JP2002212065A - チロシンキナーゼ阻害剤及び医薬組成物 - Google Patents

チロシンキナーゼ阻害剤及び医薬組成物

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JP2002212065A
JP2002212065A JP2001014667A JP2001014667A JP2002212065A JP 2002212065 A JP2002212065 A JP 2002212065A JP 2001014667 A JP2001014667 A JP 2001014667A JP 2001014667 A JP2001014667 A JP 2001014667A JP 2002212065 A JP2002212065 A JP 2002212065A
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shikonin
tyrosine kinase
cancer cells
kinase inhibitor
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JP2001014667A
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Kazuyasu Nakatani
一泰 中谷
Sachiko Kajimoto
幸子 梶本
Man Jo
曼 徐
Yukimasa Uehara
至雅 上原
Masashi Shibuya
正史 渋谷
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Showa University
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Showa University
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 副作用が少なく、従来のチロシンキナーゼ阻
害物質とは異なる化学構造を有する新規チロシンキナー
ゼ阻害剤の提供。 【解決手段】ナフトキノン骨格を備えたシコニン又はそ
の誘導体で、下記一般式(I)で表せる化合物を有効成
分とするチロシンキナーゼ阻害剤。 〔式中、Rは、次のa〜dのいずれかを示す。〕

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、チロシン特異的
プロテインキナーゼ(以下チロシンキナーゼという)阻
害活性を有するシコニン誘導体を有効成分とするチロシ
ンキナーゼ阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】癌の化学療法においては、多くの物質が
医薬として実用化されているが、多くの場合、薬効が不
十分なだけだなく、その阻害活性が癌に限定されずに正
常細胞にも障害を与え、このために強い毒性を有するこ
とがあり、結果として副作用が問題となっている。
【0003】本発明者等は、ナフトキノン骨格を備えた
β−ヒドロキシイソバレリルシコニンが種々の癌細胞の
増殖を阻害すること及びアポトーシス誘導能を有するこ
とを既に見いだしている(たとえば、J.Biochem.第12
5巻,P17-23、1999年)。ここで、アポトーシスが
誘導された細胞は、その内容物が流出することなくアポ
トーシス小体が形成され、このアポトーシス小体はマク
ロファージ等により貪食されて消滅する。したがって、
癌細胞に特異的にアポトーシスを誘導させる薬物は、炎
症反応による副作用を伴わずに癌細胞を消滅させること
ができる。しかし、シコニン誘導体がアポトーシス誘導
能があることを発表した段階では、シコニン誘導体が何
をターゲットにしているかは不明であった。
【0004】一方、プロテインキナーゼは細胞の増殖や
分化などのシグナル伝達を担う重要な酵素群であるが、
中でもチロシンキナーゼは、多くの癌遺伝子がコード
し、種々の癌細胞でチロシンキナーゼ活性が昆進してい
ることから癌化学療法の分子標的の一つになっている。
【0005】また、最近、癌細胞に栄養を供給している
血管を構成している血管内皮細胞の増殖に血管内皮細胞
増殖因子(Vasclar endothelial growth factor:VEGF)
とそのリセプター(Flt−1)が関与していることが明ら
