JP2002216786A - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池

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JP2002216786A
JP2002216786A JP2001014426A JP2001014426A JP2002216786A JP 2002216786 A JP2002216786 A JP 2002216786A JP 2001014426 A JP2001014426 A JP 2001014426A JP 2001014426 A JP2001014426 A JP 2001014426A JP 2002216786 A JP2002216786 A JP 2002216786A
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electrolyte fuel
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Kazushige Kono
一重 河野
Yuichi Kamo
友一 加茂
Hiroshi Yamauchi
博史 山内
Masanori Yoshikawa
正則 吉川
Yukio Saito
幸雄 斉藤
Toshihiro Uehara
利弘 上原
Yoshitaka Chiba
芳孝 千葉
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Hitachi Ltd
Proterial Ltd
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Hitachi Ltd
Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低コストの金属基板材料を主体とする導電性及
び耐食性に優れたセパレータを用いた低環境負荷電源に
実用可能な固体高分子型燃料電池を提供する。 【解決手段】固体高分子電解質膜とセパレータの間に電
極及びガス拡散層を備え、前記セパレータはガス流路
と、前記ガス拡散層に接する集電部とを有する固体高分
子型燃料電池において、前記セパレータは、金属基材表
面に黒鉛又は非晶質炭素材料を含む電気導電材と水に対
する臨界表面張力(γc)が30dyn/cm以下の樹脂を
含む撥水性導電層を形成している固体高分子型燃料電
池。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分散電源、電気自
動車用電源に用いられる固体高分子型燃料電池及びそれ
に用いるセパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】固体高分子型燃料電池は作動温度が10
0℃以下と低く、短時間で起動する。また、電池の作動
に伴って発生するNOx,SOx等のガスがほとんど無
く、騒音が少ない等の特徴がある。このため、低環境負
荷の発電装置として小型分散電源、電気自動車搭載電源
などへの応用が注目されている。
【0003】固体高分子型燃料電池は、他の燃料電池と
同様に固体高分子膜の燃料極側に水素等の燃料ガスを、
空気極側に空気等の酸化性ガスを流す構造と成ってい
る。
【0004】以下に従来の固体高分子型燃料電池の基本
構成を説明する。図2(A),(B)に単位セルの断面及び構
成を示す。高分子膜1はその両側に燃料極3a及び空気極
3bが配置され、それぞれガス拡散層4を介してセパレー
タ2により挟み込まれている。燃料極側のセパレータに
は燃料ガスの供給口8と燃料ガス排出口10が形成さ
れ、空気極側のセパレータ2には空気の供給口9と空気
の排出口11がそれぞれ形成されている。
【0005】セパレータ2には、それぞれのガスを導入
するためのガス流路(12,13)及びガス拡散層4と
接し電池の集電を行う集電部16が形成されている。単
