲の外に出てしま
うのである。すなわち、照射X線の分布の変動に比較し
て、検出されるコンプトン散乱強度の分布は、金属板の
位置変動に対して、敏感に変化するのである。
【0020】本発明は、前記のように金属板の位置変動
に、敏感なコンプトン散乱強度の変化を測定して、これ
を金属板と測定系の距離に換算して、特定の強度が測定
される元素の蛍光X線強度の距離の変動を捕らえようと
するものである。さらに、前記距離の測定結果によって
オンライン測定されるめっき付着量またはめっき上の表
面処理被膜の付着量を精度良く得ようとするというもの
である。
【0021】ここで、上記の発明をめっき及び表面処理
被膜の付着量測定を実施するにあたり、コンプトン散乱
線の強度に対するめっき及びめっき上の表面処理被膜の
付着量の変動の影響が、金属板と測定系との距離の変動
の測定の際に無視できることを検証しておく必要があ
る。検証例を以下に示す。検証例では付着量20g/m
2 前後のZnめっきの上に1μm前後の樹脂からなる表
面処理被膜を塗付した金属板を用い、コンプトン散乱強
度を測定する特性X線としてMoKαを用いた(以下で
は、単にMoKαと称する)。前記したように、本発明
者等は、表面処理被膜が10μm以下と薄い場合には、
表面処理被膜の厚さの変化にもかかわらずコンプトン散
乱強度が一定であることを金属板の位置測定に利用でき
ると述べた。検証例では、表面処理被膜である樹脂層の
付着量が±0.5μm変化してもコンプトン散乱強度の
変化は0.13%に過ぎなかった。また下地めっきのZ
nの場合も付着量が±5g/m2 変化した場合もコンプ
トン散乱強度の変化はやはり0.28%であった。0.
3%程度の変動はX線分析の実用的な精度0.1〜0.
2%とほぼ同等な値であり、また測定対象である金属板
の数mm程度に及ぶ位置変動に対する強度変動は数%以
上あることに比べても十分小さく、実用に供するに十分
な精度を保てるのである。
【0022】本発明の方法では、めっき金属板のめっき
に含有される金属のK吸収端より短い波長領域にあるX
線を金属板に照射することが好ましい。例えば、めっき
層がZnである場合、ZnのK吸収端よりも短い波長領
域にあるX線を用いるとよい。例えば、前記の検証例に
用いたMoKαが好ましい。逆にZnのK吸収端よりも
長く、FeのK吸収端より短い波長領域にあるWLαは
好ましくない。発明者の検証では、Znめっき上に表面
処理被膜をもつ金属板の位置変動測定に、WLαを用い
た場合には、前記した金属板の位置の測定の指標となる
コンプトン散乱強度の変化は、めっき層の付着量変動±
5g/m2 に対しては4.5%と大きく変化した。
【0023】その理由を以下に説明する。MoKαにお
いて、コンプトン散乱強度の変化が小さい理由は、Mo
Kαに対するFeによる吸収挙動及びZnによる吸収挙
動の差が小さいことである。以下にさらに詳細な説明を
する。コンプトン散乱線は、一次X線のエネルギーが少
し小さくなったエネルギーをもつX線であり、めっき層
からもまたその下の金属板からも発生する。検出される
コンプトン散乱線強度は、めっき層による入射X線の吸
収および金属板で発生したコンプトン散乱線の吸収に影
響される。めっき金属板の場合には、めっきによる吸収
挙動と下地金属板による吸収挙動が異なるため、めっき
付着量の大小により、コンプトン散乱線の強度は変化す
る。逆に、検出されるめっき成分(例:Zn)による吸
収挙動および金属板(例:Fe)による吸収挙動の差が
小さいほど、めっきの付着量の変動によるコンプトン散
乱線の強度の変化は小さくなり、本発明に用いる入射X
線に好適となるのである。Znめっき鋼板の場合には、
MoKαに対するFe及びZnの吸収挙動の差が十分小
さいため、本発明の実施に好適なのである。また、Mo
Kαは表面処理被膜の付着量の変化に対しても、コンプ
トン散乱強度の変化が小さかった。その理由としては、
MoKαは比較的波長が短いために、照射X線が深く届
き、表層の表面処理被膜の付着量の差の影響を受けにく
いことが考えられる。 以上のような効果を与える、本
発明に好適なコンプトン散乱線としては、めっきの主要
成分(例:Zn)のK吸収端よりも短い波長を選択する
ことが望ましい。
【0024】さらに検出系と金属板との距離測定をより
精度よく行える方法として、次の方法が好ましい。すな
わち、めっき上に表面処理被膜を有する、測定系との距
離が変動する金属板におけるめっき及び表面処理被膜の
付着量を蛍光X線強度を用いて測定する方法において、
金属板に特性X線を照射して、X線照射領域内の2以上
の異なる視野からのコンプトン散乱強度を測定し、該複
数のコンプトン散乱強度の測定値との関係と、予め求め
ておいた静止した金属板と該複数のコンプトン散乱強度
