JP2002137968A - 窒化ケイ素質焼結体およびその製造方法 - Google Patents

窒化ケイ素質焼結体およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特別な熱処理を必要としない通常の焼結法だ
けで、効率よく粒界に高融点の助剤を結晶化させること
により、耐クリープ特性に優れた材料を提供する。 【解決手段】 窒化ケイ素粒子と酸窒化物の粒界相から
構成される焼結体において、焼結体の組成がSi3N4-SiO2
-Lu2O3系の三元系状態図上で、A点:Si3N4、B点:40mol
%SiO2-60mol%-Lu2O3、C点:60mol%SiO2-40mol%-Lu2O3、
の3点で構成される三角形の中の組成であることを特徴
とする窒化ケイ素質焼結体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車、機械装
置、化学装置、宇宙航空機器などの広い分野において使
用される各種構造部品の素材として利用でき、特に、高
温において高い強度と優れた耐酸化特性を有するファイ
ンセラミックス材料およびその製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする問題点】窒
化ケイ素を主成分とする焼結体は、常温および高温で化
学的に安定であり、高い機械的強度を有するため、軸受
などの摺動部材、ターボチャージャロータなどのエンジ
ン部材として好適な材料である。
【0003】従来より、高強度な窒化ケイ素焼結体を得
るには窒化ケイ素原料粉末に酸化物の焼結助剤を添加し
て1600℃以上の温度で焼成し、液相焼結により緻密な焼
結体を得ていた。
【0004】焼結助剤として有効な助剤としては、酸化
マグネシウム、酸化アルミニウム、希土類元素酸化物で
ある。焼結助剤は高温での原料表面の酸化層である酸化
ケイ素と反応して液相を生成する。焼結は、窒化ケイ素
が液相内を拡散することによって進行する。焼結後に冷
却すると、液相の一部は結晶化するが大部分はガラス相
として粒界に残存する。
【0005】最も多く使用されている助剤は、酸化マグ
ネシウムや酸化イットリウムと酸化アルミニウムの混合
物である。この組成の焼結体は、一般に、窒化ケイ素粒
子とガラス相とからなっており、また、ガラス相中に酸
化物または酸窒化物として一部が結晶化する場合があ
る。
【0006】しかし、このような焼結体を1000℃以上の
高温環境下で使用する場合、粒界にあるガラスが軟化し
て強度が急激に低下するという問題があった。高温にお
ける強度低下の程度は、粒界相の化学組成に大きく依存
する。これは、ガラスの軟化温度は粒界相中の金属-Si-
O系の溶融温度に比例するためである。このため、酸化
マグネシウムを添加した焼結体よりも酸化イットリウム
と酸化アルミニウムの混合物を添加したものの方が耐ク
リープ特性は高い。
【0007】最近では、希土類酸化物と酸化ケイ素の混
合物を助剤とした系が研究されている。例えば、J. Am.
Ceram. Soc. 75号、2050ページ、1992年では、酸化イ
ットリウム−酸化ケイ素系の助剤を添加して、粒界に高
融点であるY2Si2O7を析出させた焼結体が報告されてい
る。この系では、図1に示す窒素含有アパタイト(N
相、Y10Si7O22N4)またはK相(YSiO2N)あるいはそれ
に近い組成のガラス相がY 2Si2O7につぐ第二の粒界相で
あった。しかし、N相やK相の軟化温度は1500℃以下で
あるので耐クリープ特性は十分なものとは言えなかっ
た。
【0008】そこで、Si3N4-Y2Si2O2-Si2N2Oの三角形内
の組成が検討された。しかし、この組成ではRE2Si2O7の
融点が十分には高くなく、さらにRE2Si2O7の結晶化速度
が遅いため長時間の熱処理が必要であり、熱処理を施し