位セルの端面のガスリークを防止するためにガスシール
材5を設置する。
【0006】また、図2に表示しないが発電時に発熱が
有るため、冷却水を循環させる冷却装置をセパレータ2
間に介在させる場合もある。 一般的に、燃料電池は図2
(B)に示す単位セルを、電力量に応じて複数個積層する
スタック構成で用いられる。
【0007】上述したように、固体高分子型燃料電池は
低環境負荷電源として期待されているが、発電コストが
高いため実用化にいたっておらず、コストの低減が必須
課題になっている。
【0008】特に、固体高分子膜、セパレータ材料のコ
スト高が一因となっている。固体高分子型燃料電池のセ
パレータには、1)導電性が良好である、2)接触抵抗
が低い、3)ガスの透過が無い、4)耐食性が高い 等
の多くの特性を充たすことが求められる。現在、セパレ
ータとして緻密化したグラファイト系材料を切削加工し
て用いているが、この材料はガスリークを防止するため
に緻密化する工程が必須となり、また材料がもろいため
加工が難しく燃料電池の価格上昇の原因となっていた。
【0009】固体高分子型燃料電池の空気極側は酸性度
がpH2‐3の酸性雰囲気であって、作動温度は80℃
付近である。このため、オーステナイト系ステンレスな
どの耐食性金属でも数千時間の運転で腐食され、基板金
属の接触抵抗が増加し電池の発電効率が低下する。
【0010】近年、セパレータの低コストを図る手段と
して、特開平8―180883号公報にはプレスやパン
チング加工により金属板を用いる手法が開示されてい
る。しかし金属板を用いる場合、金属の腐食により電池
の集電抵抗が増加し電池の効率が低下する。この対策と
して、特開平11―144744号公報、特開平11―
345618号公報には金属表面にカーボン系粒子を分
散して導電性保護膜を形成したセパレータの開示があ
る。しかし、導電性保護膜を形成したセパレータは長期
間(数千時間)の運転で導電性保護膜に存在するピンホ
ールより基板金属の腐食が発生し、電池の性能低下を誘
引する問題があった。
【0011】また、特開平11―162479号公報に
はステンレス鋼に貴金属皮膜を形成して腐食発生による
抵抗増加を抑制することの開示がある。しかし、高価な
貴金属を用いるため、返ってコスト高となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の緻密
化黒鉛セパレータに比較して低コストである金属基板材
料を主体とする導電性及び耐食性が高いセパレータ及び
それを用いた低環境負荷電源に実用可能な固体高分子型
燃料電池を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、種々の検討を行った結果、水に対する臨界表面張
力(γc)が30dyn/cm以下である撥水性物質を黒鉛及
び又は非晶質黒鉛からなる電子導電材と混合した撥水性
導電膜を金属基板の表面に形成することにより、導電性
及び耐食性が高い金属セパレータが得られることを見出
した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0014】(1) 固体高分子電解質膜とセパレータ
の間に電極及びガス拡散層を備え、前記セパレータはガ
ス流路と、前記ガス拡散層に接する集電部とを有する固
体高分子型燃料電池において、前記セパレータは、金属
基材表面に黒鉛又は非晶質炭素材料を含む電気導電材と
水に対する臨界表面張力(γc)が30dyn/cm以下の樹
脂を含む撥水性導電層を形成していることを特徴とする
固体高分子型燃料電池。
【0015】(2) 固体高分子電解質膜とセパレータ
と間に電極およびガス拡散層を備え、前記セパレータは
ガス流路と、前記ガス拡散層に接する集電部とを有する
固体高分子型燃料電池において、前記セパレータは、ガ
ス拡散層に接する集電部となる金属基材表面に黒鉛又は
非晶質炭素材料を含む電気導電材と水に対する臨界表面
