JP2002144736A - 情報記録媒体およびその製造方法ならびにその記録再生方法 - Google Patents

情報記録媒体およびその製造方法ならびにその記録再生方法

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Rie Kojima
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    • G11B7/24Record carriers characterised by shape, structure or physical properties, or by the selection of the material
    • G11B7/2403Layers; Shape, structure or physical properties thereof
    • G11B7/24035Recording layers
    • G11B7/24038Multiple laminated recording layers

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  • Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)
  • Optical Recording Or Reproduction (AREA)
  • Manufacturing Optical Record Carriers (AREA)
  • Thermal Transfer Or Thermal Recording In General (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 2層の記録層を有し且つ記録・消去性能が良
好な情報記録媒体、およびその製造方法、ならびにその
記録再生方法を提供する。 【解決手段】 第1の情報層11と第2の情報層20と
を備え、第1の情報層11が、レーザビームの照射また
は電気エネルギーの印加によって結晶相と非晶質相との
間で可逆的な相変化を起こす第1の記録層4を含み、第
2の情報層20が、レーザビームの照射または電気エネ
ルギーの印加によって結晶相と非晶質相との間で可逆的
な相変化を起こす第2の記録層14を含む。そして、第
1の記録層4が第1の材料からなり、第2の記録層14
が第2の材料からなり、第1の材料と第2の材料とが異
なる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学的または電気
的に情報を記録、消去、書き換え、および再生する情報
記録媒体、およびその製造方法、ならびにその記録再生
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】レーザビームを用いて情報を記録、消
去、書き換え、および再生する情報記録媒体として相変
化形情報記録媒体がある。相変化形情報記録媒体への情
報の記録、消去、および書き換えには、その記録層が結
晶相と非晶質相との間で可逆的に相変化を生じる現象を
利用する。一般に、情報を記録する場合は、レーザビー
ムを照射して記録層を溶融して急冷することによって、
照射部を非晶質相にして情報を記録する。一方、情報を
消去する場合は、記録時より低パワーのレーザビームを
照射して記録層を昇温して徐冷することによって、照射
部を結晶相にして前の情報を消去する。したがって、相
変化形情報記録媒体では、高パワーレベルと低パワーレ
ベルとの間でパワーを変調させたレーザビームを記録層
に照射することによって、記録されている情報を消去し
ながら新しい情報を記録または書き換えすることが可能
である(たとえば、角田 義人ら。「光ディスクストレ
ージの基礎と応用」、電子情報通信学会編、1995
年、第2章を参照)。
【0003】近年、情報記録媒体を大容量化するための
技術として、さまざまな技術が検討されている。たとえ
ば、短波長の青紫色レーザを用いたり、レーザビームが
入射する側の基板の厚さを薄くして開口数NAが大きい
レンズを使用したりすることによって、レーザビームの
スポット径をより小さくして高密度の記録を行う技術が
検討されている。また、2つの情報層を備える情報記録
媒体を用いて、その片側から入射するレーザビームによ
って2つの情報層の記録再生を行う技術も検討されてい
る(特開平12−36130号公報参照)。この技術で
は、2つの情報層を用いることによって記録密度をほぼ
2倍にすることができる。
【0004】片側から2つの情報層を記録再生する情報
記録媒体(以下、2層情報記録媒体という場合がある)
では、レーザビームの入射側の情報層(以下、第1の情
報層という)を透過したレーザビームを用いて、レーザ
ビームの入射側とは反対側の情報層(以下、第2の情報
層という)の記録再生を行う。したがって、第1の情報
層の透過率は40%以上であることが好ましい。一方、
第2の情報層は、記録特性に関しては高い記録感度(低
パワーのレーザビームでも記録マークを形成できる)を
有することが望まれ、再生特性に関しては高い反射率を
有することが望まれる。
【0005】第1の情報層に対するレーザビームの透過
率を40%以上にするためには、第1の記録層の厚さを
6nm程度と薄くする必要がある。しかし、記録層が薄
くなると、記録層が結晶化する際に、形成される結晶核
が減少し、また、原子の移動できる距離が短くなる。こ
のため、同じ材料からなる記録層でも薄い記録層の方が
結晶化速度が相対的に低下する傾向がある。したがっ
て、記録層が薄いほど結晶相が形成されにくくなり、消
去率が低下する。
【0006】従来から、記録層の材料(相変化材料)と
しては、結晶化速度が速く、繰り返し書き換え性能にも
優れ、且つ信頼性も高いGeSbTe系の材料が用いら
れてきた。この材料を用いて、コンピュータのデータ記
録用の光ディスクや映像記録用の光ディスクが商品化さ
れている。GeSbTe系材料の中でも、GeTe−S
2Te3ライン上の擬二元系組成は結晶化速度が最も速
い。発明者らは、波長660nmの赤色レーザを用いて
記録再生実験を行った。その結果、9m/sという高い
線速度での記録において、GeTe−Sb2Te3からな
る記録層の厚さを6nmと薄くしても、30dBという
良好な消去率が得られた。この技術によって、赤色レー
ザを用いる2層情報記録媒体の実現可能性が見いだされ
た。
【0007】また、電流の印加によって、相変化材料か
らなる記録層を相変化させる情報記録媒体も従来から検
討されている。この情報記録媒体では、記録層が2つの
電極に挟まれている。この情報記録媒体では、非晶質相
の状態である記録層に電流を徐々に流していくと、ある
閾電流(threshold current)で記録
層が結晶相に相変化し、電気抵抗が急激に低下する。ま
た、結晶相の状態である記録層にパルス幅が短い大電流
パルスを印加することによって、記録層を溶融・急冷し
て高抵抗の非晶質相に戻すこともできる。電気抵抗の違
いは通常の電気的手段によって簡単に検出可能であるか
ら、このような記録層を用いることによって書き換え可
能な情報記録媒体が得られる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】情報記録媒体の大容量
化のためには、短波長の青紫色レーザを使って記録再生
を行う2層情報記録媒体の実用化が望まれる。短波長の
レーザビームを用いたり、開口数が大きい対物レンズを
用いることによって、レーザビームのスポット径を小さ
くでき、より高密度の記録が可能となる。短波長のレー
ザビームを用いて記録を行うためには、小さな記録マー
クでも良好な形状に形成できる情報記録媒体が必要であ
る。青紫色レーザを使うと、記録層にレーザビームが照
射される時間が相対的に短くなるため、小さな記録マー
クを形成するには、結晶化速度の速い材料で記録層を形
成することが必要となる。また、小さな記録マークでも
十分な信号振幅を得るためには、結晶相と非晶質相との
間で光学的特性の変化が大きい材料を用いて記録層を形
成することが望ましい。
【0009】発明者らの実験では、赤色レーザを用いる
従来の2層情報記録媒体をそのまま青紫色レーザ用の情
報記録媒体として適用すると、第1の情報層および第2
の情報層において形成される記録マークが小さくなり、
その結果、十分な信号振幅が得られなかった。また、第
1の情報層に関して、十分な透過率を確保するために記
録層の厚さを6nm程度にすると、消去率が15dB未
満という不十分な値となってしまった。大きな信号振幅
を得るためには、GeTe−Sb2Te3ライン上の擬二
元系組成において、GeTeの割合を大きくすればよい
ことが発明者らの実験でわかっている。しかしながら、
GeTeの割合が多くなるほど材料の融点が高くなる傾
向があるため、GeTeの割合が多くなるほど非晶質相
を形成するためのレーザパワー(記録パワー)がより大
きくなる。現在入手可能な青紫色レーザの出力は赤色レ
ーザの出力よりも小さい。このため、第1の情報層を透
過してきたレーザビームで記録再生を行う第2の情報層
に、GeTeが多い組成を適用した場合には、記録パワ
ーが不足して飽和した信号振幅を得ることができなかっ
た。
【0010】このように、青紫色レーザを使った2層情
報記録媒体においては、第1の情報層の消去率の確保
と、第2の情報層の高記録感度化が重要な課題であるこ
とがわかった。
【0011】青紫色レーザを用いる2層情報記録媒体の
実用化には、透過率が高く良好な記録・消去性能を有す
る第1の情報層と、反射率および記録感度が高く良好な
記録・消去性能を有する第2の情報層とが必要である。
したがって、その実用化のためには、第1および第2の
記録層の材料と、第1および第2の情報層の構成とを検
討する必要がある。
【0012】また、電流の印加によって相変化を生じる
記録層の材料としては、Teを主成分とする材料が実用
化されている。しかし、従来の材料は、結晶化に要する
時間がμsオーダーと長かった。また、記録・消去性能
が良好で且つ2層の記録層を備える電気的相変化形の情
報記録媒体は、まだ実用化されていない。
【0013】本発明は、2層の記録層を有し且つ記録・
消去性能が良好な情報記録媒体、およびその製造方法、
ならびにその記録再生方法を提供することを目的とす
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の情報記録媒体は、第1の情報層と第2の情
報層とを備える情報記録媒体であって、前記第1の情報
層が、レーザビームの照射によってまたは電流の印加に
より発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との
間で可逆的な相変化を起こす第1の記録層を含み、前記
第2の情報層が、前記レーザビームの照射によってまた
は前記電流の印加により発生するジュール熱によって結
晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第2の
記録層を含み、前記第1の記録層が第1の材料からな
り、前記第2の記録層が第2の材料からなり、前記第1
の材料と前記第2の材料とが異なることを特徴とする。
本発明の情報記録媒体によれば、それぞれの情報層で良
好な記録再生特性が得られる。
【0015】本発明の情報記録媒体では、前記第1の材
料がGeとSbとTeとを含み、前記第2の材料が、A
g、In、Ge、Sn、Se、Bi、AuおよびMnか
ら選ばれる少なくとも1つの元素M1とSbとTeとか
らなるものでもよい。この構成によれば、レーザビーム
を用いて情報を記録する記録媒体(以下、光学的情報記
録媒体という場合がある)に関して、透過率および消去
率が高い第1の情報層と、反射率および記録感度が高い
第2の情報層とを備える情報記録媒体が得られる。特
に、この光学的情報記録媒体は、青紫色レーザを用いた
高密度記録に好適である。また、電流を用いて情報を記
録する記録媒体(以下、電気的情報記録媒体という場合
がある)に関して、第1の記録層、第2の記録層、また
はその両方を、選択的に結晶相と非晶質相との間で容易
に相変化させることができる。
【0016】本発明の情報記録媒体では、前記第1の材
料が、組成式 GeaSbbTe3+a (ただし、0<a≦10、1.5≦b≦4)で表される
ものでもよい。この構成によれば、第1の記録層が極め
て薄い場合でも良好な記録再生特性が得られる。
【0017】本発明の情報記録媒体では、前記第1の材
料が、組成式 (Ge−M2)aSbbTe3+a (ただし、M2はSnおよびPbから選ばれる少なくと
も1つの元素であり、0<a≦10、1.5≦b≦4)
で表されるものでもよい。この構成によれば、Ge−S
b−Te3元系組成のGeを置換したSnまたはPbが
結晶化能を向上させ、第1の記録層が極めて薄い場合で
も十分な消去率が得られる。
【0018】本発明の情報記録媒体では、前記第1の材
料が、組成式 (GeaSbbTe3+a100-cM3c (ただし、M3はSi、Ti、V、Cr、Mn、Fe、
Co、Ni、Cu、Se、Zr、Nb、Mo、Ru、R
h、Pd、Ag、In、Sn、Ta、W、Os、Ir、
Pt、AuおよびBiから選ばれる少なくとも1つの元
素であり、0<a≦10、1.5≦b≦4、0<c≦2
0)で表されるものでもよい。この構成によれば、Ge
−Sb−Te3元系組成に添加した元素M3が記録層の
融点および結晶化温度を上昇させ、記録層の熱的安定性
が向上する。
【0019】本発明の情報記録媒体では、前記第2の材
料が、組成式 (SbxTe100-x100-yM1y (ただし、50≦x≦95、0<y≦20)で表される
ものでもよい。この構成によれば、第2の記録層の融点
が低く且つ結晶相と非晶質相との屈折率差が大きいた
め、記録感度が高く且つ結晶相と非晶質相との反射率差
が大きい第2の情報層が得られる。
【0020】本発明の情報記録媒体では、前記第1およ
び第2の記録層が、前記レーザビームの照射によって可
逆的な相変化を起こす層であり、前記第1の情報層が、
前記第2の情報層よりも前記レーザビームの入射側に配
置されており、前記第2の材料の融点が、前記第1の材
料の融点よりも低くてもよい。この構成によれば、記録
感度が高い第2の情報層が得られる。
【0021】本発明の情報記録媒体では、前記第1およ