との関係とを用いて、金属板と測定系との補正距離を求
め、該補正距離を用いて蛍光X線強度を補正するめっき
付着量または表面処理被膜の付着量の測定方法である。
【0025】具体的な1例を示すと、図2に示すよう
に、金属板表面に異なる視野をもつ2つのコンプトン散
乱強度検出器である分光器1、2を設置し、2つの検出
器で検出される検出強度の強度比を用いる方法である。
図3(b)は、一次X線照射領域のうち各検出器の視野
の違いから金属板の位置が変動した場合にどのような変
化が現れるかをモデル的に示している。分光器1の視野
11は金属板の位置が下がるほど強度が低く、分光器2
の視野12では反対に高くなる。従って、分光器1と分
光器2の検出強度比を用いれば、変化率も大きくなる
上、比を用いることで、個々の検出器の経時変化がキャ
ンセルされるという利点がある。なお、2つの分光器の
視野は一次X線照射領域の中心に対して対称的な位置
で、かつ位置変動にコンプトン散乱強度の変化が大きく
現れるような照射領域の端を含む領域に設定することが
望ましい。
【0026】以上説明した方法を実施する本発明の装置
としては、 測定系との距離が変動する金属板にX線を
照射するX線管球と、照射されたX線からの蛍光X線を
測定する装置と、一次X線照射領域からのコンプトン散
乱強度を測定するコンプトン散乱線測定用の1または2
以上の分光器とを有する装置であることが必要である。
また、さらに前述の、予め求めておく静止した金属板と
測定系との距離と該特性X線のコンプトン散乱強度との
関係を入力、記憶、演算処理できるできるデータ処理装
置や、補正距離を計算できる演算処理装置を備えていて
もよい。
【0027】前記の装置は、金属板にX線を照射するX
線管球が、めっきに含有される金属のK吸収端より短い
波長領域にある特性X線を発生できるX線管球であるこ
とが好ましい。さらに、前記の装置は、コンプトン散乱
線測定用の分光器が、一次X線照射領域内の異なる視野
からのコンプトン散乱強度を測定する2つ以上の分光器
であれば、尚好ましい。本発明は従来のめっき付着量測
定装置において、適切なX線管球を用い、コンプトン散
乱分光器を付け加え、データ処理ソフトを修正するだけ
で簡単に実用化できる手法である。
【0028】なお、本発明は、走行する金属板に対する
オンライン測定において効果は顕著であるが、いわゆる
切り板の測定や各種のバッチ測定に有効であることは言
うまでも無い。特に、金属板自体は静止していても、鋼
板厚さやめっき付着量の変動によってめっきや表面処理
被膜の測定系との距離が変動する場合にも正確な測定が
可能である。また、本発明は、金属板にとどまらず、め
っきおよびその表面に表面処理被膜を有する任意の形状
をもつ金属製品のめっき付着量および表面処理被膜の付
着量の測定に用いることができる。
【0029】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。ここでは、本
発明の金属板と測定系との距離の変動を補正する測定方
法を走行する有機樹脂表面処理被膜を有するZnめっき
鋼板に対するオンライン付着量測定法として適用した場
合(実施例)と、該鋼板と測定系との距離の変動を補正
しなかった場合(比較例)の付着量測定値に対して、前
記オンライン測定がなされた鋼板の特定位置を切り出し
てオフライン分析して得られた付着量測定値との差を求
め、双方の測定値を比較した。結果を表1に示す。な
お、ここでいうオフライン分析は、後述する真空型の蛍
光X線分析装置で実施するものであり、前述の実施例、
比較例のオンライン分析に対比して十分に真の付着量に
近い測定値が得られる。表1は本法による金属板と測定
系との距離の変動補正を用いた場合のオンライン測定値
と用いない場合のオンライン測定値について、それぞれ
オフライン測定値との差dを用いて次式による正確さσ
dをまとめて示したものである。
【数1】
【0030】なお、試料は表面処理被膜である樹脂に5
%のマンガン酸化物を含む有機樹脂表面処理被膜をもつ
付着量20g/m2 の亜鉛めっき鋼板を用いた。X線管
球にはMo管球を用い、鋼板に対して入射角90度で設
置した。 MoKαコンプトン散乱線を測定できる分光器
は取出し角70度で2組をそれぞれの視野が異なるよう
に設置した。また付着量測定のための蛍光X線測定用の
分光器も取出し角70度で設置した。測定1回の分析に
おける積算時間は10秒である。 オフライン分析には、
市販の真空型の長分散蛍光X線分析装置を用いた。上層
の有機樹脂からなる表面処理被膜は樹脂中に含まれる炭
素の蛍光X線強度を測定し、予め求めておいた炭素蛍光
X線強度と樹脂付着量との検量線を用いて表面処理被膜
付着量を定量した。表1に示すように、本発明による位
置変動補正を行った測定法の結果は未補正の場合に比べ