張力(γc)が30dyn/cm以下である樹脂を含む撥水性
導電層を形成し、ガス拡散層に接しないガス流路部とな
る金属基材表面に水に対する臨界表面張力(γc)が3
0dyn/cm以下である樹脂含む撥水性導電層を形成してい
ることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【0016】前記の撥水性導電層はポリテトラフルオロ
エチレン,ポリ弗化ビニル又はポリ弗化ビニリデンのい
ずれかを含むことが好ましい。また、前記の撥水性電導
層中に含まれる前記電気導電材の総量は体積率で40〜
90%であることが好ましい。
【0017】また、前記の撥水性電導層の水に対する臨
界表面張力(γc)が17〜30dyn/cm以下であること
が好ましい。
【0018】(3) 固体高分子固体電解質膜とセパレ
ータの間に電極及びガス拡散層を備える固体高分子型燃
料電池用セパレータにおいて、前記セパレータは金属基
材の全表面又は集電部に、水に対する接触角が90度以
上である撥水性電導層を有することを特徴とする固体高
分子型燃料電池用セパレータ。
【0019】(4) 金属基材の全表面又は集電部に、
水に対する接触角が90度以上である撥水性電導層を有
する金属セパレータを用いることを特徴とする固体高分
子型燃料電池。
【0020】(5) 金属基材の全表面又は集電部に、
水に対する臨界表面張力(γc)が17〜30dyn/cmで
ある撥水性電導層を有する金属セパレータを用いること
を特徴とする固体高分子型燃料電池。
【0021】(6) 固体高分子固体電解質膜とセパレ
ータの間に電極及びガス拡散層を備える固体高分子型燃
料電池において、前記セパレータは金属基材の全表面又
は集電部に面積抵抗が20mΩcm2以下で、且つ水に対す
る臨界表面張力(γc)が30dyn/cm以下の撥水性電導
層を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【0022】
【発明の実施の形態】図1(A)−(C)に本発明のセ
パレータの断面図を示す。図2に示すように実際の固体
高分子型燃料電池では、セパレータ2はその凸状の部分
がガス拡散層4と接触し電池の集電部分16であり、凹
状の部分は燃料ガス流路(12)又は空気流路(13)と
して機能する。高分子膜1の両側に、燃料極3a、空気
極3b及びガス拡散層4をセパレータ2で挟み込む構造で
用いられる。この際、燃料極3a、空気極3bは高分子膜
1と一体化した形で用いても良い。
【0023】図1(A)及び(Bは平板にガス流路加工
を施したセパレータに本発明の超撥水樹脂層6を適用し
た例である。
【0024】本発明の実施形態は、図1(A)のセパレ
ータ全面に撥水性導電(層)塗料6を塗布した構成であ
る。また、図1(B)の電極に接する凸状部分にのみ撥水
性導電性(層)塗料6を塗布し、燃料ガス流路(12)
又は空気流路(13)である凹状部分は、導電性材料を
添加しない撥水性樹脂材料7を塗布した構成である。
【0025】また、図1(C)は、波板形状の金属板に撥
水性導電(層)塗料6を塗布した構成である。
【0026】また、図1(C)のセパレータを用い、図1
(D)に示す構成の固体高分子型燃料電池を提供できる。
まず、基板金属板をプレス加工等により波形に加工す
る。この後、撥水性導電性塗料6を金属基板に塗布・乾
燥してセパレータ2を作成する。得られたセパレータ2
の間に、ガス拡散層4及び電極触媒層(3a,3b)を塗布
した固体高分子膜1を設置して積層することにより、燃
料ガス流路12と空気流路13が交互に配置され、2個
の電池が直列で接続された形で単位セルを構成する。セ
ルの端部はシール材5でガスのリークを防止する。導電
性塗料6は予め金属基板に塗布・乾燥した後、加工する
手順で製造できる。
【0027】本発明のセパレータ2を用いることによ
り、図1(D)に示す単位セル(セル2直列)毎に端板1
4とセパレータ2間に冷却水路15を設けることが可能
となり、電池温度の均一性、電池温度の異常上昇を防止