た場合でも粒界の30%程度は非晶質のままであった。こ
のため、耐クリープ特性は十分とは言えなかった。
【0009】その他の結晶相としては、公開特許公報平
4-15466にSi3N4-SiO2-RE2O3(RE:希土類元素)系に関し
て、J相(RE4Si207N2)、N相、K相を析出させる発明
や、公開特許公報平4-243972にJ相と希土類窒化物を析
出させる発明、公開特許公報平4-292465にRE2SiO5を析
出させる発明が報告されている。また、公開特許公報平
8-48565には、粒界相としてJ相または、J相とRE2SiO5
の2相を析出させる発明が報告されている。
【0010】しかしながら、これらの発明では組成制御
のため多量の希土類酸化物を添加する必要があり、粒界
相の量が増えるため高温で酸化されやすい問題があっ
た。さらに結晶化のために特別な熱処理を必要としてい
た。さらに、以前の研究や発明では希土類元素間の効果
の差に関しては、議論されておらず、どの元素も同じ効
果として扱っていた。
【0011】本発明は、上記のような従来技術の問題点
を解決するために、希土類元素の種類と量に関して精密
な組成を検討することにより、特別な熱処理を必要とし
ない通常の焼結法だけで、効率よく粒界に高融点の助剤
を結晶化させることにより、耐クリープ特性に優れた材
料を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】焼結助剤は、液相焼結を
促進するためには焼結温度以下で液相を生成し、焼結後
には高融点の結晶相として残留する必要がある。この二
点が耐熱性の高い焼結体を得るための条件であり、これ
が多くの場合希土類酸化物が焼結助剤として使用される
理由である。しかし、既に述べたように、Si3N4-SiO2-R
E2O3系の状態図は複雑であり目的とする高融点の相のみ
を粒界相とする焼結体を製造するのは困難であった。
【0013】そこで、本発明では希土類元素間の状態図
および焼結性の差に着目し、希土類元素としてルテチウ
ムを選び精密な組成制御を行うことにより、特別な熱処
理を必要としない通常の焼結法においても効率よくLu2S
iO5相を析出させることに成功し、これにより耐クリー
プ特性に優れた焼結体が得られることを見いだした。
【0014】希土類元素のケイ酸化物であるRE2SiO5相
は、SiO2-RE2O3系の酸化物の中で最も融点が高い酸化物
であり、粒界相組成としては好ましいものであるが、希
土類元素の多くはこの近くの組成にH相(RE5Si3O12N)
を形成する。H相は融点が低いため、Lu2SiO5相を粒界
相となるように液相組成を設計すると、一部はH相が析
出するために耐クリープ特性が低下するという問題があ
った。また、これを避けるためにRE2SiO5とRE2Si2O7と
の混合物を粒界に結晶化させることも行われてきたが、
低融点のRE2Si2O7を含むため耐熱性が低下する問題があ
った。
【0015】Si3N4-SiO2-RE2O3系の状態図としては、図
1(A)および図1(B)に示すように、タイプAとタ
イプBがある。ただし、REは希土類元素、DはRE2Si
2O7、SはRE2SiO5、KはRESiO2N、JはRE4Si2O7N2、M
はRE2Si3O3N4を表す。タイプAはK相やH相があるタイ
プで、イットリウムなどのイオン半径が大きなREが属す
る。一方、タイプBとしてはこれらの相が存在せず、公
開特許公報平8-48565にYbが報告されており、TmおよびL
uも同様との記述がある。
【0016】希土類元素間の差について詳細に検討した
結果、LuはタイプBであり、Yb、Tm、LuのRE2SiO5タイ
プの結晶の中でもLu2SiO5だけが特に完全に結晶化する
ことがわかった。即ち、窒化ケイ素を焼結するに際し、
Lu2O3またはLu2O3とSiO2の混合物を焼結助剤として用
