JP2002205191A - ステンレス鋼被覆アーク溶接棒 - Google Patents
ステンレス鋼被覆アーク溶接棒Info
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Abstract
ことができると共に、溶接金属のSi含有量の低減によ
り高温割れを防止することができ、更に気孔欠陥の発生
を防止できるステンレス鋼被覆アーク溶接棒を提供す
る。 【解決手段】 ステンレス鋼被覆アーク溶接棒のステン
レス鋼心線に被覆されている被覆剤は、被覆剤全質量に
対して、金属炭酸塩:CO2換算値で2.5乃至10質
量%、チタン酸化物:TiO2換算値で25乃至45質
量%、金属弗化物:F換算値で1.5乃至7質量%及び
珪酸化合物:SiO2換算値で15乃至30質量%を含
有し、更に、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル及び酸
化マンガンからなる群から選択された1種又は2種以上
を総量で3乃至18質量%含有し、金属粉末が30質量
%以下に規制されている。
Description
たステンレス鋼被覆アーク溶接棒に関し、特に、ピット
及びブローホール等の耐気孔欠陥性が優れたステンレス
鋼被覆アーク溶接棒に関する。
(以下、溶接棒ともいう)には、金属炭酸塩とチタン酸
化物とをベースとしたチタニア(TiO2)系(JI
S:日本工業規格、及びAWS:アメリカ溶接協会の規
格では−16タイプに区分される)に加えて、チタニア
の一部をシリカ(SiO2)に置換したチタニア−シリ
カ系(AWS:アメリカ溶接協会の規格では−17タイ
プに区分される)が多用されている。このうち、−17
タイプは−16タイプに比べてアーク力が強く、溶接作
業性が優れていることから、近時、多用されてきてい
る。
て、Siは凝固時に粒界に低融点フィルムを形成するた
め、高温割れを起こしやすいことから、Siの含有量は
できるだけ低い方が望ましい。
孔は、一般的に被覆剤の水分量が少ないほど、またシー
ルドガス発生量、即ち、金属炭酸塩が多いほど、更に金
属弗化物が多いほど防止でき、同一水分量では−16タ
イプ溶接棒より高シリカである−17タイプ溶接棒の方
が気孔が発生しやすいことは周知のことである。
被覆の固着には水ガラス(珪酸カリ水溶液、珪酸ソーダ
水溶液又は両者の混合液)を使用するため、製造時に2
00℃以上の高温で焼成した後、大気に放置すると被覆
剤への水分の吸着(以下、吸湿という)が起こり、これ
が原因で気孔欠陥が発生することも周知のことである。
用されている−17タイプ溶接棒は、被覆剤中の多量の
シリカにより、溶接金属へSiが還元し、この溶接金属
中のSi含有量が増大して、溶接金属の規格から外れて
しまうという問題点がある。この溶接金属中のSiの増
大により、前述のごとく、溶接金属の高温割れが発生す
る虞がある。また、−17タイプの溶接棒は、大気中に
長時間放置すると、溶接金属に気孔欠陥が発生しやす
い。このため、高温多湿の日本を含む東南アジア等で
は、この−17タイプの溶接棒は使用しにくいものであ
る。
溶接棒は、前述のAWSの他にも、特開昭57−130
797号公報に開示されている。しかし、この公報にお
いては、被覆剤の明確な数値限定がなく、また、溶接金
属のSi含有量の低減及び気孔欠陥の改善に関して何ら
言及されていない。
優れていると共に、Si含有量が低く、気孔欠陥が発生
しにくい溶接金属が得られる−17タイプの溶接棒の開
発が望まれていた。
のであって、−17タイプ溶接棒としての特性を保持す
ることができると共に、溶接金属のSi含有量の低減に
より高温割れを防止することができ、更に気孔欠陥の発
生を防止できるステンレス鋼被覆アーク溶接棒を提供す
ることを目的とする。
鋼被覆アーク溶接棒は、ステンレス鋼心線を被覆剤で被
覆したステンレス鋼被覆アーク溶接棒において、前記被
覆剤は、被覆剤全質量に対して、金属炭酸塩:CO2換
