JP2002210988A - インクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置 - Google Patents
インクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置Info
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Abstract
を防止でき、良好なインク吐出特性を保持できるインク
ジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジ
ェット式記録装置を提供する。 【解決手段】 ノズル開口21が穿設されたノズルプレ
ート20と、ノズル開口21に連通する圧力発生室12
が画成された流路形成基板10と、流路形成基板10の
圧力発生室12に対応する領域に振動板を介して設けら
れた下電極60、圧電体層70及び上電極80からなる
圧電素子300とを具備するインクジェット式記録ヘッ
ドにおいて、ノズルプレート20と流路形成基板10と
が単結晶シリコンからなり、これらを接着剤を用いるこ
となく酸化シリコン膜100を介して接合することによ
り、両者を良好に接合できる。
Description
るノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構
成し、この振動板を介して圧電素子を設けて、圧電素子
の変位によりインク滴を吐出させるインクジェット式記
録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録
装置に関する。
る圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧
電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧して
ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式
記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦
振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、た
わみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの
2種類が実用化されている。
ることにより圧力発生室の容積を変化させることができ
て、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反
面、圧電素子をノズル開口の配列ピッチに一致させて櫛
歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられた
圧電素子を圧力発生室に位置決めして固定する作業が必
要となり、製造工程が複雑であるという問題がある。
シートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼
成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電素子を作
り付けることができるものの、たわみ振動を利用する関
係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困難
であるという問題がある。
べく、特開平5−286131号公報に見られるよう
に、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧
電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法に
より圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生
室毎に独立するように圧電素子を形成したものが提案さ
れている。
インクジェット式記録ヘッドでは、圧力発生室が流路形
成基板を貫通して形成されているため、圧力発生室の配
列密度を高くすると、圧力発生室を区画する隔壁の厚み
が薄くなり、隣接する圧力発生室間でクロストークが発
生するという問題がある。
成基板の厚さを薄くすることが望ましいが、流路形成基
板自体の剛性が低くなり、製造過程においてクラック等
が派生するという問題がある。
ッドでは、インク滴を吐出するための複数のノズル開口
を穿設したノズルプレートが用いられ、このノズルプレ
ートがノズル開口と圧力発生室とを連通するように流路
形成基板に接着剤等によって接合されている。このた
め、圧力発生室を高密度に配設すると、ノズルプレート
と流路形成基板との接着面積が小さくなるため、接着剤
が圧力発生室内に過度に流れ出し、特性劣化が生じる虞
がある。
成基板の厚さを薄くできると共に破損を防止でき、良好
なインク吐出特性を保持できるインクジェット式記録ヘ
ッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置
を提供することを課題とする。
明の第1の態様は、ノズル開口が穿設されたノズルプレ
ートと、前記ノズル開口に連通する圧力発生室が画成さ
れた流路形成基板と、該流路形成基板の前記圧力発生室
に対応する領域に振動板を介して設けられた下電極、圧
電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備するインク
ジェット式記録ヘッドにおいて、前記ノズルプレートと
前記流路形成基板とが単結晶シリコンからなり、これら
が接着剤を用いることなく酸化シリコン膜を介して接合
されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッ
ドにある。
ズルプレートとが酸化シリコン膜によって良好に接合さ
れて一体構造となり、流路形成基板の剛性が向上すると
共にインク吐出特性が良好に保持される。
て、前記圧力発生室及び前記ノズル開口の内面に前記酸
化シリコン膜が連続的に形成されていることを特徴とす
るインクジェット式記録ヘッドにある。
ズルプレートとを熱酸化することによって形成された酸
化シリコン膜で接合した結果、圧力発生室及びノズル開
