JP2002151154A - リチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池

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JP2002151154A
JP2002151154A JP2000339347A JP2000339347A JP2002151154A JP 2002151154 A JP2002151154 A JP 2002151154A JP 2000339347 A JP2000339347 A JP 2000339347A JP 2000339347 A JP2000339347 A JP 2000339347A JP 2002151154 A JP2002151154 A JP 2002151154A
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lithium
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secondary battery
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Yuichi Ito
勇一 伊藤
Yoshio Ukiyou
良雄 右京
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 正極活物質にCo、Ni、Mnのいずれか1
種以上の遷移金属を含むリチウム遷移金属複合酸化物を
用い、負極活物質に炭素材料を用いて構成するリチウム
二次電池であって、負極表面の被膜形成を抑制し、かつ
正極活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物の結晶構
造を安定化して、保存特性、特に高温下での保存特性の
良好なリチウム二次電池を提供する。 【解決手段】 含まれる遷移金属元素がCo、Ni、M
nのいずれか1種以上であるリチウム遷移金属複合酸化
物を正極活物質とする正極と、炭素材料を負極活物質と
する負極と、非水電解液とを備えてなるリチウム二次電
池であって、前記正極と前記負極との容量比(前記負極
の基準容量/前記正極の基準容量)は0.3以上0.7
以下となるように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウムの吸蔵・
脱離現象を利用したリチウム二次電池、特に、保存特性
の良好なリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】リチウムの吸蔵・脱離現象を利用したリ
チウム二次電池は、高エネルギー密度であることから、
携帯電話、パソコン等の小型化に伴い、通信機器、情報
関連機器の分野で広く普及するに至っている。一方で、
環境問題、資源問題から、自動車の分野でも電気自動車
の開発が急がれており、この電気自動車用の電源として
も、リチウム二次電池が検討されている。
【0003】このように広い分野での要望があるリチウ
ム二次電池であるが、その価格が高いことから、他の二
次電池にも増して長寿命であることが要求される。長寿
命であるための要件の一つとして、リチウム二次電池を
充電率を高く保持した状態で保存した場合に、例えば電
池の内部抵抗が上昇しないといった、いわゆる保存特性
が良好であることが要求される。特に、高温下では電池
反応が活性化し内部抵抗の増加も大きいことから、例え
ば屋外放置される可能性のある電気自動車用電源等の用
途にリチウム二次電池を使用することを想定した場合に
は、高温下での保存特性が良好であることが重要な特性
の一つとなる。
【0004】現在では、正極活物質にCo、Ni等の遷
移金属を主構成元素とするリチウム遷移金属複合酸化物
を用い、負極活物質に炭素材料を用いて構成するリチウ
ム二次電池の開発が進められているが、このようなリチ
ウム二次電池は、充電率を高く保持した状態で保存した
場合に電池の内部抵抗の上昇が大きく、保存特性、特に
高温下での保存特性に問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記リチウム二次電池
の保存による内部抵抗上昇の原因は、充電により負極電
位が低下し、その状態が長期間保持されることで、活物
質である炭素材料と電解液との反応が進行し、負極表面
に被膜が形成されることが考えられる。また、正極で
は、充電によってリチウムがリチウム遷移金属複合酸化
物から脱離するため、その状態が長期間保持されること
により、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶構造が崩壊
することが考えられる。
【0006】本発明者は、度重なる実験を行った結果、
電池の容量をある程度犠牲にしても、電池容量を負極の
容量を基準にして決定すること、すなわち負極規制とす
ることで、負極表面の被膜形成が抑制できることを見出
