JP2002144081A - Mag溶接用鋼ワイヤおよびそれを用いたmag溶接方法 - Google Patents
Mag溶接用鋼ワイヤおよびそれを用いたmag溶接方法Info
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Abstract
ける溶落ち欠陥を防止でき、さらにギャップの大きい継
手においても健全な溶接が可能な、耐ギャップ溶接性お
よびアーク安定性に優れ、スパッタの発生が少ない正極
性MAG溶接用鋼ワイヤ、およびそれを用いた正極性M
AG溶接方法を提供する。 【解決手段】 Cを0.20質量%以下,Siを0.25〜2.5 質
量%,Mnを0.45〜3.5 質量%,希土類元素を 0.005〜0.
040 質量%,Pを0.05質量%以下,Sを0.05質量%以下
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる正極性
MAG溶接用鋼ワイヤを製造する。
Description
用鋼ワイヤおよびそれを用いた溶接方法に関し、特にワ
イヤを正極(マイナス側)として厚さ 0.2〜4.5mm の鋼
板を1パスで溶接する際に使用する正極性MAG溶接用
鋼ワイヤおよびそれを用いた正極性MAG溶接方法に関
する。
ス(5体積%以上)またはO2 ガス(1〜10体積%)と
の混合ガスを使用するMAG溶接法は、もっとも普及し
た溶接法であり、高能率な溶接法であることから、鉄鋼
材料の溶接に広く利用されている。特に自動溶接の急速
な普及により、造船,建築,橋梁,自動車,建築機械等
の分野で広く使用されるようになっている。造船,建
築,橋梁を中心とする分野では、厚鋼板の高電流多層溶
接に使用され、一方、自動車,建築機械を中心とする分
野では、薄鋼板の隅肉溶接に使用されることが多い。
軽量化を目的として、高強度薄鋼板の使用が増加してい
る。被溶接材である鋼板の薄肉化は、被溶接材の厚さに
対するギャップ率の増加を意味し、そのため溶落ちによ
る欠陥率の増加を招くという問題がある。このようなこ
とから、薄鋼板への熱影響が小さく、耐ギャップ溶接性
に優れた新しい溶接方法が要望されている。
ワイヤをプラス側(逆極)とする逆極性の直流溶接法
が、低電流域から高電流域までアークが安定しているの
で、広く実用化されている。逆極性の直流溶接法では、
マイナス側である鋼板側への熱影響が大きく、鋼板の溶
込みが深いという特徴があり、厚鋼板の多層溶接に好適
である。しかし薄鋼板の隅肉溶接に逆極性の直流溶接法
を適用すると、鋼板側への熱影響が大きく鋼板の溶込み
が深いので、溶落ちによる溶接欠陥が発生しやすいとい
う問題がある。薄鋼板の隅肉溶接では、溶落ちによる溶
接欠陥の防止,溶接速度の向上が重要視されており、逆
極性直流溶接法を薄鋼板の隅肉溶接に適用するのは問題
が残されていた。
ス側とする正極性の直流溶接法では、鋼板への熱影響が
少なく、鋼板の溶込みが浅くなり、ワイヤの溶融速度が
速く溶着量が多いという特徴がある。したがって薄鋼板
の溶接に適しており、特にギャップを生じた場合の溶接
に適していると考えられる。しかし正極性の直流溶接法
では、ワイヤ先端に懸垂する溶滴が粗大で、アークが不
安定になりやすいという問題がある。さらに高速溶接に