てσdの値で約1/4となり、付着量の測定精度向上に
格段の効果があることが確認できた。
【0031】
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、めっき付着量またはめ
っき上の表面処理被膜付着量の測定において、測定領域
と同一箇所を同時に測定可能なコンプトン散乱強度を用
いて、金属板と測定系との距離の変動を補正して付着量
を測定する方法を提供し、もってめっき付着量および・
または表面処理被膜の連続付着量測定が可能になり、鋼
板の製品特性に影響を与える表面処理被膜付着量の厳密
な制御ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の測定方法を実施する装置の光学系を
示す模式図である。
【図2】 本発明の測定方法を実施する別の場合の光学
系を説明する模式図である。
【図3】 (a)は、本発明における一次X線強度の金
属板横方向の位置に対する分布を示すグラフであり、
(b)は、コンプトン散乱強度の測定値が金属板の厚さ
方向(金属板の上下位置)の位置の変動によって変化す
ることを示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・分光器1 2・・・分光器2 3・・・付着量測定用分光器 5・・・X線管球 10・・・金属板 11・・・分光器1の視野 12・・・分光器2の視野 100・・・基準位置 101・・・上方変動位置 102・・・下方変動位置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 臼井 幸夫 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 2F067 AA27 BB18 DD02 FF13 HH04 HH12 JJ03 KK01 KK07 LL00 QQ01 RR24 RR29 2G055 AA02 AA05 AA07 BA20 CA05 CA07 CA09 CA11 CA13 CA18 CA30 EA08 FA02 FA04 FA10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】めっき上に表面処理被膜を有する、測定系
    との距離が変動する金属板におけるめっき及び表面処理
    被膜の付着量を蛍光X線強度を用いて測定する方法にお
    いて、金属板に特性X線を照射して該特性X線のコンプ
    トン散乱強度を測定し、予め求めておいた静止した金属
    板と測定系との距離と該特性X線のコンプトン散乱強度
    の関係を用いて、金属板と測定系との補正距離を求め、
    該補正距離を用いて蛍光X線強度を補正するめっき付着
    量または表面処理被膜の付着量の測定方法。
  2. 【請求項2】めっき上に表面処理被膜を有する、測定系
    との距離が変動する金属板におけるめっき及び表面処理
    被膜の付着量を蛍光X線強度を用いて測定する方法にお
    いて、金属板に特性X線を照射して、X線照射領域内の
    2以上の異なる視野からのコンプトン散乱強度を測定
    し、該複数のコンプトン散乱強度の測定値の関係と、予
    め求めておいた静止した金属板と測定系との距離と該複
    数のコンプトン散乱強度の関係とを用いて、金属板と測
    定系との補正距離を求め、該補正距離を用いて蛍光X線
    強度を補正するめっき付着量または表面処理被膜の付着
    量の測定方法。
  3. 【請求項3】前記金属板に照射するX線が、めっきに含
    有される金属のK吸収端より短い波長領域にある特性X
    線である請求項1または2に記載のめっき付着量または
    表面処理被膜の付着量の測定方法。
  4. 【請求項4】前記表面処理被膜の厚さが、10μm以下
    である請求項1ないし3のいずれかに記載のめっき付着
    量または表面処理被膜の付着量の測定方法。
  5. 【請求項5】測定系との距離が変動する金属板にX線を
    照射するX線管球と、照射されたX線により発生する蛍
    光X線を測定する測定系と、X線照射領域からのコンプ
    トン散乱強度を測定するコンプトン散乱線測定用の1ま
    たは2以上の分光器とを有し、予め求めておいた静止し
    た金属板と測定系との距離と該特性X線のコンプトン散
    乱強度との関係を用いて、金属板と測定系との補正距離
    を求め、該補正距離を用いて蛍光X線強度を補正するめ
    っき上に表面処理被膜を有する金属板におけるめっき付
    着量または表面処理被膜の付着量を測定する装置。
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