JP2002146043A - セルロースアシレートフイルム - Google Patents

セルロースアシレートフイルム

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JP2002146043A
JP2002146043A JP2000341414A JP2000341414A JP2002146043A JP 2002146043 A JP2002146043 A JP 2002146043A JP 2000341414 A JP2000341414 A JP 2000341414A JP 2000341414 A JP2000341414 A JP 2000341414A JP 2002146043 A JP2002146043 A JP 2002146043A
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cellulose acylate
film
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cellulose
acylate film
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JP2000341414A
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Yasuo Kuraki
康雄 椋木
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非ハロゲン系有機溶剤を用いて常温溶解、冷
却溶解法または高温高圧溶解法で得たセルロースアシレ
ート溶液を流延し、面状の優れたセルロースセルロース
フイルムを形成する。 【解決手段】 水酸基の置換度が2.6〜3.0のセル
ロースアシレートおよび実質的に含塩素炭化水素を含ま
ない有機溶媒からなるセルロースアシレート溶液を流延
して製造されたセルロースアシレートフイルムにおい
て、フイルムにリン酸系、カルボン酸系、スルフォン酸
系または硫酸エステル系の剥離剤を添加する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はハロゲン化銀写真感
光材料または液晶画像表示装置に有用なセルロースアシ
レートフイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ハロゲン化銀写真感光材料や液晶
画像表示装置に使用されるセルロースアシレートを製造
する際に使用されるセルロースアシレート溶液の有機溶
媒は、メチレンクロライドのような塩素含有炭化水素が
使用されている。メチレンクロライド(沸点40℃)
は、従来からセルロースアシレートの良溶媒として用い
られ、製造工程の製膜及び乾燥工程において沸点が低い
ことから乾燥させ易いという利点により好ましく使用さ
れている。逆にメチレンクロライドは沸点が低く揮発し
易いため、密閉設備でも取り扱い工程で若干漏れ易く回
収にも限界があり、完全に大気中への散逸を防ぎきれな
いという問題があり、その環境安全性の点で改善が望ま
れている。そこで、メチレンクロライド以外のセルロー
スアシレートの溶媒の探索がなされて来た。セルロース
アシレート特にセルローストリエステルに対する溶解性
を示す有機溶媒として知られているものにはアセトン
(沸点56℃)、酢酸メチル(沸点56℃)、テトラヒ
ドロフラン(沸点65℃)、1,3−ジオキソラン(沸
点75℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)など
がある。しかしながら、これらの有機溶媒は従来の溶解
方法では実際に実用できるに十分な溶解性は得られてい
ない。
【0003】この解決として、J.M.G.Cowie
等はMakromol.chem.143巻、105頁
(1971)においてセルローストリアセテート(酢化
度60.1%から61.3%)をアセトン中で−80℃
から−70℃に冷却した後、加温することによって0.
5から5重量%の希薄溶液が得られることを報告してい
る。このような低温でセルロースアシレートを溶解する
方法を冷却溶解法という。また、上出健二等は繊維機械
学会誌、34巻、57−61頁(1981)の「三酢酸
セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」の中で冷却
溶解法を用いての紡糸技術について述べている。
【0004】また、特開平9−95538号、同9−9
5544号、同9−95557号の各公報では、上記技
術を背景に、非塩素系溶剤を用いて冷却溶解法によって
セルロースアシレートを溶解することが開示されてい
る。その際に用いられる非塩素系有機溶剤としては、エ
ーテル類、ケトン類あるいはエステルから選ばれる有機
溶媒を用いた冷却溶解法によりセルロースアシレートを
溶解してフイルムを作成しており、これらの有機溶媒と
してはアセトン、2−メトキシエチルアセテート、シク
ロヘキサノン、エチルホルメート、及びメチルアセテー
トなどが好ましいとしている。一方、特開平11−60
752号では、フルオロアルコールをセルロースアシレ
ート溶液に添加して改良することが提案されている。し
かしながら、これらの方法でも微小な不溶解物が残存
し、流延してセルロースアシレートフイルムとした時に
微細なブツが存在し、電子材料用途で用いられる場合に
は点欠陥として、商品価値を著しく損なうものであっ
た。
【0005】セルロースアシレートフイルムは、一般に
ソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製
造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレ
ートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流
延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。メルトキ
ャスト法では、セルロースアシレートを加熱により溶融
したものを支持体上に流延し、冷却してフイルムを形成
する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法
よりも平面性の高い良好なフイルムを製造することがで
きる。このため、実用的には、ソルベントキャスト法の
方が普通に採用されている。ソルベントキャスト法につ
いては、多くの文献に記載がある。最近のソルベントキ
ャスト法では、ドープを支持体上へ流延してから、支持
体上の成形フイルムを剥離するまでに要する時間を短縮
して、製膜工程の生産性を向上させることが課題になっ
ている。特に、ソルベントキャスト法によってセルロー
スアシレートフイルムを得るに際して、前述の非ハロゲ
ン系溶剤を用いて冷却溶解したセルロースアシレート溶
液の場合に、その支持体からのセルロースアシレートフ
イルムの剥離がし難くいことが問題になっている。これ
は、セルロースアシレートを支持体上であるバンド或い
はドラム上に流延し、乾燥或いは冷却して強度の強いゲ
ル状フイルムとし、溶剤を含んだ状態で支持体から剥離
され、しかる後に十分乾燥される工程の際に、支持体か
らセルロースアシレート膜の剥離が困難であることが原
因である。これは、メチレンクロライド溶剤などのハロ
ゲン化溶媒では見られなかった現象であり、非ハロゲン
系溶剤からなるセルロースアシレート溶液と支持体との
接着が強いことが要因であると推測される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のような冷却溶解
法を用いてセルロースアシレートを非ハロゲン系溶媒で
溶液を調製する場合、流延した後乾燥のために支持体か
ら剥離が困難な点を解決し、優れた生産性を付与するこ
とである。本発明の目的は、メチレンクロライドのよう
な非ハロゲン系有機溶剤を使用せずに、非ハロゲン系有
機溶剤を用いて常温溶解、冷却溶解法または高温高圧溶
解法したセルロースアシレート溶液を流延し、面状の優
れたセルロースセルロースフイルムを提供することにあ
る。さらに、本発明の別の目的は、流延した後乾燥のた
めに支持体から容易にフイルムを剥離させ、優れた生産
性を付与することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、下記
[1]〜[11]のセルロースアシレートフイルムによ
り達成された。 [1]水酸基の置換度が2.6〜3.0のセルロースア
シレートおよび実質的に含塩素炭化水素を含まない有機
溶媒からなるセルロースアシレート溶液を流延して製造
されたセルロースアシレートフイルムであって、該フイ
ルムが下記式(1)または(2)で表される剥離剤を含
むことを特徴とするセルロースアシレートフイルム: (1)(R1−B1−O)n1−P(=O)−(OM1)n2 (2) R2−B2−X [式中、R1およびR2は、それぞれ、炭素数4〜40
の置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、ア
ラルキル基またはアリール基であり;M1は、アルカリ
金属、アンモニア、低級アルキルアミンであり;B1お
よびB2は、それぞれ、2価の連結基であり;Xは、カ
ルボン酸またはその塩、スルフォン酸またはその塩、あ
るいは硫酸エステルまたはその塩であり;n1は、1ま
たは2であり;そして、n2は、3−n1である]。
【0008】[2]セルロースアシレート溶液が、式
(1)または(2)で表される剥離剤を0.002乃至
2質量%含む[1]に記載のセルロースアシレートフイ
ルム。 [3]有機溶媒の少なくとも一種が、炭素原子数が3〜
12のエーテル類、炭素原子数が3〜12のケトン類、
炭素原子数が3〜12のエステル類から選ばれる[1]
に記載のセルロースアシレートフイルム。 [4]セルロースアシレート溶液が、少なくとも一種の
炭素数1〜4のアルコールを溶液に対して1〜15重量
%含有する[1]に記載のセルロースアシレートフイル
ム。
【0009】[5]セルロースアシレートが、セルロー
スアシレート溶液に10〜40重量%の濃度で溶解して
いる[1]に記載のセルロースアシレートフイルム。 [6]セルロースアシレートが、250乃至550の粘
度平均重合度を有する[1]に記載のセルロースアシレ
ートフイルム。 [7]溶解工程が−100〜0℃に冷却する工程、冷却
された混合物を0〜150℃に加温してセルロースアシ
レート溶液とすること、及び/又は溶解工程が70〜2
00℃、0.3〜30MPaの高温高圧で加熱してセル
ロースアシレート溶液とする[1]に記載のセルロース
アシレートフイルム。
【0010】[8]セルロースアシレート溶液が、少な
くとも一種の可塑剤をセルロースアシレートに対して
0.1〜20重量%含有しているセルロースアシレート
溶液であること、及び/又は少なくとも一種の紫外線吸
収剤をセルロースアシレートに対して0.001〜5重
量%含有しているセルロースアシレート溶液であるこ
と、及び/又は少なくとも一種の微粒子粉体をセルロー
スアシレートに対して0.001〜5重量%含有してい
るセルロースアシレート溶液であること、及び/又は少
なくとも一種のフッ素系界面活性剤をセルロースアシレ
ートに対して0.001〜2重量%含有しているセルロ
ースアシレート溶液である[1]に記載のセルロースア
シレートフイルム。 [9]流延工程で2種類以上のセルロースアシレート溶
液を共流延する[1]に記載のセルロースアシレートフ
イルム。
【0011】[10]作製されたセルロースアシレート
フイルムが、光学用保護層として用いられるセルロース
アシレートフイルムであり、その膜厚が10〜200μ
mである[1]に記載のセルロースアシレートフイル
ム。 [11]作製されたセルロースアシレートフイルムが、
ハロゲン化銀写真感光材料用保支持体であり、その膜厚
が30〜250μmである[1]に記載のセルロースア
シレートフイルム。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明では、式(1)または
(2)で表わされる少なくとも一種の剥離剤を、セルロ
ースアシレートフイルムが含有することを特徴とする。
以下に、これらの剥離剤について記述する。R1とR2
の好ましい例としては、炭素数4〜40の置換、無置換
のアルキル基(例えば、ブチル、ヘキシル、オクチル、
2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシ
ル、オクタデシル、エイコサニル、ドコサニル、ミリシ
ル、など)、炭素数4〜40の置換、無置換のアルケニ
ル基(例えば、2−ヘキセニル、9−デセニル、オレイ
ルなど)、炭素数4〜40の置換、無置換のアリール基
(例えば、フェニル、ナフチル、メチルフェニル、ジメ
チルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、
プロピルフェニル、ジイソプロピルフェニル、トリイソ
プロピルフェニル、t−ブチルフェニル、ジ−t−ブチ
ルフェニル、トリ−t−ブチルフェニル、イソペンチル
フェニル、オクチルフェニル、イソオクチルフェニル、
イソノニルフェニル、ジイソノニルフェニル、ドデシル
フェニル、イソペンタデシルフェニル)である。
【0013】これらの中でも更に好ましいのは、アルキ
ルとしては、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシ
ル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、
ドコサニル、アルケニルとしてはオレイル、アリール基
としてはフェニル、ナフチル、トリメチルフェニル、ジ
イソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、ジ
−t−ブチルフェニル、トリ−t−ブチルフェニル、イ
ソオクチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニ
ルフェニル、ドデシルフイソペンタデシルフェニルであ
る。次に、B1、B2の2価の連結基について記述す
る。炭素数1〜10のアルキレン、ポリ(重合度1〜5
0)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜50)オキシプ
ロピレン、ポリ(重合度1〜50)オキシグリセリン、
でありこれらの混合したものでも良い。これらで好まし
い連結基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレ
ン、ポリ(重合度1〜25)オキシエチレン、ポリ(重
合度1〜25)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜1
5)オキシグリセリンである。次にXは、カルボン酸
(又は塩)、スルフォン酸(又は塩)、硫酸エステル
(又は塩)であるが、特に好ましくはスルフォン酸(又
は塩)、硫酸エステル(又は塩)である。塩としては好
ましくはNa、K、アンモニウム、トリメチルアミン及
びトリエタノールアミンである。以下に、本発明の好ま
しい剥離剤の具体例を記載する。
【0014】 RZ−1 C8 17O−P(=O)−(OH)2 RZ−2 C1225O−P(=O)−(OK)2 RZ−3 C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 RZ−4 C1531(OCH2 CH2 5 O−P(=O)−(OK)2 RZ−5 {C1225O(CH2 CH2 O)5 2 −P(=O)−OH RZ−6 {C1835(OCH2 CH2 8 O}2 −P(=O)−ONH4 RZ−7 (t−C4 9 3 −C6 2 −OCH2 CH2 O−P(=O)− (OK)2 RZ−8 (iso-C9 19−C6 4 −O−(CH2 CH2 O)5 −P(=O )−(OK)(OH) RZ−9 C1225SO3 Na RZ−10 C1225OSO3 Na RZ−11 C1733COOH RZ−12 C1733COOH・N(CH2 CH2 OH)3 RZ−13 iso-C8 17−C6 4 −O−(CH2 CH2 O)3 −(CH2 2 SO3 Na RZ−14 (iso-C9 192 −C6 3 −O−(CH2 CH2 O)3 −( CH2 4 SO3 Na RZ−15 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム RZ−16 トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム RZ−17 C1733CON(CH3 )CH2 CH2 SO3 Na RZ−18 C1225−C6 4 SO3 ・NH4
【0015】式(1)又は(2)の少なくとも一種の剥
離剤の使用量は、溶液の0.002〜2重量%であるこ
とが好ましい。より好ましくは0.005〜1重量%で
あり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%であ
る。その添加方法は、特に限定されないがそのまま液体
或いは固体のまま、溶解する前に他の素材と共に添加さ
れ溶液としても良いし、予め作製されたセルロースアシ
レート溶液に後から添加しても良い。
【0016】セルロースアシレート原料のセルロースと
しては、綿花リンターや木材パルプなどがあるが、何れ
の原料セルロースから得られるセルロースアシレートで
も使用できるし、混合して使用してもよい。これらのセ
ルロースから得られる本発明のセルロースアシレート
は、セルロースの水酸基への置換度が下記式(I)〜
(III)の全てを満足するものが好ましい。
【0017】 (I) 2.6≦A+B≦3.0 (II) 2.0≦A≦3.0 (III) 0≦B≦0.8 ここで、式中A及びBはセルロースの水酸基に置換され
ているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換
度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度で
ある。セルロースには1グルコース単位に3個の水酸基
があり、上記の数字はその水酸基(3.0)に対する置
換度を表す。セルローストリアセテートは一般にAの置
換度が2.6以上3.0以下であり、B=0の場合がセ
ルローストリアセテートである。本発明のセルロースア
シレートは、アシル基が全部アセチル基であるセルロー
ストリアセテート、及びアセチル基が2.0以上で、炭
素原子数が3〜22のアシル基が0.8%以下、置換さ
れなかった水酸基が0.4以下のものが好ましい。炭素
原子数3〜22のアシル基の場合、0.3以下が物性の
点から特に好ましい。なお、置換度は、セルロースの水
酸基に置換する酢酸及び炭素原子数3〜22の脂肪酸の
結合度を測定し、計算によって得られる。測定方法とし
ては、ASTMのD−817−91に準じて実施するこ
とができる。
【0018】本発明に使用するセルロースアシレートの
重合度(粘度平均)は200〜700が好ましく、特に
250〜550のものが好ましい。アセチル基の他の炭
素原子数3〜22のアシル基は、プロパノイル基(C2
5 CO−)、ブタノイル基(C3 7 CO−)(n
−、iso−)、バレロイル基(C4 9 CO−)(n
−、iso−、sec−、tert−)、オクタノイル、ド
デカノイル、オクタデカノイル、オレオロイルを挙げる
ことができる。プロパノイルおよびブタノイルが好まし
い。本発明に用いるセルロースアシレートとしては、セ
ルローストリアセテートが特に好ましい。セルロースト
リアセテートは、写真用グレードのものが好ましい。市
販の写真用グレードのセルローストリアセテートなら
ば、粘度平均重合度、酢化度のような各種品質を満足す
る製品を容易に入手することができる。写真用グレード
のセルローストリアセテートのメーカーとしては、ダイ
セル化学工業(株)、コートルズ社、ヘキスト社および
イーストマンコダック社がある。
【0019】アシル基のアシル化剤としては、酸無水物
や酸クロライドが好ましく用いられる。セルロースアシ
レートの具体的な製造方法については、例えば特開平1
0−45804号公報に記載の合成方法を参照できる。
セルロースアシレートは、セルロースアシレート溶液全
量に対してその濃度が5〜30質量%であり、好ましく
は10〜25質量%である。
【0020】セルロースアシレートは、含水率が2質量
以下であることが好ましく、含水率が1質量%以下であ
ることがさらに好ましく、含水率が0.7質量%以下で
あることが最も好ましい。一般にセルロースアシレート
は、2.5〜5質量%の含水率があるため、乾燥して使
用することが好ましい。乾燥手段については、特に制限
はない。セルロースアシレートは、乾燥機中で高温乾燥
することができる。また、高温風で乾燥することもでき
る。さらにまた、減圧状態で低温乾燥することもでき
る。
【0021】本発明では、ソルベントキャスト法により
セルロースアシレートフイルムを製造することが好まし
く、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解したセルロ
ースアシレート溶液(ドープ)を用いてフイルムは製造
される。本発明で好ましく用いられる少なくとも一種の
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原
子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエス
テルなどから選ばれた非ハロゲン系溶媒であることが好
ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造
を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステル
の官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO
−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒と
して用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水
酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以
上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数
は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であ
ればよい。
【0022】炭素原子数が3〜12のエーテル類の例に
は、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメ
トキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソ
ラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネト
ールが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の
例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケト
ン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘ
キサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホ
ルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、
メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルア
セテートが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有
機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−
メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙
げられる。
【0023】本発明のセルロースアシレート溶液は、溶
媒は2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。特
に好ましい有機溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合
溶媒であって、第1の溶媒が炭素原子数が3〜4のケト
ンおよび炭素原子数が3〜4のエステル或いはその混合
液であり、第2の溶媒が炭素原子数が5〜7のケトン
類、エーテル類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、
第3の溶媒として沸点が30〜170℃のアルコールま
たは沸点が30〜170℃の炭化水素から選ばれる。第
1の溶媒のケトン類、エステル類及びエーテル類につい
ては、好ましくはアセトン、酢酸メチル、蟻酸メチル、
蟻酸エチルである。第2の溶媒は、メチルイソブチルケ
トン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセト酢
酸メチル、ジオキサン、1,3−ジオキソランが好まし
い。
【0024】第3の溶媒は、沸点が30〜170℃のア
ルコールまたは沸点が30〜170℃の炭化水素から選
ばれる。アルコールは一価であることが好ましい。アル
コールの炭化水素部分は、直鎖であっても、分岐を有し
ていても環状であってもよい。炭化水素部分は、飽和脂
肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸
基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコ
ールの例には、メタノール(沸点:64.65℃)、エ
タノール(78.325℃)、1−プロパノール(9
7.15℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−
ブタノール(117.9℃)、2−ブタノール(99.
5℃)、t−ブタノール(82.45℃)、1−ペンタ
ノール(137.5℃)、2−メチル−2−ブタノール
(101.9℃)およびシクロヘキサノール(161
℃)が含まれる。アルコールについては、2種類以上の
混合液で用いてもよい。炭化水素は、直鎖であっても、
分岐を有していても、環状であってもよい。芳香族炭化
水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。
脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよ
い。炭化水素の例には、シクロヘキサン(沸点:80.