おいては、溶接ビードのハンピングやビード形状の不揃
い等の問題もあり、正極性の直流溶接法は実際に使用さ
れることはなかった。
られた分野で幾つか提案されている。たとえば特開昭58
-167078 号公報,特開平5-138355号公報には、正極性直
流溶接と逆極性直流溶接では溶込み深さと溶融速度が大
きく異なることから、正極性直流溶接と逆極性直流溶接
の時間割合を制御して溶接する消耗電極式ガスシールド
アーク溶接方法が提案されている。しかしながらこれら
の溶接方法では、アークの安定性が不十分であり、また
ワイヤ組成の検討はなされていない。
直流溶接法は、溶込みが浅く、溶着量が多いので、薄鋼
板の溶接に適しており、特にギャップの大きい継手の溶
接に適していると考えられている。しかし従来の溶接用
鋼ワイヤでは、ワイヤ先端に粗大な溶滴が不安定に懸垂
するため、アークが不安定となり、スパッタの発生量が
多いという問題があった。
し、正極性直流溶接に好適で、薄鋼板溶接における溶落
ち欠陥を防止でき、さらにギャップの大きい継手におい
ても健全な溶接が可能な、耐ギャップ溶接性およびアー
ク安定性に優れ、スパッタの発生が少ない正極性MAG
溶接用鋼ワイヤ、およびそれを用いた正極性MAG溶接
方法を提供することを目的とする。
流溶接におけるアークの安定性,耐ギャップ溶接性およ
びビード形状に対するワイヤ組成の影響を鋭意検討し
た。その結果、 希土類元素(以下、REMという)を添加することに
よって、低電圧領域でのアーク切れを防止し、規則正し
い短絡移行が可能であること、 脱酸元素であるSi,Mn,Ti,Zr,Al,Crの含有量を所
定の範囲に維持することによって、安定した耐ギャップ
溶接性が得られることを知見した。この発明は、これら
の知見に基づいて構成されたものである。
で用いられる溶接用鋼ワイヤであって、Cを0.20質量%
以下、Siを0.25〜2.5 質量%、Mnを0.45〜3.5 質量%、
REMを 0.005〜0.040 質量%、Pを0.05質量%以下、S
を0.05質量%以下含有し、残部Feおよび不可避的不純物
からなる組成を有する正極性MAG溶接用鋼ワイヤであ
る。
においては、第1の好適態様として、前記組成を有し、
かつ下記の (1)式で算出されるD1 値が 1.2〜2.1 の範
囲内を満足することが好ましい。 D1 =(〔Si〕/2)+(〔Mn〕/3) ・・・ (1) 〔Si〕:Si含有量(質量%) 〔Mn〕:Mn含有量(質量%) また第2の好適態様として、前記組成に加えて、Ti:0.
30質量%以下、Zr:0.30質量%以下、Al:0.50質量%以
下およびCr:3.00質量%以下のうちの1種または2種以
上を含有することが好ましい。
し、かつ下記の (2)式で算出されるD2 値が 1.2〜2.1
の範囲内を満足することが好ましい。 D2 =(〔Si〕/2)+(〔Mn〕/3)+(〔Ti〕+〔Zr〕+〔Al〕) +(〔Cr〕/10) ・・・ (2) 〔Si〕:Si含有量(質量%) 〔Mn〕:Mn含有量(質量%) 〔Ti〕:Ti含有量(質量%) 〔Zr〕:Zr含有量(質量%) 〔Al〕:Al含有量(質量%) 〔Cr〕:Cr含有量(質量%) また第4の好適態様として、前記組成に加えて、Kを0.