い、窒化ケイ素原料粉末中の酸素含有量を考慮したLu2O
3:SiO2比(モル比)を1:1近くに調整し、酸素揮発量
を抑制しながら焼成することにより、窒化ケイ素とLu2S
iO5とからなる焼結体が得られた。
【0017】この焼結体の組成は、図2(A)に示すSi
3N4-SiO2-Lu2O3系の三元系状態図上で、A点:Si3N4、B
点:40mol%SiO2-60mol%-Lu2O3、C点:60mol%SiO2-40mol
%-Lu2O3、の3点で構成される三角形の中の組成であり、
多粒子粒界に存在する粒界相のうち90体積%以上がLu2Si
O5結晶相であることが確認された。このように粒界がほ
ぼ完全に結晶化しているため、耐クリープ特性に優れて
いる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の焼結体は、窒化ケイ素粒
子と酸窒化物の粒界相から構成される焼結体において、
焼結体の組成が図2(A)に示されるSi3N4-SiO2-Lu2O3
系の三元系状態図上で、A点:Si3N4、B点:40mol%SiO2-
60mol%-Lu2O3、C点:60mol%SiO2-40mol%-Lu2O3、の3点
で構成される三角形の中の組成である。
【0019】A点とB点を結ぶ線よりSiO2側ではLu2SiO5
だけからなる完全な結晶化は達成されず、他の結晶相や
ガラス相が残存するため耐クリープ特性が低下する。A
点とC点を結ぶ線よりLu2O3側では他の結晶相やガラス相
が残存するため耐クリープ特性が低下する。
【0020】さらに、組成制御は難しくなるが一層の耐
クリープ特性が得られる組成として、焼結体の組成が図
2(B)に示されるSi3N4-SiO2-Lu2O3系の三元系状態図
上で、D点:99mol% Si3N4 - 0.4mol% SiO2 - 0.6mol% L
u2O3、E点:99mol% Si3N4 -0.6mol% SiO2 - 0.4mol% Lu
2O3、F点:92mol% Si3N4 - 3.2mol% SiO2 - 4.8mol%Lu2
O3、G点:92mol% Si3N4 - 4.8mol% SiO2 - 3.2mol% Lu2
O3の4点で構成される四角形の中の組成にするとよい。
【0021】D点とE点を結ぶ線よりSi3N4側では液相成
分が少ないため十分には緻密化しない。D点とF点を結ぶ
線よりSiO2側では完全な結晶化は達成されず、ガラス相
が残存するため耐クリープ特性が低下する。F点とG点を
結ぶ線よりLu2O3側では助剤量が多いため耐クリープ特
性が低下する。E点とG点を結ぶ線よりLu2O3側では完全
な結晶化は達成されず、ガラス相が残存するため耐クリ
ープ特性が低下する。
【0022】粒界相中の90%以上がLu2SiO5として結晶化
しており、Lu2SiO5結晶相以外の結晶相またはアモルフ
ァス相の割合が10体積%以下となるまで焼成すると耐ク
リープ特性が向上する。10体積%を超えると耐熱性に劣
る液相が生成するため耐クリープ特性が低下する。これ
を満たす焼成条件は組成等により異なるが、状態図上で
Si3N4-Lu2SiO5の線上の組成に近い方が結晶化の速度は
速い。
【0023】焼結体の組成の分析は、次の方法による。
得られた焼結体を粉砕してフッ化水素酸と硝酸の混合溶
液中に入れて、四弗化エチレン樹脂製容器中で180℃で1
0時間加熱溶解処理をした後、ICPで溶液中のSiとLu濃度
を定量し、次に、焼結体を粉砕して炭素粉末とともにス
ズカプセルに封入し、炭素るつぼ中で加熱溶解して発生
した窒素と一酸化炭素を定量することにより、試料中の
酸素と窒素量を定量する。この定量値を基に、Si、Lu、
O、Nの元素比を計算し、状態図上の組成を求める。
【0024】本発明の焼結体の多粒子粒界はLu2SiO5の
結晶で構成される。希土類元素のRE2SiO5を含む窒化ケ