した。さらに、負極規制とすることで、正極におけるリ
チウムの利用率を低下させ、リチウム遷移金属複合酸化
物内にリチウムをより多く残存させた状態で保存するこ
とによって、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶構造の
崩壊を抑制できることを見出した。
【0007】本発明は、この知見に基づいたものであ
り、電池容量を負極規制とすることで、負極表面の被膜
形成を抑制し、かつ正極活物質であるリチウム遷移金属
複合酸化物の結晶構造を安定化して、保存特性、特に高
温下での保存特性の良好なリチウム二次電池を提供する
ことを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のリチウム二次電
池は、含まれる遷移金属元素がCo、Ni、Mnのいず
れか1種以上であるリチウム遷移金属複合酸化物を正極
活物質とする正極と、炭素材料を負極活物質とする負極
と、非水電解液とを備えてなるリチウム二次電池であっ
て、前記正極と前記負極との容量比(前記負極の基準容
量/前記正極の基準容量)は0.3以上0.7以下とな
るように構成されたことを特徴とする。
【0009】一般に、二次電池の容量は、後で詳しく説
明する正極基準容量と負極基準容量とのうち、小さい方
の容量に応じて決定される。通常のリチウム二次電池で
は、活物質の利用効率を考慮し、正極基準容量と負極基
準容量とを同じ値に設定するか、または、負極表面への
金属リチウムのデンドライト析出を防止すべく、負極基
準容量を正極基準容量に比較して大きく設定される。こ
の場合、充電によって正極活物質であるリチウム遷移金
属複合酸化物から放出するリチウムの割合は、予め存在
するリチウムに対して大きく(リチウム利用率が高
く)、その大きな割合でリチウムが放出した状態で長期
間保存されると、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶構
造は崩壊しやすくなる。
【0010】本発明のリチウム二次電池は、負極基準容
量を正極基準容量より小さくなるように構成した二次電
池であり、電池容量は、負極基準容量によって決定され
る。すなわち電池容量は負極規制となっている。したが
って、初期電池容量の点では若干劣るものの、充電の
際、正極活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物から
脱離するリチウムの量が制限されるため、より多くのリ
チウムがリチウム遷移金属複合酸化物中に残存し、保存
中におけるリチウム遷移金属複合酸化物の結晶構造の崩
壊を抑制することができる。
【0011】また、負極規制としているが、一定電位ま
で充電を行った場合に、正極活物質から放出されたリチ
ウムのうち、負極活物質である炭素材料に吸蔵しきれな
いリチウムが若干発生する。そして、この余剰のリチウ
ムが負極表面に析出し、負極表面を覆うこととなる。そ
の結果、負極表面が析出したリチウムで保護される形と
なり、従来問題となっていた炭素材料と電解液との反応
による被膜の形成が抑制されることになる。
【0012】ここで、正極基準容量とは、充放電を繰り
返しても、可逆的にその正極中に吸蔵・放出できるリチ
ウム量に相当する電気量を意味する。正極単位量あたり
の基準容量は、正極活物質の種類、正極単位量中の正極
活物質の存在割合等によって決定され、その正極固有の
値となる。したがって、正極単位量あたりの基準容量を
求め、実際の電池を構成するための正極量を乗じること
によって、その電池の正極基準容量とすることができ
る。本発明のリチウム二次電池においては、実際に電池
を構成する正極と同じものを所定量用いて電極を作製
し、対極に金属リチウムを用いた電気化学セルを構成さ
せ、20℃の温度下、上限電圧4.1V〜下限電圧3.
0Vの間で、電流密度0.2mA/cm2の定電流で充
放電させることによって求めた電気量の値を上記所定量
で除して、正極単位量あたりの基準容量とする。
【0013】また、負極基準容量とは、正極基準容量と
同様、充放電を繰り返しても可逆的にその負極中に吸蔵
・放出できるリチウム量に相当する電気量を意味する。
負極単位量あたりの基準容量は、正極同様、負極活物質
の種類、負極単位量中の負極活物質の存在割合等によっ
て決定され、その負極固有の値となる。したがって、負
極単位量あたりの基準容量を求め、実際の電池を構成す
るための負極量を乗じることによって、その電池の負極
基準容量とすることができる。本発明のリチウム二次電
池においては、正極同様、実際に電池を構成する負極と
同じものを所定量用いて電極を作製し、対極に金属リチ
ウムを用いた電気化学セルを構成させ、20℃の温度
下、上限電圧1.5V〜下限電圧0Vの間で、電流密度
0.2mA/cm2の定電流で充放電させることによっ
て求めた電気量の値を上記所定量で除して、負極単位量
あたりの基準容量とする。
【0014】本発明のリチウム二次電池では、正負極容