算値で2.5乃至10質量%、チタン酸化物:TiO2
換算値で25乃至45質量%、金属弗化物:F換算値で
1.5乃至7質量%及び珪酸化合物:SiO2換算値で
15乃至30質量%を含有し、更に、酸化鉄、酸化クロ
ム、酸化ニッケル及び酸化マンガンからなる群から選択
された1種又は2種以上を総量で3乃至18質量%含有
し、金属粉末が30質量%以下に規制されていることを
特徴とする。
酸化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル及び酸化マンガン
は、粒径が350μm以下のものをこれらの酸化物全質
量に対して80質量%以上含有し、粒径が10μm以下
の微粒のものをこれらの酸化物全質量に対して15乃至
45質量%含有することが好ましい。なお、本発明にお
いては、チタン酸化物、珪酸化合物、酸化鉄、酸化クロ
ム、酸化ニッケル及び酸化マンガンを総称して特定酸化
物という。
覆剤は、粒径が350μm以下のものを被覆剤全質量に
対して80質量%以上含有し、粒径が10μm以下の微
粒を被覆剤全質量に対して15乃至45質量%含有する
ことが好ましい。
ンレス鋼被覆アーク溶接棒について詳細に説明する。上
述のように、高シリカである−17タイプ溶接棒は溶接
金属のSi含有量が高くなり過ぎて高温割れを引き起こ
し、且つ気孔欠陥が発生しやすく、健全な溶接金属が得
られないことから、本願発明者等はその改善について種
々検討した。
素との結合がSiより弱いFe、Cr、Ni及びMn酸
化物の添加が溶接金属のSi増加を抑制するとの知見を
得た。また、被覆剤の全部又は一部の原料の粒径を特定
することにより、乾燥直後は勿論、大気放置後でも安定
した作業性を保持し、且つ気孔欠陥が発生しないという
知見を得た。本発明はこれらの知見を得て完成されたも
のである。
低く抑えるため、高温で酸素との結合力がSiより弱い
酸化物を添加すること、更に被覆剤の一部又は全部の原
料の粒径を特定することにより、耐気孔性を改善したこ
とにある。
の結合力がSiより小さいFe、Cr、Ni及びMn酸
化物の添加が溶接金属中のSiの増加を抑制する。図1
は横軸に鉄及びマンガン酸化物の総量をとり、縦軸に溶
接金属のSi含有量をとって、鉄酸化物とマンガン酸化
物との総量と溶接金属のSi含有量との関係を示すグラ
フ図である。図1に示す溶接においては、心線径を3.
2mmとし、溶接電流を105A(AC:交流)として
JIS Z3221に規定されている溶接条件により溶
接したものである。図1に示すように、酸化物の総量が
3質量%未満では、溶接金属中のSi含有量が高いが、
酸化物の総量が3質量%以上であると溶接金属中のSi
含有量が低下し、溶接金属中のSi含有量を抑制する効
果が十分に得られる。しかし、酸化物の総量が18質量
%を超えると、スラグの剥離性が劣化する。このため、
酸化物の総量は3乃至18質量%とする。他のCr及び
Ni酸化物についても同様であり、結局、酸化鉄、酸化
クロム、酸化ニッケル及び酸化マンガンの総量を3乃至
18質量%とすることにより、溶接金属のSi含有量を
低減することができる。
るときの塗装性を向上させるためには、被覆剤原料の粒
径が350μm以下のものが被覆剤全質量に対して80
質量%以上であることが有効である。
は、被覆剤の混練及び塗装に必要な水ガラス量を減少さ
せて吸湿量を低下させる効果があるので、大気放置後の
気孔欠陥の発生を抑制することができる。更にまた、こ
のような微粒は被覆剤中に均一に分散してアークを安定
にし、アーク力を増す働きがあるので、溶融金属の撹拌
が十分に行われて気孔が溶融金属から浮上しやすくな
り、欠陥発生を防止する作用がある。
(酸化チタン及び長石)の含有量をとり、縦軸にビード
長100mm以内に発生したピット数(個)をとって、
粒径が10μm以下の酸化チタン及び長石の微粒の添加
量を変えてシングルビードに発生したピット数を測定し
たものを示す。図2に示す溶接においては、直径が3.