7℃)、ヘキサン(69℃)、ベンゼン(80.1
℃)、トルエン(110.6℃)およびキシレン(13
8.4〜144.4℃)が含まれる。
【0025】3種混合溶媒中には、第1の溶媒が30〜
95重量%含まれることが好ましく、40〜90重量%
含まれることがより好ましく、50〜90重量%含まれ
ることが更に好ましく、50〜重量%含まれることが最
も好ましい。第2の溶媒及び第3の溶媒は、1〜40重
量%含まれることが好ましく、3〜30重量%含まれる
ことがより好ましい。本発明で好ましいこれらの溶媒の
組み合わせは、以下のものを挙げることができる。セル
ロースアシレート/酢酸メチル/シクロヘキサノン/メ
タノール/エタノール(X/(70−X)/20/5/
5、重量部)、セルロースアシレート/酢酸メチル/メ
チルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール
(X/(50−X)/20/20/5/5、重量
部)、セルロースアシレート/アセトン/アセト酢酸メ
チル/エタノール (X/(75−X)/20//5、
重量部)、セルロースアシレート/酢酸メチル/シクロ
ペンタノン/メタノール/エタノール(X/(80−
X)/10/5/5、重量部)、セルロースアシレート
/酢酸メチル/1、3ジオキソラン/メタノール/エタ
ノール (X/(70−X)/20/5/5、重量
部)、セルロースアシレート/酢酸メチル/ジオキサン
/アセトン/メタノール/エタノール (X/(60−
X)/20/10/5/5、重量部)、セルロースアシ
レート/1,3ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチ
ルエチルケトン/メタノール/エタノール (X/(5
5−X)/20/10/5/5/5、重量部)が好まし
い組み合わせである。ここでXはセルロースアシレート
の重量部を表わし、好ましくは10〜25であり特には
13〜25である。
【0026】本発明に用いるセルロースアシレート溶液
には、上記本発明の有機溶媒以外に、フルオロアルコー
ルやメチレンクロライドを本発明の全有機溶媒量の10
重量%以下含有させることもフイルムの透明性を向上さ
せたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。フルオロ
アルコールとしては沸点が165℃以下のものがよく、
好ましくは111℃以下がよく、更に80℃以下が好ま
しい。フルオロアルコールは炭素原子数が2から10程
度、好ましくは2から8程度のものがよい。また、フル
オロアルコールはフッ素原子含有脂肪族アルコールで、
置換基があってもなくてもよい。置換基としてはフッ素
原子含有或いはなしの脂肪族置換基、芳香族置換基など
がよい。
【0027】このようなフルオロアルコールは例えば、
(以下括弧内は沸点である)2−フルオロエタノール
(103℃)、2,2,2−トリフルオロエタノール
(80℃)、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プ
ロパノール(109℃)、1,3−ジフルオロ−2−プ
ロパノール(55℃)、1,1,1,3,3,3−ヘキ
サ−2−メチル−2−プロパノール(62℃)、1,
1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノー
ル(59℃)、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−
1−プロパノール(80℃)、2,2,3,4,4,4
−ヘキサフルオロ−1−ブタノール(114℃)、2,
2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノ
ール(97℃)、パーフルオロ−tert−ブタノール
(45℃)、2,、2,2,3,3,4,4−ヘキサフ
ルオロ−1,5−ペンタンジオール(111.5℃)、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8
−トリデカフルオロ−1−オクタノール(95℃)、1
−(ペンタフルオロフェニル)エタノール(82℃)、
2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルアルコー
ル(115℃)、などが含まれる。これらのフルオロア
ルコールは一種又は二種以上使用してもよい。
【0028】本発明のセルロースアシレート溶液を調製
する際に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを充満さ
せてもよい。セルローストリアセテート溶液の製膜直前
の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通
常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製される
ことが好ましいく、特に30Pa・s〜400Pa・s
が好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度で
あれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃で
あり、より好ましくは−5〜55℃である。本発明のセ
ルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途
に応じた種々の添加剤を加えることができる。またその
添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加し
ても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤
を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。それらの
添加剤は、可塑剤、、紫外線防止剤や劣化防止剤(例、
酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不
活性化剤、酸捕獲剤、アミン)である。
【0029】好ましく添加される可塑剤としては、リン
酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リ
ン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート
(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TC
P)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフ
ェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェー
ト、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェー
トが含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸
エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタ
ル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DM
P)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレ
ート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジ
フェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシル
フタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステル
の例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACT
E)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACT
B)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチル
トリブチル、が含まれる。
【0030】その他のカルボン酸エステルの例には、オ
レイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシ
ン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれ
る。グリコール酸エステルの例としては、トリアセチ
ン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレー
ト、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリ
ルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレ
ートなどがある。中でもトリフェニルホスフェート、ト
リクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェ
ート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、
ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチル
フタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチ
ン、エチルフタリルエチルグリコレートが好ましい。特
にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エ
チルフタリルエチルグリコレートが好ましい。これらの
可塑剤は1種でもよいし2種以上併用してもよい。可塑
剤の添加量はセルロースアシレートに対して5〜30重
量%以下、特に8〜16重量%以下が好ましい。これら
の化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、
セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、
溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0031】その他、本発明においてはその光学的異方
性を小さくする可塑剤として、特開平11−12444
5号記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開
平11−246704号記載のグリセロールエステル
類、特開2000−63560号記載のジグリセロール
エステル類、特開平11−92574号記載のクエン酸
エステル類、特開平11−90946号記載の置換フェ
ニルリン酸エステル類などが好ましく用いられる。
【0032】劣化防止剤や紫外線防止剤については、特
開昭60−235852号、特開平3−199201
号、同5−1907073号、同5−194789号、
同5−271471号、同6−107854号、同6−
118233号、同6−148430号、同7−110
56号、同7−11055号、、同7−11056号、
同8−29619号、同8−239509号、特開20
00−204173号の各公報に記載がある。劣化防止
剤の添加量は、調製するセルロースアシレート溶液(ド
ープ)の0.01〜1重量%であることが好ましく、
0.01〜0.2重量%であることがさらに好ましい。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロ
キシトルエン(BHT)を挙げることができる。なお、
平均酢化度が55.0〜58.0%であるセルロースア
シレートは、平均酢化度が58.0%以上であるセルロ
ーストリアセテートと比較して、調製した溶液の安定性
や製造したフイルムの物性が劣るとの欠点がある。しか
し、上記のような劣化防止剤、特にブチル化ヒドロキシ
トルエン(BHT)のような酸化防止剤を用いること
で、この欠点を実質的に解消することが可能である。
【0033】本発明では、更に好ましくは一種または二
種以上の紫外線吸収剤をセルロースアシレート溶液は含
有する。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点
から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、か
つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視
光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベン
ゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サ
リチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、
シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物な
どが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾ
トリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物であ
る。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロー
スアシレートに対する不要な着色が少ないことから、好
ましい。
【0034】好ましい紫外線防止剤として、2,6−ジ
−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリ
チル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチ
ル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2
(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフ
ェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−
ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)
−5−クロルベンゾトリアゾール、トリエチレングリコ
ール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル
−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6
−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−ter
t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー
ト〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4
−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリ
ノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチ
レンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−
ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル
−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキ
シフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレ
ンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキ
シ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−
2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−
4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5
−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−
イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に2,6−ジ−
tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチ
ル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル
−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエ
チレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル
−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー
ト〕が最も好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3
−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフ
ェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系
の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチ
ルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併
用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロース
アシレートに対して重量割合で1ppm〜1.0%が好
ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0035】本発明においては、セルロースアシレート
溶液中に光学異方性をコントロールするためのレターデ
ーション上昇剤が、場合により添加される。これらは、
セルロースアシレートフイルムのレターデーションを調
整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族
化合物をレターデーション上昇剤として使用することが
好ましい。芳香族化合物は、セルロースアシレート10
0質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲で使
用する。芳香族化合物は、セルロースアセレート100
質量部に対して、0.05乃至15質量部の範囲で使用
することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使
用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合
物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳
香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0036】芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、
ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテ
ロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ
環は、5員環、6員環または7員環であることが好まし
く、5員環または6員環であることがさらに好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。
ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原
子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテ
ロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、
オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、
イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フ
ラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピ
リダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,
5−トリアジン環が含まれる。
【0037】本発明の光学特性について記す。フイルム
の面内のレターデーション(Re)について記すと、そ
の測定法はエリプソメーター(偏光解析計AEP−10
0:島津製作所(株)製)を用いて、波長632.8n
mにおける面内の縦横の屈折率差にフイルム膜厚さを乗
じたものであり、下記の式で求められる。 Re=(nx−ny)×d nx:横方向の屈折率、ny:縦方向の屈折率 小さいほど、面内方向の光学異方性がないことを示すが
0〜300nmの範囲で用途に応じて用いられる。又、
フイルムの厚さ方向のレターデーション(Rth)も重
要であり、波長632.8nmにおける厚さ方向の複屈
折にフイルム膜厚さを乗じたものであり、下記の式で求
められる。 Rth={(nx+ny)/2−nz}×d nx:横方向の屈折率、ny:縦方向の屈折率、nz:
厚さ方向の屈折率 厚さ方向の屈折率が小さいほど、厚さ方向の光学異方性
がないことを示すが、その使用用途によって好ましい範
囲は定まる。一般には、本発明のセルロースアシレート
フイルムのRthは100μm当たり、0nm〜600
nmであり、さらに好ましくは0nm〜400nm、最
も好ましくは0nm乃至250nmで用いられる。
【0038】また、感材用支持体としては、ライトパイ
ピング防止用の着色剤化合物を添加してもよい。着色剤
の含有量は、セルロースアシレートに対する重量割合で
10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppm
が更に好ましい。この様に着色剤を含有させることによ
り、セルロースアシレートフイルムのライトパイピング
が減少でき、黄色味を改良することができる。これらの
化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セ
ルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶
液調製中や調製後に添加してもよい。
【0039】また、本発明のセルロースアシレート溶液
には、必要に応じて更に種々の添加剤を溶液の調製前か
ら調製後のいずれの段階で添加してもよい。例えば微粒
子を添加してフイルムの軋みを防止する目的で、シリ
カ、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシ
ウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナなどの無機
微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類
金属の塩などの熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、
油剤などである。
【0040】本発明のセルロースアシレート溶液(ドー
プ)の溶解方法は、特に限定されないが、室温でもよく
更には好ましくは冷却溶解法又は高温高圧溶解法に従い
実施される。まず好ましく用いられる冷却溶解方法につ
いて述べると、室温近辺の温度(−10〜40℃)で有
機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に
添加される。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は
特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロースアシ
レートを添加した後に、他の溶媒(例えばケトン、アル
コールなどの溶媒)を添加してもよいし、逆に他の溶媒
を予めセルロースアシレートにて湿らせた後に主溶媒を
加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロ
ースアシレートの量は、この混合物中に10〜40重量
%含まれるように調整することが好ましい。セルロース
アシレートの量は、10〜30重量%であることがさら
に好ましい。さらに、混合物中には任意の添加剤を添加
しておいてもよい。
【0041】次に、混合物は−100〜−10℃(好ま
しくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−80〜−
30℃、最も好ましくは−80〜−50℃)に冷却され