量比、つまり正極と負極との容量比(負極基準容量/正
極基準容量)を0.3以上0.7以下となるように電池
を構成する。正負極容量比が0.7を超えるものは、上
述したように、正極活物質におけるリチウム利用率が高
すぎて活物質の結晶構造の崩壊を招く。また、負極容量
を小さくしすぎて、正負極容量比が0.3未満になると
負極表面でのリチウムの析出が過剰となり、デンドライ
トの問題が発生する。
【0015】また、本発明のリチウム二次電池では、負
極活物質を含む負極合材の量を少なくすることができる
ため、例えば円筒型電池を構成する際には、正極シート
に対し相対的に負極シートの厚さを薄くでき、電池全体
の体積を小さくすることができる。負極活物質となる炭
素材料は、正極活物質となるリチウム遷移金属複合酸化
物と比較して比重が小さいため、体積の減少効果は特に
大きいものとなる。したがって、本発明のリチウム二次
電池は、保存特性が良好なことに加え、電池の体積エネ
ルギー密度の高いリチウム二次電池となる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のリチウム二次電池は、リ
チウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とした正極と、
炭素材料を負極活物質とした負極とを主要構成要素と
し、この正極および負極、正極および負極との間に挟装
されるセパレータ、非水電解液等を電池ケースに組付け
ることによって構成することができる。以下、本発明の
リチウム二次電池の好適な実施形態について、各構成要
素に分けて順に説明する。
【0017】〈正極〉正極は、正極活物質であるリチウ
ム遷移金属複合酸化物の粉状体に導電材および結着剤を
混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材とし
たものを、アルミニウム等の金属箔製の集電体表面に塗
布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して
形成することができる。
【0018】正極活物質となるリチウム遷移金属複合酸
化物は、Co、Ni、Mnのいずれか1種以上をその構
成元素とする。なかでも、酸化還元電位が高く4V級の
リチウム二次電池を構成できること等の理由から、基本
組成をそれぞれLiCoO2、LiNiO2、LiMnO
2等とするリチウム遷移金属複合酸化物を用いることが
望ましい。特に、理論容量が大きくかつ比較的安価であ
るという利点を考慮すれば、Niを主構成要素とした基
本組成をLiNiO2とする規則配列層状岩塩構造リチ
ウムニッケル複合酸化物を用いることが望ましい。
【0019】なお、上記「基本組成を〜とする」とは、
その組成式で表される組成のものだけでなく、結晶構造
におけるLi、Co、Ni、Mn等のサイトの一部を他
の元素で置換したものをも含むことを意味する。さら
に、化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損
等した非化学量論組成のものをも含むことを意味する。
【0020】基本組成をLiNiO2とする層状岩塩構
造リチウムニッケル複合酸化物を用いる場合、その組成
が、組成式LiNiaM1b2(M1はCo、Mn、A
lから選ばれる少なくとも1種;0.5<a<0.9
5;a+b=1)で表されるものが望ましい。そしてさ
らに、組成式LiNixM2yAlz2(M2はCo、M
nから選ばれる少なくとも1種;x+y+z=1;0.
5<x<0.95;0.01<y<0.4;0.001
<z<0.2)で表されるものがより望ましい。
【0021】この、LiNixM2yAlz2は、役割の
異なるM2、Alの2種以上の元素でNiサイトの一部
を置換したものとなっている。置換されずに残存するN
iの割合、つまり組成式におけるxの値は、0.5<x
<0.95とするのが望ましい。この好適範囲のものに
比べ、x≦0.5の場合は、層状岩塩構造のものだけで
なく、スピネル構造等の第2の相が生成し、容量が低下
しすぎるからであり、また、x≧0.95の場合は、置
換効果が少なすぎて、目的とする良好な耐久性の電池を
構成できないからである。なお、0.7<x<0.9の
範囲とするのがさらに好ましい。
【0022】Co、Mnから選ばれる元素M2は、主
に、リチウムニッケル複合酸化物の結晶構造を安定化す
る役割を果たす。M2での結晶構造安定化により、二次
電池の保存特性は良好に保たれ、特に高温下での貯蔵に
よる保存劣化が抑制される。保存特性の改善効果を充分
に発揮させるために、M2の置換割合、つまり組成式に
おけるyの値は0.01<y<0.4とすることが望ま
しい。この好適範囲のものに比べ、y≦0.01の場合
は、構成される二次電池の結晶構造安定化が充分でない
ため耐久性が良好ではなく、y≧0.4の場合はリチウ
ムニッケル複合酸化物の結晶性が低下し好ましくない。
なお、0.05<y<0.3とするのがより好ましい。
