JP2002113432A - セルロースアシレートフイルム製造装置の洗浄方法 - Google Patents

セルロースアシレートフイルム製造装置の洗浄方法

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JP2002113432A
JP2002113432A JP2000307314A JP2000307314A JP2002113432A JP 2002113432 A JP2002113432 A JP 2002113432A JP 2000307314 A JP2000307314 A JP 2000307314A JP 2000307314 A JP2000307314 A JP 2000307314A JP 2002113432 A JP2002113432 A JP 2002113432A
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cellulose acylate
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cellulose
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JP2000307314A
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Yasuo Kuraki
康雄 椋木
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非ハロゲン系有機溶媒を用いてセルロースア
シレート溶液を作製し、流延してセルロースアシレート
フイルムを得るための製造装置の洗浄において、非ハロ
ゲン溶媒を用いて常温で洗浄する。 【解決手段】 セルロースアシレートが5乃至40質量
%の濃度で溶解しているセルロースアシレート溶液を、
支持体上に流延し乾燥してセルロースアシレートフイル
ムを製造する装置を洗浄する方法であって、製造装置に
残留または付着したセルロースアシレート溶液、ゲルま
たは固形物を除去するための洗浄液として、酢酸メチル
と、炭素数3〜12のケトン類、水および炭素数1〜6
のアルコール類からなる群より選ばれる液体との混合物
を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セルロースアシレ
ートフイルムを製造する装置において、フイルムの製造
中あるいはフイルム製造後の装置を洗浄する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】セルロースアシレートフイルムは、その
強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いら
れており、代表的な写真感光材料の支持体であり、また
その光学的等方性から、近年市場の拡大している液晶表
示装置にも用いられている。液晶表示装置における具体
的な用途としては、偏光板の保護フイルムおよびカラー
フィルターが代表的である。セルロースアシレートの酢
化度や重合度は、得られるフイルムの機械的強度や耐久
性と密接な関係がある。酢化度や重合度が低下するにつ
れて、フイルムの弾性率、耐折強度、寸度安定性および
耐湿熱性も低下する。写真用支持体や光学フイルムとし
て要求される品質を満足するためには、特にセルロース
アセテートの酢化度は58%以上(好ましくは59%以
上)が必要であるとされる。酢化度が58%以上のセル
ロースアセテートが有効であり、一般にトリアセチルセ
ルロース(TAC)に分類される。その重合度は、粘度
平均重合度として250以上が好ましく、290以上が
さらに好ましいといわれている。
【0003】セルロースアシレートフイルムは、一般に
ソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製
造される。ソルベントキャスト法では、セルロースアシ
レートを溶媒中に溶解した溶液(溶液)を支持体上に流
延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成されている。メ
ルトキャスト法では、セルロースアシレートを加熱によ
り溶融したものを支持体上に流延し、冷却してフイルム
を形成する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャ
スト法よりも平面性の高い良好なフイルムを製造するこ
とができる。このため、実用的には、ソルベントキャス
ト法の方が普通に採用されている。ソルベントキャスト
法については、多くの文献に記載がある。最近のソルベ
ントキャスト法では、溶液を支持体上へ流延してから、
支持体上の成形フイルムを剥離するまでに要する時間を
短縮して、製膜工程の生産性を向上させることが課題に
なっている。例えば、特公平5−17844号公報に
は、高濃度溶液を冷却ドラム上に流延することにより、
流延後、剥ぎ取りまでの時間を短縮することが提案され
ている。
【0004】ソルベントキャスト法に用いる溶媒は、単
にセルロースアシレートを溶解することだけでなく、様
々な条件が要求される。すなわち、平面性に優れ、厚み
の均一なフイルムを、経済的に効率よく製造するために
は、適度な粘度とポリマー濃度を有する保存安定性に優
れた溶液を調製する必要がある。溶液については、ゲル
化が容易であることや支持体からの剥離が容易であるこ
とも要求される。そのような溶液を調製するためは、溶
媒の種類の選択が極めて重要である。溶媒については、
蒸発が容易で、フイルム中の残留量が少ないことも要求
される。セルロースアシレートの溶媒として、様々な有
機溶媒が提案されているが、以上の要求を全て満足する
溶媒は、実質的にはメチレンクロリドに限られていた。
メチレンクロリド以外のセルロースアシレートの有機溶
媒としては、エピクロルヒドリン(沸点:116℃)、
N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、テトラヒド
ロフラン(沸点:65.4℃)、1,4−ジオキサン
(沸点:101℃)、1,3−ジオキソラン(沸点:7
5℃)やニトロメタン(沸点:101℃)が知られてい
るが、エーテル類は取り扱い時に爆発の危険があった
り、高沸点溶媒はフイルム中に残存し環境上には好まし
くないものである。
【0005】以上の理由からメチレンクロリドが好まし
く用いられてきたが、このようなハロゲン化炭化水素
は、近年地球環境保護の観点から懸念されつつある。ま
た、メチレンクロリドは、低沸点(41℃)であるた
め、製造工程において揮散しやすい。このため、作業環
境においても問題である。これらの問題を防止するた
め、製造工程のクローズド化が行なわれているが、密閉
するにしても技術的な限界がある。従って、メチレンク
ロリドの代替となるような、セルロースアシレートの溶
媒を捜し求めることが急務となっていた。
【0006】そして、メチレンクロリドの代替溶媒とし
て、近年アセトンや酢酸エステルあるいはジオキソラン
などの非ハロゲン系有機溶媒が提案されている。それら
は、例えば特開平8−95544号、同9−95538
号、同11−60752号などを挙げることができる。
たしかにこれらの溶媒は、セルローストリアセテートに
対する溶解性を有しているが不十分であり、その溶解工
程で−10℃以下の冷却工程を必要としたり、あるいは
又100℃以上で10気圧以上の加熱工程を必要とし、
生産性の点で大きく劣るものであった。これは、アセト
ン溶媒ではセルロースアシレートに対する溶解性が低
く、置換度2.70(酢化度58.8%)以下のセルロ
ースアセテートに対しては、アセトンは若干の溶解性を
示すのみであり、セルロースアセテートの置換度が2.
70を越えると、アセトンの溶解性がさらに低下する。
特に、置換度2.80(酢化度60.1%)以上のセル
ロースアセテートとなるとアセトンは膨潤作用を示すの
みで溶解性を示さない。この改良として以下が考えら
れ、前記特許で改良されたものである。
【0007】すなわち、J.M.G.Cowie他の論
文、Makromol,chem.,143巻、105
頁(1971年)は、置換度2.80(酢化度60.1
%)から置換度2.90(酢化度61.3%)のセルロ
ースアセテートを、アセトン中で−80℃から−70℃
に冷却した後、加温することにより、アセトン中にセル
ロースアセテートが0.5〜5質量%に溶解している希
薄溶液が得られたことを報告している。以下、このよう
に、セルロースアセテートと有機溶媒との混合物を冷却
して、溶液を得る方法を「冷却溶解法」と称する。ま
た、セルロースアセテートのアセトン中への溶解につい
ては、上出健二他の論文「三酢酸セルロースのアセトン
溶液からの乾式紡糸」、繊維機械学会誌、34巻、57
〜61頁(1981年)にも記載がある。この論文は、
その標題のように、冷却溶解法を紡糸方法の技術分野に
適用したものである。論文では、得られる繊維の力学的
性質、染色性や繊維の断面形状に留意しながら、冷却溶
解法を検討している。この論文では、繊維の紡糸のため
に10〜25質量%の濃度を有するセルロースアセテー
トの溶液を用いている。或いはまた、高温高圧でセルロ
ースアシレート溶液を加熱し溶解することも、好ましく
用いられてきている。例えば、110〜200℃で0.
3〜200MPaなどの条件で実施される。
【0008】以上のように冷却溶解法あるいは高温加圧
溶解法を用いて、セルロースアシレートがアセトンや酢
酸メチルあるいはジオキソラン中に溶解している溶液を
調製することが可能になった。しかし、これらの溶液は
製造中に配管で長時間放置されたり、溶液が蒸発して局
部的に濃厚化したりして、セルロースアシレートが析出
したりすることが問題であった。このゲル状や析出ブツ
を洗浄する為には、非ハロゲン系溶媒では室温で溶解し
配管などの洗浄をすることが困難であった。すなわち、
ゲル状や析出したセルロースアシレートは、再溶解する
為には溶解温度である−30℃以下に冷却したり、11
0℃以上の高温高圧にする必要があった。しかしなが
ら、製造工程の配管や露出部をこれらの低温や高温にす
ることは不可能であり、実質上洗浄することは出来なか
った。この問題を解決する唯一の方法は、メチレンクロ
ライドを洗浄溶媒として使用するという、非ハロゲン溶
媒を用いないセルロースアシレート溶液の作製の目的に
対して、相容れない問題を含むものであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、非ハ
ロゲン系有機溶媒を用いてセルロースアシレート溶液を
作製し、流延してセルロースアシレートフイルムを得る
製造工程において、その製造装置の洗浄溶媒として非ハ
ロゲン溶媒を用いて常温で洗浄する方法を提供すること
にある。さらに本発明の目的は、非ハロゲン系溶媒を用
いて作製されたセルロースアシレート溶液を使用後に、
非ハロゲン系溶媒で常温で洗浄した後、再度セルロース
アシレート溶液を作製し、流延して得たセルロースアシ
レートフイルムがスジやブツなどの面状欠陥を生じない
ようにする方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、下記
(1)〜(18)のセルロースアシレートフイルム製造
装置の洗浄方法により達成された。 (1)セルロースアシレートが5乃至40質量%の濃度
で溶解しているセルロースアシレート溶液を、支持体上
に流延し乾燥してセルロースアシレートフイルムを製造
する装置を洗浄する方法であって、製造装置に残留また
は付着したセルロースアシレート溶液、ゲルまたは固形
物を除去するための洗浄液が、酢酸メチルと、炭素数3
〜12のケトン類、水および炭素数1〜6のアルコール
類からなる群より選ばれる液体との混合物からなること
を特徴とするセルロースアシレートフイルム製造装置の
洗浄方法。
【0011】(2)洗浄液中の酢酸メチル含有量が30
〜97質量%であり、炭素数4〜12のケトン類の含有
量が70〜3質量%であり、アルコール類の含有量が0
〜30質量%である(1)に記載の洗浄方法。 (3)洗浄液の温度が−20〜57℃である(1)に記
載の洗浄方法。
【0012】(4)洗浄液を製造装置内で10秒〜1ケ
月流動させ、ゲルまたは不溶解物を溶解する請求項1に
記載の洗浄方法。 (5)洗浄液が、自然落下、加圧、減圧あるいはポンプ
で送られることにより製造装置内を流動する(1)に記
載の洗浄方法。 (6)セルロースアシレートが、200〜700の粘度
平均重合度を有する(1)に記載の洗浄方法。
【0013】(7)洗浄液中のケトン類が、アセトン、
ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチ
ルケトン、シクロペンタノンまたはシクロヘキサノンで
ある(1)に記載の洗浄方法。 (8)洗浄液中のアルコール類が、メタノール、エタノ
ール、プロパノール、イソプロパノ−ル、ブタノール、
イソブタノールまたはシクロヘキサノールである(1)
に記載の洗浄方法。
【0014】(9)製造装置が、セルロースアシレート
の粉末を0〜55℃で溶媒と10秒以上混合する工程、
そして0〜55℃で5分以上膨潤または溶解する工程に
よりセルロースアシレート溶液を製造する装置である
(1)に記載の洗浄方法。 (10)製造装置が、セルロースアシレートの粉末を0
〜55℃で溶媒と10秒以上混合する工程、0〜55℃
で5分以上膨潤または溶解する工程、そして、−100
〜0℃で10秒以上冷却する工程または100〜200
℃で0.2〜300MPaで10秒以上加圧加温する工
程によりセルロースアシレート溶液を製造する装置であ
る(1)に記載の洗浄方法。
【0015】(11)セルロースアシレート溶液が、少
なくとも一種の可塑剤をセルロースアシレート100質
量部に対して0.1〜20質量%含有している(1)に
記載の洗浄方法。 (12)セルロースアシレート溶液が、少なくとも一種
の紫外線吸収剤をセルロースアシレート100質量部に
対して0.001〜5質量%含有している(1)に記載
の洗浄方法。 (13)セルロースアシレート溶液が、少なくとも一種
の微粒子粉体をセルロースアシレート100質量部に対
して0.001〜5質量%含有しているセルロースアシ
レート溶液である(1)に記載の洗浄方法。 (14)セルロースアシレート溶液が、少なくとも一種
の界面活性剤をセルロースアシレート100質量部に対
して0.001〜2質量%含有しているセルロースアシ
レート溶液である(1)に記載の洗浄方法。
【0016】(15)製造装置が、流延工程で2種類以
上のセルロースアシレート溶液を共流延する装置である
(1)に記載の洗浄方法。 (16)製造装置が、乾燥工程でフイルムを少なくとも
一軸に延伸する装置である(1)に記載の洗浄方法。 (17)製造装置が、光学用保護層として用いられるセ
ルロースアシレートフイルムを製造するための装置であ
る(1)に記載の洗浄方法。 (18)製造装置が、ハロゲン化銀写真感光材料用支持
体として用いられるセルロースアシレートフイルムを製
造するための装置である(1)に記載の洗浄方法。
【0017】
【発明の実施の形態】セルロースアシレート原料のセル
ロースとしては、綿花リンターや木材パルプなどがある
が、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシ
レートでも使用できるし、混合して使用してもよい。こ
れらのセルロースから得られるセルロースアシレート
は、セルロースの水酸基への置換度が下記式(I)〜
(IV)の全てを満足するものが好ましい。
【0018】(I) 2.6≦A+B≦3.0 (II) 2.0≦A≦3.0 (III) 0≦B≦0.8 (IV) 1.9<A−B ここで、式中A及びBはセルロースの水酸基に置換され
ているアシル基の置換基を表し、Aはアセチル基の置換
度、またBは炭素原子数3〜5のアシル基の置換度であ
る。セルロースには1グルコース単位に3個の水酸基が
あり、上記の数字はその水酸基3.0に対する置換度を
表すもので、最大の置換度が3.0である。セルロース
トリアセテートは一般にAの置換度が2.6以上3.0
以下であり(この場合、置換されなかった水酸基が最大
0.4である)、B=0の場合がセルローストリアセテ
ートである。セルロースアシレートは、アシル基が全部
アセチル基のセルローストリアセテート、及びアセチル
基が2.0以上で、炭素原子数が3〜5のアシル基が
0.8以下、置換されなかった水酸基が0.4以下のも
のが好ましい。炭素原子数3〜5のアシル基の場合、
0.3以下が物性の点から特に好ましい。なお、置換度
は、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び炭素原子数
3〜5の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって得られ
る。測定方法としては、ASTMのD−817−91に
準じて実施することが出来る。
【0019】セルロースアシレートの重合度(粘度平
均)は200〜700が好ましく、特に250〜550
のものが好ましい。一般的にセルローストリアセテート
を含むセルロースアシレートフイルム、繊維又は成型品
の機械的強度がタフであるためには重合度が200以上
あることが必要とされており、祖父江寛、右田伸彦編
「セルロースハンドブック」朝倉書房(1958)や、
丸沢廣、宇田和夫編「プラスチック材料講座17」日刊
工業新聞社(1970)に記載されている。セルロース
アシレートフイルムの重合度は特に好ましくは250〜
350である。粘度平均重合度はオストワルド粘度計で
測定することができ、測定されたセルロースアシレート
の固有粘度[η]から下記式により求められる。 DP=[η]/Km (式中DPは粘度平均重合度、
Kmは定数6×10-4
【0020】セルロースアシレートとしてはセルロース
トリアセテートが好ましく、更に写真用グレードのもの
が好ましく、市販の写真用グレードのものは粘度平均重
合度、酢化度等の品質を満足して入手することができ
る。写真用グレードのセルローストリアセテートのメー
カーとしては、ダイセル化学工業(株)、コートルズ
社、ヘキスト社、イーストマンコダック社等があり、何
れの写真用グレードのセルローストリアセテートも使用
できる。
【0021】アセチル基と炭素原子数3〜5のアシル基
を有するセルロースアシレートはセルロース混合脂肪酸
エステルとも呼ばれている。アセチル基の他の炭素原子
数3〜5のアシル基はプロピオニル基(C2 5 CO
−)、ブチリル基(C3 7 CO−)(n−、iso
−)、バレリル基(C4 9 CO−)(n−、iso
−、sec−、tert−)で、これらのうちn−置換
のものがフイルムにした時の機械的強さ、溶解し易さ等
から好ましく、特にn−プロピオニル基が好ましい。ま
た、アセチル基の置換度が低いと機械的強さ、耐湿熱性
が低下する。炭素原子数3〜5のアシル基の置換度が高
いと有機溶媒への溶解性は向上するが、それぞれの置換
度が前記の範囲であれば良好な物性を示す。
【0022】アシル基のアシル化剤としては、酸無水物
や酸クロライドである場合は反応溶媒としての有機溶媒
は、有機酸、例えば酢酸やメチレンクロライド等が使用