び第2の記録層が、前記レーザビームの照射によって可
逆的な相変化を起こす層であり、前記第1の情報層が、
前記第2の情報層よりも前記レーザビームの入射側に配
置されていてもよい。この構成によれば、光学的情報記
録媒体が得られる。
【0022】上記光学的情報記録媒体では、前記第1の
記録層の厚さが9nm以下であってもよい。この構成に
よれば、第1の情報層の透過率を高くして、第2の情報
層の記録再生に必要なレーザ光量を第2の情報層に到達
させることが容易になる。
【0023】上記光学的情報記録媒体では、前記第2の
記録層の厚さが6nm〜15nmの範囲内であってもよ
い。この構成によれば、第2の記録層の記録感度を特に
高くできる。厚さを6nm以上とすることによって、記
録層での光吸収量を多くできる。厚さを15nm以下と
することによって、記録マークを形成する際に溶融させ
る部分の体積を小さくできるため、記録感度の低下を防
止できる。
【0024】上記光学的情報記録媒体では、前記第1の
記録層が結晶相である場合の前記第1の情報層の透過率
Tc(%)と、前記第1の記録層が非晶質相である場合
の前記第1の情報層の透過率Ta(%)とが、波長が3
90nm以上430nm以下の前記レーザビームに対し
て、 40≦(Tc+Ta)/2 を満たしてもよい。この構成によれば、第2の情報層に
関して特に良好な記録・消去特性が得られる。
【0025】上記光学的情報記録媒体では、前記第1の
情報層と前記第2の情報層との間に配置された光学分離
層をさらに備え、前記第1の情報層が、第1の基板と第
1の下側保護層と第1の上側保護層と第1の反射層とを
さらに含み、前記第2の情報層が、第2の下側保護層と
第2の上側保護層と第2の反射層と第2の基板とをさら
に含み、前記第1の基板、前記第1の下側保護層、前記
第1の記録層、前記第1の上側保護層、前記第1の反射
層、前記光学分離層、前記第2の下側保護層、前記第2
の記録層、前記第2の上側保護層、前記第2の反射層、
および前記第2の基板が、前記レーザビームの入射側か
らこの順序で配置されていてもよい。この構成によれ
ば、第1および第2の情報層について、それぞれの反射
率、記録感度、消去感度、および透過率(とくに第1の
情報層)を、記録・消去・再生条件に合わせて最適化で
きる。また、光学分離層によって、第1の情報層と第2
の情報層とを光学的に分離することができる。
【0026】上記光学的情報記録媒体では、前記第1の
基板と前記第1の下側保護層との間に配置された透明層
をさらに備えてもよい。
【0027】上記光学的情報記録媒体は、前記第1の下
側保護層と前記第1の記録層との界面、および、前記第
1の上側保護層と前記第1の記録層との界面から選ばれ
る少なくとも1つの界面に配置された界面層をさらに備
えてもよい。また、上記光学的情報記録媒体は、前記第
2の下側保護層と前記第2の記録層との界面、および、
前記第2の上側保護層と前記第2の記録層との界面から
選ばれる少なくとも1つの界面に配置された界面層をさ
らに備えてもよい。また、上記光学的情報記録媒体は、
前記第1の上側保護層と前記第1の反射層との界面、お
よび、前記第2の上側保護層と前記第2の反射層との界
面から選ばれる少なくとも1つの界面に配置された界面
層をさらに備えてもよい。界面層を備えるこれらの構成
によれば、隣接する層間の原子拡散を防止でき、特性お
よび信頼性が特に高い情報記録媒体が得られる。
【0028】上記光学的情報記録媒体は、前記第1の反
射層と前記光学分離層との間に、前記第1の情報層の透
過率を調整するための透過率調整層をさらに備えてもよ
い。この構成によれば、第1の情報層の透過率を特に高
めることができる。
【0029】上記光学的情報記録媒体は、前記第1の反
射層と前記透過率調整層との間に配置された界面層をさ
らに備えてもよい。この構成によれば、第1の反射層と
透過率調整層との間の原子拡散を防止でき、信頼性が特
に高い情報記録媒体が得られる。
【0030】上記光学的情報記録媒体では、前記第1の
基板の厚さが、10μm〜800μmの範囲内であって
もよい。この構成によれば、対物レンズの開口数(N
A)を変化させることによって、第1の基板の溝の形状
や記録・消去・再生条件に合わせて、記録マークの長さ
と幅と間隔とを最適化できる。たとえば、第1の基板の
厚さが100μmの場合、NA=0.85で良好な記録
・消去性能が得られた。また、第1の基板の厚さが60
0μmの場合、NA=0.6で良好な記録・消去性能が
得られた。
【0031】上記光学的情報記録媒体では、前記第2の
基板の厚さが、400μm〜1300μmの範囲内であ
ってもよい。この構成によれば、対物レンズのNAを変
化させることによって、第2の基板の溝の形状や記録・
消去・再生条件に合わせて、記録マークの長さと幅と間
隔とを最適化できる。第1の基板の厚さが約100μm
である場合は第2の基板の厚さは約1100μm、第1
の基板の厚さが約600μmである場合は第2の基板の
厚さは約600μmというように、情報記録媒体の厚さ
が約1200μmとなるように第1および第2の基板の
厚さを選択することが好ましい。
【0032】本発明の情報記録媒体では、第1および第
2の電極とをさらに含み、前記第1および第2の記録層
が、前記電流の印加によって可逆的な相変化を起こす層
であり、前記第1の電極上に、前記第1の記録層、前記
第2の記録層、および前記第2の電極がこの順序で積層
されていてもよい。この構成によれば、電気的情報記録
媒体が得られる。
【0033】上記電気的情報記録媒体では、前記第1の
記録層と前記第2の記録層との間に配置された中間電極
をさらに備えてもよい。この構成によれば、第1の記録
層と第2の記録層との間の原子拡散を防止できるため、
繰り返し特性および信頼性を高めることができる。ま
た、この構成によれば、第1の記録層または第2の記録
層のどちらか一方のみに電流を印加できる。
【0034】また、本発明の製造方法は、第1の情報層
と第2の情報層とを備える情報記録媒体の製造方法であ
って、(a)前記第1の情報層を形成する工程と、
(b)前記第2の情報層を形成する工程とを含み、前記
第1の情報層が、レーザビームの照射によってまたは電
流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非
晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第1の記録層を
含み、前記第2の情報層が、前記レーザビームの照射に
よってまたは前記電流の印加により発生するジュール熱
によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起
こす第2の記録層を含み、前記(a)の工程が、Geと
SbとTeとを含む母材を用いて前記第1の記録層を形
成する工程を含み、前記(b)の工程が、Ag、In、
Ge、Sn、Se、Bi、AuおよびMnから選ばれる
少なくとも1つの元素M1とSbとTeとを含む母材を
用いて前記第2の記録層を形成する工程を含むことを特
徴とする。この製造方法によれば、本発明の情報記録媒
体を容易に製造できる。
【0035】本発明の製造方法では、前記第1および第
2の記録層が、アルゴンガスまたはクリプトンガスを含
むスパッタリングガスを用いたスパッタリング法によっ
て形成されてもよい。このスパッタリングガスは、窒素
ガスおよび酸素ガスから選ばれる少なくとも1つのガス
をさらに含んでもよい。この構成によれば、繰り返し記
録性能に優れた情報層を製造できる。
【0036】本発明の製造方法では、前記第1の記録層
の厚さが9nm以下であり、前記(a)の工程におい
て、0.1nm/秒〜3nm/秒の範囲内の成膜レート
で前記第1の記録層を形成してもよい。この構成によれ
ば、厚さのばらつきが少ない第1の記録層を備える光学
的情報記録媒体を生産性よく製造できる。
【0037】本発明の製造方法では、前記第2の記録層
の厚さが6nm〜15nmの範囲内であり、前記(b)
の工程において、0.3nm/秒〜10nm/秒の範囲
内の成膜レートで前記第2の記録層を形成してもよい。
この構成によれば、記録感度が高い第2の情報層を備え
る光学的情報記録媒体を生産性よく製造できる。
【0038】本発明の製造方法では、前記(a)の工程
の前に前記(b)の工程が行われ、前記(b)の工程の
のちであって前記(a)の工程の前に、(c)前記第2
の情報層上に光学分離層を形成する工程をさらに含み、
前記(a)の工程において、前記光学分離層上に前記第
1の情報層を形成してもよい。
【0039】また、情報記録媒体を記録再生するための
本発明の第1の方法は、前記情報記録媒体が上記本発明
の情報記録媒体であり、前記情報記録媒体の第1の情報
層に対して、前記第1の情報層側から入射したレーザビ
ームによって情報の記録再生を行い、前記情報記録媒体
の第2の情報層に対して、前記第1の情報層を透過した
前記レーザビームによって情報の記録再生を行い、前記
レーザビームの波長が390nm以上430nm以下で
あることを特徴とする。この第1の記録再生方法によれ
ば、光学的情報記録媒体の第1および第2の情報層に対
して、高密度に信頼性よく記録再生を行うことができ
る。
【0040】本発明の第1の記録再生方法では、情報を
記録再生する際の前記情報記録媒体の線速度が3m/秒
以上30m/秒以下であってもよい。
【0041】本発明の第1の記録再生方法では、前記レ
ーザビームが対物レンズによって集光されたレーザビー
ムであり、前記対物レンズの開口数NAが0.5以上
1.1以下であってもよい。この構成によれば、第1お
よび第2の基板の厚さや溝の形状、ならびに記録・再生
の条件に合わせて、記録マークの長さと幅と間隔とを最
適化できる。
【0042】また、情報記録媒体を記録再生するための
本発明の第2の方法は、前記情報記録媒体が上記本発明
の情報記録媒体であり、前記情報記録媒体の前記第1お
よび第2の記録層が電流の印加により発生するジュール
熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を
起こす層であり、前記第1または第2の記録層を非晶質
相から結晶相に変化させる際に前記第1または第2の記
録層に印加する電流パルスの振幅Icおよびパルス幅t
cと、前記第1の記録層を結晶相から非晶質相に変化さ
せる際に前記第1の記録層に印加する電流パルスの振幅
Ia1およびパルス幅ta1と、前記第2の記録層を結
晶相から非晶質相に変化させる際に前記第2の記録層に
印加する電流パルスの振幅Ia2およびパルス幅ta2
とが、Ic<Ia2<Ia1の関係、およびta1≦t
cまたはta2≦tcの関係を満たすことを特徴とす
る。この第2の記録再生方法によれば、電気的情報記録
媒体において、第1の記録層、第2の記録層、またはそ
の両方を、選択的に結晶相または非晶質相に相変化させ
ることができる。なお、本発明の電気的情報記録媒体
は、相変化による電気抵抗の変化を生起するものである
ため、変更可能なプログラマブル回路の構成素子として
用いることもできる。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態
は一例であり、本発明は以下の実施形態に限定されな
い。また、以下の実施形態では、同一の部分については
同一の符号を付して重複する説明を省略する場合があ
る。
【0044】(実施形態1)実施形態1では、本発明の
情報記録媒体について一例を説明する。実施形態1の情
報記録媒体22について一部断面図を図1に示す。情報
記録媒体22では、レーザビーム23の照射によって記
録再生が行われる。
【0045】図1を参照して、情報記録媒体22は、光
学分離層21と、光学分離層21を挟むように配置され
た第1の情報層11および第2の情報層20とを備え
る。第1の情報層11は、第2の情報層20よりもレー
ザビーム23の入射側に配置されている。
【0046】第1の情報層11は、レーザビーム23の
入射側から順に配置された第1の基板1、第1の下側保
護層2、第1の下側界面層3、第1の記録層4、第1の
上側界面層5、第1の上側保護層6、第1の界面層7、
第1の反射層8、第1の最上界面層9、および透過率調
整層10を備える。
【0047】第2の情報層20は、レーザビーム23の
入射側から順に配置された第2の下側保護層12、第2
の下側界面層13、第2の記録層14、第2の上側界面
層15、第2の上側保護層16、第2の界面層17、第
2の反射層18、および第2の基板19を備える。な
お、界面層および保護層の名称において、下側とは記録
層よりもレーザビーム23の入射側であることを意味
し、上側とは記録層に対してレーザビーム23の入射側
とは反対側であることを意味する。
【0048】レーザビーム23は、第1の基板1側から
入射する。第2の情報層20は、第1の情報層11およ
び光学分離層21を透過したレーザビーム23によって
記録再生が行われる。
【0049】第1の基板1および第2の基板19は、透
明で円盤状の基板である。第1の基板1および第2の基
板19は、たとえば、ポリカーボネートやアモルファス
ポリオレフィンやPMMAといった樹脂、またはガラス
を用いて形成できる。なお、第1の基板1は、第1の下
側保護層2上に樹脂を塗布したのち、この樹脂を硬化さ
せることによって形成してもよい。
【0050】第1の基板1および第2の基板19の内側
(光学分離層21側)の表面には、必要に応じて、レー
ザビームを導くための案内溝が形成されていてもよい。
これらの基板の外側の表面は、平滑であることが好まし
い。これらの基板は、短波長域において光学的に複屈折
が小さいことが好ましい。これらの基板の材料として
は、転写性・量産性に優れ、低コストであることから、
ポリカーボネートが特に有用である。第1の基板1の厚
さは、たとえば10μm〜800μm(好ましくは、5
0μm〜150μmまたは550μm〜650μm)の
範囲内である。第2の基板19の厚さは、たとえば40
0μm〜1300μm(好ましくは、550μm〜65
0μmまたは1050μm〜1150μm)の範囲内で
ある。
【0051】第1の基板1および第2の基板19の両方
に、レーザビームを導くための溝が形成されている情報
記録媒体について、一例を図2に示す。図2の情報記録
媒体22aでは、第1の情報層11aが第1の基板1a