かにされたが、そのFlt−1もチロシンキナーゼであ
る。
【0006】したがって、Flt−1のチロシンキナーゼ
活性を阻害すれば、癌細胞に栄養を供給する血管が新生
されないので、癌細胞の増殖を阻害することができる。
【0007】このように、チロシンキナーゼ阻害剤は、
癌細胞自身の増殖の抑制やアポトーシスの誘導に加えて
癌細胞に栄養を補給する血管の新生阻害という二重の作
用により、抗癌作用を示せることが明らかとなり、抗癌
剤の候補として世界的に探索が続けられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】チロシンキナーゼ活性
を特異的に阻害する薬剤が新しい作用機序を持った制癌
剤となることがすでに提案され、その代表的な化合物と
しては、例えば、微生物由来のアーブスタチン(Erbstat
in)、ラベンダスチン A(Lavendustin A)、ハービマイシ
ンA(Herbimycin A)、ゲニスタイン(Genistein)が例示
される。
【0009】また、これらの化合物のチロシンキナーゼ
阻害物質の阻害作用のメカニズムも明らかとなりつつあ
る。たとえば、図1に示すハービマイシンAは不可逆的
結合型を示す物質として、図2に示すゲニスタインやラ
ベンダスチンAはATP拮抗型を示す物質として知られ
ている。また、図3に示すアーブスタチン、メチル2,
5−ジヒドロキシシンナメート、チルホスチン、ST6
38等は基質拮抗型を示す物質として知られ、これらの
詳細は、たとえば、癌と化学療法1997年1月号第1
36頁〜第144頁に記載されている。また、最近、血
管新生に関与するチロシンキナーゼであるFlk−1やF
GFリセプター1を阻害するSU6668(図4)が報
告されている。
【0010】これらの化合物は、類縁体を合成するなど
して、そのチロシンキナーゼ阻害活性の増大が試みられ
ている。たとえば、天然物由来のアーブスタチンは、ア
ーブスタチン類縁化合物として、化学修飾されたり、新
たに化学合成されたりしている(特開昭62−2773
47号公報等参照)。
【0011】しかしながら、シコニン及びその誘導体
は、癌細胞の増殖を阻害すること及びアポトーシス誘導
能を有することは確認されているが、その基本骨格がナ
フトキノンであることから、公知のチロシンキナーゼ阻
害物質の芳香族骨格とは異なるので、チロシンキナーゼ
の阻害活性があるとは予想されずに、また、現実に調べ
られることはなかった。
【0012】ここで、このシコニン又はその誘導体はム
ラサキ科ムラサキの根に含まれており、また、ムラサキ
の根は生薬シコンとして古来より漢方で消炎、解熱、解
毒剤として内用されているので、このシコニン又はその
誘導体にアポトーシス誘導能に加えてチロシンキナーゼ
阻害活性があれば、新規な骨格を備えたチロシンキナー
ゼ阻害剤への応用及びその骨格を備えた種々の化合物の
合成により副作用の少ない制癌剤への画期的な用途が期
待される。
【0013】そこで、この発明の目的は、副作用が少な
く、従来のチロシンキナーゼ阻害物質とは異なる化学構
造を有する新規チロシンキナーゼ阻害剤を提供すること
である。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究を進めた結果、従来のチロシンキ
ナーゼ阻害作用を備えた化合物群とは全く異なった骨格
であるナフトキノン骨格を備えたシコニン又はその誘導
体が、特異的に増殖因子受容体,癌遺伝子産物及び血管
増殖因子リセプターの強力なチロシンキナーゼ阻害活性
を有することを見い出し本発明に到達した。即ち、本発
明はナフトキノン骨格を備えたシコニン又はその誘導体
を有効成分とするチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0015】このチロシンキナーゼ阻害剤は、薬学的に
許容される担体が含まれて医薬組成物として利用され
る。この医薬組成物の例としては、広く癌治療用に用い
られるが、シコニンの側鎖を変換すると固形癌細胞に対
する特異性が変わり、β−ヒドロキシイソバレリルシコ
ニンは肺癌細胞に高い特異性を示し、シコニンは乳癌細
胞、卵巣癌細胞、脳腫瘍、大腸癌等に広く用いることが
できる。
【0016】また、この医薬組成物は、血管新生阻害用
を目的とした医薬組成物に対しても有効に利用される。
【0017】また、これらの化合物は、従来から生薬と