される。触媒としては、硫酸のようなプロトン性触媒が
好ましく用いられる。アシル化剤が酸クロライド(例え
ばCH3 CH2 COCl)の場合には塩基性化合物が用
いられる。工業的な最も一般的な方法は、セルロースを
アセチル基及び他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、
プロピオン酸、酪酸、吉草酸)又はそれらの酸無水物
(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草
酸)を含む混合有機酸成分でアシル化してセルロースア
シレートを合成する。セルロースアシレートの具体的な
製造方法については、例えば、特開平10−45804
号公報に記載されている方法により合成出来る。
【0023】ソルベントキャスト法によりセルロースア
シレートフイルムを製造することが好ましく、セルロー
スアシレートを有機溶媒に溶解したセルロースアシレー
ト溶液(ドープ)を用いてフイルムは製造される。主溶
媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が
3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、
炭素原子数が3〜12のエステルなどの非ハロゲン系溶
媒であることが好ましい。エーテル、ケトンおよびエス
テルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケト
ンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO
−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合
物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒
は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有してい
てもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場
合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合
物の規定範囲内であればよい。
【0024】炭素原子数が3〜12のエーテル類の例に
は、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメ
トキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソ
ラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネト
ールが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の
例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケト
ン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘ
キサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホ
ルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、
メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルア
セテートが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有
機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−
メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙
げられる。
【0025】セルロースアシレート溶液は、溶媒は2種
類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。特に好まし
い有機溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であ
って、第1の溶媒が炭素原子数が3〜4のケトンおよび
炭素原子数が3〜4のエステル或いはその混合液であ
り、第2の溶媒が炭素原子数が5〜7のケトン類または
アセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として沸点
が30〜170℃のアルコールまたは沸点が30〜17
0℃の炭化水素から選ばれる。第1の溶媒のケトンおよ
びエステルについては、好ましくはアセトン、酢酸メチ
ル、蟻酸メチル、蟻酸エチルである。第2の溶媒は、メ
チルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキ
サノン、アセト酢酸メチルが好ましい。
【0026】第3の溶媒は、沸点が30〜170℃のア
ルコールまたは沸点が30〜170℃の炭化水素から選
ばれる。アルコールは一価であることが好ましい。アル
コールの炭化水素部分は、直鎖であっても、分岐を有し
ていても環状であってもよい。炭化水素部分は、飽和脂
肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸
基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコ
ールの例には、メタノール(沸点:64.65℃)、エ
タノール(78.325℃)、1−プロパノール(9
7.15℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−
ブタノール(117.9℃)、2−ブタノール(99.
5℃)、t−ブタノール(82.45℃)、1−ペンタ
ノール(137.5℃)、2−メチル−2−ブタノール
(101.9℃)、シクロヘキサノール(161℃)、
2−フルオロエタノール(103℃)、2,2,2−ト
リフルオロエタノール(80℃)、2,2,3,3−テ
トラフルオロ−1−プロパノール(109℃)、1,3
−ジフルオロ−2−プロパノール(55℃)、1,1,
1,3,3,3−ヘキサ−2−メチル−2−プロパノー
ル(62℃)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオ
ロ−2−プロパノール(59℃)、2,2,3,3,3
−ペンタフルオロ−1−プロパノール(80℃)、2,
2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール
(114℃)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフ
ルオロ−1−ブタノール(97℃)、パーフルオロ−t
ert−ブタノール(45℃)、2,、2,2,3,
3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオー
ル(111.5℃)、3,3,4,4,5,5,6,
6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オク
タノール(95℃)、1−(ペンタフルオロフェニル)
エタノール(82℃)および2,3,4,5,6−ペン
タフルオロベンジルアルコール(115℃)が含まれ
る。アルコールについては、2種類以上の混合液で用い
てもよい。
【0027】炭化水素は、直鎖であっても、分岐を有し
ていても、環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪
族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化
水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水
素の例には、シクロヘキサン(沸点:80.7℃)、ヘ
キサン(69℃)、ベンゼン(80.1℃)、トルエン
(110.6℃)およびキシレン(138.4〜14
4.4℃)が含まれる。
【0028】3種混合溶媒中には、第1の溶媒が30〜
95質量%含まれることが好ましく、40〜90質量%
含まれることがより好ましく、50〜90質量%含まれ
ることが更に好ましく、50〜質量%含まれることが最
も好ましい。第2の溶媒及び第3の溶媒は、1〜40質
量%含まれることが好ましく、3〜30質量%含まれる
ことがより好ましい。好ましいこれらの溶媒の組み合わ
せは、以下のものを挙げることができる。セルロースア
シレート/酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール
/エタノール(X/(70−X)/20/5/5、質量
部)、セルロースアシレート/酢酸メチル/メチルエチ
ルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (X/
(50−X)/20/20/5/5、質量部)、セルロ
ースアシレート/アセトン/アセト酢酸メチル/エタノ
ール (X/(75−X)/20//5、質量部)、セ
ルロースアシレート/酢酸メチル/シクロペンタノン/
メタノール/エタノール(X/(80−X)/10/5
/5、質量部)、セルロースアシレート/酢酸メチル/
1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール (X/
(70−X)/20/5/5、質量部)、セルロースア
シレート/酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノ
ール/エタノール (X/(60−X)/20/10/
5/5、質量部)、セルロースアシレート/1,3ジオ
キソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メ
タノール/エタノール (X/(55−X)/20/1
0/5/5/5、質量部)が好ましい組み合わせであ
る。ここでXはセルロースアシレートの質量部を表わ
し、好ましくは10〜25であり特には15〜23であ
る。
【0029】セルロースアシレート溶液には、上記有機
溶媒以外に、メチレンクロライドを全有機溶媒量の10
質量%以下含有させることもフイルムの透明性を向上さ
せたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。
【0030】セルロースアシレート溶液を調製する際
に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを充満させても
よい。セルローストリアセテート溶液の製膜直前の粘度
は、製膜の際、流延可能な範囲であればよく、通常10
ps・s〜2000ps・sの範囲に調製されることが
好ましいく、特に30ps・s〜400ps・sが好ま
しい。
【0031】セルロースアシレート溶液には、各調製工
程において用途に応じた種々の添加剤を加えることがで
きる。またその添加する時期はドープ作製工程において
何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調
製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行っても
よい。
【0032】好ましく添加される可塑剤としては、リン
酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リ
ン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート
(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TC
P)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフ
ェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェー
ト、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェー
トが含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸
エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタ
ル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DM
P)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレ
ート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジ
フェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシル
フタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステル
の例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACT
E)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACT
B)、クエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸アセ
チルトリブチルが含まれる。
【0033】その他のカルボン酸エステルの例には、オ
レイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシ
ン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれ
る。グリコール酸エステルの例としては、トリアセチ
ン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレー
ト、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリ
ルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレ
ートなどがある。中でもトリフェニルホスフェート、ト
リクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェ
ート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、
ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチル
フタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチ
ン、エチルフタリルエチルグリコレートが好ましい。特
にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エ
チルフタリルエチルグリコレートが好ましい。これらの
可塑剤は1種でもよいし2種以上併用してもよい。可塑
剤の添加量はセルロースアシレートに対して5〜30質
量%以下、特に8〜16質量%以下が好ましい。これら
の化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、
セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、
溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0034】その他、フイルムの光学的異方性を小さく
する可塑剤として、特開平11−124445号記載の
(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−
246704号記載のグリセロールエステル類、特開2
000−63560号記載のジグリセロールエステル
類、特開平11−92574号記載のクエン酸エステル
類、特開平11−90946号記載の置換フェニルリン
酸エステル類などが好ましく用いられる。
【0035】セルロースアシレート溶液には、劣化防止
剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止
剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止
剤を添加してもよい。これらの劣化防止剤や紫外線防止
剤については、特開昭60−235852号、、特開平
3−199201号、同5−1907073号、同5−
194789号、同5−271471号、同6−107
854号、同6−118233号、同6−148430
号、同7−11056号、同7−11055号、、同7
−11056号、同8−29619号、同8−2395
09号、特開2000−204173号の各公報に記載
がある。劣化防止剤の添加量は、調製するセルロースア
シレート溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であるこ
とが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさ
らに好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることが
できる。なお、平均酢化度が55.0〜58.0%であ
るセルロースアシレートは、平均酢化度が58.0%以
上であるセルローストリアセテートと比較して、調製し
た溶液の安定性や製造したフイルムの物性が劣るとの欠
点がある。しかし、上記のような劣化防止剤、特にブチ
ル化ヒドロキシトルエン(BHT)のような酸化防止剤
を用いることで、この欠点を実質的に解消することが可
能である。
【0036】セルロースアシレート溶液は、更に好まし
くは一種または二種以上の紫外線吸収剤を含有する。液
晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長
370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表
示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が
少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン
系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エ
ステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアク
リレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げら
れる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾー
ル系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、
ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに
対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
【0037】好ましい紫外線防止剤として、2,6−ジ
−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリ
チル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチ
ル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリ
エチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチ
ル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,
5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチ
オ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−
ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−
チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−
ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−
4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−
ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−
4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−ト
リメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert
−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス
−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベ
ンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペン
タエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−te
rt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー
ト〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−te
rt−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート〕が最も好ましい。また例えば、N,
N′−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4
−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなど
のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−
tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系
加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量
は、セルロースアシレートに対して質量割合で1ppm
〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好
ましい。
【0038】セルロースアシレート溶液中に光学異方性
をコントロールするためのレターデーション上昇剤が、
場合により添加される。これらは、セルロースアシレー
トフイルムのレターデーションを調整するため、少なく
とも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデー
ション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化
合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、
0.01乃至20質量部の範囲で使用する。芳香族化合
物は、セルロースアセレート100質量部に対して、
0.05乃至15質量部の範囲で使用することが好まし
く、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがさら
に好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよ
い。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に
加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0039】芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、
ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテ
ロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ
環は、5員環、6員環または7員環であることが好まし
く、5員環または6員環であることがさらに好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。
ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原
子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテ
ロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、
オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、
イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フ
ラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピ
リダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,
5−トリアジン環が含まれる。
【0040】フイルムの光学特性に関して、フイルムの
面内のレターデーション(Re)の測定法はエリプソメ
ーター(偏光解析計AEP−100:島津製作所(株)
製)を用いて、波長632.8nmにおける面内の縦横
の屈折率差にフイルム膜厚さを乗じたものであり、下記
の式で求められる。 Re=(nx−ny)×d nx:横方向の屈折率、ny:縦方向の屈折率 小さいほど、面内方向の光学異方性がないことを示すが
0〜300nmの範囲で用途に応じて用いられる。又、
フイルムの厚さ方向のレターデーション(Rth)も重
要であり、波長632.8nmにおける厚さ方向の複屈
折にフイルム膜厚さを乗じたものであり、下記の式で求
められる。 Rth={(nx+ny)/2−nz}×d nx:横方向の屈折率、ny:縦方向の屈折率、nz:
厚さ方向の屈折率厚さ方向の屈折率が小さいほど、厚さ
方向の光学異方性がないことを示すが、その使用用途に
よって好ましい範囲は定まる。一般には、セルロースア
シレートフイルムのRthは100μm当たり、0nm
〜600nmであり、さらには0nm〜400nmで用
いられる。
【0041】感材用支持体としては、ライトパイピング
防止用の着色剤化合物を添加してもよい。着色剤の含有
量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜
1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に
好ましい。この様に着色剤を含有させることにより、セ
ルロースアシレートフイルムのライトパイピングが減少
でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物
は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロー
スアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製
中や調製後に添加してもよい。
【0042】セルロースアシレート溶液には、必要に応
じて更に種々の添加剤を溶液の調製前から調製後のいず
れの段階で添加してもよい。例えば微粒子を添加してフ
イルムの軋みを防止する目的で、シリカ、カオリン、タ
ルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウ
ム、酸化チタン、アルミナなどの無機微粒子、カルシウ
ム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱
安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤などである。
【0043】剥離時の荷重を小さくするために剥離促進
剤を添加することが好ましい。それらは、界面活性剤が
有効でありリン酸系、スルフォン酸系、カルボン酸系、
ノニオン系、カチオン系など特に限定されない。これら
は、例えば特開昭61−243837号などに記載され
ている。
【0044】セルロースアシレート溶液(ドープ)の溶
解は、特に限定されないが、好ましくは冷却溶解法又は
高温高圧溶解法に従い実施されるが。まず冷却溶解方法
について述べると、室温近辺の温度(−10〜40℃)
で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐
々に添加される。複数の溶媒を用いる場合は、その添加
順は特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロース
アシレートを添加した後に、他の溶媒(例えばアルコー
ルなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲ
ル化溶媒を予めセルロースアシレートに湿らせた後の主
溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。
セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜4
0質量%含まれるように調整することが好ましい。セル
ロースアシレートの量は、10〜30質量%であること
がさらに好ましい。さらに、混合物中には任意の添加剤
を添加しておいてもよい。
【0045】次に、混合物は−100〜−10℃(好ま
しくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−80〜−
30℃、最も好ましくは−80〜−50℃)に冷却され
る。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−
75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30
〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、
セルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、特に限定されないがバッチ式での冷却の場
合は、冷却に伴いセルロースアシレート溶液の粘度が上
がり、冷却効率が劣るために所定の冷却温度に達するた
めに効率よい溶解釜とすることが必要である。また、セ
ルロースアシレート溶液は膨潤させたあと、所定の冷却
温度にした冷却装置を短時間移送することで達成でき
る。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/
秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上
限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。
なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な
冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度
に達するまでの時間で割った値である。さらに、これを
0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好まし
くは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温
すると、有機溶媒中にセルロースアシレートが流動する
溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、
温浴中で加温してもよい。この時、圧力を0.3〜30
MPaになることが挙げられるが、特に問題ない。その場
合は、極力短時間で実施することが好ましく、0.5〜
60分以内が好ましく、特に0.5〜2分の短時間の加
熱が推奨される。
【0046】なお、溶解が不充分である場合は冷却、加
温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどう
かは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断する
ことができる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露
による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが
望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧
し、加温時に減圧すると溶解時間を短縮することができ
る。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を
用いることが望ましい。
【0047】セルロースアシレート溶液(ドープ)の調
製は、高温溶解法に従い実施されても好ましく、以下に
説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で有
機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に
添加される。次にセルロースアシレートの有機溶媒混合
液は、0.2Mp〜30Mpaの加圧下で70〜240℃に
加熱される(好ましくは80〜220℃、更に好ましく
100〜200℃、最も好ましくは100〜190
℃)。加熱は、例えば高圧蒸気でもよく電気熱源でもよ
い。高圧のためには耐圧容器あるいは耐圧ラインを必要
とするが、鉄やステンレス製あるいは他の金属耐圧容器
やラインのいずれでもよく、特に限定されない。次にこ
れらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用
された溶媒の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。
その場合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが
一般的である。冷却はセルロースアシレート溶液が内蔵
されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだ
けでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて
該装置を冷却してもよい。なお、溶解を早めるために加
熱と冷却の操作を繰り返してもよい。溶解が十分である
かどうかは、目視により溶液の概観を観察するだけで判
断することができる。高圧高温溶解方法においては、溶
媒の蒸発を避けるために密閉容器を用いる。また、膨潤
工程おいて、加圧や減圧にしたりすることで更に溶解時
間を短縮することが出来る。加圧及び減圧を実施するた
めには、耐圧性容器あるいはラインが必須である。
【0048】上記で得られたドープのセルロースアシレ
ート溶液の濃度は前述のごとく、高濃度のドープが得ら
れるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃
度でしかも安定性の優れたセルロースアシレート溶液が
得られる。しかし場合により、更に溶解し易くするため
に低い濃度で溶解してから、しかる後に濃縮手段を用い
て濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定する
ものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の
周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導く
とともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させ
ながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−25
9511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから
容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たる
までの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒
蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き
出す方法(例えば、米国特許2541012号、同28
58229号、同4414341号、同4504355
号の各明細書に記載の方法)で実施できる。
【0049】溶液は流延に先だって金網やネルなどの適
当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物
を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレー
ト溶液の濾過には絶対濾過精度が0.005mm以上
で、0.1mm以下のフィルタを用いられ、さらには絶
対濾過精度が0.005mm未満、0.0005mm以
上であるフィルタを用いることが好ましく用いられる。
その場合、16kg/cm2 以下(好ましくは12kg
/cm2 以下、更に好ましくは10kg/cm2以下、
特に好ましくは2kg/cm2 以下。)の濾過圧力で濾
過して製膜することが好ましい。このろ過によりクロス
ニコル状態で認識される大きさが50μmを越える異物
は面積250mm2 当たり実質上0個が達成でき、さら
には5〜50μmの異物が面積250mm2 当たり20
0個以下が達成でき、偏光板用保護膜の商品価値を著し
くあげることができる。ここで、得られるフイルムはク