を含み、第2の情報層20aが第2の基板19aを含
む。第1の基板1aおよび第2の基板19aには、溝
(グルーブ)1bが形成されている。情報記録媒体22
aでは、情報は、レーザビーム23の入射側の溝面であ
る溝1bの部分に記録してもよいし、溝1bの間の部分
(レーザビーム23の入射側から遠い方の溝面である。
以下ランド1cという場合がある)に記録してもよい。
また、溝1bとランド1cの両方に情報を記録してもよ
い。
【0052】第1の下側保護層2、第1の上側保護層
6、第2の下側保護層12および第2の上側保護層16
は、いずれも誘電体からなる。これらの保護層は、光学
距離を調整して記録層の光吸収効率を高める働きと、記
録前後の反射光量の変化を大きくして信号振幅を大きく
する働きとを有する。これらの保護層には、たとえばS
iOx(xは、0.5〜2.5),Al23,TiO2
Ta25,ZrO2,ZnO,またはTe−Oなどの酸
化物を用いることができる。また、Si−N,Al−
N,Ti−N,Ta−N,Zr−N,またはGe−Nな
どの窒化物を用いることもできる。また、ZnSなどの
硫化物やSiCなどの炭化物を用いることもできる。ま
た、上記材料の混合物を用いることもできる。これらの
中でも、ZnSとSiO2との混合物であるZnS−S
iO2は、保護層の材料として特に優れている。ZnS
−SiO2は、非晶質材料で、屈折率が高く、成膜速度
が速く、機械的特性および耐湿性が良好である。
【0053】第1の下側保護層2および第1の上側保護
層6の厚さは、第1の記録層4が結晶相である場合とそ
れが非晶質相である場合とで反射光量の変化が大きく、
且つ第1の情報層11の透過率が大きく、且つ第1の記
録層4の光吸収効率が大きくなるように厳密に決定する
ことができる。具体的には、これらの厚さは、たとえば
マトリクス法に基づく計算を用いて決定できる。
【0054】第2の下側保護層12および第2の上側保
護層16の厚さも、同様に、第2の記録層14が結晶相
である場合とそれが非晶質相である場合とで反射光量の
変化が大きく、且つ第2の記録層14の光吸収効率が大
きくなるように厳密に決定することができる。第1の下
側保護層2、第1の上側保護層6、第2の下側保護層1
2および第2の上側保護層16は、それぞれ異なる材料
・組成で形成してもよいし同一の材料・組成で形成して
もよい。
【0055】透過率調整層10は、第1の情報層11の
透過率を調整する機能を有する。透過率調整層10によ
って、第1の記録層4が結晶相である場合の第1の情報
層11の透過率Tc(%)と、第1の記録層4が非晶質
相である場合の第1の情報層11の透過率Ta(%)と
を共に高くすることができる。具体的には、透過率調整
層10を備える情報記録媒体22では、透過率調整層1
0が無い場合に比べて、第1の情報層11の透過率が2
%〜6%程度上昇する。透過率調整層10は、保護層に
ついて説明した材料で形成することができる。情報記録
媒体22では、40≦(Tc+Ta)/2(より好まし
くは、45≦(Tc+Ta)/2)であることが好まし
い(実施形態2の情報記録媒体26においても同様であ
る)。
【0056】第1の下側界面層3、第1の上側界面層
5、第2の下側界面層13および第2の上側界面層15
は、それぞれ、第1の下側保護層2と第1の記録層4と
の間、第1の上側保護層6と第1の記録層4との間、第
2の下側保護層12と第2の記録層14との間、および
第2の上側保護層16と第2の記録層14との間で物質
が移動することを防止する。これらの界面層は、特に、
繰り返し記録によって生じる物質移動を防止する。これ
らの界面層は、たとえばSi−N,Al−N,Ti−
N,Ta−N,Zr−N,Ge−Nなどの窒化物、これ
らを含む窒化酸化物、またはSiCなどの炭化物によっ
て形成できる。これらの中でも、Ge−Nが特に好まし
い。Ge−Nは、反応性スパッタリングで形成しやす
く、機械的特性および耐湿性に優れる。界面層が厚い
と、情報層の反射率や吸収率が大きく変化して記録・消
去性能に影響を与える。したがって、界面層の厚さは、
1nm〜10nmの範囲内であることが望ましく、2n
m〜5nmの範囲内であることがより好ましい。
【0057】第1の界面層7、第1の最上界面層9およ
び第2の界面層17は、それぞれ、第1の上側保護層6
と第1の反射層8との間、透過率調整層10と第1の反
射層8との間、および第2の上側保護層16と第2の反
射層18との間で物質が移動することを防止する。これ
らの界面層は、特に、高温高湿の環境における記録によ
って生じる物質移動を防止する。これらの界面層は、第
1の下側界面層3、第1の上側界面層5、第2の下側界
面層13および第2の上側界面層15について説明した
材料で形成することができる。これらの界面層の厚さ
は、1nm〜10nmの範囲内であることが望ましく、
2nm〜5nmの範囲内であることがより好ましい。
【0058】第1の記録層4は、レーザビームの照射に
よって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こ
す材料からなる。第1の記録層4は、たとえばGeとS
bとTeとを含む材料で形成できる。具体的には、第1
の記録層4は、組成式GeaSbbTe3+aで表される材
料で形成できる。この材料は、a=0の場合には、結晶
相が非常に安定であり非晶質相の安定性に欠ける。一
方、10<aの場合には、信号振幅は大きくなるが、融
点が上がるとともに結晶化速度が低下する。そのため、
aは、0<a≦10の関係を満たすことが好ましく、1
≦a≦9の関係を満たすことがより好ましい。また、こ
の材料は、b<1.5の場合には、結晶相が非常に安定
であり非晶質相の安定性に欠ける。一方、4<bの場合
には、信号振幅は大きくなるが、結晶化速度が低下す
る。そのため、bは、1.5≦b≦4の関係を満たすこ
とが好ましく、1.5≦b≦3の関係を満たすことがよ
り好ましい。
【0059】また、第1の記録層4は、組成式(Ge−
M2)aSbbTe3+a(ただし、M2は、SnおよびP
bから選ばれる少なくとも1つの元素)で表される材料
で形成してもよい。この組成式は、Geと元素M2とが
合計で100・a/(3+2a+b)原子%だけ含まれ
ることを意味している。この材料の組成は、組成式Ge
aSbbTe3+aで表される材料のGeの一部を元素M2
で置換した組成である。この材料を用いた場合、Geを
置換した元素M2が結晶化能を向上させるため、第1の
記録層4が極めて薄い場合でも十分な消去率が得られ
る。元素M2としては、毒性がない点でSnがより好ま
しい。この材料を用いる場合も、0<a≦10(より好
ましくは、1≦a≦9)、且つ1.5≦b≦4(より好
ましくは、1.5≦b≦3)であることが好ましい。
【0060】また、第1の記録層4は、組成式(Gea
SbbTe3+a100-cM3c(ただし、M3は、Si、T
i、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Se、
Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、S
n、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、およびBiか
ら選ばれる少なくとも1つの元素)で表される材料で形
成してもよい。この材料の組成は、組成式GeaSbb
3+aで表される材料に元素M3を添加した組成であ
る。この場合、添加された元素M3が記録層の融点およ
び結晶化温度を上昇させるため、記録層の熱的安定性を
向上でき、その結果、第1の情報層11の記録再生性能
を向上できる。この材料は、20<cの場合には結晶化
速度が不十分となるため、0<c≦20であることが好
ましく、2≦c≦10であることがより好ましい。ま
た、0<a≦10(より好ましくは、1≦a≦9)、且
つ1.5≦b≦4(より好ましくは、1.5≦b≦3)
であることが好ましい。
【0061】第2の記録層14は、レーザビームの照射
によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起
こす材料からなる。第2の記録層14は、第1の記録層
4の材料とは異なる材料で形成される。第2の記録層1
4は、第1の記録層4の材料よりも融点が低い材料から
なることが好ましい。
【0062】第2の記録層14は、Ag、In、Ge、
Sn、Se、Bi、AuおよびMnから選ばれる少なく
とも1つの元素M1とSbとTeとからなる材料で形成
できる。具体的には、組成式(SbxTe100-x100-y
M1yで表される材料で形成できる。この材料は、Sb
70Te30共晶組成近傍のSb−Te合金に元素M1を加
えることによって得られる。xおよびyが、それぞれ、
50≦x≦95、および0<y≦20を満たす場合に
は、この材料は、融点が低く且つ屈折率が高い。このた
め、この範囲の組成の材料を用いて第2の記録層14を
形成することによって、記録感度が高く且つ反射率も高
い第2の情報層20が得られる。
【0063】65≦xの場合には、結晶化速度が特に速
く、特に良好な消去率が得られる。また、x≦85の場
合には、複数の相が現れることを抑制できるため、繰り
返し記録による特性劣化を抑制できる。したがって、6
5≦x≦85であることがより好ましい。また、良好な
記録再生性能を得るためには結晶化速度を調整するため
の元素M1を添加することが好ましい。yは、1≦y≦
10であることがより好ましい。y≦10の場合には、
複数の相が現れることを抑制できるため、繰り返し記録
による特性劣化を抑制できる。
【0064】ここで、(Ge0.74Sn0.268Sb2Te
11、および(Sb0.7Te0.395Ge5、(Sb0.7Te
0.390Ag5In5の屈折率、消衰係数、および融点を
調べた結果を表1に示す。屈折率および消衰係数は、上
記材料からなる厚さ10nmの層を石英基板上に形成し
たサンプルを分光器で測定することによって得た。ま
た、融点は、示差走査熱量測定法(different
ial scanning calorimeter:
DSC法)によって測定した。
【0065】
【表1】
【0066】表1において、ncは、サンプルの層が結
晶相である場合の屈折率を示す。naは、サンプルの層
が非晶質相である場合の屈折率を示す。Δnは、Δn=
c−naで表され、層が結晶相である場合と層が非晶質
相である場合との屈折率の変化を示す。kcは、サンプ
ルの層が結晶相である場合の消衰係数を示す。kaは、
サンプルの層が非晶質相である場合の消衰係数を示す。
Δkは、Δk=kc−kaで表され、層が結晶相である場
合と層が非晶質相である場合との消衰係数の変化を示
す。
【0067】表1に示すように、サンプルの層が結晶相
であっても非晶質相であっても、(Ge0.74Sn0.26
8Sb2Te11の消衰係数は、(Sb0.7Te0.395Ge
5および(Sb0.7Te0.390Ag5In5の消衰係数よ
りも、約0.3小さかった。また、Sb70Te30共晶組
成近傍のSb−Te合金に元素M1を加えた組成である
(Sb0.7Te0.395Ge5、および(Sb0.7
0.390Ag5In5は、Ge−Sb−Te3元系組成
のGeをSnで置換した(Ge0.74Sn0.268Sb2
11と比較して、融点が約50℃低く、また、屈折率の
変化Δnの絶対値が大きかった。
【0068】以上の結果から、第1の記録層4の材料に
は、消衰係数が小さいために透過率を大きくできるGe
−Sb−Te3元系組成またはそれをベースとする組成
を用いることが好ましい。また、第2の記録層14の材
料には、融点が低いため記録感度を高くでき、且つ屈折
率変化Δnが大きいため反射率変化を大きくできる(S
b−Te)−M1系組成を用いることが好ましい。第1
の記録層4/第2の記録層14の具体的な組み合わせと
しては、たとえば、Ge6Sb2Te9/(Sb0 .7Te
0.395Ge5、Ge8Sb2Te11/(Sb0.7Te0.3
95Ge5、Ge8Sb2Te11/(Sb0.7Te0.390
5In5などが挙げられる。
【0069】第1の記録層4の厚さは、第1の情報層1
1の透過率を高くして、第2の情報層20の記録再生の
際に必要なレーザ光量を第2の情報層20に到達させる
ため、9nm以下であることが好ましく、5nm〜7n
mの範囲内であることがより好ましい。
【0070】第2の記録層14の厚さは、第2の情報層
20の記録感度を高くするため、6nm〜15nmの範
囲内であることが好ましい。第2の記録層14が厚い場
合における熱の面内方向への拡散による隣接領域への熱
的影響と、第2の記録層14が薄い場合における第2の
情報層20の反射率の低下とを考慮すると、第2の記録
層14の厚さは、8nm〜12nmの範囲内であること
がより好ましい。
【0071】第1の反射層8および第2の反射層18
は、第1の記録層4または第2の記録層14に吸収され
る光量を増大させるという光学的な機能を有する。ま
た、これらの反射層は、第1の記録層4または第2の記
録層14で生じた熱を速やかに拡散させ、記録層を非晶
質化しやすくするという熱的な機能も有する。さらに、
これらの反射層は、使用する環境から多層膜を保護する
という機能も有する。
【0072】第1の反射層8および第2の反射層18の
材料には、たとえばAl,Au,Ag,Cuといった熱
伝導率が高い単体金属を用いることができる。また、こ
れらの金属元素の1つまたは複数を主成分とし、耐湿性
の向上または熱伝導率の調整等のために1つまたは複数
の他の元素を添加した合金を用いることもできる。具体
的には、Al−Cr,Al−Ti,Au−Pd,Au−
Cr,Ag−Pd,Ag−Pd−Cu,Ag−Pd−T
i,Ag−Ru−Au,またはCu−Siといった合金
を用いることができる。これらの合金は、いずれも耐食
性に優れ且つ急冷条件を満足する優れた材料である。特
にAg合金は、熱伝導率が大きく、光の透過率も高いた
め、第1の反射層8の材料として好ましい。
【0073】第1の情報層11の透過率TcおよびTa
をできるだけ高くするため、第1の反射層8の厚さは、
5nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、8n
m〜12nmの範囲内であることがより好ましい。第1
の反射層8が5nmより薄い場合には、その熱拡散機能