る。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−
75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30
〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、
セルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、特に限定されないがバッチ式での冷却の場
合は、冷却に伴いセルロースアシレート溶液の粘度が上
がり、冷却効率が劣るために所定の冷却温度に達するた
めに効率よい溶解タンクとすることが必要である。ま
た、本発明のセルロースアシレート溶液は膨潤させたあ
と、所定の冷却温度にした冷却装置を短時間移送するこ
とで達成できる。冷却時間は溶解すれば特に限定されな
いが、好ましくは10秒〜2日が好ましく更には30秒
〜12時間が好ましい。
【0042】冷却したセルロースアシレート溶液は、0
〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましく
は0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温す
ることが好ましく、有機溶媒中にセルロースアシレート
が流動する溶液となる。この場合に、昇温は室温中に放
置するだけでもよく温浴中で加温してもよい。この時、
圧力を0.3〜30MPaになることが挙げられるが、特
に問題ない。その場合は、極力短時間で実施することが
好ましく、0.5〜60分以内が好ましく、特に0.5
〜2分の短時間の加熱が推奨される。
【0043】なお、溶解が不十分である場合は冷却、加
温の操作を繰り返してもよい。溶解が十分であるかどう
かは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断する
ことができる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露
による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが
望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧
し、加温時に減圧すると溶解時間を短縮することができ
る。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を
用いることが望ましい。
【0044】次に、本発明のセルロースアシレート溶液
(ドープ)の調製は、高温溶解法に従い実施されても好
ましく、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10
〜40℃)で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌
しながら徐々に添加される。次にセルロースアシレート
の有機溶媒混合液は、0.2Mp〜30Mpaの加圧下で7
0〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220
℃、更に好ましく100〜200℃、最も好ましくは1
00〜190℃)。加熱は、例えば高圧蒸気でもよく電
気熱源でもよい。さらに炭酸ガスを溶媒に共存させ、所
謂超臨界状態での溶解方法をとってもよく、炭酸ガスが
溶液中の5〜30重量%であることが好ましい。この場
合は、より低い温度の高圧下で溶解を達成できる。高圧
のためには耐圧容器あるいは耐圧ラインを必要とする
が、鉄やステンレス製あるいは他の金属耐圧容器やライ
ンのいずれでもよく、特に限定されない。次にこれらの
加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された
溶媒の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場
合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが一般的
である。冷却はセルロースアシレート溶液が内蔵されて
いる高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでも
よく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置
を冷却してもよい。なお、溶解を早めるために加熱と冷
却の操作を繰り返してもよい。溶解が十分であるかどう
かは、目視により溶液の概観を観察するだけで判断する
ことができる。高圧高温溶解方法においては、溶媒の蒸
発を避けるために密閉容器を用いる。また、膨潤工程お
いて、加圧や減圧にしたりすることで更に溶解時間を短
縮することができる。加圧及び減圧を実施するために
は、耐圧性容器あるいはラインが必須である。
【0045】上記で得られた本発明のドープのセルロー
スアシレート溶液の濃度は前述のごとく、高濃度のドー
プが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らず
とも高濃度でしかも安定性の優れたセルロースアシレー
ト溶液が得られる。しかし場合により、更に溶解し易く
するために低い濃度で溶解してから、しかる後に濃縮手
段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に
限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とそ
の内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との
間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を
蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平
4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノ
ズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁
に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるととも
に、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底
から抜き出す方法(例えば、USP第2,541,01
2号、同第2,858,229号、同第4,414,3
41号、同第4,504,355号各明細書等などに記
載の方法)等で実施できる。
【0046】溶液は流延に先だって金網やネルなどの適
当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物
を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレー
ト溶液の濾過には絶対濾過精度が0.05〜100μm
のフィルタを用いられ、さらには絶対濾過精度が0.5
〜10μmであるフィルタを用いることが好ましい。そ
の場合、16kg/cm2 以下(好ましくは12kg/
cm2 以下、更に好ましくは10kg/cm2 以下、特
に好ましくは2kg/cm2 以下の濾過圧力で濾過する
ことが好ましい。このろ過によりクロスニコル状態で認
識される大きさが50μmを越える異物は面積250m
2 当たり実質上0個が達成でき、さらには5〜50μ
mの異物が面積250mm2 当たり200個以下が達成
でき、偏光板用保護膜の商品価値を著しくあげることが
できる。ここで、本発明で得られるフイルムはクロスニ
コル状態で配置した二枚の偏光板の間に置かれ、一方の
偏光板の外側から光を当て、他方の偏光板の外側から顕
微鏡(透過光源で倍率30倍)で認識し、その時の異物
の数を10箇所にわたって測定し、この評価を5回繰り
返した時の異物の数と定義したものである。
【0047】本発明のセルロースアシレート溶液を用い
たフイルムの製造方法について述べる。本発明のセルロ
ースアシレートフイルムを製造する方法及び設備は、従
来セルローストリアセテートフイルム製造に供する溶液
流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解
タンク(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレ
ート溶液)をストックタンクで一旦貯蔵し、ドープに含
まれている泡を脱泡したり最終調製をする。ドープをド
ープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送
液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送
り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンド
レスに走行している流延部の支持体の上に均一に流延さ
れ、支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜
(ウェブとも呼ぶ)を支持体から剥離する。得られるウ
ェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンター
で搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し
乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テ
ンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的
により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディス
プレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法におい
ては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、
ハレーション防止層、保護層等の支持体への表面加工の
ために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製
造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるも
のではない。
【0048】まず、調製したセルロースアシレート溶液
(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロース
アシレートフイルムを作製される際に、ドープはドラム
またはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを
形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40%と
なるように濃度を調整される。ドラムまたはバンドの表
面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベ
ントキャスト法における流延および乾燥方法について
は、米国特許2336310号、同2367603号、
同2492078号、同2492977号、同2492
978号、同2607704号、同2739069号、
同2739070号、英国特許640731号、同73
6892号の各明細書、特公昭45−4554号、同4
9−5614号、特開昭60−176834号、同60
−203430号、同62−115035号の各公報に
記載がある。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム
またはバンド上に流延することが好ましく用いられる。
【0049】本発明では得られたセルロースアシレート
溶液を、支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上
に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセ
ルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロ
ースアシレート溶液を流延する場合、支持体の進行方向
に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシ
レートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながら
フイルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158
414号、特開平1−122419号、特開平11−1
98285号、などに記載の方法が適応できる。また、
2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する
ことによってもフイルム化することでもよく、例えば特
公昭60−27562号、特開昭61−94724号、
特開昭61−947245号、特開昭61−10481
3号、特開昭61−158413号、特開平6−134
933号、に記載の方法で実施できる。また、特開昭5
6−162617号に記載の高粘度セルロースアシレー
ト溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包
み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を
同時に押出すセルロースアシレートフイルム流延方法で
もよい。
【0050】或いはまた2個の流延口を用いて、第一の
流延口により支持体に成型したフイルムを剥ぎ取り、支
持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでよ
り、フイルムを作製することでもよく、例えば特公昭4
4−20235号に記載されている方法である。流延す
るセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、
異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定され
ない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせる
ために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液
を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらの本発明
のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、
接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、
UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施
しうる。
【0051】従来の単層液では、必要なフイルム厚さに
するためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶
液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシ
レート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障
となったり、平面性が不良であったりして問題となるこ
とが多かった。この解決として、複数のセルロースアシ
レート溶液を流延口から流延することにより、最外層用
に低粘度の溶液を内部層用の高粘度の溶液を同時に支持
体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状の
フイルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロース
アシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成
でき、フイルムの生産スピードを高めることができた。
共流延の場合の膜厚は、各層の厚さは特に限定されない
が、好ましくは外部層が内部層より薄いことが好ましく
用いられる。その際の外部層の膜厚は、1〜50μmが
好ましく、特に好ましくは1〜20μmである。
【0052】さらに詳細に本発明に有用な流延方法につ
いて記すと、調製されたドープを加圧ダイから支持体上
に均一に押し出す方法、一旦支持体上に流延されたドー
プをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる
方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロー
ルコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法
が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダ
イタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができ
る。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られている
セルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方
法(例えば特開昭61−94724号、同61−148
013号、特開平4−85011号、同4−28661
1号、同5−185443号、同5−185445号、
同6−278149号、同8−207210号公報など
に記載の方法)を好ましく用いることが出来、用いる溶
媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによ
りそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られ
る。
【0053】本発明のセルロースアシレートフイルムを
製造するのに使用されるエンドレスに走行する支持体と
しては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされた
ドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレス
ベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明
のセルロースアシレートフイルムの製造に用いられる加
圧ダイは、支持体の上方に1基或いは2基以上の設置で
もよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置
する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々
な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプか
らそれぞれの割合でダイにドープを送液する。
【0054】本発明のセルロースアシレートフイルムの
製造に係わる支持体上におけるドープの乾燥は、一般的
には支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり支
持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラ
ム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コン
トロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反
対側の裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベ
ルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法
などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延され
る前の支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒
の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進す
るためには、また支持体上での流動性を失わせるために
は、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点よ
り1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。
【0055】本発明のセルロースアシレートフイルムの
乾燥工程における乾燥温度は30〜250℃、特に40
〜180℃が好ましい。さらに残留溶媒を除去するため
に、50〜160℃で乾燥され、その場合逐次温度を変
えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ま
しく用いられている。以上の方法は、特公平5−178
44号公報に記載がある。この方法によると、流延から
剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。使用
する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異
なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよ
い。最終仕上がりフイルムの残留溶媒量は2重量%以
下、更に0.4重量%以下であることが、寸度安定性が
良好なフイルムを得る上で好ましい。なお本発明におい
ては、本発明の剥離剤で更に剥離時間を短縮でき、かつ
剥離時の抵抗が低くなることで、面状(剥離時の横方向
のムラ、ゲル状ブツの剥げ残りに起因するブツなど)の
悪化がないセルロースアシレートフイルムを得ることが
できる。
【0056】支持体から剥離後の乾燥工程では、溶媒の
蒸発によってフイルムは巾方向に収縮しようとする。高
温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能
な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフイ
ルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、
例えば、特開昭62−46625号公報に示されている
ような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップ
でウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テン
ター方式)が好ましい。
【0057】セルロースアシレートフイルムを製造する
速度はベルトの長さ、乾燥方法、ドープ溶媒組成等によ
っても変化するが、ウェブをベルトから剥離する時点で
の残留溶媒の量によって殆ど決まってしまう。つまり、
ドープ膜の厚み方向でのベルト表面付近での溶媒濃度が
高すぎる場合には、剥離した時、ベルトにドープが残っ
てしまい、次の流延に支障を来すため、剥離残りは絶対
あってはならないし、更に剥離する力に耐えるだけのウ
ェブ強度が必要であるからである。剥離時点での残留溶
媒量は、ベルトやドラム上での乾燥方法によっても異な
り、ドープ表面から風を当てて乾燥する方法よりは、ベ
ルト或いはドラム裏面から伝熱する方法が効果的に残留
溶媒量を低減することができる。
【0058】更には、積極的に幅方向に延伸する方法も
あり、本発明では、例えば、特開昭62−115035
号、特開平4−152125号、同4−284211
号、同4−298310号、同11−48271号など
に記載されている。これは、セルロースアシレートフイ
ルムの面内レターデーション値を高い値とするために
は、製造したフイルムを延伸される。フイルムの延伸
は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フ
イルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フ
イルムの延伸は、一軸延伸でもよく2軸延伸でもよい。
フイルムは、乾燥中の処理で延伸することができ、特に
溶媒が残存する場合は有効である。例えば、フイルムの
搬送ローラーの速度を調節して、フイルムの剥ぎ取り速
度よりもフイルムの巻き取り速度の方を速くするとフイ
ルムは延伸される。フイルムの巾をテンターで保持しな
がら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによっ
てもフイルムを延伸できる。フイルムの乾燥後に、延伸
機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用
いる一軸延伸)もできる。フイルムの延伸倍率(元の長
さに対する延伸による増加分の比率)は、10〜30%
であることが好ましい。これら流延から後乾燥までの工
程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガ
ス雰囲気下でもよい。本発明のセルロースアシレートフ
イルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されて
いるものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパ
ーテンション法、内部応力一定のプログラムテンション
コントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることがで
きる。
【0059】本発明の出来上がり(乾燥後)のセルロー
スアシレートフイルムの厚さは、使用目的によって異な
るが、通常5〜500μmの範囲であり、更に20〜2
50μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範
囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜11
0μmの範囲が特に好ましい。フイルム厚さの調製は、
所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃
度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧
力、支持体速度等を調節すればよい。次に本発明では、
前述した方法でセルロースアシレート溶液を流延・乾燥
してセルロースアシレートフイルムを得られるが、その
際に本発明ではセルロースアシレート溶液が作製された
製造装置を、セルロースアシレートフイルム製造後に、
特定の洗浄液を用いて常温で洗浄することが好ましい。
本発明で言うところのセルロースアシレート溶液の製造
工程とは、セルロースアシレート溶液を作製する際の膨
潤仕込み装置、常温,冷却或いは高温高圧溶解装置、続
いて流延される流延ギーサー内部及びその流延口、これ
らの装置間を接続する配管、更にはろ過装置、一時的に
セルロースアシレート溶液を貯蔵するストックタンク、
濃縮装置、各種添加物を添加・攪拌する攪拌・混合装置
などを示す。本発明のセルロースアシレート溶液を用い
てセルロースアシレートフイルムを作製した後、これら
の製造装置は、次のセルロースアシレート溶液を作製し
セルロースアシレートフイルムを作製するために、利用
した製造装置を洗浄することが必須である。
【0060】洗浄液としては、好ましくは非ハロゲン系
溶媒であり、酢酸メチル、蟻酸メチル、アセトン又はオ
キソランから選ばれる少なくとも一種の有機溶媒と、炭
素数3〜12のケトン類、及び/または少なくとも一種
の水又は炭素数1〜6のアルコール類からなる混合溶媒
であることが特に好ましい。炭素数3〜12のケトン類
としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケ
トン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケト
ン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シ
クロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキ
サノンなどが挙げられ、その中でもアセトン、メチルエ
チルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、メ
チルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキ
サノンが好ましい。またアルコール類としては、メタノ
ール、エタノール、プロパノール、イソプロパノ−ル、
ブタノール、イソブタノール、シクロヘキサノールを挙
げることが出来、特に好ましくはメタノール、エタノー
ル、プロパノール、イソプロパノ−ルである。
【0061】これらの洗浄液は、その組み合わせにおい
て特に限定されないが、好ましくは、酢酸メチル/シク
ロヘキサノン/メタノール(80/10/10、重量
部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール(60/30
/10、重量部)、酢酸メチル/ジエチルケトン/エタ
ノール (85/10/5、重量部)、酢酸メチル/シ
クロペンタノン/メタノール(80/20/10、重量
部)、酢酸メチル/1、3ジオキソラン/プロパノール
(85/10/5、重量部)、酢酸メチル/ジオキサン
/アセトン/メタノール (60/20/10/10、
重量部)、および酢酸メチル/アセトン/メチルエチル
ケトン/メタノール(50/30/10/10、重量
部)が好ましい組み合わせである。これらの中でも特に
酢酸メチル/アセトン/メタノール(60/30/1
0、重量部)、酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノ
ール(80/10/10、重量部)、酢酸メチル/アセ
トン/メチルエチルケトン/メタノール (50/30
/10/10、重量部)酢酸メチル/アセトン/メチル
エチルケトン/メタノール/水 (50/30/10/
5/5、重量部)が好ましい。これらの洗浄液を用いる
ことによって作製される本発明のセルロースアシレート
フイルムは、異物のない面状のよいフイルムを得ること
ができる。
【0062】以下に本発明で得られるセルロースアシレ
ートフイルムについてさらに利用形態を詳細に記述す
る。本発明ではセルロースアシレートフイルムの表面処
理を行うことによって、セルロースアシレートフイルム
と各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着
の向上を達成することができる。本発明は、グロー放電
処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸また
はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロ
ー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でお
こる、いわゆる低温プラズマのことである。
【0063】グロー放電処理は、米国特許346233
5号、同3761299号、同4072769号及び英
国特許891469号明細書に記載されている。また不
活性ガス、酸化窒素類、有機化合物ガス等の特定のガス
等を導入することも行われる。ポリマーの表面をグロー
放電処理する際には大気圧でもよいし減圧下で実施され
てもよい。放電雰囲気ガス組成を放電開始後にポリエス
テル支持体自身が放電処理を受けることにより容器内に
発生する気体種のみにした特開昭59−556430号
も用いられる。また真空グロー放電処理する際に、セル
ロースアシレートフイルムの表面温度を80℃以上18
0℃以下にして放電処理を行う特公昭60−16614
号、も応用できる。グロー放電処理の雰囲気に酸素、窒
素、ヘリウムあるいはアルゴンのような種々のガスや水
を導入しながら実施してもよい。グロー放電処理時の真
空度は0.005〜20Torrが好ましく、より好ましく
は0.02〜2Torrである。また、電圧は500〜50
00Vの間が好ましく、より好ましくは500〜300
0Vである。使用する放電周波数は、直流から数千MH
z、より好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ま
しくは1KHz〜1MHzである。放電処理強度は、
0.01KV・A・分/m2 〜5KV・A・分/m2
好ましく、より好ましくは0.15KV・A・分/m2
〜1KV・A・分/m2 である。
【0064】次に紫外線照射法も本発明では好ましく用
いられ、特公昭43−2603号、特公昭43−260
4号、特公昭45−3828号記載の処理方法によって
行われるのが好ましい。水銀灯は石英管からなる高圧水
銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間である
ものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源は
セルロースアシレートフイルムの表面温度が150℃前
後にまで上昇することが支持体性能上問題なければ、主
波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することが
できる。低温処理が必要とされる場合には主波長が25
4nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプ
の高圧水銀ランプ、及び低圧水銀ランプを使用する事も
可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほどセ
ルロースアシレートフイルムと被接着層との接着力は向
上するが、光量の増加に伴い支持体が着色し、また支持
体が脆くなるという問題が発生する。従って、365n
mを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜1
0000(mJ/cm2 )がよく、より好ましくは50
〜2000(mJ/cm2 )である。254nmを主波
長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜
10000(mJ/cm2 )がよく、より好ましくは3
00〜1500(mJ/cm2 )である。
【0065】さらに本発明ではセルロースアシレートフ
イルムの表面処理としてコロナ放電処理も好ましく用い
られ、特公昭39−12838号、特開昭47−198
24号、特開昭48−28067号、特開昭52−42
114号記載等の処理方法によって行うことができる。
コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステ
ートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETA
PHON型処理機等を用いることができる。処理は空気
中で常圧で行うことができる。処理時の放電周波数は、
5〜40KV、より好ましくは10〜30KVであり、
波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギ
ャップクリアランスは0.1〜10mm、より好ましく
は1.0〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設け
られた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量
は、0.3〜0.4KV・A・分/m2 、より好ましく
は0.34〜0.38KV・A・分/m2 である。
【0066】火炎処理について記述すると、用いるガス
は天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでも
かまわないが、空気との混合比が重要である。なぜな
ら、火炎処理による表面処理の効果は活性な酸素を含む
プラズマによってもたらされると考えられるからであ
り、火炎の重要な性質であるプラズマの活性(温度)と
酸素がどれだけ多くあるかがポイントである。このふた
つを決めているのはガス/酸素比であり、過不足なく反
応する場合がエネルギー密度が最も高くなりプラズマの
活性が高くなる。具体的には、天然ガス/空気の好まし
い混合比は容積比で1/6〜1/10、好ましくは1/
7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場
合は1/14〜1/22、好ましくは1/16〜1/1
9、都市ガス/空気の場合は1/2〜1/8、好ましく
は1/3〜1/7である。また、火炎処理量は1〜50
Kcal/m2 、より好ましくは3〜20Kcal/m
2 の範囲で行うとよい。またバーナーの内炎の先端と支
持体の距離は3〜7cm、より好ましくは4〜6cmに
するとよい。バーナーのノズル形状は、フリンバーナー
社(米国)のリボン式、ワイズ社(米国)の多穴式、エ
アロジェン(英国)のリボン式、春日電機(日本)の千
鳥型多穴式、小池酸素(日本)の千鳥型多穴式が好まし
い。火炎処理に支持体を支えるバックアップロールは中
空型ロールであり、冷却水を通して水冷し、常に20〜
50℃の一定温度で処理するのがよい。
【0067】また、本発明のセルロースアシレートフイ
ルムの表面処理として好ましく用いられるアルカリ鹸化
処理を具体的に説明する。セルロースアシレートフイル
ム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和
し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好まし
い。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸
化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度
は0.1N〜3.0Nであることが好ましく、0.5N
〜2.0Nであることがさらに好ましい。アルカリ溶液
温度は、室温乃至90℃の範囲が好ましく、40℃乃至
70℃がさらに好ましい。次に一般には水洗され、しか
る後に酸性水溶液を通過させた後に、水洗して表面処理
したセルロースアシレートフイルムを得る。この時、酸
としては塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、
シュウ酸などであり、その濃度は0.01N〜3.0N
であることが好ましく、0.05N〜2.0Nであるこ
とがさらに好ましい。本発明のセルロースアシレートフ
イルムが偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光
膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、
すなわちセルロースアセテートに対するケン化処理を実
施することが特に好ましい。
【0068】本発明のセルロースアシレートフイルムの
表面処理として酸処理も用いられる。酸としては塩酸、
硝酸、硫酸、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、シュウ酸などで
あり、その濃度は0.01N〜8Nであることが好まし
く、0.05N〜3.0Nであることがさらに好まし
い。場合により、アルカリで中和処理することが好まし
く、たとえば水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム、
アンモニア溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は
0.01N〜1.0Nであることが好ましく、0.02
N〜0.5Nであることがさらに好ましい。これらの方
法で得られた固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と
応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に
記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により
求めることができ、接触角法を用いることが好ましい。
本発明では、水の接触角が50度以下、更には40度以
下が好ましく、特には30度以下が好ましい。
【0069】支持体と乳剤層との接着を達成するため
に、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレ
ートフイルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法
と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処
理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗
布する方法とがある。下塗層の構成としても種々の工夫
が行われており、第1層として支持体によく隣接する層
(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層と
して機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂
重層法がある。
【0070】単層法においては、セルロースアシレート
フイルムを膨張させ、下塗層素材と界面混合させること
によって良好な接着性を達成している場合が多い。本発
明に使用し得る下塗ポリマーとしては、水溶性ポリマ
ー、セルロースアシレート、ラテックスポリマー、水溶
性ポリエステルなどが例示される。水溶性ポリマーとし
ては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、ア
ルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニールアルコール、
ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体など
であり、セルロースアシレートとしてはカルボキシメチ
ルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどであ
る。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合
体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル
含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含
有共重合体などである。重層法における下塗第1層で
は、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、
メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン
酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合
体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、
グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、等のオリゴマ
ーもしくはポリマーなどがある。(これらについては、
E.H.Immergut“Polymer Handbook"IV187−231、
Intersciense Pub.New York 1966などに詳し
い)
【0071】また本発明のフイルムには好ましい態様と
しては、偏光子と接着するための親水性バインダー層が
設けられることである。例えば、−COOM基含有の酢酸ビ
ニル-マレイン酸共重合体化合物、又は親水性セルロー
ス誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシメチル
セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等)、ポリ
ビニルアルコール誘導体(例えば酢酸ビニル-ビニルア
ルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニル
ホルマール、ポリビニルベンザール等)天然高分子化合
物(例えばゼラチン、カゼインアラビアゴム等)、親水
基含有ポリエステル誘導体(例えばスルホン基含有ポリ
エステル共重合体)が挙げられる。
【0072】本発明で使用し得る下塗り層には、機能層
の透明性などを実質的に損なわない程度に無機または、
有機の微粒子をマット剤として含有させることができ
る。無機の微粒子のマット剤としてはシリカ(Si
2 ),二酸化チタン(TiO2 ),炭酸カルシウム、
炭酸マグネシウムなどを使用することができる。有機の
微粒子マット剤としては、ポリメチルメタクリレ−ト、
セルロ−スアセテ−トプロピオネ−ト、ポリスチレン、
米国特許4142894号に記載されている処理液可溶
性のもの、米国特許4396706号に記載されている
ポリマ−などを用いることができる。これらの微粒子マ
ット剤の平均粒径は0.01〜10μmのものが好まし
い。より好ましくは、0.05〜5μmである。また、
その含有量は0.5〜600mg/m2 が好ましく、更
に好ましくは、1〜400mg/m2 である。本発明で
用いられる下塗液は、一般に良く知られた塗布方法、例
えばディップコ−ト法、エア−ナイフコ−ト法、カ−テ
ンコ−ト法、ロ−ラ−コ−ト法、ワイヤ−バ−コ−ト
法、グラビアコ−ト法、スライドコート法、或いは、米
国特許第2、681、294号明細書に記載のホッパ−
を使用するエクストル−ジョンコ−ト法により塗布する
ことができる。
【0073】本発明で応用される偏光板用保護膜の構成
においては、セルロースアシレートフイルムの少なくと
も一層に帯電防止層を設けたり、偏光子と接着するため
の親水性バインダー層が設けられることが好ましい。ま
ず、導電性について以下に記す。導電性素材としては、
導電性金属酸化物や導電性ポリマーが好ましい。なお、
蒸着やスパッタリングによる透明導電性膜でもよい。導
電性層は、最外層でもよいし、内部層でも問題はない。
導電層の送電性は、抵抗が101 〜1012Ωであること
が好ましく、特には101 〜1010Ωであることが好ま
しい。金属酸化物が好ましく、例としてはZnO、Ti
2 、SnO2 、Al2 3、In2 3 、SiO2
MgO、BaO、MoO2 、V2 5 等、或いはこれら
の複合酸化物が好ましく、特にZnO、SnO2 あるい
はV2 5 が好ましい。複合酸化物の異種原子例として
は、Al、In、Ta、Sb、Nb、ハロゲン元素、銀
の添加が効果的であり、添加量は0.01mol%〜25mo
l%の範囲が好ましい。これらの導電性金属化合物は、結
晶性でもよく非晶質でもよく、形態は球状でも針状でも
鱗片状でもゾル状でもよく特に限定されない。1次粒子
径が100Å以上0.2μm以下で、これらの凝集体の
高次構造の長径が300Å以上6μm以下である特定の
構造を有する粉体を導電層に体積分率で0.01%以上
20%以下含んでいることが好ましい。この導電性微粒
子の使用量は0.01〜5.0g/m2 が好ましく、特
に0.005〜1g/m2 が好ましい。また、これらの
導電性を有する金属化合物の体積抵抗率は10-6Ω・c
m〜105 Ω・cmであって、特に好ましくい体積抵抗
率は10-6Ω・cm〜102 Ω・cmである。
【0074】導電性は、導電性微粒子をバインダーに分
散させて支持体層に設けてもよいし、支持体に下引処理
を施し、その上に導電性微粒子を被着させてもよい。
又、本発明の効果を阻害しない範囲で本発明の金属酸化
物からなる層中に耐熱剤、耐候剤、無機粒子、水溶性樹
脂、エマルジョン等をマット化、膜質改良のために添加
しても良い。導電性微粒子の分散用バインダーは、フイ
ルム形成能を有する物であれば特に限定されるものでは
ないが、例えばゼラチン、カゼイン等のタンパク質、カ
ルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロー
ス、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリ
アセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラ
ン、寒天、アルギン酸ソーダ、デンプン誘導体等の糖
類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアク
リル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチ
レン、ポリアクリルアミド、、ポリ-N-ビニルピロリド
ン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸等
の合成ポリマー等を挙げる事ができる。
【0075】次にイオン導電性物質とは、電気伝導性を
示し、電気を選ぶ担体であるイオンを含有する物質のこ
とである。この例としては、イオン性高分子化合物と電
解質を含む金属酸化物ゾルを挙げることができる。イオ
ン性高分子化合物としては、特公昭49-23828
号、同49-23827号、同47-28937号にみら
れるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55-73
4号、特開昭50-54672号、特公昭59-1473
5号、同57-18175号、同57-18176号、同
57-56059号などにみられるような、主鎖中に解
離基をもつアイオネン型ポリマー;特公昭53-132
23号、同57-15376号、特公昭53-45231
号、同55-145783号、同55-65950号、同
55-67746号、同57-11342号、同57-1
9735号、特公昭58-56858号開61-2785
3、開62-9346にみられるような、側鎖中にカチ
オン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー;
等を挙げることができる。前記イオン性高分子化合物
は、これを単独で用いてもよいし、あるいは数種類のイ
オン導電性物質を組み合わせて使用してもよい。そして
このようなイオン性高分子化合物は0.005g〜2.0g
/m2 の範囲で用いられているのが好ましく、特に0.