イ素に関して希土類元素の差が結晶化の程度と耐クリー
プ特性に及ぼす影響を詳しく調べたところ、Luだけが90
%以上の高い結晶化を示し、高い耐クリープ特性を達成
した。即ち、種々のSi3N4-SiO2-RE2O3系の組成の中で、
A点:Si3N4、B点:40mol%SiO2-60mol%-Lu2O3、C点:60m
ol%SiO2-40mol%-Lu2O3、の三角形の中の組成だけが、高
い結晶化を達成した。
【0025】Lu2SiO5結晶相の確認はX線回折法により行
い、β-Si3N4、Lu2SiO5、および他の結晶相のピークの
高さから生成を確認する。また、多粒子粒界中の結晶相
の割合は透過型電子顕微鏡(TEM)により行う。試料
から薄片を切り出しイオンミル処理の後TEMによる電
子線回折を行い、50点程度の粒界を観察して結晶化の部
分とガラス相の部分の面積比により結晶化の程度を定量
する。
【0026】本発明の焼結体の製造方法としては特に規
定しないが、下記の手法を用いることができる。出発原
料粉末としては、 α型の窒化ケイ素原料粉末を用い
る。出発原料中の酸素不純物量は粒界相組成に影響を及
ぼす。本発明では、最終の焼結体の組成を精密に制御す
る必要があるため、原料の混合に関しては窒化ケイ素原
料中の酸素不純物を定量して、酸素不純物がすべて二酸
化ケイ素(SiO2)であると仮定して、Si3N4とSiO2の混合
物として組成を決める。
【0027】添加する焼結助剤は、酸化ルテチウムLu2O
3または酸化ルテチウムLu2O3と二酸化ケイ素(SiO2)の
混合物をLu2SiO5組成となるように添加する。ここで、
組成を決める際には、窒化ケイ素原料中に不純物として
含まれる酸素(SiO2)の量と焼成中に揮発散逸する酸素
量を考慮して出発組成を決める必要がある。
【0028】添加する焼結助剤の量は、Si3N4-SiO2-Lu2
O3系の三元系状態図上で、D点:99mol% Si3N4 - 0.4mol
% SiO2 - 0.6mol% Lu2O3、E点:99mol% Si3N4 - 0.6mol
% SiO2 - 0.4mol% Lu2O3、F点:92mol% Si3N4 - 3.2mol
% SiO2 - 4.8mol% Lu2O3、G点:92mol% Si3N4 - 4.8mol
% SiO2 - 3.2mol% Lu2O3の4点で構成される四角形の中
の組成となるように決められる。
【0029】焼結法は特に規定しないが、2気圧以上1
00気圧以下の窒素中で1700〜2000℃で焼成することが
好ましい。2気圧未満では焼成中に窒化珪素と二酸化珪
素が反応して分解するので組成変動が大きく緻密な焼結
体が得られない。100気圧を超えると焼結体中に高圧
のガスが閉じこめられるため焼結体中にボイドが生成
し、緻密な焼結体が得られない。
【0030】最も簡単には、窒素ガス圧下のホットプレ
スにより行う。例えば、原料粉末を黒鉛型に入れて、2
気圧以上10気圧以下の窒素中で100〜500kg/cm2の圧力を
かけて1700〜2000℃で30分〜120分程度焼成する手法で
ある。雰囲気が2気圧未満では焼結体中の酸素の揮発が
激しく組成制御が困難である。雰囲気が10気圧以上で
は、窒化ケイ素焼結体中に高圧のガスが閉じこめられて
気泡として残留するため95%以上には緻密化しない。焼
成温度が1700℃未満では十分な液相が生成しないため緻
密化しない、焼成温度が2000℃を越えると粒成長が激し
くなるために室温強度が低下する。
【0031】焼成中の酸素揮発量はSiO2換算の減少量で
窒化ケイ素原料中に含まれるSiO2と添加したSiO2の合計
の40%以下となる様な焼成条件が良い。これ以上だと焼
成中に組成変動が大きくなるためLu2SiO5が90%以上結晶
化することが困難になる。
【0032】
【実施例】(実施例1)平均粒径0.5μm、酸素含有量0.