が不十分となり、且つ第1の情報層11の反射率が低下
する。また、第1の反射層8が15nmより厚い場合に
は、第1の情報層11の透過率が不十分となる。一方、
第2の情報層20は、高い透過率を必要としない。その
ため、第2の反射層18の厚さは、30nm〜150n
mの範囲内であることが好ましく、70nm〜90nm
の範囲内であることがより好ましい。第2の反射層18
が30nmより薄い場合には、その熱拡散機能が不十分
となり、第2の記録層14が非晶質化しにくくなる。ま
た、第2の反射層18が150nmより厚い場合には、
その熱拡散機能が大きくなりすぎて第2の情報層20の
記録感度が低下する。
【0074】光学分離層21は、第1の情報層11のフ
ォーカス位置と第2の情報層20のフォーカス位置とを
区別するために設けられる。光学分離層21の材料とし
ては、光硬化性樹脂または遅効性樹脂を用いることがで
きる。光学分離層21の材料は、記録再生に用いられる
レーザビーム23の波長における光吸収が小さいことが
好ましい。光学分離層21の厚さは、対物レンズの開口
数NAとレーザビーム23の波長λによって決定される
焦点深度ΔZ以上であることが必要である。焦光点の強
度の基準を無収差の場合の80%と仮定した場合、ΔZ
はΔZ=λ/{2(NA)2}で近似できる。λ=40
0nm、NA=0.6のとき、ΔZ=0.556μmと
なり、±0.6μm以内は焦点深度内となる。そのた
め、この場合には、光学分離層21の厚さは1.2μm
以上であることが必要である。第1の情報層11と第2
の情報層20との間の距離は、対物レンズを用いてレー
ザビーム23を集光可能な範囲内にあることが必要であ
る。したがって、光学分離層21の厚さと第1の基板1
の厚さとの合計は、対物レンズが許容できる基板厚さの
公差内にすることが好ましい。このため、光学分離層2
1の厚さは、1.2μm〜50μmの範囲内であること
が好ましい。
【0075】実施形態1の情報記録媒体22は、実施形
態3で説明する方法によって製造できる。
【0076】(実施形態2)実施形態2では、本発明の
情報記録媒体について他の一例を説明する。実施形態2
の情報記録媒体26の一部断面図を図3に示す。情報記
録媒体26では、レーザビーム23の照射によって記録
再生が行われる。
【0077】図3を参照して、情報記録媒体26は、光
学分離層21と、光学分離層21を挟むように配置され
た第1の情報層25および第2の情報層20とを備え
る。
【0078】第1の情報層25は、レーザビーム23の
入射側から順に配置された第1の基板1、透明層24、
第1の下側保護層2、第1の下側界面層3、第1の記録
層4、第1の上側界面層5、第1の上側保護層6、第1
の界面層7、第1の反射層8、第1の最上界面層9、お
よび透過率調整層10を備える。
【0079】第2の情報層20は、レーザビーム23の
入射側から順に配置された第2の下側保護層12、第2
の下側界面層13、第2の記録層14、第2の上側界面
層15、第2の上側保護層16、第2の界面層17、第
2の反射層18、および第2の基板19を備える。
【0080】以下の実施形態4で説明するように、情報
記録媒体26を製造する場合には、まず、第2の基板1
9上に第2の反射層18〜第2の下側保護層12、光学
分離層21、透過率調整層10〜第1の下側保護層2と
いう順序で各層を積層する。そして、その後、透明層2
4を用いて第1の下側保護層2と第1の基板1とを貼り
合わせることによって情報記録媒体26を形成できる。
また、透明層24を形成せずに、樹脂を塗布して硬化さ
せることによって第1の基板1を形成してもよい。
【0081】光学分離層21および透明層24の材料と
しては、光硬化性樹脂または遅効性樹脂を用いて形成で
きる。この材料は、記録再生に用いるレーザビーム23
の波長における光吸収が小さいことが好ましい。光学分
離層21および透明層24の厚さは、実施形態1で説明
した理由により、それぞれ、1.2μm〜50μmの範
囲内であることが好ましい。
【0082】光学分離層21の表面のうち第1の情報層
25側の表面には、レーザビーム23を導く案内溝が形
成されていてもよい。実施形態1の情報記録媒体22と
同様に、レーザビーム23は第1の基板1側から入射す
る。そして、第2の情報層20においては、第1の情報
層25および光学分離層21を透過したレーザビーム2
3によって記録再生が行われる。
【0083】なお、第1の基板1、第1の下側保護層
2、第1の下側界面層3、第1の記録層4、第1の上側
界面層5、第1の上側保護層6、第1の界面層7、第1
の反射層8、第1の最上界面層9、透過率調整層10、
第2の下側保護層12、第2の下側界面層13、第2の
記録層14、第2の上側界面層15、第2の上側保護層
16、第2の界面層17、第2の反射層18、および第
2の基板19には、実施形態1で説明したものと同様の
ものを用いることができる。また、それらの形状および
機能についても、実施形態1で説明した形状および機能
と同様である。
【0084】(実施形態3)実施形態3では、本発明の
情報記録媒体22の製造方法について説明する。
【0085】実施形態3の製造方法は、第1の情報層1
1を形成する工程(工程(a))を含む。具体的には、
まず、レーザビーム23を導くための案内溝を形成した
第1の基板1(厚さがたとえば0.1mm)を用意す
る。次に、第1の基板1を成膜装置内に配置し、第1の
基板1上に第1の下側保護層2を成膜する。このとき、
第1の基板1に案内溝が形成されている場合には、案内
溝が形成されている側に第1の下側保護層2を成膜す
る。第1の下側保護層2は、Arガスと反応ガスとの混
合ガス雰囲気中で、第1の下側保護層2を構成する金属
からなる母材を反応性スパッタリングすることによって
形成できる。また、第1の下側保護層2は、Arガス雰
囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気
中で化合物からなる母材をスパッタリングすることによ
っても形成できる。
【0086】続いて、第1の下側保護層2上に第1の下
側界面層3を成膜する。第1の下側界面層3は、Arガ
スと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、第1の下側界面
層3を構成する金属からなる母材を反応性スパッタリン
グすることによって形成できる。また、第1の下側界面
層3は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガス
との混合ガス雰囲気中で化合物からなる母材をスパッタ
リングすることによっても形成できる。
【0087】続いて、第1の下側界面層3上に第1の記
録層4を成膜する。第1の記録層4は、その組成に応じ
て、Ge−Sb−Te合金からなる母材、Ge−Sb−
Te−M2合金からなる母材、またはGe−Sb−Te
−M3合金からなる母材を、一つの電源を用いて、スパ
ッタリングすることによって形成できる。すなわち、第
1の記録層4は、GeとSbとTeとを含む母材を用い
て形成できる。
【0088】スパッタリングの雰囲気ガス(スパッタリ
ングガス)には、Arガス、Krガス、Arガスと反応
ガス(酸素ガスおよび窒素ガスから選ばれる少なくとも
1つのガス)との混合ガス、またはKrガスと反応ガス
との混合ガスを用いることができる。また、第1の記録
層4は、Ge、Sb、Te、M2、またはM3の各々の
母材を複数の電源を用いて同時にスパッタリングするこ
とによって形成することもできる。また、第1の記録層
4は、Ge、Sb、Te、M2、またはM3のうちいず
れかの元素を組み合わせた2元系母材や3元系母材など
を、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすること
によって形成することもできる。これらの場合でも、A
rガス雰囲気中、Krガス雰囲気中、Arガスと反応ガ
スとの混合ガス雰囲気中、またはKrガスと反応ガスと
の混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって
形成する。
【0089】第1の記録層4の成膜レートは、0.1n
m/秒〜3nm/秒の範囲内であることが好ましい。実
施形態1で説明したように、形成される第1の記録層4
の厚さは、9nm以下(より好ましくは、7nm以下)
であることが好ましい。成膜レートは電源の投入パワー
で制御できる。成膜レートを下げすぎると、成膜時間が
長くなり、また、雰囲気中のガスが必要以上に記録層中
に混入してしまう。また、成膜レートを上げすぎると、
成膜時間を短くできるが、記録層の厚さを正確に制御す
ることが難しくなる。したがって、第1の記録層4の成
膜レートは、0.1nm/秒〜3nm/秒の範囲内であ
ることが好ましい。
【0090】続いて、第1の記録層4上に第1の上側界
面層5を成膜する。第1の上側界面層5は、第1の下側
界面層3と同様の方法で形成できる(以下の界面層につ
いても同様である)。これらの界面層を形成する際に用
いられる母材の組成は、界面層の組成およびスパッタリ
ングガスに応じて選択される(他の層を形成する工程に
おいても同様である)。すなわち、組成が同一の母材を
用いてこれらの界面層を形成する場合もあるし、組成が
異なる母材を用いてこれらの界面層を形成する場合もあ
る(他の層を形成する工程においても同様である)。
【0091】続いて、第1の上側界面層5上に第1の上
側保護層6を成膜する。第1の上側保護層6は、第1の
下側保護層2と同様の方法で形成できる(以下の保護層
についても同様である)。
【0092】続いて、第1の上側保護層6上に、第1の
界面層7と第1の反射層8とを順に成膜する。第1の反
射層8は、Arガス雰囲気中で、第1の反射層8を構成
する金属または合金からなる母材をスパッタリングする
ことによって形成できる。
【0093】続いて、第1の反射層8上に、第1の最上
界面層9と透過率調整層10とを順に成膜する。透過率
調整層10は、第1の下側保護層2と同様の方法で形成
できる。
【0094】このようにして、第1の情報層11を形成
する。なお、必要に応じて、透過率調整層10を成膜し
たのちに、第1の記録層4の全面を結晶化させる初期化
工程を行ってもよい。第1の記録層4の結晶化はレーザ
ビームを照射することによって行うことができる。
【0095】工程(a)の前後、または並行して、第2
の情報層20を形成する(工程(b))。具体的には、
まず、第2の基板19(厚さがたとえば1.1mm)を
用意する。そして、第2の基板19を成膜装置内に配置
し、第2の基板19上に第2の反射層18を成膜する。
このとき、第2の基板19に案内溝が形成されている場
合には、案内溝が形成されている側に第2の反射層18
を成膜する。第2の反射層18は、Arガス雰囲気中
で、第2の反射層18を構成する金属または合金からな
る母材を、スパッタリングすることによって形成でき
る。
【0096】続いて、第2の反射層18上に、第2の界
面層17、第2の上側保護層16、および第2の上側界
面層15を、この順序で成膜する。
【0097】続いて、第2の上側界面層15上に第2の
記録層14を成膜する。第2の記録層14は、Sb−T
e−M1合金からなる母材を、一つの電源を用いて、ス
パッタリングすることによって形成できる。すなわち、
第2の記録層14は、SbとTeと元素M1とを含む母
材を用いて形成できる。スパッタリングの雰囲気ガス
(スパッタリングガス)には、Arガス、Krガス、A
rガスと反応ガス(酸素ガスおよび窒素ガスから選ばれ
る少なくとも1つのガス)との混合ガス、またはKrガ
スと反応ガスとの混合ガスを用いることができる。ま
た、第2の記録層14は、Sb、TeおよびM1の各々
の母材を複数の電源を用いて同時にスパッタリングする
ことによって形成することもできる。また、第2の記録
層14は、Sb、Te、およびM1のうちいずれかの元
素を組み合わせた2元系母材などを、複数の電源を用い
て同時にスパッタリングすることによって形成すること
もできる。これらの場合でも、Arガス雰囲気中、Kr
ガス雰囲気中、Arガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気
中、またはKrガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で
スパッタリングを行う。
【0098】第2の記録層14の成膜レートは、0.3
nm/秒〜10nm/秒の範囲内であることが好まし
い。実施形態1で説明したように、第2の記録層14の
厚さは、6nm〜15nmの範囲内であることが好まし
い。第2の記録層14の成膜レートは、電源の投入パワ
ーで制御できる。成膜レートを下げすぎた場合には、成
膜時間が長くなることに加え、雰囲気中のガスが必要以
上に記録層中に混入してしまう。また、成膜レートを上
げすぎた場合には、成膜時間を短くできるが、層厚を正
確に制御することが難しくなる。したがって、第2の記
録層14の成膜レートは、0.3nm/秒〜10nm/
秒の範囲内であることが好ましい。
【0099】続いて、第2の記録層14上に、第2の下
側界面層13および第2の下側保護層12を、この順序
で成膜する。
【0100】このようにして第2の情報層20を形成で
きる。なお、第2の下側保護層12を形成したのちに、
必要に応じて、第2の記録層14の全面を結晶化させる
初期化工程を行ってもよい。第2の記録層14の結晶化
はレーザビームを照射することによって行うことができ
る。
【0101】最後に、第1の情報層11と第2の情報層
20とを光学分離層21を介して貼り合わせる。具体的
には、まず、光学分離層21の材料となる紫外線硬化性
樹脂を透過率調整層10上または第2の下側保護層12
上にスピンコートしたのち、第1の情報層11と第2の
情報層20とを密着させる。その後、第1の情報層11
側から紫外線を照射して光学分離層21を硬化させるこ
とによって、情報記録媒体22が得られる。なお、光学
分離層21の材料として遅効性樹脂を用いる場合には、
紫外線の照射は不要である。
【0102】(実施形態4)実施形態4では、情報記録
媒体26の製造方法について説明する。
【0103】実施形態4の製造方法では、まず、第2の
情報層20を形成する(工程(b))。具体的には、ま
ず、第2の基板19(厚さがたとえば1.1mm)を用