2mmの溶接棒を温度30℃、相対湿度が80%の条件
で4時間放置して吸湿させ、板厚が6mmのSUS30
4の母材を使用して、溶接電流が105A(AC)の条
件で、水平板の上に垂直板を立てて、水平すみ肉溶接し
たものである。図2に示すように、微粒の含有量が15
質量%未満ではピットの発生を防止できないことがある
が、15質量%以上では、ピット数が0になっている。
逆に、微粒の含有量が45質量%を超えると、高温焼成
時に被覆が割れてしまうことがある。このため、微粒の
含有量は15乃至45質量%とすることが好ましい。
酸化チタン及び長石についてのものであるが、その他の
酸化物、即ち、長石以外の珪砂等の珪酸化合物、又は酸
化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル及び酸化マンガンの粒
径を規定しても同様の効果が得られる。この場合は、チ
タン酸化物、珪酸化合物、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニ
ッケル及び酸化マンガンからなる特定酸化物の総量に対
する粒度の割合を規定する必要がある。
ータであるが、この特定酸化物について得られた結果
は、被覆剤全体の粒度構成を規制した場合にも該当し、
特定酸化物のみでなく、被覆剤全体の粒度を10μm以
下の微粒が被覆剤全質量に対して15乃至45質量%と
することにより、耐気孔性をより安定して向上させるこ
とができる。
HELOS&RODOS社製のレーザ回折式粒度分布測
定装置により測定したものである。
接棒の組成及び数値限定理由について説明する。
0質量% 金属炭酸塩の配合は、アーク中で分解してCO2ガスを
発生し溶融金属を大気から遮断する作用及びスラグの塩
基度を高めて溶接金属のS又はO等を抑えて清浄度を上
げる作用がある。被覆剤全質量に対してCO2換算値で
金属炭酸塩の含有量が2.5質量%未満では、この働き
が不十分である。逆に、被覆剤全質量に対してCO2換
算値で金属炭酸塩の含有量が10質量%を超えると、ア
ーク力が低下して溶接作業性が劣化する。従って、被覆
剤全質量に対してCO2換算値で金属炭酸塩の含有量は
2.5乃至10質量%とする。なお、金属炭酸塩には、
石灰石、炭酸バリウム、炭酸マンガン、炭酸ソーダ、炭
酸マグネシウム及び炭酸リチウム等がある。
45質量% チタン酸化物の配合は、アークを安定にし、スラグの流
動性、被包性及び剥離性を良好にし、ビード外観及びビ
ード形状を良好にする。被覆剤全質量に対してチタン酸
化物の含有量がTiO2換算値で25質量%未満では、
この効果が得られない。逆に、被覆剤全質量に対してチ
タン酸化物の含有量がTiO2換算値で45質量%を超
えると、スラグの流動性がなくなり、スパッタが増え
る。従って、被覆剤全質量に対してチタン酸化物の含有
量はTiO2換算値で25乃至45質量%とする。な
お、チタン酸化物としては、ルチル、酸化チタン、イル
ミナイト、チタン酸カリ及びチタン酸カルシウム等があ
る。
% 金属弗化物の配合は、スラグの流動性を確保してビード
形状を良好にすると共に、ピットの発生を防止する作用
がある。被覆剤全質量に対して金属弗化物の含有量がF
換算値で1.5質量%未満では、この作用が不十分であ
る。逆に、被覆剤全質量に対して金属弗化物の含有量が
F換算値で7質量%を超えると、アークが不安定にな
り、スラグの剥離性が劣化する。従って、被覆剤全質量
に対して金属弗化物の含有量はF換算値で1.5乃至7
質量%とする。なお、金属弗化物としては、蛍石、氷晶
石、弗化マグネシウム、弗化ソーダ、弗化アルミニウ
ム、弗化バリウム、弗化リチウム及び弗化カリ等があ
る。
0質量% 珪酸化合物は、アーク中の溶滴の移行を小粒にして、所
謂−17タイプ溶接棒の特徴であるスプレーアーク化す
るのに必須であり、且つスラグの粘性を調節してビード
形状を良好にする作用がある。被覆剤全質量に対して珪
酸化合物の含有量がSiO2換算値で15質量%未満で
は、この作用が得られない。逆に、被覆剤全質量に対し
て珪酸化合物の含有量がSiO2換算値で30質量%を
超えると、スラグの剥離性が劣化する。従って、被覆剤
全質量に対して珪酸化合物の含有量はSiO2換算値で
15乃至30質量%にする。より好ましい珪酸化合物の
含有量は被覆剤全質量に対してSiO2換算値で16乃
至25質量%である。なお、珪酸化合物としては長石、
珪砂、珪灰石、マイカ、タルク、カオリン、珪酸ソー