0001〜0.0150質量%含有することが好ましい。
溶接用鋼ワイヤが、表層に平均厚さ0.6μm以上のCuめ
っきを有することが好ましい。また本発明は、前記した
正極性MAG溶接用鋼ワイヤを用いて厚さ 0.2〜4.5mm
の鋼板を溶接する正極性MAG溶接方法において、ギャ
ップの幅を鋼板の厚さの1/2以上として1パス溶接を
行なう正極性MAG溶接方法である。
G溶接用鋼ワイヤの組成の限定理由について説明する。 C:0.20質量%以下 Cは、溶接金属の強度を確保するために重要な元素であ
るが、溶鋼の粘性を低下させて流動性を向上する作用を
有し、多量に含有すると溶滴および溶融プールの挙動が
不安定となり、溶接金属の靱性が低下する。したがっ
て、Cは0.20質量%以下に限定する必要がある。なお、
好ましくは0.01〜0.10質量%の範囲内である。
欠な元素である。さらに正極性直流溶接時にはアークの
広がりを抑え、短絡移行回数を増大させる作用を有す
る。また薄鋼板溶接でギャップの大きい継手溶接におい
ては、アーク熱による溶落ちを抑制する働きもあり、耐
ギャップ溶接性を向上させる。このような効果は、Si含
有量が0.25質量%以上で認められる。また、より一層の
耐ギャップ溶接性の向上とビード形状の改善のために
は、1.10質量%以上含有するのが好ましい。一方、Si含
有量が 2.5質量%を超えると、溶接金属の靱性が低下す
る。したがって、Siは0.25〜2.5 質量%の範囲内を満足
する必要がある。なお、好ましくは1.10〜2.5 質量%の
範囲内である。
めには不可欠な元素である。Mn含有量が0.45質量%未満
では、溶融金属の脱酸が不足し、溶融金属にブローホー
ル欠陥が発生する。一方、3.5 質量%を超えると、溶接
金属の靱性が低下する。したがって、Mnは0.45〜3.5 質
量%の範囲内を満足する必要がある。
改善を目的として添加する。正極性MAG溶接において
は、低電圧での短絡移行を安定化させる効果も有する。
REM 含有量が 0.005質量%未満ではこれらの効果は発揮
されず、 0.040質量%を超えるとアークが不安定にな
り、正極性MAG溶接用鋼ワイヤの溶融速度の低下およ
び薄板の溶落ちの危険性が増大する。したがって、 REM
は 0.005〜0.040 質量%の範囲内を満足する必要があ
る。なお、好ましくは 0.010〜0.040質量%の範囲内で
ある。
させて、溶融効率を向上させるとともに、正極性MAG
溶接においてアークを安定させる効果を有する。しかし
0.050質量%を超えて含有すると、溶接金属の粘性を低
下させ、アークが不安定となり小粒のスパッタが増加す
る。したがって、Pは 0.050質量%以下とした。なお、
このような効果はP含有量が 0.003質量%以上で顕著に
現れる。よって、好ましくは 0.003〜0.050 質量%の範
囲内である。
た溶滴の離脱を円滑にする元素であり、ビードを平滑に
して上板の溶落ちを抑制する効果を有する。またSは、
正極性MAG溶接において、アークを安定させる効果も
有する。しかしS含有量が 0.050質量%を超えると、小
粒のスパッタが増加するとともに、溶接金属の靱性が低
下する。したがって、Sは 0.050質量%以下とした。な
お、アークを安定させる効果はS含有量が 0.015質量%
以上で顕著に現れ、溶接金属の靱性低下を防止する効果
はS含有量が 0.030質量%以下で顕著に現れる。よっ
て、好ましくは 0.015〜0.030 質量%の範囲内である。
1.2未満では、ビードが凸状の不揃いな形状となり、ワ
イヤ位置のズレによる溶接欠陥が発生する。一方、D1
値が 2.1を超えると、アークが不安定となり大粒のスパ
ッタの発生量が増大する。したがってD1 値は 1.2〜2.