意し、成膜装置内に配置する。
【0104】続いて、第2の基板19上に第2の反射層
18を成膜する。このとき、第2の基板19に案内溝が
形成されている場合には、案内溝が形成された側に第2
の反射層19を成膜する。そして、第2の反射層18上
に、第2の界面層17、第2の上側保護層16、第2の
上側界面層15、第2の記録層14、第2の下側界面層
13、および第2の下側保護層12を順に成膜する。こ
れらの各層は、実施形態3で説明した方法で形成でき
る。
【0105】このようにして第2の情報層20を形成で
きる。なお、第2の下側保護層12を成膜したのちに、
必要に応じて、第2の記録層14の全面を結晶化させる
初期化工程を行ってもよい。
【0106】続いて、第2の情報層20の第2の下側保
護層12上に光学分離層21を形成する(工程
(c))。光学分離層21は、光硬化性樹脂または遅効
性樹脂を第2の下側保護層12上にスピンコートしたの
ち、樹脂を硬化させることによって形成できる。なお、
光学分離層21がレーザビームの入射側の表面に案内溝
を備える場合には、溝が形成された基板(型)を硬化前
の樹脂に密着させたのち、樹脂を硬化させ、その後、基
板(型)をはがすことによって案内溝を形成できる。
【0107】続いて、光学分離層21上に第1の情報層
25を形成する(工程(a))。具体的には、まず、光
学分離層21上に、透過率調整層10、第1の最上界面
層9、第1の反射層8、第1の界面層7、第1の上側保
護層6、第1の上側界面層5、第1の記録層4、第1の
下側界面層3、および第1の下側保護層2をこの順序で
成膜する。これらの各層は、実施形態3で説明した方法
で形成できる。第1の下側保護層2を成膜したのちに、
必要に応じて、第1の記録層4の全面を結晶化させる初
期化工程を行ってもよい。
【0108】最後に、透明層24によって第1の下側保
護層2と第1の基板1とを貼り合わせる。具体的には、
まず、透明層24の材料である紫外線硬化性樹脂を第1
の基板1上または第1の下側保護層2上にスピンコート
したのち、第1の基板1と第1の下側保護層2とを密着
させる。その後、第1の情報層25側から紫外線を照射
して樹脂を硬化させることによって、光学分離層21上
に配置された第1の情報層25を形成できる。なお、透
明層24が遅効性樹脂からなる場合には、紫外線の照射
は不要である。このようにして、情報記録媒体26を製
造できる。
【0109】(実施形態5)実施形態5では、実施形態
1および2で説明した本発明の情報記録媒体の記録再生
方法について説明する。
【0110】本発明の記録再生方法に用いられる記録再
生装置50の一部の構成を図4に模式的に示す。図4を
参照して、記録再生装置50は、情報記録媒体51を回
転させるためのスピンドルモータ27と、半導体レーザ
29を備える光学ヘッド30と、半導体レーザ29から
出射されるレーザビーム23を集光する対物レンズ28
とを備える。情報記録媒体51は、実施形態1または2
で説明した情報記録媒体であり、第1の記録層4と第2
の記録層14とを備える。対物レンズ28は、レーザビ
ーム23を、第1の記録層4または第2の記録層14上
に集光する。
【0111】対物レンズ28の開口数NAは、0.5以
上1.1以下(より好ましくは、0.6以上1.0以
下)であることが好ましい。レーザビーム23の波長
は、350nm以上500nm以下(より好ましくは、
390nm以上430nm以下)であることが好まし
い。情報を記録する際の情報記録媒体の線速度は、3m
/秒以上30m/秒以下(より好ましくは、4m/秒以
上15m/秒以下)であることが好ましい。
【0112】情報の記録は、レーザビーム23のパワー
を、高パワーのピークパワー(Pp(mW))と低パワ
ーのバイアスパワー(Pb(mW))とに変調させるこ
とによって行う。ピークパワーのレーザビーム23を照
射することによって非晶質相が形成され、その非晶質相
が記録マークとなる。記録マーク間では、バイアスパワ
ーのレーザビーム23が照射され、結晶相が形成され
る。
【0113】第1の情報層11または25に対して記録
を行う際には、レーザビーム23の焦点を第1の記録層
4に合わせて第1の記録層4に情報を記録する。再生
は、第1の記録層4から反射してきたレーザビーム23
を用いて行う。第2の情報層20に対して記録を行う際
には、レーザビーム23の焦点を第2の記録層14に合
わせ、第1の情報層11または25と光学分離層21と
を透過したレーザビーム23によって情報を記録する。
再生は、第2の記録層14によって反射され、光学分離
層21と第1の情報層11または25とを透過してきた
レーザビーム23を用いて行う。
【0114】なお、記録再生の対象となる情報記録媒体
の第1の基板1、光学分離層21および第2の基板19
のいずれかが溝(グルーブ)1bを備える場合には、情
報は、溝1bに記録しても、ランド1cに記録してもよ
い。また、溝1bおよびランド1cの両方に情報を記録
してもよい。第1の情報層11または25と第2の情報
層20とは、ともに同一の部分(溝、ランド、または、
溝およびランド)に情報を記録してもよいし、異なる部
分に情報を記録してもよい。
【0115】(実施形態6)実施形態6では、本発明の
情報記録媒体についてその他の一例を説明する。実施形
態6の情報記録媒体41の一部断面図を図5に示す。情
報記録媒体41では、電気エネルギーの印加、具体的に
は電流パルスの印加によって情報の記録が行われる。
【0116】図5を参照して、情報記録媒体41は、基
板31と、基板31上に順に積層された第1の電極32
と、第1の記録層33と、中間電極34と、第2の記録
層35と、第2の電極36とを備える。第1の記録層3
3は、第1の情報層を構成する。第2の記録層35は第
2の情報層を構成する。
【0117】基板31としては、ポリカーボネート等か
らなる樹脂からなる樹脂基板、ガラス基板、Al23
からなるセラミックからなるセラミック基板、Si基
板、または、さまざまな金属(たとえば銅)からなる金
属基板を用いることができる。なお、基板31が導電性
を有する場合には、基板31を第1の電極32として用
いてもよい。以下では、基板31として絶縁性の基板を
用いた場合について説明する。
【0118】情報記録媒体41は、基板31上に、第1
の電極32、第1の記録層33、中間電極34、第2の
記録層35、および第2の電極36を順に積層すること
によって製造できる。第1の記録層33の組成および形
成方法は、実施形態1および3で説明した第1の記録層
4の組成および形成方法と同様である。第2の記録層3
5の組成および形成方法は、実施形態1および3で説明
した第2の記録層14の組成および形成方法と同様であ
る。第1の記録層33および第2の記録層35は、電流
の印加により発生するジュール熱によって、結晶相と非
晶質相との間で可逆的な相変化を起こす。
【0119】第1の電極32、中間電極34、および第
2の電極36の材料としては、Al、Au、Ag、C
u、Pt、Ti、Wといった単体金属を用いることがで
きる。または、これらの金属元素のうちの1つまたは複
数を主成分とし、耐湿性の向上あるいは熱伝導率の調整
等のために1つまたは複数の他の元素を添加した合金材
料を用いることもできる。第1の電極32、中間電極3
4、および第2の電極36は、Arガス雰囲気中で、こ
れらの電極を構成する金属または合金からなる母材をス
パッタリングすることによって形成できる。
【0120】以下に、情報記録媒体41を用いた記録再
生方法について説明する。第1の電極32と第2の電極
36の間、および中間電極34と第2の電極36の間に
は、スイッチ39を介してパルス電源37が接続されて
いる。第1の電極32と第2の電極36との間には、ス
イッチ40を介して抵抗測定器38が接続されている。
【0121】情報記録媒体41では、第1の記録層33
と第2の記録層35とを、それぞれ非晶質相と結晶相と
の間で相変化させることによって情報が記録される。ま
た、情報の再生は、結晶相にある記録層の抵抗にくらべ
て非晶質相にある記録層の抵抗が高いことを利用して行
われる。具体的には、第1の記録層33および第2の記
録層35の抵抗値を測定することによって情報を再生す
る。
【0122】非晶質相(高抵抗状態)にある第1の記録
層33を結晶相(低抵抗状態)に変化させる場合には、
スイッチ39を端子39a側に閉じ(スイッチ40は
開)、第1の電極32と第2の電極36との間に電流パ
ルスを印加する。このとき、第1の記録層33の材料
は、第2の記録層35の材料に比べて結晶化温度が低く
結晶化時間が長いため、印加する電流パルスの振幅やパ
ルス幅を調整することによって、第1の記録層33のみ
を相変化させることができる。
【0123】また、非晶質相にある第2の記録層35を
結晶相に変化させる場合には、スイッチ39を端子39
b側に閉じ(スイッチ40は開)、中間電極34と第2
の電極36との間に電流パルスを印加する。記録層を、
結晶相から再度非晶質相に戻す場合には、結晶化時より
も相対的に高い振幅(電流値)の電流パルスをより短い
時間で印加する。
【0124】具体的には、第1の記録層33(または第
2の記録層35)を非晶質相から結晶相に変化させる際
には、振幅がIcでパルス幅がtcの電流パルスを第1
の記録層33(または第2の記録層35)に印加する。
また、第1の記録層33を結晶相から非晶質相に変化さ
せる際には、振幅がIa1でパルス幅がta1の電流パ
ルスを第1の記録層33に印加する。また、第2の記録
層35を結晶相から非晶質相に変化させる際には、振幅
がIa2でパルス幅がta2の電流パルスを第2の記録
層35に印加する。ここで、これらの振幅とパルス幅と
は、Ic<Ia2<Ia1の関係、およびta1≦tc
またはta2≦tcの関係を満たすことが好ましい。
【0125】第1の記録層33および第2の記録層35
の抵抗値は、スイッチ40を閉じて(スイッチ39は
開)、抵抗測定器38によって測定する。第1の記録層
33および第2の記録層35の抵抗値を測定することに
よって、記録された情報を読み出すことができる。
【0126】この情報記録媒体41をマトリクス的に多
数配置することによって、大容量の書換型メモリが得ら
れる。そのような情報記録媒体について、一例の構成を
図6に模式的に示す。
【0127】図6を参照して、情報記録媒体42は、ス
トライプ状に配置された複数のワード線(word l
ine)43と、ストライプ状に配置された複数のビッ
ト線(bit line)44と、複数のメモリセル4
5とを備える。ワード線43およびビット線44は、電
流パルスの印加および抵抗の測定のための電気配線であ
る。ワード線43とビット線44とは、直交するように
配置されている。メモリセル45は、ワード線43とビ
ット線44との交点(図6中のハッチングで示す)にお
いて、ワード線43とビット線44との間に挟まれるよ
うに配置されている。メモリセル45には、中間電極3
4を省略した情報記録媒体41を用いることができる。
【0128】情報記録媒体42では、ワード線43とビ
ット線44との間の電圧を変化させてメモリセルに電流
パルスを印加することによって、情報を記録することが
できる。
【0129】以下に、中間電極34を省略した場合の記
録再生方法について説明する。第1の記録層33を結晶
相に変化させる際に、振幅がIc1でパルス幅がtc1
の電流パルスを印加する。第2の記録層35を結晶相に
変化させる際に、振幅がIc2でパルス幅がtc2の電
流パルスを印加する。第1の記録層33を非晶質相に変
化させる際に、振幅がIa1でパルス幅がta1の電流
パルスを印加する。第2の記録層35を非晶質相に変化
させる際に振幅がIa2でパルス幅がta2の電流パル
スを印加する。
【0130】第1の記録層33の材料が非晶質相から結
晶相に変化する温度Tx1は、第2の記録層35の材料
が非晶質相から結晶相に変化する温度Tx2よりも低い
(Tx1<Tx2)。また、第1の記録層33の材料が
非晶質相から結晶相に変化する際に要する時間tx1
は、第2の記録層35の記録材料が非晶質相から結晶相
に変化する際に要する時間tx2よりも長い(tx2<
tx1)。したがって、振幅Ic1、パルス幅tc1、
振幅Ic2およびパルス幅tc2が、Ic1<Ic2且
つtc1>tc2を満たすようにすることによって、各
記録層を選択的に結晶化できる。また、振幅がIc2で
パルス幅がtc1の電流パルスを第1の記録層33およ
び第2の記録層35に印加することによって、両方の記
録層を同時に結晶化できる。
【0131】また、第1の記録層33の材料の融点は、
第2の記録層35の材料の融点よりも高い。したがっ
て、ta2を短くし、Ia1>Ia2とすることによっ
て、第2の記録層35のみを非晶質化することができ
る。一方、パルス幅ta1が短い場合、振幅がIa1で
パルス幅がta1の電流パルスを印加すると、2つの記
録層が共に非晶質相になる。この場合、第2の記録層3
5のみを結晶化することによって、第1の記録層33の
みを非晶質相にできる。
【0132】以下に、各記録層の状態の判別方法につい
て説明する。第1の記録層33が非晶質相である場合の
抵抗値Ra1、第1の記録層33が結晶相である場合の
抵抗値Rc1、第2の記録層35が非晶質相である場合
の抵抗値Ra2、および、第2の記録層35が結晶相で
ある場合の抵抗値Rc2とする。2つの記録層の抵抗値
の合計は、2つの記録層の状態に応じてRa1+Ra
2、Ra1+Rc2、Rc1+Ra2、またはRc1+
Rc2となる。ここで、Ra1とRa2とを異なる値と
し、Rc1およびRc2をそれらの値よりもずっと小さ
い値とすることによって、抵抗値から各記録層の状態を
容易に判別することができる。このように、記録層の4
つの異なる状態、すなわち2値の情報を抵抗値の一度の
測定で検出することができる。
【0133】
【実施例】以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細
に説明する。
【0134】(実施例1)実施例1では、図1の情報記
録媒体22の第1の情報層11の透過率を測定し、透過
率調整層10の効果について調べた。
【0135】まず、透過率測定用のサンプルを作製し
た。具体的には、第1の情報層11を作製し、光学分離
層21を介して第1の情報層11と第2の基板19とを
貼りあわせることによってサンプルを作製した。