できる。
【0028】また、波板形状でなく、プレス等によりエ
ンボス状の凹凸加工を施した金属板を用いて、図1
(D)と同様の構成で固体高分子型燃料電池を製造でき
る。
【0029】本発明において電気導電材料は黒鉛又は非
晶質炭素材料を用いる。このことにより、通常電気導電
材料として用いるNi粉末やAg粉末と異なり、強酸雰
囲気でも腐食による抵抗の増加を抑えることができる。
【0030】また、基板金属の表面にアクリル樹脂、ポ
リオレフィン樹脂等の導電性塗料を用いた場合は、塗膜
層内に存在するピンホールを通じて酸性度の高い水分が
進入し基板金属が腐食する。
【0031】本発明の撥水性導電塗料を用いた場合、セ
パレータに塗布した導電性膜内にピンホールが存在して
も導電性膜の撥水効果により、酸性度の高い水分が基板
金属の表面まで浸透することが抑制され、腐食の発生が
防止される。
【0032】このように、金属基板表面に撥水性導電層
を形成したセパレータを固体高分子型燃料電池に用いる
ことにより、固体高分子膜及びガス拡散層の材質・形状
に依存することなく腐食が抑制される。この場合、撥水
性導電層を形成した金属セパレータは20mΩcm2以下の
面積抵抗を示すことが望ましい。面積抵抗が20mΩcm2
を越えると、発電時に発熱量が多くなり固体高分子型燃
料電池の発電効率を低下させる。
【0033】以下に本発明を実施例を用いて具体的に説
明する。なお、本発明は実施例により限定されない。
【0034】[実施例1]水に対する臨界表面張力(γ
c)の異なる、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化
ビニル、ポリ弗化ビニリデン、ポリビニルブチラ−ル、
ポリビニルアルコール及びポリスチレン樹脂を用いて、
これに炭素系電気導電材料を加えて塗布膜中の電気導電
材料(以下、導電材という)が92体積%となるように
配合し導電性塗料を調整した。この導電性塗料を塗布し
た金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池を作成
して、その発電効率を評価した。
【0035】上記の導電性塗料の調整方法を以下に示
す。ポリテトラフルオロエチレンを用いる場合は所定量
の炭素系粉末をポリテトラフルオロエチレンのコロイド
溶液(例えばダイキン工業株式会社製:ND―2)とボ
ールミルを用いて5時間混合した。
【0036】また、ポリ弗化ビニル、ポリ弗化ビニリデ
ンを用いる場合はN-メチルピロリドンに、ポリスチレ
ンを用いる場合はテトラヒドロフランに、ポリビニール
アルコールを用いる場合はエチルアルコールに、ポリビ
ニルブチラ−ルを用いる場合はブチルアルコールにそれ
ぞれ樹脂成分を溶解させる。次いでこの溶液に所定量の
炭素系粉末を添加してボールミルを用いて5時間混合し
た。
【0037】図1(A)及び1(B)に本実施例で用い
たセパレータの形状、構造を示した。図3は図1(A)
のセパレータの製造方法(工程)を示す。
【0038】まず、流路加工が終了した金属セパレータ
2の表面酸化物をブラスト加工で除去した。その後、こ
の金属セパレータの表面全体に前述の導電塗料をスプレ
ーガン17を用いて塗布した。次いで、乾燥・熱処理
(焼成)工程を経て固体高分子型燃料電池のセパレータ
を得る。
【0039】この際の乾燥時間及び焼成温度条件は導電
塗料用樹脂の種類によって異なる。ポリテトラフルオロ
エチレンを用いる場合は80℃の赤外線乾燥炉中で1時
間加熱後、380℃に温度を上げて1時間加熱して塗布
膜を形成した。ポリ弗化ビニル、ポリ弗化ビニリデンを
用いる場合は真空炉中で120℃まで加熱し、3時間保
持して塗布膜を形成した。ポリスチレンを用いる場合は
大気中で3時間乾燥し、80℃で1時間保持して塗布膜
を形成した。ポリビニールアルコールを用いる場合は大
気中で1時間乾燥し、90℃で1時間保持して塗布膜を
形成した。ポリビニルブチラ−ルを用いる場合は大気中