ロスニコル状態で配置した二枚の偏光板の間に置かれ、
一方の偏光板の外側から光を当て、他方の偏光板の外側
から顕微鏡(透過光源で倍率30倍)で認識し、その時
の異物の数を10箇所にわたって測定し、この評価を5
回繰り返した時の異物の数と定義したものである。
【0050】セルロースアシレートフイルムを製造する
方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフイル
ム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置
が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セ
ルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドー
プに含まれている泡を脱泡したり最終調製をする。ドー
プをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に
定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダ
イに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)から
エンドレスに走行している流延部の支持体の上に均一に
流延され、支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのド
ープ膜(ウェブとも呼ぶ)を支持体から剥離する。得ら
れるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテ
ンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で
搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取
る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはそ
の目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子
ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法
においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防
止層、ハレーション防止層、保護層等の支持体への表面
加工のために、塗布装置が付加されることが多い。
【0051】まず、調製したセルロースアシレート溶液
(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロース
アシレートフイルムを作製される際に、ドープはドラム
またはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを
形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40%と
なるように濃度を調整される。ドラムまたはバンドの表
面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベ
ントキャスト法における流延および乾燥方法について
は、米国特許2336310号、同2367603号、
同2492078号、同2492977号、同2492
978号、同2607704号、同2739069号、
同2739070号、英国特許640731号、同73
6892号の各明細書、特公昭45−4554号、同4
9−5614号、特開昭60−176834号、同60
−203430号、同62−115035号の各公報に
記載がある。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム
またはバンド上に流延することが好ましく用いられる。
【0052】得られたセルロースアシレート溶液を、支
持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液と
して流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースア
シレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレ
ート溶液を流延する場合、支持体の進行方向に間隔を置
いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含
む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを
作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、
特開平1−122419号、特開平11−198285
号、などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延
口からセルロースアシレート溶液を流延することによっ
てもフイルム化することでもよく、例えば特公昭60−
27562号、特開昭61−94724号、特開昭61
−947245号、特開昭61−104813号、特開
昭61−158413号、特開平6−134933号、
に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162
617号に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流
れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、そ
の高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出
すセルロースアシレートフイルム流延方法でもよい。
【0053】或いはまた2個の流延口を用いて、第一の
流延口により支持体に成型したフイルムを剥ぎ取り、支
持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでよ
り、フイルムを作製することでもよく、例えば特公昭4
4−20235号に記載されている方法である。流延す
るセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、
異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定され
ない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせる
ために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液
を、それぞれの流延口から押出せばよい。セルロースア
シレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料
層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、
偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0054】従来の単層液では、必要なフイルム厚さに
するためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶
液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシ
レート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障
となったり、平面性が不良であったりして問題となるこ
とが多かった。この解決として、複数のセルロースアシ
レート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の
溶液を同時に支持体上に押出すことができ、平面性も良
化し優れた面状のフイルムが作製できるばかりでなく、
濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負
荷の低減化が達成でき、フイルムの生産スピードを高め
ることができた。
【0055】流延方法としては、調製されたドープを加
圧ダイから支持体上に均一に押し出す方法、一旦支持体
上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドク
ターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調
節するリバースロールコーターによる方法等があるが、
加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハ
ンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好まし
く用いることができる。また、ここで挙げた方法以外に
も従来知られているセルローストリアセテート溶液を流
延製膜する種々の方法(例えば特開昭61−94724
号、同61−148013号、特開平4−85011
号、同4−286611号、同5−185443号、同
5−185445号、同6−278149号、同8−2
07210号公報などに記載の方法)を好ましく用いる
ことが出来、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条
件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と
同様の効果が得られる。
【0056】セルロースアシレートフイルムを製造する
のに使用されるエンドレスに走行する支持体としては、
表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや
表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト
(バンドといってもよい)が用いられる。セルロースア
シレートフイルムの製造に用いられる加圧ダイは、支持
体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好まし
くは1基又は2基である。2基以上設置する場合には流
延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけて
もよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割
合でダイにドープを送液する。
【0057】セルロースアシレートフイルムの製造に係
わる支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には支持
体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり支持体上に
あるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いは
ベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロール
した液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側の裏
面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加
熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあ
るが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の支
持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以
下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するために
は、また支持体上での流動性を失わせるためには、使用
される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜1
0℃低い温度に設定することが好ましい。
【0058】セルロースアシレートフイルムの乾燥工程
における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180
℃が好ましい。さらに残留溶媒を除去するために、50
〜160℃で乾燥され、その場合逐次温度を変えた高温
風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましく用い
られている。以上の方法は、特公平5−17844号公
報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取り
までの時間を短縮することが可能である。使用する溶媒
によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使
用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。最終仕
上がりフイルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.
4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフイル
ムを得る上で好ましい。
【0059】支持体から剥離後の乾燥工程では、溶媒の
蒸発によってフイルムは巾方向に収縮しようとする。高
温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能
な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフイ
ルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、
例えば、特開昭62−46625号公報に示されている
ような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップ
でウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テン
ター方式)が好ましい。
【0060】セルロースアシレートフイルムを製造する
速度はベルトの長さ、乾燥方法、ドープ溶媒組成等によ
っても変化するが、ウェブをベルトから剥離する時点で
の残留溶媒の量によって殆ど決まってしまう。つまり、
ドープ膜の厚み方向でのベルト表面付近での溶媒濃度が
高すぎる場合には、剥離した時、ベルトにドープが残っ
てしまい、次の流延に支障を来すため、剥離残りは絶対
あってはならないし、更に剥離する力に耐えるだけのウ
ェブ強度が必要であるからである。剥離時点での残留溶
媒量は、ベルトやドラム上での乾燥方法によっても異な
り、ドープ表面から風を当てて乾燥する方法よりは、ベ
ルト或いはドラム裏面から伝熱する方法が効果的に残留
溶媒量を低減することが出来るのである。
【0061】更には、積極的に幅方向に延伸する方法も
あり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4
−152125号、同4−284211号、同4−29
8310号、同11−48271号に記載されている。
これは、セルロースアシレートフイルムの面内レターデ
ーション値を高い値とするためには、製造したフイルム
を延伸される。フイルムの延伸は、常温または加熱条件
下で実施する。加熱温度は、フイルムのガラス転移温度
以下であることが好ましい。フイルムの延伸は、一軸延
伸でもよく2軸延伸でもよい。フイルムは、乾燥中の処
理で延伸することができ、特に溶媒が残存する場合は有
効である。例えば、フイルムの搬送ローラーの速度を調
節して、フイルムの剥ぎ取り速度よりもフイルムの巻き
取り速度の方を速くするとフイルムは延伸される。フイ
ルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンター
の巾を徐々に広げることによってもフイルムを延伸でき
る。フイルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること
(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もでき
る。フイルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による
増加分の比率)は、10〜30%であることが好まし
い。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下
でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよ
い。セルロースアシレートフイルムの製造に係わる巻き
取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンシ
ョン法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力
一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き
取り方法で巻き取ることができる。
【0062】出来上がり(乾燥後)のセルロースアシレ
ートフイルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通
常5から500μmの範囲であり、更に40〜250μ
mの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が最
も好ましい。フイルム厚さの調製は、所望の厚さになる
ように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金の
スリット間隙、ダイからの押し出し圧力、支持体速度等
を調節すればよい。次に、前述した方法でセルロースア
シレート溶液を流延・乾燥してセルロースアシレートフ
イルムを得られるが、その際にセルロースアシレート溶
液が作製された製造装置を、セルロースアシレートフイ
ルム製造後に、特定の洗浄液を用いて常温で洗浄するこ
とを特徴とする。以下、この洗浄について詳細に記述す
る。セルロースアシレート溶液の製造工程とは、セルロ
ースアシレート溶液を作製する際の膨潤仕込み装置、常
温,冷却或いは高温高圧溶解装置、続いて流延される流
延ギーサー内部及びその流延口、これらの装置間を接続
する配管、更にはろ過装置、一時的にセルロースアシレ
ート溶液を貯蔵するストックタンク、濃縮装置、各種添
加物を添加・攪拌する攪拌・混合装置などを示す。セル
ロースアシレート溶液を用いてセルロースアシレートフ
イルムを作製した後、これらの製造装置は、次のセルロ
ースアシレート溶液を作製しセルロースアシレートフイ
ルムを作製するために、利用した製造装置を洗浄するこ
とが必須である。仮に、未洗浄のままセルロースアシレ
ート溶液を作製しセルロースアシレートフイルム作製を
試みても、製造装置に発生したゲル状物や固形分がろ過
器を目詰まりさせたり、流延時にスジを発生したり、乾