【0136】一方、比較例として、透過率調整層10が
ない場合のサンプルも作製し、透過率を測定した。この
比較例のサンプルは以下のようにして製造した。まず、
第1の基板1として、ポリカーボネート基板(直径12
0mm、厚さ0.6mm)を用意した。そして、そのポ
リカーボネート基板上に、第1の下側保護層2としてZ
nS−SiO2層(SiO2:20mol%)、第1の下
側界面層3としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の記
録層4として(Ge0.74Sn0.268Sb2Te 11層(厚
さ:6nm)、第1の上側界面層5としてGeN層(厚
さ:5nm)、第1の上側保護層6としてZnS−Si
2層(SiO2:20mol%)、第1の界面層7とし
てGeN層(厚さ:5nm)、および、第1の反射層8
としてAg合金層(厚さ:10nm)を順次スパッタリ
ング法によって積層した。このようにして比較例のサン
プルを製造した。
【0137】透過率調整層10を備えるサンプルを形成
する場合には、第1の反射層8上に、さらに第1の最上
界面層9としてGeN層(厚さ:3nm)、および、透
過率調整層10としてZnS−SiO2層(厚さ:約3
0nm、SiO2:20mol%)を順次スパッタリン
グ法により積層した。そして、第2の基板19に、光学
分離層21の材料である紫外線硬化性樹脂をスピンコー
トした。そして、樹脂の上に第1の情報層11を密着さ
せ、紫外線を照射して樹脂を硬化させた。以上のように
して、透過率測定用サンプルを製造した。
【0138】ここで、第1の下側保護層2および第1の
上側保護層6の厚さは、マトリクス法(たとえば、久保
田 広著、「波動光学」、岩波書店、1971年、第3
章を参照)に基づく計算により、厳密に決定された。具
体的には、これらの厚さは、第1の記録層4が結晶相で
ある場合と非晶質相である場合とで波長405nmにお
ける反射光量の変化がより大きく、且つ第1の情報層1
1の透過率がより大きく、且つ第1の記録層4の光吸収
効率が大きくなるように決定された。また、透過率調整
層10の厚さは、第1の記録層4が結晶相である場合と
非晶質相である場合との反射光量の差および第1の記録
層4の光吸収効率を低下させることなく、第1の情報層
11の透過率がより大きくなるように厳密に決定され
た。
【0139】このようにして得られたサンプルについ
て、最初に、第1の記録層4が非晶質相である場合の透
過率Ta(%)を測定した。その後、第1の記録層4を
結晶化させる初期化工程を行い、第1の記録層4が結晶
相である場合の透過率Tc(%)を測定した。測定には
分光器を用い、波長405nmにおける透過率の値を調
べた。測定後、(Tc+Ta)/2の値を計算した。
【0140】透過率の測定結果を表2に示す。ここで、
表2中のサンプル2−1および2−3の第1の情報層1
1は、記録層が結晶相である場合の反射率が、記録層が
非晶質相である場合の反射率よりも高い。また、サンプ
ル2−1および2−3は、記録層が結晶相である場合の
反射率がほぼ同等である。サンプル2−2および2−4
の第1の情報層11は、記録層が非晶質相である場合の
反射率が、記録層が結晶相である場合の反射率よりも高
い。また、サンプル2−2と2−4とは、記録層が非晶
質相である場合の反射率がほぼ同等である。
【0141】
【表2】
【0142】表2に示すように、透過率調整層10を設
けたサンプル2−3および2−4の第1の情報層11で
は、透過率調整層10がないサンプル2−1および2−
2の第1の情報層11と比較して、反射率を下げること
なく(Tc+Ta)/2の値が2%〜6%程度向上し
た。従って、第1の情報層11は、透過率調整層10を
含むことが好ましい。
【0143】なお、図2の情報記録媒体26の第1の情
報層25についても同様の方法で透過率を測定した結
果、透過率調整層10が同様の効果を持つことが確認で
きた。
【0144】(実施例2)実施例2では、第1の情報層
11の特性と第1の記録層4の厚さとの関係を調べた。
具体的には、第1の記録層4の厚さを変化させて第1の
情報層11を作製し、光学分離層21を介して第1の情
報層11と第2の基板19とを貼り合わせたサンプルを
作製した。形成したサンプルについて、第1の情報層1
1の消去率、振幅対雑音比(Carrier to N
oise Ratio:CNR)、および透過率を測定
した。
【0145】以下にサンプルの製造方法を説明する。ま
ず、第1の基板1としてポリカーボネート基板(直径1
20mm、厚さ0.6mm)を準備した。そして、その
ポリカーボネート基板上に、第1の下側保護層2として
ZnS−SiO2層(厚さ:約40nm、SiO2:20
mol%)、第1の下側界面層3としてGeN層(厚
さ:5nm)、第1の記録層4として(Ge0.74Sn
0.268Sb2Te11層(厚さ:4nm〜10nm)、第
1の上側界面層5としてGeN層(厚さ:5nm)、第
1の上側保護層6としてZnS−SiO2層(厚さ:約
5nm、SiO2:20mol%)、第1の界面層7と
してGeN層(厚さ:5nm)、第1の反射層8として
Ag合金層(厚さ:10nm)、第1の最上界面層9と
してGeN層(厚さ:5nm)、および、透過率調整層
10としてZnS−SiO2層(厚さ:約30nm、S
iO2:20mol%)を、順次スパッタリング法によ
って積層した。その後、第1の記録層4の全面を結晶化
させる初期化工程を行った。このようにして、第1の情
報層11を形成した。
【0146】次に、光学分離層21の材料である紫外線
硬化性樹脂を第2の基板19上にスピンコートした。そ
してこの樹脂上に第1の情報層11を密着させ、紫外線
を照射することによって樹脂を硬化させた。以上のよう
にして、第1の記録層4の厚さが異なる複数のサンプル
を作製した。
【0147】作製したサンプルについて、実施例1と同
様の方法によって、第1の情報層11の透過率を測定し
た。また、作製したサンプルについて、図4に示した装
置を用いて、第1の情報層11の消去率およびCNRを
測定した。このとき、レーザビーム23の波長は405
nm、対物レンズ28のNAは0.65、測定時のサン
プルの線速度は8.6m/s、最短マーク長は0.29
4μmとした。また、情報はグルーブに記録した。
【0148】CNRは、(8−16)変調の3T信号を
10回記録したのち、スペクトラムアナライザーで測定
した。消去性能は、3T信号を10回記録して振幅を測
定し、その上から11T信号を1回重ね書きして再度3
T信号の振幅を測定し、3T信号の減衰率を計算するこ
とによって評価した。以下、この3T信号の減衰率を消
去率という。
【0149】第1の情報層11の消去率およびCNRの
測定結果、および(Tc+Ta)/2の計算結果を表3
に示す。
【0150】
【表3】
【0151】表3中、A〜Dは、(Tc+Ta)/2の
値、CNRおよび消去率の値を示す。具体的には、(T
c+Ta)/2の値について、D<30%、30%≦C
<40%、40%≦B<50%、50%≦Aである。C
NRについては、40(dB)≦C<50(dB)、5
0(dB)≦Bである。消去率については、20(d
B)≦C<30(dB)、30(dB)≦Bである。第
1の情報層11は、(Tc+Ta)/2の値が30%以
上であることが好ましく、40%以上であることがより
好ましい。また、CNRは、40dB以上であることが
好ましく、50dB以上であることがより好ましい。ま
た、消去率は、20dB以上であることが好ましく、3
0dB以上であることがより好ましい。
【0152】表3に示すように、サンプル3−1(第1
の記録層4の厚さ:4nm)では、透過率は十分である
がCNRおよび消去率が不十分であった。サンプル3−
4(第1の記録層4の厚さ:10nm)では、CNRお
よび消去率が高いが、透過率が30%未満であった。サ
ンプル3−2(第1の記録層4の厚さ:6nm)、およ
びサンプル3−3(第1の記録層4の厚さ:9nm)で
は、透過率が35%〜45%で、CNRが50dB、消
去率が30dBという良好な結果が得られた。以上の結
果から、第1の記録層4の膜厚は、9nm以下であるこ
とが好ましい。
【0153】なお、図2の情報記録媒体26の第1の情
報層25についても同様の方法で消去率、CNRおよび
透過率を測定した結果、同様の結果が得られた。
【0154】(実施例3)実施例3では、第1の情報層
11の特性と第1の記録層4の材料との関係を調べた。
具体的には、第1の記録層4の組成を変化させて第1の
情報層11を作製し、光学分離層21を介して第1の情
報層11と第2の基板19とを貼り合わせたサンプルを
作製した。形成したサンプルについて、第1の情報層1
1のCNR、消去率および透過率を測定した。
【0155】以下に、サンプルの製造方法について説明
する。まず、第1の基板1としてポリカーボネート基板
(直径:120mm、厚さ0.6mm)を準備した。そ
して、そのポリカーボネート基板上に、第1の下側保護
層2としてZnS−SiO2層(厚さ:約40nm、S
iO2:20mol%)、第1の下側界面層3としてG
eN層(厚さ:5nm)、第1の記録層4(厚さ:6n
m)、第1の上側界面層5としてGeN層(厚さ:5n
m)、第1の上側保護層6としてZnS−SiO2
(厚さ:約5nm、SiO2:20mol%)、第1の
界面層7としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の反射
層8としてAg合金層(厚さ:10nm)、第1の最上
界面層9としてGeN層(厚さ:5nm)、および、透
過率調整層10としてZnS−SiO2層(厚さ:約3
0nm、SiO2:20mol%)を、順次スパッタリ
ング法により積層した。ここで、第1の記録層4の材料
としては、(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11、(Sb
0.7Te0.395Ge5、または(Sb0.7Te0.390
5In5を用いた。透過率調整層10を形成したのち、
第1の記録層4の全面を結晶化させる初期化工程を行っ
た。このようにして、第1の記録層4の組成が異なる3
種類の第1の情報層11を作製した。
【0156】次に、光学分離層21の材料である硬化前
の紫外線硬化性樹脂を第2の基板19上にスピンコート
した。そしてこの樹脂上に第1の情報層11を密着さ
せ、紫外線を照射することによって樹脂を硬化させた。
以上のようにして、第1の記録層4の組成が異なる複数
のサンプルを作製した。
【0157】作製したサンプルについて、実施例1と同
様の方法で第1の情報層11の透過率を測定した。ま
た、これらのサンプルについて、実施例2と同様の方法
で第1の情報層11のCNRおよび消去率を測定した。
【0158】第1の情報層11のCNRおよび消去率、
ならびに(Tc+Ta)/2の計算結果を表4に示す。
【0159】
【表4】
【0160】表4中、B〜Dは、(Tc+Ta)/2の
値、CNRおよび消去率の値を示す。具体的には、(T
c+Ta)/2の値について、30%≦C<40%、4
0%≦B<50%である。CNRについては、D<40
(dB)、50(dB)≦Bである。消去率について
は、20(dB)≦C<30(dB)、30(dB)≦
Bである。
【0161】表4に示すように、サンプル4−2および
4−3は、透過率、CNR、および消去率がともに不十
分であった。一方、サンプル4−1では、透過率が45
%、CNRが50dB、消去率が30dBという良好な
結果が得られた。以上の結果から、上記サンプルの中で
は、組成式(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11で表され
る材料が、第1の記録層4の材料として好ましい。
【0162】なお、図2の情報記録媒体26の第1の情
報層25についても同様の方法で消去率、CNRおよび
透過率を測定した結果、同様の結果が得られた。
【0163】(実施例4)実施例4では、第2の情報層
20の特性と第2の記録層14の材料との関係を調べ
た。具体的には、第2の記録層14の材料を変化させて
第2の情報層20を形成し、光学分離層21を介して第
1の基板1と第2の情報層20とを貼りあわせたサンプ
ルを作製した。形成したサンプルについて、第2の情報
層20の記録感度、CNR、および反射率を測定した。
【0164】以下に、サンプルの製造方法について説明
する。まず、第2の基板19としてポリカーボネート基
板(直径120mm、厚さ0.6mm)を準備した。そ
して、そのポリカーボネート基板上に、第2の反射層1
8としてAl合金層(厚さ:80nm)、第2の上側保
護層16としてZnS−SiO2層(厚さ:約10n
m、SiO2:20mol%)、第2の上側界面層15
としてGeN層(厚さ:5nm)、第2の記録層14
(厚さ:10nm)、第2の下側界面層13としてGe
N層(厚さ:5nm)、および、第2の下側保護層12
としてZnS−SiO2層(厚さ:約60nm)を、順
次スパッタリング法によって積層した。ここで、第2の
記録層14としては、(Ge0.74Sn0.268Sb2Te
11、(Sb0. 7Te0.395Ge5、または(Sb0.7Te
0.390Ag5In5を用いた。
【0165】第2の下側保護層12および第2の上側保
護層16の厚さは、マトリクス法に基づく計算により、
波長405nmにおいて、第2の記録層14が結晶相の
ときの反射光量が第2の記録層14が非晶質相のときの
反射光量よりも大きく、且つ第2の記録層14が結晶相
のときと非晶質相のときとで反射光量の変化がより大き
く、且つ第2の記録層14の光吸収効率が大きくなるよ
うに厳密に決定した。
【0166】次に、第2の記録層14の全面を結晶化さ
せる初期化工程を行った。次に、光学分離層21の材料
である紫外線硬化性樹脂を第1の基板1上にスピンコー
トした。そして、この樹脂上に第2の情報層20を密着
させ、紫外線を照射して樹脂を硬化させた。以上のよう
にして、第2の記録層14の組成が異なる複数のサンプ
ルを形成した。
【0167】形成したサンプルについて、基板の鏡面部
における反射率を測定した。また、これらのサンプルに
ついて、図4の装置を用いて、第2の情報層20の記録
感度およびCNRを測定した。このとき、レーザビーム
23の波長は405nm、対物レンズ28のNAは0.