して知られているシコンに含まれる成分であり、植物か
ら抽出された利用することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】このシコニン又はその誘導体は、
下記一般式(I)で表せる化合物が好ましい化合物とし
て例示される。
【0019】
【化3】
【0020】この一般式(I)において、Rは、水素又
は置換基を示す。
【0021】このような一般式(I)で示されるシコニ
ン誘導体として入手可能な代表例としては、β,β-ジメ
チルアクリルシコニン、イソバレリルシコニン、α-メ
チル-n-ブチルシコニン、イソブチルシコニン、アセチ
ルシコニン、β−ヒドロキシイソバレリルシコニンが示
される。これらのシコニン又はその誘導体は、公知のチ
ロシンキナーゼ阻害活性を備えた化合物が化学修飾され
て、そのチロシンキナーゼ阻害活性を増大させているよ
うに、同様な手法によりチロシンキナーゼ阻害活性を損
なわない範囲で化学的に修飾されていてもよい。
【0022】これらのシコニン又はその誘導体は、チロ
シンキナーゼ阻害剤として有用であり、その作用に基づ
き制癌剤及び血管新生阻害剤の用途が期待できる。本発
明によるチロシンキナーゼ阻害剤の製剤としては、経
口、経腸または非経口的投与による製剤のいずれをも選
ぶことができる。具体的製剤としては、錠剤、カプセル
剤、細粒剤、シロップ剤、坐薬、軟膏剤、注射剤等を挙
げることができる。
【0023】ここで、製剤として利用する場合には、経
口、経腸、その他非経口的に投与するために適した薬学
的担体材料とともに用いられる。それらの薬学的担体材
料としては有機であっても無機であってもよく、また、
固体であっても液体であってもよい。このような不活性
な薬学的担体材料としては、具体的には、例えば結晶性
セルロース、ゼラチン、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグ
ネシウム、タルク、植物性および動物性脂肪および油、
ガム、ポリアルキレングリコール等が例示される。製剤
中の担体に対する本発明のチロシンキナーゼ阻害剤の割
合は広く変化させることができ、例えば0.1重量%〜
10重量%の割合で変化させることができる。
【0024】また、本発明によるチロシンキナーゼ阻害
剤は、他のチロシンキナーゼ阻害剤、その他医薬を含ん
でいてもよい。この場合、本発明によるチロシンキナー
ゼ阻害剤がその製剤中の主成分でなくてもよい。
【0025】
【実施例】以下に実施例を挙げ、シコニン及びその誘導
体の抽出・単離、チロシンキナーゼ阻害活性、発癌抑制
試験の各工程を詳述するが、本発明を限定するものでは
ない。 (シコニン又はその誘導体の抽出・単離)シコニン又は
その誘導体は、常法によりムラサキ科ムラサキの根皮か
ら概ね次の手法により抽出・単離した。
【0026】成熟ムラサキが小片に切断され、エーテル
により抽出された。その後、溶媒はエバポレータにより
蒸発除去された。2%の苛性ソーダにより誘導体が加水
分解された後にシコニンはシリカゲル薄層クロマトによ
り精製された。
【0027】シコニン誘導体の単離にはエーテル抽出物
をシリカゲル(キーゼルゲル60;ドイツのメルク社
製)のプレート上で、n−ヘキサン、アセトン及びギ酸
の混合液(70:30:1,v/v)を展開溶媒として用
いて薄層クロマトグラフィーが行われた。
【0028】その結果、4つのスポット(a〜d)が検
出され、各スポットはスパーテルでかき集められた。そ
の後、回収物はエーテルにより抽出され、シリカゲルは
遠心分離により除かれ、上澄みが捕集された。その上澄
みから完全にエーテルが蒸発された後、各々のサンプル
はエタノールに溶解された。各々のスポットa〜dに対
応するシコニン又はその誘導体の同定は、Kyougoku等
(Syoyakugaku Zasshi、第27巻、第24−30頁、1
973年)によるNMRスペクトルの値と比較すること
により、スポットaはβ,β-ジメチルアクリルシコニ
ン、イソバレリルシコニン、α-メチル-n-ブチルシコニ
ン、イソブチルシコニンの混合物であり、スポットbは
アセチルシコニンであり、スポットcはシコニンであ
り、スポットdはβ−ヒドロキシイソバレリルシコニン
であることが確認された。
【0029】また、β−ヒドロキシイソバレリルシコニ
ン及びシコニンを大量精製するには、ムラサキのエーテ
ル抽出物をシリカゲルカラム(キーゼルゲル60;メル