燥後のフイルムブツとして存在したりする大きな問題を
生じ、実質上セルロースアシレートフイルムは作製でき
ない。
【0063】従って、セルロースアシレート溶液が取り
扱われた製造装置に付着したセルロースアシレートゲル
または固形物を除去する洗浄液として、その洗浄液が酢
酸メチルと少なくとも一種の炭素数3〜12のケトン
類、及び/または少なくとも一種の水又は炭素数1〜6
のアルコール類からなる混合溶媒であることを特徴とす
るセルロースアシレートフイルムの製造装置用洗浄液で
解決したものである。炭素数3〜12のケトン類として
は、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、
メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メ
チルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペ
ンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン
などが挙げられ、その中でもアセトン、メチルエチルケ
トン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイ
ソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン
が好ましい。またアルコール類としては、メタノール、
エタノール、プロパノール、イソプロパノ−ル、ブタノ
ール、イソブタノール、シクロヘキサノールを挙げるこ
とが出来、特に好ましくはメタノール、エタノール、プ
ロパノール、イソプロパノ−ルである。洗浄液が水を含
む場合、水の含有量は2〜8質量%であることが好まし
く、3〜7質量%であることがさらに好ましい。
【0064】これらの洗浄液は、その組み合わせにおい
て特に限定されないが、好ましくは以下の混合物であ
る。酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール(80
/10/10、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタ
ノール(60/30/10、質量部)、酢酸メチル/ジ
エチルケトン/エタノール (85/10/5、質量
部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール(8
0/20/10、質量部)、酢酸メチル/1、3ジオキ
ソラン/プロパノール(85/10/5、質量部)、酢
酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール (60
/20/10/10、質量部)、酢酸メチル/アセトン
/メチルエチルケトン/メタノール (50/30/1
0/10、質量部)が好ましい組み合わせである。これ
らの中でも特に酢酸メチル/アセトン/メタノール(6
0/30/10、質量部)、酢酸メチル/シクロヘキサ
ノン/メタノール(80/10/10、質量部)、酢酸
メチル/アセトン/メチルエチルケトン/メタノール
(50/30/10/10、質量部)が好ましい。これ
らの洗浄液を用いることによって作製されるセルロース
アシレートフイルムは、異物のない面状のよいフイルム
を得ることが出来る。
【0065】セルロースアシレートフイルムの表面処理
を行うことによって、セルロースアシレートフイルムと
各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の
向上を達成することができる。グロー放電処理、紫外線
照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処
理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理と
は、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる、いわゆ
る低温プラズマのことである。
【0066】グロー放電処理は、米国特許346233
5号、同3761299号、同4072769号および
英国特許891469号明細書に記載されている。また
不活性ガス、酸化窒素類、有機化合物ガス等の特定のガ
ス等を導入することも行われる。ポリマーの表面をグロ
ー放電処理する際には大気圧でもよいし減圧下で実施さ
れてもよい。放電雰囲気ガス組成を放電開始後にポリエ
ステル支持体自身が放電処理を受けることにより容器内
に発生する気体種のみにした特開昭59−556430
号も用いられる。また真空グロー放電処理する際に、セ
ルロースアシレートフイルムの表面温度を80℃以上1
80℃以下にして放電処理を行う特公昭60−1661
4号も応用できる。グロー放電処理の雰囲気に酸素、窒
素、ヘリウムあるいはアルゴンのような種々のガスや水
を導入しながら実施してもよい。グロー放電処理時の真
空度は0.005〜20Torrが好ましく、より好ましく
は0.02〜2Torrである。また、電圧は500〜50
00Vの間が好ましく、より好ましくは500〜300
0Vである。使用する放電周波数は、直流から数千MH
z、より好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ま
しくは1KHz〜1MHzである。放電処理強度は、
0.01KV・A・分/m2 〜5KV・A・分/m2
好ましく、より好ましくは0.15KV・A・分/m2
〜1KV・A・分/m2 である。
【0067】次に紫外線照射法も好ましく用いられる。
特公昭43−2603号、同43−2604号および同
45−3828号の各公報記載の紫外線照射方法によっ
て行われるのが好ましい。水銀灯は石英管からなる高圧
水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であ
るものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源
はセルロースアシレートフイルムの表面温度が150℃
前後にまで上昇することが支持体性能上問題なければ、
主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用すること
ができる。低温処理が必要とされる場合には主波長が2
54nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイ
プの高圧水銀ランプ、及び低圧水銀ランプを使用する事
も可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほど
セルロースアシレートフイルムと被接着層との接着力は
向上するが、光量の増加に伴い支持体が着色し、また支
持体が脆くなるという問題が発生する。従って、365
nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜
10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは5
0〜2000(mJ/cm2 )である。254nmを主
波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100
〜10000(mJ/cm2 )がよく、より好ましくは
300〜1500(mJ/cm2 )である。
【0068】さらにセルロースアシレートフイルムの表
面処理としてコロナ放電処理も好ましく用いられ、特公
昭39−12838号、特開昭47−19824号、特
開昭48−28067号、特開昭52−42114号記
載等の処理方法によって行うことができる。コロナ放電
処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ
処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型
処理機等を用いることができる。処理は空気中で常圧で
行うことができる。処理時の放電周波数は、5〜40K
V、より好ましくは10〜30KVであり、波形は交流
正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップクリ
アランスは0.1〜10mm、より好ましくは1.0〜
2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電
サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.3〜
0.4KV・A・分/m2 、より好ましくは0.34〜
0.38KV・A・分/m2 である。
【0069】火炎処理に用いるガスは天然ガス、液化プ
ロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気
との混合比が重要である。なぜなら、火炎処理による表
面処理の効果は活性な酸素を含むプラズマによってもた
らされると考えられるからであり、火炎の重要な性質で
あるプラズマの活性(温度)と酸素がどれだけ多くある
かがポイントである。このふたつを決めているのはガス
/酸素比であり、過不足なく反応する場合がエネルギー
密度が最も高くなりプラズマの活性が高くなる。具体的
には、天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/
6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。ま
た、液化プロパンガス/空気の場合は1/14〜1/2
2、好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の
場合は1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7であ
る。 また、火炎処理量は1〜50Kcal/m2 、よ
り好ましくは3〜20Kcal/m2 の範囲で行うとよ
い。またバーナーの内炎の先端と支持体の距離は3〜7
cm、より好ましくは4〜6cmにするとよい。バーナ
ーのノズル形状は、フリンバーナー社(米国)のリボン
式、ワイズ社(米国)の多穴式、エアロジェン(英国)
のリボン式、春日電機(日本)の千鳥型多穴式、小池酸
素(日本)の千鳥型多穴式が好ましい。火炎処理に支持
体を支えるバックアップロールは中空型ロールであり、
冷却水を通して水冷し、常に20〜50℃の一定温度で
処理するのがよい。
【0070】セルロースアシレートフイルムの表面処理
として、アルカリ鹸化処理も好ましく用いられる。セル
ロースアシレートフイルム表面をアルカリ溶液に浸漬し
た後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで
行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸
化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水
酸化イオンの規定濃度は0.1N〜3.0Nであること
が好ましく、0.5N〜2.0Nであることがさらに好
ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲が
好ましく、40℃乃至70℃がさらに好ましい。次に一
般には水洗され、しかる後に酸性水溶液を通過させた後
に、水洗して表面処理したセルロースアシレートフイル
ムを得る。この時、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、酢
酸、蟻酸、クロロ酢酸、シュウ酸などであり、その濃度
は0.01N〜3.0Nであることが好ましく、0.0
5N〜2.0Nであることがさらに好ましい。セルロー
スアシレートフイルムが偏光板の透明保護膜として使用
する場合、偏光膜との接着性の観点から、酸処理または
アルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対する
ケン化処理を実施することが特に好ましい。
【0071】セルロースアシレートフイルムの表面処理
として酸処理も用いられる。酸としては塩酸、硝酸、硫
酸、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、シュウ酸などであり、そ
の濃度は0.01N〜8Nであることが好ましく、0.
05N〜3.0Nであることがさらに好ましい。場合に
より、アルカリで中和処理することが好ましく、たとえ
ば水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム、アンモニア
溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.01N
〜1.0Nであることが好ましく、0.02N〜0.5
Nであることがさらに好ましい。これらの方法で得られ
た固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リ
アライズ社 1989.12.10発行)に記載のよう
に接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めること
ができ、接触角法を用いることが好ましい。水の接触角
は、50度以下が好ましく、更には40度以下が好まし
く、特には30度以下が好ましい。
【0072】支持体と乳剤層との接着を達成するため
に、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレ
ートフイルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法
と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処
理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗
布する方法とがある。下塗層の構成としても種々の工夫
が行われており、第1層として支持体によく隣接する層
(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層と
して機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂
重層法がある。
【0073】単層法においては、セルロースアシレート
フイルムを膨張させ、下塗層素材と界面混合させること
によって良好な接着性を達成している場合が多い。使用
する下塗ポリマーとしては、水溶性ポリマー、セルロー
スエステル、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステル
などが例示される。水溶性ポリマーとしては、ゼラチ
ン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ソー
ダ、でんぷん、ポリビニールアルコール、ポリアクリル
酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セル
ロースエステルとしてはカルボキシメチルセルロース、
ヒドロキシエチルセルロースなどである。ラテックスポ
リマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデ
ン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢
酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などで
ある。重層法における下塗第1層では、例えば塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アク
リル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ば
れた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポ
リエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチ
ン、ニトロセルロース、等のオリゴマーもしくはポリマ
ーなどがある。(これらについては E.H.Immergut“Po
lymer Handbook"IV187−231、Intersciense Pub.
New York 1966などに詳しい)
【0074】またフイルムの好ましい態様では、偏光子
と接着するための親水性バインダー層が設けられる。例
えば、−COOM基含有の酢酸ビニル−マレイン酸共重
合体化合物、又は親水性セルロース誘導体(例えばメチ
ルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキ
シアルキルセルロース等)、ポリビニルアルコール誘導
体(例えば酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、ポ
リビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニ
ルベンザール等)天然高分子化合物(例えばゼラチン、
カゼインアラビアゴム等)、親水基含有ポリエステル誘
導体(例えばスルホン基含有ポリエステル共重合体)が
挙げられる。
【0075】下塗り層には、機能層の透明性などを実質
的に損なわない程度に無機または、有機の微粒子をマッ
ト剤として含有させることができる。無機の微粒子のマ
ット剤としてはシリカ(SiO2 ),二酸化チタン(T
iO2 ),炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使
用することができる。有機の微粒子マット剤としては、
ポリメチルメタクリレ−ト、セルロ−スアセテ−トプロ
ピオネ−ト、ポリスチレン、米国特許4142894号
明細書に記載されている処理液可溶性のもの、米国特許
4396706号明細書に記載されているポリマーを用
いることができる。これらの微粒子マット剤の平均粒径
は0.01〜10μmのものが好ましい。より好ましく
は、0.05〜5μmである。また、その含有量は0.
5〜600mg/m2 が好ましく、更に好ましくは、1
〜400mg/m2 である。下塗液は、一般に良く知ら
れた塗布方法、例えばディップコ−ト法、エア−ナイフ
コ−ト法、カ−テンコ−ト法、ロ−ラ−コ−ト法、ワイ
ヤ−バ−コ−ト法、グラビアコ−ト法、スライドコート
法、あるいは、米国特許2681294号明細書に記載
のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコ−ト法によ
り塗布することができる。
【0076】偏光板用保護膜の構成においては、トリア
シルセルロースフイルムの少なくとも一層に帯電防止層
を設けたり、偏光子と接着するための親水性バインダー
層が設けられることが好ましい。導電性素材としては、
導電性金属酸化物や導電性ポリマーが好ましい。なお、
蒸着やスパッタリングによる透明導電性膜でもよい。金
属酸化物の例としては、 ZnO、TiO2 、Sn
2 、Al2 3 、In 2 3 、SiO2 、MgO、B