口の内面に酸化シリコン膜が形成される。
において、前記酸化シリコン膜内には、前記流路形成基
板又は前記ノズルプレートの何れか一方の接合面から他
方の接合面まで突出する複数の突起部が埋設されている
ことを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
路形成基板とノズルプレートとを酸化シリコン膜によっ
て接合した結果、酸化シリコン膜内に突起部が埋設され
る。
の態様において、前記圧力発生室がシリコン単結晶基板
に異方性エッチングにより形成され、前記圧電素子を構
成する各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されて
いることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにあ
る。
発生室を高精度且つ高密度に形成することができる。
の態様のインクジェット式記録ヘッドを具備することを
特徴とするインクジェット式記録装置にある。
吐出特性が得られ、信頼性を向上したインクジェット式
記録装置を実現できる。
らなりノズル開口が穿設されたノズルプレートと、単結
晶シリコンからなり前記ノズル開口に連通する圧力発生
室が形成される流路形成基板と、この圧力発生室の一部
を構成する振動板を介して前記圧力発生室に対応する領
域に形成された圧電素子とを備えたインクジェット式記
録ヘッドの製造方法において、前記流路形成基板の一方
面に前記振動板の少なくとも一部を構成する弾性膜を形
成する第1の工程と、前記流路形成基板の他方面側から
エッチングすることにより前記圧力発生室を形成する第
2の工程と、前記流路形成基板の開口面側と前記ノズル
プレートとを所定の間隔を空けた状態で前記流路形成基
板と前記ノズルプレートとを熱酸化して両者を酸化シリ
コン膜によって接合する第3の工程と、前記圧電素子を
形成する第4の工程とを有することを特徴とするインク
ジェット式記録ヘッドの製造方法にある。
ズルプレートとを酸化シリコン膜によって、容易且つ良
好に接合することができる。
て、前記第3の工程は、前記流路形成基板又は前記ノズ
ルプレートの少なくとも何れか一方の接合面に、一定の
高さで突出する複数の突起部を形成する工程を含み、前
記突起部を他方の接合面と当接させることにより前記流
路形成基板と前記ノズルプレートとの間に空間を確保し
た状態で両者を熱酸化して接合することを特徴とするイ
ンクジェット式記録ヘッドの製造方法にある。
ノズルプレートのそれぞれの接合面に形成される酸化シ
リコン膜によって両者が接合される。
て、前記第3の工程では、前記流路形成基板又は前記ノ
ズルプレートの何れか一方の表面に一体的に形成された
酸化シリコン膜に他方の接合面を当接させた状態で熱酸
化して両者を接合することを特徴とするインクジェット
式記録ヘッドの製造方法にある。
化シリコン膜が形成されて、両者が接合される。
て、前記第2の工程では、前記流路形成基板の表面に形
成された酸化シリコン膜をマスクとして前記流路形成基
板のエッチングを行い、前記第3の工程では、前記ノズ
ルプレートの接合面をマスクとして用いた酸化シリコン
膜に当接させた状態で熱酸化して両者を接合することを
特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方法にあ
る。
するためのマスクとして用いられる酸化シリコン膜を用
いて流路形成基板とノズルプレートとを接合するため、
製造工程が簡略化される。
て詳細に説明する。
1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図
であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。
実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板か
らなり、流路形成基板10には、その一方の面から異方
性エッチングすることにより、複数の隔壁11により区
画された圧力発生室12が幅方向に並設されている。ま
た、圧力発生室12の長手方向外側には、後述するリザ
ーバ形成基板のリザーバとの間の中継室となる連通部1
3が形成され、各圧力発生室12の長手方向一端部とそ
れぞれインク供給路14を介して連通されている。
は、例えば、酸化シリコン膜(SiO2)からなる第1
の弾性膜50と、例えば、酸化ジルコニウム(Zr
O2)等からなる第2の弾性膜51が形成されている。
結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々
に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面
と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且
つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(1
11)面とが出現し、(110)面のエッチングレート
と比較して(111)面のエッチングレートが約1/1
80であるという性質を利用して行われるものである。
かかる異方性エッチングにより、二つの第1の(11
1)面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成され
る平行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行う
ことができ、圧力発生室12を高密度に配列することが
できる。
を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で
形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板1
0をほぼ貫通して第1の弾性膜50に達するまでエッチ
ングすることにより形成されている。ここで、第1の弾
性膜50は、シリコン単結晶基板をエッチングするアル
カリ溶液に侵される量がきわめて小さい。また各圧力発
生室12の一端に連通する各インク供給路14は、圧力
発生室12より浅く形成されており、圧力発生室12に