ダ、珪酸カリ及び珪酸リチウム等がある。
化マンガンからなる群から選択された1種又は2種以
上:総量で3乃至18質量% 図1に示すように、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル
及び酸化マンガンの酸化物の合計が総量で3質量%未満
では、Si増加を抑制する効果を十分に得られない。一
方、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル及び酸化マンガ
ンが総量で18質量%を超えると、スラグの剥離が劣化
する。このため、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル及
び酸化マンガンからなる群から選択された1種又は2種
以上の含有量は総量で3乃至18質量%とする。
n,Al及びMg等の脱酸剤を添加する他に、使用する
心線の成分と目的とする溶接金属の成分により、Cr、
Ni、Mo、Nb又はこれらの鉄合金を添加することに
より被覆剤中に含有させることができる。脱酸剤は溶接
金属の酸素量を下げて延性及び靭性を改善する効果があ
る。脱酸剤以外のその他の金属粉末は成分調整のために
添加される。これらの金属粉末の含有量が30質量%を
超えると、溶接時の心線による発熱で保護筒が軟化する
所謂棒焼けが発生する。このため、金属粉末の含有量は
30質量%以下に規制する。
クロム、酸化ニッケル及び酸化マンガンからなる特定酸
化物の粒度構成:粒径が350μm以下のものをこれら
の酸化物全質量に対して80質量%以上含有し、且つ粒
径が10μm以下の微粒のものをこれらの酸化物全質量
に対して15乃至45質量%含有 前述のごとく、被覆剤の塗装性を向上させるために、上
述の特定酸化物において、粒径が350μm以下のもの
の含有量が被覆剤全質量に対して80質量%以上である
ことが有効である。また、図2に示すように、この特定
酸化物のうち、粒径が10μm以下のものの含有量を1
5質量%以上とすることにより、ピットの発生を防止で
きる。一方、粒径が10μm以下のものの含有量が45
質量%を超えると、高温焼成時に被覆が割れてしまうこ
とがある。このため、粒径が10μm以下ものの含有量
は15乃至45質量%とすることが好ましい。
のものを被覆剤全質量に対して80質量%以上含有し、
且つ粒径が10μm以下の微粒を被覆剤全質量に対して
15乃至45質量%含有 特定酸化物以外の被覆剤全体においても、被覆剤の塗装
性を向上させるために、粒径が350μm以下のものの
含有量が被覆剤全質量に対して80質量%以上であるこ
とが有効である。また、被覆剤全体においても、粒径が
10μm以下のものの含有量を15質量%以上とするこ
とにより、ピットの発生を防止できる。一方、粒径が1
0μm以下のものの含有量が45質量%を超えると、高
温焼成時に被覆が割れてしまうことがある。このため、
被覆剤全体において、粒径が10μm以下ものの含有量
は15乃至45質量%とすることが好ましい。
るが、更に、アークの安定性及びスラグの特性を変更す
るため、Al2O3、Na2O、K2O、MgO及びZ
r2O3等をその合計が15質量%以下となるように添
加しても、本発明の溶接棒の特性は本発明の目的を損な
うものではない。
ついて説明する。本発明の心線は、JIS Z3221
及びAWS A5.4に規定されているCr−Ni系又
はCr系ステンレス鋼溶着金属が得られることを前提と
した心線である。また、本発明のステンレス鋼被覆アー
ク溶接棒は被覆率が25乃至55%であることが望まし
い。被覆率が25%未満では、保護筒の形成が不十分で
ある虞がある。一方、被覆率が55%を超えると、乾燥
割れが発生し、生産性が低下する虞がある。被覆率と
は、溶接棒全質量あたりの被覆剤の質量の百分率(%)
のことである。
について、その特性を本発明の範囲から外れる比較例と
比較して具体的に説明する。先ず、本実施例のステンレ
ス鋼被覆アーク溶接棒の製造方法について説明する。始
めに、ステンレス鋼心線と被覆剤とを準備する。被覆剤
に水ガラス(珪酸カリ、珪酸ソーダ及び珪酸リチウムの
1種又は2種以上の混合水溶液)等の適当な固着剤を添
加して混練した後、この被覆剤を心線に被覆する。その
後、被覆心線を200乃至400℃の範囲の温度で1時
間程度乾燥させて焼成する。これにより、ステンレス鋼
被覆アーク溶接棒が得られる。
ス鋼心線の組成を示す。ステンレス鋼心線は直径が3.