ク社製)にかけ、n−ヘキサン、アセトン及び蟻酸の混
合液(70:30:20,v/v)で溶出した。 (チロシンキナーゼ阻害活性)対照にチロシンキナーゼ
の阻害剤として知られているハービマイシンA及びアー
ブスタチンを用いて、上記の方法により単離されたシコ
ニン及びβ−ヒドロキシイソバレリルシコニンの種々の
チロシンキナーゼへの阻害作用(チロシンキナーゼ阻害
活性)を測定し、比較した。 (1)v-src癌遺伝子発現NIH3T3細胞抽出液による分析 チロシンキナーゼ活性をもつv-src癌遺伝子を発現させ
たマウスのNIH3T3細胞をpHバッファ−(1mM HEPE
S(N-2-hydroxyethylpiperazine-N-2-ethanesulfonic ac
id)、pH7.4,5mM MgCl2)に懸濁してホモ
ジナイザーにより破砕し、それを500gで5分間遠心
して核を除き、その遠心上精に各種キナーゼのアクチベ
ータや阻害剤を加え、32Pでラベルしたアデノシン
5’−トリフォスフェート([γ−32P]ATP)を加
えて25℃で20分間リン酸化反応を行わせた。リン酸
化反応後、SDS(sodium dodecyl sulfate)ゲル電気泳
動を行い、オートラジオグラフィーによりリン酸化され
たタンパク質のバンドを検出した。
【0030】その結果、図5Aに示すように、β−ヒド
ロキシイソバレリルシコニン及びシコニンは、それぞれ
10μgおよび1μgまではプロテインキナーゼC及び
プロテインキナーゼAの活性を変化させなかったが、チ
ロシンキナーゼ活性を阻害した。
【0031】さらにリン酸化されたチロシン残基はアル
カリ性でも安定であるが、リン酸化セリンやリン酸化ス
レオニンは不安定で分解消失することを利用して、ゲル
をアルカリ処理したところ、図5Bに示すように、チロ
シンがリン酸化されたバンドがβ−ヒドロキシイソバレ
リルシコニン及びシコニンの濃度の増加とともに顕著に
減少した。この結果、β−ヒドロキシイソバレリルシコ
ニン及びシコニンがチロシンキナーゼを阻害することが
確認された。 (2)EGF(epidermal growth factor)リセプターの
チロシンキナーゼ活性に与える影響 ヒト類表皮癌A431細胞を1% Triton X-100で可溶
化し、核を除いた後、超遠心でEGFリセプターに富む
膜画分を集め酵素液とした。これに試料とEGFを加
え、25℃で30分間保温後、[γ−32P]ATPを加
えて0℃で10分間リン酸化反応を行った。10%トリ
クロロ酢酸溶液を加えて生じる沈殿物をフィルター上に
回収して放射活性を測定した。
【0032】放射活性は、ヒト類表皮癌A431細胞に
種々の濃度のシコニン又はβ−ヒドロキシイソバレリル
シコニン(β−HIVS)を加えて、EGFリセプターのチ
ロシンキナーゼ活性化を測定し%で表した。その結果、
図6に示すように、β−ヒドロキシイソバレリルシコニ
ン及びシコニンは0.1μg/ml以上の濃度でEGFリ
セプターのチロシンキナーゼ活性を顕著に阻害した。阻
害の強さは、チロシンキナーゼ阻害剤として知られてい
るアーブスタチン(erbstatin)と同程度であった。 (3)血管新生に関与する血管内皮細胞増殖因子リセプ
ターに与える影響 血管内皮細胞増殖因子リセプター(Flt-1)遺伝子を組
み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞Tn5に感染させ、
上記(2)に記載した方法で膜画分を調整した。これに
試料として[γ−32P]ATPを加えて、25℃で10
分間リン酸化反応を行った。リン酸化反応後、SDSゲ
ル電気泳動を行い、オートラジオグラフィーによりリン
酸化されたFlt-1のバンドを検出した。
【0033】その結果、図7Aに示すように、Flt-1の
チロシンリン酸化は1μg/ml以上の濃度のβ−ヒドロ
キシイソバレリルシコニン及びシコニンにより阻害され
た。特にβ−ヒドロキシイソバレリルシコニンの阻害活
性が強く、その阻害の程度はシコニンより強力であっ
た。
【0034】図7Bは、Aのゲルをアルカリ処理し、ア
ルカリに安定なリン酸化チロシンのみを残存させてチロ
シンキナーゼに与える影響を測定した結果を示す。
【0035】やはり、β−ヒドロキシイソバレリルシコ
ニン及びシコニンがFlt-1のチロシキナーゼ活性を強く
阻害していることが確認された。
【0036】以上の結果を表1にまとめて示した。な