01g〜1.0g/m2 の範囲で用いられるのが好まし
い。これらの導電性層の電気抵抗は10の12乗Ω(2
5℃、10%RH)以下が好ましく、より好ましくは10
の10乗Ω以下、特に好ましくは10の9乗Ω以下であ
る。
【0076】さらに導電性材料として、有機電子伝導性
材料もこのましく、例えばポリアニリン誘導体、ポリチ
オフェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアセチレン
誘導体などを挙げることができる。これらの中でも特に
好ましいのは、ポリピロールでありポリスチレンスルフ
ォン酸との塩が好ましい。また本発明においては、少な
くとも1種以の金または銀コロイドを含有することも好
ましい。さらに耐候性の観点から銀とパラジウムの合金
が好ましいく、パラジウムの含有量としては5〜30w
t%が好ましい。銀コロイド粒子の作成方法としては、
通常の低真空蒸発法による微粒子の作製方法や金属塩の
水溶液を還元する金属コロイド作製方法が挙げられる。
これらの金属粒子の平均粒径は1〜200nmが好まし
い。導電層は実質的に金属微粒子のみからなることが好
ましく、バインダー等の非導電性のものを含有しないこ
とが導電性の観点から好ましい。
【0077】銀コロイド粒子からなる導電層の形成は、
金属粒子を水溶液あるいは有機溶剤等に分散した塗布液
を、基材上に塗布することにより作製できる。銀コロイ
ド粒子は水溶液が好ましいが、水と混合しうる水溶性溶
剤としてはエチルアルコール、n−プロピルアルコー
ル、i−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、
2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、メチル
セルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコールが好まし
い。これらの金属の塗布量としては、50〜150mg
/m2 が好ましく、塗布量が少ないと優れた導電性を得
ることができず、塗布量を増加させても導電性向上の効
果は小さくなる。導電層自体の抵抗は印加電圧90Vの
条件下で、10KΩ以下であることが好ましく、より好
ましくは5KΩ以下であり、特に良好な電磁波シールド
効果を得るためには1KΩ以下が好ましい。
【0078】本発明においては、いずれかの機能性層に
界面活性剤が好ましく用いられ以下に述べる。例えば、
界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、
濡れ剤、帯電防止剤などに分類されるが、以下に述べる
界面活性剤を適宜使用することでそれらの目的は達成で
きる。本発明で使用される界面活性剤は、ノニオン性、
カチオン性、ベタイン性のいずれも使用できる。さらに
それらのフッ素系界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤と
したり、帯電防止剤として好ましく用いられる。使用さ
れる層としてはセルロースアシレート溶液中でもよい
し、その他の機能層のいずれでもよい。光学用途で利用
される場合は、機能層の例としては下塗り層、中間層、
配向制御層、屈折率制御層、保護層、防汚層、粘着層、
バック下塗り層、バック層などである。その使用量は目
的を達成するために必要な量であれば特に限定されない
がしいが、一般には添加する層の重量に対して、0.0
001〜5重量%が好ましく、更には0.0005〜2
重量%が好ましい。その場合の塗設量は、1m2 当り
0.02〜1000mgが好ましく、0.05〜200m
gが好ましい。
【0079】好ましいノニオン系界面活性剤としては、
ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキ
シブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性
親水性基とする界面活性剤であり、具体的には、ポリオ
キシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンア
ルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリ
オキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部
分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸
部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポ
リグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミ
ド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げる
ことができる。
【0080】カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、
4級アンモニウム塩、ピリジュム塩などを挙げることが
でき、第一〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩
(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジ
ルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイ
ミダゾリウム塩など)を挙げることができる。両性系界
面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルフォベタイ
ンなどであり、N−トリアルキル−N−カルボキシメチ
ルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スル
フォアルキレンアンモニウムベタインなどである。
【0081】これらの界面活性剤は、界面活性剤の応用
(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に記
載されている。本発明においては、好ましい界面活性剤
はその使用量において特に限定されず、目的とする界面
活性特性が得られる量であればよい。
【0082】フッ素系界面活性剤も好ましく用いられ
る。フッ素系界面活性剤の具体例を記す。 WA−1:C8 17SO2 N(C3 7 )(CH2 CH
2 O)16H WA−2:C8 17SO2 N(C3 7 )−(CH2
3 −N(+)(CH3 3 ・I(−) WA−3:C8 17SO2 N(C3 7 )CH2 CH2
CH2 N(+)(CH32 ‐CH2 COO(−) WA−4:C8 17CH2 CH2 O(CH2 CH2 O)
16H WA−5:C8 17CH2 CH2 O(CH2 3 −N
(+)(CH3 3 ・I(−) WA−6:H(CF2 6 CH2 CH2 O(CH2 CH
2 O)16H WA−7:H(CF2 8 CH2 CH2 O(CH2 3
−N(+)(CH3 3・I(−) WA−8:C9 17‐C6 4 SO2 N(C3 7
(CH2 CH2 O)16H WA−9:C9 17‐C6 4 CSO2 N(C3 7
−(CH2 3 −N(+)(CH3 3 ・I(−)
【0083】また、セルロースアシレートフイルムの上
のいずれかの層に滑り剤を含有させることが好ましい
が、特に最外層が好ましい。用いられる滑り剤として
は、例えば、特公昭53−292号公報に開示されてい
るようなポリオルガノシロキサン、米国特許42751
46号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミ
ド、特公昭58−33541号公報、英国特許第92
7、446号明細書或いは特開昭55−126238号
及び同58−90633号公報に開示されているような
高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素
数10〜24のアルコールのエステル)、そして、米国
特許3933516号明細書に開示されているような高
級脂肪酸金属塩、また、特開昭58−50534に開示
されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコー
ルのエステル、国際特許出願90108115.8号明
細書に開示されているような分岐アルキル基を含む高級
脂肪酸−高級アルコールエステル等が知られている。
【0084】このうちポリオルガノシロキサンとして
は、一般的に知られている、ポリジメチルシロキサンポ
リジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポ
リジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサ
ン等のポリアリールシロキサンのほかに、特公昭53−
292,特公昭55−49294、特開昭60−140
341等に示されるような、C5 以上のアルキル基を
持つオルガノポリシロキサン、側鎖にポリオキシアルキ
レン基を有するアルキルポリシロキサン、側鎖にアルコ
キシ、ヒドロキシ、水素、カルボキシル、アミノ、メル
カプト基を有するようなオルガノポリシロキサン等の変
性ポリシロキサンを用いることもできるし、シロキサン
ユニットを有するブロックコポリマーや、特開昭60−
191240に示されるようなシロキサンユニットを側
鎖に持つグラフトコポリマーを用いることもできる。
【0085】このような化合物の具体例を次に示す。 (S−1)(CH3 3 SiO−(Si(CH3
2 O)a−Si(CH3 3 a=5〜1000 (S−2)(C6 5 3 SiO−(Si(CH3 2
O)a−Si(CH33 a=5〜1000 (S−3)(CH3 3 SiO−(Si(C5 11
(CH3 )−O)a−Si(CH3 3 a=10 (S−4)(CH3 3 SiO−(Si(C1225
(CH3 )−O)10−(Si(CH3 2 O)18−Si
(CH3 3 (S−5)(CH3 3 SiO−(Si(CH3
2 O)x −(Si(CH 3 )((CH2 3 −O(C
2 CH2 O)10H)−O)y−(Si(CH3
2 O)z−Si(CH3 3 x+y+z=30 (S−6)(CH3 3 SiO−(Si(CH3
2 O)x−(Si(CH3){(CH2 3 −O(CH
2 CH(CH3 )−O)10(CH2 CH2 O)10 3
7 }O)y−(Si(CH3 2 O)z−Si(C
3 3 x+y+z=35
【0086】また、高級脂肪酸及びその誘導体、高級ア
ルコール及びその誘導体としては、高級脂肪酸、高級脂
肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミ
ド、高級脂肪酸の多価アルコールエステル等、また、高
級脂肪族アルコール、高級脂肪族アルコールのモノアル
キルフォスファイト、ジアルキルフォスファイト、トリ
アルキルフォスファイト、モノアルキルフォスフェー
ト、ジアルキルフォスフェート、トリアルキルフォスフ
ェート、高級脂肪族のアルキルスルフォン酸、そのアミ
ド化合物またはその塩等を用いることができる。このよ
うな化合物の具体例を次に示すが、本発明はこれらによ
って制限されるものではない。
【0087】 (S−7)n−C1531COOC3061−n (S−8)n−C1735COOC3061−n (S−9)n−C1531COOC50101 −n (S−10)n−C2143COO−(CH2 7 CH
(CH3 )−C9 19 (S−11)n−C2143COOC2449−iso (S−12)n−C1837OCO(CH2 4 COOC
4081−n (S−13)n−C50101 O(CH2 CH2 O)15H (S−14)n−C4081OCOCH2 CH2 COO
(CH2 CH2 O)16
【0088】このような滑り剤を用いることにより、引
っかき強度にすぐれ、下塗面でのはじき等が起こらない
優れたフイルムが得られる。これらの滑り剤の使用量は
特に限定されないが、その含有量は0.0005から2
g/m2 が好ましく、より好ましくは0.001〜1g
/m2 、特に好ましくは0.002〜0.5g/m2
ある。滑り剤の添加層としては、特にこれに限定される
ものではないが、バック面の最外層に含有させることが
好ましい。上記の滑り剤を含む表面層は、これを適当な
有機溶剤に溶解した塗布液を、支持体、またはバック層
にその他の層を付与した支持体上に塗布し、乾燥するこ
とにより形成できる。また、滑り剤は、塗布液中に分散
物の形で添加することもできる。
【0089】上記滑り剤の塗設にあたっては,皮膜形成
能のあるバインダーと共に用いることもできる。このよ
うなポリマーとしては,公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性
樹脂、放射線硬化性樹脂、反応性樹脂、およびこれらの
混合物、ゼラチンなどの親水性バインダーを使用するこ
とができる。滑り性能は静摩擦係数0.25以下が好ま
しく、試料を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿
した後、HEIDON−10静摩擦係数測定機により、
5mmφのステンレス鋼球を用いて測定した値であり、数
値が小さい程滑り性は良い。静摩擦係数を小さくするこ
とによって、その5mm直径の鋼球に対する動摩擦係数
は、好ましいのは0.25以下であり、より好ましくは
0.20以下更に好ましくは0.16以下であり特に好
ましくは0.12以下である。
【0090】また、セルロースアシレートフイルムの易
滑性や高湿度下での耐接着性の改良のために機能層のい
ずれかにマット剤を使用することが好ましい。本発明の
セルロースアシレートフイルムは、そ表面の突起物の平
均高さが0.005〜10μmであり、好ましくは0.