93重量%のα型含有量92%の窒化ケイ素粉末(以下、「粉
末P1」という)に酸化ルテチウム6.9wt%を添加し、エ
タノールを添加した湿式ボールミルにより2時間混合粉
砕した。原料粉末は0.93重量%の酸素不純物を含むの
で、原料粉末の組成は、98.2wt%Si3N4-1.8wt%SiO2とし
て組成を計算したところ、真の混合組成は、表1(B)
の通り91.52wt%Si3N4-1.78wt%SiO2-6.7wt%Lu2O3であっ
た。ついで、空気中でロータリエバポレータを用いて乾
燥の後、 200Kg/cm2の圧力で金型成形により80mm×45mm
×10mmの成形体を得た。
【0033】
【表1】
【0034】この成形体を黒鉛の型に入れてガス圧ホッ
トプレス炉を用いて焼成した。まず、10-2Paの真空中で
室温から1300℃まで毎時500℃の速度で加熱し、この温
度で10気圧の窒素ガスを導入し、200Kg/cm2の圧力を負
荷し、毎時500℃で1800℃まで昇温し、1800℃で1時間保
持した。
【0035】得られた焼結体を粉砕してフッ化水素酸と
硝酸の混合溶液中に入れて、四弗素化エチレン樹脂製容
器中で180℃で10時間加熱溶解処理をした後、ICPで溶液
中のSiとLu濃度を定量した。次に、焼結体を粉砕して炭
素粉末とともにスズカプセルに封入し、炭素るつぼ中で
加熱溶解して発生した窒素と一酸化炭素を定量すること
により、試料中の酸素と窒素量を定量した。
【0036】定量値は、Lu:6.05wt%、Si:55.79wt%、
O:1.38wt%、N:36.78wt%あった。酸素量は焼成中に減
少しており、SiO2換算の減少率は38%であった。これら
により、焼結体組成は、95mol% Si3N4 - 2.5mol% SiO2
- 2.5mol% Lu2O3であり、状態図2中のABC内およびCDEF
内の組成であった。また、X線回折の結果、生成相は、
β-Si3N4とLu4Si2O7N2であった。
【0037】得られた焼結体を800メッシュのダイヤモ
ンドホイールで平面研削し、3mm×4mm×10mmの形状に加
工し、300MPaの圧縮加重で加圧しクリープ変形速度を求
めた。変形速度は毎秒1.2×10-8であり、優れた耐クリ
ープ特性を示した。
【0038】焼結体から薄片を切りだし、 アルゴンイ
オンミル処理の後、透過型電子顕微鏡で観察したとこ
ろ、図3に示すように、窒化ケイ素粒子、二粒子粒界と
多粒子粒界とからなる微構造であった。なお、多粒子粒
界(A点)について電子線回折を行うことにより、粒界
相の結晶相を決定した。
【0039】さらに、電子線回折により多粒子粒界を調
べたところ、Lu2SiO5に結晶化していた。さらに、ラン
ダムに選んだ50個の多粒子粒界について調べたところ50
個全てにおいてLu2SiO5に結晶化していた。このよう
に、 Lu2SiO5組成の粒界相を形成することにより、高温
においてクリープ変形しにくい窒化ケイ素焼結体を得
た。
【0040】(実施例2〜6)粉末P1に表1(A)の
組成の酸化ルテチウムおよび二酸化ケイ素を添加し、実
施例1と同様の手法にて成形体を得た。表1(B)に出
発原料中の真の組成を示す。この成形体を黒鉛の型に入
れてガス圧ホットプレス炉を用いて焼成した。まず、10
-2Paの真空中で室温から1300℃まで毎時500℃の速度で
加熱し、この温度で表2(A)の気圧の窒素ガスを導入
し、200Kg/cm2の圧力を負荷し、毎時500℃で表2(A)
の温度まで昇温し表2(A)に示した時間保持した。
【0041】
【表2】
【0042】得られた焼結体について、実施例1と同様
の手法で試料中の酸素と窒素量を定量した。定量値は、
表3(A)に示す通りであった。酸素量は焼成中に減少
しており、SiO2換算の減少率は表2(B)に示す通りで
あった。これらにより、焼結体組成が正確に計算でき、
その値は表3(B)に示す通りであり、図4の状態図中
のABC内およびCDEF内の組成であった。
【0043】
【表3】
【0044】また、X線回折の結果生成相は、β-Si3N4
とLu2SiO5であった。得られた焼結体を800メッシュのダ
イヤモンドホイールで平面研削し、3mm×4mm×10mmの形
状に加工し、 300MPaの圧縮加重で加圧しクリープ変形
速度を求めた。変形速度は表4に示す通りであり、優れ
た耐クリープ特性を示した。
【0045】焼結体から薄片を切りだし、アルゴンイオ