流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。すな
わち、インク供給路14は、シリコン単結晶基板を厚さ
方向に途中までエッチング(ハーフエッチング)するこ
とにより形成されている。なお、ハーフエッチングは、
エッチング時間の調整により行われる。
は、圧力発生室12を配設する密度に合わせて最適な厚
さを選択する。例えば、180dpi程度の解像度が得
られるように圧力発生室12を配置する場合、流路形成
基板10の厚さは、180〜280μm程度、より望ま
しくは、220μm程度とするのが好適である。また、
例えば、360dpi程度の解像度が得られるように圧
力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の
厚さは、100μm以下とするのが好ましい。これは、
隣接する圧力発生室間の隔壁の剛性を保ちつつ、配列密
度を高くできるからである。
各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側で連通
するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が
接着剤によって接合されている。このノズルプレート2
0は、シリコン単結晶基板からなり、ノズル開口21は
シリコン単結晶基板をドライエッチングすることによっ
て形成されている。なお、本実施形態では、ノズル開口
21は、インク滴が吐出されるノズル部21aと、ノズ
ル部21aよりも大きい径で形成されノズル部21aと
圧力発生室12とを連通するノズル連通部21bとから
なる。
の大きさと圧力発生室12の大きさとは、吐出するイン
ク滴の量、吐出スピード、吐出周波数等に応じて最適化
される。例えば、1インチ当たり360個のインク滴を
記録する場合、ノズル部21aは数十μmの直径で精度
よく形成する必要がある。
成基板10とは、本実施形態では、酸化シリコン膜10
0を介して接合されている。すなわち、ノズルプレート
20と流路形成基板10とは、接着剤を用いて接着する
のではなく、酸化シリコン膜100によって一体構造と
なっている。また、本実施形態では、この酸化シリコン
膜内には、流路形成基板10の接合面からノズルプレー
トの接合面まで突出する突起部55が埋設されている。
なお、これら流路形成基板10とノズルプレート20と
の接合方法については、詳しく後述する。
力発生室12の内面、ノズルプレート20に穿設された
ノズル開口21の内面及びノズルプレート20の表面に
も、酸化シリコン膜100が連続的に形成されている。
の弾性膜51の上には、厚さが例えば、約0.2μmの
下電極膜60と、厚さが例えば、約0.5〜3μmの圧
電体層70と、厚さが例えば、約0.1μmの上電極膜
80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素
子300を構成している。ここで、圧電素子300は、
下電極膜60、圧電体層70、及び上電極膜80を含む
部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方
の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を
各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そし
て、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び
圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加によ
り圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。
本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通
電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極と
しているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても
支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に
圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここ
では、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動によ
り変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータ
と称する。
上電極膜80は、圧電素子300の長手方向端部から周
壁上に延設されたリード電極90を介して図示しない外
部配線と接続されている。
ヘッドの製造方法について、図3及び図4を参照して説
明する。なお、図3及び図4は、圧力発生室12の幅方
向の断面図である。
基板10の一方面に第1の弾性膜50を形成すると共
に、他方面に保護膜52を形成する。すなわち、流路形
成基板10となるシリコン単結晶基板を約1100℃の
拡散炉で熱酸化することにより、流路形成基板10の表
面にそれぞれ酸化シリコンからなる第1の弾性膜50及
び保護膜52が形成される。
性膜50上にジルコニウム層を形成後、例えば、500
〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウムか
らなる第2の弾性膜51を形成する。
52をパターニングして、圧力発生室12、連通部13
及びインク供給路14が形成される領域に開口部52a
を形成し、その後、この開口部52aを介して流路形成
基板10をエッチングして圧力発生室12、連通部13
及びインク供給路14を形成する。
52をさらにパターニングすることにより、流路形成基
板10の表面に複数の突起部55を形成する。これら突
起部55は、後述する工程で流路形成基板10とノズル
プレート20とを接合する際に、両者の間に空間を保持
するためのものであり、各突起部55の大きさ、形状等
は特に限定されないが、高さが略同一であることが好ま
しい。また、この突起部55の数及び形成位置は、特に