aO、MoO2 、V2 5 、或いはこれらの複合酸化物
が好ましく、特にZnO、SnO2 あるいはV2 5
好ましい。複合酸化物の異種原子例としては、Al、I
n、Ta、Sb、Nb、ハロゲン原子、Agの添加が効
果的であり、添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ま
しい。また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の
体積抵抗率は107 Ω- cm以下、特に105 Ω- cm
以下であって、1次粒子径が100Å以上0.2μm以
下で、これらの凝集体の高次構造の長径が300Å以上
6μm以下である特定の構造を有する粉体を導電層に体
積分率で0.01%以上20%以下含んでいることが好
ましい。この導電性微粒子の使用量は0.01〜5.0
g/m2 が好ましく、特に0.005〜1g/m2 が好
ましい。
【0077】導電性を得るために、導電性微粒子をバイ
ンダーに分散させて支持体層に設けてもよいし、支持体
に下引処理を施し、その上に導電性微粒子を被着させて
もよい。又、金属酸化物の効果を阻害しない範囲で、金
属酸化物からなる層中に耐熱剤、耐候剤、無機粒子、水
溶性樹脂、エマルジョン等をマット化、膜質改良のため
に添加しても良い。導電性微粒子の分散用バインダー
は、フイルム形成能を有する物であれば特に限定される
ものではないが、例えばゼラチン、カゼイン等のタンパ
ク質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチル
セルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロー
ス、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デ
キストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、デンプン誘導体
等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポ
リアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポ
リスチレン、ポリアクリルアミド、、ポリ−N−ビニル
ピロリドン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアク
リル酸等の合成ポリマー等を挙げる事ができる。
【0078】好ましく用いられるイオン導電性物質と
は、電気伝導性を示し、電気を選ぶ担体であるイオンを
含有する物質のことである。この例としては、イオン性
高分子化合物と電解質を含む金属酸化物ゾルを挙げるこ
とができる。イオン性高分子化合物としては、特公昭4
9−23828号、同49−23827号、同47−2
8937号にみられるようなアニオン性高分子化合物;
特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特
公昭59−14735号、同57−18175号、同5
7−18176号、同57−56059号などにみられ
るような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマ
ー;特公昭53−13223号、同57−15376
号、特公昭53−45231号、同55−145783
号、同55−65950号、同55−67746号、同
57−11342号、同57−19735号、特公昭5
8−56858号開61−27853、開62−934
6にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつ
カチオン性ペンダント型ポリマー;等を挙げることがで
きる。前記イオン性高分子化合物は、これを単独で用い
てもよいし、あるいは数種類のイオン導電性物質を組み
合わせて使用してもよい。そしてこのようなイオン性高
分子化合物は0.005g〜2.0g/m2 の範囲で用い
られているのが好ましく、特に0.01g〜1.0g/m
2 の範囲で用いられるのが好ましい。これらの導電性層
の電気抵抗は10の12乗Ω(25℃、10%RH)以下
が好ましく、より好ましくは10の10乗Ω以下、特に
好ましくは10の9乗Ω以下である。
【0079】さらに導電性材料として、有機電子伝導性
材料も好ましく、例えばポリアニリン誘導体、ポリチオ
フェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアセチレン誘
導体などを挙げることができる。これらの中でも特に好
ましいのは、ポリピロールでありポリスチレンスルフォ
ン酸との塩が好ましい。また、少なくとも1種以の金ま
たは銀コロイドを含有することも好ましい。さらに耐候
性の観点から銀とパラジウムの合金が好ましいく、パラ
ジウムの含有量としては5〜30wt%が好ましい。銀
コロイド粒子の作成方法としては、通常の低真空蒸発法
による微粒子の作製方法や金属塩の水溶液を還元する金
属コロイド作製方法が挙げられる。これらの金属粒子の
平均粒径は1〜200nmが好ましい。導電層は実質的
に金属微粒子のみからなることが好ましく、バインダー
等の非導電性のものを含有しないことが導電性の観点か
ら好ましい。
【0080】銀コロイド粒子からなる導電層の形成は、
金属粒子を水溶液あるいは有機溶剤等に分散した塗布液
を、基材上に塗布することにより作製出来る。銀コロイ
ド粒子は水溶液が好ましいが、水と混合しうる水溶性溶
剤としてはエチルアルコール、n−プロピルアルコー
ル、i−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、
2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、メチル
セルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコールが好まし
い。これらの金属の塗布量としては、50〜150mg
/m2 が好ましく、塗布量が少ないと優れた導電性を得
ることができず、塗布量を増加させても導電性向上の効
果は小さくなる。導電層自体の抵抗は印加電圧90Vの
条件下で、10KΩ以下であることが好ましく、より好
ましくは5KΩ以下であり、特に良好な電磁波シールド
効果を得るためには1KΩ以下が好ましい。
【0081】界面活性剤が好ましく用いられる。界面活
性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ
剤、帯電防止剤などに分類されるが、以下に述べる界面
活性剤を適宜使用することでそれらの目的は達成でき
る。使用される界面活性剤は、ノニオン性、イオン性
(アニオン、カチオン、ベタイン)いずれも使用でき
る。さらにフッ素系界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤
としたり、帯電防止剤として好ましく用いられる。使用
される層としてはセルロースアシレート溶液中でもよい
し、その他の機能層のいずれでもよい。光学用途で利用
される場合は、機能層の例としては下塗り層、中間層、
配向制御層、屈折率制御層、保護層、防汚層、粘着層、
バック下塗り層、バック層などである。その使用量は目
的を達成するために必要な量であれば特に限定されない
がしいが、一般には添加する層の質量に対して、0.0
001〜5質量%が好ましく、更には0.0005〜2
質量%が好ましい。その場合の塗設量は、1m2 当り
0.02〜1000mgが好ましく、0.05〜200
mgが好ましい。
【0082】好ましいノニオン系界面活性剤としては、
ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキ
シブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性
親水性基とする界面活性剤であり、具体的には、ポリオ
キシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンア
ルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリ
オキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部
分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸
部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポ
リグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミ
ド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げる
ことができる。
【0083】アニオン系界面活性剤としてはカルボン酸
塩、硫酸塩、スルフォン酸塩、リン酸エステル塩であ
り、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼン
スルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、
アルキルスルフォン酸塩、α―オレフィンスルフォン酸
塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩、α―スルフォン化
脂肪酸塩、N−メチルーNオレイルタウリン、石油スル
フォン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシ
エチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン
アルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレ
ンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン
酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、
ナフタレンスルフォン酸塩ホルムアルデヒド縮合物など
である。
【0084】カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、
4級アンモニウム塩、ピリジュム塩などを挙げることが
でき、第一〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩
(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジ
ルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイ
ミダゾリウム塩など)を挙げることが出来る。両性系界
面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルフォベタイ
ンなどであり、N−トリアルキル−N−カルボキシメチ
ルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スル
フォアルキレンアンモニウムベタインなどである。
【0085】これらの界面活性剤は、界面活性剤の応用
(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に記
載されている。好ましい界面活性剤はその使用量におい
て特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる
量であればよい。以下に界面活性剤の具体例を記すが、
これらに限定されるものではない(ここで、−C6 4
−はフェニレン基を表わす)。
【0086】 WA−1: C1225(OCH2 CH2 10OH WA−2: C9 19−C6 4 −(OCH2 CH2
12OH WA−3: ポリ(重合度20)オキシエチレンソルビ
タンモノラウリン酸エステル WA−4: ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダ WA−5: トリ(イソプロピル)ナフタレンスルフォ
ン酸ソーダ WA−6: ドデシル硫酸ソーダ WA−7: α−スルファコハク酸ジ(2−エチルヘキ
シル)エステルナトリウム塩 WA−8: セチルトリメチルアンモニウム クロライ
ド WA−9: C11H23CONHCH2CH2N(+)
(CH3)2‐CH2COO(−)
【0087】WA−10:C8 17SO2 N(C
3 7 )(CH2 CH2 O)16H WA−11:C8 17SO2 N(C3 7 )CH2 CO
OK WA−12:C7 15COONH4 WA−13:C8 17SO3 K WA−14:C8 17SO2 N(C3 7 )(CH2
2 O)4 (CH2 4SO3 Na WA−15:C8 17SO2 N(C3 7 )−(C
2 3 −N(+)(CH33 ・ I(−) WA−16:C8 17SO2 N(C3 7 )−(C
2 3 −N(+)(CH32 −CH2 COO(−) WA−17:C8 17CH2 CH2 O(CH2 CH
2 O)16H WA−18:C8 17CH2 CH2 O(CH2 2 −N
(+)(CH3 3 ・I(−) WA−19:H(CF2 8 CH2 CH2 OCOCH2
CH(SO3 )COOC H2 CH2 CH2 CH2 (CF)8 H WA−20:H(CF2 6 CH2 CH2 O(CH2
2 O)16H WA−21:H(CF2 8 CH2 CH2 O(CH2
3 −N(+)(CH3 3 ・ I(−) WA−22:H(CF2 8 CH2 CH2 OCOCH2
CH(SO3 )COOCH2 CH2 CH2 CH2 8
17 WA−23:C9 17‐C6 4 SO2 N(C3 7
(CH2 CH2 O)16H WA−24:C9 17‐C6 4 CSO2 N(C
3 7 )−(CH2 3 −N(+)(CH3 3 ・ I
(−)
【0088】また、セルロースアシレートフイルムの上
のいずれかの層に滑り剤を含有させることが好ましい
が、特に最外層が好ましい。用いられる滑り剤として
は、例えば、特公昭53−292号公報に開示されてい
るようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4、27
5、146号明細書に開示されているような高級脂肪酸
アミド、特公昭58−33541号公報、英国特許第9
27、446号明細書或いは特開昭55−126238
号及び同58−90633号公報に開示されているよう
な高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭
素数10〜24のアルコールのエステル)、そして、米
国特許第3、933、516号明細書に開示されている
ような高級脂肪酸金属塩、また、特開昭58−5053
4に開示されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級
アルコールのエステル、世界公開90108115.8
に開示されているような分岐アルキル基を含む高級脂肪
酸−高級アルコールエステル等が知られている。
【0089】このうちポリオルガノシロキサンとして
は、一般的に知られている、ポリジメチルシロキサンポ
リジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポ
リジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサ
ン等のポリアリールシロキサンのほかに、特公昭53−
292号、特公昭55−49294号、特開昭60−1
40341号の各公報に記載のC5以上のアルキル基を
持つオルガノポリシロキサン、側鎖にポリオキシアルキ
レン基を有するアルキルポリシロキサン、側鎖にアルコ
キシ、ヒドロキシ、水素、カルボキシル、アミノ、メル
カプト基を有するようなオルガノポリシロキサン等の変
性ポリシロキサンを用いることもできるし、シロキサン
ユニットを有するブロックコポリマーや、特開昭60−
191240に示されるようなシロキサンユニットを側
鎖に持つグラフトコポリマーを用いることもできる。
【0090】このような化合物の具体例を次に示す。 (S−1) (CH3 )3 SiO−(Si(CH3 )2O)a−Si(CH3 )3 a=5 〜1000 (S−2) (C6 5 )3 SiO−(Si(CH3 )2 O)a−Si(CH3 )3 a=5 〜1000 (S−3) (CH3 )3 SiO−(Si(C5 11) (CH3 )−O)a−Si(C H3 )3 a=10 (S−4) (CH3 )3 SiO−(Si(C1225)(CH3 )−O)10−(Si(C H3 )2 O)18−Si(CH3 )3 (S−5) (CH3 )3 SiO−(Si(CH3 )2 O)x −(Si(CH3 )((C H2)3 −O(CH2 CH2 O)10H)−O)y−(Si(CH3 )2 O)z−Si(CH 3 )3 x+y+z=30 (S−6) (CH3 )3 SiO−(Si(CH3 )2 O)x−(Si(CH3 ){(C H2 )3 −O(CH2 CH(CH3 )−O)10(CH2 CH2 O)103 7 } O)y −(Si(CH3 )2 O)z−Si(CH3 )3 x+y+z=35
【0091】また、高級脂肪酸及びその誘導体、高級ア
ルコール及びその誘導体としては、高級脂肪酸、高級脂
肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミ
ド、高級脂肪酸の多価アルコールエステル等、また、高
級脂肪族アルコール、高級脂肪族アルコールのモノアル
キルフォスファイト、ジアルキルフォスファイト、トリ
アルキルフォスファイト、モノアルキルフォスフェー
ト、ジアルキルフォスフェート、トリアルキルフォスフ
ェート、高級脂肪族のアルキルスルフォン酸、そのアミ
ド化合物またはその塩等を用いることができる。このよ
うな化合物の具体例を次に示す。
【0092】 (S−7) n−C1531COOC3061−n (S−8) n−C1735COOC3061−n (S−9) n−C1531COOC50101 −n (S−10)n−C2143COO−(CH2 )7 CH(CH
3 )−C9 19 (S−11)n−C2143COOC2449−iso (S−12)n−C1837OCO(CH2 4 COOC40
81−n (S−13)n−C50101 O(CH2 CH2 O)15H (S−14)n−C4081OCOCH2 CH2 COO(C
2 CH2 O)16
【0093】このような滑り剤を用いることにより、引
っかき強度にすぐれ、下塗面でのはじき等が起こらない
優れたフイルムが得られる。用いる滑り剤の使用量は特
に限定されないが、その含有量は0.0005から2g
/m2 が好ましく、より好ましくは0.001〜1g/
2 、特に好ましくは0.002〜0.5g/m2 であ
る。滑り剤の添加層としては、特にこれに限定されるも
のではないが、バック面の最外層に含有させることが好
ましい。上記の滑り剤を含む表面層は、これを適当な有
機溶剤に溶解した塗布液を、支持体、またはバック層に