お、表1中ハービマイシン及びアーブスタチンの結果は
癌と化学療法1997年1月号第136頁〜144頁及
びBiochem.J.1994年第57頁〜62頁より引用し
た。
【0037】
【表1】
【0038】これらの結果から、β−ヒドロキシイソバ
レリルシコニン(β−HIVS)及びシコニンは癌細胞の増殖
に関与するsrc遺伝子産物やEGFリセプターのチロシ
ンキナーゼ活性を阻害するだけでなく、癌細胞に栄養を
補給する血管内皮細胞の増殖因子リセプター(Flt-1)
のチロシンキナーゼ活性も阻害することが明らかとなっ
た。 (ヒト培養固形癌細胞に対する殺細胞効果)37種類の
ヒト癌細胞を96ウェルプレートにまき、翌日、種々の
濃度のβ−ヒドロキシイソバレリルシコニンを添加し、
2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比
色定量で測定した。結果を0時間の細胞数の50%に減
少させるモル濃度(LC50)で表した。この値は殺細胞効
果を表す。さらに検定したすべての癌細胞についてのLo
g LC50の平均値(MG MID)を求め、この平均値と各々の細
胞でのLog LC50との差を求め、それらを平均Log LC50値
を中心(目盛り0)として左右に棒グラフで示した。こ
れがヒト培養固形癌細胞パネルで、感受性が高い癌細胞
株ほど右側に長い棒(bar)がのびる。
【0039】その結果、図8に示すように、β−ヒドロ
キシイソバレリルシコニンは肺癌細胞(図中、lung)の
2種類の株(NHl-H226,DMS273)に対して特異的に強い
殺細胞作用を示すことがわかった。この結果は、β−ヒ
ドロキシイソバレリルシコニンが肺癌の治療薬となる可
能性を示している。
【0040】これに対し、シコニンは図9に示すよう
に、β−ヒドロキシイソバレリルシコニンほど特異性が
高くなく、乳癌細胞(図中、Breast)、脳腫瘍細胞(図
中、Brain)、大腸癌細胞(図中、Colon)、肺癌細胞
(図中、Lung)、卵巣癌細胞(図中、Ovarian)、胃癌
細胞(図中、Stomach)に対して特異的に殺細胞作用を示
すことがわかった。これにより、シコニンは種々の固形
癌細胞株に対し、殺細胞作用を示すが、なかでも乳癌細
胞や卵巣癌細胞には比較的特異性が高い。
【0041】以上の結果は、シコニン誘導体の側鎖を変
えることにより特定の固形癌細胞に殺細胞効果の高い抗
癌剤を開発できる可能性を示している。
【0042】以上のように、古くから生薬として用いら
れてきたシコン中の成分であるシコニン及びその誘導体
β−ヒドロキシイソバレリルシコニンが、癌細胞の増殖
を促進するチロシンキナーゼ及び血管新生に関与する血
管内皮細胞増殖因子リセプターのチロシンキナーゼ活性
の両者を強力に阻害することが明らかにされた。
【0043】従って、シコニン及びその誘導体β−ヒド
ロキシイソバレリルシコニンは、癌細胞自身の増殖の阻
害及び癌細胞に対する栄養補給の阻害という二重の作用
で働く抗癌剤として有用であることが期待される。
【0044】実際に、シコニン及びその誘導体β−ヒド
ロキシイソバレリルシコニンは、ヒトの広範な種類の固
形癌細胞に対し低濃度で殺細胞作用を示し、特にβ−ヒ
ドロキシイソバレリルシコニンは肺癌細胞に対し非常に
高い特異性を、シコニンは乳癌細胞や卵巣癌細胞に比較
的高い特異性を示すことから、シコニン誘導体の側鎖構
造を変えることにより、組織特異的な抗癌剤の開発の可
能性が示された。
【0045】また、シコニン及びβ−ヒドロキシイソバ
レリルシコニンの殺癌細胞作用は、以前に報告(J. Bio
chem., 125巻, 17-23頁, 1999年)したように、白血病
細胞や大腸癌細胞ではアポトーシス誘導作用によるもの
であることが証明されている。アポトーシスを起こした
癌細胞は、炎症反応を伴わずに消滅するので、アポトー
シス誘導能が強い抗癌剤は副作用が少ないことが予期さ
れる。
【0046】したがって、シコンが生薬として服用され
たことを合わせ考えると、シコニン及びその誘導体β−
ヒドロキシイソバレリルシコニンは、副作用の少ない画
期的な抗癌剤としての有用性が期待される。
【0047】なお、以上の説明では、シコニン及びその
誘導体は植物から抽出されて用いられていたが、発酵
法、化学合成など他の手段により入手されてもよい。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、この発明に従え