2mm、長さが350mmである。また、下記表3乃至
8は心線と被覆剤との組み合わせ並びに被覆剤の組成及
び原料の組み合わせを示す。なお、下記表3乃至8に示
す「−」は添加されていないことを示す。また、下記表
6乃至8に示す「Fe−45%Si」はFeがSiを4
5質量%含有していることを示しており、他の元素につ
いても同じである。なお、本実施例のステンレス鋼被覆
アーク溶接棒は被覆径が5.7mmであり、被覆率が4
1%である。
条件で溶接し、溶接作業性の評価及びピット試験を行
い、溶接金属のSi含有量を測定した。溶接作業性につ
いては、板厚が6mmのSUS304の板材を溶接電流
が105A(AC)の条件で水平すみ肉溶接を行った。
ピット試験については、供試溶接棒を温度150℃で1
時間再乾燥させた後、30℃の温度で相対湿度が80%
の雰囲気で4時間吸湿させて行った。そして、板厚が6
mmのSUS304の板材を溶接電流が105A(A
C)の条件で水平すみ肉溶接を行った。なお、このピッ
ト試験では、各供試溶接棒を夫々4本使用した。また、
溶接金属のSi含有量はJIS Z3221に規定され
た方法により測定した。下記表9に溶接作業性、ピット
試験及び溶接金属のSi含有量の試験結果を示す。
◎とし、良好であったものを○とし、不良であったもの
を×とした。ピット試験の評価は、評価ビード長を20
0mmとし、試験した供試溶接棒において4本ともピッ
トがビード全般にないものを◎とし、4本のうち1乃至
3本にピットがビード全般になく、残りにピットがビー
ド先端のみに発生したものを◎〜○とし、4本ともピッ
トがビード先端のみに発生したものを○とし、4本とも
ピットがビード全般に発生したものを×とした。また、
溶接金属のSi含有量の評価はJIS及びAWS規格の
上限値0.90質量%に対して、この上限値以下のもの
を○とし、その上限値を超えるものを×とした。
8はいずれも溶接作業性、ピット試験及び溶接金属のS
i含有量において良好な結果を得ることができた。一
方、比較例No.9は金属炭酸塩の含有量がCO2換算値
で本発明の下限値(2.5質量%)未満であるため、シ
ールドが不十分でピットが発生した。比較例No.10は
金属炭酸塩の含有量がCO2換算値で本発明の上限値
(10質量%)を超えているため、アーク力が不足し、
スラグが邪魔をして溶接が困難であった。比較例No.1
1はチタン酸化物の含有量がTiO2換算値で本発明の
下限値(25質量%)未満であるため、アークの安定性
及びスラグの剥離性が劣化した。比較例No.12はチタ
ン酸化物の含有量がTiO2換算値で本発明の上限値
(45質量%)を超えているため、スパッタの発生量が
極端に増加した。比較例No.13は金属弗化物の含有量
がF換算値で本発明の下限値(1.5質量%)未満であ
るため、スラグの流動性がなくピットが発生した。比較
例No.14は金属弗化物の含有量がF換算値で本発明の
上限値(7質量%)を超えているため、アークが不安定
となり、溶接が困難であった。比較例No.15は珪酸化
合物がSiO2換算値で本発明の下限値(15質量%)
未満であるため、アークがスプレー化しなかった。比較
例No.16は珪酸化合物がSiO2換算値で本発明の上
限値(30質量%)を超えているため、スラグの剥離性
が劣化すると共に、溶接金属のSi含有量がJIS及び
AWSの規格の上限値を超えた。比較例No.17は酸化
物の合計が本発明の下限値(3質量%)未満であるた
め、溶接金属のSi含有量がJIS及びAWSの規格の
上限値を超えた。比較例No.18は酸化物の合計が本発
明の上限値(18質量%)を超えているため、スラグの
剥離性が劣化し、溶接が困難であった。比較例No.19
は金属粉末の合計が本発明の上限値(30質量%)を超
えているため、溶接中に保護筒が不十分となり、棒焼け
が発生して溶接が困難であった。
請求項2及び3に関する実施例である。下記表10乃至
13に示す組成を有する被覆剤を表1及び2に示す心線
に被覆したステンレス鋼被覆アーク溶接棒を使用し、第
1実施例と同様にして溶接を行い、溶接作業性及びピッ
ト試験を行った。また、被覆アーク溶接棒の生産性につ
いても試験した。この生産性は製品歩留で評価した。こ
の場合、製品歩留(%)とは製品量(kg)/原材料投
入量(kg)×100で求められた値のことであり、心
線も含む溶接棒全体の歩留まりのことである。この結果
を表14に示す。なお、表10乃至表13に示す「−」
は添加されていないことを示す。また、表12及び13
の欄に示す「粒径」はHELOS&RODOS社製のレ