65、測定時のサンプルの線速度は8.6m/s、最短
マーク長は0.294μmとした。また、情報はグルー
ブに記録した。ここで、記録感度とは、振幅(dBm)
の飽和値から3dBmだけ低い振幅を与えるピークパワ
ーPp(mW)の1.3倍のピークパワーPp(mW)
で定義される値である(以下の実施例においても同様で
ある)。記録感度の値が小さいほど、より低いレーザパ
ワーで記録が可能であることを示す。なお、第1の情報
層11の透過率の平均値(Tc+Ta)/2が40%程
度であり、第1の基板1に入射する半導体レーザ29の
最大パワーは約12mW程度であるので、第2の情報層
20に到達するレーザパワーは約5mWである。このた
め、第2の情報層20の記録感度は5mW以下であるこ
とが好ましい。
【0168】第2の情報層20の記録感度、CNR、お
よび第2の記録層14が結晶相である場合の反射率の測
定結果を表5に示す。
【0169】
【表5】
【0170】表5中、B〜Dは、記録感度、CNR、お
よび反射率の値を示す。具体的には、記録感度につい
て、5(mW)<D、B≦5mWである。CNRについ
ては、50(dB)≦Bである。反射率については、1
0%≦C<20%、20%≦B<30%である。第2の
情報層20では、CNRが40dB以上であることが好
ましく、50dB以上であることがより好ましい。ま
た、反射率が10%以上であることが好ましく、反射率
が20%以上であることがより好ましい。
【0171】表5に示すように、サンプル5−1では、
5mW以下の記録レーザパワーでCNRが飽和せず記録
感度が十分でないこと、および反射率が不十分であるこ
とがわかった。また、低融点材料である(Sb0.7Te
0.395Ge5または(Sb0.7Te0.390Ag5In5
用いたサンプル5−2および5−3では、5mW以下の
記録感度と高いCNRとを両立できることがわかった。
【0172】なお、図3に示した情報記録媒体26の第
2の情報層20についても同様の方法で記録感度を測定
した結果、同様の結果が得られた。
【0173】(実施例5)実施例5では、実施例3およ
び実施例4の結果に基づき、図1の情報記録媒体22を
製造した。そして、製造した情報記録媒体22につい
て、第1の情報層11の透過率、CNRおよび消去率
と、第2の情報層20の記録感度、反射率およびCNR
とを測定した。
【0174】実施例5では、第1の記録層4および第2
の記録層14の組成は、(Ge0.74Sn0.268Sb2
11または(Sb0.7Te0.395Ge5とした。第1の
記録層4の厚さは6nm、第2の記録層14の厚さは1
0nmとした。
【0175】第1の情報層11は、各層を成膜した後
に、初期化工程を行った。第1の情報層11について、
初期化工程の前後で透過率を測定した。第2の情報層2
0も、成膜後に初期化工程を行った。その後、光学分離
層21の材料である硬化前の紫外線硬化性樹脂を第2の
下側保護層12の上にスピンコートし、第1の情報層1
1と第2の情報層20とを密着させた。そして、紫外線
を照射して樹脂を硬化させた。このようにして第1の情
報層11と第2の情報層20とを備えるサンプル(情報
記録媒体22)を製造した。なお、記録層および光学分
離層以外の構成および製造条件は、実施例3および4と
同様である。
【0176】このようにして得られたサンプルについ
て、第1の情報層11のCNRおよび消去率を測定し
た。また、第2の情報層20の記録感度、反射率および
CNRを測定した。これらの測定は、上記実施例で説明
した方法と同様の方法で行った。測定結果を表6に示
す。
【0177】
【表6】
【0178】表6中、B〜Dは、各測定の結果を示す。
(Tc+Ta)/2の値については、30%≦C<40
%、40%≦B<50%である。CNRについては、D
<40(dB)、40(dB)≦C<50(dB)、5
0(dB)≦Bである。消去率については、20(d
B)≦C<30(dB)、30(dB)≦Bである。記
録感度については、12(mW)<D、B≦12(m
W)である。表6の反射率とは第2の記録層14が結晶
相である場合の第2の情報層20の反射率であり、10
%≦C<20%、20%≦B<30%である。
【0179】サンプル6−1は、第1の記録層4および
第2の記録層14の組成が、ともに(Ge0.74
0.268Sb2Te11である。サンプル6−2は、第1
の記録層4の組成が(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11
であり、第2の記録層14の組成が(Sb0.7Te0.3
95Ge5である。サンプル6−3は、第1の記録層4お
よび第2の記録層14の組成が、ともに(Sb0.7Te
0.395Ge5である。
【0180】表6に示すように、サンプル6−1では、
実施例4の結果と同様に、第2の情報層20の記録感度
および反射率が十分でなかった。また、サンプル6−3
では、実施例3の結果と同様に、透過率、CNRおよび
消去率が不十分であり、且つ第1の情報層11の透過率
が十分でないために第2の情報層20の記録感度、反射
率およびCNRが低下した。これに対して、サンプル6
−2では、第1の情報層11および第2の情報層20が
ともに、CNRが50dB以上で、消去率が30dB以
上であるという良好な結果が得られた。
【0181】以上、情報をグルーブに記録した場合につ
いて説明した。さらに、ランドに情報を記録した場合
と、ランドとグルーブの両方に情報を記録した場合とに
ついて同様の測定を行ったところ、同様の結果が得られ
た。
【0182】(実施例6)実施例6では、実施形態4の
製造方法で図3の情報記録媒体26を製造した。そし
て、製造した情報記録媒体26について、第1の情報層
25のCNRおよび消去率、ならびに第2の情報層20
の消去率およびCNRを測定した。
【0183】以下に、サンプルの製造方法について説明
する。まず、第2の基板19としてポリカーボネート基
板(直径120mm、厚さ1.1mm)を準備した。そ
して、そのポリカーボネート基板上に、第2の反射層1
8としてAl合金層(厚さ:80nm)、第2の上側保
護層16としてZnS−SiO2層(厚さ:約10n
m、SiO2:20mol%)、第2の上側界面層15
としてGeN層(厚さ:5nm)、第2の記録層14と
して(Sb0.7Te0.395Ge5層(厚さ:10n
m)、第2の下側界面層13としてGeN層(厚さ:5
nm)、および、第2の下側保護層12としてZnS−
SiO2層(厚さ:約60nm、SiO2:20mol
%)を、順次スパッタリング法によって積層した。その
後、第2の記録層14の全面を結晶化させる初期化工程
を行った。
【0184】続いて、第2の下側保護層12上に紫外線
硬化性樹脂をスピンコートし、その上に案内溝を形成し
た基板をかぶせ、樹脂を硬化させた後に基板をはがし
た。この工程によって、レーザビーム23を導く案内溝
が第1の情報層25側に形成された光学分離層21を形
成した。
【0185】その後、光学分離層21の上に、透過率調
整層10としてZnS−SiO2層(厚さ:約30n
m、SiO2:20mol%)、第1の最上界面層9と
してGeN層(厚さ:3nm)、第1の反射層8として
Ag合金層(厚さ:10nm)、第1の界面層7として
GeN層(厚さ:5nm)、第1の上側保護層6として
ZnS−SiO2層(厚さ:約5nm、SiO2:20m
ol%)、第1の上側界面層5としてGeN層(厚さ:
5nm)、第1の記録層4として(Ge0.74Sn 0.26
8Sb2Te11層(厚さ:6nm)、第1の下側界面層3
としてGeN層(厚さ:5nm)、および、第1の下側
保護層2としてZnS−SiO2層(厚さ:約40n
m、SiO2:20mol%)を、順次スパッタリング
法により積層した。その後、第1の記録層4の全面を結
晶化させる初期化工程を行った。
【0186】次に、第1の基板1としてポリカーボネー
ト基板(直径120mm、厚さ0.1mm)を準備し
た。そして、透明層24の材料である紫外線硬化性樹脂
を、第1の基板1上にスピンコートした。その後、その
樹脂上に第1の下側保護層2を密着させ、紫外線を照射
して樹脂を硬化させた。以上のようにして、サンプル
(情報記録媒体26)を製造した。
【0187】製造したサンプルについて、図4の装置を
用いて、第1の情報層25および第2の情報層20のC
NRおよび消去率を測定した。このとき、レーザビーム
23の波長は405nm、対物レンズ28のNAは0.
85、測定時の情報記録媒体26の線速度は5.0m/
s、最短マーク長は0.206μmとした。情報は、グ
ルーブに記録した。その結果、第1の情報層25および
第2の情報層20は共に、CNRが50dB以上で消去
率が30dB以上という良好な結果が得られた。
【0188】(実施例7)第2の記録層14の材料に、
M1として、Ag、InおよびGeの代わりにSn、S
e、Bi、AuまたはMnを添加した場合について、実
施例4、5および6と同様の測定を行った。その結果、
実施例4、5および6と同様の効果が得られた。
【0189】(実施例8)実施例8では、図5の情報記
録媒体41を製造し、電気エネルギー(電流パルス)の
印加による記録層の相変化を確認した。
【0190】まず、基板31として、表面を窒化処理し
たSi基板を用意した。そして、そのSi基板上に、第
1の電極32としてAu層(面積:1.0mm×1.0
mm、厚さ:0.1μm)、第1の記録層33として
(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11層(面積:0.6m
m×0.6mm、厚さ:0.5μm)、中間電極34と
してAu層(面積:0.6mm×0.6mm、厚さ0.