さらに、Coには、元素置換による容量低下を抑えると
ともに、Li(Co,Ni)O2は全固溶型であり、結
晶性の低下を最小限にとどめるという利点があることか
ら、これを考慮すれば、M2にCoを用いることがより
望ましい。
【0023】Alは、主に、酸素放出に伴う活物質の分
解反応を抑え、熱安定性を向上させつつ、容量低下を最
小限に抑えるという役割を果たす。この役割のため、A
lの置換割合、つまり組成式におけるzの値は、0.0
01<z<0.2とするのが望ましい。この好適範囲の
ものの比べ、z≦0.001の場合は、安全性に対して
充分な効果が得られなくなり、z≧0.2の場合は、正
極の容量が低下してしまうため好ましくない。なお、
0.004<z<0.1とするのがより好ましい。
【0024】上述のリチウム遷移金属複合酸化物は、そ
の製造方法を特に限定するものではなく、固相反応法、
溶液からの析出を経てそれを焼成する方法、噴霧燃焼
法、溶融塩法等種々の方法にて行えばよい。これらの方
法の中でも、大量のリチウム遷移金属複合酸化物を安価
に製造できるという利点を考慮すれば、固相反応法によ
るのが望ましい。
【0025】固相反応法による製造は、リチウム源およ
び遷移金属源となるそれぞれの原料化合物を混合し、そ
の混合物を酸化性雰囲気中で焼成して行えばよい。この
場合のリチウム源となる原料化合物としては、水酸化リ
チウム、炭酸リチウム等を用いることができる。遷移金
属源となる原料化合物は、炭酸コバルト、炭酸ニッケル
等の炭酸塩、硝酸コバルト、硝酸ニッケル等の硝酸塩、
二酸化マンガン、三二酸化マンガン等の酸化物等を用い
ることができる。遷移金属サイトの一部を置換させる場
合は、置換元素を含む原料化合物を混合すればよい。こ
れらの原料化合物を、製造しようとするリチウム遷移金
属複合酸化物の組成に応じた割合で混合し、その混合物
を、大気中あるいは酸素気流中等の酸化性雰囲気中で焼
成すればよい。焼成温度は、600〜1200℃で行う
ことが望ましく、焼成時間は、6〜48時間とするのが
よい。
【0026】正極を形成する際、活物質であるリチウム
遷移金属複合酸化物に混合させる導電材は、正極の電気
伝導性を確保するためのものであり、カーボンブラッ
ク、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質粉状体の1
種又は2種以上を混合したものを用いることができる。
結着剤は、活物質粒子および導電材粒子を繋ぎ止める役
割を果たすものでポリテトラフルオロエチレン、ポリフ
ッ化ビニリデン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプ
ロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いること
ができる。これら活物質、導電材、結着剤を分散させる
溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶
剤を用いることができる。
【0027】〈負極〉負極は、負極活物質にリチウムを
吸蔵・放出できる炭素材料の粉状体を用い、この炭素材
料に結着剤を混合し、溶剤を加えてペースト状にした負
極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布乾燥し、必
要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成すること
ができる。リチウムを吸蔵・放出できる炭素材料には、
天然黒鉛、球状あるいは繊維状の人造黒鉛、コークス等
の易黒鉛化性炭素、フェノール樹脂焼成体等の難黒鉛化
性炭素等を挙げることができ、これらの1種を単独であ
るいは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】ここで、人造黒鉛は、例えば、易黒鉛化性
炭素を2800℃以上の高温で熱処理して製造すること
ができる。この場合の原料となる易黒鉛化性炭素には、
コークス、ピッチ類を400℃前後で加熱する過程で得
られる光学異方性の小球体(メソカーボンマイクロビー
ズ:MCMB)等がある。
【0029】人造黒鉛を使用する場合、上記メソカーボ
ンマイクロビーズを黒鉛化した黒鉛化メソカーボンマイ
クロビーズ(黒鉛化MCMB)を用いることが望まし
い。この黒鉛化MCMBは、球状形態をしていることが
特徴であり、比表面積が小さく電解液の分解を最小限に
抑え、かつ充填密度の向上に寄与することができる。し
たがって、黒鉛化MCMBを負極活物質として用いれ
ば、保存特性がより良好で、エネルギー密度のより高い
二次電池が構成できる。また、結晶子がラメラ状に配列
し、結晶子端面が粒子表面に露出しているため、黒鉛化
MCMBを負極活物質に用いれば、充放電時のリチウム
の吸蔵・放出がスムーズで、出力特性にも優れた電池を
構成できる。
【0030】負極活物質である炭素材料を結着させる結