で1時間乾燥し、120℃で1時間保持して塗布膜を形
成した。
【0040】前記で得られたセパレータの全面に塗布膜
を形成した場合、固体高分子型燃料電池を長時間運転し
た際に電解質膜の端部よりクリープしてきた水による腐
食が抑制され電池の接触抵抗の増加が抑制される。
【0041】また、塗布方法はスプレー法に限定される
ものではなくディップコート法など公知の方法を適宜用
いることができる。また、図1(C)に示すセパレータ
も同様の手法で調製できる。
【0042】図4に図1(B)に示したセパレータの製
造方法(工程)を示す。まず、流路加工が終了した金属
セパレータ2の表面酸化物をブラスト加工で除去した。
その後、撥水性樹脂をスプレーガン17を用いて、金属
セパレータの表面に塗布した。次いで、塗膜を乾燥した
後、集電部16に塗布された塗膜を切削又は研磨により
除去した。その後、ガス流路部分をシール材で封止し
て、導電塗料(前述の手法で調整)をスプレーガンを用
いて塗布した。その後、乾燥・熱処理工程を経て、固体
高分子型燃料電池のセパレータを得た。
【0043】この際の乾燥時間及び焼成温度条件は導電
塗料用樹脂の種類によって異なる。
【0044】ポリテトラフルオロエチレンを用いる場合
は80℃の赤外線乾燥炉中で1時間加熱後、380℃で
1時間加熱して塗布膜を形成した。ポリ弗化ビニル、ポ
リ弗化ビニリデンを用いる場合は真空炉中で120℃ま
で加熱し、3時間保持して塗布膜を形成した。ポリスチ
レンを用いる場合は大気中で3時間乾燥し、80℃で1
時間保持して塗布膜を形成した。ポリビニールアルコー
ルを用いる場合は大気中で1時間乾燥し、90℃で1時
間保持して塗布膜を形成した。ポリビニルブチラ−ルを
用いる場合は大気中で1時間乾燥し、120℃で1時間
保持して塗布膜を形成した。
【0045】また、導電塗料の塗布方法はスプレー法に
限らずロールコート法、スクリーン印刷法等の公知の方
法を適宜用いることができる。
【0046】発電効率の標準とした固体高分子型燃料電
池のセパレータは炭素板を機械加工して用いた。本実施
例の炭素系導電材料は2000℃で焼成した平均粒径3
μmの黒鉛粒子を用い、基板金属は表面酸化物をブラス
ト加工で除去した炭素鋼(SS400)を用いた。
【0047】本実施例の固体高分子型燃料電池の形状は
作動面積100cm2、発電の条件は電流密度0.3A/
Cm2、運転温度80℃とした。その際の燃料(水素)
及び空気の利用率は、それぞれ0.7、0.4とした。
【0048】発電効率の評価は、上記の条件で発電した
標準の固体高分子型燃料電池の定格電流密度に到達時の
発電効率を100とし、実施例のセパレータを用いた固
体高分子型燃料電池の定格電流密度に到達時の発電効率
を相対比較した。図5に試験結果を示す。その結果、水
に対する臨界表面張力が30dyn/cm以下、更に好ましく
は17〜30dyn/cmである樹脂を用いた導電塗料(撥水
性導電膜)を金属セパレータ表面に形成した固体高分子
型燃料電池で高い相対発電効率が得られた。
【0049】[実施例2]水に対する臨界表面張力が3
0dyn/cm以下である樹脂を用いた導電塗料(撥水性導電
膜)を金属セパレータ表面に形成した固体高分子型燃料
電池の寿命を評価した。この電池の寿命は定格電流密度
(0.3A/cm2)到達時の発電効率から20%効率が低
下した時点で評価した。
【0050】本実施例の電気導電材料には2000℃で
焼成した平均粒径3μmである黒鉛粒子を用いた。樹脂
には臨界表面張力が30dyn/cm以下であるポリテト
ラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニル、ポリ弗化ビニリ
デン、ポリビニルブチラ−ルを用いた。樹脂と黒鉛粒子
との混合割合は体積比で8/92とした。固体高分子型
燃料電池の作動面積は100cm2、発電の条件は電流
密度0.3A/cm2、運転温度80℃とした。その際の
燃料(水素)及び空気の利用率はそれぞれ0.7、0.