ンミル処理の後、透過型電子顕微鏡で観察したところ、
窒化ケイ素粒子、二粒子粒界と多粒子粒界とからなる微
構造であった。さらに、電子線回折により多粒子粒界を
しらべたところ、Lu2SiO5に結晶化していた。さらに、
ランダムに選んだ50個の多粒子粒界について調べたとこ
ろLu2SiO5結晶の割合は表4に示す通りであった。
【0046】このように、 Lu2SiO5組成の粒界相を形成
することにより、高温においてクリープ変形しにくい窒
化ケイ素焼結体を得た。このように、 Lu2SiO5組成の粒
界相を形成することにより、高温において強度低下が少
なく耐クリープ特性に優れた窒化ケイ素焼結体を得た。
【0047】(比較例7〜10)粉末P1に表1(A)
の組成の酸化ルテチウムおよび二酸化ケイ素を添加し、
エタノールを添加した湿式ボールミルにより2時間混合
粉砕した.原料粉末は0.93重量%の酸素不純物を含むの
で、真の混合組成は表1(B)の通りであった。つい
で、空気中でロータリエバポレータを用いて乾燥の後、
20MPaの圧力で金型成形により、80mm×45mm×10mmの成
形体を得た。
【0048】この成形体を黒鉛の型に入れてガス圧ホッ
トプレス炉を用いて焼成した。まず、10-2Paの真空中で
室温から1300℃まで毎時500℃の速度で加熱し、この温
度で表2(A)の気圧の窒素ガスを導入し、200Kg/cm2
の圧力を負荷し、毎時500℃で表2(A)の温度まで昇
温し表2(A)に示した時間保持した。
【0049】得られた焼結体を実施例1と同様の手法で
組成分析を行ったところ、定量値は、表3(A)に示す
通りであった。酸素量は焼成中に減少しており、SiO2換
算の減少率は表2(B)に示す通りであった。これらに
より、焼結体組成が正確に計算できその真の組成は表3
(B)に示す通りであり、図4の状態図中のCDEFの外の
組成であった。また、X線回折の結果、生成相は、表4
の通りであった。
【0050】
【表4】
【0051】実施例1と同様の手法で300MPaの圧縮加重
で求めたクリープ変形速度は表4に示す通りであり、耐
クリープ特性が劣っていた。実施例1と同様の手法で透
過型電子顕微鏡で観察したところ、Lu2SiO5結晶の割合
は表4に示す通りであった。
【0052】比較例7は、図4の状態図のEGの線よりも
SiO2よりの組成であり、Lu2SiO5の結晶化の程度が低い
ため耐クリープ特性に劣る。比較例8は、EGの線よりも
SiO2よりの組成であり、かつ助剤量も多い。このためLu
2SiO5の結晶化の程度が低いことに加えて非晶質の量も
多くなり、耐クリープ特性に劣る。比較例9は、DFの線
よりもLu2O3よりの組成であり、Lu2SiO5の結晶化の程度
が低いため耐クリープ特性に劣る。比較例10は、DFの
線よりもLu2O3よりの組成であり、かつ助剤量も多い。
このためLu2SiO5の結晶化の程度が低いことに加えて非
晶質の量も多くなり、耐クリープ特性に劣る。
【0053】このように、図4の状態図のDEFGの外の組
成においてはLu2SiO5結晶化の程度が低く、高温におい
てクリープ変形量が多かった。
【0054】(比較例11〜14)粉末P1に表5の組
成(Si3N4-5mol%RE-2SiO5)の希土類酸化物(REは希土類
元素)および二酸化ケイ素を添加し、実施例1と同様の
手法で成形体を得た。
【0055】
【表5】
【0056】この成形体を黒鉛の型に入れてガス圧ホッ
トプレス炉を用いて焼成した。まず、10-2Paの真空中で
室温から1300℃まで毎時500℃の速度で加熱し、この温
度で10気圧の窒素ガスを導入し、200Kg/cm2の圧力を負
荷し、毎時500℃で1800℃まで昇温し、1800℃で1時間保
持した。
【0057】得られた焼結体の生成相は、表4の通りで
あった。実施例1と同様の手法で300MPaの圧縮加重で求
めたクリープ変形速度は表4に示す通りであり、耐クリ
ープ特性が劣っていた。実施例1と同様の手法で透過型
電子顕微鏡で観察したところ、RE2SiO5結晶の割合は表
4に示す通りであった。
【0058】このように、図2の状態図中のDEFGの内の
組成であっても、Lu以外の希土類元素を用いた場合は、
RE2SiO5結晶化の程度が低く、高温においてクリープ変
形量が多かった。
【0059】
【発明の効果】窒化ケイ素焼結体では、酸化物の焼結助
剤が焼結後に多粒子粒界に残留するため耐クリープ特性