着剤は、正極同様、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素
樹脂を用いることができる。また、活物質、結着剤を分
散させる溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン等の有
機溶剤を用いることができる。
【0031】〈正負極容量比〉本発明のリチウム二次電
池では、正負極容量比(負極基準容量/正極基準容量)
を0.3以上0.7以下となるように、正極および負極
を構成させる。正極および負極の基準容量は、活物質の
種類、正極合材および負極合材を塗工して形成される正
極合材層および負極合材層の層厚、合材層における活物
質の存在割合、つまり活物質、導電材、結着剤の混合比
等を変更することによって異なるものとなる。そこで、
実際に用いる活物質を使用して作製した正極および負極
の数種類のサンプルについて、上記のように、金属リチ
ウムを対極として電気化学セルを構成させて、このサン
プルとなる正極および負極の基準容量を予め測定するこ
とを行い、この測定値から、目的とする正極および負極
の合材層の塗工厚、活物質配合割合等を決定し、正負極
容量比が適正な二次電池を構成させればよい。
【0032】〈その他の構成要素〉上記正極および負極
の他の構成要素として、正極および負極との間に挟装さ
れるセパレータ、非水電解液があり、これらを電池ケー
スに収納し、正極集電体および負極集電体から外部に通
ずる正極端子および負極端子までの間を集電用リード等
を用いて接続し、電池ケースを密閉し電池系を外部と離
隔してリチウム二次電池を完成する。なお、リチウム二
次電池の形状は円筒型、積層型、コイン型等、種々のも
のとすることができる。
【0033】正極および負極に挟装させるセパレータ
は、正極と負極とを分離し電解液を保持するものであ
り、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を
用いることができる。
【0034】非水電解液は、電解質としてのリチウム塩
を有機溶媒に溶解させたものである。リチウム塩は有機
溶媒に溶解することによって解離し、リチウムイオンと
なって電解液中に存在する。使用できるリチウム塩とし
ては、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3
SO3、LiAsF6、LiN(CF3SO22、LiN
(C25SO22等が挙げられる。これらのリチウム塩
は、それぞれ単独で用いてもよく、また、これらのもの
のうち2種以上のものを併用することもできる。
【0035】リチウム塩を溶解させる有機溶媒には、非
プロトン性の有機溶媒を用いる。例えば、環状カーボネ
ート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル
あるいは鎖状エーテル等の1種または2種以上からなる
混合溶媒を用いることができる。環状カーボネートの例
示としてはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネ
ート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等
が、鎖状カーボネートの例示としてはジメチルカーボネ
ート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネー
ト等が、環状エステルの例示としてはガンマブチロラク
トン、ガンマバレロラクトン等が、環状エーテルの例示
としてはテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロ
フラン等が、鎖状エーテルの例示としてはジメトキシエ
タン、エチレングリコールジメチルエーテル等がそれぞ
れ挙げられる。これらのもののうちいずれか1種を単独
で用いることも、また2種以上を混合させて用いること
もできる。
【0036】なお、上記セパレータおよび非水電解液と
いう構成に代えて、ポリエチレンオキシド等の高分子量
ポリマーとLiClO4やLiN(CF3SO22等のリ
チウム塩を使用した高分子固体電解質を用いることもで
き、また、上記非水電解液をポリアクリロニトリル等の
固体高分子マトリクスにトラップさせたゲル電解質を用
いることもできる。
【0037】〈他の実施形態の許容〉以上、本発明のリ
チウム二次電池の実施形態について説明したが、上述し
た実施形態は一実施形態にすぎず、本発明のリチウム二
次電池は、上記実施形態を始めとして、当業者の知識に
基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施す
ることができる。
【0038】
【実施例】上記実施形態に基づき、リチウム遷移金属複
合酸化物を正極活物質とした正極と、炭素材料を負極活
物質とした負極とを用いて、正負極容量比が0.3以上
0.7以下となるように構成した18650型円筒型二
次電池を実施例として作製した。また、正負極容量比が