1 の範囲内を満足することが好ましい。
要に応じて、これらの元素のうちの1種または2種以上
を含有する。その場合の各元素の含有量は、それぞれ下
記の通りである。 Ti:0.30質量%以下 Tiは、脱酸作用を有し、溶接金属の強度を増加させる元
素である。しかしTi含有量が0.30質量%を超えると、液
滴が粗大となり大粒のスパッタが発生する。したがっ
て、Tiは0.30質量%以下であることが好ましい。なお、
溶接金属の強度を向上する効果は、Ti含有量が0.01質量
%以上で顕著に現れる。よって、より好ましくは0.01〜
0.30質量%の範囲内である。さらに、より一層好ましく
は、0.05〜0.25質量%の範囲内である。
の安定性を向上させる元素である。しかし、Zrの含有量
が0.30質量%を超えると、靱性が低下する。したがっ
て、Zrの含有量は、0.30質量%以下であることが好まし
い。Al:0.50質量%以下Alは、溶接金属の強度および靱
性を向上し、かつアークの安定性を向上させる元素であ
る。しかし、Alの含有量が0.50質量%を超えると、靱性
が低下する。したがって、Alの含有量は、0.50質量%以
下であることが好ましい。
せる元素である。しかし過剰な含有は靱性の低下を招
く。したがって、Crの含有量は、3.00質量%以下である
のが好ましい。なお、より好ましくはCrは0.15〜0.70質
量%の範囲内である。
が、D2 値が 1.2未満では、ビードが凸状の不揃いな形
状となり、ワイヤ位置のズレによる溶接欠陥が発生す
る。一方、D2 値が 2.1を超えると、アークが不安定と
なり大粒のスパッタの発生量が増大する。したがってD
2 値は 1.2〜2.1 の範囲内を満足することが好ましい。
り、必要に応じて1種または2種以上含有される元素で
ある。これらの元素のうち、含有しない元素について
は、含有量を0としてD2 値を算出する。したがって、
Ti,Zr,AlおよびCrを含有しない場合は〔Ti〕=〔Zr〕
=〔Al〕=〔Cr〕=0であるから、D2 =D1 である。 K:0.0001〜0.0150質量% Kは、アークを広げてソフト化するとともに、正極性M
AG溶接において溶滴を微細化して液滴の移行を円滑に
する効果を有する。このような効果は、K含有量が0.00
01質量%以上で認められる。一方、K含有量が0.0150質
量%を超えると、アークが長くなるので、ワイヤ先端に
懸垂した液滴が不安定となりスパッタの発生が増加す
る。したがって、Kは0.0001〜0.0150質量%の範囲内を
満足することが好ましい。なお、より好ましくは0.0003
〜0.0030質量%の範囲内である。また、Kは沸点が 760
℃と低く、素材となる鋼の溶製段階での歩留りが著しく
低いので、Kは鋼の溶製段階で添加するよりも、ワイヤ
の製造時にワイヤ表面にカリウム塩溶液を塗布して焼鈍
を行なうことによって、ワイヤ内部にKを安定して含有
させるのが好ましい。
び不可避的不純物である。不可避的不純物としては、O
を 0.020質量%以下,Nを 0.010質量%以下が許容でき
る。なお、Oは、鋼の溶製中あるいはワイヤの製造中に
不可避的に含有される元素であるが、溶滴の移行形態を
微細化する効果があり、0.0020質量%以上,0.0080質量
%以下が好ましく、より好ましくは0.0020質量%以上,
0.0080質量%未満に調整するのが望ましい。
ヤを用いて鋼板を溶接する正極性MAG溶接方法につい
て説明する。本発明の正極性MAG溶接用鋼ワイヤを用
いて溶接する鋼板の厚さは、 0.2〜4.5mm の範囲内とす
る。その理由は、鋼板の厚さが 0.2mm未満では溶接部の
溶落ちによる溶接欠陥が発生し、 4.5mmを超えると溶接
速度を低下させなければならないからである。
幅は、鋼板の厚さの1/2以上とする。たとえば図2に
示すようなT継手やフレア継手を溶接する場合のギャッ
プの幅Sは、鋼板の厚さtの1/2以上、すなわちS≧
0.5tとする。その理由は、ギャップの幅Sが鋼板の厚