1μm)、第2の記録層35として(Sb0.7Te0.3
95Ge5層(面積:0.2mm×0.2mm、厚さ:
0.5μm)、および、第2の電極36としてAu層
(面積:0.2mm×0.2mm、厚さ:0.1μm)
を、順次スパッタリング法により積層した。
【0191】その後、第1の電極32、中間電極34、
および第2の電極36にAuからなるリード線をボンデ
ィングした。第1の電極32と第2の電極36との間、
および中間電極34と第2の電極36との間には、パル
ス電源37をスイッチ39を介して接続した。第1の記
録層33および第2の記録層35の相変化による抵抗値
の変化は、第1の電極32と第2の電極36との間にス
イッチ40を介して接続した抵抗測定器38によって検
出した。
【0192】第1の記録層33および第2の記録層35
が共に高抵抗状態(非晶質相)のときに、第1の電極3
2と第2の電極36との間に振幅50mA、パルス幅1
00nsの電流パルスを印加したところ、2つの記録層
がともに、低抵抗状態(結晶相)に変化した。次に、第
1の電極32と第2の電極36との間に、振幅150m
A、パルス幅50nsの電流パルスを印加したところ、
第2の記録層35のみが低抵抗状態から高抵抗状態に変
化した。また、第1の記録層33および第2の記録層3
5がともに低抵抗状態のときに、第1の電極32と第2
の電極36との間に振幅200mA、パルス幅50ns
の電流パルスを印加したところ、2つの記録層が共に低
抵抗状態から高抵抗状態に変化した。さらに、第1の記
録層33および第2の記録層35がともに高抵抗状態の
ときに、中間電極34と第2の電極36の間に振幅50
mA、パルス幅100nsの電流パルスを印加したとこ
ろ、第2の記録層35のみが高抵抗状態から低抵抗状態
に変化した。
【0193】以上のように、図5の情報記録媒体41で
は、第1の記録層33および第2の記録層35のそれぞ
れを、電気的に結晶相と非晶質相との間で可逆的に変化
させることことができた。その結果、4つの状態、すな
わち、第1の記録層33と第2の記録層35が共に高抵
抗の状態、第1の記録層33が低抵抗で第2の記録層3
5が高抵抗の状態、第1の記録層33が高抵抗で第2の
記録層35が低抵抗の状態、第1の記録層33と第2の
記録層35が共に低抵抗の状態を実現できた。
【0194】以上、本発明の実施の形態について例を挙
げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定され
ず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用する
ことができる。
【0195】
【発明の効果】以上のように本発明の情報記録媒体およ
びその製造方法によれば、2層の記録層を有し且つ記録
・消去性能が良好な情報記録媒体が得られる。
【0196】また、本発明の記録再生方法によれば、高
密度の記録が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の情報記録媒体について一例を示す一
部断面図である。
【図2】 本発明の情報記録媒体について他の一例を示
す一部断面図である。
【図3】 本発明の情報記録媒体についてその他の一例
を示す一部断面図である。
【図4】 本発明の記録再生方法に用いられる記録再生
装置について構成の一部を模式的に示す図である。
【図5】 本発明の情報記録媒体のその他の一例、およ
びその記録再生装置の一例について構成を模式的に示す
図である。
【図6】 本発明の情報記録媒体のその他の一例につい
て構成の一部を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1,1a 第1の基板 1b 溝(グルーブ) 1c ランド 2 第1の下側保護層 3 第1の下側界面層 4,33 第1の記録層 5 第1の上側界面層 6 第1の上側保護層 7 第1の界面層 8 第1の反射層 9 第1の最上界面層 10 透過率調整層 11,11a,25 第1の情報層 12 第2の下側保護層 13 第2の下側界面層 14,35 第2の記録層 15 第2の上側界面層 16 第2の上側保護層 17 第2の界面層 18 第2の反射層 19,19a 第2の基板 20,20a 第2の情報層 21 光学分離層 22,22a,26,41,42 情報記録媒体 23 レーザビーム 24 透明層 27 スピンドルモータ 28 対物レンズ 29 半導体レーザ 30 光学ヘッド 31 基板 32 第1の電極 34 中間電極 36 第2の電極 37 パルス電源 38 抵抗測定器 39,40 スイッチ 43 ワード線 44 ビット線 45 メモリセル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 7/24 531 G11B 7/24 533H 533 533L 535C 535 535H 541D 541 7/26 531 7/26 531 9/04 9/04 G11C 13/00 A G11C 13/00 B41M 5/26 X (72)発明者 山田 昇 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 2H111 EA04 EA12 EA23 EA43 FA02 FA12 FA14 FB05 FB06 FB09 FB10 FB12 FB15 FB16 FB17 FB21 FB30 5D029 HA01 HA04 JA01 JB05 JB13 JB18 JB35 JB47 KB20 LB01 LB02 LB03 LB04 LB11 LC08 MA17 NA25 5D090 AA01 BB05 BB12 DD01 FF11 KK06 5D121 AA03 EE03 EE17 EE18 EE27

Claims (32)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の情報層と第2の情報層とを備える
    情報記録媒体であって、 前記第1の情報層が、レーザビームの照射によってまた
    は電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相
    と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第1の記録
    層を含み、 前記第2の情報層が、前記レーザビームの照射によって
    または前記電流の印加により発生するジュール熱によっ
    て結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第
    2の記録層を含み、 前記第1の記録層が第1の材料からなり、 前記第2の記録層が第2の材料からなり、 前記第1の材料と前記第2の材料とが異なることを特徴
    とする情報記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記第1の材料がGeとSbとTeとを
    含み、 前記第2の材料が、Ag、In、Ge、Sn、Se、B
    i、AuおよびMnから選ばれる少なくとも1つの元素
    M1とSbとTeとからなる請求項1に記載の情報記録
    媒体。
  3. 【請求項3】 前記第1の材料が、組成式 GeaSbbTe3+a (ただし、0<a≦10、1.5≦b≦4)で表される
    請求項2に記載の情報記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記第1の材料が、組成式 (Ge−M2)aSbbTe3+a (ただし、M2はSnおよびPbから選ばれる少なくと
    も1つの元素であり、0<a≦10、1.5≦b≦4)
    で表される請求項2に記載の情報記録媒体。
  5. 【請求項5】 前記第1の材料が、組成式 (GeaSbbTe3+a100-cM3c (ただし、M3はSi、Ti、V、Cr、Mn、Fe、
    Co、Ni、Cu、Se、Zr、Nb、Mo、Ru、R
    h、Pd、Ag、In、Sn、Ta、W、Os、Ir、
    Pt、AuおよびBiから選ばれる少なくとも1つの元
    素であり、0<a≦10、1.5≦b≦4、0<c≦2
    0)で表される請求項2に記載の情報記録媒体。
  6. 【請求項6】 前記第2の材料が、組成式 (SbxTe100-x100-yM1y (ただし、50≦x≦95、0<y≦20)で表される
    請求項2ないし5のいずれか1項に記載の情報記録媒
    体。
  7. 【請求項7】 前記第1および第2の記録層が、前記レ
    ーザビームの照射によって可逆的な相変化を起こす層で
    あり、 前記第1の情報層が、前記第2の情報層よりも前記レー
    ザビームの入射側に配置されており、 前記第2の材料の融点が、前記第1の材料の融点よりも
    低い請求項1に記載の情報記録媒体。
  8. 【請求項8】 前記第1および第2の記録層が、前記レ
    ーザビームの照射によって可逆的な相変化を起こす層で
    あり、 前記第1の情報層が、前記第2の情報層よりも前記レー
    ザビームの入射側に配置されている請求項2ないし6の
    いずれか1項に記載の情報記録媒体。
  9. 【請求項9】 前記第1の記録層の厚さが9nm以下で
    ある請求項7または8に記載の情報記録媒体。
  10. 【請求項10】 前記第2の記録層の厚さが6nm〜1
    5nmの範囲内である請求項7ないし9のいずれか1項
    に記載の情報記録媒体。
  11. 【請求項11】 前記第1の記録層が結晶相である場合
    の前記第1の情報層の透過率Tc(%)と、前記第1の
    記録層が非晶質相である場合の前記第1の情報層の透過
    率Ta(%)とが、波長が390nm以上430nm以
    下の前記レーザビームに対して、 40≦(Tc+Ta)/2 を満たす請求項7ないし10のいずれか1項に記載の情
    報記録媒体。
  12. 【請求項12】 前記第1の情報層と前記第2の情報層
    との間に配置された光学分離層をさらに備え、 前記第1の情報層が、第1の基板と第1の下側保護層と
    第1の上側保護層と第1の反射層とをさらに含み、 前記第2の情報層が、第2の下側保護層と第2の上側保
    護層と第2の反射層と第2の基板とをさらに含み、 前記第1の基板、前記第1の下側保護層、前記第1の記
    録層、前記第1の上側保護層、前記第1の反射層、前記
    光学分離層、前記第2の下側保護層、前記第2の記録
    層、前記第2の上側保護層、前記第2の反射層、および
    前記第2の基板が、前記レーザビームの入射側からこの
    順序で配置されている請求項7ないし11のいずれか1
    項に記載の情報記録媒体。
  13. 【請求項13】 前記第1の基板と前記第1の下側保護
    層との間に配置された透明層をさらに備える請求項12
    に記載の情報記録媒体。
  14. 【請求項14】 前記第1の下側保護層と前記第1の記
    録層との界面、および、前記第1の上側保護層と前記第
    1の記録層との界面から選ばれる少なくとも1つの界面
    に配置された界面層をさらに備える請求項12に記載の
    情報記録媒体。
  15. 【請求項15】 前記第2の下側保護層と前記第2の記
    録層との界面、および、前記第2の上側保護層と前記第
    2の記録層との界面から選ばれる少なくとも1つの界面
    に配置された界面層をさらに備える請求項12に記載の
    情報記録媒体。
  16. 【請求項16】 前記第1の上側保護層と前記第1の反
    射層との界面、および、前記第2の上側保護層と前記第
    2の反射層との界面から選ばれる少なくとも1つの界面
    に配置された界面層をさらに備える請求項12に記載の
    情報記録媒体。
  17. 【請求項17】 前記第1の反射層と前記光学分離層と
    の間に、前記第1の情報層の透過率を調整するための透
    過率調整層をさらに備える請求項12に記載の情報記録
    媒体。
  18. 【請求項18】 前記第1の反射層と前記透過率調整層
    との間に配置された界面層をさらに備える請求項17に
    記載の情報記録媒体。
  19. 【請求項19】 前記第1の基板の厚さが、10μm〜
    800μmの範囲内である請求項12に記載の情報記録
    媒体。
  20. 【請求項20】 前記第2の基板の厚さが、400μm
    〜1300μmの範囲内である請求項12に記載の情報
    記録媒体。
  21. 【請求項21】 第1および第2の電極とをさらに含
    み、 前記第1および第2の記録層が、前記電流の印加によっ
    て可逆的な相変化を起こす層であり、 前記第1の電極上に、前記第1の記録層、前記第2の記
    録層、および前記第2の電極がこの順序で積層されてい
    る請求項2ないし6のいずれか1項に記載の情報記録媒
    体。
  22. 【請求項22】 前記第1の記録層と前記第2の記録層
    との間に配置された中間電極をさらに備える請求項21
    に記載の情報記録媒体。
  23. 【請求項23】 第1の情報層と第2の情報層とを備え
    る情報記録媒体の製造方法であって、 (a)前記第1の情報層を形成する工程と、 (b)前記第2の情報層を形成する工程とを含み、 前記第1の情報層が、レーザビームの照射によってまた
    は電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相
    と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第1の記録
    層を含み、 前記第2の情報層が、前記レーザビームの照射によって
    または前記電流の印加により発生するジュール熱によっ
    て結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第
    2の記録層を含み、 前記(a)の工程が、GeとSbとTeとを含む母材を
    用いて前記第1の記録層を形成する工程を含み、 前記(b)の工程が、Ag、In、Ge、Sn、Se、
    Bi、AuおよびMnから選ばれる少なくとも1つの元
    素M1とSbとTeとを含む母材を用いて前記第2の記
    録層を形成する工程を含むことを特徴とする情報記録媒
    体の製造方法。
  24. 【請求項24】 前記第1および第2の記録層が、アル
    ゴンガスまたはクリプトンガスを含むスパッタリングガ
    スを用いたスパッタリング法によって形成される請求項
    23に記載の情報記録媒体の製造方法。
  25. 【請求項25】 前記スパッタリングガスが窒素ガスお
    よび酸素ガスから選ばれる少なくとも1つのガスをさら
    に含む請求項24に記載の情報記録媒体の製造方法。
  26. 【請求項26】 前記第1の記録層の厚さが9nm以下
    であり、 前記(a)の工程において、0.1nm/秒〜3nm/
    秒の範囲内の成膜レートで前記第1の記録層を形成する
    請求項24または25に記載の情報記録媒体の製造方
    法。
  27. 【請求項27】 前記第2の記録層の厚さが6nm〜1
    5nmの範囲内であり、 前記(b)の工程において、0.3nm/秒〜10nm
    /秒の範囲内の成膜レートで前記第2の記録層を形成す
    る請求項24ないし26のいずれか1項に記載の情報記
    録媒体の製造方法。
  28. 【請求項28】 前記(a)の工程の前に前記(b)の
    工程が行われ、前記(b)の工程ののちであって前記
    (a)の工程の前に、 (c)前記第2の情報層上に光学分離層を形成する工程
    をさらに含み、 前記(a)の工程において、前記光学分離層上に前記第
    1の情報層を形成する請求項23に記載の情報記録媒体
    の製造方法。
  29. 【請求項29】 情報記録媒体の記録再生方法であっ
    て、 前記情報記録媒体が請求項1に記載の情報記録媒体であ
    り、 前記情報記録媒体の第1の情報層に対して、前記第1の
    情報層側から入射したレーザビームによって情報の記録
    再生を行い、 前記情報記録媒体の第2の情報層に対して、前記第1の
    情報層を透過した前記レーザビームによって情報の記録
    再生を行い、 前記レーザビームの波長が390nm以上430nm以
    下であることを特徴とする情報記録媒体の記録再生方
    法。
  30. 【請求項30】 情報を記録再生する際の前記情報記録
    媒体の線速度が3m/秒以上30m/秒以下である請求
    項29に記載の情報記録媒体の記録再生方法。
  31. 【請求項31】 前記レーザビームが対物レンズによっ
    て集光されたレーザビームであり、 前記対物レンズの開口数NAが0.5以上1.1以下で
    ある請求項29に記載の情報記録媒体の記録再生方法。
  32. 【請求項32】 情報記録媒体の記録再生方法であっ
    て、 前記情報記録媒体が請求項1に記載の情報記録媒体であ
    り、 前記情報記録媒体の前記第1および第2の記録層が電流
    の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶
    質相との間で可逆的な相変化を起こす層であり、 前記第1または第2の記録層を非晶質相から結晶相に変
    化させる際に前記第1または第2の記録層に印加する電
    流パルスの振幅Icおよびパルス幅tcと、前記第1の
    記録層を結晶相から非晶質相に変化させる際に前記第1
    の記録層に印加する電流パルスの振幅Ia1およびパル
    ス幅ta1と、前記第2の記録層を結晶相から非晶質相
    に変化させる際に前記第2の記録層に印加する電流パル
    スの振幅Ia2およびパルス幅ta2とが、Ic<Ia
    2<Ia1の関係、およびta1≦tcまたはta2≦
    tcの関係を満たすことを特徴とする情報記録媒体の記
    録再生方法。
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