上記範囲外となる二次電池を比較例として作製した。そ
して、実施例、比較例の各二次電池を所定の条件で保存
した後、内部抵抗を測定することにより、本発明のリチ
ウム二次電池が良好な保存特性を示すことを確認した。
以下に、実施例、比較例の各二次電池の作製、保存特性
の評価について説明する。
【0039】〈リチウム二次電池の作製〉 (1)実施例の二次電池 正負極容量比が0.3、0.5となるように構成した1
8650型円筒型二次電池を実施例の二次電池として作
製した。なお、正負極容量比は、予備的に正極基準容量
および負極基準容量を求めておき、それら両基準容量の
値に基づいて、負極への負極合材塗布量を変化させて調
整した。正極および負極基準容量の測定方法については
後に説明する。
【0040】正極は、正極活物質としてLiNi0.8
0.15Al0.052を用いて形成した。まず、活物質で
あるLiNi0.8 Co0.15Al0.05285重量部に、
導電材としてのカーボンブラックを10重量部、結着剤
としてのポリフッ化ビニリデンを5重量部混合し、溶剤
として適量のN−メチル−2−ピロリドンを添加して、
ペースト状の正極合材を調製し、次いで、このペースト
状の正極合材を厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の
両面に塗布し、乾燥させ、その後ロールプレスにて圧縮
し、シート状の正極を作製した。なお、予備的に求めた
正極基準容量に基づいて、正極合材層の厚さは30μm
とした。このシート状の正極を54mm×450mmの
大きさに裁断して用いた。
【0041】対向させる負極は、黒鉛化メソカーボンマ
イクロビーズ(黒鉛化MCMB)を活物質として用い
た。まず、活物質となる黒鉛化MCMBの95重量部
に、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを5重量部混
合し、溶剤として適量のN−メチル−2−ピロリドンを
添加し、ペースト状の負極合材を調製し、次いで、この
ペースト状の負極合材を厚さ10μmの銅箔集電体の両
面に塗布し、乾燥させ、その後ロールプレスにて圧縮
し、シート状の負極を作製した。なお、負極合材層の厚
さは、正負極容量比が0.3であるものは10μm、
0.5であるものは16μmとした。このシート状の負
極を56mm×500mmの大きさに裁断して用いた。
【0042】上記それぞれ正極および負極を、それらの
間に厚さ25μm、幅58mmのポリエチレン製セパレ
ータを挟んで捲回し、ロール状の電極体を形成した。そ
して、その電極体を18650型円筒形電池ケース(外
径18mmφ、長さ65mm)に挿設し、非水電解液を
注入し、その電池ケースを密閉して円筒型リチウム二次
電池を作製した。なお、非水電解液は、エチレンカーボ
ネートとジエチルカーボネートとを体積比で3:7に混
合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解した
ものを用いた。
【0043】なお、上述の正極および負極の基準容量
は、以下のようにして求めた。まず上記正極合材および
負極合材を、集電体の片面にのみ塗工して合材層を形成
させたものを、直径15mmφの円盤状に打ち抜きサン
プルとなる電極を作製した。このサンプル電極に金属リ
チウム極を対向させて電気化学セルを構成し、20℃の
温度下で、正極の場合は上限電圧4.1V〜下限電圧
3.0Vの間で、負極の場合は上限電圧1.5V〜下限
電圧0Vの間で、電流密度0.2mA/cm2の定電流
で充放電させることによって正極および負極のサンプル
あたりの基準容量を求めた。その結果、正極基準容量は
190mAh/g、負極基準容量は330mAh/gで
あった。
【0044】(2)比較例の二次電池 上記実施例の二次電池において、負極合材の塗布量のみ
を変化させて、比較例の二次電池を作製した。具体的に
は、正負極容量比が0.8、1.0、1.3、2.4と
なるように構成し、負極合材層の厚さはそれぞれ、24
μm、30μm、40μm、70μmの厚さとした。
【0045】〈保存特性の評価〉以上のように作製した
実施例および比較例の各二次電池について、保存試験を
行い、その前後の内部抵抗を測定することで、保存特性
を評価した。
【0046】(1)保存試験 保存試験は、実施例および比較例の各二次電池を、充電
状態(SOC)100%の状態で、保存温度60℃の恒
温槽に1ヶ月間保存することとした。ここで、「充電状
態(SOC)」とは、可逆的に充放電可能な電池電圧の
範囲において、その上限となる電池電圧が得られる充電
状態を100%、つまり満充電状態とし、下限となる電
池電圧が得られる充電状態を0%、つまり空充電状態と
したときの充電状態(SOC:State of Charge)を意
味する。本保存試験では、SOC=100%の状態にす
るために、電流密度0.2mA/cm2の定電流で電圧
が4.1Vに到達するまで充電を行った後、さらに4.