4とした。
【0051】その結果、樹脂にポリテトラフルオロエチ
レン、ポリ弗化ビニル、ポリ弗化ビニリデンを用いた場
合、電池寿命が5000hを超えることが確認された。
それに対して、ポリビニルブチラ−ルを用いた場合、電
池寿命が約3000hであった。
【0052】[実施例3]実施例1と同じ方法で調整し
た塗料を用いて塗布膜の水に対する接触角を測定した。
接触角の測定は基板に平らな炭素鋼(SS400)板を
用いた。電池の寿命評価は、SS400製の金属セパレ
ータに、接触角評価と同じ塗料を塗付したものを用い
て、初期の発電効率より20%効率が低下した時点と
し、5000h時間を超えるたものを「○」、5000
h以下は「×」と評価した。
【0053】本実施例の電気導電材料には2000℃で
焼成した平均粒径3μmである黒鉛粒子を用いた。樹脂
と黒鉛粒子との混合割合は、体積比で5/95とした。
固体高分子型燃料電池の作動面積は100cm2。発電
の条件は、電流密度0.3A/cm2、運転温度80℃と
した。その際の燃料(水素)及び空気の利用率は、それ
ぞれ0.7、0.4とした。この際、セパレータの形状
は図1(A)及び1(B)に示す構造とした。
【0054】表1に評価結果を示す。
【0055】
【表1】
【0056】表1より、水との接触角が90℃以上であ
る撥水性導電膜を形成した金属セパレータを用いた場
合、長寿命である固体高分子型燃料電池を提供できるこ
とが確認された。また、寿命特性は、図1(A)及び1
(B)の構造いずれにおいても同じであった。
【0057】[実施例4]電気導電性材料として平均粒
径3μmの黒鉛(a)及び平均粒径6μmの非晶質炭素(b)
を用い調整した、撥水性導電膜を形成した金属セパレー
タを用いた固体高分子型燃料電池の寿命を評価した。
【0058】本実施例のバインダーは、臨界表面張力が
25dyn/cmであるポリ弗化ビニリデンを用い、実施例
1に示す方法で塗料及び塗布膜を形成した。金属セパレ
ータ基板は表面酸化物をブラスト加工で除去した炭素鋼
(SS400)を用いた。樹脂と電気導電性材料との混合
割合は、体積比で20/80とした。セパレータの形状
は図1(A)及び(B)に示す構造とした。固体高分子
型燃料電池の寿命は、初期の発電効率より20%効率が
低下した時点とした。
【0059】比較例として、金属基板であるSS400
(c),電気導電性材料に炭素繊維(d),Ni粉末(e),Cr粉
末(f),Ag粉末(g)を用い、バインダーは(a)、(b)と同じく
ポリ弗化ビニリデンを用い、実施例1に示す手法で塗料
及び塗布膜を形成した。固体高分子型燃料電池の作動面
積は100cm2、発電の条件は電流密度0.3A/cm
2、運転温度80℃とした。燃料(水素)及び空気の利
用率はそれぞれ0.7、0.4とした。
【0060】図6に試験結果を示す。電気導電性物質に
黒鉛粉末(a)、非晶質黒鉛(b)を用いた撥水性塗料を塗布
することにより、積算5000hを超える寿命を達成で
きることが確認された。
【0061】[実施例5]撥水性樹脂と電子導電材の混
合割合を変化させ、塗布した金属セパレータを用いた電
池の発電効率の相対比較を行った。バインダーとして
は、テトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポ
リ弗化ビニル及びポリビニルブチラ−ルを用い、導電材
には2000℃で焼成した平均粒径が3μmの黒鉛粒子
を用いた。また、金属基板には表面酸化物をブラスト加
工で除去した炭素鋼(SS400)を用いた。
【0062】撥水性導電塗料の調整法は、実施例1と同
様の手法で行い、樹脂と導電材料との混合割合は、体積
比で5/95〜80/20の間で変化させた。この際の
セパレータの形状は図1(A)及び(B)に示す構造と
した。固体高分子型燃料電池の相対効率の基準は、黒鉛
板を切削加工して製造したセパレータの初期発電効率と
し、これを100とした。固体高分子型燃料電池の作動
面積は100cm2とした。発電の条件は電流密度0.3A
/cm2、運転温度80℃とした。燃料(水素)及び空気の
利用率は、それぞれ0.7,0.4とした。
【0063】また、基板と塗膜の密着性も重要であり合
わせて評価した。密着性評価の手段は、塗装面に10x
20mmのセロハンテープを貼付け強制的に剥離させ、剥
離前後のセロハンテープの重量増加が5%未満を
[○]、5%以上のものを[×]とした。