その他の層を付与した支持体上に塗布し、乾燥すること
により形成できる。また、滑り剤は、塗布液中に分散物
の形で添加することもできる。使用される溶剤として
は、水、アルコール類(例、メタノール、エタノール、
イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトン、メチル
エチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル類(例、
酢酸、蟻酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸などのメ
チル、エチル、プロピル、ブチルエステル)、芳香族炭
化水素系(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミ
ド系(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド、n−メチルピロリドン)が好ましい。
【0094】上記滑り剤の塗設にあたっては,皮膜形成
能のあるバインダーと共に用いることもできる。このよ
うなポリマーとしては,公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性
樹脂、放射線硬化性樹脂、反応性樹脂、およびこれらの
混合物、ゼラチンなどの親水性バインダーを使用するこ
とができる。滑り性能は静摩擦係数0.25以下が好ま
しく、試料を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿
した後、HEIDON−10静摩擦係数測定機により、
5mmφのステンレス鋼球を用いて測定した値であり、
数値が小さい程滑り性は良い。静摩擦係数を小さくする
ことによって、その5mm直径の鋼球に対する動摩擦係
数は、好ましいのは0.25以下であり、より好ましく
は0.20以下更に好ましくは0.16以下であり特に
好ましくは0.12以下である。
【0095】セルロースアシレートフイルムの易滑性や
高湿度下での耐接着性の改良のためにマット剤を使用す
ることが好ましい。セルロースアシレートフイルムは、
そ表面の突起物の平均高さが0.005〜10μmであ
り、好ましくは0.01〜5μmである。又、その突起
物は表面に多数ある程良いが、必要以上に多いとへイズ
となり問題である。好ましい突起物は、突起物の平均高
さを有する範囲であれば、例えば球形、不定形マット剤
で突起物を形成する場合はその含有量が0.5〜600
mg/m2であり、より好ましいのは1〜400mg/
2である。この時、使用されるマット剤としてはその
組成において特に限定されず、無機物でも有機物でもよ
く2種類以上の混合物でもよい。
【0096】マット剤の無機化合物、有機化合物は、例
えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタ
ン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、など
の無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ
酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素や
チタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ル
チル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の
比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕し
た後、分級(振動ろ過、風力分級など)することによっ
ても得られる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、
セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタ
クリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルア
クリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等の有機
高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸
濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あ
るいは分散法等により球型にした高分子化合物、または
無機化合物を用いることができる。
【0097】[一般的な液晶表示装置の構成]セルロー
スアシレート溶液からなるセルロースアシレートフイル
ムは、様々な用途で用いることができる。セルロースア
シレートフイルムは、液晶表示装置の光学補償シートと
して用いると特に効果がある。セルロースアシレートフ
イルムには、フイルムそのものを光学補償シートとして
用いることができる。なお、フイルムそのものを光学補
償シートとして用いる場合は、偏光素子(後述)の透過
軸と、セルロースアシレートフイルムからなる光学補償
シートの遅相軸とを実質的に平行または垂直になるよう
に配置することが好ましい。このような偏光素子と光学
補償シートとの配置については、特開平10−4842
0号公報に記載がある。液晶表示装置は、二枚の電極基
板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置
された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子
との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構
成を有している。
【0098】液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板
の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封
入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明
な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガ
スバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の
接着に用いる)アンダーコート層を設けてもよい。これ
らの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板
は、一般に80〜500μmの厚さを有する。
【0099】光学補償シートは、液晶画面の着色を取り
除くための複屈折率フイルムである。セルロースアシレ
ートフイルムそのものを、光学補償シートとして用いる
ことができる。さらに反射防止層、防眩性層、λ/4層
や2軸延伸セルロースアシレートフイルムとして機能を
付与してもよい。また、液晶表示装置の視野角を改良す
るため、セルロースアシレートフイルムと、それとは
(正/負の関係が)逆の複屈折を示すフイルムを重ねて
光学補償シートとして用いてもよい。光学補償シートの
厚さの範囲は、前述したフイルムの好ましい厚さと同じ
である。
【0100】偏光素子の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、
二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜が
ある。いずれの偏光膜も、一般にポリビニルアルコール
系フイルムを用いて製造する。偏光板の保護膜は、25
〜350μmの厚さを有することが好ましく、50〜2
00μmの厚さを有することがさらに好ましい。液晶表
示装置には、表面処理膜を設けてもよい。表面処理膜の
機能には、ハードコート、防曇処理、防眩処理および反
射防止処理が含まれる。
【0101】前述したように、支持体の上に液晶(特に
ディスコティック液晶性分子)を含む光学的異方性層を
設けた光学補償シートも提案されている(特開平3−9
325号、同6−148429号、同8−50206
号、同9−26572号の各公報記載)。セルロースア
シレートフイルムは、そのような光学補償シートの支持
体としても用いることができる。
【0102】[ディスコティック液晶性分子を含む光学
的異方性層]光学的異方性層は、負の一軸性を有し傾斜
配向したディスコティック液晶性分子を含む層であるこ
とが好ましい。ディスコティック液晶性分子の円盤面と
支持体面とのなす角は、光学的異方性層の深さ方向にお
いて変化している(ハイブリッド配向している)ことが
好ましい。ディスコティック液晶性分子の光軸は、円盤
面の法線方向に存在する。ディスコティック液晶性分子
は、光軸方向の屈折率よりも円盤面方向の屈折率が大き
な複屈折性を有する。ディスコティック液晶性分子は、
支持体表面に対して実質的に水平に配向させてもよい。
【0103】[VA型液晶表示装置]セルロースアシレ
ートフイルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型
液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利
に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シ
ートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向
が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないこ
とが好ましい。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シ
ートの光学的性質は、光学的異方性層の光学的性質、支
持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配
置により決定される。VA型液晶表示装置に光学補償シ
ートを二枚使用する場合は、光学補償シートの面内レタ
ーデーションを、−5nm〜5nmの範囲内にすること
が好ましい。従って、二枚の光学補償シートのそれぞれ
の面内レターデーションの絶対値は、0〜5とすること
が好ましい。VA型液晶表示装置に光学補償シートを一
枚使用する場合は、光学補償シートの面内レターデーシ
ョンを、−10nm〜10nmの範囲内にすることが好
ましい。
【0104】[OCB型液晶表示装置およびHAN型液
晶表示装置]セルロースアシレートフイルムは、OCB
モードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるい
はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装
置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられ
る。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装
置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶
対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線
方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示
装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シ
ートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支
持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配
置により決定される。
【0105】[その他の液晶表示装置]セルロースアシ
レートフイルムは、ASM(Axially Symmetric Aligne
d Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶
表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用い
られる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置
調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特
徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同
様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示
装置については、クメ(Kume)外の論文(Kume et al.,
SID 98 Digest1089 (1998))に記載があ
る。セルロースアシレートフイルムを、TNモードの液
晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの
支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとT
N型液晶表示装置については、古くから良く知られてい
る。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについ
ては、特開平3−9325号、同6−148429号、
同8−50206号、同9−26572号の各公報に記
載がある。
【0106】
【実施例】各実施例において、セルロースアシレート、
溶液およびフイルムの化学的性質および物理的性質は、
以下のように測定および算出した。
【0107】(1)セルローストリアセテートの酢化度
(%) 酸化度はケン化法により測定した。乾燥したセルロース
トリアセテートを精秤し、アセトンとジメチルスルホキ
シドとの混合溶媒(容量比4:1)に溶解した後、所定
量の1N−水酸化ナトリウム水溶液を添加し、25℃で
2時間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬とし
て添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の
水酸化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法
により、ブランクテストを行った。そして、下記式に従
って酢化度(%)を算出した。 酢化度(%)=(6.005×(B−A)×F)/W 式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸量(ml)、
Bはブランクテストに要した1N−硫酸量(ml)、F
は1N−硫酸のファクター、Wは試料質量を示す。
【0108】(2)セルローストリアセテートの平均分
子量および分子量分布 ゲル濾過カラムに、屈折率、光散乱を検出する検出器を
接続した高速液体クロマトグラフィーシステム(GPC
−LALLS)を用い測定した。測定条件は以下の通り
である。 溶媒: メチレンクロリド カラム: GMH×1(東ソー(株)製) 試料濃度: 0.1W/v% 流量: 1ml/min 試料注入量:300μl 標準試料: ポリメタクリル酸メチル(Mw=188,
200) 温度: 23℃
【0109】(3)セルローストリアセテートの粘度平
均重合度(DP) 絶乾したセルローストリアセテート約0.2gを精秤
し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)
の混合溶媒100mlに溶解した。これをオストワルド
粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の
式により求めた。 ηrel =T/T0 T: 測定試料の落下秒数 [η]=(1nηrel )/C T0:溶剤単独の落下秒数 DP=[η]/Km C: 濃度(g/l) Km:6×10-4
【0110】(4)フイルムのスジ(スジと略称) 得られたフイルムを目視で観察し、そのスジ状の欠陥を
以下の如く評価した。 A:フイルムにスジは認められない。 B:フイルムにスジがわずかに認められた。 C:フイルムにスジがかなり認められた。 D:フイルムにスジが多量認められた。
【0111】(5)フイルムのブツ(ブツと略称) 得られたフイルムを目視で観察し、そのブツを以下の如
く評価した。 A:フイルム表面にブツは認められなかった。 B:フイルム表面にブツがわずかに認められた。 C:フイルム表面にかなりのブツが認められた。 D:フイルム表面に凹凸が見られ、ブツが多数認められ
た。
【0112】(6)フイルムの耐折試験 120mnに切りだした試料をISO8776/2−1
988の規格に従い、折り曲げよって切断するまでの往
復回数を求めた。
【0113】(7)フイルムのヘイズ ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を
用いて測定した。
【0114】[実施例1] (1−1)セルローストリアセテート溶液の作製 下記の処方にてセルローストリアセテート溶液を作製し
た。攪拌羽根を有する20Lのステンレス性溶解容タン
ク(予めメチレンクロライドで十分洗浄した)に、下記
の溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセ
テート粉体(平均サイズ 2mm)を徐々に添加し、全
体が10kgになるように仕込んだ。添加後、室温(2
5℃)にて3時間、25℃にて放置した。
【0115】 ──────────────────────────────────── セルローストリアセテート(平均酢化度60.5%、粘度平均重合度300、 メチレンクロライド溶液中6質量%の粘度 330mPa・s) 20質量部 酢酸メチル 48質量部 シクロペンタノン 20質量部 メタノール 5質量部 エタノール 5質量部 可塑剤(ジペンタエリスリトールヘキサアセテート) 12質量部 微粒子(粒径20nmのシリカ) 0.1質量部 UV剤(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3, 5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン) 0.2質量部 界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸トリエチルアミン塩) 0.01質量% ────────────────────────────────────
【0116】得られた不均一なゲル状溶液をスクリュー
ポンプで送液して、−70℃で3分間となるように冷却
部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の
冷媒を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶
液はステンレス製のストックタンクに移送し、50℃で
2時間攪拌した後、ステンレス配管にて移送し、加熱部
で110℃、1Mpaに加温加圧し、絶対濾過精度0.