さtの1/2未満、すなわちS< 0.5tであれば、通常
の逆極性溶接法で健全な溶接が可能であり、正極性MA
G溶接方法を選定する必要がないからである。
ないが、鋼板の厚さの 2.5倍を超えると健全な溶接部を
得るのが困難になる。したがってS≦ 2.5tとするのが
好ましい。また本発明の正極性MAG溶接方法で2パス
以上の溶接を行なうと、溶込みが浅いためにコールドラ
ップやスラグ巻込みによる溶接欠陥を生じやすく、健全
な溶接部を得るのが困難である。したがって本発明の正
極性MAG溶接方法においては、1パスで溶接を行なう
必要がある。
示したが、他の形状の継手を溶接する場合においてもS
≧ 0.5tとして、1パスで溶接を行なう。次に、本発明
の正極性MAG溶接用鋼ワイヤの製造方法について説明
する。上記した組成の溶鋼を、転炉あるいは電気炉等の
従来から知られている方法で溶製した後、連続鋳造等に
よって鋼素材(たとえばビレット)を製造する。鋼素材
を加熱し、次いで熱間圧延、あるいはさらに乾式の冷間
圧延(伸線加工)して鋼素線とする。熱間圧延は、所定
の寸法形状の鋼素線が得られる条件で行なえば良く、特
に限定されない。
伸線加工の各工程を順次施されて、所定の線径の正極性
MAG溶接用鋼ワイヤとなる。本発明の正極性MAG溶
接用鋼ワイヤを製造する際には、焼鈍前の鋼ワイヤ表面
にカリウム塩溶液を塗布した後、焼鈍を行なうのが好ま
しい。カリウム塩溶液として、クエン酸3カリウム水溶
液,炭酸カリウム水溶液,水酸化カリウム水溶液等を用
いる。ワイヤ表面に塗布するカリウム塩濃度は、K量に
換算した値で 0.5〜3.0 体積%とするのが好ましい。
ヤを焼鈍することによって、焼鈍中に生成する内部酸化
層内にKが安定して保持される。Kはスパッタを低下さ
せる効果を有するが、鋼ワイヤ表面にK塩を保持(すな
わち塗布)させると、熱的に不安定であることから、ス
パッタを低下させる効果が減少する。したがって、あら
かじめ鋼ワイヤ表面にカリウム塩溶液を塗布した後、焼
鈍を行なうのが好ましい。
び鋼ワイヤの内部酸化層内にKを保持させることを目的
として行なうのであり、 650〜850 ℃の温度範囲で、か
つ水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で行なうのが好まし
い。焼鈍温度が 650℃未満では内部酸化の反応の進行が
遅く、また 850℃を超えると内部酸化の反応の進行が速
すぎて、内部酸化の調整が困難となる。
から、露点0℃以下,酸素濃度200ppm以下とするのが好
ましい。表面にカリウム塩溶液を塗布した鋼ワイヤを、
このような雰囲気下で焼鈍することによって、鋼ワイヤ
の表面から酸化が進行し、図1に示すように表層部が内
部酸化され、この内部酸化層にKが確実に保持される。
焼鈍の条件(すなわち温度,時間,雰囲気等)は、鋼ワ
イヤ中のK含有量が0.0003〜0.0030質量%,O含有量が
0.0020〜0.0080質量%となるように、線径およびカリウ
ム塩濃度,カリウム塩溶液の塗布量等と関連して決定す
るのが好ましい。
面にCuめっきを施す。Cuめっきの平均厚さは 0.6μm以
上とするのが好ましい。正極性直流溶接においては、逆
極性の溶接に比べて、給電不良に起因してアークが不安
定になりやすい。しかしCuめっきの平均厚さを 0.6μm
以上とすることによって、給電不良に起因するアークの
不安定化を防止できる。このようにCuめっきを厚目付と
することによって、アークの不安定化を防止するのみな
らず、給電チップの損耗も低減できる。
有されるCuおよびCuめっきに含有されるCuが合計 3.0質
量%を超えると、溶接金属の靱性が著しく低下する。し
たがって、Cuめっきの厚さは 0.8μm以上で、かつ正極
性MAG溶接用鋼ワイヤに含有されるCuとの合計が 3.0
質量%以下となるように、Cuめっきの厚さを調整するこ
とが、より一層好ましい。
図るために、正極性MAG溶接用鋼ワイヤの平坦度を1.