【0064】図7に固体高分子型燃料電池の相対効率の
評価結果を、表2に膜の密着性の評価結果をそれぞれ示
す。
【0065】樹脂/導電材の体積比が10/90〜60
/40の間である場合、発電効率が高く、基板との密着
強度も優れた金属セパレータ用の撥水性導電塗膜が得ら
れることが確認された。
【0066】
【表2】
【0067】[実施例6]撥水性導電塗料を塗布した金
属セハ゜レーターの耐硫酸性比較を行った。撥水性導電塗料の
バインダーとしては、ポリ弗化ビニルを用い、導電材に
は2000℃で焼成した平均粒径が3μmの黒鉛粒子及
び平均粒径が6μmの非晶質黒鉛をそれぞれ用いた。ま
た、セパレータの母材となる金属基板には、表面酸化物
をブラスト加工で除去した炭素鋼(SS400)を用い
た。
【0068】撥水性導電塗料の調整法は、実施例1と同
様の手法で行い、樹脂と導電材料との混合割合は、体積
比で7/93とした。この際塗布膜の水との接触角は9
0℃であった。
【0069】比較例としては、バインダーにポリビニル
アルコール樹脂を使用し、2000℃で焼成した平均粒
径が3μmの黒鉛粒子を使用している炭素系導電性塗料
を用い、金属基板には表面酸化物をブラスト加工で除去
した炭素鋼(SS400)を同じく用いた。この際塗布膜
の水との接触角は65度であった。耐硫酸性の試験は、
JIS G0597に記載されている手法に準じ、硫酸の
濃度は0.05Mとした。図8に、それぞれの塗料を塗
布した金属基板の、耐硫酸特性の評価結果を示す。本発
明の撥水性導電塗料を用いた場合、硫酸に対する腐食が
抑制されていることが確認された。
【0070】[実施例7]面抵抗の異なる撥水性導電膜
を形成した金属セパレータの発電効率を比較した。撥水
性導電塗料のバインダーはポリ弗化ビニリデン(γc=2
5dyn/cm)を用い、導電材は2000℃で焼成した平
均粒径が3μmの黒鉛粒子及び平均粒径が6μmの非晶
質黒鉛をそれぞれ用いた。また、セパレータの金属基板
は表面酸化物をブラスト加工で除去した炭素鋼(SS40
0)を用いた。このセパレータの形状は図1(A)及び
(B)に示す構造とした。
【0071】撥水性導電塗料の調整法は、実施例1と同
様の手法で行い、面抵抗は樹脂と導電材料との混合割合
を変えて変化させた。面抵抗は電流端子にAg板を用
い、電圧計測端子にAu線を用い、交流(1kHz)4端
子法で測定した。電池の相対効率の基準は、黒鉛板を切
削加工して製造したセパレータの初期発電効率とし、こ
れを100とした。固体高分子型燃料電池の作動面積は
100cm2とした。発電の条件は電流密度0.3A/cm2
運転温度80℃とした。燃料(水素)及び空気の利用率
は、それぞれ0.7,0.4とした。
【0072】図9に固体高分子型燃料電池の発電効率評
価結果を示す。セパレータの面抵抗が20mΩ cm2以下
であると、固体高分子型燃料電池の発電効率が高いこと
が確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)本発明のセパレータの断面模式図である。
(B)本発明の別のセパレータの断面模式図である。(C)本
発明の又別のセパレータの断面模式図である。(D)本発
明のセパレータを用いた単位セルの断面模式図である。
【図2】(A)固体高分子燃料電池の断面を示す模式図で
ある。 (B)固体高分子燃料電池の構成を示す模式図であ
る。
【図3】本発明のセパレータ材料の製造手法を示す。
【図4】本発明のセパレータ材料の製造手法を示す。
【図5】本発明のセパレータ材料の相対効率評価を示
す。
【図6】本発明のセパレータを用いた電池の寿命評価を
示す。
【図7】本発明のセパレータ材料の相対効率評価を示
す。
【図8】本発明のセパレータ材料の耐硫酸性を示す。
【図9】本発明のセパレータ材料の相対効率評価を示
す。
【符号の説明】
1…固体高分子電解質膜、2…セパレータ、3a…燃料
極、3b…空気極,4…ガス拡散層、5…ガスシール材、
6…撥水性導電層、7…撥水性樹脂層、8…燃料ガス入
口、9…空気入口、10…燃料ガス出口、11…空気出
口、12…燃料ガス流路、13…空気流路、14…端
板、15…冷却水流路、16…集電部、17…スプレー