1Vの定電圧で充電を続け、合計7時間の充電を行っ
た。
【0047】そして、実施例および比較例の各二次電池
について、保存試験の前後で内部抵抗の変化を調べた。
内部抵抗の測定方法を以下に説明する。
【0048】各リチウム二次電池の容量の50%まで充
電した状態(SOC50%)で、0.1Cで10秒間放
電させ、10秒目の電圧を測定した。次いで0.3Cで
10秒間、1Cで10秒間、3Cで10秒間、10Cで
10秒間放電させ、各10秒目の電圧を測定した。同様
の手順で充電も行い、各10秒目の電圧を測定した。そ
して、電圧の電流依存性を求め、電流−電圧直線の勾配
を内部抵抗とした。なお、1Cは、各二次電池を1時間
で放電するために必要な電流である。
【0049】保存試験の前後における各内部抵抗の値か
ら、式[{(保存試験後の内部抵抗/保存試験前の内部
抵抗)−1}×100]を用いて内部抵抗増加率を計算
した。実施例および比較例の各二次電池について、正負
極容量比と内部抵抗増加率の関係を図1に示す。
【0050】図1から、正負極容量比が大きくなるにつ
れ、内部抵抗増加率は高くなることがわかる。特に、正
負極容量比が1を超えると内部抵抗増加率は30%以上
と高くなる。これに対し、正負極容量比が0.3以上
0.7以下である実施例の二次電池では、内部抵抗増加
率は5%程度であり、ほとんど内部抵抗は増加していな
い。したがって、正負極容量比が0.3以上0.7以下
である本発明の二次電池は、内部抵抗の増加が抑制さ
れ、保存特性、特に高温下での保存特性が良好な二次電
池であることが確認できた。
【0051】また、実施例および比較例の各二次電池の
活物質当たりの初期容量測定し、正負極容量比との関係
を調べた。その結果を図2に示す。図2より、正負極容
量比が小さくなると、初期容量もやや小さくなることが
わかる。ただし、正負極容量比が0.3以上0.7以下
の範囲においては、初期容量は140mAh/g程度で
あり、これは実用上充分な容量である。したがって、正
負極容量比が0.3以上0.7以下である本発明の二次
電池は、高い容量を確保しつつ、内部抵抗の増加が抑制
され、保存特性、特に高温下での保存特性が良好な二次
電池であることが確認できた。
【0052】
【発明の効果】本発明のリチウム二次電池は、負極基準
容量を正極基準容量より小さくなるように構成すること
によって、正極においては活物質であるリチウム遷移金
属複合酸化物の結晶構造の崩壊を抑制し、負極において
は負極表面の被膜形成を抑制することができ、内部抵抗
の増加が抑制され、保存特性、特に高温下での保存特性
の良好な二次電池となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例および比較例の二次電池における正負
極容量比と内部抵抗増加率との関係を示すグラフであ
る。
【図2】 実施例および比較例の二次電池における正負
極容量比と活物質当たりの初期容量との関係を示すグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5H029 AJ04 AK03 AL06 AL07 AL08 AM03 AM04 AM05 AM07 HJ02 HJ19 5H050 AA10 BA17 CA08 CA09 CB07 CB08 CB09 HA02 HA19

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含まれる遷移金属元素がCo、Ni、M
    nのいずれか1種以上であるリチウム遷移金属複合酸化
    物を正極活物質とする正極と、炭素材料を負極活物質と
    する負極と、非水電解液とを備えてなるリチウム二次電
    池であって、 前記正極と前記負極との容量比(前記負極の基準容量/
    前記正極の基準容量)は0.3以上0.7以下となるよ
    うに構成されたことを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 【請求項2】 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、組
    成式LiNi0.8Co0 .15Al0.052で表される層状岩
    塩構造リチウムニッケル複合酸化物である請求項1に記
    載のリチウム二次電池。
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