01未満とすることが肝要である。正極性MAG溶接用鋼
ワイヤの伸線加工においてダイス管理を厳格に行なうこ
とによって、正極性MAG溶接用鋼ワイヤの平坦度を1.
01未満とすることが可能である。その結果、溶接中の給
電が安定し、低スパッタ化が達成できる。なお、平坦度
は下記の (3)式で算出される値である。
ヤの本体表面の実表面積(mm2 ) AR :測定対象領域における正極性MAG溶接用鋼ワイ
ヤの本体表面のみかけ上の面積(mm2 ) さらに本発明では、溶接中の給電の安定化を図るため
に、正極性MAG溶接用鋼ワイヤの表面に付着した不純
物を、正極性MAG溶接用鋼ワイヤ10kgあたり0.01g以
下にするのが好ましい。また正極性MAG溶接用鋼ワイ
ヤの送給性を確保するために表面に塗布される潤滑油
は、正極性MAG溶接用鋼ワイヤ10kgあたり0.35〜1.7
gの範囲を満足するのが好ましい。正極性MAG溶接用
鋼ワイヤの送給性は、ロボット溶接を行なう場合に重要
である。
延して直径 5.5〜7.0mm の線材とし、次いで冷間で伸線
加工を行なって直径 2.0〜2.8mm の鋼素線とした。この
鋼素線に2〜30質量%のクエン酸3カリウム水溶液を塗
布した。クエン酸3カリウム水溶液の塗布量は、鋼素線
1kgあたり30〜50gであった。次いで、鋼素線を露点:
−2℃以下,O2 : 200体積ppm 以下,CO2 : 0.1体
積%以下のN2 雰囲気中で焼鈍した。焼鈍温度は 750〜
950 ℃の範囲とした。このとき、鋼素線の径,カリウム
塩の濃度,焼鈍温度と焼鈍時間を調整することによっ
て、鋼素線中のO含有量とK含有量を調整した。
線の表面にCuめっきを施し、次いで冷間で伸線加工を行
なって直径 1.2mmの正極性MAG溶接用鋼ワイヤとし
た。得られた正極性MAG溶接用鋼ワイヤの表面に潤滑
油を塗布した。潤滑油の塗布量は、正極性MAG溶接用
鋼ワイヤ10kgあたり0.35〜1.7 gであった。得られた正
極性MAG溶接用鋼ワイヤの組成とCuめっき厚は表1−
1および表1−2に示す通りである。
いて溶接試験を行ない、スパッタ発生量,ビード形状,
給電チップの損耗度を下記の方法で評価した。溶接試験
の条件は、シールドガス成分:Ar80体積%+CO2 20体
積%,シールドガス流量:20liter/min ,溶接電源:
インバータ電源,極性:正極性,溶接電流: 180A,溶
接電圧:16Vとした。評価した結果は表2−1および表
2−2に示す通りである。
手(鋼板の厚さt= 1.4mm,ギャップの幅S= 0.5t=
0.7mm)の突き合わせ溶接を行ない、Cu製の捕集治具を
用いて直径 0.5mm以上のスパッタを捕集して、スパッタ
発生量を測定した。溶接時間は1min とした。スパッタ
発生量が、溶着量 100gあたり 0.2g以下を○, 0.2g
超え〜0.3 g以下を△, 0.3g超えを×として評価し
た。
(鋼板の厚さt= 1.4mm,ギャップ幅のS= 0.5t=
0.7mm)の突き合わせ溶接を行ない、ビード形状を目視
で観察した。溶け落ち,アンダーカットあるいはハンピ
ングビードが生じた場合は×とし、それ以外は○として
評価した。 (c) 給電チップの損耗度:直径 800mm,肉厚25mmの鋼管
を自転させながら鋼管外周を連続溶接した。溶接時間は
30min とした。溶接が終了した後、チップ先端内径を測
定し、その最大値と最小値を用いてチップ先端内径の楕
円化率を算出した。楕円化率が2%以下を○,2%超え
〜5%以下を△,5%超えを×として評価した。なお、