限定されないが、流路形成基板10の全面に略一定の間
隔で設けることが好ましい。
基板10とノズルプレート20との間に所定間隔を空け
た状態で両者を熱酸化することによって両者を接合す
る。具体的には、流路形成基板10の表面に形成された
突起部55をノズルプレート20の表面に当接させ、流
路形成基板10とノズルプレート20との間に空間を確
保した状態で、約1100℃に加熱して流路形成基板1
0及びノズルプレート20を熱酸化する。これにより、
流路形成基板10とノズルプレート20とのそれぞれの
表面に酸化シリコン膜100が形成されていき、この酸
化シリコン膜100が一体化することにより両者が接合
される。すなわち、流路形成基板10とノズルプレート
20とが一体構造となる。
ノズル開口21の内面及びノズルプレート20の表面に
も、同時に酸化シリコン膜100が連続的に形成され
る。
路形成基板10の全面に略一定の間隔で形成されている
ため、これらの突起部55をノズルプレート20の表面
に当接させることにより、流路形成基板10とノズルプ
レート20との間には略均一な幅で空間が画成される。
したがって、流路形成基板10とノズルプレート20と
を熱酸化することにより、酸化シリコン膜100が均一
に形成されて流路形成基板10とノズルプレート20と
が良好に接合される。
とノズルプレート20とを接着剤を用いることなく酸化
シリコン膜100によって接合しているので、圧力発生
室12等に接着剤が流れ込むことがないため、ノズル詰
まりや振動板が拘束されることによる特性劣化を防止で
きる。
ば、後述する圧電体層70の焼成等、高温プロセスに対
応できる。したがって、圧電素子300を形成する前に
流路形成基板10とノズルプレート20とを接合してお
くことができる。これにより、流路形成基板10の剛性
が向上するため、製造過程で流路形成基板10にクラッ
クが発生するのを防止することができる。さらに、比較
的厚さの薄い流路形成基板10を用いても、ノズルプレ
ート20を接合することにより剛性が向上するため、ク
ラックの発生等を防止できると共に取り扱いが容易とな
る。
ト20との接合時に、圧力発生室12の内面等に酸化シ
リコン膜100が連続的に形成されるため、圧力発生室
12等のインク流路となる部分の親水性が向上し、イン
ク吐出特性が向上する。
10と同一材料で形成されているため、流路形成基板1
0との接着時の熱工程や実装時の後工程の熱工程で、反
りや反応の発生がなく、流路形成基板10あるいはノズ
ルプレート20に割れが発生することがない。
の接合面に、複数の突起部55を設けるようにしたが、
これに限定されず、勿論、ノズルプレート20の接合面
に設けるようにしてもよい。
とノズルプレート20との間に突起部55によって所定
の空間を保持した状態で両者を熱酸化することにより、
これらの表面に形成される酸化シリコン膜100によっ
て両者を接合するようにしたが、これら流路形成基板1
0とノズルプレート20との接合方法はこれに限定され
ない。例えば、流路形成基板10に形成された酸化シリ
コンからなる保護膜52にノズルプレート20を当接さ
せた状態、すなわち、保護膜55を介して流路形成基板
10とノズルプレート20との間に所定間隔を空けた状
態で、約1600℃に加熱することによっても両者を良
好に接合することができる。また、勿論、ノズルプレー
ト20の表面に、別途、酸化シリコン膜を設けるように
してもよいことは言うまでもない。
ルプレート20との接合後は、流路形成基板10のノズ
ルプレート20との接合面とは反対面側に、各圧力発生
室12に対応して圧電素子300を形成する。
に、第2の弾性膜51の全面にスパッタリングで下電極
膜60を形成後、下電極膜60をパターニングして全体
パターンを形成する。この下電極膜60の材料として
は、白金(Pt)等が好適である。これは、スパッタリ
ング法やゾル−ゲル法で成膜する後述の圧電体層70
は、成膜後に大気雰囲気下又は酸素雰囲気下で600〜
1000℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があ
るからである。すなわち、下電極膜60の材料は、この
ような高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければ
ならず、殊に、圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸
鉛(PZT)を用いた場合には、酸化鉛の拡散による導
電性の変化が少ないことが望ましく、これらの理由から
白金が好適である。
70を成膜する。この圧電体層70は、結晶が配向して
いることが好ましい。例えば、本実施形態では、金属有
機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥し
てゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物か
らなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用
いて形成することにより、結晶が配向している圧電体層
70とした。圧電体層70の材料としては、チタン酸ジ
ルコン酸鉛系の材料がインクジェット式記録ヘッドに使
用する場合には好適である。なお、この圧電体層70の
成膜方法は、特に限定されず、例えば、スパッタリング
法で形成してもよい。
法等によりチタン酸ジルコン酸鉛の前駆体膜を形成後、
アルカリ水溶液中での高圧処理法にて低温で結晶成長さ
せる方法を用いてもよい。
体層70は、バルクの圧電体とは異なり結晶が優先配向
しており、且つ本実施形態では、圧電体層70は、結晶
が柱状に形成されている。なお、優先配向とは、結晶の
配向方向が無秩序ではなく、特定の結晶面がほぼ一定の
方向に向いている状態をいう。また、結晶が柱状の薄膜
とは、略円柱体の結晶が中心軸を厚さ方向に略一致させ
た状態で面方向に亘って集合して薄膜を形成している状
態をいう。勿論、優先配向した粒状の結晶で形成された
薄膜であってもよい。なお、このように薄膜工程で製造
された圧電体層の厚さは、一般的に0.2〜5μmであ
る。
80を成膜する。上電極膜80は、導電性の高い材料で