ば、副作用が少なく、従来のチロシンキナーゼ阻害物質
とは異なる化学構造を有する新規チロシンキナーゼ阻害
剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハービマイシンAの化学構造式を示す図であ
る。
【図2】ゲニスタイン及びラベンダスチンAの化学構造
式を示す図である。
【図3】アーブスタチン、メチル2,5−ジヒドロキシ
シンナメート、チルホスチン及びST638の化学構造
式を示す図である。
【図4】SU6668の化学構造式を示す図である。
【図5】β−HIVS及びシコニンによるv-src遺伝子産物
のチロシンキナーゼの阻害作用を示す図であり、AはS
DSゲル電気泳動後のオートラジオグラフィー、BはA
のSDSゲルをアルカリ処理後、オートラジオグラフィ
で分析したものである。
【図6】β−HIVS及びシコニンによるEGFリセプター
のチロシンキナーゼの阻害作用を示す図である。
【図7】β−HIVS及びシコニンによる血管内皮細胞増殖
因子リセプター(Flt−1)のチロシンキナーゼの阻害
作用を示す図であり、AはTn5細胞に組み込んだFlt−1
遺伝子産物のチロシンキナーゼ活性をSDSゲル電気泳
動とオートラジオグラフィーで分析し、BはAのSDS
ゲルをアルカリ処理後、オートラジオグラフィで分析し
たものである。
【図8】β−HIVSのヒト培養固形癌細胞に対する影響を
示すヒト培養固形癌細胞パネルを示す図である。
【図9】シコニンのヒト培養固形癌細胞に対する影響を
示すヒト培養固形癌細胞パネルを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 9/99 C12N 9/99 (72)発明者 徐 曼 東京都中央区日本橋4−7−10エイ・エ イ・アイ・ジャパン内 (72)発明者 上原 至雅 東京都新宿区戸山1−23−1国立感染症研 究所生物活性物質部内 (72)発明者 渋谷 正史 東京都港区白金台4−6−1東京大学医科 学研究所細胞遺伝学研究部内 Fターム(参考) 4C088 AB59 AC11 BA08 CA04 CA14 NA14 ZA36 ZB26 ZC20 4C206 AA01 AA02 CB24 NA14 ZA36 ZB26 ZC20

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ナフトキノン骨格を備えたシコニン又は
    その誘導体を有効成分とするチロシンキナーゼ阻害剤。
  2. 【請求項2】 前記シコニン又はその誘導体は、下記一
    般式(I)で表せる化合物であることを特徴とする請求
    項1記載のチロシンキナーゼ阻害剤。 【化1】 式中、Rは、次のa〜dのいずれかを示す。 【化2】
  3. 【請求項3】 請求項1又は2のいずれかに記載の化合
    物および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成
    物。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の医薬組成物において、そ
    の用途が癌治療用であることを特徴とする医薬組成物。
  5. 【請求項5】 前記癌が乳癌、脳腫瘍、大腸癌、肺癌、
    卵巣癌又は胃癌であることを特徴とする請求項4記載の
    医薬組成物。
  6. 【請求項6】 請求項3記載の医薬組成物において、そ
    の用途が血管新生阻害用であることを特徴とする医薬組
    成物。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組
    成物において、前記化合物が植物から抽出されたもので
    あることを特徴とする医薬組成物。
JP2001014667A 2001-01-23 2001-01-23 チロシンキナーゼ阻害剤及び医薬組成物 Pending JP2002212065A (ja)

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CN113855661A (zh) * 2021-09-27 2021-12-31 温州医科大学附属第一医院 乙酰紫草素在制备抗癌药物中的应用

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