ガン、18…シール材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加茂 友一 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 山内 博史 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 吉川 正則 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 斉藤 幸雄 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 上原 利弘 島根県安来市安来町2107番地2 日立金属 株式会社冶金研究所内 (72)発明者 千葉 芳孝 東京都港区芝浦一丁目2番1号 日立金属 株式会社技術本部内 Fターム(参考) 5H026 AA06 CC03 CC10 CX04 EE02 EE05 EE06 EE19 HH00 HH05 HH06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固体高分子電解質膜とセパレータの間に電
    極及びガス拡散層を備え、前記セパレータはガス流路
    と、前記ガス拡散層に接する集電部とを有する固体高分
    子型燃料電池において、前記セパレータは、金属基材表
    面に黒鉛又は非晶質炭素材料を含む電気導電材と水に対
    する臨界表面張力(γc)が30dyn/cm以下の樹脂を含
    む撥水性導電層を形成していることを特徴とする固体高
    分子型燃料電池。
  2. 【請求項2】固体高分子電解質膜とセパレータと間に電
    極およびガス拡散層を備え、前記セパレータはガス流路
    と、前記ガス拡散層に接する集電部とを有する固体高分
    子型燃料電池において、前記セパレータは、ガス拡散層
    に接する集電部となる金属基材表面に黒鉛又は非晶質炭
    素材料を含む電気導電材と水に対する臨界表面張力(γ
    c)が30dyn/cm以下である樹脂を含む撥水性導電層を
    形成し、ガス拡散層に接しないガス流路部となる金属基
    材表面に水に対する臨界表面張力(γc)が30dyn/cm
    以下である樹脂含む撥水性導電層を形成していることを
    特徴とする固体高分子型燃料電池。
  3. 【請求項3】請求項1又は2において、前記撥水性導電
    層はポリテトラフルオロエチレン,ポリ弗化ビニル又は
    ポリ弗化ビニリデンのいずれかを含むことを特徴とする
    固体高分子型燃料電池用。
  4. 【請求項4】請求項1又は2において、前記撥水性電導
    層中に含まれる前記電気導電材の総量は体積率で40〜
    90%であることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
  5. 【請求項5】請求項1又は2において、前記撥水性電導
    層の水に対する臨界表面張力(γc)が17〜30dyn/c
    m以下であることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
  6. 【請求項6】固体高分子固体電解質膜とセパレータの間
    に電極及びガス拡散層を備える固体高分子型燃料電池用
    セパレータにおいて、前記セパレータは金属基材の全表
    面又は集電部に、水に対する接触角が90度以上である
    撥水性電導層を有することを特徴とする固体高分子型燃
    料電池用セパレータ。
  7. 【請求項7】金属基材の全表面又は集電部に、水に対す
    る接触角が90度以上である撥水性電導層を有する金属
    セパレータを用いることを特徴とする固体高分子型燃料
    電池。
  8. 【請求項8】金属基材の全表面又は集電部に、水に対す
    る臨界表面張力(γc)が17〜30dyn/cmである撥水
    性電導層を有する金属セパレータを用いることを特徴と
    する固体高分子型燃料電池。
  9. 【請求項9】固体高分子固体電解質膜とセパレータの間
    に電極及びガス拡散層を備える固体高分子型燃料電池に
    おいて、前記セパレータは金属基材の全表面又は集電部
    に面積抵抗が20mΩcm2以下で、且つ水に対する臨界表
    面張力(γc)が30dyn/cm以下の撥水性電導層を有す
    ることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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