01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過
し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポー
ル社製、FH025)にて濾過した。
【0117】(1−2)セルローストリアセテートフイ
ルムの作製 得られた高温高圧のろ過済み溶液は、50℃に冷却し、
ポンプを用いて送液し流延ギーサーを通してクロムメッ
クした鏡面ステンレス支持体上に流延した。支持体温度
は10℃であり、流延スピードは3m/分でその塗布幅
は50cmであった。乾燥は55℃ゾーンを5分(フイ
ルム温度は約40℃)、110℃ゾーンを5分した後
(フイルム温度は約100℃)、クロムメックした鏡面
ステンレス支持体から剥ぎ取り、150℃で30分乾燥
(フイルム温度は約140℃)して、セルローストリア
セテートフイルム(膜厚80μm)を得た。なお、セル
ロースアセテート溶液はすべて使用し、溶解タンクや送
液系などは一部皮張りが発生する状態であった。
【0118】(1−3)製造工程の洗浄 上記のフイルム作製過程で用いられた製造工程を、オー
プン系で25℃で1日放置した後、25℃の温度にした
表1の溶液組成で洗浄した。なお、すべての製造工程は
25℃の温度にした。洗浄は、5Lの溶媒を溶解タン
ク、冷却装置、ろ過装置、ストックタンク、ギーサー部
およびそれらを繋ぐ配管にポンプを用いて満たして6時
間放置し、しかる後に送液して第1回目の洗浄を実施し
た。さらに5Lの表1の洗浄溶媒をポンプにて送液し製
造装置を洗浄し第2回目の洗浄を実施した。同様にして
第3回目の洗浄も実施した。なお、送液した洗浄液は溶
解タンク以外の部分は、その洗浄液を満たしておいた。
【0119】(1−4)第2セルロースアシレート溶液
の作製 実施例(1−1)と全く同様にして、(1−3)で洗浄
した溶解タンクを用いて第2セルロースアセテート溶液
(第2溶液)を作製した。
【0120】(1−5)第2セルロースアシレートフイ
ルムの作製 実施例(1−2)と全く同様にして、(1−3)で洗浄
した製造工程を用いて、(1−4)で作製した第2セル
ロースアセテート溶液を流延して、第2セルロースアセ
テートフイルム(第2フイルム)を作製した。
【0121】(1−6)結果 表1に、本発明の洗浄溶媒を用いた場合に得られたセル
ロースアセテート溶液(第2溶液)と、セルロースアセ
テートフイルム(第2フイルム)の評価結果を記載す
る。洗浄を全く実施しなかった試料1−1は、ろ過性が
全くなくフイルムの作製も出来なかった。また、本発明
の溶媒を用いた比較試料1−2〜1−9についても、ろ
過性が得られず流延すべきセルロースアセテート溶液を
得ることができず、フイルムの作製が不可能であった。
これに対して、本発明の酢酸メチルとケトン類からなる
洗浄液を用いた試料1−10〜1−23はろ過性にも優
れ得られたフイルムのスジとブツも優れたものであっ
た。なお、本発明以外の溶媒であるメチレンクロライド
を用いた比較試料1−24はブツが多く見られ劣るもの
であった。
【0122】
【表1】
【0123】[実施例2]実施例1の本発明の試料1−
17について、実施例1の(1−3)の製造工程の放置
温度25℃を−10℃にしかつ洗浄溶媒を−10℃に変
える以外は、実施例1と全く同様にして試料2−17を
作製した。得られたその第2溶液及び第2フイルムは、
ろ過性とスジ及びブツも全くAであり、試料1−17と
同等であった。このことから、本発明においては冬場の
低温においても優れたセルロースアセテート溶液とセル
ロースアセテートフイルムが作製できることが確証され
た。
【0124】[実施例3]実施例1の本発明の試料1−
17について、下記の製造工程を実施して試料3−17
を得た。
【0125】(3−1)セルローストリアセテート溶液
の作製 下記の処方にてセルローストリアセテート溶液を作製し
た。攪拌羽根を有する20Lのステンレス性溶解容タン
ク(予めメチレンクロライドで十分洗浄した)に、下記
の溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセ
テート粉体(平均サイズ 2mm)を徐々に添加し、全
体が10kgになるように仕込んだ。添加後、室温(2
5℃)にて3時間、25℃にて放置した。
【0126】 ──────────────────────────────────── セルローストリアセテート(平均酢化度60.5%、粘度平均重合度300) 20質量部 酢酸メチル 48質量部 シクロペンタノン 20質量部 メタノール 5質量部 エタノール 5質量部 トリフェニルフォスフェート/ビフェニルジフェニルフォスフェート(1/2 ) 12質量部 シリカ(粒径20nm) 0.1質量部 2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ− tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン 0.2質量部 ────────────────────────────────────
【0127】得られた不均一なゲル状溶液をスクリュー
ポンプで送液して、−180℃、1Mpaに加温加圧し
た加熱部分を3分間通過させた後、110℃、1Mpa
に加温加圧して、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東
洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精
度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)
にて濾過した。
【0128】(3−2)セルローストリアセテートフイ
ルムの作製 実施例1の(1−2)と全く同様にして実施した。
【0129】(3−3)製造工程の洗浄 実施例1の(1−3)と全く同様にして実施した。
【0130】(3−4)第2セルロースアシレート溶液
の作製 実施例1の(1−3)と全く同様にして、(3−3)で
洗浄した溶解タンクを用いて第2セルロースアセテート
溶液(第2溶液)を作製した。
【0131】(3−5)第2セルロースアシレートフイ
ルムの作製 実施例1の(1−2)と全く同様にして、(3−3)で
洗浄した製造工程を用いて、(3−4)で作製した第2
セルロースアセテート溶液を流延して、第2セルロース
アセテートフイルム(第2フイルム)を作製した。
【0132】(3−6)結果 得られた本発明の試料3−17は、その第2溶液及び第
2フイルムはろ過性とスジ及びブツも全くAであり、試
料1−17と同等であった。このことから、本発明にお
いては高温高圧溶解においても優れたセルロースアセテ
ート溶液とセルロースアセテートフイルムが作製できる
ことが確証された。
【0133】[実施例4]実施例1の試料1−17にお
いて、(1−1)において可塑剤を0質量部として除去
する以外は実施例1と全く同様にして本発明の試料4−
17を作製した。得られた試料4−17の第2溶液と第
2フイルムはろ過性、スジ及びブツは評価Aであり優れ
たものであった。一方、その耐切試験を実施したところ
試料1−17は95回であるのに対し、本発明の範囲で
はあるが可塑剤がない試料4−17は、耐切試験は78
回と実用状問題ないが若干劣るものであった。従って、
本発明ではセルロースアシレートフイルムが可塑剤を含
有することが、より好ましい態様であることが明らかで
ある。
【0134】[実施例5]実施例1の試料1−17にお
いて、(1−1)においてUV剤を0質量部として除去
する以外は実施例1と全く同様にして本発明の試料5−
17を作製した。得られた試料5−17の第2溶液と第
2フイルムはろ過性、スジ及びブツは評価Aであり優れ
たものであった。一方、その光褪色試験をキセノンラン
プ3万ルクス、1ヶ月実施したところ、試料1−1はヘ
イズが0.2%であるのに対し、本発明の範囲であるが
試料5−17はそのヘイズが0.4と若干アップした。
従って、本発明ではセルロースアシレートフイルムがU
V剤を含有することが、より好ましい態様であることが
明らかである。
【0135】[実施例6]実施例1の試料1−17にお
いて、(1−1)において微粒子のシリカ0質量部とし
て除去する以外は実施例1と全く同様にして本発明の試
料6−17を作製した。得られた試料6−17の第2溶
液と第2フイルムはろ過性、スジ及びブツは評価Aであ
り優れたものであった。一方、そのフイルムを2枚重ね
て滑りやすさを調べたところ、試料1−1はスムーズに
2枚を動かすことが出来るのに対し、本発明の範囲であ
るが試料6−17はフイルム同士の動きが若干悪かっ
た。従って、本発明ではセルロースアシレートフイルム
が微粒子を含有することが、より好ましい態様であるこ
とが明らかである。
【0136】[実施例7]実施例1の試料1−17にお
いて、(1−1)において界面活性剤を0質量部として
除去する以外は実施例1と全く同様にして本発明の試料
7−17を作製した。得られた試料6−17の第2溶液
と第2フイルムはろ過性、スジ及びブツは評価Aであり
優れたものであった。一方、(1−2)と全く同様に実
施した鏡面ステンレス支持体からの剥ぎ取り製をを調べ
たところ、試料1−1は10g/cmの剥ぎ取り抵抗で
あったのに対して、本発明の範囲である試料7−17は
その剥ぎ取り荷重が15g/cmと若干アップした。従
って、本発明ではセルロースアシレートフイルムが界面
活性剤剤を含有することが、より好ましい態様であるこ
とが明らかである。
【0137】[実施例8]実施例1の本発明の試料1−
17において、実施例1の(1−2)セルロースとりア
セテートフイルムの作製を以下に変更する以外は、実施
例1と全く同様にして本発明の試料8−17のセルロー
ストリアセテートフイルム(第2フイルム)を作製し
た。(1−1)で得られたセルローストリアセテート溶
液の一部を採液し、酢酸メチルを全体の10質量%添加
して、希釈したセルローストリアセテート溶液(溶液
A)を作製した。得られた溶液は、特開平06−134
993号公報記載の共流延法に従ってバンド側に(1−
1)で得られたセルローストリアセテート溶液を、空気
側に希釈したセルローストリアセテート溶液(溶液A)
を積層し、共流延セルローストリアセテートフイルムを
得た。得られた試料8−17の面状は、試料1−1より
も凹凸がなく更に優れたものであった。従って本発明に
おいては共流延することが更に優れた態様であることが
明らかである。
【0138】[実施例9]特開平11−316378号
公報の[実施例1]において、その第1透明支持体を本発
明の実施例1の試料1−17で得られるセルローストリ
アセテートフイルム(第2フイルム)の厚さを100μ
mとしたものに変更する以外は、全く同様にして特開平
11−316378号の[実施例1]を実施して試料9−
17を作製した。得られた楕円偏光板は、優れた光学特
性は優れたものであった。従って、本発明の製造工程に
おいて特定の洗浄溶液を用いることで、その後に作製さ
れるセルロースアシレートフイルムが光学偏光板に適応
されても問題のない好ましい態様であることが明らかで
ある。
【0139】[実施例10]実施例1の本発明の試料1
−17のセルローストリエステルフイルムに、特開平7
−333433の実施例1の富士写真フイルム(株)製
セルローストリアセテートを、本発明の試料1−17の
セルローストリアセテートフイルムに変更する以外は、
特開平7−333433の実施例1と全く同様にした光
学補償フィルターフイルム試料を作製した。得られたフ
ィルターフイルムは左右上下に優れた視野角を有するも
のであった。したがって、本発明のセルローストリアセ
テートフイルムが、光学的用途として優れたものである
ことが判る。
【0140】[実施例11]本発明では更に、多種の光
学用途に利用され、本発明の代表として試料1−17
を、例えば特開平10−48420号公報の実施例1に
記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実
施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的
異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特
開2000−154261号公報の図2〜9に記載のV
A型液晶表示装置、特開2000−154261号公報
の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いた
ところ良好な性能が得られた。
【0141】[実施例12]実施例1の本発明の試料1
−17において、そのフイルム厚さを120μmとする
以外は、実施例1と全く同様にしてそのフイルムである
本発明の試料12−17を作製した。得られたフイルム
の一方に、特開平4−73736号公報の実施例1の
(バック層組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン
系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更
に、得られたバック層を付与したフイルムベースの反対
の面に、特開平11−38568号公報の実施例1の試
料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を
作製した。得られたカラーフイルムは優れた映像が得ら
れかつその取り扱い性においても問題のないものであっ
た。
【0142】
【発明の効果】本発明に従うと、製造工程でセルロース
アシレート溶液のろ過性を悪化しない溶液を提供するこ
とが出来る。さらに本発明の洗浄溶液と洗浄方法を実施
することにより、連続的に作製されるセルロースアシレ
ートフイルムの面状が優れたものを提供でき、スジやブ
ツの発生のないセルロースアシレートフイルムを提供で
きる。さらに、光学的異方性に優れ膜強度に優れたセル
ローストリエステルフイルムを提供することが出来る。
更に、感材用支持体としても優れたセルローストリアセ
テートフイルムを作製できる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロースアシレートが5乃至40質量
    %の濃度で溶解しているセルロースアシレート溶液を、
    支持体上に流延し乾燥してセルロースアシレートフイル
    ムを製造する装置を洗浄する方法であって、製造装置に
    残留または付着したセルロースアシレート溶液、ゲルま
    たは固形物を除去するための洗浄液が、酢酸メチルと、
    炭素数3〜12のケトン類、水および炭素数1〜6のア
    ルコール類からなる群より選ばれる液体との混合物から
    なることを特徴とするセルロースアシレートフイルム製
    造装置の洗浄方法。
  2. 【請求項2】 洗浄液中の酢酸メチル含有量が30〜9
    7質量%であり、炭素数4〜12のケトン類の含有量が
    70〜3質量%であり、アルコール類の含有量が0〜3
    0質量%である請求項1に記載の洗浄方法。
  3. 【請求項3】 洗浄液の温度が−20〜57℃である請
    求項1に記載の洗浄方法。
  4. 【請求項4】 洗浄液中のケトン類が、アセトン、ジエ
    チルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケ
    トン、シクロペンタノンまたはシクロヘキサノンである
    請求項1に記載の洗浄方法。
  5. 【請求項5】 洗浄液中のアルコール類が、メタノー
    ル、エタノール、プロパノール、イソプロパノ−ル、ブ
    タノール、イソブタノールまたはシクロヘキサノールで
    ある請求項1に記載の洗浄方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006110881A (ja) * 2004-10-15 2006-04-27 Konica Minolta Opto Inc セルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法
CN108906763A (zh) * 2018-05-16 2018-11-30 深圳仕上电子科技有限公司 利用丙酮清洗剂溶液剥离工件表面膜的方法
CN112750735A (zh) * 2020-12-31 2021-05-04 阳光中科(福建)能源股份有限公司 一种钙钛矿太阳能电池fto基底清洗装置

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