01〜5μmである。又、その突起物は表面に多数ある
程良いが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。
好ましい突起物は、その突起物の平均高さを有する範囲
であれば、例えば球形、不定形マット剤で突起物を形成
する場合はその含有量が0.5〜600mg/m2であ
り、より好ましいのは1〜400mg/m2である。この
時、使用されるマット剤としてはその組成において特に
限定されず、無機物でも有機物でもよく2種類以上の混
合物でもよい。
【0091】マット剤の無機化合物、有機化合物は、例
えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタ
ン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、など
の無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ
酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素や
チタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ル
チル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の
比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕し
た後、分級(振動ろ過、風力分級など)することによっ
ても得られる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、
セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタ
クリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルア
クリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等の有機
高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸
濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あ
るいは分散法等により球型にした高分子化合物、または
無機化合物を用いることができる。
【0092】セルロースアシレート溶液からなるセルロ
ースアシレートフイルムは、様々な用途で用いることが
できる。本発明のセルロースアシレートフイルムは、液
晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果が
ある。本発明のセルロースアシレートフイルムには、フ
イルムそのものを光学補償シートとして用いることがで
きる。なお、フイルムそのものを光学補償シートとして
用いる場合は、偏光素子(後述)の透過軸と、セルロー
スアシレートフイルムからなる光学補償シートの遅相軸
とを実質的に平行または垂直になるように配置すること
が好ましい。このような偏光素子と光学補償シートとの
配置については、特開平10−48420号公報に記載
がある。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を
担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏
光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なく
とも一枚の光学補償シートを配置した構成を有してい
る。
【0093】液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板
の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封
入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明
な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガ
スバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の
接着に用いる)アンダーコート層を設けてもよい。これ
らの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板
は、一般に80〜500μmの厚さを有する。
【0094】光学補償シートは、液晶画面の着色を取り
除くための複屈折率フイルムである。本発明のセルロー
スアシレートフイルムそのものを、光学補償シートとし
て用いることができる。さらに反射防止層、防眩性層、
λ/4層や2軸延伸セルロースアシレートフイルムとし
て機能を付与してもよい。また、液晶表示装置の視野角
を改良するため、本発明のセルロースアシレートフイル
ムと、それとは(正/負の関係が)逆の複屈折を示すフ
イルムを重ねて光学補償シートとして用いてもよい。光
学補償シートの厚さの範囲は、前述した本発明のフイル
ムの好ましい厚さと同じである。
【0095】偏光素子の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、
二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜が
ある。いずれの偏光膜も、一般にポリビニルアルコール
系フイルムを用いて製造する。偏光板の保護膜は、25
〜350μmの厚さを有することが好ましく、50〜2
00μmの厚さを有することがさらに好ましい。液晶表
示装置には、表面処理膜を設けてもよい。表面処理膜の
機能には、ハードコート、防曇処理、防眩処理および反
射防止処理が含まれる。
【0096】前述したように、支持体の上に液晶(特に
ディスコティック液晶性分子)を含む光学的異方性層を
設けた光学補償シートも提案されている(特開平3−9
325号、同6−148429号、同8−50206
号、同9−26572号の各公報記載)。本発明のセル
ロースアシレートフイルムは、そのような光学補償シー
トの支持体としても用いることができる。
【0097】本発明では、光学的異方性層として負の一
軸性を有し傾斜配向したディスコティック液晶性分子を
含む層であることが好ましい。ディスコティック液晶性
分子の円盤面と支持体面とのなす角は、光学的異方性層
の深さ方向において変化している(ハイブリッド配向し
ている)ことが好ましい。ディスコティック液晶性分子
の光軸は、円盤面の法線方向に存在する。ディスコティ
ック液晶性分子は、光軸方向の屈折率よりも円盤面方向
の屈折率が大きな複屈折性を有する。ディスコティック
液晶性分子は、支持体表面に対して実質的に水平に配向
させてもよい。
【0098】本発明のセルロースアシレートフイルム
は、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置
の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられ
る。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、
レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償
シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好まし
い。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学
的性質は、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学
的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決
定される。VA型液晶表示装置に光学補償シートを二枚
使用する場合は、光学補償シートの面内レターデーショ
ンを、−5nm〜5nmの範囲内にすることが好まし
い。従って、二枚の光学補償シートのそれぞれの面内レ
ターデーションの絶対値は、0〜5とすることが好まし
い。VA型液晶表示装置に光学補償シートを一枚使用す
る場合は、光学補償シートの面内レターデーションを、
−10nm〜10nmの範囲内にすることが好ましい。
【0099】本発明のセルロースアシレートフイルム
は、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示
装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型
液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に
用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液
晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーシ
ョンの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内
にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型
液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光
学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的
性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持
体との配置により決定される。
【0100】本発明のセルロースアシレートフイルム
は、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell
)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の
光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。A
SMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な
樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。
その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。
ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置につい
ては、クメ(Kume)外の論文(Kume et al.,SID 9
8 Digest 1089 (1998))に記載がある。本
発明のセルロースアシレートフイルムを、TNモードの
液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シート
の支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルと
TN型液晶表示装置については、古くから良く知られて
いる。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートにつ
いては、特開平3−9325号、同6−148429
号、同8−50206号、同9−26572号の各公報
に記載がある。
【0101】
【実施例】各実施例において、セルロースアシレート、
溶液およびフイルムの化学的性質および物理的性質は、
以下のように測定および算出した。
【0102】(1)フイルムの剥げ残り 得られたフイルムを支持体から剥ぎ取る際の支持体表面
を目視で観察し、セルロースアシレートフイルムの剥げ
残りを以下の如く評価した。 A:支持体に剥げ残りは認められない。 B:支持体に剥げ残りがわずかに認められた。 C:支持体に剥げ残りがかなり認められた。 D:支持体に剥げ残りが多量認められた。
【0103】(2)フイルムの横段ムラ(ムラと略称) 得られたフイルムを目視で観察し、その横段状ムラの欠
陥を以下の如く評価した。 A:フイルムに横段ムラは認められない。 B:フイルムに横段ムラがわずかに認められた。 C:フイルムに横段ムラがかなり認められた。 D:フイルムに横段ムラが多量認められた。
【0104】(3)フイルムのブツ(ブツと略称) 得られたフイルムを目視で観察し、その表面上のブツを
以下の如く評価した。 A:フイルム表面にブツは認められなかった。 B:フイルム表面にブツがわずかに認められた。 C:フイルム表面にかなりのブツが認められた。 D:フイルム表面に凹凸が見られ、ブツが多数認められ
た。
【0105】(4)フイルムの耐折試験 120mnに切りだした試料をISO8776/2−1
988の規格に従い、折り曲げよって切断するまでの往
復回数を求めた。
【0106】(5)フイルムのヘイズ ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を
用いて測定した。
【0107】[実施例1] (1−1)セルローストリアセテート溶液の作製 下記の処方にてセルローストリアセテート溶液を作製し
た。攪拌羽根を有する2Lのステンレス性溶解容タンク
(予めメチレンクロライドで十分洗浄した)に、下記の
溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセテ
ート粉体(平均サイズ 2mm)を徐々に添加し、全体
が1kgになるように仕込んだ。添加後、室温(25
℃)にて3時間、25℃にて放置しセルローストリアセ
テートを膨潤させた。
【0108】 ──────────────────────────────────── セルローストリアセテート(置換度2.83、含水率0.4質量%、粘度平均 重合度320、メチレンクロライド溶液中6重量%の粘度305mPa・s) 20重量部 酢酸メチル 48重量部 シクロペンタノン 10重量部 メタノール 5重量部 エタノール 5重量部 ジペンタエリスリトールヘキサアセテート(可塑剤A) 6重量部 トリフェニルフォスフェート(可塑剤B) 6重量部 粒径20nmのシリカ微粒子 0.1重量部 2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ− tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(UV剤a)0.1重量部 2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロ ルベンゾトリアゾール(UV剤b) 0.1重量部 2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロ ルベンゾトリアゾール(UV剤c) 0.1重量部 本発明の剥離剤または比較化合物 種類と添加量は表1に記載 ────────────────────────────────────
【0109】(1−2)セルローストリアセテートフイ
ルム溶液 得られた不均一なゲル状溶液をスクリューポンプで送液
して、−70℃で3分間となるように冷却部分を通過さ
せた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒を用いて
実施した。そして、冷却により得られた溶液はステンレ
ス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌した後、ステ
ンレス配管の加熱部で110℃、1Mpaに加温加圧
し、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)
製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μm
の濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
【0110】(1−3)セルローストリアセテートフイ
ルムの作製 得られた高温高圧のろ過済み溶液を50℃に冷却してセ
ルローストリアセテート溶液を得た。テスト用の流延ギ
ーサーを通して鏡面ステンレス支持体上に流延した。支
持体温度は10℃であり、流延スピードは3m/分でそ
の塗布幅は50cmとした。乾燥は55℃の乾燥風を送
風した。5分後に鏡面ステンレス支持体から剥ぎ取り
(この時の剥ぎ取り直後の固形分濃度は、約30〜60
重量%であった)、しかる後に110℃、10分、更に
150℃で30分乾燥(フイルム温度は約140℃)し
て、セルローストリアセテートフイルム(膜厚80μ
m)を得た。なお、セルロースアセテート溶液はすべて
使用し、溶解タンクや送液系などは一部皮張りが発生す
る状態であった。
【0111】(1−4)結果 表1に、本発明の剥離剤を用いた場合に得られる剥離特
性とフイルム面状(ムラ、ブツ)の評価結果を記載す
る。本発明の離型剤を使用しないコントロール試料1−
1は剥げ残りが著しく発生し、ムラ、スジ及びヘイズも
大きく劣るものであった。これに対し本発明の試料1―
2〜1−11は、剥げ残りもなく、ムラ、スジもなく又
ヘイズも小さくて面状の優れるものであった。また、本
発明の化合物ではあるが、その使用量が少ない試料1−
12はさらに本発明の離型剤ではあるがその使用量が多
い比較試料1−13は、ヘイズが大きく上がり透明性に
劣るものであった。なお、本発明以外の比較化合物A,
B及びCを用いた比較試料1−14〜1−16は、剥げ
残りが発生し、ムラ、スジ及びヘイズを満足させること
は出来なかった。
【0112】
【表1】
【0113】[実施例2]本発明の試料1−3につい
て、(1−2)セルローストリアセテートフイルム溶液
を下記に変更する以外は実施例1と全く同様にしてて試
料2−3を得た。
【0114】(1−2)のセルローストリアセテートフ
イルム溶液得られた不均一なゲル状溶液をスクリューポ
ンプで送液して、180℃、1Mpaに加温加圧した加
熱部分を3分間通過させた後、110℃、1Mpaに加
温加圧して、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾
紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度
0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)に
て濾過した。
【0115】(2−1)結果 得られた本発明の試料2−3は、ろ過性もよく、剥げ残
りもなくムラ、ブツ及びヘイズも優れたものであった。
このことから、本発明においては高温高圧溶解において
も優れたセルロースアセテート溶液とセルロースアセテ
ートフイルムが作製できることが確証された。
【0116】[実施例3]実施例1の試料1−3におい
て、可塑剤A及びBを共に0重量部として除去する以外
は実施例1と全く同様にして本発明の試料3−3を作製
した。得られた試料3−3は剥げ残りもなくムラ、ブツ
は共にAでありヘイズは0.3で優れたものであった。
一方、その耐切試験を実施したところ試料1−3は10
3回であるのに対し、本発明の範囲ではあるが可塑剤が
ない試料3−3は、耐切試験は82回と実用状問題ない
が若干劣るものであった。従って、本発明ではセルロー
スアシレートフイルムが可塑剤を含有することが、より
好ましい態様であることが明らかである。
【0117】[実施例4]実施例1の試料1−3におい
てUV剤a、b、cを共に0重量部として除去する以外
は実施例1と全く同様にして本発明の試料4−3を作製
した。得られた試料4−3は、剥げ残りもなく、ムラ、
ブツは評価Aであり、ヘイズも0.3で優れたものであ
った。一方、その光褪色試験をキセノンランプ3万ルク
ス、1ヶ月実施したところ、試料1−3はヘイズが0.