ーザ回折式粒度分布測定装置により測定したものであ
る。
◎とし、良好であったものを○とし、不良であったもの
を×とした。ピット試験の評価は、ビード長さ200m
mについて行い、試験した供試溶接棒において4本とも
ピットがビード全般にないものを◎とし、4本のうち1
乃至3本にピットがビード全般になく、残りにピットが
ビード先端のみに発生したものを◎〜○とし、4本とも
ピットがビード先端のみに発生したものを○とし、4本
ともピットがビード全般に発生したものを×とした。
乃至23及び実施例No.26乃至30はいずれも請求項
2及び3を満足するものであり、生産性、溶接作業性及
びピット試験の結果が非常に優れていた(◎)。なお、
実施例No.20は特定酸化物及び被覆剤全体において、
粒径が10μm以下のものの含有量が請求項2及び3の
下限値未満であるため、生産性、溶接作業性及びピット
試験については良好(○)であった。実施例No.24は
特定酸化物及び被覆剤全体において、粒径が10μm以
下のものの含有量が請求項2及び3の上限値を超えてい
るため、生産性については良好(○)であった。実施例
No.25は特定酸化物において、粒径が10μm以下の
ものの含有量が請求項2の上限値を超えているため、生
産性については良好(○)であった。実施例No.31は
特定酸化物において、粒径が10μm以下のものの含有
量が請求項2の下限値未満であるため、溶接作業性につ
いては良好(○)であり、ピット試験については優れて
いた(◎〜○)。実施例No.32は被覆剤全体におい
て、粒径が10μm以下のものの含有量が請求項3の下
限値未満であるため、溶接作業性については良好(○)
であり、ピット試験については優れていた(◎〜○)。
実施例No.33は被覆剤全体において、粒径が10μm
以下のものの含有量が請求項3の上限値を超えているた
め、生産性については良好(○)であった。
ず、第1に−17タイプ溶接棒としての特性を保持する
ために被覆剤の組成を適切に規定し、第2にチタン酸化
物、珪酸化合物、鉄酸化物、酸化クロム、酸化ニッケル
及び酸化マンガンの特定酸化物の組成を規定することに
より、−17タイプ溶接棒の特性を保持しつつ、溶接金
属のSi含有量の低減化を図って高温割れを防止し、更
に気孔欠陥の発生を防止することができる。また、特定
酸化物の粒度構成を規定することにより、塗装性を向上
させることができる。更に、被覆剤全体の粒度構成を規
定することにより、塗装性を更に一層向上させることが
できると共に、気孔欠陥の発生をより一層防止できる。
軸に溶接金属のSi含有量をとって、鉄酸化物とマンガ
ン酸化物との総量と溶接金属のSi含有量との関係を示
すグラフ図である。
及び長石)の含有量をとり、横軸にビード長100mm
以内に発生したピット数をとって、酸化チタン及び長石
の粒径が10μm以下の微粒の添加量を変えてシングル
ビードに発生したピット数を測定した結果を示すグラフ
図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 ステンレス鋼心線を被覆剤で被覆したス
テンレス鋼被覆アーク溶接棒において、前記被覆剤は、
被覆剤全質量に対して、金属炭酸塩:CO2換算値で
2.5乃至10質量%、チタン酸化物:TiO2換算値
で25乃至45質量%、金属弗化物:F換算値で1.5
乃至7質量%及び珪酸化合物:SiO2換算値で15乃
至30質量%を含有し、更に、酸化鉄、酸化クロム、酸
化ニッケル及び酸化マンガンからなる群から選択された
1種又は2種以上を総量で3乃至18質量%含有し、金
属粉末が30質量%以下に規制されていることを特徴と
するステンレス鋼被覆アーク溶接棒。 - 【請求項2】 チタン酸化物、珪酸化合物、酸化鉄、酸
化クロム、酸化ニッケル及び酸化マンガンは、粒径が3
50μm以下のものをこれらの酸化物全質量に対して8
0質量%以上含有し、粒径が10μm以下の微粒のもの
をこれらの酸化物全質量に対して15乃至45質量%含
有することを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼
被覆アーク溶接棒。 - 【請求項3】 前記被覆剤は粒径が350μm以下のも
のを被覆剤全質量に対して80質量%以上含有し、粒径
が10μm以下の微粒を被覆剤全質量に対して15乃至
45質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に
記載のステンレス鋼被覆アーク溶接棒。
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