楕円化率は下記の (4)式で算出される値である。
生量が溶着量 100gあたり 0.3g以下であり、スパッタ
低減効果が発揮された。特に REMを添加し、D2 値を
1.2以上とすることによって、スパッタ低減効果がさら
に顕著に現れた。一方、比較例では、組成が本発明の範
囲を外れるので、直径 0.5mm以上のスパッタの発生量が
溶着量 100gあたり 0.6gを超え、しかもビード形状は
劣っていた。
て、アークの安定性に優れ、高い溶着量と浅い溶込みが
達成でき、溶落ち欠陥を防止できるので高ギャップの薄
鋼板継手溶接が安定して可能となる。またスパッタ量も
低減でき、給電の安定性に優れ、さらに給電チップの損
耗が低減できる等、産業上格段の効果を奏する。
織の一例を示す模式図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 正極性MAG溶接で用いられる溶接用鋼
ワイヤであって、Cを0.20質量%以下、Siを0.25〜2.5
質量%、Mnを0.45〜3.5 質量%、希土類元素を 0.005〜
0.040 質量%、Pを0.05質量%以下、Sを0.05質量%以
下含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を
有することを特徴とする正極性MAG溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項2】 前記組成を有し、かつ下記の (1)式で算
出されるD1 値が1.2〜2.1 の範囲内を満足することを
特徴とする請求項1に記載の正極性MAG溶接用鋼ワイ
ヤ。 D1 =(〔Si〕/2)+(〔Mn〕/3) ・・・ (1) 〔Si〕:Si含有量(質量%) 〔Mn〕:Mn含有量(質量%) - 【請求項3】 前記組成に加えて、Ti:0.30質量%以
下、Zr:0.30質量%以下、Al:0.50質量%以下およびC
r:3.00質量%以下のうちの1種または2種以上を含有
することを特徴とする請求項1に記載の正極性MAG溶
接用鋼ワイヤ。 - 【請求項4】 前記組成を有し、かつ下記の (2)式で算
出されるD2 値が1.2〜2.1 の範囲内を満足することを
特徴とする請求項3に記載の正極性MAG溶接用鋼ワイ
ヤ。 D2 =(〔Si〕/2)+(〔Mn〕/3)+(〔Ti〕+〔Zr〕+〔Al〕) +(〔Cr〕/10) ・・・ (2) 〔Si〕:Si含有量(質量%) 〔Mn〕:Mn含有量(質量%) 〔Ti〕:Ti含有量(質量%) 〔Zr〕:Zr含有量(質量%) 〔Al〕:Al含有量(質量%) 〔Cr〕:Cr含有量(質量%) - 【請求項5】 前記組成に加えて、Kを0.0001〜0.0150
質量%含有することを特徴とする請求項1、2、3また
は4に記載の正極性MAG溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項6】 前記溶接用鋼ワイヤが、表層に平均厚さ
0.6μm以上のCuめっきを有することを特徴とする請求
項1、2、3、4または5に記載の正極性MAG溶接用
鋼ワイヤ。 - 【請求項7】 請求項1、2、3、4、5または6に記
載の正極性MAG溶接用鋼ワイヤを用いて厚さ 0.2〜4.
5mm の鋼板を溶接する正極性MAG溶接方法において、
ギャップの幅を前記鋼板の厚さの1/2以上として1パ
ス溶接を行なうことを特徴とする正極性MAG溶接方
法。
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