4%であるのに対し、本発明の範囲であるが試料4−3
はそのヘイズが0.6と若干アップした。従って、本発
明ではセルロースアシレートフイルムがUV剤を含有す
ることが、より好ましい態様であることが明らかであ
る。
【0118】[実施例5]実施例1の試料1−3におい
て微粒子のシリカを0重量部として除去する以外は実施
例1と全く同様にして本発明の試料5−3を作製した。
得られた試料5−3は剥げ残りもなくムラ及びブツは評
価Aであり、ヘイズも0.3で優れたものであった。一
方、そのフイルムを2枚重ねて滑りやすさを調べたとこ
ろ、試料1−3はスムーズに2枚を動かすことができる
のに対し、本発明の範囲であるが試料5−3はフイルム
同士の動きが若干悪かった。従って、本発明ではセルロ
ースアシレートフイルムが微粒子を含有することが、よ
り好ましい態様であることが明らかである。
【0119】[実施例6]実施例1の本発明の試料1−
3において、実施例1の(1−2)セルロースとりアセ
テートフイルムの作製を以下に変更する以外は、実施例
1と全く同様にして本発明の試料6−3のセルロースト
リアセテートフイルムを作製した。すなわち、(1−
1)で得られたセルローストリアセテート溶液の一部を
採液し、酢酸メチルを全体の10重量%添加して希釈し
たセルローストリアセテート溶液(溶液A)を作製し
た。得られた溶液は、特開平06−134993記載の
共流延法に従って試料1−3のセルローストリアセテー
ト溶液を内部に、そしてその両側にセルローストリアセ
テート溶液(溶液A)を積層共流延し、共流延セルロー
ストリアセテートフイルムを得た。なおその膜厚は、両
側を3μmとし内部を34μmとして総厚が40μmと
なるようにした。得られた試料6−3の面状は、試料1
−3よりも表面が滑らかで凹凸がなく更に優れたもので
あった。従って本発明においては共流延することが更に
優れた態様であることが明らかである。
【0120】[実施例7]特開平11−316378号
公報の[実施例1]において、その第1透明支持体を本発
明の実施例1の試料1−3で得られるセルローストリア
セテートフイルム(第2フイルム)の厚さを100μm
としたものに変更する以外は、全く同様にして特開平1
1−316378号公報の[実施例1]を実施して試料7
−3を作製した。得られた楕円偏光板は、優れた光学特
性は優れたものであった。従って、本発明の製造工程に
おいて特定の洗浄溶液を用いることで、その後に作製さ
れるセルロースアシレートフイルムが光学偏光板に適応
されても問題のない好ましい態様であることが明らかで
ある。
【0121】[実施例8]実施例1の本発明の試料1−
3のセルローストリエステルフイルムに、特開平7−3
33433公報の実施例1の富士写真フイルム(株)製
セルローストリアセテートを、本発明の試料1−3のセ
ルローストリアセテートフイルムに変更する以外は、特
開平7−333433公報の実施例1と全く同様にした
光学補償フィルターフイルム試料を作製した。得られた
フィルターフイルムは左右上下に優れた視野角を有する
ものであった。したがって、本発明のセルローストリア
セテートフイルムが、光学的用途として優れたものであ
ることが判る。
【0122】[実施例9]本発明では更に、多種の光学
用途に利用され、本発明の代表として試料1−3を、例
えば特開平10−48420実施例1に記載の液晶表示
装置、特開平9−26572実施例1に記載のディスコ
ティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルア
ルコールを塗布した配向膜、特開2000−15426
1の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開200
0−154261の図10〜15に記載のOCB型液晶
表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0123】[実施例10]実施例1の本発明の試料1
−3において、そのフイルム厚さを120μmとする以
外は、実施例1と全く同様にしてそのフイルムである本
発明の試料10−3を作製した。得られたフイルムの一
方に、特開平4−73736号の実施例1の(バック層
組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマー
を導電性層とするバック層を作製した。更に、得られた
バック層を付与したフイルムベースの反対の面に、特開
平11−38568号の実施例1の試料105を塗布
し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得ら
れたカラーフイルムは優れた映像が得られかつその取り
扱い性においても問題のないものであった。
【0124】[実施例11]実施例1の本発明の試料1
−3について、実施例1の(1−1)セルローストリア
セテート溶液の酢酸メチル48重量部をメチレンクロラ
イド48重量部に、またシクロペンタノンをメチレンク
ロライド10重量部に変更する以外は実施例1と全く同
様にして試料11−3を得た。得られた本発明の試料1
1−3は、剥げ残りはBであったが、ムラがBであり更
にブツがCで劣るモノであった。従って本発明では非ハ
ロゲン系有機溶媒が優れたものであることが明らかであ
る。
【0125】
【発明の効果】本発明に従うと、製造工程でセルロース
アシレート溶液の支持体に流延した後、そのフイルムを
剥ぎ取る際に、剥ぎ取り性が良好である溶液を提供する
ことができる。さらに本発明のセルロースアシレートフ
イルム溶液により、ムラやブツの発生のないセルロース
アシレートフイルムを提供できる。さらに、光学的異方
性に優れ膜強度に優れたセルローストリエステルフイル
ムを提供することができる。更に、感材用支持体として
も優れたセルローストリアセテートフイルムを作製でき
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 1/10 C08L 1/10 G02B 5/30 G02B 5/30 G03C 1/795 G03C 1/795 Fターム(参考) 2H023 FA01 FA13 2H049 BA02 BB13 BB33 BB67 BC09 BC22 4F070 AA02 AB02 AC34 AC38 AC39 AC40 AC43 AC50 AC55 AE02 AE03 AE14 AE17 AE28 CB05 CB11 4F071 AA09 AA81 AC06 AC07 AC09 AC10 AC14 AC15 AD02 AE04 AE05 AE10 AE19 AF19 AG22 AG28 AG29 AG36 AH19 BA02 BB02 BC01 4J002 AB011 EF006 EG006 EV236 EV256 EW046 FD166 GP03

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水酸基の置換度が2.6〜3.0のセル
    ロースアシレートおよび実質的に含塩素炭化水素を含ま
    ない有機溶媒からなるセルロースアシレート溶液を流延
    して製造されたセルロースアシレートフイルムであっ
    て、該フイルムが下記式(1)または(2)で表される
    剥離剤を含むことを特徴とするセルロースアシレートフ
    イルム: (1)(R1−B1−O)n1−P(=O)−(OM1)n2 (2) R2−B2−X [式中、R1およびR2は、それぞれ、炭素数4〜40
    の置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、ア
    ラルキル基またはアリール基であり;M1は、アルカリ
    金属、アンモニア、低級アルキルアミンであり;B1お
    よびB2は、それぞれ、2価の連結基であり;Xは、カ
    ルボン酸またはその塩、スルフォン酸またはその塩、あ
    るいは硫酸エステルまたはその塩であり;n1は、1ま
    たは2であり;そして、n2は、3−n1である]。
  2. 【請求項2】 セルロースアシレート溶液が、式(1)
    または(2)で表される剥離剤を0.002乃至2質量
    %含む請求項1に記載のセルロースアシレートフイル
    ム。
  3. 【請求項3】 有機溶媒の少なくとも一種が、炭素原子
    数が3〜12のエーテル類、炭素原子数が3〜12のケ
    トン類、炭素原子数が3〜12のエステル類から選ばれ
    る請求項1に記載のセルロースアシレートフイルム。
  4. 【請求項4】 セルロースアシレート溶液が、少なくと
    も一種の炭素数1〜4のアルコールを溶液に対して1〜
    15重量%含有する請求項1に記載のセルロースアシレ
    ートフイルム。
  5. 【請求項5】 セルロースアシレートが、セルロースア
    シレート溶液に10〜40重量%の濃度で溶解している
    請求項1に記載のセルロースアシレートフイルム。
  6. 【請求項6】 セルロースアシレートが、250乃至5
    50の粘度平均重合度を有する請求項1に記載のセルロ
    ースアシレートフイルム。
  7. 【請求項7】 溶解工程が−100〜0℃に冷却する工
    程、冷却された混合物を0〜150℃に加温してセルロ
    ースアシレート溶液とすること、及び/又は溶解工程が
    70〜200℃、0.3〜30MPaの高温高圧で加熱
    してセルロースアシレート溶液とする請求項1に記載の
    セルロースアシレートフイルム。
  8. 【請求項8】 セルロースアシレート溶液が、少なくと
    も一種の可塑剤をセルロースアシレートに対して0.1
    〜20重量%含有しているセルロースアシレート溶液で
    あること、及び/又は少なくとも一種の紫外線吸収剤を
    セルロースアシレートに対して0.001〜5重量%含
    有しているセルロースアシレート溶液であること、及び
    /又は少なくとも一種の微粒子粉体をセルロースアシレ
    ートに対して0.001〜5重量%含有しているセルロ
    ースアシレート溶液であること、及び/又は少なくとも
    一種のフッ素系界面活性剤をセルロースアシレートに対
    して0.001〜2重量%含有しているセルロースアシ
    レート溶液である請求項1に記載のセルロースアシレー
    トフイルム。
  9. 【請求項9】 流延工程で2種類以上のセルロースアシ
    レート溶液を共流延する請求項1に記載のセルロースア
    シレートフイルム。
  10. 【請求項10】 作製されたセルロースアシレートフイ
    ルムが、光学用保護層として用いられるセルロースアシ
    レートフイルムであり、その膜厚が10〜200μmで
    ある請求項1に記載のセルロースアシレートフイルム。
  11. 【請求項11】 作製されたセルロースアシレートフイ
    ルムが、ハロゲン化銀写真感光材料用保支持体であり、
    その膜厚が30〜250μmである請求項1に記載のセ
    ルロースアシレートフイルム。
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