あればよく、アルミニウム、金、ニッケル、白金等の多
くの金属や、導電性酸化物等を使用できる。本実施形態
では、白金をスパッタリングにより成膜している。
70及び上電極膜80のみをエッチングして圧電素子3
00のパターニングを行う。
なる金属層を流路形成基板10の全面に亘って形成する
と共に、各圧電素子300毎にパターニングしてリード
電極90を形成する。
及び異方性エッチングによって、一枚のウェハ上に多数
のチップを同時に形成し、プロセス終了後、図1に示す
ような一つのチップサイズの流路形成基板10毎に分割
する。そして、分割した流路形成基板10に、後述する
リザーバ形成基板30及びコンプライアンス基板40を
順次接着して一体化し、インクジェット式記録ヘッドと
する。
力発生室12等が形成された流路形成基板10の圧電素
子300側には、リザーバ31を有するリザーバ形成基
板30が接合されている。このリザーバ31は、本実施
形態では、リザーバ形成基板30を厚さ方向に貫通して
圧力発生室12の幅方向に亘って形成されている。そし
て、このリザーバ部31は、第1及び第2の弾性膜5
0,51及び下電極膜60を貫通して設けられる貫通孔
57を介して流路形成基板10の連通部13と連通され
ている。
00に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害
しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可
能な圧電素子保持部33が設けらている。そして、圧電
素子300の少なくとも圧電体能動部320は、この圧
電素子保持部33内に密封され、大気中の水分等の外部
環境に起因する圧電素子300の破壊を防止している。
ば、ガラス、セラミック材料等の流路形成基板10の熱
膨張率と略同一の材料を用いることが好ましく、本実施
形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結
晶基板を用いて形成した。これにより、上述のノズルプ
レート20の場合と同様に、両者を熱硬化性の接着剤を
用いた高温での接着であっても両者を確実に接着するこ
とができる。したがって、製造工程を簡略化することが
できる。
封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス
基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛
性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmの
ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルム)からな
り、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が
封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の
材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SU
S)等)で形成される。この固定板42のリザーバ31
に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部
43となっているため、リザーバ31の一方面は可撓性
を有する封止膜41のみで封止され、内部圧力の変化に
よって変形可能な可撓部32となっている。
部外側のコンプライアンス基板40上には、リザーバ3
1にインクを供給するためのインク導入口35が形成さ
れている。さらに、リザーバ形成基板30には、インク
導入口35とリザーバ31の側壁とを連通するインク導
入路36が設けられている。
ヘッドは、図示しない外部インク供給手段と接続したイ
ンク導入口35からインクを取り込み、リザーバ31か
らノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした
後、図示しない外部の駆動回路からの記録信号に従い、
上電極膜80と下電極膜60との間に電圧を印加し、第
1及び第2の弾性膜50,52、下電極膜60及び圧電
体層70をたわみ変形させることにより、圧力発生室1
2内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出
する。
態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的
構成は上述したものに限定されるものではない。
基板10上に、第1及び第2の弾性膜50及び51を設
けるようにしたが、これに限定されず、例えば、第1の
弾性膜50又は第2の弾性膜51の何れか一方のみを設
けるようにしてもよい。
及びリソグラフィプロセスを応用することにより製造で
きる薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にした
が、勿論これに限定されるものではなく、例えば、基板
を積層して圧力発生室を形成するもの、あるいはグリー
ンシートを貼付もしくはスクリーン印刷等により圧電体
層を形成するもの、又は水熱法等の結晶成長により圧電
体層を形成するもの等、各種の構造のインクジェット式
記録ヘッドに本発明を採用することができる。
い限り、種々の構造のインクジェット式記録ヘッドに応
用することができる。
式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するイン
ク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成し
て、インクジェット式記録装置に搭載される。図6は、
そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図であ
る。
ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、イ
ンク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着
脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1
Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けら
れたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられてい
る。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、
それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物
を吐出するものとしている。
い複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリ
ッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及
び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿っ
て移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ3に沿
ってプラテン8が設けられている。このプラテン8は図
示しない紙送りモータの駆動力により回転できるように
なっており、給紙ローラなどにより給紙された紙等の記
録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられ
て搬送されるようになっている。
形成基板とノズルプレートとを接着剤を介することなく
酸化シリコン膜を介して接合するようにしたので、製造
工程において、高温プロセスを必要とする圧電素子の形
成工程前に、流路形成基板とノズルプレートとを接合し
て一体構造とすることができる。これにより、比較的厚
さの薄い流路形成基板を用いても流路形成基板の剛性が
保持され、製造過程での破損を防止することができる。
また、比較的厚さの薄い流路形成基板を用いることによ
り、隔壁の剛性が向上するため圧力発生室を比較的高密
度に配列してもクロストークを防止することができる。
の接合に接着剤を用いていないため、圧力発生室等に接
着剤が流れ込むことによる特性劣化がなく、信頼性を向
上したインクジェット式記録ヘッドを実現することがで
きる。
録ヘッドの分解斜視図である。
録ヘッドを示す図であり、図1の断面図である。
録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
録装置の概略図である。
Claims (9)
- 【請求項1】 ノズル開口が穿設されたノズルプレート
と、前記ノズル開口に連通する圧力発生室が画成された
流路形成基板と、該流路形成基板の前記圧力発生室に対
応する領域に振動板を介して設けられた下電極、圧電体
層及び上電極からなる圧電素子とを具備するインクジェ
ット式記録ヘッドにおいて、 前記ノズルプレートと前記流路形成基板とが単結晶シリ
コンからなり、これらが接着剤を用いることなく酸化シ
リコン膜を介して接合されていることを特徴とするイン
クジェット式記録ヘッド。 - 【請求項2】 請求項1において、前記圧力発生室及び
前記ノズル開口の内面に前記酸化シリコン膜が連続的に
形成されていることを特徴とするインクジェット式記録
ヘッド。 - 【請求項3】 請求項1又は2において、前記酸化シリ
コン膜内には、前記流路形成基板又は前記ノズルプレー
トの何れか一方の接合面から他方の接合面まで突出する
複数の突起部が埋設されていることを特徴とするインク
ジェット式記録ヘッド。 - 【請求項4】 請求項1〜3の何れかにおいて、前記圧
力発生室がシリコン単結晶基板に異方性エッチングによ
り形成され、前記圧電素子を構成する各層が成膜及びリ
ソグラフィ法により形成されていることを特徴とするイ
ンクジェット式記録ヘッド。 - 【請求項5】 請求項1〜4の何れかのインクジェット
式記録ヘッドを具備することを特徴とするインクジェッ
ト式記録装置。 - 【請求項6】 単結晶シリコンからなりノズル開口が穿
設されたノズルプレートと、単結晶シリコンからなり前
記ノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形
成基板と、この圧力発生室の一部を構成する振動板を介
して前記圧力発生室に対応する領域に形成された圧電素
子とを備えたインクジェット式記録ヘッドの製造方法に
おいて、 前記流路形成基板の一方面に前記振動板の少なくとも一
部を構成する弾性膜を形成する第1の工程と、前記流路
形成基板の他方面側からエッチングすることにより前記
圧力発生室を形成する第2の工程と、前記流路形成基板
の開口面側と前記ノズルプレートとを所定の間隔を空け
た状態で前記流路形成基板と前記ノズルプレートとを熱
酸化して両者を酸化シリコン膜によって接合する第3の
工程と、前記圧電素子を形成する第4の工程とを有する
ことを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方
法。 - 【請求項7】 請求項6において、前記第3の工程は、
前記流路形成基板又は前記ノズルプレートの少なくとも
何れか一方の接合面に、一定の高さで突出する複数の突
起部を形成する工程を含み、前記突起部を他方の接合面
と当接させることにより前記流路形成基板と前記ノズル
プレートとの間に空間を確保した状態で両者を熱酸化し
て接合することを特徴とするインクジェット式記録ヘッ
ドの製造方法。 - 【請求項8】 請求項6において、前記第3の工程で
は、前記流路形成基板又は前記ノズルプレートの何れか
一方の表面に一体的に形成された酸化シリコン膜に他方
の接合面を当接させた状態で熱酸化して両者を接合する
ことを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方
法。 - 【請求項9】 請求項8において、前記第2の工程で
は、前記流路形成基板の表面に形成された酸化シリコン
膜をマスクとして前記流路形成基板のエッチングを行
い、前記第3の工程では、前記ノズルプレートの接合面
をマスクとして用いた酸化シリコン膜に当接させた状態
で熱酸化して両者を接合することを特徴とするインクジ
ェット式記録ヘッドの製造方法。
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