が低下し耐熱性に乏しい材料であった。上述したよう
に、この発明によれば、窒化ケイ素原料粉末に添加する
焼結助剤の量や種類および焼成条件を制御することによ
り、窒化ケイ素とLu2SiO5組成の粒界相とから構成され
る焼結体を製造することにより、粒界が完全に結晶化し
た材料が得られ、耐クリープ特性に優れた材料を提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は、Y2O3などのSi3N4-SiO2-RE2O3系の
状態図であり、図1(B)は、Lu2O 3などのSi3N4-SiO2-RE2
O3系の状態図である。
【図2】図2(A)は、本発明の窒化ケイ素質焼結体の
組成範囲をSi3N4 - SiO2 - Lu2O 3系の状態図において示
す図であり、図2(B)も、本発明の窒化ケイ素質焼結
体の組成範囲をSi3N4-SiO2-RE2O3系の状態図において示
す図である。
【図3】図3は、透過型電子顕微鏡で観察した実施例1
の焼結体の微構造を示す模式図である。
【図4】図4は、実施例1〜6と比較例7〜10の焼結
体の組成を示すSi3N4-SiO2-RE2O3系の状態図である。
フロントページの続き (72)発明者 三友 護 茨城県つくば市並木1丁目1番科学技術庁 無機材質研究所内 Fターム(参考) 4G001 BA04 BA08 BA32 BB04 BB08 BB32 BC42 BC52 BC54 BC55 BD11 BE26

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化ケイ素粒子と酸窒化物の粒界相から
    構成される焼結体において、焼結体の組成がSi3N4-SiO2
    -Lu2O3系の三元系状態図上で、 A点:Si3N4 B点:40mol%SiO2-60mol%-Lu2O3、 C点:60mol%SiO2-40mol%-Lu2O3、 の3点で構成される三角形の中の組成であることを特徴
    とする窒化ケイ素質焼結体。
  2. 【請求項2】 窒化ケイ素粒子と酸窒化物の粒界相から
    構成される焼結体において、焼結体の組成がSi3N4-SiO2
    -Lu2O3系の三元系状態図上で、 D点:99mol% Si3N4 - 0.4mol% SiO2 - 0.6mol% Lu2O3、 E点:99mol% Si3N4 - 0.6mol% SiO2 - 0.4mol% Lu2O3、 F点:92mol% Si3N4 - 3.2mol% SiO2 - 4.8mol% Lu2O3、 G点:92mol% Si3N4 - 4.8mol% SiO2 - 3.2mol% Lu2O3 の4点で構成される四角形の中の組成であることを特徴
    とする窒化ケイ素質焼結体。
  3. 【請求項3】 粒界相がLu2SiO5の結晶相であることを
    特徴とする請求項1または2記載の窒化ケイ素質焼結
    体。
  4. 【請求項4】 粒界相中に占めるLu2SiO5結晶相以外の
    結晶相またはアモルファス相の割合が粒界相体積の10体
    積%以下であることを特徴とする請求項3記載の窒化ケ
    イ素質焼結体。
  5. 【請求項5】 窒化ケイ素原料粉末に、酸化ルテチウム
    粉末または酸化ルテチウム粉末と二酸化ケイ素の混合物
    を、焼成後に請求項1記載のABC内または請求項2記載
    のDEFG内の組成となるように添加して混合した後に、2
    気圧以上100気圧以下の窒素中で1700〜2000℃で焼成
    することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記
    載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
  6. 【請求項6】 焼成中のSiO2の揮発量がSiO2換算減少量
    で全SiO2の40%以下であることを特徴とする請求項5記
    載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
  7. 【請求項7】 焼成方法が2気圧以上10気圧以下の窒
    素ガス雰囲気中におけるホットプレスであることを特徴
    とする請求項5または6記載の窒化ケイ素質焼結体の製
    造方法。
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